九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
シリコン結晶中の微小欠陥とその評価に関する研究
佐道, 泰造
九州大学工学研究科電気工学専攻
https://doi.org/10.11501/3099866
)t
. . . .
M
ω
.t.
旬
c 、
?E
、〈
シリコン結晶中の微小欠陥と その評価に関する研究
佐 道 泰 造
目 次
第 l章 序 論 .. . • . . • • • . . . • . . . • . • • . . • . . • . • • • . • • • •• 1 1.1 研 究 の 背 景 と 目 的 . . • . • • • • . . • • . . • . • • . . • • • • • .• 1 1.2 本 論 文 の 要 旨 と 構 成 .• • . • • . . . • . . • . • • • • . • ••
7
第
2
章 ノ 〈 ナ ジ ウ ム が 形 成 す る 欠 陥 の 評 価 . . • . . • • . . • • • • • • • "1 0 2 . 1
緒 言 . . • . . . • . • . . • • . • . . . • • . • . • . . • • • . • • • •.1 0
2.2 実 験 方 法 . . . • . • . • . • . . . • . . • • . . . . • • • • • • • • ..
1 0 2 . 3
バ ナ ジ ウ ム が 形 成 す る 捕 獲 中 心 の 電 気 的 性 質 . . • . . . • • . ••1 3 2 . 3 . 1
典 型 的 な DLTSス ペ ク ト ル と 捕 獲 中 心 の 濃 度 分 布 .• • • ••1 3 2 . 3 . 2
格 子 閤 バ ナ ジ ウ ム の 多 重 準 位 の 確 認 .• . • • • • • • • • • ..2 0 2 . 3 . 3
格 子 関 パ ナ ジ ウ ム の ア ク セ プ タ ー ・ ド ナ ー 判 別 . . • • • • •2 2 2 . 3
.4 格 子 間 バ ナ ジ ウ ム の 捕 獲 断 面 積 .• • • • . • . . . • • . ..2 5 2 . 3 . 5
格 子 間 パ ナ ジ ウ ム の 熱 放 出 率 . . . . • . . • . • . . . • • . • •2 7 2
.4 格 子 間 バ ナ ジ ウ ム の 拡 散 係 数 と 固 溶 度 .• • • . . • • • . • • • .•2 9 2
.4. 1
導 入 実 験(In‑Dif T
usion) ...2 9
2.4.2 外 方 拡 散 実 験(Out‑Di
f T
usion). . . ..3 3
2.5 3d遷 移 金 属 の 拡 散 係 数 の 傾 向 . . . • . . • . • . . . • • . • • • •.4 0 2 . 6
結 言 .• . • . . • • • . • . • . . . • . . . . • • . . • . • • . • . • •.4 3
第3章 重 金 属 と 水 素 が 形 成 す る 複 合 欠 陥 の 評 価 . . • . • . . • . • • . • .
4 4
3 . 1
緒 言 .• . • • • • • . . . • • . . . • . • . . • • • . . • . . • . • • .•4 4
3 . 2
パ ナ ジ ウ ム と 水 素 が 形 成 す る 複 合 欠 陥 の 性 質 と 同 定 .• • • • • •4 5
3 . 2 . 1
実 験 方 法 .• • • • • . . . • . • . • • • • • • • . • . • • • • • • •4 5
3 . 2 . 2
熱 処 理 実 験 .• • • • • • • • • • • • • • • . . • • • • • • . . • • •4 9
3 . 2 . 3
化 学 処 理 実 験 • • • • • • • . • . • • • . • • • • . • • • • • • ••5 1
3 . 2
.4 水 素 プ ラ ズ マ 処 理 実 験 .• • • • • . • • • • . . • • • • • • • . •6 0
3 . 2 . 5
考 察 .•. ... ..."・・・. . . .6 3
3.3 ク ロ ム と 水 素 が 形 成 す る 複 合 欠 陥 の 性 質 と 同 定 .• • . • • • • .,6 4
3.3.1 実 験 方 法 .• . . . • . . • . • • • . . • • . . . • • • • • . • . .• 64 3.3.2 熱 処 理 実 験 .• • • • • . . • . . • • • • • . • . . • • . • . • • .• 66 3.3.3 捕 獲 中 心 の 電 気 的 性 質 .• • • • • • . . • • . . • • . . . • • •• 68 3.3.4 表 面 処 理 実 験 • • • . . • • . • • • . • • • • • • . • • • • • • •• 72 3.3.5 考 察 . . • . • . . . • • . • • . • . . . • . . . • • • . • . . . . .• 74 3.4 3d遷 移 金 属 と 水 素 が 形 成 す る 複 合 欠 陥 の 性 質 . . . • . • . . .• 74 3.5 結 言 .• • • • . • . • . • . • . • . . . • . . . • • • • . • • .. 77 第4章 低 エ ネ ル ギ ー イ オ ン 照 射 に よ り 形 成 さ れ る 欠 陥 の 評 価 . . . • •• 78 4.1 緒 言 .• • • • • • . . • • • • . • . • • • • . . . . • • . • • • • • • •• 78 4.2 実 験 方 法 .• . . • • . • . . . . • • • • • • . . • . . • . • . . • • • . 80 4.3 残 留 欠 陥 が シ リ コ ン の 電 気 特 性 に 及 ぼ す 効 果 .• . . • • • . • •. 81
4
.4 照 射 効 果 の 入 射 エ ネ ル ギ ー お よ び ド ー ズ レ ー ト 依 存 性 . . • • . 93 4.5 結 言 .• • . . • • • • . • • . . • . • • . . . . • • • • . • . . • • . •. 99 第5章 結 論 .• • . • • . • • • . • . . • • . • . . • . • • • • • . . • . • • . • . 101 謝 辞 . . . . • . . 104 参 考 文 献 . . . • • . • • . • • . . • • • . • • • • • . • . • . • . • . . • . • • • • 106 付 録A 過 渡 容 量 測 定 .• • . . • • • • • • • • . . . • . . • . . . • . • • • . • 113 A.1 DLTS測 定 .• . • . • . • • • • • • • • . • . • • . . • • . . . . • • • 113 A.2 深 い 捕 獲 中 心 の 濃 度 分 布 測 定 . . . • • • • . . • . . . • . . . • 120 付 録B 固 体 に 入 射 し た イ オ ン の 軌 跡 の 計 算 . . • • • • . . • . . • . • • . • 123 B.1 原 子 核 と の 相 互 作 用 に よ る エ ネ ル ギ ー 損 失 と 入 射 イ オ ン の 偏 向 125 B.2 衝突ノfラ メ ー タ の 選 択 .• • • • • • • • • • • . • • . . • • . • . • • 126 B.3 電 子 と の 相 互 作 用 に よ る エ ネ ル ギ ー 損 失 .• . . . • • • • • • • • 127 B.4 空 孔 の 形 成 .• . • • • • . • • • • • • • . • • • . • . • • . • • . . • . 131第 1章 序 論
1 . 1 研究の背景と目的
固体中の自由電子の拡散と電界ドリフトを積極的に利用することにより、電 気 信 号 の 高 速 か つ 正 確 な 制 御 を 可 能 に し た 半 導 体 技 術 [1]は、現代文明を支え る柱の 1つ で あ る 。 よ り 高 速 で 効 率 が 高 く 、 機 能 性 に 優 れ た 制 御 シ ス テ ム を 実 現 す る た め 、 素 子 の 集 積 化 と 微 細 化 が 進 み 、 1994年 現 在 、 そ の 集 積 化 の 程 度 は 1チップ当たり 1億 素 子(100Mbit)、微細加工の程度は 0.1μmのオーダと なっている
[ 2 , 3 ] 0
