3次元
CT 再構成画像による
ヒト膝前十字靭帯大腿骨側付着部の検討
- 膝関節鏡シミュレーション -
日本大学大学院医学研究科博士課程
外科系整形外科学専攻
白田 智彦
修了年 2014 年
指導教員 長岡 正宏
3次元
CT 再構成画像による
ヒト膝前十字靭帯大腿骨側付着部の検討
- 膝関節鏡シミュレーション -
日本大学大学院医学研究科博士課程
外科系整形外科学専攻
白田 智彦
修了年 2014 年
指導教員 長岡 正宏
概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 諸言・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7 1.はじめに 2.膝関節・ACL の解剖 3.ACL の損傷の概念とメカニズム 4.ACL 損傷に対する治療 5.ACL 再建時の解剖学的骨孔位置の重要性 6.膝関節鏡を用いた外科的治療 7.本研究の仮設 8.本研究の目的 対象と方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23 A.対象 B.方法 1.対象膝の抽出 2.ACL 付着部の同定 3.ACL 付着部の 3DCT 画像作成(膝関節鏡シミュレーション) 4.3DCT 画像(膝関節鏡シミュレーション)の評価方法 5.統計学的解析 結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29 1.ACL 付着部の解剖学的位置 2.膝関節鏡シミュレーションにおける関節鏡挿入角度による ACL 付着部鏡視位置の検討
考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31 まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・36 謝辞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・37 表・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・38 図・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・39 引用文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・51 研究業績・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・55
1
概要
【背景】 近年、スポーツ人口が増加しており、膝関節靭帯損傷のため整形外科を受診 す る 患 者 が 増 加 す る傾 向 に あ る 。 な か でも 膝 前 十 字 靭 帯 (Anterior Cruciate Ligament; 以下 ACL)損傷は比較的多くみられ、コンタクトスポーツ、ジャ ンプや急激なストップ動作を要求される競技では損傷の機会が多い。この靭帯 は、いったん損傷されれば治癒しにくく、膝くずれを生じるようになるためス ポーツ活動に支障をきたしやすい。また、二次的に半月損傷を合併し、さらに 放置すれば数年後には膝関節軟骨の損傷が生じ変形性関節症へと進展する。そ のため、膝靱帯損傷の中でも、手術の必要性が高い靭帯である。損傷した際は、 保存療法や手術療法など、各種治療方法があるが、近年では、関節鏡を用いた ACL 再建術が積極的にすすめられている。 ACL 再建術において移植腱を通す際に用いる骨孔について、大腿骨側の解剖 学的位置への骨孔作成の重要性が指摘されている。非解剖学的位置へ骨孔を作 成することで、回旋不安定性が増すことが知られている。 大 腿骨 骨孔 位置は ボリ ュー ムレ ンダリ ング 法に よる 3次 元 CT 再構成画像 (以下, 3DCT)によってはじめて確認することが可能であるが、臨床の現場で2 は多くの場合、関節鏡での視野において骨孔位置を決定している。 過去の報告では大腿骨外顆内側壁 ACL 付着部を Quadrant 法に代表される大 腿骨内側壁を真側面から見た像で位置表示している。すなわち膝正面(遠位よ り近位に向かって膝関節面を見る)より 90°関節鏡を外側に振った真側面から の鏡視像(以下, 90°VIEW)に該当する像によって骨孔位置を決めているが、 実際に 90°VIEW は解剖学的制約により、その視野を確保出来ない。関節鏡が 大腿骨内顆に接触してしまうためである。また、関節鏡での視野は挿入部位に よる関節鏡の挿入角度の影響により見え方が左右され、一定の骨孔位置を作成 することが困難である。関節鏡から見た骨孔位置を再現できるよう、3DCT を 用いて関節鏡視シミュレーションを行い、鏡視角度による骨孔位置の相違につ いて検討した報告例は未だない。 【目的】 実際の手術においては、解剖学的 ACL 付着部に再建靭帯を移植できるよう、 再建靭帯を設置するために理想の骨孔位置を想定して鏡視下に骨孔作成するが、 想定外の骨孔位置となることがある。これは膝前方からの鏡視像と Quadrant 法での骨孔位置イメージとの間にギャップがあるためと考えられる。 本研究の目的は、大腿骨外顆内側壁の ACL 付着部を解剖学的にマーキングし、
3 靱帯付着部の観測角度(視野)の変化によっておこる位置表示の変位を、3次 元 CT 再構成画像による膝関節鏡シミュレーションにより明らかにすることで ある。 【対象と方法】 本研究は日本大学医学部倫理委員会の承認を受け研究を行った(承認番号 24-13-0)。系統解剖用献体 6 体より 12 膝(平均年齢 82.5 歳)を対象とした。
ACL を前内側線維束(Anteromedial bundle; 以下, AMB)と後外側線維束
(Posteromedial bundle; 以下, PMB)に分け、ACL 付着部を銅製金属糸でマ
ーキングし 3DCT モデルを作成した。control としての Quadrant 法に相当する
側面像である 90°VIEW を作成した。関節鏡視を想定し、前内側ポータルを想
定 し た 膝 正 面 よ り 内 側 に 30 ° 傾 け た 像 ( 以 下 , 30 ° VIEW) と 、 far
anteromedial ポ ー タ ル を 想 定 し た 膝 正 面 よ り 45 ° 傾 け た 像 ( 以 下 , 45 °
VIEW)を作成した。それぞれの VIEW で Quadrant 法を膝関節鏡シミュレー
ションに用いられるよう改良した座標を作成し、外顆内側面-後壁-大腿骨骨
幹部後面の交点を 0 点と設定し、Blumensaat's line に平行な線を X 軸とし端
は外顆内側面前方軟骨境界、垂直な線を Y 軸とし端は下方軟骨境界とし、各座
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表した。90°VIEW、45°VIEW、30°VIEW の 3 群間比較は一元配置分散分
析を用い、任意の2群間比較は Tukey の多重比較法を用いた。統計学的解析に
は、統計解析ソフト SAS version 9.4 (SAS Institute, Cary, NC, USA)を使用し
た。有意水準は両側 5%を用いた。 【結果】 各座標位置を(X, Y)(%)と表記すると、AMB 中心位置は、90°VIEW(16.2± 5.65, 35.5±9.61)、45°VIEW(14.5±5.53, 32.9±8.12)、30°VIEW(9.10±5.19, 34.9 ± 7.93)、 PLB 中 心 位 置 は 、 90 ° VIEW(31.6 ± 9.68, 67.0 ± 8.31)、 45 ° VIEW(31.2±12.20, 64.2±6.66)、30°VIEW(21.2±11.32, 66.2±8.20)、であ った。鏡視角度による AMB・PLB の X 軸・Y 軸における座標変位の統計結果 は下記のとおりである。 ・%AMB (X) 一元配置分散分析:3 群間で有意差あり (p=0.008) 多重比較法:90°-30°の 2 群間で有意差あり (p=0.008)、45°-30°の 2 群 間で有意傾向あり (p=0.052) ・%AMB (Y) 一元配置分散分析:3 群間で有意差なし (p=0.743)
