九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
固体半導体機能材料の電気的及び熱的輸送特性の制 御
坪田, 敏樹
https://doi.org/10.11501/3175085
出版情報:Kyushu University, 2000, 博士(工学), 論文博士 バージョン:
権利関係:
第二章 (Zn1_:Alx)Oの熱電特性
2. 1 緒言
一般に、 金属酸化物は熱的に非常に安定である。 したがって、 大気中高温で の使用に関しては大変有利であると考えられる。 また、 数多くの酸化物材料が 高い導電性を有することが報告されている。 Seebeck係数は、 固体材料の電気 的輸送特性を解析するために重要な基本的パラメーターなので、 酸化物材料の Seebeck効果は広く研究されている。 しかしながら、 酸化物を熱電材料に応用 した報告はほとんどない。 かつて、 高温超伝導銅系酸化物が熱電冷却用材料と して提案された九しかし、 これらの材料のキャリア移動度(0.1 cm2 V・1S-l程度) は極端に小さいため、 低い熱電性能しか示さないことが明らかにされた 2).3 )。
一般に、 金属酸化物はイオン結合性が強いためキャリア移動度は小さい。 け れども、 カか亙なり大きな移動度を有する酸イ化じ物も存在する。 報告されているS釘n02
2 単結晶のHal1移動度の値
完全な金属伝導を示し、 報告されている酸化物のなかで、 常伝導状態で最も導 電率が高いRe03の移動度の値(30 cm2 V-1 S-l)( この値は銅 のdri白移動度と同じで ある)より大きい。 我々は以前にIn203系複合酸化物司、 caMnopなどの酸化物 が高温用新規熱電材料として有望であることを提案してきた。
ZnOは3.5 eVの広い禁制帯を有する導電性酸化物であることが知られている。
ZnOの電気的特性は、 化学、 物理学、 ガスセンサηやパリスタ8)のような電子 デバイスの応用など、 多くの分野で注目されている。 ZnO は 3d遷移金属酸化 物としてみなされることがしばしばある。 しかし、 Zn の 3d 軌道は満たされて いるため、 Znは実際には遷移金属ではない。 一般に、 酸化物半導体の価電子帯 は、 主に 02-アニオンの2p軌道から成り、 一方、 金属カチオンの空または半分 満たされた軌道が伝導帯を支配する。 したがって、 3d遷移金属酸化物の伝導電 子の特性は、 金属カチオンの 3d軌道の特性に主に支配される。 けれども、 ZnO では伝導帯はZn2+の4sと4p軌道からなる。 この伝導帯の特性とかなり大きな Znの電気陰性度が原因で、 Zn-O 結合は相対的に小さいイオン性度とSp3混成軌 道のような特性を示す。 本研究では、 ZnO 系酸化物の熱電特性を、 高温用熱電 発電材料の観点から調査し、 Alを添加した ZnO が非常に有望な性能指数を有 することを明らかにした。 この結果は、 熱電材料として可能性のある性能を示 した酸化物材料の最初の報告である。 この研究の主要な結果は既報川こ報告し
- 68 -
ている。
2.2 実験
2.2.1 試料調製
出発原料としてZnOには酸化亜鉛(純度99. 0%キシタゃ化学株式会社)を用い、
Al203についてはアルミニウムイソプロポキシドを加水分解後、7000Cx 10 h焼 成して得た低温相のAl203を使用した。 XRDで低温相であることは確認した。
試料調製の流れ図を Fig. 1に示す。 試料を調製する際の出発原料としては基本 的に以上の酸化物粉末を用い、所定量の混合粉末を24時間ボールミル混合し てその混合粉末を一軸加圧成形後、等方静水圧成形を行い 14 000Cx 10h の条件 で熱処理して焼結体を得た。
2.2.2 測定方法
A)導電率
(1) 測定用素子の作製
焼結後のディスク状ぺレツトを低速アイソメットカッターを用いて直方体に 切り出した。 それを水性研磨紙で表面処理したものをアセトン中で約10分程 度、超音波洗浄した。 その後、十分に乾燥させた。 次にその素子に直流四端子 法による導電率測定に必要な電圧測定端子用リード線(白金線、0.1mmゆ)をFig.
2のように取り付けた。 白金線と素子の固定は白金ペーストの塗布によって行 い、 機械的強度や安定した電気的特性を保つため白金ペーストの焼き付け処理 を大気中で10000Cx 10 minの条件で行った。 また、測定素子の断面積や電極間 距離は場所を変えて数回、ノギスによって測定しその平均値を測定値とした。
(2) 実験装置
Seebeck係数と導電率は同ーのサンプルを用いて同時に測定を行った。 この 測定装置のセル断面図と電気系統図を、それぞれFig. 3, Fig. 4に示す。 測定装 置の試料部分は白金-白金ロジウム(P-R)熱電対を白金箔じ挟み、これ
を
試料の両端にアルミナブロックで圧着して固定した。 このブロックの圧着力は磁性管
の根元に位置するばねによって生み出している。 また試料の一端に位置するヒ ーター(0.1 mmφの白金線をアルミナ板に巻いたもの)で試料に温度勾配を与え ることができ、 その勾配もヒーターに流す電流を変えることで調節が可能であ る。 この試料部分からセル外部ヘ取り出すリード線は合計8本であり、 その内 訳は、 P-R熱電対が二組(4本)、 電圧測定用端子( 導電率測定)が2本およびヒー ターのリード線が2本となっている。 また、 これらの各リード線は短絡しない ように全て保護管で絶縁した。
次にSeebeck係数と導電率の同時測定について電気回路で説明する。 Seebeck 係数測定時には、 各熱電対で温度を測定し温度差を求め、 三つの熱電対間( 試料 両端間)に生じる熱起電力は、 各熱電対の白金線を使って測定する(Fig. 4(a))o 一方、 導電率測定時には、 各熱電対の白金線を使って定電流を析しし、 電圧測定 用端子閣の電圧降下を測定して求めた(Fig.4(b))。
(3) 測定原理および方法
導電率測定は直流四端子法により行った。 この測定法の利点は通電側の二つ の電極部分で生じる接触抵抗や分極効果が含まれず、 電極材料による影響を除 去できることである。 通常、 導電率dま、 電極聞の電圧Vと電流Iによって次 式のように表される。
a= (l!A)・(1/竹 1:電極間距離;A:電極面積 (2.1)
したがって、 ある電流Iを流した時のVを測定すれば、 式(2.1)からUを求める ことができる。
次に、 実際の測定方法について説明する。
1)試料を試料台に乗せて両端を白金箔で挟みながらばねの力で固定する。 この 時、 白金箔に挟んだ熱電対の接合部の位置ができる限り試料の断面の中心付近 になるようにする。
2)試料に取り付けた直流 4 端子測定用の白金線(0.1 mmφ)をセルの電圧端子用 白金線(0.5 mmφ)に巻き付け、 その接合部に白金ぺーストを塗布する。 白金ペ ースト塗布部分をライタ一等で加熱して溶媒の酢酸ノルマルブチルを気化させ て、 完全に接着させる。
3)セルを電気炉にセットし、 所定の温度、 雰囲気に保持する。 温度は一定にな
- 70 -
ってから約1時間程度、 保持することが望ましい。 測定雰囲気は大気中とした。
定常状態に達した後、 定電流電源( ADVANTEST製、 R6144PROGRAMMABLE CURRENT GENERAT OR)を用いて試料に定電流を流し、 その時に生じる電位差 をデジタルボルトメーター( ADVANTEST製、 R6551 DIGITAL MULTIMETER) で測定した。 定電流値は、 高導電性試料では、 電位差の変化が 100μV以上(3 桁以上の有効数字を得るため )で、 なおかつ極力電位差が小さくなるように3点 ほと、電許し値(絶対値 )を変えて測定した。また、通電時のPeltier効果による吸熱、
発熱の影響を取り除くために電許しを流す方向を正方向、 負方向と交互に変えて 電位差を測定した。導電性の低い試料については、電位差の変化が100mV-1000 mVとなるように通電した。 流した電流値と得られた電圧降下の値から最小二 乗法によって導電率を求めた。
4)測定温度は基本的に室温から 3000Cまでは500C間隔で測定し、3000Cから 10000Cまでは1000C間隔とした。
B) Seebeck係数
(1) 測定素子の作製
Seebeck係数測定には導電率測定の同じ素子を用いた。素子の作製方法は2.2.
