• 検索結果がありません。

小学校「造形遊び」の実践例におけるねらい、規準、観点、見取りによる評価に関する言説の研究 ─テキストマイニングを用いた定量的分析に基づく仮説構築─

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "小学校「造形遊び」の実践例におけるねらい、規準、観点、見取りによる評価に関する言説の研究 ─テキストマイニングを用いた定量的分析に基づく仮説構築─"

Copied!
8
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

1.問題の所在. 昭和52年発行の小学校学習指導要領図画工作編で, 低学年に「造形的な遊び」が導入されてから、43年の歳月が 経とうとしている。「造形遊び」1)は、平成元年版での中学年 への拡大を受けて、「図画工作科のうちの一つの領域という よりも,教科の基調を形成する考え方」2)となった。さらに、平 成10年版における高学年への拡大以降、その意義は、多く の図工科教育の専門家の支持を集めているように見える。 ところが、依然として、それは現場の教師たちの間で受容さ れ、普及しているとは言い難い。平成27年の調査結果によ れば、「造形遊び」の実施率は、すべての学年において他の 題材よりも低く、学年が上がるにつれて徐 に々低下し、6年生 では34.85%を記録している3)。阿部宏行の言葉を借りるな らば、「実施されていることになっている造形遊び」4)なのであ る。現場における「造形遊び」不振の理由については、これま でに、様 な々角度から検討が行われてきた。その内の一つと して、本論では「評価の難しさ」に焦点を当てる。 「造形遊び」では、観察、子ども自身による記述や発言、写 真や動画等の評価方法が、複合的に用いられることが多い。 とりわけ、活動の過程における子どもの行為に対する教師の 見取りが重要視される傾向にある。しかしながら、同時多発 的に生起する出来事が、連鎖反応を起こしつつある状況に 身をおきつつ、すべての子どもを十全に見取ることは不可能 に近い。教師のその時 の々心身の柔軟性・解放性に応じて、 感受することのできる現象の範囲や意味の深さも影響を受 ける。さらには、製作中の作品や行為のような可視的側面だ けでなく、それらの背後にある資質・能力、生成されつつある 意味や価値、自発性や欲求の方向等を洞察しようとするな らば、示唆に富む反面、骨の折れる仕事となる。そのため、小 学校教員にとって、「造形遊び」の評価は、身体的・知的体 力が要求される割に、捉えどころがなく、不全感を生み出す ものとして、敬遠される傾向にあるのではないか。 現状では、「造形遊び」における評価を主たるテーマとし、 正面から切り込んだ研究は、ほとんど見当たらない。ただし、 「造形遊び」に関する実践的研究の中で、具体的な評価の 取り組みを扱った例は散見される。そこで本研究では、先行 する「造形遊び」の評価に関する実践例を収集し、授業のね らいや評価規準の設定、見取りの場面で用いられている言 語を内容分析の対象とし、それらの内に潜む、語と語の関係 性のパターンを抽出し、理論的仮説の構築を試みる。. 2.研究の背景. 2-1. 「造形遊び」における評価の困難さが起因する もの. それでは、「造形遊び」の評価における困難さは、一体どの. A Discourse Study about Educational Aim, Criterion, Perspective, and Observational Evaluation in Practice Examples of Elementary School “Artistic Play Activities” Hypothesis Building Based on Quantitative Analysis Using Text Mining. 東海大学短期大学部 講師. 佐藤 絵里子 SATO, Eriko. [研究論文]. 小学校「造形遊び」の実践 例におけるねらい、規準、観点、見取 りによる評価に関する言説の研究 ─テキストマイニングを用いた定量的分析に基づく 仮説構築─. 