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総 説 COPD 診断 治療ガイドライン第 3 版 人間ドック 25(3)7-13, 2010 東京女子医科大学第一内科 永井厚志 キーワード気流閉塞肺気腫末梢気道気管支拡張薬 はじめに COPD のガイドラインは 1992 年にカナダ胸部 学会 1) から上梓されたのがきっかけとなり, その 後,

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はじめに COPD のガイドラインは 1992 年にカナダ胸部 学会1)から上梓されたのがきっかけとなり,その 後,様々な学会によってガイドラインが公表され てきた.我が国においても,日本呼吸器学会か ら 1999 年に初版2)が作成され,2003 年に 2 版が公 表され,この度,第 3 版として内容も大きく刷新 された新ガイドライン 2009 3)が作成され上梓の 運びとなった.このガイドラインの作成コンセプ トは,我が国の COPD 患者に対する診断,治療・ 管理の向上を目指し,臨床研究から得られたデー タを基準としながら,さらに実際の臨床現場で応 用し実施する際に参考となる事項を網羅した手順 書として位置付けられることであった.以下,新 ガイドラインの主項目を中心に概説する. 1.定義 日本呼吸器学会から新たに作成された COPD ガ イドラインでは,COPD を“タバコ煙を長期に吸 入曝露することで生じた肺の疾患である”ことが 定義の冒頭に示され,本症の病因,病態,治療・ 管理にとりタバコ煙が最も重要な因子であること を示した(表 1).これまでに国内外で公表された ガイドラインで,疾患定義にタバコ煙の文言がほ とんど見られないのは理解しがたい点であるが, おそらく大気汚染や室内での有害物質の曝露も COPD 発症の要因とされており,ガイドラインと しての立場によって網羅的な定義の記載に留まっ ていた可能性がある. COPD は気流閉塞といった呼吸生理学的な基準 で疾患が定義されているので,複雑な呼吸器系の 病態や病像を詳細に捉えることはできない.した がって,過去には異なった病態像の反映として患 者の外見により表現したピンクパッファーやブ ルーブローターの 2 型が提起された歴史がある. この COPD の亜型に関しては,今日,どのような 視点から分類すれば治療・管理や予後に反映され るのかが新たな課題として浮上している.この度 のガイドラインでは,本邦で広範に施行されてい る胸部CT検査を考慮して,気腫性陰影が明確に 観察される例を気腫型 COPD,胸部X線画像では 気腫性変化が乏しい例を非気腫型 COPD と分類し た(図 1).非気腫型 COPD の気流閉塞は,その 多くが末梢気道の狭窄性病変に由来すると思われ るが,一般の日常診療なかで末梢気道の変化を捉 えることは困難であることから上記の文言として 取り扱うことになった.

COPD診断・治療ガイドライン第3版

東京女子医科大学 第一内科 永井厚志 キーワード 気流閉塞 肺気腫 末梢気道 気管支拡張薬 人間ドック 25(3)7-13, 2010

総 説

タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することで 生じた肺の炎症性疾患である.呼吸機能検査で正常に復す ことのない気流閉塞を示す.気流閉塞は未梢気道病変と気 腫性病変が様々な割合で複合的に作用することにより起こ り,進行性である.臨床的には徐々に生じる体動時の呼吸 困難や慢性の咳,痰を特徴とする. 表 1 COPD の定義 気腫型 COPD (肺気腫病変優位型) 胸部単純X線および胸部 CTで気腫陰影が優位に 認められる. 非気腫型 COPD (末梢気道病変優位型) 胸部単純X線および胸部 CTで気腫性陰影がない か微細に留まる. COPD 図 1 COPD の亜型 付記: COPDの亜型は,過去にピンクパッファーやブルーブローターとして患 者の外見から表現した歴史もあるが,今日では上記の画像所見によ る分類の他に,臨床上の病像や呼吸機能などの面から分けた型によ る解析の重要性も示唆されている.

