世
間
の
六
十
心
(前
)
酒
井
紫
朗
一 昨 秋 ( 昭 和 四 十 二 年 十 月 ) 比 叡 山 に 於 け る 昭 和 四 十 二 年 度 日 本 仏 教 学 会 に 於 い て ﹁ 密 教 の 人 間 観 ﹂ な る テ ー マ の 下 に 大 日 経 住 心 品 に 説 か れ る 世 間 の 六 十 心 に つ き 報 告 し ま し た が 紙 幅 の 関 係 上 レ ジ ュ メ 程 度 に 終 つ た の で 、 そ の 際 に 用 意 し た 漢 蔵 テ キ ス ト の 対 比 を こ こ に 報 告 す る こ と に し た 。 六 十 心 よ り 百 六 十 心 に な る 経 緯 や 三 無 数 劫 を 度 脱 す る 場 合 の 密 教 家 の 劫 ( K a lp a ) に 対 す る 考 え 方 並 に 六 十 心 夫 々 の 推 定 梵 語 名 等 は 既 に 出 版 さ れ た 日 本 仏 教 学 会 年 報 第 三 十 三 号 を 参 照 さ れ た い 。 こ の 稿 に 於 い て 特 に 各 心 の 漢 蔵 テ キ ス ト 対 比 に 重 点 を 置 い て 報 告 す る こ と に し た 。 二 以 下 漢 蔵 テ キ ス ト 並 に 両 種 疏 釈 に つ い て 理 解 を 進 め る こ と に す る 。 (1) ノ ニ シ テ ニ ザ ク ヒ ク ハ 爾-時 金 剛 手 復 請 レ仏 言 惟-願 世 尊 キ 玉 ヘ ヲ ク キ テ ケ テ 説 二 彼 心 一 如 レ 是 説-巳 。 仏 告 二 金 剛 手 (1) そ の 時 ・ 復 ・ 世 尊 に 金 剛 手 が 請 問 す ら く 、 世 尊 よ、 願 は く ば 心 の 諸 の 差 別 を 説 き 給 え 。 か く 申 し 上 げ し 時 、 世 尊 が 秘 密 主 金 剛 手 に 次 の 如 く 告 げ 給 世 間 の 六 十 心-77-密 教 文 化 ニ ノ モ ハ ク ニ ケ ト ハ 秘 密 主 一 言 。 秘 密 主 諦 -聴 心 -相 (2) 謂 貧 -心 。 無 -食 -心 。 瞑 -心 。 慈 -心 。 瘍 -心 。 智 -心 。 決 -定 -心 。 疑 -心 。 暗 -心 。 明 -心 。 積 -聚 ー 心 。 闘 -心 。 諄 心 。 無 -諄 -心 。 天 -心 。 阿 -修 -羅 -心 。 龍 -心 。 人 -心 。 女 -心 。 自 -在 -心 。 商 -人 -心 。 農 -夫 -心 。 河 -心 。 肢 -池 -心 。 井 -心 。 守 -護 -心 。 樫 -心 。 狗 -心 。 狸 -心 。 迦 -楼 -羅 -心 。 キ ヤ ツ ク 嵐 -心 。 歌 -詠 -心 。 舞 -心 。 撃 -鼓 -心 。 室 -宅 -ク ル ヲ 心 。 師 -子 -心 。 鵜 - 鶴-心 。 烏 -心 。 羅 -刹 -心 。 刺 心 。 窟 心 。 風 -心 。 水 -心 。 火 -心 。 泥 -心 。 顕 ハ ム ケ ン ナ ク ー 色 -心 。 板 -心 。 迷 -心 。 毒 -薬 -心 。 羅 -索 -心 。 カ ィ エ ン タ イ 械 -心 。 雲 -心 。 田 -心 。 塩 -心 。 剃 -刀 -心 。 須 ケ ツ ー 弥 -等 -心 。 海 -等 -心 。 穴 -等 -心 。 受 -生 -心 。 レ ン カ ク ス (1) 秘 密 主 。 彼 云 何 貧 心 。 謂 随 二 順 染 ニ 法 殉 ン カ ク ス ノ ニ (2) 云 -何 無 -貧 -心 。 謂 随 二 順 無 染 法一。 ン カ ク ス ニ (3) 云-何 瞑 -心 。 謂 随 -二 順 怒 -法 幻 ン カ ク シ ス ニ (4) 云 -何 慈 -心 。 謂 随-二 順 修 し 三 行 慈 法 殉 え り 。 秘 密 主 よ 、 心 の 差 別 の 相 を 聴 け よ か し 。 秘 密 主 よ 、 こ こ に 心 と は こ れ . (2) (1) 貧 心 、 (2) 離 食 心 、 (3) 瞑 心 、 (4) 慈 心 、 (5) 瘍 心 、 (6) 智 心 、 (7) 決 定 心 、 (8) 疑 惑 心 、(9) 闇 心 、(10) 明 心 、(11) 摂 心 、(12) 闘 心 、(13) 諄 心 、(14) 不 諄 心 、(15) 天 心 、(16) 非 天 心 、(17) 龍 心 、(18) 人 心 、(19) 女 心 、(20) 自 在 心 、(21) 商 人 心 、(22) 農 夫 心 、(23) 河 心 、(24) 破 池 心 、(25) 井 心 、(26) 守 護 心 、(27) 樫 心 、(28) 狗 心 、(29) 猫 心 、(30) 迦 楼 羅 フ ク ロ 心 、(31) 蝋 心 、(32) 歌 詠 心 、(33) 舞 心 、(34) 鏡 心 、(35) 室 宅 心 、(36) 獅 子 心 、(37) 鵜 鶴 ト ゲ 心 、(38) 烏 心 、(39) 羅 刹 心 、(40) 刺 心 、(41) 地 下 心 、(42) 風 心 、(43) 水 心 、(44) 火 心 、 (45) 泥 心 、(46) 濁 心 、(47) 顔 料 心 、(48) 板 心 、(49) 迷 心 、(50) 毒 薬 心 、(51) 羅 索 心 、(52) 枷 械 ニ シ キ ニ シ キ ニ シ キ 心 、(53) 雲 心 、(54) 田 心 、(55) 塩 心 、(56) 剃 刀 心 、(57) 須 弥 等 心 、(58) 海 等 心 、(59) 穴 等 心 、(60) 受 生 心 な り 。 秘 密 主 よ 、 こ こ に 貧 心 と は 何 か と 云 は ば 貧 有 る 者 が 法 に 親 近 す る こ と な り 。 離 貧 心 と は 何 か と 云 は ば 、 貧 を 離 れ た る 者 が 法 に 親 近 す る こ と な り 。 瞑 心 と は 何 か と 云 は ば 、 瞑 つ て 法 に 親 近 す る こ と な り 。 慈 心 と は 何 か と 云 は ば 、 慈 有 る 者 が 法 に 親 近 す る こ と な り 。
ン カ ク シ ス ノ ニ (5) 云 書 何 痩 -心 。 謂 随-二 順 修 -不 観 法 殉 ン カ ク ス ノ ニ (6) 云-何 智 -心 。 謂 順-二 修 殊 勝 増 上 法一。 ン カ ク ノ ク ノ (7) 云 罫 何 決 -定 心 。 謂 尊 教 -命 如 レ 説 奉 ス 行 。 ン カ ク ニ ス ノ ヲ (8) 云 -何 疑 -心 。 謂 常 収 三 持 不 定 等 事 殉 ン カ ク テ ノ ニ ス (9) 云 -何 闇 -心 。 謂 於 二 無 疑 慮 法 一生 二 疑 ノ ヲ 慮 解一。 ン カ ク テ ニ シ テ (10) 云 -何 明 -心 。 謂 於 二 不 疑 慮 法 -無 二 疑 ス 慮 修 行 。 ン カ ク ヲ ス ル ヲ ト ト (11) 云 何 積 -集 -心 。 謂 無 量 為 レ 一 為 レ 性 。 ン カ ク ヒ ニ ア ル ヲ ト (12) 云 -何 闘 -心 。 謂 互 -相 是 非 為 レ 性 。 ン カ ク テ ニ モ ス ヲ (18) 云 -何 諄 -心 。 謂 於 二 自 己 一 而 生 二 是 非 一 ン カ ク ニ ツ (14) 云 -何 無 -諄 -心 。 謂 是 -非 倶 捨 。 ン カ ク フ テ ニ ヒ セ ン を (16) 云 -何 天 -心 。 謂 心 思 二 随 レ 念 成 就 一。 ン カ ク フ セ ン ト ニ (16) 云 -何 阿 -修 -羅 -心 。 謂 楽 レ 処 二 生 -死 殉 ン カ ク ス ヲ (17) 云 -何 龍 心 。 謂 思 二 念 広 -大 資 -財一。 ン カ ク ス ヲ (18) 云 -何 人 -心 。 謂 思-二 一念 利 -他一。 瘍 心 と は 何 か と 云 は ば 、 凡 そ 吟 味 せ ず し て 法 に 親 近 す る こ と な り 。 智 心 と は 何 か と 云 は ば 、 殊 勝 の 中 に 他 の 殊 勝 を 解 了 し て 法 に 親 近 す る こ と な り 。 決 定 心 と は 何 か と 云 は ば ( 王 等 の ) 教 勅 及 び 尊 宿 の 語 の 如 く に な す こ と な り 。 疑 惑 心 と は 何 か と 云 は ば 、 如 何 に 執 持 せ ら る べ き か の 決 定 し た る も の に 疑 い 親 近 す る こ と な り 。 闇 心 と は 何 か と 云 は ば 、 疑 慮 な き も の に 疑 慮 し て 親 近 す る こ と な り 。 明 心 と は 何 か と 云 は ば 、 疑 慮 な き も の に 疑 慮 な く 親 近 す る こ と な り 。 摂 心 と は 何 か と 云 は ば 、 多 を 一 と な す こ と な り 。 闘 心 と は 何 か と 云 は ば 、 彼 此 相 諄 う こ と な り 。 諄 心 と は 何 か と 云 は ば 、 凡 そ 我 と 我 が 諄 う こ と な り 。 不 諄 心 と は 何 か と 云 は ば 、 平 等 に 見 る こ と な り 。 天 心 と は 何 か と 云 は ば 、 意 が み ず か ら 誇 負 す る こ と な り 。 非 天 心 と は 何 か と 云 は ば 、 凡 そ 輪 廻 を 願 う こ と な り 。 龍 心 と は 何 か と 云 は ば 、 大 資 財 た ら し め ん が 為 に 思 う こ と な り 。 人 心 と は 何 か と 云 は ば 、 彼 自 身 の 利 を 思 う こ と な り 。 世 間 の 六 十 心