高度に集積化および微細化された集積回路を実現する場合、基 板 と し て 用 い る 半 導 体 結 晶 に 転 位 や 欠 陥 等 が 存 在 し な い こ と が 望 ま し い 。 単体半導体のシリコンは、この要求を最も良く満是できると考えられている。
しかし現実には、完全に無転位かっ無欠陥のシリコン結晶ウェーハは存在しな いし作製もできな L、。さらに、集積回路製造工程においては、製造装置、化学 薬品およびレジストからの汚染(不純物原子の混入)や、ドライプロセスにお ける照射誘起欠陥の導入が生じる可能性がある。
これら欠陥および汚染は、その構成単位が数原子レベルであり、製造される 素 子 の 大 き さ と 比 べ て 非 常 に 小 さ い の で 、 微 小 欠 陥 (MicroDefect)と呼ぶこと にする。表1.1に 、 半 導 体 製 造 工 程 に お い て 導 入 さ れ る 微 小 欠 陥 の 成 因 お よ び そ の 影 響 を 示 す
[ 4 ‑ 6 ]
。 微 細 化 の 進 ん だ 半 導 体 素 子 を 歩 留 ま り 良 く 製 造 す る た め に は 、 微 小 欠 陥 の 導 入 経 路 と そ の 影 響 を 正 し く 把 握 し 、 適 切 に 対 処 す る 必 要がある。このような基本理念に立ち戻り、微小欠陥の挙動の解明や極微量の 微 小 欠 陥 の 評 価 方 法 の 開 発 が 始 め ら れ て い る[ 4 ]
。 本 研 究 に お い て は 、 こ れ ら の微小欠陥のうち、重金属原子、水素関連複合欠陥、照射誘起欠陥の挙動を系 統的に解明することを目的とし、それらの評価を行った。表1.1 半導体製造工程で導入される微小欠陥の成因と影響
工程 成因 影響
単結晶製造 炭素原子 接合リーク増加
窒素原子 転位の移動阻止
酸素原子 転位の移動阻止
サーマルドナー形成
pn制 御 ボロンヲリン,ヒ素原子 キャリア供給
湿式エッチング 水素原子 浅い不純物不動態化
深い不純物準位形成
水素関連複合欠陥 深い不純物準位形成
イオン注入 照射誘起欠陥 深い不純物準位形成
ドライプロセス (空孔及び炭素関連複合欠陥)
加工装置からの汚染 重金属原子 深い不純物準位形成
微 小 欠 陥 が シ リ コ ン 中 に 導 入 さ れ る と 、 結 晶 育 成 の 際 の 転 位 や 析 出 核 形 成 の 原 因 と な り 、 完 全 な 単 結 晶 基 板 を 製 造 す る 上 で の 障 害 と な る 。 ま た 、 シ リ コ ン 中 の 微 小 欠 陥 は 、 シ リ コ ン の 禁 制 帯 中 に 深 い 不 純 物 準 位 を 形 成 す る 。 深 い 不 純 物 準 位 は キ ャ リ ア の 再 結 合 中 心 お よ び 捕 獲 中 心 と し て 振 舞 い 、 素 子 の 動 作 機 能 に 重 大 な 影 響 を 及 ぼ す 。 キ ャ リ ア の 寿 命 が 短 く な る と 、 素 子 の ス イ ッ チ ン グ 動 作 が 高 速 化 さ れ る と い う 積 極 的 な 側 面 も あ る が ヘ 多 く の 場 合 に は 素 子 の 正 常 な 動 作 が 妨 げ ら れ 、 動 作 効 率 が 低 下 す る 原 因 と な る
[ 9
,10]。従って、高速 か っ 高 効 率 で 正 常 に 機 能 す る 半 導 体 素 子 を 実 現 す る た め に は 、 シ リ コ ン 結 晶 中 の 微 小 欠 陥 の 挙 動 を 系 統 的 に 把 握 し 、 そ れ ら を 自 由 に 制 御 す る こ と が 、 一 層重要になる。半 導 体 製 造 工 程 で 混 入 す る 可 能 性 の あ る 、 主 要 な 汚 染 物 質 は 遷 移 金 属 で あ
る 。 半 導 体 製 造 装 置 の 多 く は 、 耐 熱 性 お よ び 耐 薬 品 性 の 点 で 、 優 れ る ス テ ン レ ス 合 金 を 用 い て 組 み 立 て ら れ て い る 。 そ の た め 、 ス テ ン レ ス 合 金 の 構 成 元 素 で あ る 鉄 、 ニ ッ ケ ル 等3d遷 移 金 属 の 汚 染 が 生 じ る 可 能 性 が 非 常 に 高 い 。 シ リ
コ ン 結 品 中 の 3d遷 移 金 属 の 挙 動 に 関 し て は 、 実 験 [11‑14]お よ び 理 論 計 算 [15] の 両 面 か ら 、 多 く の 研 究 者 に よ り 調 べ ら れ て い る 。 特 に 、 銅 、 鉄 、 ニ ッ ケ ル 、 コ バ ル ト は 重 点 的 に 研 究 さ れ て い る [12,16‑22]。 金 属 の 性 質 の 理 解 が 得 ら れ る と 、 汚 染 金 属 原 子 を 結 品 中 の 特 定 の 位 置 に 誘 導 し 電 気 的 に 不 活 性 な 状 態 に し 、 製 品 の 歩 留 ま り を 向 上 さ せ る 、 ゲ ッ タ リ ン グ 処 理 を 効 率 よ く 実 行 す る こ と が 可 能 と な る [23‑30]。 こ の た め に は 、 鉄 、 ニ ッ ケ ル 等 主 要 な 汚 染 金 属 が 属 す る 3d 遷 移 金 属 全 体 の 挙 動 を 系 統 的 に 理 解 す る 必 要 が あ る 。
ま た 、 通 常 の 集 積 回 路 と 比 較 し 、 太 陽 電 池 の 製 造 に は 、 大 面 積 で コ ス ト の 安 い シ リ コ ン ウ ェ ー ハ を 用 い る 必 要 が あ る 。 そ の よ う な ウ ェ ー ハ に は 、 バ ナ ジ ウ ム の 汚 染 が 存 在 す る こ と が 報 告 さ れ て お り [9,11]、 シ リ コ ン 中 に お け る バ ナ ジ ウ ム の 振 舞 い を 把 握 す る 必 要 が あ る [11]。金属の性質の理解が得られると、シ リコン と金属を化 合物と したシリサ イド を優れた電 極材 料と して 使用 する こ とも可能となる [31,32]。このような背景の中、筆者らは、その拡散現象が全く 調 べ ら れ て い な か っ た バ ナ ジ ウ ム に 関 し て [11]、 シ リ コ ン 中 で の 挙 動 を 解 明 す
る研究に着手した。
と こ ろ で 、 製 造 工 程 に お け る 汚 染 と し て 半 導 体 中 に 混 入 す る 不 純 物 に は 、 製 造 装 置 に 起 因 す る 重 金 属 の 他 、 半 導 体 を 加 工 す る た め の 化 学 反 応 に 直 接 関 与 す る 物 質 が あ る 。 切 削 工 程 に お い て 一 般 的 に 使 用 さ れ る 、 フ ッ 酸 と 硝 酸 を 含 む 酸 性 溶 液 を 用 い た 化 学 エ ッ チ ン グ に よ っ て 、 水 素 原 子 が シ リ コ ン 中 に 混 入 す る
[ 5 ]
。 水 素 原 子 は 、 リ ン お よ び ボ ロ ン 等 の 浅 い 不 純 物 と 複 合 体 を 構 成 し て そ れ ら の 浅 い 不 純 物 を 不 活 性 化 す る こ と [33‑37]、 電 気 的 に 不 活 性 な 炭 素 原 子 と 複 合 体 を 構 成 し 、 そ の 複 合 体 は 電 気 的 に 活 性 と な る こ と 等 が 明 ら か に な っ て い る[5ヲ38]。 ま た 、 バ ナ ジ ウ ム ま た は ク ロ ム を 導 入 し た n形 シ リ コ ン に 化 学 エ ッ化学エッチングによる不純物(主として水素原子)の混入と複合欠陥形成は、
化 学 反 応 の 結 果 と し て 必 然 的 に 生 じ 、 そ の 反 応 系 を 使 用 す る 限 り に お い て は 避 け る こ と が 原 理 的 に 困 難 な 問 題 で あ る 。 従 っ て 、 化 学 エ ッ チ ン グ 処 理 の 妥 当 性 を 判 断 す る 観 点 か ら 、 半 導 体 結 晶 中 に 混 入 し た 物 質 を 同 定 し 、 そ れ が 半 導 体 中 に 混 入 す る た め の 条 件 、 お よ び 混 入 し た 物 質 と 他 の 不 純 物 と の 複 合 欠 陥 形成の振舞いを把握しておく必要がある。
筆 者 ら は 、 パ ナ ジ ウ ム ま た は ク ロ ム を 導 入 し た n形シリコンに、化学エッチ ン グ 処 理 を 施 す と 生 成 さ れ る 不 純 物 準 位 が 、 化 学 エ ッ チ ン グ に よ り 導 入 さ れ た 不 純 物 に 関 係 す る と 考 え 、 そ の 成 因 を 解 明 す る 研 究 に 着 手 し た 。 複 合 欠 陥 の 形 成 反 応 は 、 水 素 原 子 と 他 の 不 純 物 原 子 と が 構 成 す る 複 合 体 の 場 合 に 限 ら ず 、 鉄 、 マ ン ガ ン 、 ク ロ ム 等 、 比 較 的 拡 散 係 数 の 大 き な 3d遷 移 金 属 原 子 と ボ ロ ン やアルミ等、 111族 元 素 原 子 と の 複 合 体 の 形 成 反 応 等 [41‑51]、 微 小 欠 陥 研 究 者 の注目を集めている現象である。
半 導 体 製 造 工 程 に お い て 、 反 応 性 イ オ ン エ ッ チ ン グ