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2.診断 診断基準に関しては,多くの問題を含みながら も,気管支拡張薬吸入後の一秒率 70%未満を採 用した(表 2).COPD を見いだすための簡明な 基準値であるとともに,多くのガイドラインで採 用されており,診断に際しての混乱を防ぐことが, その理由となっている. COPD に類似した気流閉塞を示す疾患には,気 管支拡張症,肺結核後遺症,びまん性汎細気管支 炎などがあり,鑑別診断をするためには胸部X線 検査や心電図検査は不可欠である(表 3).多く の類似疾患のなかでも高齢者に見られる気管支喘 息との鑑別には困難な点が多い.典型例であれば 診断に迷うことはないが,気道可逆性の大きい COPD,難治性喘息,喘息と COPD の合併例など がそれに当たる. 3.合併症・併存症 COPD では,栄養障害,骨格筋機能障害,心・ 血管疾患,骨粗しょう症,抑うつなどの全身併存 症が多くみられる(表 4).また,肺癌や気胸な ども注意すべき肺合併症として指摘されており, COPD の病像や予後に重大な影響を及ぼしてい る.したがって,COPD の重症度はこれらの全身 疾患や肺の合併症を加味しながら評価し治療して いくことが求められる. 4,治療と管理(安定期) COPD 安定期の管理目標は,症状および運動耐容 能の改善,QOL の改善,増悪の予防と治療,疾患の 進行抑制,全身併存症と肺合併症の予防と治療,生 命予後の改善である.この目標を達成するためには, 疾患に対する危険因子の回避を筆頭に,病態の評価 や安定期ならびに増悪期の治療・管理を充分に理解 しておく必要がある.疾患発症や進展の最大危険因 子は喫煙であることは広く知られており,患者教育 のなかでこの度のガイドラインでは COPD を“肺の 生活習慣病”として位置づけている. COPD 安定期の治療・管理は,従来のガイドラ インと大きくその内容が変更されている.すなわ 1.気 管 支 拡 張 薬 投 与 後 の ス パ イ ロ メ ト リ ー でFEV1/ FVC<70%を満たすこと. 2. 他の気流閉塞をきたし得る疾患を除外すること. 表 2 診断基準 1.気管支喘息 2.びまん性汎細気管支炎 3.先天性副鼻腔気管支症候群 4.閉塞性細気管支炎 5.気管支拡張症 6.肺結核 7.塵肺症 8.肺リンパ脈管筋腫症 9.うっ血性心不全 10.間質性肺疾患 11.肺癌 表 3 鑑別を要する疾患 ・ 全身性炎症:炎症性サイトカインの上昇,CRPの上昇 ・ 栄養障害:脂肪量,除脂肪量の減少 ・ 骨格筋機能障害:筋量・筋力の低下 ・ 心・血管疾患:心筋梗塞,狭心症,脳血管障害 ・ 抑うつ ・ 糖尿病 ・ 睡眠障害 ・ 貧血 表 4 COPD の全身的影響 病 期 特 徴 Ⅰ期 軽度の 気流閉塞 FEV1/FVC<70% %FEV1≧ 80% Ⅱ期 中等度の 気流閉塞 FEV1/FVC<70% 50%≦% FEV1<80% Ⅲ期 高度の 気流閉塞 FEV1/FVC<70% 30%≦% FEV1<50% Ⅳ期 極めて高度の 気流閉塞 FEV1/FVC<70% % FEV1<30%あるいは% FEV1<50% かつ慢性呼吸不全合併 表 5 COPD の病期分類 この分類は,気管支拡張薬吸入後のFEV1値に基づく. 呼吸不全:海面レベルで空気呼吸する際に,Pao2が60 Torr以下の場合をいう.