-79-寄 教 文 伽 ン カ ク ス ゴ (16) 云 -何 女 -心 。 謂 随 三 順 欲 -法 殉 ン カ ク メ フ レ (20) 云 -何 自 -在 -心 。 謂 思 -惟 欲 下 我 一 切 ク ナ ラ ン セ ノ 如 上 レ 意 。 ン カ ク ス ニ ハ メ ニ ハ (21) 云-何 商 -人 -心 。 謂 順 二 初 収 -聚 後 分 -ス ル ニ 折 法 殉 ン カ ク ス ニ ク テ (22) 云 -何 農 -夫 -心 。 謂 随 二 順 初 広 聞 而 ニ ル ニ 後 求 -法 ニ ン カ ク ス ス ル ニ ニ (23) 云 -何 河 -心 。 謂 順 下 依 -二 因 二 -辺 一 法 上 。 ン カ ク ス シ テ キ (24) 云 -何 肢 -池 -心 。 謂 随 -下 順 渇 無 二 厭 星 ニ 法 上 。 ン カ ク ク ノ ス ル シ テ (25) 云 何 井 -心 。 謂 如 レ 是 思 -惟 深 復 甚 ナ リ 深 。 ン カ ク シ ノ ノ ミ ナ リ ハ (26) 云 -何 守 護 -心 。 謂 唯 此 心 実 余 心 ナ リ 不 -実 。 ン カ ク ス メ ニ シ テ カ ル ヘ (27) 云 -何 樫 -心 。 謂 随 -下 順 為 レ 己 不 レ 与 レ ニ ニ 他 法 上 。 ン カ ク ス ノ ニ (28) 云 豊 何 狸 -心 。 謂 順 -下 修 徐 -進 法 上 。 ン カ ク テ ヲ テ ス ト (29) 云 -何 狗 -心 。 謂 得 一 小 -分 一 以 為 二 喜 足 幻 ン カ ク ス (30) 云 塵 何 迦 -楼 -羅 -心 。 謂 随 二 順 朋 党 羽 女 心 と に 何 が と 云 ほ ば 、 愛 欲の みの 為 に 法 に 親 近 ずる こ ど 潜 り。 自 在 心 と は 何 か と 云 は ば 、 凡 そ 我 は 一 切 を 思 惟 せ り と 誇 負 す る こ と な り 。 商 人 心 と は 何 か と 云 は ば 、 凡 そ ( 初 に ) 接 収 し た る 所 を 後 に 増 加 し て 親 近 す る こ と な け 。 農 夫 心 と は 何 か と 云 は ば 、 凡 そ ( 初 に ) 聞 け る 多 種 を 後 に 求 め つ 、 親 近 す る こ と な り 。 河 心 と は 何 か と 云 は ば 、 凡 そ 二 辺 を 見 て 親 近 す る こ と な り 。 肢 池 心 と は 何 か と 云 は ば 、 凡 そ 渇 に よ り 親 近 す る こ と な り 。 井 心 と は 何 か と 云 は ば 、 凡 そ 深 か ら ざ る を 深 し と 思 う こ と な り 。 守 護 心 と は 何 か と 云 は ば 、 此 れ こ そ 真 実 な れ ど も 他 は 愚 痴 な り と 思 う こ と な り 。 樫 心 と は 何 か と 云 は ば 、 自 己 に 親 近 し て 他 に 与 え ざ る こ と な り 。 猫 心 と は 何 か と 云 は ば 、 凡 そ 供 物 を 見 て 親 近 す る こ と な り 。 狗 心 と は 何 か と 云 は ば、 凡 そ 少 し の も の に で も 喜 び を な さ ん こ と な り 。 迦 楼 羅 心 と は 何 か と 云 は ば 、 凡 そ 味 方 を 執 る こ と に よ り て 法 に 親 近 す る こ
ノ ニ 翼 法 幻 ン カ ク ス セ ン ト ノ ヲ (31) 云 -何 厳 -心 。 謂 思三-惟 断 二 諸 繋 -縛一。 ン カ (32) ( 云 -何 歌 -詠 -心 ) ン カ ク シ テ ク ノ ノ ヲ レ 曾 云 書 何 舞 -心 。 謂 修 ﹂ 一行 如 レ 是 法一。 我 ニ シ テ ニ ス 当 二 上 -昇 種 々 神 変 一 ン カ ク シ テ ノ ヲ レ (34) 云 -何 撃 -鼓 -心 。 謂 修 ﹂ 一順 是 法一。 我 ニ ツ ヲ 当 レ 撃 二 法 鼓 一 ン カ ク ス ミ ル ヲ ニ (35) 云 -何 室 -宅 -心 。 謂 順 ﹂ 修 自 護 レ 身 法 殉 ン カ ク ス ノ (36) 云 置 何 師 -子 -心 。 謂 修 ﹂ -行 一 切 無 -怯 -ノ ヲ 弱 -法 。 ン カ ク ニ ニ ス (37) 云-何 鵤 鶴 心 。 謂 常 暗 -夜 思 念 。 ン カ ク ニ ノ ア リ 曾 云-何 烏 -心 。 謂 一 切 処 驚 怖 思 念 。 ン カ ク テ ノ ニ ス 曾 云 書 何 羅 -刹 -心 。 謂 於 二 善 中 一 発 -起 二 不 -ヲ
善一。
ン カ ク ニ ヌ ル ヲ ヲ (40) 云 -何 刺 -心 。 謂 一 切 処 発 二 起 悪 -作 一 ひ 為 レ 性 。 ン カ ク ス ヌ ル つ ヲ ニ ニ (41) 云 暫 何 窟 -心 。 謂 順 一 修 為 レ 入 レ 窟 法 殉 ン カ ク ジ テ ニ ス ルヲ (42) 云-何 風 -心 。 謂 遍 二 一 切 処 一 発-起 為 レ と な り 。 猟 心 と は 何 か と 云 は ば 、 一 切 の 縛 を 切 断 せ ん と 思 う こ と な り 。 歌 詠 心 と は 何 か と 云 は ば 、 我 種 々 な る 音 声 の 歌 詠 に よ り て 諸 々 有 情 を 把 握 せ ん と 思 う こ と な り 。 舞 心 と は 何 か と 云 は ば 、 我 れ 種 々 な る 神 変 に よ り て 他 の 者 等 を 魅 了 せ し め ん と 思 惟 す る こ と な り 。 鏡 心 と は 何 か と 云 は ば 、 我 れ 法 鼓 を 撃 た ん と 思 う こ と な り 。 室 宅 心 と は 何 か と 云 は ば 、 我 が 身 を 守 護 せ ん が 為 に 親 近 す る こ と な り 。 獅 子 心 と は 何 か と 云 は ば 、 凡 そ 一 切 を 威 圧 す る こ と に 親 近 す る こ と な り 。 鵜 鵬 心 と は 何 か と 云 は ば 、 凡 そ 夜 を 思 う こ と な り 。 烏 心 と は 何 か と 云 は ば 、 凡 そ 一 切 処 に 恐 し く 思 う こ と な り 。 羅 刹 心 と は 何 か と 云 は ば 、 善 に よ り て 諸 の 不 善 を 成 就 す る こ と な り 。 刺 心 と は 何 か と 云 は ば 、 凡 そ 一 切 処 に 侮 恨 を 思 う こ と な り 。 地 下 心 と は 何 か と 云 は ば 、 地 下 に 到 ら ん と 思 う こ と な り 。 風 心 と は 何 か と 云 は ば 、 凡 そ 一 切 処 に 一 切 を 成 就 す る こ と な り 。 世 間 の 六 十 心-81-密 教 文 化 ト 性 。 ン カ ク ス ス ル ノ (43) 云-何 水 -心 。 謂 順 -下 修 洗-二 灌 一 切 不 ヲ ニ 善 一 法 上 。 ン カ ク ノ ヲ ト ス (44) 云 -何 火 -心 。 謂 熾 -盛 炎 熱 性 。 ン カ (45) ( 云-何 泥 -心 ) (46) ( 漢 訳 欠 ) 、 ン カ ク ス ル ヲ ニ ト (47) 云-何 顕 -色 -心 。 謂 類 レ 彼 為 レ 性 。 ン カ ク メ テ ニ ュ (48) 云 匪 何 板 -心 。 謂 順-二 修 随 レ 量 法 幻 捨 -ニ ス ル ガ ヲ ゴ 藁 余 -善一 故 。 シ カ ク ト ト ナ リ (49) 云-何 迷 -心 。 謂 所 -執 異 所 -思 異 。 シ カ リク タ ドノ ユ (50) 云 -何 毒 -薬 -心 。 謂 順 一 修 無 生 分 法 勘 ツ カ ク コニ ス ル ヲ (51) 云 ﹁ 何 羅 -索 -心 。 謂 一 切 処 住 二 於 我 ニ モ 縛 山 為 レ 性 。 ン カ ク ス ル ヲ しト (52) 云 何 械 -心 。 謂 二 -足 止 住 為 レ 性 。 ン カ ク ニ タ テ (53) 云 何 雲 -心 。 謂 常 作 二 降 -雨 思 -念 一。 ン カ ク ニ ク ノ ス ラ ル ヲ ニ (54) 云 何田 -心 。 謂 常 如 レ 是 修 レ 事 二 自 身 鞠 水 心 と は 何 か と 云 は ば 、 凡 そ 一 ,切 の 不 善 を 洗 除 せ ん が 為 に 親 近 す る こ と な り 。 火 心 と は 何 か と 云 は ば 、 凡 そ 苦 行 よ つ て 苦 し む こ と な り 。 泥 心 と は 何 か と 云 は ば 、 凡 そ 我 が 過 失 を 以 て 他 を 畿 る ( 他 に 塗 り つ け る ) こ と な り 。 濁 心 と は 何 か と 云 は ば 、 凡 そ 他 人 の 過 失 を 執 し 心 に 汚 濁 を 生 ず る こ と な り 。 顔 料 心 と は 何 か と 云 は ば 、 凡 そ 其 の も の に 染 着 す る こ と に 親 近 す る こ と な り 。 板 心 と は 何 か と 云 は ば 、 余 善 を 棄 て て 親 近 す る こ と な り 。 迷 心 と は 何 か と 云 は ば 、 他 を 執 持 せ る に 而 も 他 の み を 思 う こ と な り 。 毒 薬 心 と は 何 か と 云 は ば 、 凡 そ 極 め て 実 体 な き も の を 思 う こ と な り 。 ,羅 索 心 と は 何 か と 云 は ば 、 凡 そ 一 切 処 に 自 己 を 束 縛 せ ら れ て 居 る こ と な り。 枷 械 心 と は 何 か と 云 は ば 、 凡 そ 二 足 に 思 う こ と な り 。 雲 心 と は 何 か と 云 は ば 、 凡 そ 水 を 思 う こ と な り 。 田 心 と は 何 か と 云 は ば 、 自 の 身 を 修 練 す る こ と な り .