038. ような点に起因しているのだろうか。以下に、言葉と身体とい う二つの側面から整理する。 一つには、理論と実践の間に横たわる「言葉づかい」の差 がある。宇田秀士は2007年の論文 5)の中で、「造形遊び」の 活動のねらいを表す文言が抽象化されていることに由来す る問題について論じている。彼は、西野範夫の言う〈造形に よる意味生成の創造的な能力〉や、「造形」という概念が含意 する領域の広がりを引き合いに出し、「これらの魅力的な言 葉や包括的な概念からは、具体的な力や内容及びそこから 生まれる活動の姿が理解しにくい側面も併せ持つ」6)と指摘 している。また、彼は「図画工作科に関する文部・文科省著 作は、一般的に抽象化された文言となって」7)いることに触れ た後、「教師が学ぶべき著作における『ねらい、力、基礎領域、 評価』の内容規定が包括的・抽象的であることは、曖昧さを 生んで、マイナスに働く場合があり、より具体的な提示が求 められていると言える」8)と述べている。 このように、「造形遊び」のねらいを示す抽象度の高いフレ ーズや鍵概念と、個別具体的な授業のねらい、育むべき資 質・能力、評価の規準や観点を語る言語との懸隔が、図工 に苦手意識をもつ教師や、子どもに何かを「教えること」を原 則とする教師、経験の浅い教師による「造形遊び」の受容を 阻害してきたのではないかと推察される。しかし、単純明快 であることが要求される実践的言説によって、その思想的深 遠さを損なうことなく掬い上げることは容易ではない。教師 が子どもたちと場や身体性を共有しながら、評価方法や評 価規準等を言語化する方途の可能性を探る必要がある。 二つ目として、型に嵌った大人の目には子どもの学びが 「見えない」という、身体に関わる問題がある。佐藤賢司と城 野知佐は2007年の論文9)で、「造形遊び」が現場に根付か ない原因について、「子どもの〈学び〉が、近代的美術概念の 呪縛に支配された大人には『見えない』から」10)という理由を 挙げている。彼らは、活動の結果としての作品が残らないこ とを「事前に想定された分かりやすい『かたち』としての達成 目標がない」11)と言い換え、「『かたち』や属性という分かりや すい解釈の手がかりを持たない造形遊びは、大人が考える 〈学び〉の様式観からは、ずれている」12)と論じている。これは、 「子どもの学びをカテゴリー化して見ようとする、きわめて表 面的な〈学び〉の様式観」13)を指す。さらには、「造形遊び」の 「場面を支援する教師に必要な資質の第一は、何よりも子ど もの活動を『知識・経験・身体性を含めた総合的な学び』 として『見る』ことができる資質である。つまり、造形遊びにお ける子どもの学びが『見える』ことなのだ。(括弧内筆者)」14)と 強調した。 「造形遊び」の学びを、表面的な属性や既存の指標に よって分類することは、合理化や効率化への接近であり、現 象の複雑さや多様性を、色同士の関係に含まれる階調の豊 かさを、身体の動きに連動して起こる発見を、微小な変化や. 予兆が暗示するものを、「見る」ことのできない硬直した身体 を生み出してしまう。教師が「見える」身体を保ち続けるため には、柔軟で鋭敏な感覚を携えて、生の現象と意味の世界 との往還を可能とする強靭な知的体力が必要とされる。. 2-2.「造形遊び」のもつ意味生成的側面の起源 「造形遊び」は、「遊びがもつ教育的な意義と能動的で創 造的な性格に注目し、その特性を生かした造形活動」15)であ り、宇田によれば、①〈全身的な造形活動〉、②〈材料からの発 想や連想を豊かにする活動〉、③〈構成遊び的な活動〉とい う、相互に関わり合う3つの〈活動要素〉から成る16)。それは、 「つくる過程そのものを楽しむ中で『つくり、つくりかえ、つくる』 という、学びの過程」であり、「結果的に作品になることもある が、始めから具体的な作品をつくることを目的としない」17)。そ れは、学年に応じて、子どもたちが身近な材料や場所、空間 などの特徴を基に造形的な活動を思いつくことをねらいと する。「造形遊び」のもつ意味生成的な側面は、どのような歴 史的起源を有しているのだろうか。 武藤智子と金子一夫の研究 18)では、「造形遊び」の複雑 な発生・導入に関する要因が明らかにされている。