5 多重比較法:各 2 群間で有意差なし ・%PLB (X) 一元配置分散分析:3 群間で有意差あり (p=0.047) 多重比較法:90°-30°の 2 群間で有意傾向あり (p=0.071)、45°-30°の 2 群間で有意傾向あり (p=0.088) ・%PLB (Y) 一元配置分散分析:3 群間で有意差なし (p=0.665) 多重比較法:各 2 群間で有意差なし 【考察】
AMB では 30°VIEW にて X 軸(deep-shallow)方向で deep となり、90°
VIEW での位置を当てはめると鏡視での shallow(解剖学的には遠位)に骨孔 が作成されやすいことが分かった。Y 軸(high-low)方向に関しては大きな変 化はなかった。PLB では 30°VIEW にて X 軸方向で deep となり同様の傾向を 認めたが、Y 軸方向に関しては大きな変化はなかった。すなわち、関節鏡視下 ACL 再 建 術 時 に 30°VIEW( 前 内 側 ポ ー タ ル に 相 当 ) か ら 鏡 視 し た 時 に 、 AMB・PLB ともに X 軸方向では、術者が思うよりも shallow 方向へ骨孔が作 られてしまう事が多く、さらに 0°VIEW に近づく前外側ポータルからは骨孔
6 位置がより shallow に作られやすい事が予想される。臨床の場において、本研 究で得られた知見を関節鏡視下 ACL 再建術に応用することにより、より正確な 付着部を想定し、解剖学的位置に骨孔を作成することができ、骨孔作成時のピ ットフォールを回避する一助となる可能性が明らかとなった。 【結語】
屍体膝の ACL 付着部を、手術用顕微鏡を用いて indirect insertion と direct
insertion に分け、direct insertion の中心を決定した。この方法は過去に報告
されていない。鏡視下 ACL 再建術における大腿骨骨孔作成時、解剖学的付着部
位置が鏡視角度によっては AMB、PLB ともに遠位方向(鏡視での前方)に変
位する傾向にあり、特に鏡視での deep-shallow 方向で顕著となるため注意が必
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諸言
1.はじめに
近年、プロに限らずアマチュアにおいてもスポーツ人口が増加しており、膝
関節靭帯損傷のため整形外科を受診する患者が増加する傾向にある。なかでも
前十字靭帯(Anterior Cruciate Ligament; 以下, ACL)損傷は比較的多くみら
れ、ラグビー・柔道・アメリカンフットボールなどのコンタクトスポーツや、 ジ ャ ン プ や 急 激 な ス ト ッ プ 動 作 を 要 求 さ れ る バ ス ケ ッ ト ボ ー ル ・ バ レ ー ボ ー ル・スキーなどの競技では損傷の機会も多い。この靭帯はいったん損傷される と治癒しにくいためスポーツ活動に支障をきたしやすく、二次的に半月損傷を 合併し、さらに放置すれば数年後には膝関節軟骨が損傷してしまう変形性関節 症へと伸展するため、治療の必要性が高い靭帯である。 損傷した際は、保存療法や手術療法など各種治療方法があるが、今日最も一 般的な治療として、関節鏡視下 ACL 再建術が行われている。一般的な ACL 再 建術は脛骨および大腿骨に骨孔を作成し、ハムストリング(半腱様筋腱、薄筋 腱)や骨付き膝蓋腱などを移植腱として通し固定する。 ACL 再建術において術後成績に大きく影響する因子として、大腿骨側の解剖 学的位置への骨孔作成の重要性が指摘されている1。過去の報告では、大腿骨の
8 骨孔位置は X 線像2, 3 や 3DCT 4 によって表されている。これは Bernard の報 告2を基に普及したもので、Quadrant 法として知られている。それは大腿骨外 顆内側壁の ACL 付着部を真正面(=大腿骨長軸に対し真側面)から見た像であ り 、 鏡 視 で は 90°鏡 視 像 ( 以 下 、 90°VIEW) に 相 当 す る 。 し か し 、 90° VIEW は関節鏡が大腿骨内顆に当たってしまう解剖学的制約により術中には再 現できない。そのため実際の膝関節鏡視所見とは差異があり、過去の報告が関 節鏡視下手術では参考にならないことが多い。 膝関節の単純 X 線側面像において大腿骨遠位部(膝関節部)を X 線で側面よ り撮影した際、顆間部天井に示される線を Blumensaat’s line と呼んでいる。
この Blumensaat’s line は ACL 再建で作成した骨孔位置確認の基準線として用
いられる指標のひとつである。Bernard 2の Quadrant 法では、Blumensaat’s
line を X 軸と設定し、X 軸方向の近位(鏡視の deep)-遠位(鏡視の shallow)
と、Blumensaat’s line に垂直な Y 軸方向の高位(鏡視の high)-低位(鏡視の
low)の割合を骨孔作成位置の指標にする(図 1 A)。関節鏡の鏡視角度によっ て関節鏡視像の deep-shallow と high-low の見え方が異なることから、鏡視角 度による骨孔作成中心点の見え方の違いを検討することは極めて重要である。 そこで今回、ボリュームレンダリング法による3次元 CT 再構成画像(以下, 3DCT)を用いて、膝関節鏡視像をシミュレーションした画像を作製した。大腿 骨外顆内側壁を大腿骨長軸に対し真側面から見た Quadrant 法2 などに代表さ れる 90°VIEW に準ずる座標による表示は、手術時に ACL 付着部を確認する
9
際に用いる関節鏡では解剖学的制約により視野を確保できず、表示できない。
前述のように関節鏡が大腿骨内顆に接触してしまうためである。膝関節鏡シミ
ュレーションとして、3DCT にて関節鏡手術で実際に視野を得られ用いること
が で き る 前 内 側 ポ ー タ ル か ら の 鏡 視 像 を 想 定 し た 30 ° VIEW と 、 Far
anteromedial ポータルからの鏡視像を想定した 45°VIEW における、ACL 大
腿 骨 側付 着 部の 鏡 視時 の 鏡視 所 見の 差 異に つ き 検 討 を行 っ た ( 図 2 A,B)。 90°VIEW(図 1 B,C)と 45°VIEW・30°VIEW の座標を比較することによ り、関節鏡の挿入角度によっておこる、座標表示の変位を確認できると考えた。 2.膝関節・ACL の解剖 膝関節は人体中で最大の荷重関節で、その機能を営む構成体もよく発達して いる。膝関節は約 170°の可動域をもち、屈伸運動ばかりでなく、内外旋も行 う蝶番関節である。関節面の構造は複雑で関節腔の容量も大きい。内腔は滑膜 で覆われており、内外側半月板は特異な構造をなす。線維性関節包も比較的厚 く、周囲の靭帯も豊富で、それぞれの接触部には多くの滑液包をみる。特に膝 関 節 の 安 定 性 を 得 る た め の 前 十 字 靭 帯 (ACL ) 、 後 十 字 靭 帯 ( Posterior cruciate ligament; 以下, PCL)、内外側側副靭帯はよく発達していて強固であ る。さらには、薄筋、支帯も固有の発達をとげ、膝関節の広い可動性を得ると
