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魚肉試料の固定に関する化学的研究 : 第1報 揮発性塩基定量を目的とする固定法 : その1 除タンパク剤による固定について

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(1)

魚肉試料の固定に関する化学的研究 : 第1報 揮発

性塩基定量を目的とする固定法 : その1 除タンパ

ク剤による固定について

著者

大城 善太郎, 永吉 秀夫

雑誌名

鹿児島大学水産学部紀要=Memoirs of Faculty of

Fisheries Kagoshima University

3

2

ページ

38-44

別言語のタイトル

Chemical Studies on the Fixative Procedure of

Fish Meat for the Various Estimation ... I :

(1) On the Fixative Procedure for the

Estimation of Volatile Basic Nitrogen : (a)

Fixation by Using Protein Precipitant

(2)

38

魚肉試料の固定に関する化学的研究

鋪1報揮発’性塩基定麓を目的とする固定法

その1除蛋白剤による固定について*

大 城 善 太 郎 ・ 永 吉 秀 夫 ChemicalStudiesontheFixativeProcedureof FiShMeatfortheVariousEstimation…I

(1)OntheFixativeProcedureforthe

EstimationofVOlatileBasicNitrogen

(a)FixationbyUsingProtein

Precipitant ZentaroOosHIRoandHideoNAGAYosHI 序

魚類死:後の成分変化若くは鮮魚の保蔵における成績と検討する一手段として揮発性塩基

(以下V−Nと略記する)の測定が屡を行われているが,その測定は漁獲現場・保蔵現場

において直ちに行わねば正確な数値を期待することは出来ない.

然し乍ら多くの場合之等の測定を行わんとする場所は一般に実験室的設備を有しない漁

船・工場内であるところから,試料を一時的に固定して実験室へ搬入する便法が採られて

いる.現今行われている魚肉試料の固定法としては,細挫魚肉に三塩化酢酸・過塩素酸溶

液を加えて肉蛋白を完全に凝固させると共に酵素・作用を停止せしめて更に凍結する方法'),

叉は細挫魚肉に上記の如き酸’性除蛋白剤を加えて得た除蛋白液を冷却する方法2)等がある.

何れの方法も凍結設備を要し或いは脳過操作を伴う故尚不便な点がある.

最近多くの研究者3>I>によれば,遠洋性漁盤物特にマグロ類のV一Nが死直後でも40∼

50mg%にも達する故にその測定によっては鮮度判定が出来ないと結論している. 然るに筆群)が本学練習船に便乗し,チモール近海において即時測定したV−N量はマ グロ類でも一般魚肉の夫と殆んど同様な結果が得られた.そこで筆者が上述の如き実験結 果の不一致の原因を確めるため種々検討を加えたが,その結果は従来云われているような

過大のV−N量は普通試料を現場で酸性除蛋白剤によって固定しておいて10∼20日後に

測定した値であることから,固定法の実施時自身にその大半の原因があることを知った. そこで更に筆考は固定法を簡易化する目的で−1)常温で保存する.2)繁雑な操作 を要しない.−と云う立場から種為検討を行った結果,殆んど所期の目的を達し得たの で並にその大要を報告・する. 実 験 並 び に 考 察 拳1953年4月5日,日本水産学会大会にて講淡.

(3)