ン カ ク ニ ス ル レ ス (55) 云 ﹂ 何 塩 -心 。 謂 所 二 思 -念 一彼 復 -増 二 加 ヲ 思 念 司 ン カ ク シ ク ノ ス (56) 云 ー 何 剃 -刀 -心 。 謂 唯 如 レ 是 依 ﹂ 一止 剃 ス ル ニ 除 法一。 ン カ ク ニ ノ (57) 云 何 弥 -盧 -等 -心 。 謂 常 思 -惟 心 高 ナ ル ヲ ト 挙 為 レ 性 。 ン カ ク ニ ク ノ シ テ (58) 云 -何 海 -等 -心 。 謂 常 如 レ 是 受 ﹂ 用 自 ニ モ ス 身 一而 住 ン カ ク ニ シ テ レ ニ ハ (59) 云 8 何 穴 -等 -心 。 謂 先 快 -定 彼 後 復 ス ル ヲ ト 変 -改 為 レ 性 。 ン カ ク オ ヨ ソ リ シ テ (60) 云-何 受 -生 -心 。 謂 諸 有 下 修 ﹂ 一習 行 -ヲ カ シ コ ニ ス ル ク ノ ナ リ 事 一彼 生 上 。 心 如 レ 是 同 性 。 塩 心 と は 何 か と 云 は ば 、 凡 そ 誰 か が 思 う こ と を 又 思 う こ と な り 。 剃 刀 心 と は 何 か と 云 は ば 、 凡 そ 唯 出 家 の み に 親 近 す る こ と な り 。 須 弥 等 心 と は 何 か と 云 は ば 、 凡 そ 高 ま り て 思 う こ と な り 。 海 等 心 と は 何 か ピ 云 は ば、 凡 そ 自 の 身 を 最 勝 な り し と 執 し て 居 る こ と な り 。 穴 等 心 と は 何 か と 云 は ば 、 凡 そ 先 き に 決 定 し た る に 後 に 其 れ 自 ら 変 改 し て 親 近 す る こ と な り 。 こ こ に 受 生 心 と は 何 か と 云 は ば 、 そ の 心 が 行 そ の も の と 及 び 所 生 そ の も の と 倶 行 す る こ と な り 。 (3) (4) ( 漢 疏 ) 爾 の 時 に 、 金 剛 手 は 、 復 、 仏 に 請 い 上 り て 言 さ く 、 唯 願 わ く ば 世 尊 よ 、 彼 の 心 を 説 き 給 え 、 是 の 如 く 説 き 巳 つ て 、 仏 は 金 剛 手 秘 密 主 に 告 げ て 言 く 、 秘 密 主 よ 、 諦 に 聴 け 、 ﹁ 心 の 相 と は 謂 く 、 食 心 、 無 貧 心 、 瞑 心 、 慈 心 、 痩 心 、 智 心 、 乃 至 、 云 何 が 受 生 心 、 謂 く お よ そ 行 業 を 修 習 し て 、 か し こ に 生 ず る こ と あ り 、 心 は 是 の 如 く 同 性 な り ﹂ と は 、 此 れ 前 の 問 の 中 の 諸 の 心 相 の 句 を 答 え る な り 。 初 に 六 十 心 の 名 を 列 ね 、 次 に 其 の 相 を 釈 す 。 (5) ( 蔵 釈 ) そ の 時 、 復 た 世 尊 に 金 剛 手 が 請 問 す ら く 、 世 尊 よ 、 願 は く ば 心 の 諸 の 差 別 を 説 き 給 え と は 前 に 百 六 十 の 心 の 差 別 を 越 え た る 時 、 菩 提 心 生 ず と 説 か れ た れ ば 、 此 等 の 心 の 差 別 の 相 は 云 何 な る も の か 、 願 は く ば 説 き 給 え と せ ら る べ き な り 。 か く 請 問 す る と よ り 聞 け よ と に 至 す 迄 は 答 説 な り 。 此 等 を 釈 さ る べ き は ま た 、 秘 密 主 よ 、 こ こ に 心 と は 貧 心 と 、 離 貧 心 と と よ り 穴 等 世 間 の 六 十 心
密 教 文 化 心 と 受 生 心 な り と に 至 る ま で な り 。 此 等 の 心 を 釈 さ る べ き は ま た 、 名 と 相 と 捨 と 道 の 門 よ り 釈 さ れ た り と 知 る べ き に し て 、 此 等 の 自 性 ( 性 質 ) も ま た 四 種 あ り て 、 有 煩 悩 と 善 と 不 善 と 聖 教 ( 教 訓 ) 未 依 な り 、 こ の 中 、 此 等 の 心 よ り 越 ゆ べ き こ と は ま た 総 じ て、﹁ 真 言 の 門 よ り 行 ず る こ と に し て 二 種 あ り 、 即 ち 得 悉 地 ( 成 就 ) ( 任 運 無 巧 用 ) 者 と 有 三 昧 耶 と な り 。 こ こ に 得 悉 地 (成 就 ) 者 と は 信 解 行 地 よ り 越 え て 心 の 自 性 た る 身 を 以 て 欲 す る 何 処 に ( も ) 至 る こ と ( 出 来 る が ) 故 に ( 修 行 の ) 次 第 と 劫 の 節 ( 劫 の 区 切 り ) も ま た 、( 必 要 ) な し 。 有 三 昧 耶 に ま た 二 種 あ り て 、 鈍 根 と 利 根 な り。 こ の 中 、 鈍 根 と は 最 初 に 世 間 者 の 道 た る 空 性 に 唯 一 ( 性 )=解 脱 の 恵 を 生 じ た る こ と よ り 転 昇 し て 、 人 に 無 我 を 証 し て 、 此 等 の 心 は ま た 苦 と 無 常 と 空 ( 性 ) と 無 我 を 証 す 、 さ れ ば 、 捨 を よ く 学 ぶ が ( 故 ) に 世 間 者 の 道 よ り は じ め て 、 三 劫 の 間 に 人 無 我 を 学 び 了 り て 、 次 い で 蔽 は 有 り と 思 う の 恵 を 生 ず る こ と ( と ) 、 こ れ も ま た 遮 遣 し て 纏 等 は 幻 化 と 陽 炎 の 如 し と 法 に 無 我 を 証 し て 、 三 心 ( 入 、 住 、 起 ) を 学 ぶ こ と と 、 波 羅 蜜 等 を よ く 行 ず る の 相 た る 信 解 行 地 に 入 る な り 。 利 根 の も の は 最 初 よ り 人 法 二 無 我 を 証 す る が 故 に 此 等 の 心 は ま た 幻 化 と 陽 炎 の 道 を 以 て 捨 て 且 つ 三 心 ( 入 、 住 、 起 ) を 学 ぶ こ と と 、 諸 波 羅 蜜 を よ く 行 ず る の 次 第 を 以 て 、 彼 の 一 劫 を 以 て 満 じ て 、 そ の 劫 の 四 分 の 一 を 以 て 智 の 地 に 入 る ( が 故 に ) 等 し い 。 (6) 六 十 心 の 事 象 ( 法 ) よ り 百 六 十 と 増 大 す る こ と は ま た 三 微 細 障 と 開 き て 、 此 等 の 三 を 夫 々 ま た 三 と 開 く こ と を 以 て 九 種 と 見 る べ し 。 こ の 中 、 大 の 中 の 大 障 に 於 て 一 心 を す て て 、 大 の 中 に 於 て 二 ( 心) を す て 、 大 の 小 に 於 て 三 ( 心 ) を す て 、 中 の 大 に 於 て 四 ( 心 ) を す て 、 中 の 中 に 於 て 五 ( 心 ) を す て 、 中 の 小 に 於 て 六 ( 心 ) を す て 、 小 の 大 に 於 て 七 ( 心 ) を す て 、 小 の 中 に 於 て 八 ( 心 ) を す て 、 下 よ り 出 す の 方 法 を 以 て 是 の 如 く 百 六 十 心 を 信 解 行 地 よ り 動 じ て ( 越 え て ) そ の 信 解 行 地 を よ く 円 満 す る な り 。 こ こ に 九 ( 種 ) の 最 後 た る 小 の 小 は 信 解 行 地 よ り 転 昇 し す て て 智 地 に 入 る こ と を 知 る べ し 。 (7) (1) ﹁ 秘 密 主 よ 、 彼 れ 云 何 が 食 心 な り や 、 謂 く 染 法 に 随 順 す ﹂ と は 、 謂 く 前 の 境 に 染 着 す 。 即 ち 是 れ 浄 心 を 染 汚 す る な り 。 若 し 此 の 法 に 随 順 し 修 行 す こ こ(7) に 、 負 心 ( R a g a -c i t t a ) と は 何 か と 云 は ば 、 貧 有 る 者 が 法 に 親 近 す る こ と な り と は 有 貧 の 心