( R e a c t i v e I o n
臥c h i n g , R I E )
、 化 学 蒸 着 法( C h e r n i c a lV a p o r D e p o s i t i o n
ヲCVD)
等 の ド ラ イ プ ロ セ ス も 用 い ら れ る 。 こ れ ら は 気 相 の 反 応 系 を 利 用 す る た め 、 プ ロ セ ス 条 件 の 制 御 性 、 後 処 理 の 容 易 さ 等 の 点 で 優 れ て お り 、 特 に 、 反 応 性 イ オ ン エ ッ チ ン グ は 従 来 の 湿 式エッチングに置き換わりつつある。こ れ ら イ オ ン ビ ー ム お よ び プ ラ ズ マ を 用 い る プ ロ セ ス に お い て は 、 照 射 し た 粒 子 が 基 板 に 入 射 し 停 止 す る ま で の 過 程 で 、 粒 子 の 運 動 エ ネ ル ギ ー が 結 晶 に 転 移 し 、 照 射 損 傷 層 や 照 射 誘 起 欠 陥 が 導 入 さ れ る 可 能 性 が 高 い 。 結 品 中 に 導 入 さ れ た 損 傷 層 お よ び 欠 陥 は 、 入 射 粒 子 の エ ネ ル ギ 一 、 ド ー ズ 、 お よ び イ オ ン 種 に 依 存 す る 、 あ る 一 定 温 度 以 上 の 熱 処 理 を 施 す こ と で 緩 和 、 除 去 さ れ る。しかし、熱処理温度および時間が不十分な場合、基板内に残留し、完成さ れた半導体素子の動作特性に大きな影響を与える。
ま た 、 半 導 体 の 電 気 特 性 を 制 御 す る た め の 不 純 物 の 導 入 に は 、 イ オ ン 注 入 技 術 が 広 く 用 い ら れ て い る
[ 5 2 ]
。 従 来 は 、 熱 エ ネ ル ギ ー を 供 給 し 不 純 物 原 子 を 半 導 体 中 に 導 入 す る 熱 拡 散 法 が 用 い ら れ た 。 熱 拡 散 現 象 は 不 純 物 原 子 の 拡 散係 数 お よ び 固 溶 度 に 支 配 さ れ る た め 、 所 定 の 不 純 物 分 布 を 正 確 に 実 現 す る た め に は 比 較 的 高 温 か っ 長 時 間 の 熱 処 理 が 必 要 で あ り 、 実 現 可 能 な 分 布 に も 制
限がある。 一 方、イオン注入技術は、不純物原子を加速された荷電粒子として
半導体中に注入するため、イオンエネルギ一、ドーズ、等の注入パラメータを 選択すると様々な不純物分布が得られ、半導体の電気特性を自由に制御でき、
プロセスに要する時間も短い。
イオン注入を施すと、必然的に照射損傷層が形成される。通常この損傷は、
注 入 さ れ た 不 純 物 を 活 性 化 す る た め の 、 約6000C以上での熱処理によって取り 除かれる
[ 5 3 ] 0
し か し 、 高 温 の 熱 処 理 を 施 す と 、 不 純 物 が 熱 拡 散 し て 分 布 を 乱し 、 微 細 な 素 子 構 造 を 正 確 に 作 製 す る こ と が 困 難 と な る 。 不 純 物 の 再 分 布 を 避 け る た め 、 熱 処 理 工 程 の 低 温 度 化 お よ び 処 理 時 間 の 短 縮 が 強 く 求 め ら れ て い る 。 低 温 度 、 短 時 間 の 熱 処 理 で 不 純 物 を 活 性 化 し か っ 損 傷 層 を 除 去 す る に は 、 損 傷 を 軽 減 す る こ と が 有 効 と 考 え ら れ る 。 照 射 損 傷 を 低 減 し 微 細 な 構 造 を 正 確 に 作 製 す る た め に は 、 イ オ ン 注 入 の 低 エ ネ ル ギ ー 化 が 重 要 で あ る 。
高エネルギー領域(数
MeV)
の 電 子 線 に よ り シ リ コ ン 結 晶 中 に 形 成 さ れ る 照 射 誘 起 欠 陥 は 、 そ の 構 造 お よ び 電 気 的 性 質 が 詳 細 に 調 べ ら れ て い る[ 5 4 ‑ 6 6 ] 0
一 方 、 低 エ ネ ル ギ ー 領 域 の 入 射 粒 子 が 形 成 す る 損 傷 層 お よ び 欠 陥 の 振 舞 い は 系 統 的 に 調 べ ら れ て い な し け 。 微 細 な 構 造 を 作 製 す る 際 に は 、 イ オ ン 注 入 の 低 エ ネ ル ギ ー 化 が 避 け ら れ ず 、 低 エ ネ ル ギ ー イ オ ン 注 入 技 術 は 将 来 の 半 導 体 プ ロ セ ス に お け る キ ー テ ク ノ ロ ジ ー の lつになると予想される。従って、低エネ ル ギ ー 領 域 の 入 射 イ オ ン の 形 成 す る 損 傷 層 お よ び 欠 陥 の 挙 動 を 理 解 し て お く
ことは重要である。
照 射 誘 起 欠 陥 の 性 質 の 理 解 が 得 ら れ る と 、 低 エ ネ ル ギ ー イ オ ン や プ ラ ズ マ を用いるプロセスにおけるプロセス条件の最適化に対する指針が得られる他、
入 射 粒 子 が 欠 陥 を 生 成 す る 際 に 結 晶 に 転 移 す る エ ネ ル ギ ー を 半 導 体 プ ロ セ ス
十ここでは、入射イオンの減速機構のうち、核阻止能が電子阻止能に比べて支配的な エネルギー領域を低エネルギーと呼ぶ。
に積極的に利用できる可能性がある [67‑71]。そこで、筆者らは、低エネルギー (最大5keV)の ア ル ゴ ン イ オ ン お よ び プ ロ ト ン を シ リ コ ン 結 晶 に 照 射 し 、 照 射 損 傷 層 お よ び 照 射 誘 起 欠 陥 が シ リ コ ン 結 晶 の 電 気 特 性 に 及 ぼ す 影 響 を 解 明 す
る研究に着手した。
半導体素子発展の歴史は、また微小欠陥制御技術の発展の歴史でもある
[ 7 2 ] 0
シリコン中の微小欠陥の評価はこの意味で現在でも重要な位置を占めている。
評 価 方 法 は 、 構 造 計 測 、 電 気 計 測 、 光 ・電 磁 波 計 測 の 3つ に 分 類 さ れ る 。 そ れ を表1.2に示す [72,73]。 構 造 計 測 は 、 測 定 量 が 直 観 的 に 理 解 し 易 い 画 像 の 形 で 得 ら れ る が 検 出 感 度 が 低 い 。 電 気 計 測 は 、 測 定 量 の 解 析 が 比 較 的 容 易 で 検 出 感 度 が 最 も 高 く 、 半 導 体 素 子 と し て の 動 作 と の 対 応 が 明 確 で あ る 。 し か し 、 欠 陥構造および格子中の位置の特定が困難で、ある。光・電 磁 波 計 測 は 、 欠 陥 構 造 お よ び 位 置 の 特 定 が 可 能 で あ る が 、 測 定 量 の 解 析 が 複 雑 で あ り 、 検 出 感 度 は 電 気 計 測 に 劣 る 。 本 研 究 で は 、 極 微 量 の 欠 陥 を 評 価 対 象 と す る た め 、 過 渡 容 量 測 定、
c ‑ v
測定、ホール効果測定の電気計測を用いた。表1.2 微小欠陥評価法の分類と特徴
検出感度 例 直接得られる情報
構造計測 低 b
、
X線回 折 結晶性光学顕微鏡 欠陥(大)の分布?形状
電子顕微鏡 欠陥(中,小)の分布?形状
チャネリング 結晶性,欠陥の位置
電気計測 高い 四 探 針 不純物分布
ホール効果 不純物濃度,移動度
c ‑ v
不純物濃度,拡散電位過渡容量 深い不純物の準位と濃度
光・電磁波計測 中 フォトルミネッセンス 欠陥(小)の量,位置,構造
1 . 2 本 論 文 の 要 旨 と 構 成
本論文は、シリコン結品中の重金属、重金属と水素との複合体、およびイオ ン 照 射 誘 起 欠 陥 の3種類の微小欠陥の評価を行ったもので、 5章 よ り 構 成 さ れ る。第1章 で は 序 論 を 述 べ た 。 第2章 で は 、 シ リ コ ン 中 の パ ナ ジ ウ ム が 形 成 す る欠陥の電気的性質および拡散ノ宅ラメータを調べた。第 3章 で は 、 シ リ コ ン 中のバナジウムまたはクロムと水素とで構成される複合欠陥の同定を行った。
第 4章 で は 、 低 エ ネ ル ギ ー イ オ ン 照 射 に よ り シ リ コ ン 中 に 形 成 さ れ る 欠 陥 の 、 電 気 的 お よ び 熱 的 な 振 舞 い を 調 べ た 。 第 5章 で は 全 体 を 総 括 し た 。 そ れ ぞ れ の 章では、以下の内容を述べた。
第 2章 で は 、 シ リ コ ン 中 の バ ナ ジ ウ ム が 形 成 す る 不 純 物 準 位 の 性 質 お よ び パ ナジウムの拡散現象を調べた。 2.1節 で は 、 第2章 で 行 う 研 究 の 背 景 お よ び 概 要を述べた。 2.2節では実験の手順を述べた。 2.3節 で は 、 バ ナ ジ ウ ム を 導 入 し たシリコン試料に観測される深い不純物準位を、 DLTS測 定 お よ び 濃 度 分 布 測 定 を 用 い て 調 べ 、 バ ナ ジ ウ ム が 形 成 す る 捕 獲 中 心 の 同 定 と 電 気 的 性 質 の 解 明 を行った。 DLTS測定により、 Ec‑0.20 eVとEc‑0.45 eVの2つ の 電 子 捕 獲 中 心 お よ びEv