1(1)に示したとおりである。
(2) 実験装置
Seebeck係数測定には導電率測定と同じ実験装置を用いたので、2. 2. 1(2)を参 照にしてもらいたい。
(3) 測定原理および方法
Seebeck 係数は試料の両端に温度差を与えた時の熱起電力を測定し、 温度差 変化に対する熱起電力変化の割合を測定することで求めることができる。 これ らの関係式は 1. 3. 1 に示した。 Seebeck係数の測定は、 各測定温度について導 電率測定が終了した後、 引き続き次の様にして行った。
1)温度および雰囲気が定常状態であることを確認してから試料両端の温度を測 定し、 次に熱電対間の起電力( 熱起電力 )をデジタルボルトメーターで測定した。
2)熱電対関の温度差を変える ために定電流、 定電圧発生装置(Metronix製、
REG-ULATED DC POWER SUPPL Y)によって白金ヒーターに通電し温度勾配を 与えて、 再び定常状態になるまで保持した。
3)温度が定常に達した後、 1)と同様に試料両端の温度および熱起電力を測定し た。 この操作を繰り返して4点測定を行い、 温度差と熱起電力が直線関係にあ ることを確認した。 もし、 直線関係にならないときは再度、 1)からやり直した。
4)直線の傾きを最小二乗法によって求め、 Seebeck係数とした。
C)熱伝導率
(1) 測定用素子の作製
レーザーフラッシュ法による熱伝導率測定には、 直径が約10 mmの円盤状ペ レツト成形体(焼結体)を用いた。 また、 試料の厚さは熱拡散率の大きさによっ て変える必要があるが、 本研究で用いた試料は熱拡散率に大きな相違はなく、
値も小さかったので試料厚さは基本的に約1 mm とした。 また試料の平行面を 出す点には極力注意を払った。 このサイズの焼結体試料を水性研磨紙で表面処 理し、 アセトン中で約10分程度超音波洗浄した後に乾燥器中で乾燥して熱伝 導率測定用素子とした。
(2) 実験装置
熱伝導率測定には熱定数測定装置TC-7000(真空理工製)を用いた。 この装置 は固体試料の熱定数(熱拡散率、 比熱容量、 熱伝導率)をνーザーフラッシュ法 により測定でき、 その精度は比較的高いと考えられている。 装置の構成は、 1) 本体試料系、 2)レーザー発振系、 3)熱定数測定回路、 4)高速記憶変換器、 5)プロ グラム温度制御器からなる。
次にそれぞれの構成について説明する。
1)試料をセットする部分でレーザーが試料全面に垂直に照射されるように位置 しており、 試料は熱伝導率の低いアルミナで固定される。
2)レーザーにはルビーレーザーを用いており、 その仕様は以下の通りである。
ルビーロッド 入射エネルギー 出力エネルギ一 発振波長
φ10 x 100 mm ビーム径 Ø10 mm 最大 2.8 kV 800μF
6 J/pluse以上 6943Â
- 72 -
3)試料裏面の温度定数を測定する回路である。 温度検出方法として、 熱電対を 用いる場合および、赤外線検出器(InSbセンサー)を用いる場合の二通りがある。
ここで赤外線検出器は温度の検出が非接触式で、熱電対による温度検出(接触式 ) よりも精度は高いが、 温度の絶対値の測定は困難であるため温度の絶対値測定 が必要な比熱容量の測定には使用できず、 熱拡散率の測定にのみ使用できる。
次に、 検出された温度(起電力 )はプリアンプで増幅されて本回路に入力され、
試料裏面の温度上昇分だけが増幅出力される。
4)熱定数測定回路で増幅出力された高速信号を本回路に入力し記憶した後、 低 速信号として出力し時間計測する。
5)本回路は炭化珪素発熱体を用いた炉の温度制御に使用される。
(3) 測定原理および方法
熱伝導率の測定方法を知るには、 まず熱定数の定義な芯も知らなければなら ない。 そこで、 ここではそこから説明する。
(a) 定常熱流と熱伝導率
断面積Aで均一な厚さxに一次元の定常熱流Qを考える。 経験則に
よ
り、 単位面積当りの定常熱流Q/Aは、 温度勾配(dT/dx)に比例することが知られている。
Q/A∞(dT/dx) (2.2)
この比例定数を熱伝導率Kという。
Qん4 = -K (dT/dx) (2.3)
したがって、 熱伝導率Kは式(2.4)によって与えられる。
1( = Q/[A ・(dT/dx)] = Q ・ ムx/μ(T1・T2)] (2.4)
径方向の一次元熱伝導では、 式(2.3)は式(2.5)のようになる。
1( = Q ・ln(r九) /[2JtL(T1 -T2)] (2.5)
熱伝導率の単位はSI単位系では、 Wm-1K-1である。
(b)非定常熱流と熱拡散率
熱伝導率、 比熱容量および密度がK、c、 pの均質体内に直方体、 dx、 dy、 dz を考え、 非定常の熱流の出入りがある場合の温度の時間的変化(dT/ dt)を求める と、 次式が得られることが知られている。
(dT/dt) = (K/Cp)((θ2T/θ.r) + (δ2T/θy2) + (δ2T/θz2)) (2.6) 式(2.6)の定数(K/Cp)を熱拡散率αという。
α= K/ (C • p) (2.7)
(c • p)は単位体積当りの熱容量、 すなわち体積比熱Cに等!しいから、 式(2. 7)は、
α= K/C、 またはK=α・C (2.8)
熱拡散率αの単位は、 SI単位系では、 m2 S-lまたはcm2 S-lが使用される。
式(2.8)のように熱伝導率K、 熱拡散率α、 体積比熱Cは、 これらのうち、 二つ が既知であれば、 他のひとつは計算で求められる。 熱伝導率の測定はーよ般に困 難な場合が多いから、 熱拡散率と体積比熱を測定して、 it(2.8)から熱伝導率を 算出することが最近の傾向である10)0
(c)熱拡散率の測定原理
Fig. 5のような配置で、 小円板状試料(10 mm 直径、 1・3 mm厚さ)の表面に均 一にルビーレーザーのフラッシユ光(約800μsのパルス光)を照射する。Iこれに よって生ずる試料の温度上昇を、 試料の裏面で熱電対または赤外線センサーで 検出し、これを高速メモリー記録計で記録するとFig.6 のような温度応答曲線(模 式図)が得られる。
いま、 次のように仮定する。
1.試料が断熱的に保持され、 周囲に熱損失、 熱流入がない。
2. パルス光の照射時聞が、 試料の裏面の温度上昇に要する時間に比べて充分に 短い。
3.照射パルス光の強度分布が均一で、 試料表面の光吸収も均一であるo
- 74 -
4. 試料は均質で、 試料の温度上昇区間で熱定数が変化しない。
以上の仮説の下に、 一次元の熱伝導方程式を解くと、 試料の表面から距離x の面の時間 tにおける温度TはParkerにより次式で与えられる。
00
T(x, t) = Q/Cp・p・L ・ [1 + 2 2: cos( nnx/L )・exp( - n2n;2αt/L 2) ] (2.9) n=l
ここで、Q、 p、Cp、L、 αは単位面積当りのエネルギー吸収密度、 試料の密度、
定圧比熱容量、 厚さ、 熱拡散率である。
レーザ一光の照射後、 試料の裏面温度の上昇が再高値九の1/2に到達するま での時間(ハーフタイム)をt1/2とすれば、 次式より熱拡散率αが求められる 11)。
α = 1.37 · L 2/πt1/2 = 0.1388・L2/ t1/2 (2.10)
したがって、 熱拡散率 αはL と t1l2のみで決定されQ を知る必要はない。
(d) 熱拡散率の測定方法
本研究では、 熱拡散率測定は InSbセンサーを用いて温度を検出する非接触法に よって行った。 その手順を以下に示す。