一つは、 昭和46年の中央教育審議会答申以降の「ゆとりと充実」に 向かう教育改革である。もう一つは、図画工作科教育自体 の改革である。造形教育センターによる「子どものデザイン や工作の確立とその普及、絵画が中心の美術教育の是正、 造形教育の確立など」の主張、および、大阪教育大学関係 者を中心とする「Doの会」による「行為の美術教育」がそこに 含まれる。加えて、大阪教育大学教育学部附属平野小学 校による図画工作科研究の影響もあった。また、2004年と 2005年の宇田の研究 19)でも、やはり、「造形遊び」の出現にあ たって、昭和40年代から50年代初頭にかけての教育行政 上の動向や造形教育センターの成員の活躍、そして「Doの 会」の先進性が影響を与えたことが指摘されている。 本論と関わりの深い事柄としては、造形教育センターと 「Doの会」の両者で共通して、描画を中心とした作品主義的 教育に対する異議申し立てが行われたこと、それまでの自己 表出的な描画に代わって構成的で意味生成的な学びが提 案されたこと、それに伴う教師観の変化が起こったことが挙 げられる。表現の巧みさや子どもらしさの実現に向けて子ど もを鼓舞する教師ではなく、子ども自身が全身的なかかわり を通して活動の意味を発見してゆく機会を保障する教師 へと役割のイメージが変化した。しかし、それに見合った、ね らい、評価規準、評価方法の在り方については、具体案の提 案が遅れる傾向にあった。. 3.研究の目的 . 本研究の目的は、先行する「造形遊び」の評価に関する実. 038 [美術教育] No.304/2020. 039. 佐 藤. 絵 里. 子小 学. 校「 造. 形 遊. び 」の. 実 践. 例 に. お け. る ね. ら い. 、規 準. 、観 点. 、見 取. り に. よ る. 評 価. に 関. す る. 言 説. の 研. 究 ─. テ キ. ス ト. マ イ. ニ ン. グ を. 用 い. た 定. 量 的. 分 析. に 基. づ く. 仮 説. 構 築. ─ /. 研 究 論 文 :. 5. 「造形遊び」の実践例におけるねらい、規準、 観点、見取りによる評価に関する言説の分析. 5-1.本調査の対象と方法について 本調査の対象と方法について、以下5-1-1.から5-1-4まで の4段階として説明する。. 5-1-1.検索 【ア.J-STAGEを用いて】J-STAGEの「全文検索」機能で検 索語「造形遊び &(小学校 OR 小学生)」を使用し「査読あ り」の文献を調べたところ、165件がヒットした。この中から、 就学前教育、外国の教育、他教科の内容、社会教育の「造 形遊び」のみに言及した文献18件を差し引いた147件を文 献調査の対象とした。【イ.ciniiを用いて】ciniiの「論文検索」 機能で検索語「造形遊び (小学校 OR 小学生)」を使用し、 該当するすべての文献を調べたところ、70件がヒットした。こ の中から、アと重複した24件、および所蔵先不明の1件を差 し引いた45件を文献調査の対象とした。. 5-1-2.文献調査 上記アの147件および上記イの45件、合計で192件の文 献を読み、(F)「造形遊び」の評価の実践例の掲載の有無、と いう項目を含む一覧表 24)を作成した。上記アに該当する 147件中、(F)で「有」に数えられたものは21件であった。上記 イに該当する45件中、(F)で「有」に数えられたものは19件で あった。21件と19件の合計である40件をデータ収集の対 象とした。. 5-1-3.データ収集 40件を対象として、テキストマイニング分析のためのデー タ収集を行ったところ、合計72,828文字に上った。収集した データは、文を単位とし、先行する「造形遊び」の評価に関す る実践例の内、授業のねらい、指導目標、評価規準、評価の 観点、および見取りについて記述された箇所に該当する。見 取りに関する部分には、評価の文脈で記されたものと、現象 学的分析のような研究自体を目的としたものの両方を含め た。ただし、逐語記録や、行動分析記録として表中に含まれ た箇所は除外している。. 5-1-4.