10 ともにしっかりした安定性を保っている。 膝関節は大腿骨と脛骨をつなぐ関節であるが、大腿脛骨関節と膝蓋大腿関節 の2つからなり、前者は各々の内外顆で形成する関節面、すなわち内・外側コ ンパートメントをつくっている。 大腿骨と脛骨の骨軸がなす解剖学的大腿脛骨角は正常人では 175°で軽い外 反位をとる。内顆、外顆の関節面は前後方向に長く、その軸は平衡ではなく前 方で交差する。一方、大腿骨内顆は外顆に比べ球形に近く、対面の脛骨内顆は 凹面をなし適合面をつくる。外顆は大腿骨側、脛骨側ともに凸面をしており、 前後に落ちるような運動となる。これらの接触面積は膝関節最大伸展位でもっ とも広く、膝の安定性も高い。 膝関節の靭帯はその広い可動域における運動の誘導と不安定性の防止に役立 つが、これには膝蓋靭帯、内・外側側副靭帯および ACL、PCL が主役をなす。 膝蓋靭帯は膝蓋骨下部より起こり、脛骨粗面に停止する強靭な靭帯である。 内・外側膝蓋支帯は膝蓋靭帯および膝蓋骨の両側に存在する強靭な線維束であ り、関節包を補強している。内側側副靭帯は長さ約 10cm で、大腿骨内側顆と 脛骨内側顆を広く覆う。深層と浅層 2 層に分けられるが、深層は内側半月板と 接して関節包の一部をなし、浅層は大腿骨内側上顆より起こり三角状に広がり ながら脛骨内側面につき、その後部は斜靭帯とよばれ、関節包につく。浅層が 膝関節の外反および脛骨の外旋の制御機能をもち、深層が半月板の固定に役立 つ。外側側副靭帯は大腿骨外顆のやや後方から起こり、大腿二頭筋腱とともに
11 腓 骨 頭 に つ く 。 膝 窩 筋 と と も に 働 き 、 膝 関 節 の 過 度 の 内 反 防 止 に あ ず か る 。 内・外側側副靭帯とも、膝関節伸展位で最も緊張し、屈曲位では弛緩する ACL・PCL は関節内で互いに交差して走り、前方および後方引出し症状の防 止にあずかっている。一方、回旋運動の際にはねじれを生じ、これを抑制する。 ACL は大腿骨外側顆の顆間窩部から脛骨前顆間区へ後外側から遠位前方にね じれながら走行する線維束で、全体に血管にとんだ滑膜(表層膜)に覆われて い る 。 大 腿 骨 起 始 部 は PCL 起 始 部 よ り 後 方 に 存 在 し 、 そ の 付 着 部 は 15~ 20mm くらいの楕円形である。池内5 による屍体膝に対する検討では、その前 面の長さは 22~28.9mm で、中央の幅は平均 9.5mm、厚さ 4.7mm で、男の方
が女より長い。ACL は前内側線維束(Anteromedial bundle; 以下, AMB)と
後外側線維束(Posterolateral bundle; 以下, PLB)に分けられることは 1975
年 に Girgis ら6 により報告され、中間線維束(Intermediate bundle; 以下,
IMB) の 存 在 も Norwood ら7 に よ り 報 告 さ れ て い る 。 一 般 的 に は IMB は
AMB に含まれ、ACL は機能的に AMB と PLB の 2 線維束より成るといわれて
いる。 各線維束は相補的に生体力学的機能を分担していることが知られているので8, 9、ハムストリング腱を用いた解剖学的 ACL 再建術では、各線維束付着部に骨 孔を作製し、それぞれの線維束を独立して再建することにより、本来 ACL が持 つ生体力学的機能を可能な限り再現することを目標としている。 Otsubo ら10 は、新鮮凍結屍体膝を用いて詳細に各線維束の配列や付着部位
12
置を研究している。ACL を実質部にて 3 線維束に分離し、膝伸展位で内側から
観察すると AMB、IMB、PLB の各線維束は、ほぼ平行に走行していることが
わかる。次に各線維束を付着部から剥離したうえで骨表面を観察すると、大腿
骨側では、付着前縁に一致して大腿骨外顆内側壁に斜走する直線状の骨性隆起
(resident’s ridge)が存在する(図 3 A,B)。後縁は軟骨に沿うように弧状で、
全体としては半円から三日月状の形態を呈している。その陥凹した付着部内の
遠位後方に PLB、その近位に AMB が付着しており、IMB は AMB の遠位前方
に付着している。また、脛骨側では脛骨高原の中央部やや内側の陥凹部に付着 し、三角状の形態を示す。付着部内の前内側に AMB が、前外側に IMB が、後 外側に PLB が付着している。つまり、3 線維束付着部は大腿骨側、脛骨側とも に三角状に配列しており、大腿骨側の配列を反転したように脛骨側に配列して いる。各線維束付着部の面積比は、AMB:IMB:PLB=1:1:2 である。 3.ACL の損傷の概念とメカニズム 最近、スポーツ人口の増加により、膝関節靭帯損傷のため整形外科外来を受 診する患者が増加する傾向にある。なかでも前十字靭帯損傷は比較的多くみら れる損傷で、ラグビー・柔道などのコンタクトスポーツや、ジャンプや急激な ストップ動作を要求されるバスケットボール・バレーボールなどの競技では損
13 傷の機会も多い。この靭帯は、いったん損傷されれば治癒しにくいためスポー ツ活動に支障をきたしやすく、二次的に半月損傷の合併や関節症へと伸展する ため、スポーツ選手にとっては問題の多い靭帯である11。 ACL は、脛骨の前内側より大腿骨の後外側に走行し、大腿骨に対して脛骨が 前方に逸脱するのを制御している。スポーツ活動中によくみられる急激に止ま る、ジャンプする、軸足を中心とし回転するなどの動作では、軽度膝屈曲位で 大腿四頭筋が急激に収縮しており、このような動作においては、大腿四頭筋の 分力により脛骨が前方に引き出されるため、ACL は重要な機能を有している。 本靱帯が損傷されれば、スポーツ活動中、大腿四頭筋が急激に収縮することに より脛骨が前方に亜脱臼し、臨床上膝が「ガクッ」とする膝くずれ現象が出現 する。損傷された ACL は自然治癒能が低いため12、いったん損傷されれば、こ のような機能不全状態が残存する頻度が高く、また脛骨が前方に亜脱臼するこ とにより半月の後節部にストレスが加わり、この部の合併損傷をきたしやすく なる13。さらに、前方不安定性の持続や半月損傷の合併により、二次的に関節 症変化を呈するようになる。 ACL 損傷膝の臨床像は、損傷時期と合併損傷の有無により多彩な像を呈する。 受傷早期では関節内血症となり、関節可動域が減少し、疼痛も強く、日常生活 に支障をきたすが、経過とともに症状は軽快してくる。陳旧例では、日常生活 動作・直進動作では困らないが、ジャンプの着地・急激なストップ動作・ピボ ット動作などで膝くずれを生じる。膝くずれを繰り返し、半月損傷や関節軟骨
14 の変性を合併してくれば、嵌頓症状・関節水症・疼痛などの症状が出現し、ス ポーツ活動だけでなく、日常生活動作にも支障をきたすようになる。 ACL の受傷機転として、大きく直接外力が加わる接触型と、間接的に力が加 わる非接触型の2つがある。ラグビーのタックルなどのように、直接膝に外反 力が加わった場合は接触型であり、バスケットボールなどでジャンプして着地 したときや急激にストップしようとしたときに、大腿四頭筋が急激に収縮し、 損傷する場合は非接触型である。 4.ACL 損傷に対する治療 新鮮例に対する治療の原則は、受傷初期の応急処置・正確な病態把握・治療 方針の決定である。 新鮮例に対する応急処置としては、受傷早期の疼痛・腫脹を軽減する目的で、 RICE 療法(Rest(安静)、Ice(アイス)、Compression(圧迫)、Elevation (挙上))を行う。一般的によく行われているギプス固定は、疼痛の強い初期 に一時的に施行するのはよいが、長時間行えば関節軟骨も栄養・靭帯の修復・ 関節拘縮の面からみて問題点も多く、かつ病態把握がしにくくなる点から、な るべく避けた方がよい。受傷初期では疼痛が強いため、正確な関節不安定性を 検査することが困難な場合が多く、また半月板・他の靭帯損傷合併の有無につ