る を 有 貧 心 と く 。 心 法 は 微 細 に し て 識 り 難 き を 以 て 、 但 し 彼 の 所 為 の 事 等 を 観 ず る に 、 必 ず 相 は 外 に 彰 わ る る こ と あ り 、 讐 え ば 畑 の 状 貌 を 竪 み て 、 則 ち 以 て 火 性 を 比 知 す べ し 。 故 に 諸 句 多 く 順 修 を 以 て 義 を 明 す 。 以 て 例 す べ き こ と 然 な り 。 此 等 は 皆 是 れ 未 だ 出 世 の 心 は 得 ざ る よ り 以 来 。 善 を 種 々 に 雑 起 す る 心 な り 。 若 し 行 者 、 善 く 真 偽 を 識 り て 、 猶 し 農 夫 の 努 め て 稼 草 を 除 き 、 以 て 嘉 苗 を 輔 く る か 如 く す れ ば 、 則 ち 浄 心 の 勢 力 は 漸 々 に 増 大 す 。 是 れ 因 縁 の 事 相 な り と 謂 い て 、 至 言 を 軽 忽 に し 、 心 を し て 其 の 中 に 没 し て 、 自 ら 覚 知 せ ざ ら し む る こ と 勿 れ 。 (2) 第 二 に ﹁ 云 何 が 無 貧 心 な る や 、 謂 く 無 染 の 法 に 随 順 す ﹂ と は 謂 く 、 前 の 心 と 相 違 す 。 乃 至 、 追 求 す べ き 所 の 善 処 に も 、 亦 復 た 願 楽 を 生 ぜ ず 。 是 の 故 に 善 法 に 染 ら ず 。 倶 に 善 萌 を 障 う 。 無 染 汚 の 心 と 名 は 同 じ う し て 事 異 り と せ ら る べ き に し て 、 こ れ ま た 、 善 と 不 善 と 有 ( 煩 ) 悩 と 聖 教 未 依 の 四 種 法 中 適 宜 に 執 着 し て 親 近 し た り と し る べ し 。 さ れ ば 、 天 等 を 信 仰 し つ つ 供 養 す べ き こ と に 執 じ て 供 養 等 の 此 等 の 事 業 を な す こ と は 貧 あ る 者 が 法 に 親 近 す る こ と と 名 付 け て 善 な り 。 同 じ く 女 等 に 執 じ て そ の 所 作 を 為 す こ と は 貧 あ る 者 が 法 に 親 近 す る こ と に し て 有 ( 煩 ) 悩 の 心 な り 。 未 だ 与 え ざ る も の を と る こ と と 、 虚 妾 を 云 う こ と に 於 て 法 に 執 じ て 此 等 の 所 作 を な す こ と は 貧 あ る 者 が 法 に 親 近 す る こ と に し て 不 善 の 心 な り 。 工 芸 等 の 法 に 執 じ て 此 等 の 所 作 を 為 す こ と は 、 貧 あ る 者 が 法 に 親 近 す る こ と に し て 聖 教 未 依 な り 。 是 の 如 く 此 の 方 法 に よ り て 、 余 他 の 心 を も ま た 適 宣 に 善 と 不 善 と 有 ( 煩 ) 悩 と 聖 教 未 依 ( の 吟 味 ) と 合 す べ し 。 離 貧 心 ( v i r a g a -c i t t a ) と は 何 か と 云 は ば 、 貧 を 離 れ た る 者 が 法 に 親 近 す る こ と な り と は 前 に 述 べ た る の 四 種 法 に 未 だ 着 せ ざ る か 或 は 信 解 世 間 の 六 十 心
-85-密 教 文 化 最 も 須 ら く 観 察 す べ き な り 。 是 の 故 に 、 行 者 は 但 し 食 心 の 実 相 を 感 じ て 、 自 然 に 不 染 心 に 貧 せ ん 。 是 の 如 く の 無 慧 不 貧 の 行 を 起 す べ か ら ず 。 (3) 第 三 に ﹁ 云 何 が 瞑 心 な る や 、 謂 く 怒 法 に 随 順 す ﹂ と ( に 於 け る ) 怒 と は 謂 く 、 瞑 心 発 動 し て 、 事 は 外 に 彰 は る 。 心 法 は 識 り 難 き を 以 て の 故 に 怒 法 に 順 修 す る を 以 て 之 を 釈 す 。 若 し 数 々 是 の 如 く の 不 寂 静 の 相 を 起 せ ば 、 即 ち 知 ん ぬ 是 れ 瞑 心 の 相 な り 。 但 し 此 の 衆 縁 の 中 に 於 て 、 瞑 心 を 観 察 し て 、 自 ら 住 す る 所 な け れ ば 、 則 ち 此 の 障 は 生 ぜ ず 。 (4) 第 四 に ﹁ 云 何 が 慈 心 な る や 、 謂 く 慈 法 に 随 順 し 修 行 す ﹂ と は 、 此 の 慈 は 亦 こ れ 瞑 と 相 違 す 。 愛 見 心 垢 の 慈 に し て 、 善 種 の 所 生 に 非 ざ る な り 。 上 の 慈 の 字 は 、 内 心 に 拠 り 下 の 慈 の 字 は 、 是 れ 外 相 所 為 の 事 業 な り 。 既 に 覚 知 し 巳 ん ぬ れ ば 、 但 し 妨 道 の 失 を 治 す 。 転 々 し て 慈 無 量 心 を 修 す れ ば 、 即 ち こ れ 対 治 な り 。 (5) 第 五 に ﹁ 云 何 が 癖 心 な る や 、 謂 く 不 観 の 法 に 順 修 す ﹂ と は 、 謂 く 前 の 言 の 善 悪 是 非 を 観 ぜ す 、 遇 え ば 便 ち 信 受 す 。 凡 そ 所 為 の 事 業 は 、 先 ず 慧 心 を 以 て 、 甑 別 し て 是 非 を 簿 量 す る こ と 能 は ず 。 是 の 如 し 等 は 、 諸 の 誤 失 多 し 。 皆 是 れ 擬 心 の 相 な り 。 (6) 第 六 に ﹁ 云 何 が 智 心 な り や 、 謂 く 殊 勝 増 上 の 法 に 順 修 す ﹂ と は 、 謂 く 是 せ ざ れ ど も 、 法 そ の も の を 行 ず る か 若 し く は 他 に 影 響 せ ら れ ず し て 此 等 の 所 作 を な す こ と な り 。 ( さ れ ば ) 食 よ り 離 れ た る 者 が 法 に 親 近 す る こ と な り 。 瞑 心 ( D v e s a -c i t t a ) と は 何 か と 云 は ば 、 瞑 つ て 法 に 親 近 す る こ と な り と は 、 有 瞑 の 心 に し て 前 に 述 べ た る 方 法 を 以 て 善 と 不 善 等 を し る べ し 。 慈 心(Maitra-citta) と は 何 か と 云 は ば 、 慈 あ る 者 が 法 に 親 近 す る こ と な り 。 と は 有 慈 の 心 に し て 、 善 と 不 善 等 は 前 の 如 し 。 擬 心 ( M o h a-citta) と は 何 か と 云 は ば 、 凡 そ 吟 味 せ ず し て 法 に 親 近 す る こ と な り 。 と は 有 痩 の 心 な り 。 智 心(Prajna-Citta) と は 何 か と 云 は ば 、 殊
-86-の 人 は 種 々 の 所 説 の 中 に 於 て 、 皆 智 を 以 て 此 れ は 勝 れ た り 、 此 れ は 劣 る 、 此 れ は 受 く べ し 馬 此 れ は 受 く べ か ら ず と 簡 択 し て 、 其 の 勝 上 の 者 を と つ (8) (9) て 、 而 し て 後 に 之 を 行 ず れ ば 、 即 ち こ れ 無 凝 の 相 な り 。 然 も 、 道 人 の 法 は 、 知 力 の 箒 量 の 能 く 之 に 及 ぶ 所 に 非 ず 。 唯 信 ず る 者 の み 能 く 入 る の み 。 是 の 故 に 世 知 弁 聡 の 難 を 観 察 す る は 、 是 れ 彼 の 対 治 な り 。 (7) 第 七 に ﹁ 云 何 が 決 定 心 な り や 、 謂 く 尊 の 教 命 を 説 の 如 く 奉 行 す 。 (8) 第 八 に ﹁ 云 何 が 疑 心 な り や 、 謂 く 不 定 等 の 事 を 収 持 す ﹂ と は 、 今 先 づ 疑 (10) 心 を 釈 す る こ と は 、 決 定 心 の 相 を し て 解 し 易 く 明 了 な ら し め ん が た め の 故 な り 。 謂 く 此 の 人 は 聞 く 所 あ る に 随 つ て 、 便 ち 不 決 定 の 心 を 生 ず 。 受 戒 の 時 の 如 き は 、 便 ち 自 ら 疑 心 を 生 ず 、 我 れ 今 定 ん で 戒 を 得 し や 、 も し は 戒 を 得 ざ る や 、 或 は 師 を 疑 い 、 法 を 疑 う 。 諸 事 例 し て 爾 り 。 人 の 道 を 行 く に 、 (11) 疑 惑 を 以 て の 故 に 、 前 進 す る こ と 能 は ざ る が 如 し 。 智 度 ( 論 ) の 偶 に 云 は く 、 乃 至 、 讐 え ば 岐 路 を 観 て 、 好 利 の 者 は 、 逐 う べ き が 如 く 。 是 れ 彼 の 対 す な わ 治 な り 。 又 決 定 心 と は 、 謂 く 善 友 等 の 如 法 の 教 命 を 聞 く に 随 う て 、 便 即 ち 勝 の 中 に 他 の 殊 勝 を 解 了 し て 法 に 親 近 す る こ と な り 。 と は 有 智 の 心 に し て 殊 勝 の 中 と は 智 を 未 だ 得 ざ る こ と よ り 智 を 得 た る こ と と せ ら れ る べ き な り 。 他 の 殊 勝 と は こ の 得 た る 智 よ り ( 更 に に ) 最 勝 の 智 を 殊 勝 に 解 了 す る こ と と せ ら る べ き な り 。 決 定 心 ( N ir n a y a -c it ta ) と は 何 か と 云 は ば 、 (王 等 の ) 教 勅 及 び 尊 宿 の 語 の 如 く に な す こ と な り と は 王 等 の 教 勅 や 阿 闇 梨 ( 尊 宿 ) 等 の な す べ か ら ず 、 適 は し か ら ず と ( 示 さ れ し こ と ) を 決 定 し て な す べ き そ の 法 を な す こ と な り 。 疑 惑 心 (Samsaya-citta) と は 何 か と 云 は ば 、 如 何 に 執 持 せ ら る べ き か の 決 定 し た る も の に 疑 い 親 近 す る こ と な り と は 有 疑 心 に し て 既 に 不 退 転 に 執 持 し た る も の を 後 に 自 ら が 疑 い を 起 す べ き に し て 、 疑 い を 起 す こ と は そ の 法 に 親 近 す る こ と な り と 名 付 く 。 世 間 の 六 十 心