1)試料の厚さ、 半径および重量を測定した。
2)レーザーが試料を透過するような場合には試料表面の黒化処理を施した。
3)試料を試料台(vブロック)に乗せ、 パーで上から押さえて固定した。
4)InSbセンサーに液体窒素を投入した。
5)真空排気後、 所定の温度で全自動測定を行った。
6)温度依存性測定では遮光板を試料裏面の近くに置いて測定した。
7)温度上昇に伴い感度は下げる(装置の数値を上げる )必要があり、 またサンプ リング速度は測定精度を上げるために妥当な値に設定する必要がある。
(e) 比熱容量の測定原理
比熱容量の測定は基本的に参照試料との比較によって求められる。 試料の比 熱、 密度をそれぞれCp[J g-l K-1]" p [g cm守、 とすると、 試料表面で吸収された
レーザーパルスのエネルギーQ[J cm-3]が既知ならば比熱は、
Cp = Q/p・L・ムTmax (2.11)
で表される。 ここで、 Lは試料厚さ 、 ムTmaxはレーザー照射時の最大温度であ る。 測定で得られる冷却曲線は指数関数的に減少するの
で
片対数で温度フ。ロットし、 t = 0 の時の切片をム丸山とする。 この値を標準試料と未知試料について 求め、 次式から比熱容量を求めた。
M2Cl乃=(ムTRTPT/ムTTPRT) • M2C2(Rη (2.12)
ここで、 Mは重量[g]、 Cは比熱容量[J g-lK-1]、 ムTは温度上昇度、 αはグラッシ ーカーボンの吸収係数、 Q はレーザーの照射エネルギー、 P はレーザーエネル ギーモニターの数値である。 なお、 添字の0、 1、 2 はそれぞれグラシーカーボ ン、 サファイア、 未知試料を示し、 c。、 C1は文献値を用いた。
(り比熱容量の測定方法
以下に比熱容量の測定手順を示す。
1)標準試料のサファイア(既知)を用い、 グラツシーカーボンをシリコングリー スで取り付けた。 シリコングリースは付け過ぎないようにし、 サファイアとグ ラツシーカーボンの聞に空気が入らないように注意した。 次に、 サファイア面 に熱電対(Pt-Pt13% Rh)を瞬間接着剤(高温測定の場合へ銀ペースト)で取り付けた。
以上の一連の操作においてグラツシーカーボン表面に触れないようにする。 こ れを試料台にセットして全自動測定を行い、 ムT1を求めた。
2)1)と同様にして未知試料のムT2も求めた。
3)ムT1とムT2 から式(2.12)を用いて室温の比熱容量を決定した。
4)温度上昇時の比熱容量は室温との相対評価により 行った。まず、真空排気後、
任意の温度に昇温して測定温度が安定するまで保持した。 定常になっでからレ ーザー照射し、 温度上昇度ムTT を求め、 この数値と室温での温度上昇度ムTRT から次式(2.13)を用いて各測定温度における比熱容量を求めた。
5)温度依存性測定においては常に感度を一定に保持し、 サンプリング速度およ び時間は適宜変える必要がある。
M2C2 = (ムT/ム九 ・ P2/Pl・1)MoCo + (ムTtlT2・ Pz/P1)M1C1 . (2.13)
- 76-
ただし、 P1、 P2はレーザーエネルギーモニターの読みである。
D) SEM(走査型電子顕微鏡)観察
(1) 測定方法
焼結体破断面や、 試料粉末の微細構造を観察した。 試料は直径10 mmのダイ スにのる程度に砕き、 銀ぺーストでダイス上に固定した。
(2) 実験装置
SEMは以下の装置を用いた。 装置の概要については省略する。
SEM T330 A(JEOL製)
E) XRD(粉末X回折装置)
(1)測定方法
粉末X線回折測定によって主として試料の同定を行った。 測定試料は十分に アルミナ乳鉢で粉砕し(指で触れたとき粒子を感じない状態まで)、 所定のガラ スホルダーにこすり つけて必要な回折角度(2θ)範囲で測定を行った。 線源、には CuKα線を用い、 管電圧40kV、 管電流100 mA の条件ナ測定を行った。 サンプ
リング角度、 速度は基本的にそれぞれ0.010 0 、 2.0 0 min,-lとした。
(2) 実験装置
XRDは以下の装置を用いた。 装置の概要については省略する。
XRD Rint1400 (RIGAKU製)
F) 相対密度
(1) 測定原理および方法
試料の相対密度は、 アルキメデス法により測定した12)。 それは「液中におけ る物体が排除した液体の重量に等ししìJというアルキメデスの原理を利用する ものである。 具体的には、 試料表面を研磨後、 アセトン中で超音波洗浄し、 乾 燥器中で乾燥して測定試料とした。 この乾燥重量(w)を電子天秤で測定した。
次に、 試料を蒸留水の入ったビーカー中に入れ、 真空排気して試料のオープン ポアを蒸留水で置換した。2 時間以上真空排気した後、 試料の水中における重 量(W')を測定し、 またこの時の水温Tを測定し、 水の密度 (PH20)を求めた。 真密 度dは次式で表される。
d = (W/ (W -W')) x向20 (2.15)
見かけの密度d' については試料の乾燥重量と見かけの形状から求めた。なお、
相対密度Dはdとd'から
D = (d/d') X 100 (2.16)
で与えられる。
2.3 結果及ぴ考察
2.3.1 電気的輸送特性
Fig.7 に (Znt_xAlx)O (x = 0, 0.005, 0.01, 0.02, 0.05)の導電率のアレニウスプロッ トを示す。ZnO の導電率は、7000Cまで、温度上昇に伴い急激に増大し、7000Cと 100QOCの間ではほぼ一定値を示した。 無添加ZnOの導電率のアレニウスプロッ
トから、7000Cまでの低温領域は不純物領域であり、10000Cでも内因性領域で はないことが読みとれる。 少量の Al203の添加によって、 導電率の挙動は半導 体的から金属的に変化し、 その値は無添加ZnOより室温で三桁以上増大した。
(Znt_xAlx)Oの導電率は、x= 0.02 までxの増大に伴い単調に増大し。Al添加量 をそれ以上増大させると減少した。 その結果、 (Zn O.98AlO.02)Oは全ての試料のな かで最も高い導電率の値を示した。 無添加ZnOを含む全ての試料は、 相対密度 が99 %以上の徽密な構造であった。 したがって、 焼結体の焼結度が導電率の遠 いの主な理由にはならない。
(Znt_xAlx)O(x = 0.005, 0.01, 0.02, 0.05)のSeebeck係数の温度依存性をFig. 8に 示す。全ての試料のSeebeck係数の値は、測定した全温度領域で負の値であり、
この試料がn 形伝導であることを示している。 無添加ZnOのSeebeck係数は、
室温から10000Cまで約・300・-400μV K-1の大きな負の値であり、 温度に依存し
- 78 -
なかった。一方、(Znl_xAlX)O(X > 0)のSeebeck係数の値はZnOの値より小さい。
しかし適度な大きさを維持し、室温における・100μVK-1の値から 10000Cにおけ る・200μVK・1の値まで、温度上昇に伴い絶対値が増大する傾向を示した。
(Znl_x AlX)O(X = 0, 0.005, 0.01, 0.02, 0.05)の室温におけるキャリア濃度をTable 1 に示す。全てのAl 原子がキャリア電子を供給すると仮定して、添加したAl203 量からキャリア濃度の値を計算した。無添加ZnOのキャリア濃度の測定値は1023 m-3であり、 一方、Al を添加した試料のキャリア濃度の測定値は 10おm-3の桁で あり、どれも6.5 -8 X 1025 m・3と同程度の値であった。Al203の添加によるキャ