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ち,これまでのガイドラインにみられた気流閉塞 (一秒量の程度;病期,表 5)のみで治療・管理方 針を決定するのではなく,呼吸困難,運動能力の低 下,増悪の頻度など症状の程度を勘案した上で重症 度を判断し治療をすることが推奨されている.その 意味では,患者中心の個別的医療の実践を提言した 内容である.したがって,図 2 に示されるように患 者の重症度も軽症から重症(最重症といった文言は 使用されていない)までと連続的に描かれており, さらに,薬物療法や呼吸リハビリテーションも階段 状ではなく斜線で連続性の治療強化法を提示してい る.すなわち,測定された気流閉塞の数値でいきな り治療法が変わるのではなく,慢性疾患の進展を継 続的に観察しながら,その病態に最も適切な治療法 を選択,施行しその効果を検証しながら,個々の患 者にとり最善の状態に到達することが肝要であるこ とを推奨しているのである. 呼吸リハビリテーションは薬物療法に上乗せし た効果のあることが示されており,COPD 管理に とって不可欠の治療法である(図3).運動療法 がその中心となるが,その効果を高めるために栄 養療法にも充分留意をすることが望ましいとされ ている.これらの全身管理を継続して実践するた めには地域医療の連携構築が欠かせない. COPD の肺合併症として喘息があげられる.活 動性の喘息病態を示す COPD では疾患の進行が著 しく予後不良の要因とも目される(図4).した がって,喘息病態の存在が疑われる例に対しては, 外科療法 換気補助療法 酸素療法 吸入用ステロイドの追加(繰り返す増悪 *) 長時間作用性抗コリン薬・β2刺激薬の併用(テオフィリンの追加) 長時間作用性抗コリン薬(または長時間作用性β2刺激薬) 呼吸リハビリテーション(患者教育・運動療法・栄養管理) 必要に応じて短時間作用性気管支拡張薬 禁煙・インフルエンザワクチン・全身併存症の管理 呼吸困難・運動能力の低下・繰り返す増悪 症状の程度 FEV1の低下 喫煙習慣 軽症   → → → → → → → → → 重症 Ⅰ期 Ⅱ期 Ⅲ期 Ⅳ期 管理法 管理目安 疾患の進行 図 2 安定期 COPD の管理 FEV1の低下だけではなく,症状の程度を加味し,重症度を総合的に判断したうえで治療法を選択する.増悪を繰り 返す症例には,長時間作用性気管支拡張薬に加えて吸入用ステロイド*や喀痰調整薬の追加を考慮する. 図 3 運動療法による呼吸困難の改善効果 図 4 喘息の合併による呼吸機能の経年的悪化