テキストマイニングを用いた分析 本研究ではテキストマイニングによる分析を行った。こ れは文書形式のデータを定量的に分析する方法である25)。 フリーソフトウェア「KH Coder」を使用して、データ全体の 抽出語の頻度分析と「共起ネットワーク」作成の後、クラス ター分析を行った。共通の抽出語を含む文書をクラスター に分け、テーマ抽出を実施し、仮説を構築した。. 践的研究を収集し、授業のねらい、評価規準、評価の観点、 および見取り(観察と観察に基づく考察とを一体的に扱っ たもの)に関わる言説を対象としたテキストマイニングを実 施し、概念同士の関係性を定量的に明らかにすることであ る。このような調査結果に基づき、教師自らが「造形遊び」の 評価を行う際に参照することができるような、一種の理論的 仮説を構築する。この仮説については、今後実施予定の「造 形遊び」の評価に関する実践的研究の中で活用したい。. 4.先行する研究. 小学校図画工作科「造形遊び」における評価の問題を包 括的に扱った研究は、今のところ、筆者が調べた範囲では見 当たらない。そこで本章では、「造形遊び」の具体的実践に 関する文献の中で、評価への言及を含むものを取り上げる。 なお、ここに挙げた例はその一部である。 まずは、教育行政と関わりの深い文書として、国立教育政 策研究所教育課程研究センターの『評価規準の作成、評 価方法等の工夫改善のための参考資料 (小学校図画工 作)』20)がある。同書では、指導要録、評価方法の工夫、評定 等について、豊富な具体例を示しつつ、平易な文章による解 説が行われている。第2編では、指導の際に盛り込むべき事 項について、指導要録の4つの観点(「造形への意欲・関心 ・態度」「発想や構想の能力」「創造的な技能」「鑑賞の能 力」)に応じた設定例が示された。第3編には「造形遊び」の 事例が掲載されている。ここでは、指導のねらいと、4つの観 点に沿って整理された評価規準・評価方法の具体例が、 写真やコメントとともに示された。 次に、学術論文として、守屋建の2018年の研究21)を挙げ る。4年生の「造形遊び」に該当する2つの事例が示された。 児童による振り返りと観察(動画・写真)の結果に対して、「A 発想・構想の能力」「B 創造的な技能」「C コミュニケーショ ン力」に応じた2段階の数値化による評価が行われている。 最後に、雑誌記事に言及すると、近年の代表として、2018 年の『初等教育資料』における「造形遊び」の特集22)がある。 ここでは、4つの実践例について、題材の目標、資質・能力別 の評価の観点、見取りの内容が紹介されている。また、2011 年の同誌における「造形遊び」の評価に関する特集23)では、 達富洋二によって、5・6年生の事例での評価の一覧表が 提案された。これは、11の規準に対応するグループ・個人 別の評価や、使用した複数の評価方法の別を書き込む方 式であった。 . 040. の能動性の発揮を感じさせる「考える」「イメージ」「工夫」 「発想」や、実践を特徴づける「見る」「使う」「作る」「並べる」 「持つ」のような具体的行為、そして「土」「コップ」「新聞紙」 「テープ」などの材料や場所を示す言葉も頻繁に使用され ていたことが明らかとなった。. 5-2-2.共起ネットワーク(出現回数15~315) 本項では、前項とは異なる角度からデータを読み取ること とする。図2「共起ネットワーク( 出現回数15~315)」は、対 象範囲の全データにおける、抽出語間の共起性を明らかに したものである。ここでいう抽出語は、前述の「頻出語」とほぼ 同義であるが、ここでは15回以上316回未満登場した語が 抽出されている。また、語と語の間の共起性・関連性の強さ の度合いは、図形同士の位置関係とは関係なく、線で接続さ れているかということと太さを通して表現されている。なお、 頻出語であっても、共起性の低い抽出語はここには表示さ れない。円の直径が大きいほど頻出度が高いことを、円の明 度が同じものは同一のクラスターに属することを示して いる。 図2は、一見すると、至極当然の結果、すなわち「造形遊び をする活動」という言い方に含まれる3つの単語(「造形」「遊 び」「活動」)が頻繁に使用されており、かつ同一のクラスター に属しているという事実に注意が向きがちである。