リア濃度の増大は、n形ドービング、つまり半導体の原子価制御のためである と考えられる 口)0 ZnOへのAl203の添加は、n形ドービングすなわち半導体の 原子価制御の典型例として長年見なされてきた。けれども、キャリア濃度の実 測値と理論値を比較すると、どの添加量においても実験値は理論値より小さい。
しかも、実験値が添加量によらずほぼ一定なので、その相違は添加量の増大に 伴い増大する傾向にある。(Znl_XAlX)OのHall移動度 (μH)の温度依存性をFig. 9
に示す。 無添加 ZnOのHall移動度の値は65.6 cm2 V・1 S-lであり、 この値は酸化 物セラミックスの値としてはかなり大きいが、文献値と同等なので妥当な値で あると考えられる13)0 Hal1移動度の値のx依存性は特異であった。X = 0.005 と 0.01の試料のHal1移動度の値は、 無添加 ZnOの約半分であるが、添加するAl 量をより増大させるとHa11移動度の値の回復がおこった。
2.3.2 結晶相及び微細構造
以前に報告されている ZnO・Al203系に関する相図では、ZnO の端組成近くで 固溶領域はない。Al203・ZnO系の結晶相に関する最近の論文もAl203は ZnO に 溶解しない 凶と結論している。けれども、先に述べたように、ZnOへのAl203 の添加は、n形ドーピングまたは半導体の原子価制御の典型例として長年みな されてきた 13)。一般に相図の研究は、少なくとも数mol%の間隔で組成を変化 させて行われる。そのためドーピングレベルでの固溶の発生を調査することが できないと思われる。(Zn同AlX)O(x= 0, 0.005, 0.01, 0.02, 0.05)のXRDの測定結果 をFig. 10 に示す。回折パターンからx> 0.02 の試料は、Al203添加量が増大す るに伴い増大する微量の ZnAl204スビネル相を含み 、またAl203相はないこと がわかる。ZnAl204単相の試料を調製し、この結晶相が高い電気抵抗率を持つ ことを確認した。次にZnOへのAl203の固溶限を決定するためにAl-NMR測定
を行った。Al・NMR によりAlの配位数と環境の違いを決定することができる。
ZnOに固溶したAlの配位数は4である。一方、 α-AlZ()3(AlZ()3は 10000C以上で α-A12()3として存在する )中のAlの配位数は 6である。ZnAlZ()4中のAlは、 固溶 したA1とAlZ()3中のAlと異なる環境にある。したがって、 Al原子の 環境を調 査することによりAl原子の状態の違いを区別できる。Al-NMR測定 の結果は以 下の様である。Alを添加した全ての Zn()は配位数が4のAl原子とZnA1Z()4に 帰属されるAl を有し、 後者はAlZ()3 の添加量の 増大に伴い増大した。また、
α-Al2()3に帰属されるAlは存在しなかった。(ZnO.99SAlO.OOS)()の試料においても Z仏12()4に帰属されるAl が存在した。この測定結果から、 Zn()へのAl.の 固溶 限が (Znl_xAlX)()の組成式でx= 0.005より 小さいことを意味する。この結果は、
キャリア濃度はAlZ()3添加量が増大しても変化しないというキャリア濃度の測 定結果と一致する。したがって、 大変少量 (固溶限はx = 0.005以下)であるが、
ZnOにAlZ()3は固溶するとの結論に達する。また、 高い抵抗率を有するZnAl2() 4 相が、 x> 0.05でおこる導電率の 減少の 原因であると考えられる。
表面を研磨した後に 、 熱エッチング( 12000C x 20min )で処理を行った (Zn1_
xA1x)()(x = 0, 0.005, 0.01, 0.02, 0.05)のSEM観察を行った。その結果をFig. 12に 示す。無添加Zn()は、 平坦な表面を有する単純な粒子から構成されている。し かし、 x = 0.005とx = 0.01の試料を構成する粒子は、 それぞれ、 層状構造と凹 凸の 多い構造をしている。これらの 構造では、 無添加Zn()より粒界が多く存在 するため、 この構造が原因でHall 移動度の値が減少すると考えられる。一方、
より多くのAlを添加した試料 (x = 0.02と 0.05)の粒子の状態はお互いに類似し ているが、 粒子の大きさはx = 0.05の試料のほうがx = 0.02の試料より少し小 さい。しかし、 これらの試料の粒子の大きさは無添加Zn()の粒子の大きさと同 程度である。よって、 無添加Zn()、 x = 0.02、 x = 0.05のHall移動度の値が同程 度なの は、 構成する粒子の大きさが類似しているためと考えられる。
2.3.3 電気的熱電性能
(Znl_xAlX)()(X = 0, 0.005, 0.01, 0.02, 0.05)の出力因子の温度依存性をFig. 13に示 す。出力因子は、 全熱電性能の なかで電気的な熱電性能を 表す。無添加Zn()の 出力因子の値は、 温度上昇に伴い導電率が大きく増大するために増大した。無 添加Zn()の最大の出力因子の値は、 10000Cでの 3.68x 10・4.W m-1 K-zであった。
との出力因子の値は酸化物材料の値としてはかなり大きい。全ての AlZ()3添加
- 80 -
ZnOの出力因子は、 室温から10000Cまでの広い温度領域で8・15x 10・4 W m-1 K-1 の非常に大きな値を示した。 これらの値は、 熱電材料として実用化するには不 十分な性能ではあるが、 高温用の熱電材料として提案されている、 非酸化物で あるβFe Si2やß-SiC均の値より大きい。 この (Znl_xAIX)Oの大きな出力因子の値は、
この酸化物が、 一 般にイオン結合性材料としてみなされている金属酸化物とは 異なる電気的輸送 特性を有することを示す。
外因性 n形半導体の単純な 2バンドモデルを考えた場合、 導電率と Seebeck 係数は以下の式で表される。
S = neμ
S=・(k/e)[ln (N)n) + A]
(3. 1) (3.2)
ここで、n はキャリアの電子濃度、e はキャリアの電荷、μはキャリア移動度、
kはBoltzmann定数、 Nv は状態密度 (DOS: density of states}、 A は輸送定数 (一般 にO<A <2)である。 式(3.1)と式(3.2)より、 以下の式が得られる。
S=ー(k/e)1na一(k/e)ln[Nveμ exp (A)] (3.3)
もし、 移動度、 状態密度、 伝導機構がキャリア濃度が変化しでも影響を受けな いならば、 式(3.3)の第二項は一定値であるとみなすことができるo S vs 1noのプ ロットは、 状態密度と移動度の積によってきまる切片をもっ、 +k/ le Iすなわち +86.17μVK-1の傾きをもっ直線を示す。このプロットは"Jo此er plot"と呼ばれる。
(Znl_XAIX)Oの10000CにおけるJonker plot をFig. 14に示す。(Znl_XAIX)Oのグラフ のx切片は12.4と、 他の良導電性酸化物よりかなり大きい。 この値が大きいと S20が大きくなるので、電気的熱電特性が優れているといえる。
2.3.4 熱的輸送特性
熱伝導率は、 材料の熱電性能を評価するために基本的なパラメータの一つで あり、 金属の場合のように高い導電率による有利性を相殺することがある。Fig.
