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「o-トルイジンによるばく露防止」と「経皮吸収対策」についての法令改正

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1 【サイトトップ】>【化学物質管理】>【安衛法令改正】 2016 年 12 月 31 日 改訂:2017 年 01 月 02 日 「o-トルイジンによるばく露防止」と「経皮吸収対策」についての法令改正 平成29 年1月1日施行の安衛令等の改正について 元・厚労省化学物質対策課 化学物質国際動向分析官 柳川 行雄

内容

1 改正の経緯 ... 2 (1)オルト・トルイジンによる膀胱がんの発症 ... 2 (2)安衛研による調査結果 ... 3 ア 経気道ばく露 ... 3 イ 経皮ばく露 ... 4 (3)化学物質のリスク評価検討会報告書 ... 6 (4)労働者の健康障害防止措置に係る検討会報告書 ... 7 (5)第97 回労働政策審議会安全衛生分科会 ... 7 (6)業務上外に関する検討会報告書 ... 8 (7)安衛令等の改正 ... 8 3 通達による職業性疾病防止対策の指導の経緯 ... 10 (1)平成27 年 12 月 18 日基安発 1218 第1号 ... 10 (2)平成28 年6月 20 日基安発 0620 第1号 ... 10 (3)平成28 年 12 月5日基安発 1205 第1号 ... 11 4 改正の内容 ... 11 (1)オルト・トルイジン関係 ... 11 (2)経皮吸収対策関係 ... 12

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2 ア 特化則改正の概要 ... 12 イ 特化則改正の詳細事項 ... 14 ウ その他 ... 23 5 最後に ... 25 1 改正の経緯 (1)オルト・トルイジンによる膀胱がんの発症 2015 年も押し詰まった 12 月 18 日、福井県の化学工場でオルト・トルイジ ン等の芳香族アミンを扱っていた複数の労働者が膀胱がんを発症していたと、 マスコミ各社が大きく報道した。その後、この問題は産業保健関係者の大きな 関心を呼ぶこととなり、国際的にも大きな話題となった。 3年前の2012 年5月 18 日には、1,2-ジクロロプロパンによる胆管がん事案 が、NHK の関西ローカルニュースから始まって、海外でも大きく報道されて いる。そのわずか3年後に、我が国の化学物質による労災事故が、再び国際的 な注目を浴びることとなったのである。 この報道は厚労省の報道発表によるものである。報道発表の内容には、厚労 省が同日付で関係団体に対して、芳香族アミンによる職業性疾病の防止につい て必要な対策の実施を要請したことも含まれている。この要請文の別紙1に従 ってそれまでの経緯を説明すると、同年12 月3日にこの化学工場から労働者 4名(他に退職者1名、計5名)が膀胱がんを発症していると労働局に報告が あった。そのため、労働局・労働基準監督署及び独立行政法人労働安全衛生総 合研究所が、作業実態や発生原因について調査を開始したというものである。 同月22 日には、この化学工場の WEB サイトに、「罹患者の方が記者会見 を行ったと伺っております」として、「関係者各位の皆様方にご心配、ご迷惑 をお掛けし、改めてお詫び申し上げます」とのコメントが掲載された1) 厚労省はこの事案を受けて、オルト・トルイジンを取扱っている事業場に対 して、労働者に膀胱がんが発症していないかについての全国的な調査を開始し 1 このコメントは現在では同社の WEB サイトから削除されている。

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3 た。オルト・トルイジンは、多くの事業場で一般的に用いられている物質では ないが、対象となった事業場の数は、オルト・トルイジンを取扱っていると考 えられた事業場が38、過去に取り扱っていたと考えられる事業場が 16(当初 は一部に重複があったため19 と公表)あり、その他にも監督署が独自にオル ト・トルイジンの使用を把握していた14 事業場が対象となっている。 この調査結果等の第一報は、年が明けた翌1月の21 日に厚労省から公表さ れ、第2報は3月4日に公表されている。 これらの調査によって判明した膀胱がんの経歴のある者の数は、現役2名、 退職者6名で、健康診断によって膀胱がんの所見があった者の数は2名(いず れも最初の福井県の化学工場は含まない)であった。 なお、退職者のうち1名は労災として認定されている。しかし、このときの 発表では、他の者について業務との因果関係まで判明したわけではない。 (2)安衛研による調査結果 また、独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所(以下「安 衛研」という。)が、この化学工場に対する調査を行っていたが、その結果は 2016 年6月1日に厚労省から公表された。 ア 経気道ばく露 この安衛研の調査報告書概要による2)と、 【調査報告書概要より】 ① 事業場では、20 年近くにわたり有機溶剤に関して労働者の尿中代謝物測 定を実施するとともに作業環境測定を実施しており、それらの結果から、 当時は有機溶剤に関し、呼吸器からのばく露(経気道ばく露)を含めたば く露レベルが高かったことが推察された。このため、オルト-トルイジン についても、皮膚からのばく露だけでなく、経気道ばく露があったことが 推察された。 つまり、過去の作用環境測定の結果などから判断すると、経気道ばく露があ ったことが推察されるのである。しかしながら、 2 〇付の数字は柳川が挿入したものであり源典にはない。アンダーラインは原典のもので ある。以下、安衛研の調査報告書について同じ。