15 いても診断がつかないこともある。関節内病態のため、MRI 検査や麻酔下での 徒手検査・関節鏡検査を行うことも必要である。 ACL 損傷の経過は、①損傷靭帯の治癒能が低いこと、②保存的治療ではスポ ーツに復帰できる率が低く、支障をきたすことが多いこと、③放置すれば二次 的に半月損傷を合併、関節症へと 進展し14、陳旧例では半月板を温存 できるか どうかがスポーツ復帰への鍵になること、④最近の診断・手術手技の向上によ り靭帯再建術の成績が良好なこと、を考慮すれば、保存的治療よりも手術療法 を選択した方がよい。ただし、中・高年者などのように活動性の低い患者、術 後のリハビリが長期にわたるため現在は手術が受けられないような環境にある 患者、ACL 部分断裂例などでは、保存的療法(活動性の低下を含めた生活指導、 筋力増強、装具など)を行う。 陳旧性の場合、靭帯は瘢痕または消失しているため修復できず、通常靭帯再 建術が施行される。再建材料としては、自家腱(膝蓋靭 帯15、半腱様筋腱、薄 筋腱、腸脛靭帯など)、同種腱(新鮮凍結16、凍結乾燥など)、人工靱帯の3 種類がある。自家腱の場合には自家組織を犠牲にすること、同種腱の場合はウ ィルス感染の可能性、人工靱帯の場合には劣化の問題もありどれも一長一短で、 どの素材を用いるかは術者により決定されているのが現状である。再建法につ いては、関節切開では大腿膝蓋関節に影響があるなど侵襲が大きく、正確な手 術が困難な点から関節鏡視下手術17が望ましく、再建靭帯の十分な固定を行う 必要がある。
16 損傷された ACL の治癒能は低いため、未治療のままスポーツ活動を続ければ、 脛骨の前方亜脱臼を繰り返し、半月損傷の合併・関節軟骨損傷を生じるといわ れている12。半月損傷や関節軟骨損傷の合併は、その後のスポーツ活動だけで なく、将来の変形性関節症への進展に大きな因子となるため、活動性の高いス ポーツ選手に対する保存的治療は慎重に行わなければならない。 手術成績に関しては、手術手技の向上・リハビリテーションの発達により、 臨床的には良好な成績が得られるようになってきた。従来から行われている関 節切開下に靭帯を再建した場合には、膝蓋骨軟骨の増悪をもたらすとの報告も あり18、より少ない侵襲で正確に施行できる 関節鏡視下再建術の方が利点も多 い17。再建材料により術後成績は異なると考えられているが、比較研究が少な く客観的評価法が確立していないためその点に関しては明らかでないが、同種 腱と自家腱(骨付き膝蓋靭帯)と比較した場合には、同種腱のほうが前方安定 性・大腿四頭筋筋力とともに優れているとの報告もある15。 5.ACL 再建時の解剖学的骨孔位置の重要性 ACL は膝関節において脛骨の前方動揺性や前内側への回旋不安定性を制御す る重要な靭帯である。 ACL 再建する際に、再建材料であるハムストリングなどを用いて移植腱を作
17
成する。膝を屈曲位から伸展位へ可動させた際に、どの膝の角度においても移
植腱への緊張が変化しないような位置に大腿骨・脛骨の骨孔を作成するように
したときの骨孔位置を isometric point という。ACL 再建法として、再断裂を
防止するため、膝のどの角度においても移植に用いる再建材料である移植腱へ
の緊張が変化しない isometric point が主流となっていたが、isometric point を
目指すことが非解剖学的再建の一因となっていることが示されている19 。大腿
骨側の isometric point は顆間窩の天井である intercondylar notch の高い位置
に な っ て お り 、 膝 関 節 伸 展 で 再 建 靭 帯 が 顆 間 窩 天 井 部 に ぶ つ か る notch impingement が、再断裂の原因になっていることが判明した20。そのため、顆 間窩形成術(notchplasty)を行ったり、脛骨の骨孔をより後方に作成し notch impingement を防いだりするなどますます非解剖学的な再建となってしまった 経緯がある20-23。近年ではより解剖学的な骨孔位置に注目が集まっている。正 常 ACL は本来 isometric な線維が一部に存在するものの、殆どの線維は膝伸展
に伴い緊張する over the top pattern となっている19。
ACL 再建術において移植腱を通す際に用いる骨孔について、大腿骨側の解剖 学的位置への骨孔作成の重要性が指摘されている。二重束 ACL 再建術において AMB の骨孔を解剖学的付着部の位置に作成し、PLB の骨孔を解剖学的付着部 と 非 解 剖 学 的 位 置 に そ れ ぞ れ 作 成 し 比 較 し た 生 体 力 学 的 研 究 に て 、 膝 の kinematics を計測した報告がある。PLB の骨孔を非解剖学的位置に作成した際 に、回旋不安定性が出現すると報告されている24。
18 その一方で、解剖学的 ACL 付着部に対し、再建時の骨孔作成位置の相違がど の程度生じると術後成績が悪くなるのかは報告されていない。個々の検体で複 数の骨孔を少しずつ位置の変更をすることで作成することは、骨孔が直径 5~ 10mm 程あることから不可能であるためである。 ACL の付着部は円形ではなく楕円形を呈しており、一重束では正常 ACL を 再現できない。また機能的にヒトの正常 ACL は AMB と PLB に分けられると 言われている9。そのため、ACL 付着部の多くをグラフトでカバーできるよう 2 つの骨孔を ACL 付着内に作成する解剖学的二重束 ACL 再建が行われるように なってきた。解剖学的二重束再建術の利点としてはより正常 ACL に近い走行を 再現できるため、notch impingement が起こりにくく、顆間窩形成術も必要と しなくなった25。また、生体力学的研究によりかつての isometric point に代表 さ れ る 古 典 的 な 骨 孔 に 比 べ 、 解 剖 学 的 骨 孔 位 置 で は 制 動 性 ( と く に 回 旋 制 動 性)も増していることが証明された1, 26。 Morimoto らは脛骨大腿関節の荷重面積および圧を一重束と二重束で比較し、 解剖学的二重束 ACL 再建術が正常膝に近く、関節症性変化の予防が期待できる と報告している27。しかし、解剖学的二重束 ACL 再建術は誰もが行ってよい手
術ではない。” Double bundle or Double trouble ? ”と警鐘を鳴らすコメントも
あり、熟練した技術を要する28。解剖学的二重束 ACL 再建術といっても実際は
解剖学的に正しい位置に骨孔を作成するのは容易ではなく、不良な骨孔位置は
19 6.膝関節鏡を用いた外科的治療 膝関節鏡手術では、通常外径 4.0mm の 30°斜視鏡を用いている。関節鏡セ ットは関節鏡本体、外套管、鈍棒、カメラヘッド、光軸ケーブルから成り立っ ている。外套管には鈍棒を装着し、潅流液である乳酸リンゲル液を流入するチ ューブを差し込んでおき、また関節鏡にはカメラヘッドと光源ケーブルを装着 しておく。外套管に鈍棒を装着した状態で関節内に挿入した後、鈍棒を関節鏡 に変えてから潅流液を流入させて関節内を観察する。関節鏡の操作は基本的に 外側膝蓋下穿刺により関節鏡を刺入することを原則とする。外側膝蓋下穿刺で 作成した前外側ポータルは膝蓋腱の辺縁より外側に作成し、大腿骨の外顆と内 顆の間に関節鏡が入るようにする。次に、大腿骨外顆内側壁に作成する骨孔位 置決定のため、前内側ポータルを膝蓋腱の辺縁より内側に作成し、各種処置後、 関 節 鏡 を 前 内 側 ポ ー タ ル へ 入 れ 替 え 、 骨 孔 位 置 を 決 定 す る ( 図 4 A,B) 。 Yasuda らは、特に PLB の骨孔作成時に、前内側ポータルからの鏡視が必要で あると報告している29。 本研究において、前内側ポータルから挿入した関節鏡視像をシミュレーショ ンした。大腿骨側に骨孔を作る際、経脛骨的(Trans-tibial technique)に行っ ていたが、最近はより大腿骨側骨孔位置選択の自由度が高い経ポータル法にて
20 骨孔が作成されることが一般になりつつある。経ポータル法では、前内側ポー タルよりもさらに内側の far anteromedial ポータルを作成し、骨孔作成操作な どのワーキングスペースにする。本研究ではより 90°VIEW に近い、前内側ポ ータルよりさらに内側の far anteromedial ポータルを用いて大腿骨骨孔位置を 決める方法も加え、それぞれにつき大腿骨外顆内側壁の ACL 付着部を検討でき るようにした。 大腿骨外顆の内側壁を見る際、大腿骨長軸に対し膝関節遠位より、前内側ポ ータルからだと内側へ約 30°、far anteromedial ポータルからだと内側へ約 45°、関節鏡の挿入角度を傾けた像となるため、本研究においても大腿骨外顆 内側壁を真正面(大腿骨長軸に対し真側面)から見た 90°VIEW に対し、前内