r1 L」 大 城 鱒 太 郎 ・ 永 吉 秀 夫 一 魚 肉 試 料 の 固 定 に 関 す る 化 学 的 研 究 、︺ハリnJぺUペリ、U 、︾○⑨A︾J坊う一 GJ Ⅱ.V−N生成に対する防腐剤の効果・ 魚肉中のV−Nは主として細菌の作用によって生成増加するものと考えられる.腐敗菌 の発育を停止せしめることによりどの程度その生成を防止し得るかを確めるために先ず防 腐剤の効果を試験した.即ち細挫マグロ肉5gr・に水20cc・を加えて一様に肉を懸濁さ せ,更にトルオール・クロロホルム(2:1)5ccを加えて充分混和し,20°Cの恒温器及 び−4∼0°Cの冷蔵庫内に保存しておき,V−N澱を減圧蒸溜法(公定法)(;)により測定し た.Fig.1はその結果である. ノOOO 800 600 400 麺0 39 ‘ ’ I C 』 Q j o 4 a y s 、 " ノ O Z O d A y S FiglEffectondevelopmentinvolatilebasicnitrogenofantisepticizer (toluol-chloroform)addedinfishme1t,whichisstoredat-4∼0℃ and20°C. ○:fresh,。:decayed,−:a醜tisspticized,…:non-antisepticized 即ちトルオール・クロロホルム混液を添加防腐しても20°Cにおいては勿論、−4∼0°C 冷蔵の場合にも魚肉中の自己消化酵素及び漁獲後に附清繁殖したと思われる細菌の生 産酵素の作用によりV一Nは生成増加する.特に鮮度の低下した魚肉の場合にその生成量 が多いから細菌酵素の影響が著しく従って漁獲物の時間的変化を取扱う場合には誤差を生 ずる原因となろう.従ってこのような防腐剤のみによる試料の固定は不可能と思うのであ る. 0 11.酸性除蛋白剤の防腐効果 実験1.の結果からV−N測定を目的とする試料の固定は,細菌の発育並びに酵素作用 を完全に停止せしめることによっての承その目的を達し得られるものと考えられる.一般 に除蛋白剤によって酵素は沈澱し不活性化するので,通常用いられる濃度D酸性除蛋白剤 が防腐効果を示せば所期の目的を達し得られるものだと思いその防腐性を検討・して見た. 即ち細挫マグロ肉59r・を三角フラスコに採り之に夫燕5%(2%D場合には発徽して実 験不可能となった)の三塩化酢酸並びに過塩素酸溶液を40cc.宛加え,凝固した肉塊を打 砕き前述の如き防腐剤を加えて密栓し20℃及び−4∼0°Cに保存してV−Nの時間的変 化を追跡した.それ等の結果はTable,1に示す通りである. 即ち防腐区と対照区のV−N量が殆んど一致することから,少くとも5%程度D濃度 ならば除蛋白剤の象で充分防腐し得ることが確認された.但し何れの場合にも保存中にV −Nの増加が見られるが,この増加現象は腐敗作用並びに自己消化酵素作用以外にその原 因があるものと考えられる. m・v−N生成に対する酸性除蛋白剤の影響 上記11の実験結果から酸性除蛋白剤浸漬による試料の保存中新に著蹴のV−Nが生成 増加し,その増加量は除蛋白剤の種類によっても異るが,保存温度並びに貯戯日数に比例

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40 鹿 兇 烏 大 学 水 産 学 部 紀 要 鋪 3 巻 第 2 妙 T泡blel、Antisepticeffectofacidicproteinprecipitants、 −4∼OoC A B A B 20°C A B A B

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time(days) − −

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0 19.30 20.01 42.80 41.53 0 26.25 25.15 42.80 40.31 12 23.07 23.10 21.10 21.10 54.30 54.30 4793 48p6 5 54p2 53.95 36J60 36.65 73.60 73.60 49.40 49.45 20 27.65 27.62 21.90 21.58 54.40 55.02 49,12 48.98 14 60.70 60.68 45.76 45.79 103.50 103.55 60.83 60.80 A:5%HClOI,B:5%CCl3COOH,+:antisepticized,一:non-antisepticized

していることからその増加の原因は魚肉成分の酸分解の結果によるものであろうと推定し

てぶた・

この推定を確めるため,マグロ肉5gr・に各種濃匪、D酸性除蛋白剤40cc・を加えて前述

の実験同様−4∼0℃,20℃,35°Cに保存しV−N堂を測定した.Table、2はその結果で

ある.

即ち酸性除蛋白剤による試料の固定保存中,氷蔵処理に相当する0℃前後の低温でもV

一Nが徐'々に生成増加し,而もその増加堂は除蛋白剤の種類,濃度並びに保存温度,時間

に比例することが確認された.

依って上記の諸実験結果から,酸性除蛋白剤によっては,たとえ細菌並びに自己消化酵

素の作用を停止させても魚肉中成分の酸分解によりV−Nが生成され,その生成量は約2

00∼250mg%にも及ぶことが確められた.

このことから従来キハダマグロ等の如き遠洋性のものにV−N量:が多いと云う一般通念

は恐らくこの様な酸性除蛋白剤浸漬法によった固定試料について実験されたため,二次的

に(酸分解されて)生成されたV一Nをも測定した結果による誤判ならずやと考えられ

る.尚酸性除蛋白剤には本実験に使用したもの以外にも多数あるが,酸性溶液である以上

程度の差こそあろうが,大体本実験の場合と同様D結果となることが類推し得られた.