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4 【調査報告書概要より】 ② オルト-トルイジンの取扱いに係る作業の再現において、作業環境測定 や個人ばく露測定を実施したところ、許容濃度と比べて十分小さい濃度で あったことから、オルト-トルイジンの経気道ばく露は少ないと推察し た。 ③ また、製品(粉体)については、保護具の着用状況等から、体内に取り 込んだ量(経気道、経口)は小さいと推察した。 とある。従って、現時点ではオルト・トルイジンによる経気道ばく露のリス クがあるとはいえないようである。 ただし、「別紙」によれば、 【調査報告書より】 ④ 過去においては作業環境中のオルト-トルイジンにばく露していた可能性 が考えられる。長期間にわたる不適切な呼吸用保護具の着用状況や誤った 使用方法から推測すると、オルト-トルイジンの経気道ばく露による生体へ の取り込みはあったと推察される。 とある。すなわち、過去の記録によれば、かつては経気道ばく露があったと推 察されるが、現時点では改善されており、気中濃度と呼吸用保護具の着用状況 から経気道ばく露の量は少ないと考えられるということであろう。 イ 経皮ばく露 経皮ばく露について「別紙」をみると、調査時点においては、 【調査報告書より】 ① 特に高い値を検出した作業者のゴム手袋がオルト-トルイジンに汚染され ていた。原因は、使用後に蒸留有機溶剤で洗い、ビニール袋に入れた状態 で保管し、数ヶ月間廃棄せずに同じゴム手袋を着用して作業していた。 (過去から同様の実態。) とされる。これをさっと読み飛ばすと、ゴム手袋を使ったら洗って、長期間に 渡って繰り返して使用したため、手袋が劣化して、オルト・トルイジンがゴム 手袋のピンホール等を通して「浸透」したという印象を受ける。確かに数か月

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5 間ゴム手袋を廃棄せずに、洗ったり使用したりを繰り返せば劣化して役に立た なくなるだろう。だが、今回の経皮ばく露の原因はそれだけではないようだ。 【調査報告書より】 ② 蒸留有機溶剤も含め各工程の有機溶剤中にオルト-トルイジンの含有を確 認した。(蒸留有機溶剤中 0.10%(会社側測定:0.20%)) とあるように、ひとつには、ゴム手袋を洗浄した蒸留有機溶剤がオルト・トル イジンで汚染されていたため、ゴム手袋にオルト・トルイジンが付着し、この ゴム手袋を使用した労働者が経皮ばく露したということのようである。この点 については、報告書本文にも「後日、回収したゴム製手袋から高い濃度のオル ト-トルイジン(3 月の聞き取り調査でかなりの労働者が蒸留有機溶剤で手袋を 洗っていたことが判明した)を検出した」とされている。 なお、“蒸留有機溶剤”とは一般の事業場では聞きなれない用語かもしれな いが、使用済みの有機溶剤を蒸留再生処理したものである。 また、 【調査報告書より】 ③ 特に高い値の者は、乾燥不十分の製品の乾燥状況の確認を保護手袋の着 用なく行っていた。 とあるように手袋を使用せずに製品に触れることがあったようだ。 さらに、過去においては、 【調査報告書より】 ④ 乾燥工程において、ろ過槽内の生成物スラリーを蒸留有機溶剤で洗浄す る作業等では、有機溶剤が皮膚に飛散したり、作業着が有機溶剤で濡れた 状態で作業することがあった。(有機溶剤中のオルト-トルイジンのばく露 が考えられる。) ⑤ 乾燥工程において、生成物スラリーをろ布から乾燥機に投入する作業で は、濡れたろ布に直接触れて全身が濡れる中で作業していた。(保護衣の 内側に浸入し、ばく露していたと考えられる。)

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6 ⑥ 膀胱がん発症者のうち、反応工程において99.9%のオルト-トルイジン の原料投入・小分け・移送作業に従事していた者は、長期間同じゴム手袋 を使用しており、毎回のようにオルト-トルイジンが付着していた。 ここで、⑤のろ布は、報告書本文によると「蒸留有機溶剤で湿った「ろ布」 を作業者が取り扱うことで作業着等が汚染する」とされており、蒸留有機溶剤 で「濡れ」ていたということのようである。 ここでの問題は、①オルト・トルイジンで汚染された蒸留有機溶剤をゴム手 袋の洗浄等に不用意に用いたこと、②ゴム手袋の廃棄の基準などの管理の方法 が誤っていたこと、③ゴム手袋をせずに作業を行うケースがあったこという3 点であろう。 (3)化学物質のリスク評価検討会報告書 そして、前記の安衛研の調査報告書が公表された2箇月後の同年7月28 日 には、「化学物質のリスク評価検討会報告書(オルト-トルイジンに対する今 後の対応)」が公表された。 これによると、オルト・トルイジンのばく露防止対策が不十分であると結論 付け、具体的な措置を検討することが必要であるとされている。 【評価検討会報告書の内容】(厚労省報道発表の資料より) 福井県の化学工場における膀胱がん発症事案に関する労働安全衛生総合研究 所による災害調査において、現在の作業及び過去の作業におけるばく露防止 対策が不十分であり、労働者がオルト-トルイジンにばく露していたと示唆 された。また、全国の労働基準監督署において、オルト-トルイジンを製造 し、又は取り扱う事業場の状況を調査したところ、相当数の事業場におい て、多くの労働者がオルト-トルイジンを取り扱う作業等に従事している実 態が明らかになった。このため、職業がんの予防の観点から、オルト-トル イジンの製造・取扱作業について制度的対応を念頭に置いて、「化学物質に よる労働者の健康障害防止措置に係る検討会」等において具体的措置を検討 することが必要である。