しかし、も う少し詳しく見ていくと、頻出語である「意味」が「価値」と結. 5-2.分析の結果 5-2-1.頻出語の頻度分布(上位50語)について 「KH Coder」を用いた分析によって、対象範囲の全デー タにおける文の数は1,326件、総抽出語数は45,829件であ ることが明らかとなった。図1は、「KH Coder」の抽出語リスト 表示・集計機能を利用し、頻出語上位50語の内訳および 分布を解明し、グラフ化したものである。図1で1位、2位を 占めたのは「活動」と「造形」であり、「造形遊び」・「造形遊び をする活動」の概念にとって、汎用性の高い言葉が上位にあ ることが分かる。続く3位を占めたのは「自分」であり、活動の 主体としての自己を出発点とした学びが想定されていること が窺われる。ちなみに、後に詳しく述べるが、表1「クラスター 分析の結果と特徴語」のクラスターNo.5および表2「『造形 遊び』の評価に関わる語句のテーマ抽出」のNo.8の中で、 「自己」は「形成」と同じテーマに含まれていた。その次に多 かったのは、「材料」「意味」「子ども」であり、「見る」「形」「行 為」と続いている。少し後の11位を「場所」が占めていること から、材料や場所との関わりから活動を思いつくという、新学 習指導要領における「造形遊び」の各学年の内容【A表現 (1)ア】と関わりの深い言葉が多用されていることが明らかと なった。材料や場所とともに高学年で重視される「空間」もま た、32位に登場している。おそらく、これは先行する評価に関 する実践研究において、文科・文部科学省の定義に従った 解釈が留意されることが多かったためであろう。また、子ども. 表1 クラスター分析の結果と特徴語. No 件数 主な特徴語 1 91 活動、楽しい、造形、グループ、協力、友達、行う、進む、場所、得る 2 74 遊び、造形、材料、展開、生かす、活動、特質、授業、興味、効果 3 138 材料、工夫、新聞紙、考える、生かす、場所、発想、活動、特徴、思い 4 92 子ども、授業、時期、感じる、入る、関係、楽しむ、表現、教室、新聞紙 5 48 レベル、創出、価値、課題、解決、自己、無い、意味、視点、形成 6 69 積む、コップ、三角柱、変形、角錐、崩れる、並べる、高い、円柱、加わる 7 573 自分、形、表現、色、イメージ、友達、使う、全体、作る、発想 8 175 見る、行為、意味、場面、身体、相互、様子、世界、空き缶、造形 9 15 視線、発話、松ぼっくり、手元、続ける、空き缶、聞く、顔、左手、向ける 10 30 土、敷く、鍬、場面、畑、中、地面、両手、発話、バケツ. 表2 「造形遊び」の評価に関わる語句のテーマ抽出. No テーマ 抽出語 出現頻度 1 体全体で味わう 自分、友達、色、全体、体、味わう、使う、目的、表す、要素 573 2 世界との相互作用 見る、意味、行為、相互、作用、場面、世界、様子 175 3 材料や場所を生かす工夫 造形、発想、場所、生かす、材料、工夫、考える、思いつく、水、光 138 4 関係を楽しむ 楽しむ、かかわり合い、入る、関係、場、生命、手 92 5 ダイナミックな変化 場所、変化、体、得る、楽しい、協力、友達、ダイナミック、共同、協同、喜び、意識、イメージ 91 6 興味を高め発想を引き出す 造形、遊び、活動、材料、興味、理解、高まる、発想、引き出す 74 7 構成 積む、並べる、変形、操作、構成、行為、三角形、角錐、円柱 69 8 意味や価値の創出 価値、意味、創出、課題、解決、自己、視点、探求、形成 48. 040 [美術教育] No.304/2020. 041. 佐 藤. 絵 里. 子小 学. 校「 造. 形 遊. び 」の. 実 践. 例 に. お け. る ね. ら い. 、規 準. 、観 点. 、見 取. り に. よ る. 評 価. に 関. す る. 言 説. の 研. 究 ─. テ キ. ス ト. マ イ. ニ ン. グ を. 用 い. た 定. 量 的. 分 析. に 基. づ く. 仮 説. 構 築. ─ /. 研 究 論 文 :. 042. 図1 頻出語の頻度分布(上位50語). 