-87-密 教 文 化 疑 慮 を 生 ぜ ず 、 心 を 至 し て 奉 行 す 。 然 も 亦 当 に 慧 を 以 て 観 察 し て 、 正 決 定 の 心 生 ず る な り 、 (9) 第 九 に ﹁ 云 何 が 闇 心 な り や 、 謂 く 無 疑 慮 の 法 に 於 て 、 疑 慮 の 解 を 生 ず 。 ﹂ と は 、 謂 く 、 四 諦 不 浄 無 常 等 の 如 き は 、 世 間 の 智 者 は 、 疑 を 生 ず べ か ら ず 。 然 も 彼 れ こ れ を 聞 い て 、 心 に 猶 予 を 懐 く こ と ( 闇 ) 夜 に 株 杭 を 見 て 種 種 の 憶 度 の 心 を 生 ず る が 如 し 。 若 し 見 に 是 の 如 く の 相 あ ら ば 、 当 に 知 る べ し 。 暗 心 の 然 ら し む る 所 な り 。 (10) 第 十 に ﹁ 云 何 が 明 心 な り や 、 謂 く 不 疑 慮 の 法 に 於 て 、 疑 慮 な く し て 修 行 す ﹂ と は 、 謂 く 決 定 の 法 印 の 疑 慮 す べ き に 非 ざ る 法 に 於 て 、 彼 れ 聴 聞 す る は る か 所 に 随 つ て 、 即 ち 能 く 懸 に 信 ず 。 当 に 知 る べ し 是 れ 明 心 な り 。 然 も 是 の 中 に 、 若 は 過 ぎ 若 は 及 ば ざ る は 、 即 ち 是 れ 道 を 障 る の 心 な り 。 更 に 中 慧 に 処 す る は 、 こ れ 彼 の 対 治 な り 。 (11) 第 十 一 に ﹁ 云 何 が 積 聚 心 な り や 、 謂 く 無 量 を 一 と す る を 性 と す ﹂ と は 、 謂 く 此 の 人 は 、 一 事 に 随 う て 信 解 を 生 じ 巳 て 、 更 に 種 種 の 殊 異 の 法 を 聞 い (13) て 、 皆 合 集 し て 一 と す 。 又 一 三 昧 を 学 得 し 巳 て 、 余 の 経 教 と 無 量 の 法 門 と 差 別 の 勝 事 を 見 て 、 皆 此 れ 定 心 を 説 く な 塾 。 此 を 離 れ て の 外 に 、 更 に 余 法 闇 心 ( T a m a s-citta) と は 何 か と 云 は ば 、 疑 慮 な き も の に 疑 慮 し て ( 親 近 ) す る こ と な り と は 闇 に 等 し き 心 に し て 、 恰 も 闇 の 内 に 於 て は 瓶 等 有 れ ど も 明 瞭 な ら ず し て 有 無 を 疑 う ( 如 く ) 、 同 じ く 不 退 転 の 事 法 に 対 し て 無 明 の 闇 に 覆 は れ て 疑 を 起 す 心 は 闇 と 等 し き な り 。 明 心 ( A lo k a -c it t a ) と は 何 か と 云 は ば 、 疑 慮 な き も の に 疑 慮 な く 親 近 す る こ と な り と は 、 ( 光 ) 明 の 自 性 ( 性 質 ) と な り た る 心 に し て 、 恰 も 虚 空 が 明 亮 に し て 事 物 が 明 瞭 に 見 得 る 如 く そ の ( 光 ) 明 の 自 性 に よ り て 形 か 又 そ れ に よ り て 知 ら る べ き 事 物 ( と し て ) 疑 い な く 領 受 す る こ と は 疑 い な く 法 に 親 近 す る こ と な り 。 摂 心 ( s a m g r a h a-citta) と は 何 か と 云 は ば 、 多 を 一 に な す こ と な り と は 、 摂 す る の 自 性 の 心 に し て 、 纏 、 処 、 界 等 の 夫 々 の 自 性 の 相 を な す も の よ り 空 と か 無 我 と か 等 の 一 般 的 ( 概 念 た
-88-な し と 謂 ふ が ( 如 し ) 故 に 積 聚 心 と 名 く な り 。 (12) 第 十 二 に ﹁ 云 何 が 闘 心 な り や 、 謂 く 互 相 に 是 非 す る を 性 と す ﹂ と は 謂 く 他 の 所 説 の 言 教 を 聞 い て 、 常 に 好 ん で 是 非 を 弁 論 す 。 謂 く 是 の 義 は 爾 る べ か な し 。 是 の 事 は 然 ら ず と 。 仮 使 言 う 所 は 理 に 合 え ど も 、 赤 種 種 の 方 便 を 以 て た と 其 の 長 短 を 伺 求 し 、 失 処 に 堕 在 せ し め ん と 欲 う 。 設 い 他 ( 人 ) 来 つ て 問 う 時 に も 、 亦 復 其 の 長 短 を 求 め て 、 此 の 間 を 乖 僻 し て 、 我 れ 答 う べ か ら ず と 言 う 。 是 の 如 く の 相 を 現 ず る こ と と あ る は 、 当 に 知 る べ し 是 れ 闘 心 な り 。 (13) 第 十 三 に ﹁ 云 何 が 課 心 な り や 、 謂 く 自 己 に 於 て 、 而 も 是 非 を 生 ず ﹂ と は 、 す な は 謂 く 内 に 是 非 の 心 を 懐 き 、 自 ら 一 義 を 思 惟 し 寛 つ て 轍 ち 復 自 ら 異 端 を 設 け て 、 其 の 失 を 推 求 し 善 心 を 以 て 、 人 に 諮 受 し て 、 既 に 領 受 し 巳 る と 錐 も 、 還 つ て 自 ら 得 失 を 推 求 し 、 此 の 事 は 爾 る べ し 、 此 は し か る べ か ら ず と 謂 う が 如 し 。 多 く 是 の 如 く の 相 を 現 ず る こ と あ る は 、 当 に 知 る べ し 、 こ れ 課 心 な り 。 (14) 第 十 四 に ﹁ 云 何 が 無 課 心 な り や 、 謂 く 是 非 倶 に 捨 つ ﹂ と は 、 梵 本 の 転 声 (14) に 准 ぜ ば 、 六 十 心 の 下 に 於 て 、 皆 為 性 の 字 あ る べ し 。 例 し て 知 る べ き な り 。 謂 く 其 の 心 の 向 背 を 懐 か ず 、 先 に 宗 習 す る 所 に 、 是 の 如 く の 見 解 を 作 す と 錐 も 、 更 に 異 言 の 違 を 以 て 、 理 に 合 す る を 聞 い て 、 即 ち こ れ を 受 行 し 或 は 先 に は 以 て 是 と す れ ど も 、 他 ( 人 ) の 以 て 不 善 と す る を 聞 い て 、 即 ち 能 く こ れ を 改 む 。 情 に 所 執 な く し て 、 是 非 倶 に 捨 つ 。 是 の 如 く の 相 あ る が る ) 一 相 に 摂 す る こ と な り 。 闘 心 ( K a li -ci tt a ) と は 何 か と 云 は ば 、 彼 此 諄 へ ぬ も ぬ も う こ と な り と は 、 有 闘 の 心 に し て 不 同 の 境 ( 界 ) を 夫 々 執 持 す べ く 夫 々 課 う の 法 に 親 近 す る こ と な り 。 詳 心 ( v i v a q a-citta) と は 何 か と 云 は ば 、 凡 そ 我 れ と 我 が 課 う こ と な り と は 謝 の 自 性 の 心 に (19) し て 、 他 と 互 に 不 同 の 方 分 を 執 持 す べ く し て 諄 い 、 自 の 心 に 於 て 遮 す る か 又 は 吟 味 す る 如 き な り 。 不 諄 心 ( A -v i v a g a -c i t t a ) と は 何 か と 云 は ば 平 等 に 見 る こ と な り と は 、 諄 な き 自 性 の 心 に し て 、 何 れ か よ き 事 法 に 於 て 、 他 と 見 を 等 し く し て 、 等 し く 行 じ 且 つ 諄 な き の 法 に 親 近 す る こ と な り 。 世 間 の 六 十 心