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7 (4)労働者の健康障害防止措置に係る検討会報告書 そして、評価検討会の報告書からほぼ1箇月後の同年8月26 日には、「平 成28 年度 化学物質による労働者の健康障害防止措置に係る検討会報告書(第 1回)」が厚労省から公表された。行政OB の筆者の感覚では、かなりの猛ス ピードという感じがする。オルト・トルイジンによる労働災害の再発防止にか ける現役職員の意気込みが伝わってくるかのように感じられる。 これによると、オルト・トルイジンを特化則の特定第2類物質として、必要 な措置を事業者に義務づけるべきであるとされている。すなわち、この報告書 によって、安衛令等の改正に向けた道筋が示されたわけである。 【委員会の結論】(厚労省報道発表の資料より) 検討の結果、オルト-トルイジンとこれを含む製剤その他の物を製造し、ま たは取り扱う業務について、事業者に対して、特定化学物質障害予防規則の 「特定第2類物質」に対する措置と同様の措置である作業環境測定の実施、 発散抑制措置、特殊健康診断の実施などに加えて、当該物質に対する不浸透 性の保護衣、保護手袋、保護長靴や、保護眼鏡を労働者に使用させることな どを義務付けることが必要であるとされました なお、この報告書では、とくに経皮ばく露防止対策について、「事業者に対 して、当該物質に対する不浸透性3)の保護衣、保護手袋及び保護長靴並びに保 護眼鏡を労働者に使用させること、また、これらの保護具について、常時有効 かつ清潔に保持することを義務付けることが必要である」としている。 たんにオルト・トルイジンについての対策を定めるのではなく、経皮ばく露 一般について対策の強化が求められたのである。 (5)第97 回労働政策審議会安全衛生分科会 そして、同年10 月 18 日には、第97 回労働政策審議会安全衛生分科会にお いて、「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令案要綱、特定化学物質障 害予防規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令案要綱」が諮問され、 妥当との答申が行われている。 3 ここにいう「浸透」という言葉には、JIS の個人用保護具に関する用語である「透過」 と「浸透」の2つの意味を持たせてある。

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8 (6)業務上外に関する検討会報告書 また、同年12 月 21 日には、厚労省は「芳香族アミン取扱事業場で発生した 膀胱がんの業務上外に関する検討会」報告書を公表した。これは労災補償とい う観点からのとりまとめである。これによると、 【厚生労働省の報道発表資料より】 オルト-トルイジンのばく露と膀胱がんの発症リスクとの関連性について、 ○ ばく露業務に10 年以上従事した労働者に発症した膀胱がんは、潜伏期 間が10 年以上認められる場合、その業務が有力な原因となって発症した 可能性が高いものと考える。 ○ ばく露業務への従事期間または潜伏期間が10 年に満たない場合は、作 業内容、ばく露状況、発症時の年齢、既往歴の有無などを勘案して、業務 と膀胱がんとの関連性を検討する。 とされている。すなわち、オルト・トルイジンにばく露する業務に10 年以上 従事していた労働者が膀胱がんに罹患した場合は、とくに反証がない限り(通 常はないだろうが)、業務上として認めるということである。また、10 年未満 の場合であっても、状況から判断して業務上とされることはあり得るというこ とである。 (7)安衛令等の改正 審議会での答申を受けて、安衛令の改正、特化則の改正、関係告示の改正に ついて、パブリックコメントが行われてその結果(政令、省令、告示)が公表 され、さらに、政令(条文、新旧対照表)が11 月2日に、省令(条文、新旧 対照表)及び告示(条文、新旧対照表)が11 月 30 日に公示された。 パブリックコメントに対して行政から示された考え方ではあるが、一般の事 業者を含めて、参考となると思われるものとして、以下の表の3点を紹介して おく。なお、ここに挙げたものはすべて省令改正に関するものである。 8番については、特殊健康診断の義務の対象となるかどうかの判断基準とな る「常時性」について、たんに「頻度」だけで判断するわけではなく、「作業 内容や取扱量」という時間に関する概念とはいえない要素をも判断の基準とす るとしている点で注目されよう。

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9 また17 番については、経皮ばく露に関するリスクアセスメント手法につい て、行政が公式に見解を示したものとして注目される。ここでは、ばく露の可 能性の判断について、「常態」として化学物質に触れる作業であるかどうかに よって判断してよいとされている。なお、厚労省がWEB サイトにアップして いる簡易なリスクアセスメントでは、化学物質が経皮侵入のおそれがあるかど うかによってのみ(ハザードによってのみ)リスクを判断している。 番号 要旨 件数 厚生労働省の考え方 8 常時従事する労働者とは、「継 続して当該業務に従事する労働 者」のほか、「一定期間ごとに継 続的に行われる業務であってもそ れが定期的に反復される場合には 該当する。」との理解、即ち、当 該業務に従事する時間や頻度が少 なくても、定期的(例えば、年1 回、月1回、週1回及び日1回の 何れの場合も)に反復される作業 であればこれに該当すると解釈 し、特殊健康診断の対象者とすべ きか。 1 常時従事する労働者とは、「継 続して当該業務に従事する労働 者」のほか、「一定期間ごとに継 続的に行われる業務であってもそ れが定期的に反復される場合」も 該当します。 ただし、作業の常時性について は、作業頻度のみならず、個々の 作業内容や取扱量等を踏まえて個 別に判断する必要があります。 9 既往歴とは、一般的には過去の 罹患歴(現在は治癒)と解釈され ることが多いが、過去の通達によ り、直近に実施した健康診断以降 のものをいうこととの解釈もある と聞いている。もし、後者が正し いならば法令解説の際に補足説明 を加えて欲しい。 1 「既往歴」については、過去の 通達(昭和47 年 1 月 17 日付け基 発第17 号「特定化学物質等障害予 防健康診断規程について」)にお いて、雇入れの際又は配置替えす る際の健康診断にあってはその時 までの症状又は疾病を、定期の健 康診断にあっては前回の健康診断 以降の症状又は疾病を調査する、 と示しています。 今般の改正省令の公布の際に、 この旨を明示いたします。 17 経皮吸収によるばく露の有害性 が強い物質のリスクアセスメント あるいはその代替方法(例:一定 1 経皮吸収によるリスクのアセス メント方法については、化学物質 の有害性を確認するとともに、ば