15に示すように、 この酸化物の熱伝導率の値は、 室温で約40 W m-1 K-1とかな り高く、 温度上昇に伴い減少し10000Cで約5W m-1 K-1になる。 一般
に
、 金属酸化物の熱伝導率は、 原子量の比M/ O(Mは金属原子)が 1 に近づくにつれて大
きくなる。 また、 単位胞が小さく、 結晶構造 が 単純なほど格子振動、 づまり、
フォノン による熱伝導 が高く なる結果となる。 ZnOの結晶構造 は、 単純な六方 晶のウルツ紘型構造 なので、 熱伝導率の値が大きいことが予想され、 実際 に大 きい値が観測された。 こ れまで に実用されて いる熱電材料の熱伝導率 は、 一般 に約1-3W m-1K-1であり、 (Zn1_xAlX)Oの熱伝導率の値は熱電材料として応用する ために は致命的に大きな値である。
性能指数を決定する三つのパラメータである、 導電率、 Seebeck係数、 熱伝 導率 は、 すべてキャリア濃度の 関数である。 広いバンドの半導体モデルを仮定 すると、 キャリア濃度の増大 は、 導電率を増大させ、 Seebeck係数の絶対値を 減少させるoIoffe叫によると、 キャリア濃度 が一定の場合、 性能指数の値は物 質因子 (ß)によって決定される。
ß = T5/2mつ/2μ/K ph (3.4)
ここでTは絶対温度、 m ・はキャリアの有効質量、 μ は移動度、 K phは格子熱伝 導率である。 この式から、 大きな有効質量、 高い移動度小さな格子熱伝導率を 有することが望ま し いことがわかる。 一般に大きなキャリア移動度の値となる には、 有効質量の値が小さいことが要求される。 しかし、 音響フオノン散乱よ り不純物散乱 がキャリア散乱の支配的な機構であるとき、 移動度の増大の効果 のほうが相当する有効質量の減少の効果 に打ち勝ち1乃物質因子の値は大きく な る。 一般に、 構成原子 聞の電気陰性度の差が小さいと移動度の値が大きい。 ま た、 構成原子 がより重く、 かつ 単位胞が大きいほど、 フホノン熱伝導率を が小 さくなる。Cail1atら は、 こ れらの概念をもとに二元系化合物を調査し、 極端に 大きな移動度を有する次世代の熱電材料としてCoSb318)、IrSb319)、 RuSb320)のよ うなSkutterudite関連化合物を発見した。 上記に示 した様に、 ZnO はかなり軽 い原子と単純な結晶構造を有するために、ZnO系酸化物 は高い熱伝導率を示す。
けれども、 Zn-O聞の電気陰性度の差が、 かなり小さいため他の金属酸化物と比 較してM-O結合の共有結合性 が強い結果となる。 ZnOのイオン半径
の
比例カチオン)/r(アニオン))は0.53である。 幾何学的に は、0.414以上の値のとき、 6 肥位となることが予想される。 した がって、 も し Zn-O結合 が十分にイオン的 ならば、 ZnOは6配位となる はずである。 けれども、 実際のZnOは、 Zn 個の酸素原子 が配位 したウルツ鉱型構造を有する。 ウルツ鉱型構造を有する
- 82 -
ZnO中の化学結合の強い指向性は、 Znが d10の閉殻構造を有するため 4配位性 を示すSp3混成軌道を形成することが原因である。 この結果として Znは酸化物 でありながら、 かなり共有結合性の強い化学結合を形成するo M・0結合のイオ ン性の割合を示すイオン化性度は、 ZnOでは0.6221)、 岩塩型構造を有するMgO では0.8421)であることが報告されている。 酸化物材料としてはかなり大きな (Znl_xA1JOの性能指数の値は、 以上の理由で高い移動度の値を有することが原 因で発生すると考えられる。
熱伝導率の値は、 微細構造や不純物のような外図的な要因で大きく変化する。
固体の全熱伝導率(K)は次のように与えられる。
1( = K el + K ph (3.5)
ここで、 KelとKphはそれぞれ、 キャリアと格子の熱伝導
率
である。 Debye22)と Peierls22) �こより、 フオノン熱伝導率はDebye 温度(一般に室温以下)以上でT -1に 比例することが報告されている。 (ZnO.98Al.02O )Oの熱伝導率の温度依存性は、Fig.16に示すように、 T -1 に比例することから、 全熱伝導率中でフォノン熱伝導率 が主要な寄与であることがわかる。 いくつかの導電性酸化物で、 フォλン熱伝 導率が主要な寄与であることが確かめられている お)0 Wiedemann-Franz則(Kel
=LaT (Lはいre nz数))により見積もられるキャリア熱伝導率の値がかなり小さ
いことからもフォノン熱伝導率の寄与が大きいことがわかる。 半導体の場合、
全熱伝導率のうちでキャリア熱伝導率の寄与は最も大きくても数%で、 フオノ ン熱伝導率の寄与は少なくとも90 %以上であることが知られており、 本研究で 得られた結果と一致する。 したがって、 フオノン熱伝導率を低減させることが、
大きく電気的特性を損なうことなく(Zn1_xAlX)Oの熱伝導率を効果的に減少させ る方法として望ましい。 この考え方が正しいことは、Al203の添加によりキャ リア濃度が増大して導電率の値が大きく増大しても、 熱伝導率の値はA1203の 添加量の増大に伴い減少する、 Fig.15 の熱伝導率の結果からわかる。
2.3.5
熱電性能
(Zn1_xAlX)O(x = 0 , 0.02, 0.05)の性能指数の温度依存性をFig.17に示す。 x= 0.02
と0.05 の性能指数の値は、 温度上昇に伴い、 増大し、 10000Cで0.24x 10・3 K-1の 最大値に達した。この値は、報告されているやSiC均の値より大きく、また約6000C
で最大値を示すことが報告されてる0・FeSi2 と同じ大きさである。 この性能指 数の結果は、この酸化物の電気的特性が、大きな熱伝導率の値をうち消すほど に優れていることを示す。
(Znl_xA1x)O(x = 0, 0.02, 0.05)の無次元性能指数 (ZT)の温度依存性をFig.18に示 すo X = 0.02とx = 0.05の試料の無次元性能指数の値は、室温から10000Cまで の温度領域で、無添加 ZnOよりかなり大きいo X = 0.02の試料は、熱電材料と しては高い熱伝導率を有するにもかかわらず、10000CでZT= 0.30の最大値とな った。このZT= 0.30の値は実用熱電材料に要求される標準のおよそ1/3である。
けれども、この酸化物の場合、フオノン熱伝導率が主要な寄与である非常に大 きな熱伝導率を有するにもかかわらず、このような無次元性能指数の値に達し た。 電気的特性を損ねることなくフオノン熱伝導率を低減させることに効果的 な方法が多く報告されているので、(Znl_xA1x)Oの無次元性能指数の値をさらに 改善することができると予想される。
2.4 結言
(Znl_xA1x)Oの熱電特性を調査した。 無添加 ZnOの導電率は半導体的挙動を示 し、一方、(Zn1_xA1x)O( 0< x � 0.05)の導電率は、無添加 ZnOの値に比べて室温で 三桁以上大きく、金属的挙動を示した。一方、A1203の添加により、ZnOのSeebeck 係数の絶対値の値は減少した。 しかし、室温で約100μVK-1から10000Cで約 200 μVK-1 まで、温度上昇に伴い徐々に増大する傾向を示し、Jその絶対値は適度な 値であった。 この結果は、A1203 の添加によりキャリア濃度が増大することに よって説明できる。 ZnOへのA1の固溶は、キャリア濃度とA1-NMRの結果か ら、(Znl_xA1x)Oでx = 0.005以下であると考えられる。 HaU移動度のx依存性は 特異である。 ぞれは粒子構造に関係していると考えられる。 全ての A1を添加 した試料の出力因子は、室温から10000Cの温度領域で、8-15X 10-4 W m-1 K-2の 非常に大きな値であった。 この値は、これまでに報告された酸化物の
値