側ポータルをシミュレーションした 30°VIEW と far anteromedial ポータルを
シミュレーションした 45°VIEW を比較した。 7.本研究の仮説 関節鏡視像において ACL 付着部は、Quadrant 法での表示位置よりも前方に 変位すると仮説を立てた。 関節鏡視下に ACL 再建術を行うとき、前述のとおり再建靭帯の付着部にあた る骨孔の作成位置が重要である。骨孔作成時、位置決定のため前外側ポータル、
21 前内側ポータル、far anteromedial ポータルより大腿骨外顆内側壁の全体像を 見ることになる。各ポータルにおいて、大腿骨外顆内側壁に対する関節鏡挿入 の角度が異なる。鏡視下に骨孔作成位置のポイントを決めても、術後 3DCT で 骨孔位置を確認すると、そのポイントからずれていることが多い。従ってポイ ントのずれを把握した上で、関節鏡の挿入位置を決める必要がある。 骨孔位置を決定する際には、Bernard ら2により報告された Quadrant 法を 用いる。Quadrant 法は、大腿骨遠位部(膝関節部)の側面から X 線撮影した 際、顆間部天井に示される線である Blumensaat’s line を X 軸とする座標であ
る 。High 方 向 を Blumensaat’s line 、 low 方 向 を 関 節 面 、 shallow 方 向 を
Blumensaat’s line と膝関節面の交点、deep 方向は後壁の頂部を座標と設定し
ている。Quadrant 法による座標をイメージして骨孔位置を決めても、関節鏡
を 挿 入 す る ポ ー タ ル に よ っ て 、 鏡 視 の 差 異 が 生 じ て し ま う 。 特 に far
anteromedial ポータルにくらべ前内側ポータルで、鏡視時により骨孔作成ポイ
ン ト が 後 方 に な っ た よ う に 錯 覚 し 見 え て し ま う 。 大 腿 骨 長 軸 に 対 し て 30°
VIEW に相当する鋭角な前内側ポータルより、45°VIEW に相当するより鈍的
な far anteromedial ポータルで作成したほうが、Quadrant 法で示される所見
に相当する 90°VIEW に近い視野が獲得できるため、正しい位置に骨孔を作成
22 8.本研究の目的 実際の手術においては、理想の骨孔位置を想定して鏡視下に骨孔作成するが、 想定外の骨孔位置となることがある。これは膝前方からの鏡視像と Quadrant 法2での骨孔位置イメージとの間にギャップがあるためと考えられる。 本研究の目的は、大腿骨外顆内側壁の ACL 付着部を解剖学的にマーキングし、 靱帯付着部の観測角度(視野)の変化によっておこる位置表示の変位を、3次 元 CT 再構成画像による膝関節鏡シミュレーションにより明らかにすることで ある。
23
対象と方法
A.対象 本研究において、系統解剖用献体(10%ホルマリン液固定)の 9 体 18 膝を検 討対象とした。本研究は献体者およびご遺族の承諾を文書にていただき実施し た。また日本大学医学部倫理委員会の承認を受け研究を行った(承認番号 24-13-0)。 そのうち、6 体 12 膝(平均年齢 82.5 歳(73~97 歳)、男性 4 体と女性 2 体 (01=92 歳男性、02=73 歳女性、03=81 歳男性、04=79 歳男性、05=73 歳 女性、06=97 歳男性))の、いずれも変形性関節症や ACL 損傷等のない膝を 評価対象とした。対象の表記として、右膝は R、左膝は L で表し、上記の順に 番号を割り振った。たとえば、01 の 92 歳男性では右膝は 01-R、左膝は 01-L と表記した。 本研究では対象として膝数が少ないが、当初 9 体 18 膝を対象としていた。そ のうち、3 体 6 膝(平均年齢 81.7 歳(81~82 歳)、男性 0 体、女性 3 体(81 歳女性、82 歳女性、82 歳女性))については、膝関節症性変化を伴っている 場合や、ACL に変性が存在するなど高度な損傷を認めたため対象から除外した。 なお、屍体の平均年齢が 81.7 歳と高齢であったが、付着部の解剖学的検討には 影響しないと言える。24 B.方法 1.対象膝の抽出 膝周囲の皮膚や筋肉を切除した後、大腿骨遠位 20cm、脛骨近位 20cm で靭帯 や半月板を残し骨幹部で切離した。各屍体は左右膝ともに同様の方法で解剖し た。 2.ACL 付着部の同定 手 術 用 メ ス 、 手 術 用 顕 微 鏡 (Operation Microscope 700 、 株式 会 社 コー ナ ン・メディカル、兵庫県西宮市 日本)を用いて、内外側半月板や内外側側副靭 帯等の軟部組織を慎重に切除し、大腿骨と脛骨間に ACL・PCL 線維が付着した 状態とした(図 5)。その後 PCL を付着部より切除し、ACL 線維のみが付着し た状態まで解剖した(図 6)。ACL を傷つけないよう注意深く、大腿骨外顆内 顆の顆間部の中心に沿って大腿骨内顆を長軸方向にボーンソーを用いて骨切り し(図 7A)、大腿骨は外顆側のみが残るようにした。大腿骨と脛骨の中間位 (mid-substance)にて大腿骨側と脛骨側に切離した(図 7B)。さらに、ACL の表層膜を取り除くようクリーニングして靱帯線維のみとし Mochizuki ら30の
25
報告と同様に広義の ACL 付着部である ACL 表層膜を取り除いた後に残る ACL
線維自身の付着部で、靱帯の長軸に対し付着部は裾野が広がるようになってい
る、fan-like extension の状態にした。
まず初めに、大腿骨側の ACL 付着部(fan-like extension)にて銅製金属糸
(φ0.1020mm エナメル線)(共立電子産業株式会社、大阪 日本)を用いて
マーキングし付着部を同定した。その後、AMB と PLB に分け、靱帯の線維成
分が密な状態までクリーニングし、狭義の ACL 付着部である direct extention
の状態にした。ACL はその大腿骨と脛骨の付着部間の中央付近では楕円状の形
をしているが、その中央部の面積のまま付着部に向かい直接まっすぐに伸びて
いる線維の付着部を direct extention という。direct extention の状態にて、
AMB と PLB の付着部をそれぞれ銅製金属糸(φ0.1020mm)でマーキングし
た ( 図 8 A~D)。Sasaki らは、同様の定義として、 fan-like extension を
indirect insertion、direct extention を direct insertion と定義している31。
対象とした屍体は 10%ホルマリン液で固定しているため、付着部境界自体に 影響はないものの、ACL 線維や軟骨、その他の軟部組織が萎縮していることが あることも想定された。本研究では付着部を対象にしているので影響はないと 考えられた。 銅製金属糸の固定には手術用瞬間接着剤(アロンアルフア A「三共」東亜合 成、東京都港区、日本)を用いた。CT にて計測がしやすいよう残存した ACL 線維は全て切除し、大腿骨とマーキングに用いた銅製金属糸のみが残存した状
26
態とした。
3.ACL 付着部の 3DCT 画像作成(膝関節鏡シミュレーション)
各検体を CT(Aquilion ONE 4.71, 管電圧 135kv, 電流 200mA, スキャン
ス ピ ー ド 2.0sec、 東 芝 メ デ ィ カ ル シ ス テ ム ズ 株 式 会 社 、 栃 木 県 大 田 原 市 日
本)にて撮影した。CT 画像の設定 CT 値により、3DCT での画像の見え方が異
なることが報告されている32。本研究においては出来る限り鏡視所見に近い像
になるよう、骨形態を描出するために適切な条件である CT 撮影設定とした。
3DCT モデルの作成にはワークステーション(ZIO STATION ver. 1.3、ザイ