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10 の経皮ばく露対策の実施状況の確 認による方法など)の例示や情報 の提供をしていただきたい。 く露の程度・可能性として、手で 化学物質に触れる業務であるか否 か、化学物質の液体を激しくかき 混ぜることにより身体に飛散する ことが常態として予想される業務 であるか否か等を検討する方法等 が考えられます。 また、御意見のように、今般の 改正後の特定化学物質障害予防規 則第44 条第2項による規定につい ての履行状況の確認(保護具の有 効性の確認を含む)をもってリス クアセスメントを実施したとみな す方法が考えられます。 3 通達による職業性疾病防止対策の指導の経緯 さて、2で概説したように、2017 年1月1日施行のオルト・トルイジンを 特化則で規制するなどの政省令の改正が行われたところである。オルト・トル イジンによる職業性疾病の防止対策について、最初の報道発表から改正政省令 の施行までに発出された行政の通達をまとめておこう。 (1)平成27 年 12 月 18 日基安発 1218 第1号 先述した通り、最初の厚労省の福井県の膀胱がんに関する報道発表の際に示 された通達である。予防的観点から防毒マスクの着用と健康診断の実施を関係 事業者団体に要請している。 なお、ここでは「既に退職している者に対して、同検査の受検を勧奨するこ とが望ましいこと」とされていることに留意するべきである。 (2)平成28 年6月 20 日基安発 0620 第1号 平成28 年6月 20 日には、基安発0620 第1号「オルト-トルイジンによる 健康障害の防止対策の継続的な実施について」が関係事業者団体宛てに発出さ れている。

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11 換気、防毒マスクの着用などのほか、オルト・トルイジンを現に取扱ってい る労働者及び取扱ったことのある労働者に対して、おおむね6月に1回の健康 診断の実施を、検査項目を示して要請している。 (3)平成28 年 12 月5日基安発 1205 第1号 さらに平成28 年 12 月5日にも、基安発1205 第1号「オルト-トルイジン に係る健康診断の実施について」が関係事業者団体宛てに発出されている。 ここでは、前記基安発0620 号通達の健康診断が特化則の中に位置付けられ たことを示すとともに、「既に退職している者に対しては、引き続き膀胱がん に関する検査の受診を勧奨することが望ましい」としていることに留意する必 要がある。 4 改正の内容 (1)オルト・トルイジン関係 オルト・トルイジンについては、特定化学物質(特定第2類物質/特別管理 物質)に追加されることとなる。そのため、以下の対策等が必要となる。 【オルト・トルイジンの法令による新たな規制(主なもの)】 ① 作業主任者の選任(特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能 講習の修了者から選任) ② 作業環境測定の実施(尿路系腫瘍等を予防・早期発見するための項 目) ③ 特殊健康診断の実施(配置転換後を含む) ④ 局所排気装置の設置、容器の使用、作業・貯蔵場所への関係者以外の 立ち入り禁止、漏洩の防止、洗浄設備の設置、緊急時の医師による診 察・処置、保護具の備付け等の義務付け ⑤ 作業環境測定結果、健康診断結果、作業記録等の30 年保存等の義務 付け(=「特別管理物質」に追加) なお、施行期日は2017 年1月1日であるが、作業主任者の選任と作業環境 測定については、施行後一年間は猶予される。

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12 おって、この内容の詳細については、基発1130 第4号平成 28 年 11 月 30 日「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令及び特定化学物質障害予防規 則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行について」(以下「改正 通達」という)に記載されているので、参考にされたい。 (2)経皮吸収対策関係 ア 特化則改正の概要 この改正では、オルト・トルイジンのみならず、経皮吸収によって健康影響 を及ぼす可能性が高いとされている物質について、職業がん発生を防止するた めの改正が行われている。 内容としては、次の措置(ここに示したものは主要なもののみ)を特化則に 追加するものである。施行は2017 年1月1日となる。 【経皮吸収対策関連の特化則改正】(厚労省審議会資料より) ● 特化則洗浄設備 第1類物質又は第2類物質を製造し、又は取り扱う作業に労働者を従事 させるときに備え付けられている洗浄設備に関し、以下の措置を設定。 〇 事業者は、労働者が第1類物質又は第2類物質に汚染されたときは、 身体を速やかに洗浄させ、汚染を除去すること 〇 労働者は、事業者から洗浄を命じられたときは、その身体を洗浄する こと ● 保護衣等 特定化学物質で皮膚に障害を与え、若しくは皮膚から吸収されることに より障害をおこすおそれのあるものを製造し、又は取り扱う作業若しくは これらの周辺で行われる作業に従事する労働者に使用させるため、不浸透 性の保護衣等の備え付けることに加え、経皮吸収によって健康影響を及ぼ す可能性が高いとされている物質(後述)については、以下の措置を規 定。 〇 事業者は、当該物質を製造し、若しくは取り扱う作業又はこれらの周 辺で行われる作業であって、皮膚に障害を与え、若しくは皮膚から吸収 されることにより障害をおこすおそれがあるものに、労働者を従事させ るときには、当該労働者に保護眼鏡並びに不浸透性の保護衣、保護手袋 及び保護長靴を使用させること

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13 〇 労働者は、事業者から使用を明示されたときは、これらの保護具を使 用すること(1,3-プロパンスルトンについても同様に規定) 経皮吸収による障害のおそれがある場合に、保護衣等の使用が義務となる特 定化学物質は、次表の通りであるが、これらの基本的な考え方は「第1類物質 及び第2類物質のうち、日本産業衛生学会において、皮膚と接触することによ り経皮的に吸収される量が全身への健康影響または吸収量からみて無視できな い程度に達することがあると考えられると勧告がなされている物質、又は ACGIH(米国労働衛生専門家会議)において、皮膚吸収があると勧告がなさ れている物質」である。 第1類物質 〇 ジクロルベンジジン及びその塩 〇 塩素化ビフェニル(別名PCB) 〇 オルト-トリジン及びその塩 〇 ベリリウム及びその化合物 〇 ベンゾトリクロリド 第2類物質 〇 アクリルアミドアクリロニトリル 〇 アルキル水銀化合物(アルキル基がメチル基又はエチル 基である物に限る。) 〇 エチレンイミン 〇 オルト-トルイジン 〇 オルト-フタロジニトリル 〇 クロロホルム 〇 シアン化カリウム 〇 シアン化水素 〇 シアン化ナトリウム 〇 四塩化炭素 〇 1,4-ジオキサン 〇 3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン (MOCA) 〇 ジクロロメタン(別名二塩化メチレン) 〇 ジメチル‐2,2-ジクロロビニルホスフェイト(別名DD VP) 〇 1,1-ジメチルヒドラジン 〇 臭化メチル 〇 水銀及びその無機化合物(硫化水銀を除く。)