-89-密 教 文 化 如 き は 、 当 に 知 る べ し 、 こ れ 無 諄 心 な り 。 無 記 無 諄 の 心 を 覚 知 し て 、 諸 法 の 実 相 を ( 知 り ) 無 諦 の 心 を 修 す る は 、 こ れ 彼 の 対 治 な り 。 (15) 第 十 五 に ﹁ 云 何 が 天 心 な り や 、 謂 く 心 は 念 に 随 う て 成 就 せ ん と 思 う ﹂ と は 、 諸 天 の 先 世 の 果 報 を 以 て の 故 に 、 若 し 所 須 あ れ ば 、 功 力 を 加 え ざ れ ど ぎ よ う も 、 心 に 随 う て 生 ず る ( が 故 に ) 数 々 是 の 如 き 願 楽 を 起 す は 、 当 に 知 る べ む か し 。 こ れ 天 心 な り 。 亦 曽 し 上 界 に 生 ぜ し に 由 る が 故 に 、 此 の 習 あ る な り 。 も ひ 如 し 真 言 行 人 に し て 、 遠 大 の 果 を 期 せ ず し て 、 た だ 自 心 の 為 め に 牽 か る れ ば 、 能 く 浄 菩 提 心 を 障 う 。 当 に 自 ら 覚 知 し て 世 間 の 悉 地 を 貧 る こ と 勿 れ 、 是 れ 彼 の 対 治 な り 。 (16) 第 十 六 に ﹁ 云 何 が 阿 修 羅 心 な り や 、 謂 く 生 死 に 処 せ ん と 楽 う ﹂ と は 、 阿 を ば 名 け て 非 と し 、 修 羅 を ば 天 と 名 く 。 其 の 果 報 は 天 に 似 た れ ど も 、 而 も 行 業 と 住 処 と は 、 不 同 な る を 以 て の 故 に 、 以 て 名 と す な り 。 此 れ 解 脱 の ね が 利 あ り と 知 れ ど も 、 但 し 深 く 生 死 の 果 報 快 楽 を 楽 う て 、 進 趣 す る こ と 能 は ず 。 若 し 行 人 に し て 此 の 相 貌 あ ら ば 、 当 に 知 る べ し 。( 阿 ) 修 羅 心 と 名 く 。 む か 亦 先 世 に 曽 し 此 の 趣 に 生 ぜ し に 由 が 故 に 、 此 の 習 あ り 。 無 常 苦 等 を 観 察 す る は 、 こ れ 彼 の 対 治 な り 。 (17) 第 十 七 に ﹁ 云 何 が 龍 心 な り や 、 謂 く 広 大 の 資 財 を 思 念 す ﹂ と は 、 謂 く 数 々 是 の 念 を な す 。 我 当 に 何 れ の 方 便 を 以 て か 、 是 の 如 く 広 大 資 財 の 勝 妙 の 天 心 ( D e v a -c it t a ) と は 何 か と 云 は ば 、 意 が み ず か ら 誇 負 ( 心 と な る ) す る こ と な り 。 と は 天 の 如 き 心 か 或 は 天 の 為 に 思 う こ と に し て 、 天 の 如 く 思 う こ と と は 恰 も 諸 天 が 我 は 天 な り と 思 う 如 く に し て そ の ( 心 は ) ま た 我 た る 処 の も の は そ れ ( 天 ) な り と 思 う こ と な り 。 天 の 為 に 思 う こ と と は 、 自 ら が 天 と な る べ し と 思 う こ と な り 。 非 天 心 ( A su ra-citta) と は 何 か と 云 は ば 、 凡 ア シ ユ ラ そ 輪 廻 を 願 う こ と な り と は 非 天 の 如 き 心 に し て 是 の 如 く ( 恰 も ) 阿 修 羅 が 此 等 の 一 切 の 事 法 を よ く 願 う と 同 じ く 、 こ の 心 も ま た 輪 廻 ( 生 死 ) を 願 う の 法 に 親 近 す る こ と な り 。 龍 心 ( N a g a -c i tt a ) と は 何 か と 云 は ば 、 大 資 財 た ら し め ん が 為 に 思 う こ と な り 。 と は 龍 の 如
-90-珍 宝 を 獲 べ き や 、 此 の 多 食 に し て 厭 く こ と な き 想 あ る は 、 是 れ 龍 趣 の 心 な こ の り 。 亦 本 ( 生 の ) 龍 趣 の 中 よ り 来 た る が 故 に 、 此 の 習 を 生 ず 。 喜 ん で 行 人 を し て 、 世 人 の 悉 地 を 願 求 せ し め て 、 出 世 の 浄 心 を 障 う 。 少 欲 知 足 と 無 常 等 と を 思 惟 す る は 是 彼 の 対 治 な り 。 (18) 第 十 八 に ﹁ 云 何 が 人 心 な り や 、 謂 く 他 を 利 す る を 思 念 す ﹂ と は 、 謂 く 好 そ れ が し ん で 追 求 し 思 念 す ら く 、 某 甲 は 我 に 於 て 恩 あ り 、 我 当 に 是 の 如 く の 方 便 を む か 以 て 、 大 利 を 得 せ し む べ し 。 某 甲 は 曽 し 我 が 所 に 於 て 、 不 饒 益 あ り 。 今 当 に 之 を 報 ず べ し と 。 及 び 種 々 に 人 を 理 し 、 物 を 利 す る の 計 あ る は 、 皆 是 れ 人 心 な り 。 当 に 自 ら の 心 行 を 観 じ て 、 早 く 法 利 を 求 め 、 紛 紘 と し て 他 縁 を 思 慮 す べ か ら ず 。 こ れ 彼 の 対 治 な り 。 (19) 第 十 九 に ﹁ 云 何 が 女 心 な り や 、 謂 く 欲 法 に 随 順 す ﹂ と は 、 亦 是 れ 人 趣 の 心 な り 。 但 し 多 欲 を 以 て 異 と す る の み 。 経 に 説 て 言 う が 如 し 、 女 人 は 多 欲 な る こ と 、 男 子 に 百 倍 す 。 常 に 経 し 所 の 楽 事 を 念 じ 、 或 は 他 の 容 色 姿 態 を き 心 に し て 、 恰 も 富 め る 龍 に 多 頭 あ り て 、 多 頭 は 広 大 資 財 を よ く 知 る が 如 く 、 こ の 心 も ま た 、 広 大 資 財 を 領 受 す る 法 に 親 近 す る こ と な り 。 こ の 中 、 龍 の 多 頭 が 資 財 の 喩 と し て 云 何 と な れ ば 、 印 度 語 に 資 財 ( 受 用 ) と は B h o g a に し て 、 龍 の 頭 を も ま た B h o g a を 名 く 、 さ れ ば 、 言 葉 も ま た 等 し く 意 義 に 於 て も ま た 彼 の 多 頭 の 龍 は 富 め る が 故 に 広 大 資 財 を 受 用 す る な り 。 同 じ く こ の 心 も ま た 、 広 大 資 財 の 法 に 親 近 せ し む る が 故 に 龍 の 如 き 心 と 名 く る な り 。 人 心 (Manusya-citta)と は 何 か と 云 は ば 、 彼 自 身 の 利 を 思 う こ と な り 。 と は 人 と し て の 受 用 た る 欲 徳 の 法 に よ く 親 近 す る な り 。 女 心 ( N a r i-c it t a ) と は 何 か と 云 は ば 、 愛 欲 の み の 為 に 法 に 親 近 す る こ と な り 。 と は 女 の 如 き の 心 に し て 、 女 と は 愛 欲 の 境 と な り た る の 諸 法 世 間 の 六 十 心
-91-密 教 文 化 む か 想 う 。 能 く 行 者 を し て 浄 心 を 障 蔽 せ し む 。 亦 是 れ 多 生 に 曽 し 女 人 と 作 り し を 以 て 、 猶 本 習 あ る な り 。 是 の 中 に は 不 浄 念 処 等 を 以 て 、 身 の 実 相 を 観 ず る は 、 是 れ 彼 の 対 治 な り 。 (20) 第 二 十 に ﹁ 云 何 が 自 在 心 な り や 、 謂 く 思 惟 し て 我 れ 一 切 を 意 の 如 く な ら し め ん と 欲 う ﹂ と は 、 自 在 ( 天 ) は 即 ち 外 道 の 事 う る 所 の 天 神 な り 。 彼 の 宗 の 計 す ら く 、 自 在 天 は 能 く 念 に 随 う て 、 諸 の 衆 生 及 び 苦 楽 の 事 を 造 す と 、 か 此 の 法 を 修 す る 者 は 、 亦 常 に 念 を 係 け て 、 其 の 本 尊 の 如 く な る こ と を 得 ん し ば と 願 う 。 若 し 真 言 行 人 に し て 、 数 々 此 の 如 く 悉 地 を 念 じ 、 我 れ 念 に 随 う て 成 就 せ ん と 念 ず る は 、 当 に 知 る べ し 、 是 れ 自 在 心 な り 。 亦 先 習 の 然 ら し む る 所 な り 。 当 に 諸 法 は 皆 悉 く 衆 因 縁 に 属 し て 、 自 在 あ る こ と な し と 観 す る は 、 是 れ 対 治 す る 所 な り 。 (21) 第 二 十 一 ﹁ 云 何 が 商 人 心 な り や 、 謂 く 初 に 収 聚 し て 、 後 に は 分 析 す る 法 に 順 修 す ﹂ と は 、 世 の 商 人 は 先 づ 努 め て 貨 物 を 儲 聚 し て 、 然 し て 後 に 思 惟 し て 之 を 分 析 し 、 此 の 物 を ば 其 の 処 の 用 に 当 て 、 彼 の 物 を ば 其 の 所 の 用 に 当 て て 、 大 利 を 得 べ し ( と 云 う ) 如 く 、 若 し 行 人 先 づ 内 外 の 学 問 を 務 め て 周 備 せ し め て 、 方 に 復 簿 量 す ら く 、 こ れ は 是 れ 世 典 な り 。 