の中で、最も大きく、高温用非酸化物新規材料として広く研究されているß-FeSi2やβSiC の値にまさる。 熱伝導率は、室温における約 40 W m-1 K-1から10000Cにおける 約5W m-1 K-1まで、温度上昇に伴い減少し、かつA1203の添加量の増大に伴い 減少した。 大きな熱伝導率の値にもかかわらず、x = 0.02 の酸化物は、10000C
でz = 0.24 x 10・3 K-\ ZT = 0.30の値に達した。 この非常に高い熱電性能は、こ の酸化物中の ( 金属 )・ (酸素)結合がかなり共有結合性が高いことが原因で、キヤ
- 84-
リア移動度が高い値となるためと考えられる。(Znl_xA1x)Oの熱伝導率の値は、
他の熱電材料と比較しでかなり大きく、 また、 フオノン熱伝導率が(Znl_xA1x)O の全熱伝導率中の主要な寄与であることが明らかにされた。 したがって、 いく つかの事例で効果的であることが証明されている、 電気的特性に深刻な影響を 与えることなくフォノン熱伝導率を減少させる手法を適用できれば、(Znl_xA1x)O の無次元性能指数の値はさらに改善すると予想される。
引用文献
1) w. J. Mack1in, P. T. Moseley, Mater. Sci. Eng., B7 111 (1990) 2) T. o. Mason, Mater. Sci. Enι, B10 257 (1991)
3) W. J. Mack1in, P. T. Moseley, Mater. Sci. Eng., B10 260 (1991) 4) C. G. Fonstad, R. H. Rediker, J. Appl. Phys., 42 2911 (1971)
5) M. Ohtaki, D. Ogura, K. Eguchi, H. Arai, J. Mater. Chem., 4653 (1994)
6) M. Ohtaki, H. Koga, T. Tokunaga, K. Eguchi, H. Arai, J. Solid State Chem., 120 105 (1995)
7) S. J. Jung, H. Ohsawa, Y. Nakamura, et al., J. Electrochem. Soc., 141 53 (1994)
8) S. N. Bai, T. Y. Tseng, J. Appl. Phys., 74 695 (1993)
9) M. Ohtはi,T. Tsubota, K. Eguchi, H. Arai, J. Appl. Phys., 79 1816 (1996)
10)前園明ー,“セラミックスおよび薄膜の熱伝導率の測定ヘ第108回ニューセ ラミックス懇話会研究会資料(1993)
11)上村欣一, 西田勲夫J4熱電半導体とその応用ぺ序文, 日刊工業新聞社 (1988)
12)セラミックス編集委員会講座小委員会,“セラミックスのキャラクタリゼー ション技術",社団法人日本セラミックス協会(1991)
13) M. Nakamura, N. Kimizuka, T. Mohri, M. Isobe, J. Solid St,αte Chem., 105 535 (1993)
14) G. Heiland, E.Mollwo, F. Stuökmann, Solid State Phys., 8 191 (1959)
15) K. Koumoto, M. Shimohigasi, S. Takeda, H. Yanagida, J. M,αter. Sci. Lett., 6 1453 (1987)
16) A. F. 10妊'e: Semiconductor Thermoelements and Tl1ermoelectric Çooling.
Infosearch Limited, London (1957)
17) J. F. Nakahara, T. Takeshita, M. J. Tschetter, B. J. Beaudry, K. A. Gschneidner Jr.,
J.Appl. Phys., 63 2331 (1988)
18) T. Caillat, A. Borshchevsky, J.-P. Fleurial: Proc. 13th Int. Conf. Thermoelectrics.
Kansas City (1994)
19) T. Caillat, A. Borshchevsky, J.-P. Fleurial: Proc. 13th Int. 'Conf. Thermoelectrics.
Kansas City (1994).
20) T. Caillat, A. Borshchevsky, J.-P. Fleurial: Proc. 13th Int. Conf. Thermoelectrics.
Kansas City (1994).
- 86 -
21) 1. C. Phillips, Rev. Mod. Phys., 42 317 (1970)
22) c. Kittel: Introduction to Solid State Physics, 6th edition. John Wiley & Sons, Inc.,
New Y ork (1986)
23) M. E. Fine, N. Hsieh, J. Am. Cerαm・Soc.,57502 (1974)
24)小椋大輔,修士論文, 九州大学総合理工学研究科材料開発工学専攻(1993)
Table 1 Carrier concentrations of (Zn1・xA1x)O.
n
/ 1025m-3
X
observed value theoretical value
。 0.052
0.005 6.5 18
0.01 7.7 37
0.02 7.2 74
0.05 6.5 193
- 88 -
出発原料 各単独酸化物 +
所定量に秤量 +
粉砕混合 (ボ-fミル、制
等方静水圧成形(1 1 84kgf/cm 2) +
焼結(1 4000C
X1 Oh大気中)
Fig. 1 Sample preparation.
d〆__. Pt線← 、
�
Fig. 2 Element for measurement of electrical conductivity and Seebeck coefficient.
- 90-
(a)
。田市S機\麟機騒\
Gu也
砂ωω
α)()ling plpo
lta温旭. tube
、‘,ノLU /SE、、
/加すIc "'"
Fig.3 Apparatus for measurement of elE�ctrical cbnductivity
and Seebeck coefficient24).
SW.II I 、 .司、 �・ � I‘sw.
R句叫邸dDCI I ��副刷出�- I powa
supplyI I白emtomet町I 1
I w.._..., u._wI IRegu凶“ DC
I
I powcr
lupplya)ゼーペック係数測定時 b)導電率測定時
Fig. 4 Electrical circuit for measurement of
electrical conductivity and Seebeck coefficient24).
- 92 -
Laser
pulse Infrared ternperature sensor
Hi�h speed mernory recorder
一ー一ー・ー -・園田園圃・・園町島・
ーーー-・
九・lili
-- 『,a ・
3tl!1111 - μ
一 -A E
- a F・圃t z的Eh向114UF-r「
EZEωaEωト4tl
Amplifier
(HaIC tirne�
method
11).Time
-
Fig. 5 Laser flash
2[仁:コ'-_二二:二二二二:二ご
T抗. . 叶トト-- ・・ ?一一-
-・ι・ ・ EE--島za-
九一20:61ヒι一
2, 3 時間1/1,・2.c 5 6'
7 8 9 10Fig. 6 Temperature response11).