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14 〇 スチレン 〇 1,1,2,2-テトラクロロエタン(別名四塩化アセチレン) 〇 テトラクロロエチレン(別名パークロルエチレン) 〇 ナフタレン 〇 ニトログリコール 〇 パラ-ニトロクロロベンゼン 〇 弗化水素 〇 ベンゼン 〇 ペンタクロロフェノール(別名PCP) 〇 マンガン及びその化合物(塩基性酸化マンガンを除 く。)のうち、シクロペンタジエニルトリカルボニルマン ガン又は2-メチルシクロペンタジエニルトリカルボニル マンガンに限る。 〇 沃化メチル 〇 硫酸ジメチル イ 特化則改正の詳細事項 経皮吸収対策について、改正通達の2の(1)のコ「保護衣等の規定の追 加」に従って、詳細に見てみよう。 (ア)保護衣等についての適用除外の廃止 まず、最初は適用除外の廃止である。これについては 【改正通達より】 (ア)クロロホルム等及びクロロホルム等以外のものであって別表第1第37 号に掲げる物について、特化則第12 条の2を改正し、特化則第 44 条及 び第45 条を適用することとしたこと。 特化則第12 条の2は特定化学物質によって汚染された「ぼろ等の処理」に ついての規定である4)。この規定は、「特定化学物質」のうち以下のものにつ いては適用から除かれている。 4 特化則第12 条の2では、特定化学物質によって汚染されたものについてはふた又は栓 をした不浸透性の容器に収めておく等の措置を入れる等の措置をしておかなければなら ないとされているが、この「ぼろ等の処理」に関する規制が変更されたわけではない。

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15 ① クロロホルム等 ② クロロホルム等以外のものであって特化則別表第1第37 号に掲げる物 そして、この適用除外の規定が、特化則の第22 条第1項、第 22 条の2第1 項、第25 条第2項及び第3項、第 43 条並びに第 44(保護衣等)にも適用さ れていたのだが、今回の改正で第44 条についてはこの除外規定は適用しない とされたわけである。 ここに①のクロロホルム等とは、特化則第2条の2に定義があるが、「令別 表第三第二号11の2、18の2から18の4まで、19の3、22の2から 22の5まで又は33の2に掲げる物及びこれらを含有する製剤その他の物」 である。 【クロロホルム等】 ① クロロホルム ② 四塩化炭素 ③ 一・四―ジオキサン ④ 一・二―ジクロロエタン(別名二塩化エチレン) ⑤ ジクロロメタン(別名二塩化メチレン) ⑥ スチレン ⑦ 一・一・二・二―テトラクロロエタン(別名四塩化アセチレン) ⑧ テトラクロロエチレン(別名パークロルエチレン) ⑨ トリクロロエチレン ⑩ メチルイソブチルケトン ⑪ 上記を含有する製剤その他の物 【クロロホルム等以外のもの】 ⑫ エチルベンゼン ⑬ 1,2-ジクロロプロパン また、⑪の“上記を含有する製剤その他の物”については、微量でも含んで いれば適用があるわけではない。特化則第44 条の規定は特別有機溶剤等のみ にしかかからないからである。⑪にかかる特別有機溶剤等とは、「上記①から ⑩までを1%を超えて含有するもの」及び「これらにかかる特化則別表第1第 37 号5)に掲げるもの」である。 5 この特化則別表第1第37 号に関するものについては、当サイトの「法令条文解読シリ ーズ① 特別有機溶剤等、特定有機溶剤混合物とは」を参照して頂きたい。

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16 これまでは、これらについては適用が除外されていた6のが、適用除外から外 れたわけである。 改正前 改正後 クロロホルム等を、そ れぞれ1%を超えて含 有しているもの7) 適用除外 適用 クロロホルム等に関す る別表第1第37 号に掲 げるもの 適用除外 適用 また、②の「クロロホルム等以外のものであって別表第1第37 号に掲げる 物」とは、次に示すものである。なお、改正通達では「クロロホルム等以外の もの」という言葉が、注釈なしにいきなり出てくるのでやや分かりにくいかも しれない。特化則別表第1第37 号は特別有機溶剤に関する規定なので、特別 有機溶剤でクロロホルム等以外のものとは、エチルベンゼンと1,2-ジクロロプ ロパンのことである。 【クロロホルム等以外のものであって別表第一第37 号に掲げる物】 37 エチルベンゼン、一・二―ジクロロプロパン又は有機溶剤を含有する 製剤その他の物。ただし、次に掲げるものを除く。 イ 第三号の三、第十一号の二、第十八号の二から第十八号の四まで、第 十九号の二、第十九号の三、第二十二号の二から第二十二号の五まで又 は第三十三号の二に掲げる物 ロ エチルベンゼン、クロロホルム、四塩化炭素、一・四―ジオキサン、 一・二―ジクロロエタン、一・二―ジクロロプロパン、ジクロロメタ ン、スチレン、一・一・二・二―テトラクロロエタン、テトラクロロエ チレン、トリクロロエチレン、メチルイソブチルケトン又は有機溶剤の 含有量(これらの物が二以上含まれる場合には、それらの含有量の合 計)が重量の五パーセント以下のもの(イに掲げるものを除く。) 6 もちろん、他に特化則第44 条の適用の対象となる物質を含んでいないことが前提であ る。 7 念のために言えば、ここは正確には「クロロホルム等を、それぞれ1%を超えて含有し ているもの(クロロホルム等以外のものをそれぞれ1%を超えて含有しているものを除 く)」と書くべきである。しかし、改正後の条文では、クロロホルム等とクロロホルム 等以外のものを区別していないので気にしなくてよい。