+
0.34 eVの 正 孔 捕 獲 中 心 が 観 測 さ れ た 。 こ れ ら 3つ の 不 純 物 準 位 は 同 ー の 格 子 間 バ ナ ジ ウ ム 原 子 の 4つ の 荷 電 状 態 悶 の 遷 移 に 対 応 す る ことを明らかにした。 2.4節では、シリコン中の格子間パナジウムの拡散濃度分 布を調べ、バナジウムの拡散係数および固溶度を求めた。 950rv 12000
C
の温度 範囲ではバナジウムの導入実験、 600f"V 8000Cで は 外 方 拡 散 実 験 を 行 い 、 深 い 不 純 物 中 心 の 濃 度 分 布 を 測 定 し た 。 こ れ ら2通りの測定結果より、シリコン中 の格子間ノ〈ナジウムの拡散係数Dv
お よ び 固 溶 度Nv
を以下のように求めた。Dv
= 9.0 X 10‑3 exp( ‑1.55/k T )
cm2s‑t (873くT <
1473K ) , ( 1 . 1 ) Nv =
3.0 X 1027 exp(‑ 4 . 0 4 j k T )
cm‑3 (1223くT<
1473K ) , ( 1 . 2 )
ここで、 kは ボ ル ツ マ ン 定 数 (eV/K)、Tは 絶 対 温 度 (K)である。 2.5節では、
位 置 を 占 め る チ タ ン か ら 鉄 ま で の 3d遷 移 金 属 で は 、 原 子 番 号 が 大 き い 元 素 ほ どその拡散係数が大きくなることを示した。 2.6節 で は 第2章の結論を述べた。
第3章 で は 、 シ リ コ ン 中 の 重 金 属 と 水 素 と が 形 成 す る 複 合 欠 陥 の 同 定 と そ の性質の解明を行った。バナジウムを拡散させ、 HFとHN03を 含 む 酸 性 溶 液 で化学エッチングを施した n形シリコンには、上に述べた2つ の 電 子 捕 獲 中 心 に加え、
Ec‑
0.49 eVの 電 子 捕 獲 中 心 が 試 料 の エ ッ チ ン グ 表 面 付 近 に 観 測 さ れ た。同様に、クロムを拡散させ、化学エッチングを施した n形シリコンには、格 子 間 ク ロ ム が 形 成 す る も の と は 異 な る3つ の 電 子 捕 獲 中 心 が 試 料 の 表 面 付 近に観測された。 3.1節 で は 、 こ れ ら の 成 因 の 不 明 な 不 純 物 準 位 を 研 究 す る に 至った経緯を述べた。 3.2節 で は 、 パ ナ ジ ウ ム を 導 入 し た 試 料 に 観 測 さ れ た 不
純物準位の成因を、熱処理実験および種々の化学処理実験によって調べた。こ れ ら の 実 験 結 果 よ り 、 そ の 捕 獲 中 心 は 格 子 問 バ ナ ジ ウ ム と 化 学 エ ッ チ ン グ に よ っ て 混 入 し た 水 素 と の 複 合 体 に 起 因 す る こ と を 明 ら か に し た 。 3.3節では、
ク ロ ム を 導 入 し た n形 シ リ コ ン 試 料 に 観 測 さ れ た 不 純 物 準 位 の 成 因 を 、 熱 処 理 実 験 お よ び 化 学 処 理 実 験 を 用 い て 調 べ 、 そ れ ら の 捕 獲 中 心 が 格 子 間 ク ロ ム と 化 学 エ ッ チ ン グ に よ っ て 混 入 し た 水 素 と で 構 成 さ れ る 複 合 体 に 起 因 す る こ とを明らかにした。 3.4節では、これらの重金属と水素との複合体の電気的な 性 質 を 、 最 近 報 告 さ れ た 金 と 水 素 と の 複 合 体 の 性 質 と 比 較 し て 、 重 金 属 が シ リ コ ン 結 晶 中 で 占 め る 位 置 と そ の 複 合 体 が 形 成 す る 不 純物準 位 の 深 さ と の 関 連 を 考 察 し 、 シ リ コ ン 中 で 格 子 間 位 置 を 占 め る 3d遷 移 金 属 と 水 素 と の 複 合 体 は 、 金 属 が 単 独 で 形 成 す る ド ナ ー 準 位 よ り も 価 電 子 帯 側 に 、 ド ナ ー 準 位 を 形 成する傾向があることを指摘した。
第4章 で は 、 加 速 エ ネ ル ギ ー 最 大 5keVの 低 エ ネ ル ギ ー イ オ ン 照 射 に よ り シリコン結晶薄膜中に形成される欠陥の挙動を調べた。 4.1節 で は 、 低 エ ネ ル ギ ー イ オ ン 照 射 に よ り 形 成 さ れ る 欠 陥 の 挙 動 を 研 究 す る に 至 っ た 経 緯 を 述 べ た。 4.2節で試料作製の手順を述べ、 4.3節 で は 、 低 エ ネ ル ギ ー の ア ル ゴ ン イ オ ン 照 射 お よ び プ ロ ト ン 照 射 に よ り 導 入 さ れ る 欠 陥 が 、 シ リ コ ン 結 晶 薄 膜 の 電 気 特 性 に 及 ぼ す 影 響 を 、 ホ ー ル 効 果 測 定 と 熱 処 理 実 験 を 併 用 し て 調 べ た 。 イ
オ ン エ ネ ル ギ‑ 5keV、ドーズ2X 1014 cm‑2のアルゴンイオンを、ドーズレー ト5X 1011 cm‑2s‑1で照射すると、照射損傷領域(表面から3011mの領域)から 結 晶 の 深 部 へ と 拡 散 し た 格 子 間 原 子 や 空 孔 が 複 合 欠 陥 を 形 成 し て キ ャ リ ア の 捕獲中心および散乱中心として振舞い、厚さ 600nmの シ リ コ ン 薄 膜 の 電 気 特 性は大きく変化した。これらの複合欠陥は、 3000Cで30分 間 の 熱 処 理 を 施 す と 消 滅 し た 。 一 方 、 イ オ ン エ ネ ル ギ ‑5 keV、 ド ー ズ 2X 1014 cm‑2のプロト ンを、ドーズレート 5X 1011 cm‑2s‑1で 照 射 し た 場 合 は 、 照 射 損 傷 領 域 か ら 拡 散した欠陥に加え、照射によって注入された水素原子もキャリアの捕獲中心お よび散乱中心として振舞うことが示唆された。また、プロトン照射後、 3000C で30分 間 の 熱 処 理 を 施 す と 、 シ リ コ ン 結 晶 一 サ フ ァ イ ア 基 板 界 面 付 近 に 存 在 する欠陥の不動態化および水素原子の浅いドナー化に起因すると考えられる、
キャリア密度と移動度の増加が観測された。さらに4.4節で、照射効果のイオ ンエネルギーおよびドーズレート依存性も調べ、キャリア捕獲中心および散乱 中 心 と し て 振 舞 う 複 合 欠 陥 の 残 留 量 は 、 照 射 誘 起 一 次 欠 陥 (Frenkel対)の生成 速度に依存することを明らかにした。 4.5節では、第4章の結論を述べた。
第5章では本研究全体を総括し、微小欠陥評価技術の課題を述べ、さらに、
照 射 に よ り 誘 起 さ れ る 微 小 欠 陥 を 、 エ ネ ル ギ ー 担 体 の 最 小 単 位 と し て 半 導 体 プロセスに適用するための課題を指摘した。
第 2章 ノ く ナ ジ ウ ム が 形 成 す る 欠 陥 の 評 価
2 . 1 緒 言
この 10年 間 、 シ リ コ ン 結 晶 中 の 3d遷 移 金 属 は 研 究 者 の 関 心 を 引 き 続 け て い る[11
,
74]。 遷 移 金 属 の 多 く は そ の 拡 散 係 数 が 大 き く 、 集 積 回 路 の 製 造 工 程 で 混 入 し 易L、 。 シ リ コ ン 中 の 遷 移 金 属 は キ ャ リ ア の 再 結 合 中 心 や 捕 獲 中 心 と し て 働 き 、 素 子 の 動 作 特 性 に 重 大 な 影 響 を 及 ぼ す 。 そ こ で 、 素 子 の 活 性 領 域 か ら こ れ ら の 不 純 物 の 影 響 を 取 り 除 く た め の ゲ ッ タ リ ン グ 技 術 が 盛 ん に 研 究 さ れ て いる [23‑30]0 3d遷 移 金 属 の ゲ ッ タ リ ン グ 機 構 を 解 明 す る に は 、 そ の 金 属 の シ リ コ ン 中 に お け る 拡 散 係 数 お よ び 固 溶 度 等 、 拡 散 に 関 す る 正 確 な デ ー タ を 知る必要がある。 3d遷移金属のうち、鉄、コバルト、ニッケル、銅の拡散データ
は 、 多 く の 研 究 者 に よ っ て 報 告 さ れ て い る [11
,
12,
16‑22]0シ リ コ ン 太 陽 電 池 の 製 造 工 程 に お い て 、 パ ナ ジ ウ ム は 、 チ タ ン 等 と 同 様 に 汚 染 と し て 混 入 し 易 く 、 太 陽 電 池 の 変 換 効 率 を 低 下 さ せ る 原 因 と な る [9
,
11]。 パ ナ ジ ウ ム が 形 成 す る 不 純 物 準 位 に 関 す る 研 究 報 告 に よ る と [75‑81]、電気的に活 性なパナジウムはシリコン結晶中で格子間位置を占め、 Ec‑0.16、Ec‑0.45、Ev +
0.30 eVに 、 そ れ ぞ れ ア ク セ プ タ ー 準 位(Vi/O)、 ド ナ ー 準 位(V?/+)、ダブ ル ド ナ ー 準 位(vt/++)を形成する [11]。 し か し な が ら 、 シ リ コ ン 中 で の パ ナ ジ ウ ム の 拡 散 現 象 に 関 し て は 調 べ ら れ て お ら ず 、 拡 散 係 数 、 固 溶 度 の 正 確 な 値 は 報 告 さ れ て い な い [11]。この章では、深い準位過渡分光 (DeepLevel Transient Spectroscopy,