- 94 -
T / oc
1000 400 200 100 0
IIT一I I i i i i T
3.0 [ -'l・" 壁 tHt ð th 、 、 ー も 空
I ftt[b口口 口口 口口 口 u
u�,.-...
2.0 ト ー陶..・ ・・ ・・ ・ ・
S L
三 | α丈00_
言 1.0 I -
b.O I
ー0.0ト
。『
ー
ー
-同
ー
。。
ー
ー
。
← 。 。
ー
国1.0ト
。ー
1
一 」司、ν K
-
L/
一 T
ι2
m 4
Fig. 7 Arrhenius plots of electrical conductivities of (Zn1・xA1x)O.
x: 0,0; _,0.005;口,0.0 1 ;・,0.02;ム,0.05
門・5 ・ ,ω - 内G au ah -Aロ.
,勾 ・4町 川bp「l ・掴ζ .-A口
nu nU ハU ハU ハU ハU
ハU ハU
1i 勺ん 弓3 A『
同l凶〉ミミguuMωoυu-83ωω∞
。
。 。
。 。
。。 。
。
。
。
1000
Fig. 8 Seebeck coefficients of (Zn1・xA1x)O
400 600 800 T / oc -500 0 200
as a function of temperature.
x: 0, 0;・,0.005;口,0.01;・,0.02;ム,0.05
- 96 -
•
0.01
『
ー
0.06
『
圃
-岡
圃 ー ー ー
•
0.05
Fig.9 Hall mobility of (Zn1・xA1x)O
0.04 0.03
X
•
0.02
T
• T
ト
80ト
ト・
20ト
ト
40ト
ト
ハU nu
100
-lp 〉 NS ど
ミ
as a function of x a t room temperature.
。
kp帽のロow口同
。
。
I !
。ロ
。: ZnO
ム: ZnAl204 口:α-Al203
同d・川山内
。 。日斗」ぷ札f � 1:'ロロ � x= 0.05
��x=0.02
10 20 40 60 80
4i ζJ nu ハU ハu 、川U
x x 一一 一一 一一 nu nU
xo
d汁llパE||d
Qノ
2θ/。
Fig. 1 0 Powder X-ray diffraction patterns of (Zn1・xA1x)O.
-98・
VV
150 100 50 。 -50
ð/ppm
Fig. 11 27 AI MAS NMR spectra of (a) x
=0.005,
(b)
x =0.02, (c) x
=0.10 for (Zn1・xA1x)O and (d) ZnAI204, ( e)α-A1203・
(e)
(d)
-100
The arrowheads indicate the spinning side bands.
5μm Fig. 6 SEM images of ZnO.
20μm
、1ノ 。 RU ハu nu ハU ua m創
Fb
F3 ny
GJ n ハU 7ι 〆'E、
F宇1 0
e CM nuu
内d
M m
「E CU
弓/」
4EEE
nヨ 「「
- 100 -
20μm 5μm
。 、EEノ 4 .. E ハU ハU A QJ QJ ハU n 7ムr'E、 rTt O CM e nuu a m M 「E 戸、u 弓ζ 4・EE GU 「「
5μm 5μm
Fig. 1 2 SEM images of (Znl_XA1x)O.
(a) x
=0.02
(b) x
=0.05
•
1000 LJ
0 ð
800
Fig. 13 Power factors of (Zn1・xA1x}O
- A
ロ ロ
•
。
• A
•
。 ロ
ぞう
• ð ロ
•
-oû__Q
200 400 600
T / oc
ロ ð
• o 0
•
口
a
•
@
ロ A
•
•
• ロ ð
• -ロl
. [ .]
•
25
AQ A nu ξJ nu ウム 1ょ 1ょ -U向日区。ごいSυ忍む律。《阿川一 円
寸 nu nu
5
as a function of temperature.
x: 0, 0;・,0.005;口,0.01 ;・,0.02;ム,0.05
- 102 -
600
\ •
\ \ \ \ \ \ \ \ \ \
(La, Sr)Cr03
….y系超伝導酸化物 一-一一Bi系超伝導酸化物 500
400
300 200
-l 凶 〉 ュ こ 同
\ \
\ 100
10 12
ln (σ/Sm-1)
nu fo 8
Fig. 14 Jonker plot for (Zn1・xA1x)O at 1000oC.
。
き 。
�
Oð
•
• む
50 10
40
20
10
HIM 30
- 田区 三
1000
Fig. 1 5 Thermal conductivities of (Zn1圃xA1x)O
800 400 600
T / oc
ハunu 200
as a function of temperature.
x:
0, 0;・,0.02;ム,0.05
- 104 -
40
,。 /
30
。
20 10-1M lg一区
ミ
4.0
Fig. 1 6 Thermal conductivity of (ZnO .98A10 .02)0
2.0
3.0103T-Y
K・1
1.0as a function of inverse temperature.
e, 1(; 0, 1( ph
�0.3
寸 T T I T•
0.2 ,PA
-ー-・
�
管内b
・ .A
'圃吋
N
A . . ð0.1
ð ßA •
A A •
・,..
。 o 。 。E OO 。
0.05
.200 400 600
.800 1000
T / oc
Fig. 17 Figures of merit of (Zn1・xA1x)O as a function of temperature.
x: 0, 0;・,0.02;ム,0.05
- 106 -
0.4
0.3 同0.2
0.1
、空空
-A
400 600
T jOC
�
空
•
. ð.
ð
Fig. 1 8 Dimensionless figures of m erit of
(Zn1・xA1x}O as a function of temperature.