オソフト株式会社、東京都港区 日本)を使用し、ボリュームレンダリング法に よる3次元 CT 再構成画像を作成した。 3DCT モデルによる膝関節鏡シミュレーションの作成には関節鏡視を想定し、 大腿骨長軸に対し垂直に膝関節面の遠位から見た像を 0°と定義し、大腿骨外 顆内側面を真正面から見る 90°傾けた像である 90°VIEW、膝正面より内側に 30°傾けた像=前内側ポータル鏡視シミュレーション (以下, 30°VIEW)、 45°傾けた像=far anteromedial ポータル鏡視シミュレーション(以下, 45° VIEW)とした。(図 9 A~C)
27
4.3DCT 画像(膝関節鏡シミュレーション)の評価方法
90°VIEW, 45°VIEW, 30°VIEW を比較した。一般的に骨孔座標を示すに
は X 線の側面像や 3D-CT を参照した Quadrant 法が用いられるが、実際の関 節鏡視にて確認する事が出来ない後壁の後方までが座標に含まれてしまう。本 研究では関節鏡視所見をシミュレーションするため Quadrant 法を改良し、関 節鏡視にて実際に見る事の出来る大腿骨外顆内側壁のみに座標を設定した。外 顆内側壁面-後壁-大腿骨骨幹部後面の交点を 0 点と設定し、Blumensaat’s line を X 軸とし、鏡視前方(shallow)方向の端は外顆内側面前方軟骨境界、X 軸対し 0 点より垂直方向へ引いた線を Y 軸とし鏡視下方(low)方向の端は軟 骨境界で座標を作成し各座標位置を(X, Y)(%)と表記した(図 10 A~C)。なお、 付着部の座標は AMB、PLB マーキング部の長軸と短軸の交差する点である中 心点とした(図 11)。また、鏡視角度による座標のずれの指標として除法を用 いて、その割合を算出した。
28
5.統計学的解析
定量結果は mean ± SD で表した。90°VIEW、45°VIEW、30°VIEW の
3群間比較は一元配置分散分析を用い、任意の2群間比較は Tukey の多重比較
法 を 用 い た 。 統 計 学 的 解 析 に は 、 統 計 解 析 ソ フ ト SAS version 9.4 (SAS
29
結果
1.ACL 付着部の解剖学的位置 座標位置を(X, Y)(%)にて示すと、対象における 90°VIEW の座標の平均は、 AMB 中心位置が、90°VIEW(16.2±5.65, 35.5±9.61)、 PLB 中心位置は、90°VIEW(31.6±9.68, 67.0±8.31)であった。 各座標を表 1 に示す。 2.膝関節鏡シミュレーションにおける関節鏡挿入角度による ACL 付着部鏡視位置の検討 90°VIEW に対して、45°鏡視像である 45°VIEW と、30°鏡視像である 30°VIEW とを 3DCT 画像より計測し各座標位置を(X, Y)(%)にて示すと、対象 における座標の平均は、AMB 中心位置が、45°VIEW(14.5±5.53, 32.9±8.12)、 30 ° VIEW(9.10 ± 5.19, 34.9 ± 7.93) 、 PLB 中 心 位 置 が 、 45 ° VIEW(31.2 ± 12.20, 64.2±6.66)、30°VIEW(21.2±11.32, 66.2±8.20)であった。(図 10 A~C)30 また、鏡視角度による座標のずれの指標として除法を用いると平均で、30° VIEW/90°VIEW(%)は(54.4±19.7, 99.6±9.92)、45°VIEW/90°VIEW(%) は(88.8±14.3, 93.5±9.10)、45°VIEW/30°VIEW(%)は(188.3±83.8, 94.0± 4.03)であった。 鏡視角度による AMB・PLB の X 軸・Y 軸における座標変位の統計結果は下 記のとおりである(図 12)。 ・%AMB (X) 一元配置分散分析:3 群間で有意差あり (p=0.008) 多重比較法:90°-30°の 2 群間で有意差あり (p=0.008)、45°-30°の 2 群 間で有意傾向あり (p=0.052) ・%AMB (Y) 一元配置分散分析:3 群間で有意差なし (p=0.743) 多重比較法:各 2 群間で有意差なし ・%PLB (X) 一元配置分散分析:3 群間で有意差あり (p=0.047) 多重比較法:90°-30°の 2 群間で有意傾向あり (p=0.071)、45°-30°の 2 群間で有意傾向あり (p=0.088) ・%PLB (Y) 一元配置分散分析:3 群間で有意差なし (p=0.665) 多重比較法:各 2 群間で有意差なし
31
考察
本研究において、ACL の AMB、PLB の各線維束の中心をマーキングした 3DCT を用い、従来の骨孔位置表示と比較し、鏡視を想定した観察角度によっ て表示位置に差が生じることを明らかにした。 臨床的にすでに広く使われている 3DCT を用いることで、解剖学的 ACL 付 着部を各ポータルの鏡視角度に準じた視点で描出し比較することが可能であっ た。これまで臨床的によく用いられる 3DCT 画像による Quadrant 法2での座標 位置と、実際の鏡視像との間にギャップが生じていることが分かった。そのた め、ACL 再建術においてより正確な大腿骨孔作成を行うためには、鏡視角度に よる表示位置の違いに注意が必要である。 関節鏡視下に ACL 再建術を行うとき、再建靭帯の付着部とする解剖学的 ACL 付着部にあたる大腿骨骨孔作成位置が重要である。3DCT を用いた膝関節 鏡シミュレーションの検討では、30°VIEW で AMB、PLB ともに遠位方向 (鏡視での前方 shallow)に骨孔が作成される傾向があり、特に鏡視での deep-shallow(X 軸)方向で顕著となる可能性を示唆していた。また、high-low(Y 軸)方向に関しては影響が軽微であった。本研究の結果より、骨孔作成時に前 内側ポータルからよりも、far anteromedial ポータルから位置を決定する方が、 一般に広く使われている Bernard ら2の報告に代表されるQuadrant 法で表示し32 た骨孔位置により近く作成できることが判明した。限界はあるものの、さらに 90°VIEW に近いポータルを作成することで、術中により正確な骨孔作成ポイ ントを決定できると考えられる。 Zantop らの報告3によると、22 膝を対象に骨孔位置を示しており、平均座標 は AMB(18.5, 22.3)(%), PLB(29.3, 53.6)(%)であった。本研究の 90°VIEW は
AMB 90°VIEW(16.2, 35.5)(%)、PLB 90°VIEW(31.6, 67.0)(%)であり、比較
すると AMB、PLB 共に Y 軸(high-low)方向にてパーセント表示で数値が大 きくなった。原因として本研究の関節鏡シミュレーションは、実際に関節鏡で 見 るこ と のできる 大 腿 骨外顆 内 側壁を 対 象 としてい る。そ の ため、Quadrant 法を用いるより 0 点に対して、X 軸座標はほとんど変わらないものの、Y 軸方 向(high-low)に座標が約 70~75%短く設定される。よって本法では AMB・ PLB ともに Y 軸で Quadrant 法にくらべてパーセント表示では数値が大きくな る傾向にあった。座標が短縮されることを考慮すると、Zantop ら3の報告した 骨孔位置とほぼ同じであると考えている。 骨孔位置の決定には、解剖学的な ACL 付着部を理解していることが重要であ る。その境界部の同定法にはいくつかの方法があるが、大きく分けて、本研究 のような肉眼解剖による方法と、組織所見を用いたマイクロ解剖による方法33 の 2 通りが挙げられる。組織所見を用いるとより詳細な境界部が解るが、プレ パラートを用いた検討であることから全体像が見えなくなってしまう。本研究 では、関節鏡シミュレーションを対象としているためマクロ解剖を用いた。屍
33
体 膝 の ACL 付 着部を 、手 術用 顕微 鏡を用 いて indirect insertion と direct