DLTS)法 等 の 容 量 測 定 技 術 [82‑88]を 用 い 、 シ リ コ ン 中 の パ ナ ジウ ム が 関 係 す る 不 純 物 準 位 の 電 気 的 な 性 質 を 詳 し く 調 べ る と 共 に
[ 4 0 ]
、パナジ ウ ム の 正 確 な 拡 散 係 数 お よ び 固 溶 度 を 求 め る [39]02 . 2 実験方法
実験には、 3種 類 の n形 お よ び 2種 類 の p形 シ リ コ ン ウ ェ ー ハ を 使 用 し
表 2.1 実験に使用したシリコンウェーハ
ウェーハ名 タイプ 不純物名 不純物濃度 (cm‑3) 厚さ (mm)
A B
C D E
Al 40
n形 FZ(111) P 2.2 X 1013 n形FZ(111) P 1.0 X 1014 n形 Cz(l11) P 1.2 X 1015 p形 FZ(100) B 1.4 X 1014 p形 Cz(111) B 1.2 X 1015
表 2.2 実験に使用したバナジウム金属線の成分分析表(桜木理化学) 不純物濃度 (ppm)
Fe 50
C 20
Ni P S 4.3 46 10
Si 130
0 60
1.2 1.2 0.8 1.2 0.8
N 15
を 表2.2に示す。
パナジウムの導入(熱拡散)は以下の手順に従って行った。
1.ウェーハを 10m m
x
15 m mの チ ッ プ に 切 断 し 、 ト リ ク ロ ロ エ チ レ ン 、 ア セ ト ン 、 純 水 の 順 に 超 音 波 洗 浄 を 施 し た 。 つ ぎ に 、 エ ッ チ ン グ 液 (HN03 : HF : CH3COOH(I) = 10 : 5 : 2,
CH3COOH(I)はヨウ素を室温で飽 和 す る ま でCH3COOHに溶解させたもの)で試料表面層 100μm以 上 を 化 学 エ ッ チ ン グ し 、 瞬 間 的 に 多 量 の 水 を 加 え エ ッ チ ン グ を 停 止 さ せ た 。 そ の後、超純水中で超音波洗浄を施した。2.チ ッ プ 試 料 を 乾 燥 さ せ 、 真 空 蒸 着 装 置 に 入 れ て 10‑6Torrまで排気した。
そ の 後 、 パ ナ ジ ウ ム 金 属 線 に 直 接 通 電 し 加 熱 す る 方 法 で 試 料 に パ ナ ジ ウ ムを真空蒸着した。蒸着は試料の両面に対して行った。
3.バ ナ ジ ウ ム を 蒸 着 し た 試 料 に 所 定 の 温 度 で 所 定 の 時 間 だ け 拡 散 熱 処 理 を 施 し た 。 熱 処 理 は 真 空 開 管 法 [89]で 行 っ た 。 熱 処 理 終 了 時 に は 、 液 体 窒
表 2.3 実験で用いたウェーハと拡散条件
D
RU
面 を50μm程 度 化 学 エ ッ チ ン グ し 、 表 面 に 残 る パ ナ ジ ウ ム 拡 散 源 を 除 去 した。その後、 n形 試 料 に 対 し て は 金 一 ア ン チ モ ン ー シ リ コ ン 合 金 を 4000Cで溶着し、 p形 試 料 に 対 し て は ア ル ミ ニ ウ ム 蒸 着 後6000Cで5分 間 熱処理し焼結してオーミック電極を形成した。
定一
P D I
‑
‑
T
捌 一 )
! 凹 の 一 位 認 慌 量 一
﹂ ふ 川 一 尊 主 調 実 一 か ト 一 重 一 何 度 . 型 ク 一 多
6濃
典 以 一
拡散温度
( O C )
1150
拡散時間(h) 20
ウ ェ ー ハ
アクセプター ドナー判別 捕 獲 断 面 積
1050 48 B
,
D1100 30 B
,
D 2.ショットキー電極:オーミック電極面の裏面を室温で化学エッチングした1150 20 B
,
D 後、 n形は金蒸着膜で、 p形 は ア ル ミ ニ ウ ム 蒸 着 膜 で シ ョ ッ ト キ ー 接 触 を 1200 9 C,
E 形 成 し た 。 特 に 断 ら な い 限 り 、 化 学 エ ッ チ ン グ に は 通 常 の エ ッ チ ン グ 液 1200 9 B,
D (HN03 : HF : CH3COOH(I)=
10 : 5 : 2)を用いた。熱 放 出 率
1150 20 B
1200 9 E
1150 20 B
1200 9 E
950 48 A
1000 38 A 1050 12
,
24 A 1100 8ヲ16 B 1150 6う12 B 1200 2,
4,
8 B 1170 24 Bパ ナ ジ ウ ム 濃 度 の 深 さ 方 向 分 布 は 、 試 料 表 面 層 を 少 し ず つ エ ッ チ ン グ で 削 り 落としてはショットキー電極を蒸着し、 DLTS測定を繰り返して測定した。
固溶度 拡散係数 (導入実験)
2.3
バ ナ ジ ウ ム が 形 成 す る 捕 獲 中 心 の 電 気 的 性 質
2.3.1 典 型 的 な DLTSス ペ ク ト ル と 捕 獲 中 心 の 濃 度 分 布
バ ナ ジ ウ ム を 11500Cで20時 間 拡 散 さ せ た n形 お よ びp形ショットキーダイ オ ー ド の DLTSス ペ ク ト ル を そ れ ぞ れ 図 2.1(a)お よ び2.1(b)に 示 す 図 中 の 破線は、 HN03 : HF : CH3COOH = 10 : 5 : 2の 溶 液 で3分間化学エッチングし、
試 料 表 面 層 約 100μmを 除 去 し た 後 に 障 壁 金 属 を 蒸 着 し た 試 料 の 測 定 結 果 、 実 線 は エ ッ チ ン グ 後 障 壁 金 属 を 蒸 着 し 窒 素 雰 囲 気 中 、 2000Cで 30分 間 の 熱 処 理 を 施 し た 試 料 の 測 定 結 果 で あ る 。 熱 処 理 を 施 し た n形 お よ びp形試料に対し、
電 子 捕 獲 中 心NV1(120
K )
、NV2(230K )
と 正 孔 捕 獲 中 心PVl(260K )
に 対 応 す る信号が観測される(実線)。また、熱処理を施していない η形 試 料 に は 、 電 子 捕 獲 中 心NV3(250K )
がNV2と 重 畳 し た 信 号 と し て 観 測 さ れ る ( 破 線)02000C で30分間の熱処理を施すと、 NV3は消滅し、 NV1お よ びNV2の 信 号 が 熱 処 理 前に比べて大きくなる。一方、 p形 試 料 の PV1の 信 号 は 熱 処 理 後 も 殆 ど 変 化 しない。図2.1は11500Cで20時間パナジウムを拡散させた試料の結果で・ある 拡散係数(外方拡散実験)
表2.3に、実験に用いたウェーハと拡散条件の対応関係を示す。
こ れ ら の 実 験 に は 、 浮 遊 帯 溶 融 法
( F Z
法 ) お よ び チ ョ ク ラ ル ス キ 引 き 上 げ 法 (Cz法 ) の 両 方 法 で 成 長 さ せ た 結 晶 を 用 い た が 、 実 験 結 果 に は 結 晶 成 長 法 に よる 差 異 は 認 め ら れ な か っ た の で 、 以 下 で は そ の 区 別 を し な い 。 ショットキーダイオードは以下の手順で作製した。
1.オーミック電極:拡散熱処理を施した試料を 4mmx4mmに 切 断 し 、 片 *この拡散条件(温度および時間)は、パナジウムが試料全体に均一に分布するよう
に選択した。拡散係数については2.4節で述べる。
が 、 そ の 他 の 拡 散 熱 処 理 条 件 ( 表2.3)で バ ナ ジ ウ ム を 導 入 し た ね 形 お よ びp形 試 料 に お い て も 同 様 な 信 号 が 観 測 さ れ る 。 こ れ ら4つ の 捕 獲 中 心 は 、 パ ナ ジ ウ ム を 蒸 着 せ ず に 熱 処 理 の み を 施 し た 参 照 試 料 に は 観 測 さ れ な か っ た の で 、 全 て パ ナ ジ ウ ム が 関 係 す る 捕 獲 中 心 で あ る 。 そ れ ら の 準 位 深 さ は 、 レ ー ト ウ イ ン ドウ変化法
( t d t 2 =
0.3/1.0 rv 3.0/30 ms)により、 NVlはEc‑
0.20 eV、NV2はEc ‑
0.45 eV、NV3はEc‑
0.49 eV、PVlはEv +
0.46 eVと 求 め ら れ た f。 但 し、 NV2とNV3の 信 号 は 重 な っ て い る の で 非 線 形 最 小 自 乗 法 [84ヲ85]によって 分 離 し て 解 析 し た 。 観 測 さ れ た4つ の 捕 獲 中 心 の う ち 、 NVl、NV2、PVlは、そ れ ぞ れ 格 子 問 パ ナ ジ ウ ム の ア ク セ プ タ ー 準 位 、 ド ナ ー 準 位 、 ダ ブ ル ド ナ ー 準 位 に 対 応 す る と 考 え ら れ る
[ 1 1 ] 0
NVl、NV2、PVlの 詳 細 な 同 定 は2.3.2rv 2.3.5 節 で 行 う 。 ま た 、 熱 処 理 後 に 消 滅 す る NV3の 成 因 に つ い て は 、 第3章 で 議 論 する。2 3 0
( L
) a
‑ o c m
一 ω ω
ト
JG
‑ 2
。
a ...