以上のことから筆者等の理想とする魚肉試料の常温保存が従来用いられている酸性除蛋

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10 大城牌太蝿・永吉秀夫一魚肉試料の固定に関する化学的研究 0 Table2.Fheeffectofacidicproteinprecipitanttothe productionofvolatilebasicnitrogen -4∼0.C fixativeagentS 20.C 13.4 ∼§堅ingtime,

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163.5 226.0 251β 30 20 10 0 fixativeagents 5mm

白剤による方法では全く妥当の結果が得られないことを確認した.

尚お試料の酸分解によるV一Nの生成機構については後報する.

1V.V一N生成に対する中性除蛋白剤の影響

酸性除蛋白剤による固定は魚肉中成分の酸分解により二次的にV一Nを生成する故,試

料の保存目的には不適当であることを知ったのであるが,之等の現象より推理して中性の

除蛋白剤を使用すれば,酵素作用をも停止せしめ得るから之を防腐すれば理想的に固定し

得るものと考えた.而して固定剤としての適否を吟味するに先立ち,中性除蛋白剤の如き

豚状粒子・の通性として挙げ得る吸着性を考慮する必要がある. i)腰状水酸化亜鉛のアンモニウムイオン吸蒲腫対するPHの影響

Zn(OH)雪水様体は普通ZnSOIにNaOHを加えて調製するが,それ等の混合割合如

CC13COOH 14.0 27.1 32.0 46.5 25.5 29.0 369 24.7 25.6 28.2 500 12 21.6 HClO4 98.1 141.8 216.2 500 12 27J0 28.5 31.5 ppp お”” 24.1 25.5 26.0 5℃麺 20.8 CCl3COOH 142.3 185.6 250.4 46.3 96p l30o2 178.5 230.1 250.8 0 10 20 14.7 30 20 HClOJ 30

…。璽…│孟愚説¥無理

35℃ ○ 、 ( 姥 61.3 103.5 135.4 41 CC1弱COOH 15.3 5m” 100.6 188.3 223.2 69.5 1402 170.3 5幻加 117.4 163.5 251.0 HC101 30.1 70.4 105.4 80β 121.6 207.5 87.5 170.8 185.1

(6)

42 鹿 兇 島 大 学 水 産 学 郊 紀 要 第 3 巻 節 2 号 *toluol-chloroform(2:1) 42.8 何によってその腰状液のPHは微酸性よりアルカリ性の広い範囲に亘って来るから当然 NH4十等の吸着に対して影響することが考えられる. 筆者等はSomogyi7)の方法に準拠して10%ZnSO1とN/2NaOHの混合割合(容量) を種を変えて得たZn(OH)2溶液10cc・に対しNHICl溶液(0.02mgNH3/cc.,0.10 mgNH:I/cc.)各煮10cc・を加えてよく撹枠iMjI過し,施液についてNH厨を測定しその吸 着の有無を検討した.Table、3はその結果である. 企lble3・TheinauenceofpHontheadsorptionofammonia whichisadsorbedbythecolIoidalzinchydroxide precipitantpreparedwithzincsulfateandsodium hydroxidesolution. 26.2 60.0 + 42.8 198.2 42.9 185.4 42.8 14【、0 A B I A B l A B reagentS 42.7 53.5 mixingratio 6 4 1 5 5 1 4 6 2ら.2 9.7 pH 6.5 6.9∼7.0 11 ●● う9 25

0.O2mgNHm/cc 1.OmgNH3/cc 0 %0 % OO 25% 35 ammoniaadsorbed 26.2 58.5 A:10%ZuSO4,B:N/2NaOH 即ち反応液が微酸性若くは中性のときにはNH,十吸潜は全く起きないが,アルカリ性の ときには明らかに吸着されることが認められる.依って今後の実験には両者の混合割合を 1;1にすることとした. ii)中性除蛋白剤の固定力並びに防腐剤添加の効果 前述の諸実験結果から魚肉に中性除蛋白剤を加えて酵素を不活性化させ更に防腐すれば 酸性除蛋白剤浸漬時におけるようなV−Nの二次的生成も起らないから試料の常温保存が 可能であろうと考えられた.この推定を確認するため吹の如き実験を行った. 垂lble4・Preventativeeffectofvolatilenitrogenproducing byuseOftheneutralproteinprecipitant. O∼2。C + 26.3 35.8