insertion に分け、direct insertion の中心を決定した。この方法は過去に報告
されていない。 ACL 付着部境界部は軟部組織であり、X 線・CT では補足出来ないため、マ ーキングが必要である。CT 撮影の際、CT 値の高い素材ほどより鮮明に表示さ れることが知られている。CT 値は原子番号に比例するが、一般的に入手可能な 金属で CT 値が高い順に並べると「鉛>金>銀>亜鉛>銅>ニッケル>鉄>ク ロム>アルミニウム」である。なお、ニッケル・鉄・クロムの合金がステンレ スである。金属糸として入手できるのは、鉛・金・銀・銅・鉄・ステンレス製 であった。ホルマリン固定屍体が対象であり腐食や CT 値、コスト、入手の簡 便性を考慮し、本研究ではマーキングにエナメル皮膜のある銅製金属糸である エナメル線を用いた。3DCT で詳細なデータを得るため、糸の直径が入手可能 な最も細いφ0.1020mm を選択した。 ACL のマーキングとして、過去に金属ピンを骨に刺す方法2や、鋼線で骨に穴 を開けてマーキングする方法34での報告がある。いずれも付着部の周囲を点と してマーキングしているに過ぎなかった。本法では金属糸を付着部境界へ貼り 付けることで、付着部と骨・軟骨の境界を点ではなく連続した線としてマーキ ングすることができた。また、ACL 再建術にて作成された骨孔の位置を検討し た報告はあるものの、X 線や CT 画像のみから検討しており、本来の解剖学的 ACL 付着部を追っているわけではなく、実際の付着部を対象としている本法が
34 解剖学的 ACL 付着部を検討するには有意義である。 本研究のように ACL 付着部を同定し骨孔位置を決定するため、異なるアプロ ーチが報告された。それは、3DCT を用いた解剖学的骨構造としてのランドマ ークを同定する方法である。Shino ら35は、大腿骨外顆内側壁後上方の軟骨境界 よ り 7 ~ 10mm 前 方 か ら 鏡 視 の low-shallow 方 向 へ 向 か う 骨 性 隆 起 の
Resident’s ridge の後方に ACL の付着があると報告し、関節鏡視下 ACL 再建
術時、AMB・PLB の骨孔を作成する際の解剖学的指標となるとしている(図 3)。この骨性隆起は ACL 付着部のすぐ前方に存在し、3DCT によって確認で きるため、術中の骨孔作成位置を決める際の指標になると考えられている。し かし、100%の症例に認められるわけではなく、鏡視下 ACL 再建術の全例には 適応できないことが知られている。 また、骨孔位置を決定する方法として術中に解剖学的構造をマーキングする 方法が挙げられる。ACL 再建における正確な大腿骨骨孔作成は重要であると報 告されており、様々な試みがなされているが、近年では正確な骨孔作成のため 術中ナビゲーションシステムの使用が研究されている36-38。その利点は、術中、 骨孔作成位置決定のための骨孔作成イメージなどの多くの情報が得られること である。さらに施行された手術の客観的情報が記録でき、さらに再建術前後の 膝関節のキネマティクスの評価が可能となることである。一方で、欠点として 費用やレジストレーション(術中に関節内外ランドマークの位置情報と膝関節 の三次元座標が構築される)等に要する追加時間、固定ピン刺入(トランスミ
35 ッターの固定に用いる)に伴う感染や皮膚熱傷などの合併症の可能性、レジス トレーションエラーに起因する骨孔作製位置不良などが挙げられる。実際は、 術者の経験によって左右されることが多いのが現状であり、普及のためにはさ らなる改良工夫が必要である。正確な骨孔位置作成には術後の骨孔位置評価に よる学習も必須であり、鏡視像とのギャップを埋める必要がある。 本研究の結果、関節鏡視下 ACL 再建術時における大腿骨骨孔作成時、鏡視角 度 を 0 ° VIEW に 近 づ け る ほ ど 、 AMB 、 PLB と も に 遠 位 方 向 ( 鏡 視 で の shallow)に作成される傾向がある。特に鏡視での deep-shallow 方向で顕著と
なるため注意が必要であり、出来るだけ 90°VIEW に近い far anteromedial ポ
ータルより骨孔位置を決めることが最善であり、今後の手術において考慮すべ きことが明らかとなった。 臨床応用として、本研究で得た知識を関節鏡視下 ACL 再建術に応用すること により、より正確な付着部を想定し、解剖学的位置に骨孔を作成することがで きる。臨床の現場において骨孔作成時のピットフォールを回避する一助となる 可能性が明らかとなった。
36
まとめ
屍体膝の ACL 付着部を、手術用顕微鏡を用いて indirect insertion と direct
insertion に分け、direct insertion の中心を決定した。この方法は過去に報告
されていない。膝関節鏡シミュレーションを行い、鏡視角度によっては AMB、 PLB ともに遠位(鏡視での shallow)方向に解剖学的付着部が変位することが 統計学的有意差をもって証明され、間違えた位置に骨孔が作成される可能性が あることが判明した。特に AMB で顕著となる可能性を示唆しており、充分な 注 意 が 必 要 で あ る こ と が 明 ら か と な っ た 。 骨 孔 位 置 決 定 の 際 、 far anteromedial ポータルから鏡視することで、骨孔作成の指標となる Quadrant 法に近い視野が獲得できるため、より正確な骨孔位置の作成が可能である。
37
謝辞
本稿を終えるにあたり、御指導、御校閲を賜った日本大学医学部整形外科学 講座 長岡正宏教授、洞口敬講師、加藤有紀助教、永井悠助教に心より厚く御 礼申し上げるとともに、また研究に際し適切な御指導を頂いた日本大学医学部 機能形態学系生体構造医学分野 相澤信教授、スタッフの方々に心より深謝い たします。38
表
AM (X, Y) (%)
90°VIEW 45°VIEW 30°VIEW X Y X Y X Y 01(01-R) ( 5.3 , 17.3 ) ( 3.8 , 15.0 ) ( 2.9 , 16.8 ) 02(01-L) ( 16.4 , 23.4 ) ( 15.5 , 26.7 ) ( 12.6 , 28.3 ) 03(02-R) ( 14.0 , 36.7 ) ( 14.4 , 34.9 ) ( 11.8 , 35.7 ) 04(02-L) ( 18.8 , 35.2 ) ( 19.8 , 29.8 ) ( 9.4 , 31.3 ) 05(03-R) ( 11.9 , 27.2 ) ( 10.3 , 25.3 ) ( 6.1 , 28.2 ) 06(03-L) ( 10.3 , 37.7 ) ( 10.2 , 34.0 ) ( 3.7 , 37.0 ) 07(04-R) ( 25.9 , 45.5 ) ( 20.3 , 45.7 ) ( 16.3 , 45.8 ) 08(04-L) ( 23.8 , 35.1 ) ( 22.1 , 34.9 ) ( 19.0 , 35.0 ) 09(05-R) ( 19.3 , 50.9 ) ( 20.0 , 40.4 ) ( 8.0 , 42.7 ) 10(05-L) ( 17.8 , 41.7 ) ( 14.1 , 38.1 ) ( 8.5 , 40.0 ) 11(06-R) ( 14.8 , 31.7 ) ( 8.7 , 31.4 ) ( 2.2 , 36.0 ) 12(06-L) ( 16.7 , 44.0 ) ( 15.1 , 39.0 ) ( 8.9 , 42.0 ) Average ( 16.2 , 35.5 ) ( 14.5 , 32.9 ) ( 9.1 , 34.9 ) PL (X, Y) (%)