NV2
NV1 (0 )
ーー̲‑戸
4
・ ・
aPV1 1 0 0
( b )
1 5 0 200 2 5 0 300
Temperoture ( K )
図 2.1 パナジウムを 11500Cで20時間導入した n形試料(a)とp形試料(b)の DLTSスペクトル.HN03: HF : CH3COOH
=
10 : 5 : 2の溶液で3分間化学エッチング した試料.破線は熱処理前,実線は 2000Cで30分間の熱処理後.逆バイアス:5 V,注 入バイアス:0 V,レートウインドウ:ttft2=
0.5/5 ms,注入パルス幅:0.2 ms(n形), 2.0形).
つ ぎ に 、 捕 獲 中 心NV1、NV2、NV3、PV1の 濃 度 分 布 を 測 定 し た 。 こ の 測 定 には、 11500Cで20時 間 パ ナ ジ ウ ム を 導 入 し た 後 シ ョ ッ ト キ 一 面 を 化 学 エ ッ チ ン グ し 、 障 壁 金 属 を 蒸 着 し た n形 お よ びp形 試 料 を 用 い た 。 こ れ ら の 試 料 に は2000
C
での熱処理を施さなかった。濃度分布は以下の注入バイアス変化法に より測定した。1.注入ノ〈イアス印加終了直後(t
=
0)に逆ノ〈イアス (VR=
10 V)を印加し、過 渡 容 量C(t)を0.5f'V 50 msまで、 0.5ms間隔で測定し、各測定点におい て 128回の平均化を行った。
2.得 ら れ た C(t)を次式にフィッティングしてムCお よ びC{O)を算出した。
C(t) = C(∞) ‑d.C exp( ‑tjr). (2.1 )
ここで、ムCお よ び ァ は 、 そ れ ぞ れ 捕 獲 中 心 に 対 応 す る 過 渡 容 量 変 化 の 大きさおよび熱放出の時定数である。 もし、近接した複数η(個)の深い 準 位 が 存 在 し 、 過 渡 容 量 変 化 に そ れ ら の 寄 与 が 無 視 で き な い 場 合 に は 、 次式を用いた。
C(t) = C(∞)一乞d.Ciexp( ‑tjη). (2.2)
ここで、d.Ciお よ び 乃 は 、 そ れ ぞ れ
t
番 目 の 捕 獲 中 心 に 対 応 す る 過 渡 容 量変化の大きさおよび熱放出の時定数である。ムCiお よ び 乃 は 、 非 線 形 最 小 自 乗 法 [85]に よ り 算 定 さ れ る の で 、 複 数 の 捕 獲 中 心 が 近 接 し て い る 場合でも以下に述べる解析は可能である。3 .
以 上1
f'V2
を 、 注 入 バ イ ア ス 弥=1
f'V9V
の範囲、 0.5V
間 隔 で 繰 り 返 し、V
pの 関 数 と し て ムCおよびC(O)を得た。4. d.Cお よ び C(O)の Vp依存性より、 n形中のアクセプターに対しては、
1 .. 8C(0) ε lVT{Xp)
×一一一一一
=‑x
C{O)ハ
K v ‑ ; ‑‑
q r. WJ[Ns ‑NT{WO)J [
Ns ‑NT(Wp)+
(xpjWp)NT(xp)]×
3 1 L ,
(2.3a) vv pn形中のドナーに対しては、
1 ,, 8C(0) ε lVT(Xp) .. Xp
一一一一 ×一一一一一=一 x̲̲ _~ ̲ ̲ ̲ ̲ ̲ . ̲ x一一‑
C(O) .. 8り q.. WJNs[Ns十(XpjWp)NT(xp)J " Wp
p形中のダブルドナーに対しては、
1 ,, 8C(0) ε " 1VT(Xp)
ー 曹 一 一 一
C(O) .. 8弥 q ‑WJ[Ns‑2NT(WO)]
×INs‑2NT(Wp)+(zp/Wp)NT(zp)l
x
‑;Xp ‑;‑;‑,""p
(2.3b)
(2.3c)
を用い、表面からの距離zに お け る 各 捕 獲 中 心 の 濃 度 分 布 NT(x)を求め た
[ 8 6 J
。 こ こ で 、 り は 注 入 バ イ ア ス り 印 加 時 に 捕 獲 中 心 の 準 位 と 擬 フ ェ ルミ準位とが交差する点の位置、 Wpは り 印 加 時 の 空 乏 層 幅 、 " も は VR 印 加 時 の 時 刻 t=
0における空乏層幅、N s
は浅い不純物濃度、 Eお よ び qは そ れ ぞ れ 半 導 体 の 誘 電 率 、 電 気 素 量 で あ る 。 こ れ ら の 式 は 、 ポ ワ ソ ン 方 程 式 で 決 定 さ れ る 、 空 乏 層 内 不 純 物 の 電 荷 と 印 加 バ イ ア ス の 関 係 よ り求められる(付録A . 2 )
。こ の よ う に し て 算 出 さ れ た 各 捕 獲 中 心 の 濃 度 分 布 を 図 2.2に示す。図 2.2にお いて、 η 形シリコン中の格子間ノ〈ナジウムが形成する捕獲中心NV1(・)および NV2(O)の濃度は試料内部の深い領域で一様に分布し、表面付近で減少してい る。これとは逆に、成因の不明な捕獲中心NV3(A)の濃度分布は表面側で大き く、試料内部に向かつて減少している。 一 方、p形試料中の格子問ノ〈ナジウム の 捕 獲 中 心
P V l (
ム)は試料内で一様 に 分 布 し て い る 。 こ れ ら の 試 料 表 面 か ら さらに約30μmの 層 を 同 じ 組 成 の 酸 性 溶 液 で 化 学 エ ッ チ ン グ し 再 び 濃 度 分 布 を測定しても、図2.2と全く同じ濃度分布が得られた。すなわち、新しい試料 表面から深さ 4μmにおける NV3の濃度は再び約1.0X 1013 cm‑3になった。以 上より、化学エッチングを施すと、試料表面付近において、格子間パナジウム が 形 成 す る 捕 獲 中 心 (NVlお よ びNV2)の 濃 度 が 減 少 し 、 成 因 の 不 明 な 捕 獲 中 心 (NV3)が形成されることが判る。 NV3の 分 布 は 試 料 表 面 に 向 か う に つ れ て増加しており、 NV3は 、 表 面 か ら 導 入 さ れ た 何 ら か の 不 純 物 と 関 連 が あ る こ と を 強 く 示 唆 す る 。 す な わ ち 、 格 子 間 パ ナ ジ ウ ム が 化 学 エ ッ チ ン グ に よ っ て 表 面 か ら 導 入 さ れ た 不 純 物 の 影 響 を 受 け 、 そ の 結 果 と し て 格 子 間 ノ 〈 ナ ジ ウ ム の み が 形 成 す る 捕 獲 中 心(NVlお よ びNV2)の 表 面 付 近 の 濃 度 が 減 少 し 、 格 子 悶 パ ナ ジ ウ ム と そ の 不 純 物 と の 相 互 作 用 の 結 果 と し て 捕 獲 中 心NV3が 形 成 さ れ
5 L
ると考えられる。一方、 p形試料中の格子間ノ〈ナジウムの捕獲中心(PV1)はそ
一
の 不 純 物 の 影 響 を 受 け な い 。 以 下 の2ふ2'" 2.3.5節 で は 、 観 測 さ れ た 捕 獲 中 心
仁 ト ト ト
ハ υ
Rd qJ‑L ト
( ? ε υ ) C O
一日
O L
で ω u
c o υ
一
トー →
の う ち 、 格 子 間 パ ナ ジ ウ ム の 形 成 す る 準 位 で あ る NVl、NV2、PVlの 電 気 的 性
一一一一一‑ 6ー ム̲.b̲
. . A → ̲ . . . A ̲ ‑ 6 ブ ‑ 4 ‑ z 一 一 ‑ 1 づ 2 . 2
• 0.0 <:コ‑ ‑ ~
。
• 。
• 。
ドー
ショットキ一面の化学エッチング後に これらの実験には、
質を詳しく調べる。
‑
→
一→
一
.