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ステロイドの吸入治療などの標準的喘息治療が必 要である. 5,COPD増悪期の対策と治療 COPD の急激な増悪は主として気道感染や大気 汚染の暴露によってもたらされる.予防としては, インフルエンザや肺炎球菌のワクチンなどが挙げ られる.増悪時の対応は,既存の COPD 重症度 によって異なるが,重症や最重症では原則として 入院治療とし,軽症,中等症では低酸素血症がみ られる場合に入院の適応となる.増悪時の治療に は,気管支拡張薬の増量により可能な限りの気管 支拡張を確保し,ステロイドの全身的使用,感染 兆候に対する抗菌薬の使用,合併する右心不全対 策,換気不全に対する補助換気の導入などがある. 1)増悪とは何か COPD の増悪に関しては,いくつかの案が提唱 されてはいるものの,結論めいた明確な定義付け はされていない.したがって,その重症度に関し ても一定の基準となる指標が提示されているわけ ではない.しかし,日常診療にあたっては,“呼 吸困難,咳,喀痰などの症状が日常の生理的変動 を超えて急激に悪化し,安定期の治療内容の変更 を要する状態”として理解することができる. 増悪期の治療指標となる重症度については,患 者自体の重症度や悪化をもたらす原因や誘因など 背景となる要因が個々の患者で異なるため,軽症, 中等症,重症といった 3 段階の分類で評価するこ とが多い(表6,7). 2)発生機序と病態 COPD が重症化するにしたがい増悪する頻度は 増加する.COPD の増悪には,呼吸器感染症と大 気汚染などが関係しているが,約 30%の症例で は増悪の原因が特定できない.感染の病原体とし ては,インフルエンザ菌,肺炎球菌,モラクセラ・ カタラーリスなどの細菌や,パラインフルエンザ ウイルス,ライノウイルス,インフルエンザウイ ルス,アデノウイルスなどのウイルス類が挙げら れている.また,大気汚染物質としては浮遊微粒 子状物質やオゾン,窒素酸化物などの吸入が悪化 をもたらす要因として指摘されている. COPD の増悪としては取り扱わないが,症状を 悪化させる要因としては,肺性心の悪化,肺塞栓 症の発生,鎮静剤・睡眠薬による呼吸抑制からも たらされる CO2ナルコーシス,気胸などがある. 3)増悪の予防 感染症が COPD の増悪をもたらす主因となっ ていることから,インフルエンザや肺炎球菌に対 するワクチンの接種が勧められる.薬物療法とし ては,吸入ステロイド,長時間作用性β2刺激薬, 長時間作用性抗コリン薬が増悪の頻度を 20 ~ 30%減少させることが明らかにされている.さら に,カルボシステイン(1,500mg/ 日)の内服が 増悪頻度を低減させるとの報告もある.マクロラ イド系抗菌薬の少量長期使用による予防的効果に ついては,増悪頻度の減少などが示唆されている. 汎用されているCOPD増悪の重症度分類を示す. ●軽症: 呼吸困難の悪化,喀痰量の増加,喀痰の膿性 化のうち1つと,5日以内の上気道感染,他に 原因のない発熱,喘鳴の増加,咳の増加,呼 吸数あるいは心拍数の20%以上の増加のうち1 つ以上がみられる. ●中等症: 呼吸困難の悪化,喀痰量の増加,喀痰の膿性 化のうち2つがみられる. ●重症: 呼吸困難の悪化,喀痰量の増加,喀痰の膿性化の すべてがみられる. 表 6 増悪期の重症度分類 原則としてすべての患者に推奨される検査 ・パルスオキシメトリーと動脈血ガス分析 ・胸部単純X線写真 ・心電図 ・血液検査(血算,CRP,電解質濃度,肝腎機能など) 必要に応じて行う検査 ・胸部CT ・血液培養,喀痰グラム染色と培養,肺炎球菌尿中抗原な どの感染症検査 ・心臓超音波検査,血清BNP濃度測定,凝固能検査(D-ダイマーなど) 表 7 COPD 増悪時に行われる検査