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17 ハ 有機則第一条第一項第二号に規定する有機溶剤含有物(イに掲げるも のを除く。) これまでは、エチルベンゼン又は1,2-ジクロロプロパンを1%を超えて含有 しているものは適用除外とならず、これらについて37 号に掲げる物のみが適 用除外となっていたのだが、これも含めて適用されることとなったわけであ る。 改正前 改正後 エチルベンゼン又は 1,2-ジクロロプロパン を、それぞれ1%を超 えて含有しているもの 適用 適用 エチルベンゼン又は 1,2-ジクロロプロパンに 関する別表第1第37 号 に掲げるもの 適用除外 適用 ただ、第37 号に掲げるものについて特化則の規定を適用することになった ことには、多少、疑問を感じないでもない。というのは、第37 号からは有機 溶剤等が除外されている(同第37 号のハ)ので、有機溶剤の濃度が高くなる と、濃度が低い物よりも規制が緩くなるという奇妙な逆転現象が起きてしまう のである。 例えば、特別有機溶剤(例えばエチルベンゼン)を0.5%、有機溶剤を 4.8% 含んでいるものは適用があるが、有機溶剤の濃度が5%を超えてしまうと、適 用されなくなってしまうのである。このようなことは“論理的には”違和感を 受ける。 ただし、現実にはこれが問題となるような混合物が使用されているようなこ とはまれであろうから、実務上問題になることは少ないとは思う。同第37 号 のハを「特別有機溶剤を含まない物(ロに掲げるものを除く。)」と改正して おくべきではなかったかという気がしないでもない。

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18 (イ)保護衣等についての適用除外の廃止 【改正通達より】 (イ)従来特化則第2条の2の規定による適用除外の対象とされていた業務 のうち、日本産業衛生学会において、皮膚と接触することにより、経皮 的に吸収される量が全身への健康影響または吸収量からみて無視できな い程度に達することがあると考えられると勧告がなされている物質若し くはACGIH において皮膚吸収があると勧告がなされている物質及びこ れらを含有する製剤その他の物を製造し、若しくは取り扱う作業又はこ れらの周辺で行われる作業であって、皮膚に障害を与え、又は皮膚から 吸収されることにより障害をおこすおそれがあるものについては、保護 衣等に係る特化則第44 条及び第 45 条の規定の対象とすることとしたこ と。例えば、次の物質を製造し、若しくは取り扱う作業が対象となるこ と。 ・ クロロホルム ・ 四塩化炭素 ・ 1,4―ジオキサン ・ ジクロロメタン(別名二塩化メチレン) ・ ジメチル―2,2―ジクロロビニルホスフェイト(別名DDVP) ・ スチレン ・ 1,1,2,2―テトラクロロエタン(別名四塩化アセチレン) ・ テトラクロロエチレン(別名パークロルエチレン) ・ ナフタレン 特化則第2条の2に下記の但書を付け加える改正のことである。例えば、こ れまではクロロホルムを製造し又は取り扱う業務であっても、特別有機溶剤業 務以外の業務には、特化則そのものの適用がなかったわけだが、これからは特 化則第44 条(保護衣等)、第 45 条(保護具の数等)については適用されるこ ととなったわけである。一部の物質については、屋外での業務も含まれること となったことに留意するべきであろう。 【特化則第2条の2の但書】 ただし、令別表第三第二号11 の2、18 の2、18 の3、19 の3、22 の2か ら22 の4まで若しくは 23 の2に掲げる物又は別表第一第十一号の二、第十 八号の二、第十八号の三、第十九号の三、第二十二号の二から第二十二号の 四まで、第二十三号の二若しくは第三十七号(令別表第三第二号11 の2、

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19 18 の2、18 の3、19 の3又は 22 の2から 22 の4までに掲げる物を含有す るものに限る。)に掲げる物を製造し、又は取り扱う業務に係る第四十四条 及び第四十五条の規定の適用については、この限りでない。 この但書の物質名を具体的に書き上げると以下のようになる。なお、改正通 達に挙げられている「ジメチル―2,2―ジクロロビニルホスフェイト(別名 DDVP)」については、ACGIH によって皮膚吸収があると勧告されている物 質であるが、安衛令別表第3第2号では19 の4に掲げられている。 特化則第2条の2の但書に示されているもの 物質名 左欄の物を含む製剤その他の物 対象濃度 別表第1第37 号 クロロホルム 1%を超えるもの 〇 四塩化炭素 1%を超えるもの 〇 1,4-ジオキサン 1%を超えるもの 〇 ジクロロメタン(別名2塩化メチ レン) 1%を超えるもの 〇 スチレン 1%を超えるもの 〇 1,1,2,2-テトラクロロエタン(別名 四塩化アセチレン) 1%を超えるもの 〇 テトラクロロエチレン(別名パー クロルエチレン) 1%を超えるもの 〇 ナフタレン 1%を超えるもの ここでも、特化則別表第1 第 37 号(クロロホルム、四塩化炭素、1,4-ジオキ サン、ジクロロメタン(別名二塩化メチレン)又はスチレン、1,1,2,2-テトラク ロロエタン(別名四塩化アセチレン)又はテトラクロロエチレン(別名パーク ロルエチレン)を含有するものに限る。)について、特化則第44 条及び 45 条 の適用をしたことには若干の疑問を感じないでもない。というのは、これらの 物質がごくわずかしか含まれている物質であっても、その他に経皮侵入の恐れ のない特別有機溶剤や有機溶剤を合わせて5%を超えて含有していると、規制 の対象となってしまうからである。これは論理的とは思えない。 ここは、括弧書きの中を(令別表第三第二号11 の2、18 の2、18 の3、 19 の3又は 22 の2から 22 の4までに掲げる物の含有量の合計が重量の五パ ーセントを超えて含有するものに限る。)としないと、論理的な整合性がとれ ないのではなかろうか。