一. . . . .
• 。
&
。
A
。 •
コ
。
トー
2000Cで30分 間 の 熱 処 理 を 施 し て NV3を消滅させた試料を用いる。
&
&
企
一
1 0
4
9 6 7 8
Depth(μm)
5
←
1 0 1 2 4
捕獲中心NV1(・), NV2(O), NV3(A), PVl(ム)の濃度分布.パナジウムを 図 2.2
11500Cで20時間導入し, HN03 : HF : CH3COOH
=
10 : 5 : 2の溶液で3分間化学エッ チングした試料.破線は,濃度2.2X 1013 cm‑3を示す.2.3.2 格 子 間 バ ナ ジ ウ ム の 多 重 準 位 の 確 認
ESRお よ びENDORを 用 い た 実 験 に よ り 、 パ ナ ジ ウ ム は シ リ コ ン 結 晶 中 に おいて格子間位置(む‑site)を占めるとされている [78‑80]。シリコン中で、同ー の 格 子 問 バ ナ ジ ウ ム 原 子 が 複 数 の 荷 電 状 態 を と り 、 そ れ ぞ れ の 荷 電 状 態 聞 の 遷 移 がNVl、NV2、PV1に対応することを確認するために、 1050'" 12000Cで バ ナ ジ ウ ム を 導 入 し た η 形 お よ びp形 の 試 料 を 用 い、 各 捕 獲 中 心 の 濃 度 測 定
を 行 っ た 。 そ の 結 果 を 図 2.3に 示 す 。 各 導 入 温 度 に お い て 3つ の 捕 獲 中 心 の 濃 度はほぼ等しし、。よって、 NVl、NV2、PVlが 同 一 の 格 子 間 バ ナ ジ ウ ム の 多 重 準位に対応すると考えられる。
1 0
141 2 0 0 1 1 0 0 ( O C )
l:l
ー
広、
ε
Fu 9
.̲"
C
。
二 。 1 0
13ト'‑ ~
咽CbJ
。 u
c o
仁〉 企
10
12ー
6 . 5 7 . 0 7 . 5 10 4 /T (K‑
1)図 2.3 捕 獲 中 心NV1(
・ , )
NV2(O),
PV1(ム)の濃度の拡散熱処理温度依存性.. . . .
,
O L.
4,回
c ω
仁3
c o
仁J
1 0
13一
( 0 )
ト 一 一
00000似 却 炉 広 間 四
. . . . . . . . . . . . . . . . . . 司. . . .
~ 司,・‑. .
‑' f
(b)
一 一 一 ー 一 一 ー ー ー ー ー ー ー 一 ー 一 一 一 ー ー トー
6 6 6 6 6 6 6 6必 ゐ6Ood.ιd泊。ωch::o叫泊。
2.3.3 格 子 間 パ ナ ジ ウ ム の ア ク セ プ タ ー ・ ド ナ ー 判 別
捕 獲 中 心NVl、NV2、PV1が そ れ ぞ れ ア ク セ プ タ ー で あ る か ド ナ ー で あ る か を 決 定 す る た め に 、 空 乏 層 中 の 空 間 電 荷 分 布 を 測 定 し た 。 測 定 に は 、 12000C で5時 間 の 熱 処 理 に よ り バ ナ ジ ウ ム を 導 入 し た 試 料 を 用 い た 。 n形 試 料 に 対
しては、 NV1お よ びNV2の
D L T S
信 号 の ピ ー ク 温 度 の 123K
お よ び227K
でD L T S
法 を 用 い 、 注 入 バ イ ア ス 一 定 ( り =0 V)の 下 で 、 逆 バ イ ア スV
Rを OV か ら 20Vま で0.5V間 隔 で 変 化 さ せ な が ら 測 定 を 行 っ た 。 p形 試 料 に 対 し て は 、 捕 獲 中 心PVlか ら の 正 孔 の 熱 放 出 が 十 分 遅 く な る 温 度 153Kでc ‑ v
法 を用 い 、 注 入 バ イ ア ス を 除 ニ O Vに 設 定 し て 捕 獲 中 心 に 正 孔 を 捕 獲 さ せ た 後 、 逆 バ イ ア ス VRをO Vか ら 20Vま で0.5V間 隔 で 変 化 さ せ な が ら 容 量 C(O)を 直 接 測 定 し た 。 こ れ に よ り 得 ら れ た 各 測 定 温 度 に お け る C(O)の逆ノ〈イアス陥 依 存 性 を 用 い 、 各 捕 獲 中 心 が 多 数 キ ャ リ ア を 捕 獲 し た と き の 空 間 電 荷 濃 度 Nc の 分 布 を 次 式 [87]より求めた。
σ3
ε
~1014
。
CC(O).. bVR
Nc(Wo)
=
一 一 × 一 一 × 一 一 一WJ
"bC(O).得られた空間電荷濃度分布を、 n形と p形 を 区 別 し て そ れ ぞ れ 図 2.4(a)お よ び 2.4(b)に示す。
( 2
.4)σ3
1 ε
にJ
E1014
VOLVF﹂
ω υ c o υ
1 0
130 1 0 20
Dep t h(μm)
30
図 2.4 捕獲中心NVl(・)または NV2(O)に電子を捕獲させた状態(a)および PVl(ム)に正孔を捕獲させた状態(b)で測定した空間電荷濃度分布.パナヅウムを 12000Cで9時間導入した n形試料(a)とp形試料(b).化学エッチング後に2000Cで 30分間の熱処理を施した試料を使用.破線は浅い不純物濃度.12000Cにおけるパナジ
測 定 さ れ た 空 間 電 荷 濃 度
N c ( x )
は、 η 形試料においては正味のドナー濃度、p形 試 料 に お い て は 正 味 の ア ク セ プ タ ー 濃 度 と 等 し い と 見 な せ る 。 す な わ ち 、
Ns‑NT(x) (
η形試料中のアクセプター),N c ( x ) =
~Ns ( n
形試料中のドナー), (2.5) Ns ‑
2NT( x )
(p形 試 料 中 の ダ ブ ル ド ナ ー )•よ っ て 、 空 間 電 荷 分 布 に 基 づ い て 各 捕 獲 中 心 を 判 別 で き る 。 図 2.4(a)より、
NVlおよびNV2が電子を捕獲したときの正味のドナー濃度はそれぞれ3X 1013、 9 X 1013 cm‑3であり、図 2.4(b)より PV1が 正 孔 を 捕 獲 し た と き の 正 味 の ア ク セ プ タ ー 濃 度 は 3X 1013 cm‑3であると判る。 DLTS測 定 よ り 求 め た こ の 試 料 に お け る 格 子 間 バ ナ ジ ウ ム の 濃 度 は 約6X 1013 cm‑3であった。また、浅い不純 物濃度は、図 2.4に破線で示しているように、 n形 で は 1.0X 1014 cm‑3、p形 で は 1.4X 1014 c m ‑3である。 NV1、NV2、PV1が多数キャリアを捕獲したとき、
浅 い 不 純 物 濃 度 か ら 正 味 の ド ナ ー ま た は ア ク セ プ タ ー 濃 度 を 差 し51~、た値は、
そ れ ぞ れ 、 格 子 問 バ ナ ジ ウ ム の 濃 度 の 約 1倍、 0倍、 2倍であるので、 NV1、 NV2、PV1は、それぞれアクセ プタ一 、 ドナー 、 ダブル ド ナーで あ ると結 論 さ れ る 。 こ れ ら を 格 子 間 バ ナ ジ ウ ム Viの多重準位と対応させると、
NV1 :アクセプター (VJ/0), (2.6) NV2 : ドナー (V~/+) , (2.7) PVl:ダブルドナー (vt/++), (2.8)
と な る 。 こ こ で 、 例 え ばVJ/0は 格 子 間 バ ナ ジ ウ ム の ー1価 と 中 性 状 態 と の 間 の状態選移を示す。
2.3.4 格 子 間 バ ナ ジ ウ ム の 捕 獲 断 面 積
捕 獲 中 心NV1、NV2、PV1の 多 数 キ ャ リ ア 捕 獲 断 面 積 σNVl、σNV2、σPVlを DLTS信 号 の パ ル ス 幅 依 存 性 [83]よ り 求 め た 九 州Vlに 対 し て は 110^‑J 140 K、