x: 0, 0;・, 0.02;ム, 0.05
第三章 (Znt_xMJO (M = A1, Ga, In)の熱電特性
3. 1 緒言
(Znt_xA1x)O叫が他の酸化物と比較して 大変高い熱電性能を有することを先に 報告した。 ZnOに A1203を添加することにより 、Seebeck係数は適度な値で保っ
たまま 、 導電率が著しく増大する。 その結果、 (Znt_xA1x)Oの出力因子は非常に 大きい値とな る。 我々は(Zn1_xA1x)O(0.02くXく0.05)の多結晶試料が、 大きな値の 移動度を有する ために 大きな出力因子を有することを明らかにした。 けれども 、 この試料は熱伝導率が大きいので、 性能指数の値はそれほど大きくな らない。
(Znt_xAlx)Oの熱伝導率熱伝導率が大きいのは、 結晶構造が単純で、 構成元素が 軽元素であることが理由であると考えられる。 格子熱伝導率がこの酸化物の熱 伝導率の中で主要な要素であることを確認した。 もし、 フオノン散乱中心を 、 電荷担体を散乱することなく効果的に導入できれば、 この材料の性能指数は大
きく改善されると考えられる。 より重い元素により導入された点欠陥は、 フォ ノン散乱により効果的なので、 本研究ではドーパントとして 、 A1 より重い13 族元素であるGaとIn を使用して熱伝導率を低減することを試みた。
3.2 実験
(ZnO.98Mo.02)O(M = Al, Ga, In)を ZnO、 Al203 、Ga203 、In 203の粉末から調製した。
これらの出発原料の酸化物をボールミルで24時間粉砕混合した。 その混合粉 末をべレツトに成形し、14000C x 10h大気中で焼結させた。 昇温速度および降 温速度は2000C h-1とした。 得られた試料の結品相は、 X線回折(XRD, Rigaku
RINT・1400)で同定した。 全ての試料の相対密度は、 アルキメデス法により測定 した。 導電率とSeebeck 係数は、 第二章と 同じ方法で室温から1000 oCまで大
気中で同時に測定した。 測定方法の詳細は既報に示す九熱伝導率はレーザー フラッシユ法 (ULVAC TC・7000)で測定した。 Hall測定は室温でvan der Pauw法 により測定した。
3.3 結果及び考察
3.3.1 電気的輸送特性
(ZnO.98A1o.02)O(M = A1, Ga, In)の導電率のアレニウスプロットをFig.1 に示す。 全ての試料の相対密度は99 %以上であった。 全ての試料は徽密な構造を有する
- 108 -
ので、焼結試料の微細構造の違いは導電率の違いの主要な理由とはならない。
我々は、ZnOへの A1 のドーピングが導電率を増大させ、導電率の温度依存性 を半導体的から金属的に変化させることを報告した向。 ドープした試料の導電 率の値の序列は、A1> Ga > In >> 無添加ZnOとな った。 つまり、ドーパント原 子の原子量の増大に伴い導電率は減少した。
Fig. 2に(ZnO.98Mo.02)O(M= A1, Ga, In)のSeebeck係数の温度依存性を示す。 ドー プした試料のSeebeck係数の絶対値は、無添加ZnOの値より小さく、10000Cま で温度上昇に伴い徐々に増大する傾向を示した。 Seebeck 係数の絶対値の序列 は、無添加 ZnO>>In>Ga今A1であった。 Seebeck 係数の絶対値と導電率のドー パント依存性は逆であることがわかる。
原子価制御の理論によると、ZnOへの三価の元素は過剰な電子を供給し、そ の結果として導電率が増大する。 これらの試料のキャリア濃度 (n )と Hall 移動 度(向)を評価するために、(ZnO.98Mo.02)O(M= A1, Ga, In)のHall係数を測定した。
室温におけるキャリア濃度とHall移動度の値をTable1 に示す。 無添加ZnOの キャリア濃度の値は1023m-3であった。 ZnOは格子間Zn 原子を有する非化学量 論化合物であり、その格子間 Zn 原子がキャリア電子を供給する。 全ての添加 試料は10おm-3 の桁のキャリア濃度を有していた。
無添加ZnOが67 cm2V-1s-1の大きなHall移動度を有することは特筆に値する。
以前の報告3)で、(Zn1_xA1x)O(0.02くx< 0.05)が無添加ZnOと同等の高い移動度を 有し、Zn-O結合がかなり共有結合性が高いことが高い電気的輸送特性の原因で あると考えられることを報告した。 けれども、Gaまたは In をドープした試料 のHall移動度の値はA1をドープした試料の値の半分以下である。 Gaをドープ した試料の Hall 移動度の値がA1をドープした試料より小さいことにより、Ga をドービングした場合の導電率の上昇が小さいことを説明でき、またIn をドー プした試料の導電率が最も低い値なのは、キャリア濃度と\'Hall移動度め両方が 小さいことが原因である。
(ZnO.98Mo.02)O(M = A1, Ga, In)の出力因子の温度依存性をFig.3に示す。 どの13 族元素を添加してもZnOの出力因子は増大した。 導電率が大きく増大し、かっ Seebeck係数の減少が比較的小さいことが、この改善の原因である。 けれども、
(ZnO.98MO.02)O(M = Ga, In)の出力因子の値は、(Zn o.98A1o.o2)Oの値の約半分である。
3.3.2 熱的輸送特性
(ZnO.98Mo.02)O(M = A1, Ga, In)の熱伝導率の温度依存性をFig.4に示す。 全ての 試料の熱伝導率は温度上昇に伴い減少し、1 0000Cで約5W m-1 K-1に収束した。
Fig. 4からドープした試料の熱伝導率は低い温度領域で、無添加ZnOの値より明 らかに小さいことがわかる。特に、(ZnO.98Mo.02)O(M= Ga or In)の熱伝導率の値は、
無添加 ZnO の値の半分以下である。 固体材料の熱伝導率 (K)はキャリア熱伝導 率(Kel)と格子熱伝導率(Kph)から成る。
K = K_\ I + IC • '''ph (4.1)
フォノン熱伝導率はDebye 温度 (一般に室温以下)以上の温度では温度の逆数に 比例することが知られている九(ZnO.98MO.02)O(M= A1, Ga, In)の熱伝導率の温度 の逆数依存性は良好な線形関係を示す。 この結果から熱伝導率の大部分がフオ ノン熱伝導率であることがわかる。 また、Wiedeman n-Franz則(K;巴1 = LσT, Lは Lorentz数)で見積もられたキャリア熱伝導率の寄与が小さいことが Fig.5で確 かめられた。 いくつかの導電性酸化物でキャリア熱伝導率の寄与が小さいこと は既に確かめられている九(ZnO.98Mo.02)O(M= Ga or In)の熱伝導率の低減は、フ オノン熱伝導率の低減によることが確かめられた。 我々が予想したように、A1 と電子配置が同じで、より原子量が重い13族元素を添加することによりフオ ノン散乱が増大することを、Ga またはIn を添加することによって確かめた。
しかし、我々の予想に反して、電気的輸送特性も影響を受け、特にHall移動度 が減少した。
3.3.3 熱電性能
導電率、Seebeck係数、熱伝導率から計算した、(ZnO.98Mo.02)O(M= A1, Ga, In) の性能指数をFig. 6に示す。A1をドープした試料は、測定した全温度領域で最 も大きな性能指数の値を示した。 出力因子の減少にもかかわらず、熱伝導率が 低減したため、(ZnO.98Mo.02)O(M= Ga, In)の性能指数の値は、約6000CまでA1を ドープした試料と同程度である。 けれども、これらの試料の熱伝導率の値は、
温度上昇に伴い収束するので、(Zn o.98A1o.o2)Oは6000C以上でGaやIn をドープ した試料より大きな性能指数の値を有する。
3.4 結言
- 110 -
(ZnO.98Mo.02) O(M = Al, Ga, In)の熱電特性を調査した。 ZnOへの13族元素の添 加により、 導電率は著しく増大し、 Seebeck 係数の絶対値の減少はわずかであ ったので、 出力因子が増大した。 これらの試料の導電率の値は、 Al> Ga> In>>
無添加ZnOとなった。 この序列は、 キャリア濃度とHal1移動度の結果と一致 する。 GaまたはInのドーピングにより、 フォノン熱伝導率の低減による熱伝 導率の抑制に成功した。 その結果、 GaまたはInをドープした試料の性能指数 は出力因子の減少にも関わらず、 6000CまでAlをドープした試料と同等であっ た。 効果的なキャリアドーピングと熱伝導率の抑制の両立がZnO系熱電材料の 性能指数の改善に要求される。
引用文献
1) M. Ohtaki, T. Tsubota, K. Eguchi, H. Arai, J. Appl. Phys., 79, 1816 (1996)
2) M. Ohtaki, T. Tsubota, K. Eguchi H. Arai, Proc. 14th Int. Conf Thermoelectrics, A.
F. 10百e Physical-Technical Institute, St. Petersburg (1995)
3) T. Tsubota, M. Ohtはj,K. Eguchi, H. Arai, J. MIαter. Chem., 7 85, (1997)
4) M. Oht汰j,D. Ogura, K. Eguchi, H. Arai, J. Mαter. Chem., 4, 653 (1994)
5) C. Kittel,“Introduction to Solid State Physics 5th edition", John Wiley & Sons, Inc.,
New York (1976)
6) M. E. Fine, N. Hasieh, J. Am. Cerαm. Soc., 57 502 (1974)
- 112 -
Table 1 Carrier concentration
riand
Hall mobilityμH fo r (ZnO .98 MO . 0 2 ) 0
M
n/ 1025m・3μH / cm2V-1s-1
zn 0.052 67
Al 7.2 81
Ga 7.2 33
h 3 . 2 36
切・