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20 もっとも、このことが問題となるような物質はほとんど存在していないだろ うから、この指摘はあくまでも“論理的”なことであって実務上の問題は少な いとは思う。 (ウ)保護衣等についての条文の意味の明確化 【改正通達より】 (ウ)特化則第44 条第1項の改正は、「製造する作業」も対象であること を明確にしたものであり、従来の内容と変更はないこと。なお、本条 は、特定化学物質の飛散等により汚染されるおそれがある作業が対象と なるものであり、例えば密閉する設備内で製造する場合におけるばく露 のない作業を含む趣旨ではないこと。 特化則第44 条の改正とは、「取り扱う作業」とあったのを「製造し、若し くは取り扱う作業」と改正したわけだが、これはたんに意味を明確化したもの であって、意味を変更するものではないということである。 ところで、改正通達のこの「なお、・・・」の部分については、あくまでも 本条の「製造し、若しくは取り扱う作業」という用語について述べているので あって、安衛法令において用いられている「製造し又は取り扱う」というすべ ての用語についての解説ではないと理解するべきであろう。 また、密閉する設備内で製造する場合であっても、一定期間ごとに修理作業 や点検保守が発生する場合で、設備を分解して対象物質に触れるような作業が 発生するときには、その作業は「製造し、若しくは取り扱う作業」というべき であろう。 (エ)保護衣等についての使用義務 【改正通達より】 (エ)保護衣等を備え付けているものの、それらが使用されていない場合が 考えられるため、保護具の使用義務に係る特化則第44 条第2項及び第 3項を新たに規定したものであること。対象物質は、第1類物質及び第 2類物質のうち、日本産業衛生学会において、皮膚と接触することによ り,経皮的に吸収される量が全身への健康影響または吸収量からみて無 視できない程度に達することがあると考えられると勧告がなされている 物質又はACGIH において皮膚吸収があると勧告がなされている物質及

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21 びこれらを含有する製剤その他の物としたこと。具体的には、次の物質 が該当すること。 【第1類物質】 ジクロルベンジジン及びその塩、塩素化ビフェニル(別名PC B)、オルト―トリジン及びその塩、ベリリウム及びその化合物、ベ ンゾトリクロリド 【第2類物質】 アクリルアミド、アクリロニトリル、アルキル水銀化合物(アルキ ル基がメチル基又はエチル基である物に限る。)、エチレンイミン、 オルト―トルイジン、オルト―フタロジニトリル、クロロホルム、シア ン化カリウム、シアン化水素、シアン化ナトリウム、四塩化炭素、1, 4―ジオキサン、3,3′―ジクロロ―4,4′―ジアミノジフェニル メタン、ジクロロメタン(別名二塩化メチレン)、ジメチル―2,2― ジクロロビニルホスフェイト(別名DDVP)、1,1―ジメチルヒド ラジン、臭化メチル、水銀及びその無機化合物(硫化水銀を除く。)、 チレン、1,1,2,2―テトラクロロエタン(別名四塩化アセチレ ン)、テトラクロロエチレン(別名パークロルエチレン)、トリレンジ イソシアネート、ナフタレン、ニトログリコール、パラ―ニトロクロロ ベンゼン、弗化水素、ベンゼン、ペンタクロロフェノール(別名PC P)、シクロペンタジエニルトリカルボニルマンガン又は2―メチルシ クロペンタジエニルトリカルボニルマンガン、沃化メチル、硫酸ジメチ ル これまで、保護衣等について備え付けの義務しかかかっていなかったもの を、着用について義務付けたものである。 重要な改正であるので、特化則の該当条文を以下に示す。 【改正後の特化則第44 条】 (保護衣等) 第四十四条 事業者は、特定化学物質で皮膚に障害を与え、若しくは皮膚か ら吸収されることにより障害をおこすおそれのあるものを製造し、若しく は取り扱う作業又はこれらの周辺で行われる作業に従事する労働者に使用 させるため、不浸透性の保護衣、保護手袋及び保護長靴並びに塗布剤を備 え付けなければならない。 2 事業者は、令別表第三第一号1、3、4、6若しくは7に掲げる物若し くは同号8に掲げる物で同号1、3、4、6若しくは7に係るもの若しく

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22 は同表第二号1から3まで、4、8の2、9、11の2、16から18の 3まで、19、19の3から20まで、22から22の4まで、23、2 3の2、25、27、28、30、31(ペンタクロルフエノール(別名 PCP)に限る。)、33(シクロペンタジエニルトリカルボニルマンガ ン又は二―メチルシクロペンタジエニルトリカルボニルマンガンに限 る。)、34若しくは36に掲げる物若しくは別表第一第一号から第三号 まで、第四号、第八号の二、第九号、第十一号の二、第十六号から第十八 号の三まで、第十九号、第十九号の三から第二十号まで、第二十二号から 第二十二号の四まで、第二十三号、第二十三号の二、第二十五号、第二十 七号、第二十八号、第三十号、第三十一号(ペンタクロルフエノール(別 名PCP)に係るものに限る。)、第三十三号(シクロペンタジエニルト リカルボニルマンガン又は二―メチルシクロペンタジエニルトリカルボニ ルマンガンに係るものに限る。)、第三十四号若しくは第三十六号に掲げ る物を製造し、若しくは取り扱う作業又はこれらの周辺で行われる作業で あつて、皮膚に障害を与え、又は皮膚から吸収されることにより障害をお こすおそれがあるものに労働者を従事させるときは、当該労働者に保護眼 鏡並びに不浸透性の保護衣、保護手袋及び保護長靴を使用させなければな らない。 3 労働者は、事業者から前項の保護具の使用を命じられたときは、これを 使用しなければならない。 (オ)保護衣等についての使用義務の解釈 【改正通達より】 (オ)特化則第44 条第2項の対象作業に関して、「皮膚に障害を与え、又 は皮膚から吸収されることにより障害をおこすおそれがあるもの」に は、特定化学物質に直接触れる作業、特定化学物質を手作業で激しくか き混ぜることにより身体に飛散することが常態として予想される作業等 が含まれること。一方で、突発的に特定化学物質の液体等が飛散するこ とがある作業、特定化学設備に係る作業であって特定化学設備を開放等 しないで行う作業を含むものではないこと。 なお、本条はばく露の高い作業を対象とするものであることから、保 護具によるばく露防止を義務づけたものであるが、それに加えて、効果 の確認された塗布剤を補助的な役割として用いることは差し支えないこ と。