是 の 如 く の 処 の 用 に 当 て 、 こ れ は 二 乗 の 法 な り 、 用 い て 其 の 人 に 接 す べ し 。 此 れ は 大 乗 の 資 糧 な り 。 こ れ 其 の 縁 の 所 要 な り と 、 此 れ を 商 人 心 と 名 く 。 亦 先 習 に よ つ て を 得 ん が 為 に 、 こ れ 等 ( 愛 欲 ) の 法 の 所 作 を な す な り 。 さ れ ば 同 じ く こ の 心 も ま た 愛 欲 の 諸 境 を 得 ん が 為 に 此 等 の 法 に よ く 親 近 す る こ と な り 。 自 在 心 ( i s v a r a -c i t t a ) と は 何 か と 云 は ば 、 凡 そ 我 れ は 一 切 を 思 惟 せ り と 誇 負 す る こ と な り 。 と は 自 在 天 の 如 き 心 に し て 、 自 在 天 は 一 切 世 間 の 生 と 滅 を ば 我 が な せ り と 思 う な り 。 同 じ く こ の 心 も ま た 、 自 ら が 未 だ な さ ざ り し 事 等 さ え も 我 が な し た り と 云 う ( 如 き ) 法 に よ く 親 近 す る こ と な り 。 自 在 天 は 大 天 と せ ら る べ き な り 。 商 人 心 ( v a n i c-citta) と は 何 か と 云 は ば 、 凡 て ( 初 に ) 接 収 し た る 所 を 後 に 増 加 し て 親 近 す る こ と な り 。 と は 商 人 の 如 き 心 に し て 、 商 人 は あ が な 儲 い つ つ 購 買 す る の 諸 法 ( 事 物 ) が 価 少 の 時 に 全 て を 摂 し て ( 買 い ) 凡 て 価 大 な る 時 、 此 等 全 て を 増 加 し つ つ ( 商 ) 売 す る こ と な り 。 同 じ く こ の 心 は 又 、 先 に 纏 、 界 、 処 の 諸 法 が 無 常 と 苦
-92-然 ら し む る な り 。 捷 疾 の 智 を 修 す る は 、 こ れ 彼 の 対 治 な り 。 謂 く 何 れ の 法 を 聞 く に 随 つ て も 、 即 ち 彼 の 因 縁 の 事 用 を 観 す べ し 。 量 に 多 聞 の 蓄 聚 を 待 て 方 に 用 処 を 求 め ん や 。 (22) 第 二 十 二 に ﹁ 云 何 が 農 夫 心 な り や 、 謂 く 初 に 広 く 聞 い て 、 而 し て 後 に 求 む る 法 に 随 順 す ﹂ と は 、 稼 を 学 ぶ も の の 老 農 に 詞 問 す ら く 、 云 何 が 地 の 良 お さ 美 を 知 り 、 云 何 が 耕 植 し 転 褥 す る や 、 云 何 が 時 を 侯 ち 、 云 何 が 獲 り 蔵 む る や と 是 の 如 く 一 一 に 知 り 巳 つ て 、 方 に 巧 力 に 就 く が 如 し 。 此 の 心 も 亦 爾 な (15) り 先 づ 務 め て 智 者 に 諮 承 し て 、 広 く 道 品 を 聞 い て 、 然 し て 後 に 之 を 行 ず 、 皆 宿 習 の 然 ら し む る 所 な り 。 利 智 を 以 て 所 対 治 と す 。 諸 薙 無 常 な り と 聞 く (16) が 如 き は 、 即 ち 界 入 縁 起 等 も 、 其 の 相 例 し て 皆 爾 り と 知 る 。 又 毒 箭 の 体 に (17) 入 る が 如 き は 、 壼 に 三 農 の 月 を 埃 つ て 、 広 く 問 う て 後 に 之 を 抜 く こ と を 得 ん や 。 (28) 第 二 十 三 コ ム 何 が 河 心 な り や 、 謂 く 二 辺 に 依 因 す る 法 に 順 修 す ﹂ と は 、 此 の 心 の 性 は 隻 べ て 二 辺 に 依 る 。 或 る 時 は 常 に 修 し 、 或 る 時 は 断 を 修 し 、 或 は 復 邪 正 を 兼 て 信 ず る 。 河 水 の 讐 べ て 両 岸 に 依 り 、 其 の 漂 流 す る 所 の 物 も 、 亦 定 め て 一 辺 に 係 は ら ざ る が 如 し 。 此 の 中 の 対 治 は 、 謂 く 行 人 は 心 を 一 境 に 専 に す れ ば 、 即 ち 能 く 至 到 す る 所 あ り 、 若 し 心 定 守 せ ず し て 、 能 く 事 業 を し て 倶 に 弁 ぜ し む と な ら ば 、 此 の 理 な き な り 。 等 の 法 を 以 て 此 等 そ の も の を 適 当 に 捨 て る の 法 に 親 近 す る こ と な り 。 . 農 夫 心 ( X a r s ik a -c it t a ) と は 何 か と 云 は ば 、 凡 そ ( 初 に ) 聞 け る 多 種 を 後 に 求 め つ つ 親 近 す る こ と な り 。 と は 農 夫 の 如 き 心 に し て 、 先 に 田 の 諸 の 収 穫 物 を 収 め て 後 に 此 等 の 田 の 収 穫 物 を ( 以 て ) 飯 と 飲 等 の 所 作 を な す な り 。 同 じ く こ の 心 も ま た 、 先 に 諸 法 を 多 く 聞 い て 積 め 、 後 に 所 用 に 随 つ て 此 等 の 法 を 思 惟 す べ く 修 す べ き 等 の 法 に 親 近 す る こ と な り 。 河 心 ( o g h a -c it t a ) と は 何 か と 云 は ば 、 凡 そ (16) 二 辺 を 見 て 親 近 す る こ と な り 。 と は 河 の 如 き 心 に し て 、 河 は 両 辺 ( 岸 ) に 於 て 高 か ら ず 、 中 央 の 本 流 よ り 流 れ る な り 。 同 じ く こ の 心 は ま た 、 常 と 断 の 二 辺 を す て し め る の 法 に 親 近 す る こ と な り 、 ま た 河 は 両 辺 ( 岸 ) を 見 つ つ 流 れ る 如 く こ の 心 も ま た 常 と 断 の 辺 を 執 持 し て そ の 法 に 親 世 間 の 六 十 心
-93-密 教 文 化 (24) 第 二 十 四 に ﹁ 云 何 が 陵 池 心 な り や 、 謂 く 渇 し て 厭 足 な き 法 に 随 順 す ﹂ と (19) は 讐 え ば 、 破 池 の 若 し 衆 水 流 入 す れ ど も 、 終 に 厭 足 な き が 如 く 、 此 の 心 も 亦 爾 な り 。 若 し 名 利 春 属 等 の 事 が 、 そ の 身 に 来 集 す れ ど も 、 終 に 厭 足 な し 。 乃 至 、 所 学 の 法 に 於 て も 亦 爾 り 。 巳 に 乳 魔 を 得 て 、 務 て 速 か に 食 せ ず し て 、 更 に 復 渇 し て 余 味 を 望 む が 如 し 。 是 の 中 に は 、 少 欲 知 足 を 以 て 、 対 治 と す 。 (25) 第 二 十 五 に ﹁ 云 何 が 井 水 な り や 、 謂 く 是 の 如 く 思 惟 す る こ と 、 深 く し て み 復 甚 深 な り ﹂ と は 、 謂 く 傭 し て 井 水 を 闘 る に 、 浅 深 の 量 知 り 難 き が 如 く 、 此 の 心 の 性 も 、 亦 是 の 如 し 。 凡 そ 思 惟 す る 所 に は 好 ん で 尚 深 遠 な り 。 所 有 の 善 不 善 の 事 は 、 皆 人 を し て 測 量 す る こ と 能 は ざ ら し む 。 共 行 住 同 事 に も 亦 其 の 心 行 を 識 ら ざ ら し め ん と 欲 ふ 。 当 に 知 る べ し 。 是 れ 井 心 な り 。 縁 起 の 法 門 と 及 び 善 人 の 相 と は 、 皆 顕 了 に て 知 り 易 し 。 是 れ 彼 の 対 治 な り 。 (26) 第 二 十 六 に ﹁ 云 何 が 守 護 心 な り や 、 謂 く 唯 し 此 の 心 の み 実 な り 。 余 心 は め ぐ ら 不 実 な り ﹂ と は 、 世 人 の 巳 身 の 財 物 等 を 護 ら ん が 為 め の 故 に 、 乃 至 塙 を 周 し 閣 を 重 ね 、 種 々 に 防 守 し て 、 他 の 為 め に 傷 ( つ け ) ら れ し め ざ る が 如 く (20) 此 の 心 も 亦 爾 り 、 常 に 心 身 を 守 護 す る こ と 乃 至 亀 の 六 を 蔵 し て 、 外 境 を し し (21) お も て 傷 ( つ け ) ら れ 令 め ざ る が 如 し 。 謂 く 唯 此 の 行 の み 実 な り と 為 う て 、 諸 近 せ し め る こ と も せ ら る べ き な り 。 肢 池 心 ( v il v a -c it t a ) と は 何 か と 云 は ば 、 凡 そ 渇 に よ り 親 近 す る こ と な り 。 