σNV2に対しては 210rv 260 K
,
σPVlに対しては 250^‑J 300 Kの 温 度 範 囲 で 測 定 した。その結果を図2.5に 示 す 。 図 中 の 実 線 は 最 小 自 乗 の 結 果 で 、 次 式 の よ う に表される。σNVl二1.2 x 10 ‑16 c m 2 ( 11 0く T
<
140 K),
σNV2
=
5.3 X 10‑15 c m2 (210くTく260K),
σPVl = 1.16 X 10‑16 exp( ‑0.120/ kT) c m2 (250く
T
く 300K).(2.9)
(2.10) (2.11)
但し、 σNVl、σNV2の温度依存性は無視した。 σPVlの 活 性 化 エ ネ ル ギ ー は0.120 eVと比較的大きな値である。各捕獲断面積の値を比較することにより、 NV1、 NY2中心での電子捕獲が、それぞれ中性的、引力的であり、 PV1で の 正 孔 捕 獲 が 斥 力 的 で あ る と 示 唆 さ れ る 5。これは、 NV1、NV2、PV1が そ れ ぞ れ ア ク セ プ タ 一 、 ド ナ ー 、 ダ ブ ル ド ナ ー で あ る と し た2.3.3節の結論と合致する。
I解析の詳細は、付録A.lを参照。
Sキャリア捕獲中心は、捕獲率の大きさによって、引力的、中性的、斥力的と一般に 区別され、それぞれ、キャリアとは異符号、中性、問符号の荷電状態の不純物中心に よるキャリア捕獲に対応する。
1 0 ‑ 1 4
てT O合ひ‑0‑00‑0‑
c
寸 I NV2
ε u
S618 十 てと
3 4
N V 1
~
11J 7 8 9 1 0 3 / T ( K ‑ 1)
図 2.5 捕獲中心NVl(
・ , )
NV2(O),
PVl(ム)に対する捕獲断面積の温度依存性.化学エッチング後に2000Cで30分間の熱処理を施した試料.
2.3.5 格 子 間 バ ナ ジ ウ ム の 熱 放 出 率
捕 獲 中 心NVl、NV2、PVlの多数キャリア熱放出率eNVl'"eNV2、epVlの 温 度 依 存 性 を 調 べ 、 捕 獲 中 心 の 準 位 深 さ を 求 め た 。 広 い 温 度 範 囲 で 正 確 な 熱 放 出 率 と そ の 温 度 依 存 性 を 得 る た め に 、 高 温 域 で は
DLTS
の レ ー ト ウ イ ン ド ウ 変 化 法( t t ! t
2=
0.016/0.16 '" 5.0/50 ms)を 、 ま た 低 温 域 で は 過 渡 容 量 変 化 を 直 接 測 定 し て そ の 時 定 数 を 見 積 も る 方 法(SingleShot法)[90]を 用 い た 。 そ の 結 果 を 図 2.6 ~こ示す。図中の実線は最小自乗の結果であり、次式で表される。eNv
t !
T2=
5.67 x 106exp(‑0.196/kT) s‑IK‑2 (70<
Tく 140K),
(2.12) eNV2/T2ニ 9.43X 107 exp( ‑0.449jkT) s‑IK‑2 (150く T<
265 K),
(2.13) epvI /
T2ニ 2.52x 106exp(‑0.457jkT) s‑11く‑2 (160く T<
300 K). (2.14)各 捕 獲 中 心 の 準 位 深 さ は 、 熱 放 出 率 の 活 性 化 エ ネ ル ギ ー か ら 捕 獲 断 面 積 の 活 性 化 エ ネ ル ギ ー を 差 し 引 い た 値 に 等 しL、。従って、これらの活性化エネル ギ ー よ り 各 捕 獲 中 心 の 準 位 深 さ が 求 め ら れ る 。 以 上 2.3.1f'.J 2.3.5の 結 果 を 併 せ 、 各 捕 獲 中 心 の 電 気 的 性 質 が 以 下 の よ う に 明 ら か に な っ た 。
NV1 :アクセプター (Vi/O)at Ec ‑0.20 eV
,
NV2 : ドナー (V?/+) at Ec ‑0.45 eV
,
PVl :ダブルドナー (vt/++)at Ev
+
0.34 eV.(2.15) (2.16) (2.17)
こ れ ら の 結 果 に は 、 シ リ コ ン 中 の 格 子 間 パ ナ ジ ウ ム に 関 す る 他 の 研 究 者 の 報 告 [11] と の 大 き な 差 異 は な い が 、 各 捕 獲 中 心 の 準 位 深 さ に 若 干 の 相 違 が み ら れ る 。 本 研 究 に お い て は 、 従 来 よ り も 広 い 温 度 範 囲 で 測 定 し た の で 、 こ こ で 得
られた値がより正確な値と考えられる。
1 0 ‑ 2
,同『、
C可
注こ ーλ 寸
1 0
~u)
、̲."
C可
ト‑
(]) ー自
1 0 ‑
1083
2 . 4 格 子 間 バ ナ ジ ウ ム の 拡 散 係 数 と 固 溶 度
シ リ コ ン 中 の 3d遷 移 金 属 の 拡 散 現 象 は 、 か な り 詳 細 に 研 究 さ れ て い る [11
,
13,
14]。 し か し 、 シ リ コ ン 中 に お け る バ ナ ジ ウ ム の 拡 散 係 数 、 固 溶 度 に 関 す る 信 頼 の お け る 報 告 は な か っ た 。 こ こ で は 、 格 子 間 ノ 〈 ナ ジ ウ ム が シ リ コ ン 中 に形成する3
つの捕獲中心のうち、DLTS
信号の解析が容易なことを考慮、して NV1(アクセプタ一)を選択し、その拡散係数および固溶度を測定した。広い温 度 範 囲 に お け る 正 確 な 拡 散 係 数 と そ の 温 度 依 存 性 を 求 め る た め に 、 高 温 領 域 では 2.4.1節 で 述 べ る 導 入 実 験 を 、 低 温 領 域 で は2.4.2節 で 述 べ る 外 方 拡 散 実 験 を行った。7 ̲ 9 . 1 1 1 0 ' " ' I T ( K 1 )
1 3
5 1 5
2.4.1 導 入 実 験(I11‑Diffusio11)
950 I"'V 12000Cの 所 定 の 温 度 で の 拡 散 係 数 お よ び 固 溶 度 を 求 め る た め に 、 そ
の 温 度 で 一 定 の 時 間 だ け 熱 処 理 を 施 し バ ナ ジ ウ ム を 拡 散 さ せ た 試 料 を 用 い て 、 捕 獲 中 心NV1に対する深さ方向の濃度分布を測定した。実験に際しては、
シ ョ ッ ト キ ー ダ イ オ ー ド を 作 製 し
DLTS
法 で 濃 度 を 測 定 し た 後 、 シ ョ ッ ト キ 一 面 を エ ッ チ ン グ し 、 そ の 試 料 を 用 い て 再 びDLTS
法 を 適 用 す る と い う 手 続 き を 繰 り 返 し た 。 第3章 で 述 べ る よ う に 、 熱 処 理 を 施 さ な い 試 料 で 測 定 さ れ た パ ナ ジ ウ ム の 濃 度 は 若 干 の 過 小 評 価 と な る が 、 誤 差 が そ れ ほ ど 大 き く な い と 考 え ら れ る の で 、 実 験 の 煩 雑 さ を 考 え て 2000Cの熱処理を施さずに測定を行った。実 験 に よ り 得 ら れ た 濃 度 分 布 を 図2.7に示す。これらの濃度分布
N ( x ,
t)を、拡 散方程式、NV1
図 2.6 捕獲中心NVl(・), NV2(Q), PVl(.6.)に対するキャリア熱放出率
( T
2補正)のアレニウスプロット.化学エッチング後に2000
C
で30分間の熱処理を施した試料.Tw‑qr N
一
δ内d一
w v
D 一 一
弓d
‑︐
?L
M
川 一 δ
向 ︒ 一
(2.18)
を以下の初期条件、
N ( x , O ) =
0,
N(O
,
t)=
N(仰)=
Nv,
(2.19) (2.20)
の 下 で 解 い て 得 ら れ る 次 式 [19]、