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23 (カ)保護衣等についての使用義務の解釈 【改正通達より】 (カ)皮膚障害防止用保護具に係る規格として、日本工業規格T8115(化学 防護服)、日本工業規格 T8116(化学防護手袋)、日本工業規格 T8117(化 学防護長靴)、日本工業規格 T8147(保護めがね)等があるので、これを参 考に保護具を選択・使用されたいこと。 なお、本条の「不浸透性」とは、有害物等と直接接触することがない ような性能を有することを指すものであり、保護衣、保護手袋等の労働 衛生保護具に係る日本工業規格における「浸透」しないこと及び「透 過」しないことのいずれも含む概念であること。 個人用保護具を選択するときにはJIS を参考とすべきことが示された。これ は従来の通達と同じ解釈である。なお、JIS の「浸透」と「透過」の用語の意 味については、本サイトの「保護具の基本(ECETOC TRA の入力項目 APF を含めて)を解説する」を参照して頂きたい。 ウ その他 平成27 年9月 30 日付け基発 0930 第9号「労働安全衛生法施行令の一部を 改正する政令及び労働安全衛生規則等の一部を改正する省令の施行について」 について、以下の新旧対照表の通り改正が行われている。 改正前 改正後 記の第2の2 の(2)のキ の(ク) 特化則第38 条の 20 第 3 項 第2 号の「有効な呼吸用保護 具」とは、各部の破損、脱 落、弛(たる)み、湿気の付 着、変形、耐用年数の超過等 保護具の性能に支障をきたし ていない状態となっており、 かつ、100 以上の防護係数が 確保できるものであり、具体 的には、粒子捕集効率が 99.97%以上の全面形の面体 を有する電動ファン付き呼吸 特化則第38 条の 20 第 3 項 第2 号の「有効な呼吸用保護 具」とは、各部の破損、脱 落、弛(たる)み、湿気の付 着、変形、耐用年数の超過等 保護具の性能に支障をきたし ていない状態となっており、 かつ、100 以上の防護係数が 確保できるものであり、 (ケ)の方法により、労働者 ごとに防護係数が100 以上で あることが確認されたものが

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24 用保護具、粒子捕集効率が 99.97%以上の半面形の面体 を有する電動ファン付き呼吸 用保護具のうち、漏れ率が 1%以下(電動ファン付き呼 吸用保護具の規格(平成26 年厚生労働省告示第455 号) で定める漏れ率による等級が S 級又は A 級)であって、 (ケ)の方法により、労働者 ごとに防護係数が100 以上で あることが確認されたものが 含まれること。 含まれること。ただし、電動 ファン付き呼吸用保護具の規 格(平成26 年厚生労働省告 示第455 号)に定める粒子捕 集効率が99.97%以上かつ漏 れ率が1%以下のものに限っ ては、(ケ)の方法により労 働者ごとに防護係数が100 以 上であることを確認すること までは要しない。 記の第2の2 の(2)のキ の(ケ) (ク)の労働者ごとの防護係 数の確認は、当該確認に係る 電動ファン付き呼吸用保護具 を特化則第38 条の 20 第 3 項の規定に基づき、当該労働 者に初めて使用させるとき及 びその後6 月以内ごとに 1 回、定期に、日本工業規格T 8150 定める方法により防護 係数を求めることにより行う こと。なお、事業者は、当該 確認を行ったときは、労働者 の氏名、呼吸用保護具の種 類、確認を行った年月日及び 防護係数の値を記録し、これ を30 年間保存すること。 (ク)の労働者ごとの防護係 数の確認は、当該労働者に初 めて使用させるとき及びその 後6 月以内ごとに 1 回、定期 に、日本工業規格T 8150 で 定める方法により防護係数を 求めることにより行うこと。 なお、事業者は、当該確認を 行ったときは、労働者の氏 名、呼吸用保護具の種類、確 認を行った年月日及び防護係 数の値を記録し、これを30 年間保存すること。 記の第2の2 の(7)のア 法第88 条第2項において準 用する同条第1項の規定 法第88 条第1項の規定 これは呼吸用保護具の防護係数の確認についてのものであるが、電動ファン 付き呼吸用保護具の規格(平成26 年厚生労働省告示第 455 号)に定める粒子 捕集効率が99.97%以上かつ漏れ率が 1%以下のものに限っては、当該労働者 に初めて使用させるとき及びその後6 月以内ごとに 1 回、定期に、日本工業規

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25 格T 8150 で定める方法により防護係数を求めることにより行うことまでは要 しないこととされた。 電動ファンで常に陽圧になるタイプのものについて、JIS T 8150 で定める方 法により防護係数を求めることまでは要しないというものである。電動ファン 付呼吸用保護具については、防護係数はかなり高くなることが普通であり、一 方JIS T 8150 で定める方法は中小の企業にとっては困難な面もある。規制の 緩和ではあるが、現実的な改正であろう。 5 最後に この改正は、福井県における膀胱がんの発生が、保護具の管理の不備等によ る経皮ばく露が原因であると考えられるための改正である。発生の発覚から、 ほぼ1年での省令改正である。 しかしながら、作業現場における個人用保護具についての正しい使用は、か なりの大企業でも完全とは言い難い面があることも事実である。この改正を契 機に個人用保護具の正しい選定、適切な管理や使用方法が普及することを期待 したい。 この資料は「実務家のための産業保健のサイト」に掲示されています。よろし ければサイトの方にもご訪問ください。

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