90°VIEW 45°VIEW 30°VIEW X Y X Y X Y 01(01-R) ( 15.2 , 47.3 ) ( 14.6 , 46.7 ) ( 8.6 , 46.7 ) 02(01-L) ( 15.9 , 62.9 ) ( 12.9 , 64.4 ) ( 5.3 , 64.5 ) 03(02-R) ( 46.3 , 67.8 ) ( 45.2 , 66.3 ) ( 42.7 , 66.7 ) 04(02-L) ( 38.1 , 75.4 ) ( 48.8 , 72.6 ) ( 35.3 , 74.2 ) 05(03-R) ( 25.9 , 62.1 ) ( 27.6 , 60.6 ) ( 17.2 , 63.1 ) 06(03-L) ( 34.9 , 70.8 ) ( 32.7 , 69.0 ) ( 19.5 , 69.0 ) 07(04-R) ( 31.2 , 80.0 ) ( 25.9 , 65.5 ) ( 17.9 , 80.8 ) 08(04-L) ( 35.5 , 72.8 ) ( 33.6 , 71.4 ) ( 26.4 , 70.8 ) 09(05-R) ( 35.6 , 64.3 ) ( 47.8 , 63.5 ) ( 27.3 , 65.5 ) 10(05-L) ( 43.4 , 63.5 ) ( 39.1 , 60.2 ) ( 30.2 , 60.0 ) 11(06-R) ( 32.7 , 65.4 ) ( 22.4 , 64.2 ) ( 11.8 , 66.9 ) 12(06-L) ( 25.0 , 71.4 ) ( 23.7 , 65.9 ) ( 12.7 , 66.7 ) Average ( 31.6 , 67.0 ) ( 31.2 , 64.2 ) ( 21.2 , 66.2 ) 表1.本研究における ACL 付着部の解剖学的位置 90°VIEW、45°VIEW、30°VIEW における各対象の座標位置を(X, Y)(%)にて示した。
39
図
A B C 図1.関節鏡視時の大腿骨外顆内側壁における方向の表し方(左膝) A.解剖学的位置表示と関節鏡視的位置表示の比較 一般的に解剖での位置表示は解剖学的位置表示のように表示する。本研究では、膝関節 鏡シミュレーションにより鏡視での位置を対象としているため、関節鏡視的位置表示 を設 定 し た 。 膝 関 節 鏡 は 、 膝 関 節 を 90 °屈 曲 し た 体 勢 で 行 う た め 、 上 図 の よ う に deep-shallow、high-low で記載する。 B.大腿骨外顆内側面での座標設定(90°VIEW)と方向表示deep-shallow 方 向 の 顆 間 部 頂 点 に あ た る X 軸 の 線 が Blumensaat’s line で あ る 。 Blumensaat’s line に相当する X 軸にて、鏡視前方(遠位)方向は「Shallow」、鏡視後方 (近位)方向は「Deep」であり、Blumensaat’s line に垂直な Y 軸にて、鏡視上方(腹 側)方向は「High」、鏡視下方(背側)方向は「Low」である。座標設定方法については 後述する。
C. 大腿骨遠位での座標設定位置(90°VIEW)の概観
40 A B 図2.関節鏡手術に用いるポータルの位置(左膝) A.膝関節鏡手術におけるポータルの位置 ①前外側ポータル、②前内側ポータル、③far anteromedial ポータル B.各ポータルにおける関節鏡の挿入と鏡視像 ①~③の各ポータルにおいて、上記のように大腿骨外顆内側壁を鏡視できる。
41
A
B
図3.Resident’s ridge の関節鏡視所見(左膝)
A.Resident’s ridge の関節鏡視所見
関節鏡視下にAMB、PLB 付着部の鏡視前方(shallow)、▼で示す Resident’s ridge が 確認出来る。Resident’s ridge は大腿骨外顆内側壁後上方の軟骨境界より 7~10mm 前方 から鏡視の low-shallow 方向へ向かう骨性隆起である。
B.Resident’s ridge の模式図 図2-A の模式図を示している。
42 A B 図 4.関節鏡を用いた大腿骨外顆内側壁への骨孔作成(左膝) A.関節鏡視下 ACL 再建術での骨孔作成位置の決定 前内側ポータルより関節鏡を挿入し、far anteromedial ポータルより骨孔作成中である。 B.前内側ポータルより大腿骨外顆内側壁に作成した骨孔を鏡視する 左上が AMB、右下が PLB の骨孔である。鏡視での各方向も示している。
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図 5.屍体膝の解剖:ACL、PCL の同定(左膝)
膝関節の解剖所見である。大腿骨− 脛骨間に ACL と PCL が付着した状態まで解剖した。 半月板や側副靭帯は切除した。
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図6.屍体の解剖:ACL の同定(左膝)
PCL を切除し、顆間部に ACL のみを露出させた。 顆間部には、ACL 繊維のみが残存している状態である。
45 A B 図 7.大腿骨標本の作製(左膝) A.大腿骨の骨切り 大腿骨遠位7cm に対し、外顆内顆の中心で大腿骨長軸に平行に腹側から背側に骨切りを し、内顆側のみ切除した。 B.骨切り後の大腿骨 大腿骨外顆内側壁が露出している。この写真ではすでにACL が切除されている。
46 A B C D 図 8.大腿骨外顆内側壁のマーキング・ACL 付着部の同定(左膝) A.マーキングに用いた材料 銅製金属糸(太さ 直径 0.1020mm)である。φ18×20mm のボビンに巻かれている。 B・C・D.ACL 付着部・軟骨境界のマーキング、AMB・PLB のマーキング 大腿骨外顆内側壁と関節軟骨の境界をマーキングした。次に、外周円に相当する広義の ACL 付着部(indirect insertion)にマーキングし(B)、その後、内周円に相当する狭 義の ACL 付着部(direct insertion)である、▼で示した AMB・PLB 付着部にマーキ ングした(C)。B 図と C 図を合わせると D 図となる。
残存した ACL 線維は全て切除し、大腿骨とマーキングに用いた銅製金属糸のみが残存 した状態にした。
47 A B C 図 9.3DCT による関節鏡シミュレーション A.90°VIEW: 90°鏡視像
B.45°VIEW: Far anteromedial(FAM)ポータルの関節鏡視シミュレーション
48 A B C 図 10.関節鏡シミュレーションによる ACL 付着部図示(平均座標(X, Y)(%)) A.90°VIEW: AMB (16.2, 35.3)(%) , PLB (31.6, 67.0)(%) B.45°VIEW: AMB (14.5, 32.9)(%) , PLB (31.2, 64.2)(%) C.30°VIEW: AMB ( 9.1, 34.9)(%) , PLB (21.2, 66.2)(%)
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図 11. 3DCT における、AMB・PLB 中心点の決定
中心点は、円の長軸と短軸の交点とした。
50 図 12.鏡視角度による AMB・PLB の X 軸・Y 軸における座標変位の統計結果 結果は平均±標準偏差で示した。3群間比較は一元配置分散分析を用い、任意の2群間比 較はTukey の多重比較法を用いた。有意水準は両側5%を用いた。 ・%AMB (X) 一元配置分散分析:3 群間で有意差あり (p=0.008) 多重比較法:90°-30°の 2 群間で有意差あり (p=0.008)、45°-30°の 2 群間で有意傾向あり (p=0.052) ・%AMB (Y) 一元配置分散分析:3 群間で有意差なし (p=0.743) 多重比較法:各2 群間で有意差なし ・%PLB (X) 一元配置分散分析:3 群間で有意差あり (p=0.047) 多重比較法:90°-30°の 2 群間で有意傾向あり (p=0.071)、45°-30°の 2 群間で有意傾向あり (p=0.088) ・%PLB (Y) 一元配置分散分析:3 群間で有意差なし (p=0.665) 多重比較法:各2 群間で有意差なし
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