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4)病態に則した治療 COPD 患者は気道感染症や大気汚染物質の暴露 によって咳痰の増加とともに呼吸困難が増大し, 重症 COPD 患者ではしばしば致死的になるまで の呼吸不全となる.気管支拡張薬や全身的なステ ロイドの使用を行い,喀痰量の増加や膿性痰の見 られる場合には,抗菌薬の使用を行う.さらに, 呼吸不全に対しては酸素療法を,心不全に対して は利尿薬などにより病態の改善に努める. COPD 増悪時の対応としては,その重症度と病 態の程度に応じた薬物治療の選択,入院や ICU 管理の適応,換気補助療法の導入などが挙げられ る(表 8).COPD の増悪に際しては,呼吸困難 の増強を主とする急激な症状の変化がみられ,気 流閉塞が高度となるために気管支拡張薬の使用量 を増加することになる.一般的には,効果の発現 時間が短時間であることと,気管支拡張効果が強 力であることから短時間作用型β2刺激薬の吸入 を用いられることが多い.また,喀痰の増量や色 調の変化がみられた場合には,感染症を疑い抗菌 薬を使用する.以上の治療を行っても病態の改善 がみられない場合には,ステロイドの全身的使用 を試みる.以上の治療は自宅ないし外来で行える 範囲であるが,これらの処置を施行しても病態が 悪化するときには,入院を念頭に置き可及的に病 院を受診する必要がある.また,酸素飽和度の測 定により血液酸素濃度が急速に低下していること が見いだされた場合には,症状の程度や進行度に かかわらず,病態評価や合併症の検索のために病 院受診を要する. a)増悪時の薬物療法 基本は ABC アプローチ(抗菌薬:antibiotics, 気管支拡張薬:bronchodilators, ステロイド: corticosteroid)である(表 9).増悪時には,気流 閉塞を可能な限り改善する目的で気管支拡張薬を 使用する.短時間作用性β2刺激薬の使用を第 1 選択とし,効果が不十分であれば短時間作用性抗 コリン薬の追加使用か併用を試みる.ステロイド の全身使用で入院期間の短縮が期待されることか ら,経口プレドニゾロン 30 ~ 40mg/ 日で 7 ~ 10 日間使用する方法が推奨されている.経静脈的に も同等量の使用が目安となる.抗菌薬の使用に関 しては,外来ではペニシリン系かニューキノロン 系薬剤を,入院例では起炎菌の同定が薬剤選択の 呼吸不全を呈している患者および安定期の病期がⅢ期(高 度の気流閉塞)以上の患者では,入院治療が勧められる. その他,以下のような状態では入院治療を考慮する. ・呼吸困難の急激な増悪 ・チアノーゼや浮腫の出現 ・増悪に対する初期治療に無反応 ・重大な併存症 ・頻回の増悪 ・不整脈の出現 ・診断が不確実で,鑑別診断が必要 ・高齢者 ・在宅サポートが不十分 以下のような状態では,集中治療を考慮する. ・初期治療に反応しない重度の呼吸困難 ・錯乱,嗜眠,昏睡などの精神状態の出現 ・酸素投与や非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)にも関わら ず改善しない低酸素血症,または高二酸化炭素血症, あるいは呼吸性アシドーシス ・侵襲的陽圧換気療法(IPPV)が必要な状態 ・血行動態が不安定 ・患者教育を行って増悪を早期に発見させるとともに,そ の対処法についても予め指導しておく. ・増悪時の薬物療法の基本は,ABCアプローチ(抗菌薬: antibiotics,気管支拡張薬:bronchodilators,ステロイド: corticosteroids)である. ・呼吸困難の増悪に対する第一選択薬は,短時間作用性β2 刺激薬の吸入である(エビデンスA). ・ステロイドの全身性投与は,安定期の病期がⅢ期(高度 の気流閉塞)以上の増悪症例(エビデンスA),入院管理が 必要な症例,外来管理でも呼吸困難が高度な症例で勧め られる.プレドニゾロン30~40mg/日の7~10日間の使 用が一般的である(エビデンスC). ・抗菌薬の使用は,喀痰の膿性化が認められる症例や換気 補助療法が必要な症例に勧められる(エビデンスB). 表 8 入院と集中治療を考慮すべき状態 表 9 増悪時の薬物療法

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基本であるが,それまでは経験的にβ―ラクタム 系薬 / β―ラクタマーゼ阻害薬,第 3,第 4 世代 セフェム系薬,カルバペネム系薬,ニューキノロ ン系薬の使用が推奨される. b)酸素療法 病態が進展し呼吸不全とみなされる低酸素血症 (PaO2 60 Torr 未満,あるいは SpO2 90%未満)

が確認された場合には,呼吸不全状態からの回復 を目標とした酸素療法が不可欠となる.II 型呼吸 不全(PaO2 60 Torr 以下,かつ PaCO2 が 45 Torr を超えるもの)の場合には,低濃度の酸素から投 与を開始する(図 5). c)換気補助療法 COPD の増悪にみられる高炭酸ガス血症やアシ 図 5 COPD の増悪時における酸素療法 注:換気補助療法の適応は呼吸補助筋の使用,奇異性呼吸,呼吸回数の増加も含めて判断する. 1.導入が容易で装着が簡単 2.会話が可能 3.食事摂取が可能 4.気管内挿管に伴う危険性がない 5.状況に応じて,いつでも中断可能 6.体位変換が容易(沈下性肺炎のリスクを減少) 1.呼吸補助筋の使用,奇異性呼吸を伴う呼吸困難 2.pH < 7.35 かつ Paco2>45を満たす呼吸性アシドーシス 3.呼吸回数> 25 回 / 分 表 10 NPPV の利点 表 12 NPPV の適応基準(2 項目以上満たす場合に適応) 1.患者の協力が不可欠 2.気道が確保できない 3.気管内吸引が困難 4.マスクの不適合,マスクによる圧障害 5.高い気道内圧を確保するのが困難 6.医療スタッフの習熟と慣れが必要 1.呼吸停止,または極端に呼吸循環動態が不安定な患者 2.患者の非協力 3.気道確保が必要 4.頭部・顔面または胃・食道の手術直後 5.頭部・顔面の外傷または変形 表 11 NPPV の欠点 表 13 NPPV の除外基準