∼昌竺ing…(days)’

I

antisepticizer蕊一一’

40 19.2 2【、0 10 0 20 30 40 20 30 10 19.1 19.9 43.8 555 + 一 q ■ 。 α Ⅱ 凸 ●● ”記 19.1 27.3 19.1 十 44.0 51.2 44.0 59.0 0 43.9 60.8 43.9 35℃

(7)

大城鱒太加・永吉秀夫一魚肉試料の固定に関する化学的研究 43

即ち100cc、容の三角フラスコにマグロ細挫肉5gr・を採り,之に10%ZnSOl20cc.

N/2NaOH20cc・を加えてよく擬枠し更にガラス棒で肉塊を打挫き一様に肉を懸濁せしめ

(対照区),その固定効果を確めるため更にトルオール・クロロホルム(2:1)5cc・を加え

て撹枠(防腐区)後各左を密栓し,−4∼0℃,30℃に夫々保存しV−Nの時間的変化を

見て固定(保存)成績を検討した.結果はTab1G.4の通りである.

上記の表から中'性除蛋白剤のみでは,固定が充分ではないが(之の理由としてはZn

(OH)2が沈降しその上澄液に細菌が発育するためであろう)防腐剤を添加したものは,

0°Cでは勿論,夏季の気温に相等する3(,。C程度でも殆んど完全に固定保存が可能である ことを認め得た. 要 約 V−N測定を目的とする魚肉試料の固定法を見出すために種為吟味し次の諸点を明らか にした. 1)トルオール・クロロホルム混液か承ではたとえ防腐し得ても魚肉中の酵素の作用に

より徐々にV一Nが生成される.特1こ鮮度D低下した魚肉の場合にこの傾向が著しく,従

って細菌酵素が大きく影響することを認めた. 2)少くも5%以上の濃度であれば,三塩化酢酸,過塩素酸は充分防腐効果がある. 3)酸'性除蛋白剤に浸漬保存する方法では,細菌並びに自己消化酵素刀作用と停止せし め得るが,魚肉中成分の酸分解により二次的に著股のV一Nを生成する. 4)水酸化亜鉛膨状液の如き中性除蛋白剤と防腐剤を使用すれば,常温に於いても殆ん ど完全に固定保存の出来ることを認めた. 終りに臨承終始御指導を賜った本学高田教授に謹んで感謝の意を表する.なお本実験に ついて有益なる助言を戴いた太田助教授にも深謝する. Resume Inordertofindoutthefixativeprocedureoffishmcatwhichisusefulto measurethevolatilebasicnitrogen,somepossibleexaminationsweretriedwith thefollowingresultsobtained. (1)Whenonlythetoluolandchloroformmixtureforantisepticagentwere

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amountsofvolatilenitrogenwereininverseproportiontofreshness,andso authorssupposedthisreasonwasduetobacterialenzymicaction.

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ricortrichloraceticacidshowedaremarkableantisepticeffecttobacteriain fishmeat.

(3)Whenthefishmeatwaspickledintheacidicproteinprecipitant,the

volatilebasicnitrogeninmeatwasnotincreasedbyenzymicreaction,butat thesametimesecondarydecompcsingvolatilenitrogenwasincreasedforthe useofthisreagent. (4)Whentheneutralproteinprecipitantsuchaszinchydroxideandanti‐

(8)

鹿 児 島 大 学 水 瀧 学 部 紀 要 第 3 巻 第 2 号 Somogyi:JBiol、chem、86,655(1930). septics(toluol-chloroform)wereaddedtothefishmeat,Nochangesofvolatile basicnitrogenocucrredandthefishmeatwascompletelyfixedbythesepre⑥i‐ pitantevenatnormaltemperature. 女 献 】)山田紀作,高尾融次,雨宮和子:南氷洋産冷凍鯨肉に関する研究報告;9('948 '949)冷凍 魚介類価格査定委負会. 高瀬明:日水誌;19,71∼74(1953). 浅川末三:日水誌;19,118∼123(1953). 天卿慶之:水検月報;46,16∼19(1952). 田ノ上豊隆,大城善太郎:本誌;3,(1),21∼24(1953). 厚生省編:術生検査掃針;39∼45(1951)協同医書出版社.

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