と は 池 の 如 き 心 に し て 、 そ の 池 は 、 他 の 流 れ の 諸 水 を 集 め て 、 自 よ り 何 処 に も 、 漏 さ ず し て 、 同 じ く こ の 心 は ま た 、 他 の 全 て を 摂 し て 、 自 よ り 他 所 に も 遣 ら ざ る 法 に 親 近 す る こ と な り 。 井 心 ( d d a p a n a -c i t t a ) と は 何 か と 云 は ば 、 凡 そ 深 か ら ざ る を 深 し と 思 う こ と な り 。 と は 井 戸 の 如 き 心 に し て 、 水 の 充 て る 井 戸 は 深 か ら ざ れ ど も 底 を 量 る に 現 は れ ざ る が 故 に 深 き も の と ( 思 う に ) 等 し く 、 同 じ く 、 こ の 心 も ま た 深 き 理 解 な ら ざ る も の を 深 し と 思 う の 法 に 親 近 す る こ と な り 。 守 護 心 ( R a k s a n a -c i t t a ) と は 何 か と 云 は ば 、 此 れ こ そ 真 実 な れ ど も 他 は 愚 痴 な り と 思 う こ と な り 。 と は 守 護 た る 心 に し て 、 自 ら が 正 し く 聞 き 且 つ 持 し た る こ れ こ そ は 誤 ら ず と 思 い て 堅 固 に 持 し て 、 他 が 持 し 証 せ る そ れ は 然 ら ず と 思 う
余 の 有 作 の 務 は 、 皆 不 実 な り と す 。 声 聞 を 学 す る 者 は 、 多 く 此 の 心 を 生 ず る な り 。 兼 ね て 他 人 を 護 る を 以 て 、 所 対 治 と す 。 又 人 あ り 自 ら 所 解 を 保 つ て 、 他 の 種 々 の 異 論 に 傷 ( つ け ) ら れ し む る を 欲 せ ず 。 余 の 見 解 は 、 悉 く 皆 不 実 な り と 謂 う 。 亦 是 な り 。 (22) (27) 第 二 十 七 に ﹁ 云 何 が 樫 心 な り や 、 謂 く 己 が 為 め 忙 し て 、 他 に 与 え ざ る 法 に 随 順 す ﹂ と は 、 謂 く 此 の 人 の 諸 有 の 所 作 は 、 皆 悉 く 自 身 の 為 め の 故 な り 。 財 物 伎 芸 、 乃 至 善 法 は 皆 好 ん で 秘 惜 し て 、 以 て 人 に 恵 ま ず 。 此 の 相 あ る 者 は 、 知 ん ぬ 是 れ 樫 心 な り 。 施 及 び 無 常 等 を 念 ず る を 以 て 、 所 対 治 と な あ す 。 当 に 念 ず べ し 。 財 物 と 伎 能 と は 、 無 常 に 設 う 時 に は 、 我 に 随 う て 去 る 者 あ る こ と な し 。 然 も 今 此 の 身 は 、 念 念 に 自 ら 保 つ 可 ら ず 。 如 何 が 此 れ を 惜 ま む や と 。 (28) 第 二 十 八 に ﹁ 云 何 が 狸 心 な り や 、 謂 く 徐 進 の 法 に 順 修 す ﹂ と は 、 猫 狸 の か く 禽 鳥 を 伺 い 捕 う る に 、 息 を 屏 し て 静 か に 住 し 、 務 て 速 に 進 ま ず 、 度 内 に 至 (23) る に 望 ん で 、 然 し て 後 に 之 を 取 る が 如 く 、 此 の 心 も 亦 爾 り 。 偶 々 種 々 の 法 要 を 聞 き 、 但 し 作 心 し て 領 受 し 記 持 す れ ど も 、 而 も 進 行 せ ず 。 良 縁 の 会 合 を 待 つ て 、 則 ち 当 に 勇 健 に 励 ん で 、 之 を 行 ず べ し と 翼 う 。 又 猫 狸 の 種 々 の 慈 育 を 蒙 れ ど も 、 亦 恩 分 を 識 ら ざ る が 如 く 、 若 し 人 但 し 他 の 慈 慧 善 言 を 受 く れ ど も 、 而 も 報 を 念 ぜ ざ る は 、 是 を 狸 心 な り 。 時 処 を 待 た ず し て 、 聞 く す な わ が 如 く 輻 ち 行 じ 、 常 に 恩 徳 を 念 ず る を 以 て 、 所 対 治 と す 。 法 に 親 近 す る こ と な り 。 樫 心 ( M a t s a r y a -c i t t a ) と は 何 か と 云 は ば 、 自 巳 に 親 近 し て 他 に 与 え ざ る こ と な り 、 と は 、 お し み を 有 す る 心 と せ ら る べ き に し て よ く 云 わ れ る こ と な り 。 猫 心 ( M a rjara-citta) と は 何 か と 云 は ば 、 凡 そ 供 物 を 見 て 親 近 す る こ と な り 。 と は 猫(24) の 如 き 心 に し て 、 猫 等 は ( 獲 物 ) を と る 時 、 躍 り 上 つ て と り て 、 同 じ く こ の 心 も ま た 、 聖 道 等 を 得 る と き は 入 の 時 よ り 転 昇 す る こ と に し て 、 こ の 次 第 を 以 て 転 昇 す る な り 。 世 間 の 六 十 心
密 教 文 化 (29) 第 二 十 九 に ﹁ 云 何 が 狗 心 な り や 、 謂 く 少 分 を 得 て 以 て 喜 足 を 為 す ﹂ と は 狗 は 薄 福 の 因 縁 を 以 て 、 所 期 下 劣 な り 。 故 に 偶 々 少 分 麓 鄙 の 食 を 得 れ ば 、 便 ち 喜 足 を 生 ず 。 若 し 精 々 此 れ に 過 ぐ れ ば 、 則 ち 本 所 望 に 非 ざ る が 如 く 、 此 の 心 も 亦 爾 り 。 少 分 の 善 法 を 聞 い て 、 便 ち 以 て 行 は 尽 す べ か ら ず と 為 し て 、 復 更 に 勝 事 を 求 め ず 。 此 れ は 声 聞 の 種 習 の 所 生 な り 。 増 上 の 意 楽 を 以 て 、 所 対 治 と す 。 乃 至 、 心 は 大 海 の 如 く 少 な れ ど も 亦 拒 ま ず 、 多 け れ ど も 亦 拒 ま ず 、 多 け れ ど も 亦 溢 れ ず 。 (30) 第 三 十 に ﹁ 云 何 が 迦 楼 羅 心 な る や 、 謂 く 朋 党 羽 翼 の 法 に 随 順 す ﹂ と は 、 此 の 鳥 は 常 に 両 翅 を 侍 み て 、 其 の 身 を 挟 み 輔 け 、 所 往 は 意 に 随 う て 以 て 大 勢 を な す 。 仮 い 一 羽 も か く れ ば 、 則 ち 能 く 為 す 所 な し 。 此 の 心 も 亦 然 り 。 常 に 多 く 朋 党 と 輔 翼 と 相 資 る 事 を 得 て 、 以 て 事 業 を 成 さ ん と 念 う 。 又 他 の も 所 作 に よ つ て 、 而 も 後 に 心 を 発 し て 、 独 り 進 む こ と 能 は ず 。 如 し 人 0 善 を 行 ず る を 見 れ ば 、 便 ち 彼 れ 尚 ほ 能 く 行 ず 。 我 何 で 為 さ ざ ら ん と 念 う 。 当 に 念 ず べ し 。 勇 健 の 菩 提 心 は 、 師 子 王 の 如 く し て 、 助 伴 を 籍 ら ざ る を 所 対 治 と な す 。 狗 心(Svana-citta) と は 何 か と 云 は ば 、 凡 そ 少 し の も の に て も 喜 び を な さ ん と す る こ と な り と は 、 犬 の 如 き 心 に し て 、 犬 は 少 し の も の に も 喜 ぶ な り 。 同 じ く 、 こ の 心 も ま た 、 何 れ か 適 は し き 少 し の 事 物 を 以 て ( も ) 喜 ば し む る の 法 に 親 近 す る こ と な り 。 迦 楼 羅 心 ( G a r u d a -c it ta ) と は 何 か と 云 は ば 凡 そ 味 方 を 執 る こ と に よ り て 法 に 親 近 す る こ と な り 。 と は 迦 楼 羅 の 如 き 心 に し て 、 迦 楼 羅 と は 龍 等 を 獲 る 時 、 羽 ば た き し つ つ 獲 り て 、 同 じ く そ の 心 も ま た 、 凡 そ 自 分 の も の た る 処 の 味 方 を と る の 法 に 親 近 す る こ と な り 。 そ の 迦 楼 羅 の 羽 ば た き し つ つ 蛇 ( 龍 ) を 獲 る こ と が 云 何 が 味 方 を と る の 喩 と な ら ん と な ら ば 、 印 度 語 に 羽 根 を ( P a k sa ) と 名 け 、 味 方 を も P a k s a と 名 け て 、 か よ う に 、 一 語 に 於 け る 意 義 と し て も 迦 楼 羅 が そ の 龍 を 我 が も の と な す べ き の 現 象 の 意 義 と し て 味 方 と す る 故 に 等 し き な り 。