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ドーシスの悪化は,主として肺胞低換気によるが, その背景には呼吸筋不全があり,その意味からも 換気を補助することは合理性がある.従来は気管 内挿管をおこない,その上で陽圧人工換気をおこ なう侵襲的人工換気が主流であったが,近年は, 非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)が広く用いられ増悪 時に対する有用性は確立している(表 10 - 13). 増悪時の換気補助療法の適応は,患者や家族の 希望,これまでの治療経過,増悪原因の改善見込 みなどを総合的に判断して決定する. 6,病診連携 これまでのガイドラインでは在宅医療には触れ られていたが,病診連携を一項目として取り上げ, 診療所や病院などの役割や患者の動線について 明記されてはいなかった.COPD2009 では,プラ イマリケア医における COPD 診断の道筋を示し, 疾患の長期にわたる管理のなかで医療連携はどう あるべきかを具体的に示している(図 6).さら には,高齢者に特有な疾患と慢性進行性の疾患と いった2つの面を併せ持つ COPD 患者に対して, 社会がどのように支えていけば良いのかを,この ガイドラインは問題提起してもいるのである. おわりに タバコ喫煙の生活習慣病と目される COPD は, 我が国で 700 万人の罹患者が存在すると推定され ているにもかかわらず,極めて低い診断率を示し, 延いては適切な治療・管理がなされていない状況 が指摘されている.この度,日本呼吸器学会から 第3版として上梓された COPD 診断と治療のた めのガイドラインは,内容も大きく刷新し患者中 心の個別的医療を実施するための参考となる実践 書として作成された.主たる変更点は①定義:病 因としてタバコ煙の文言を定義の冒頭に明記②病 期と重症度:本症の病期(気流閉塞の程度)と重 症度(病状の程度)は異なることを記載③維持管理: 呼吸機能障害と全身状態を加味し判定した重症度 に基づく治療法の選択④喘息病態合併の COPD: 喘息治療を優先⑤医療連携:病診の役割と連携の あり方を明示,などである.病像が多彩で様々な 変化を示す本症のような慢性疾患に対して,適切 な治療・管理を実現するためには機能分担した医 療連携が欠かせない.(図表は文献3より引用) 文 献

1) Canadian Thoracic Society Workshop Group: Guidelines for the assessment and management of chronic obstructive pulmonary disease. CMAJ 1992 ; 147:420-428. 2) 日本呼吸器学会 COPD ガイドライン作成委員会:COPD(慢 性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン,メデ ィカルレビュー社, 東京, 1999. 3) 日本呼吸器学会COPD ガイドライン第 3 版作成委員会 : COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライ ン 第3版, メディカルレビュー社, 東京, 2009. 診療所(質問票でスクリーニング) 病院(スパイロメトリーで確定診断) 図 6 COPD における医療連携 スパイロメトリー検査:300点(月1回) 内訳:肺気量分画測定80点・フローボリュームカーブ80点・呼吸機能検査等判断料140点(ガイドライン作成時 点での点数) 診療情報提供料(Ⅰ) 250 点(月 1 回) 特定疾患療養管理料 225 点(月 1 回) 鑑別診断 治療方針決定 紹介 診療情報提供料(Ⅰ) 250 点(月 1 回) 安定期 フォロー 逆紹介 診療情報提供料(Ⅰ) 250 点(月 1 回) 安定期 フォロー 逆紹介 入院 増悪期 紹介 診療情報提供料(Ⅰ) 250 点(月 1 回)

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