図2 共起ネットワーク(出現回数15~315). 動〉、②〈材料からの発想や連想を豊かにする活動〉、③〈構 成遊び的な活動〉という3つの〈活動要素〉とも共通性が高 く、特に1と①、3.および6.と②、7.と③が類似している。しか し、その一方、世界との相互作用や関係を楽しむ側面、ダイ ナミックな変化、意味や価値の創出は、その重要性は認めら れてはいたが、これまでに抽出されたことは稀であった。. 5-3.考察 「KH Coder」によるテキストマイニング分析を通して、明ら かになったことを纏め、3点の考察を行う。 一つ目は、材料や場所、空間との関わりから活動を思いつ くという、新学習指導要領各学年の内容【A表現 (1)ア】と関 わりの深い言葉が多用されていた点である。先行する文献 では、法令等で定められた概念を使いながら、ねらいや規 準、見取りの言語化が行われる傾向にある。学習指導要領 には、抽象概念ばかりではなく、具体的な素材や環境、行為 を表す言葉も含まれている。現場では、これらを援用し、そこ に個々独自の文脈に合わせた言葉を組み合わせることに よって、題材の教育的価値が共有されることが多いのでは ないか。 二つ目は、「造形遊び」の価値創出的側面は、実践的研究 でも、理論的研究と同様に、尊重されていたことである。価値 生成的な活動であることに由来する「造形遊び」の評価の難 しさは、一部の専門性の高い教師たちによって、少なくとも言 語規定の面では、すでに乗り越えられているのではないか。 動的変化に富んだ「過程」や「つくり、つくりかえ、つくる」試行 錯誤の重要性は、このような言葉の中に軽やかに包摂され ている。今後は、ありふれた平易な表現の価値を見直し、集 積させてゆくことが望ましい。 三つ目は、やはり言葉である。今回形成した仮説を今後 どのように活用するかという問題は、言語の問題でもある。筆 者としては、文章や評価規準表によって、典型的な規準の例 を示すことは避け、個々の教師たちが評価で言葉選びに 迷ったときに頼ることができるような、テーマや語句に自らの 感覚による言語化が触発され、促されるような、枠組みづく りを行いたい。その際、事物や現象と言葉は厳密な対応関 係にないこと、言語化以前の領域と意味の世界との往還の 余地を残すこと、一つの語から受ける印象は人それぞれであ ることを強調してゆく。西野範夫が「個別の生命を生きる生 命体は、〈生命〉のはたらきを引き受け、それを深みに内包し、 常にそれとのかかわりあいを保ちながら、新たな環境、世界 に進んでかかわり、その変化に対応しながら、自己をつくり、つ くりかえるとともに、環境、世界をつくり、つくりかえながら生き ているのである。」26)と表現した「造形遊び」の学びが、安直な 言葉で捕捉されることがあってはいけない。しかし、その機 能上、ねらいや規準、観点は誰にでも分かる言葉で簡明に表 明される必要性もあり、ここに解決不能のジレンマが残され. ばれ、「価値」は「創出」との強い関連性を示している。本稿の 研究の背景に含まれる2-2.で検討したような、「造形遊び」の もつ意味や価値を創出する側面は、先行する実践的研究で も、注意を払われていたことが明らかとなった。データの別の 側面に目を転じると、「コップ」という単語を中心として、「角 錐」「三角柱」「円柱」「壁」「正三角形」といった多様な造形の 基本的単位が放射状に結びつき、「並べる」「積む」「崩れる」 のような「変形」を意味する言葉が紐づけられている。これら は、「造形遊び」の起源に構成遊びとしての要素があったこ とを想起させるとともに、動的な変化に富んだ「過程」の重要 性を浮上させる。加えて、これらと同じクラスターには「課題」 「解決」「試みる」という言葉が含まれている。「課題」と「解決」 の間の強い関連性は「課題解決」という概念を想起させる。 それは、作品を完成させることに重きをおかず、造形要素と 出会い、試行錯誤を通してその可能性を発見してゆく「造形 遊び」の特性を鮮やかに描き出している。他にも、「相互」と 「作用」が結ばれていることや、「楽しい」という語の頻出度の 高さなど、示唆に富む情報を得ることができた。. 5-2-3.クラスター分析と仮説構築について 表1「クラスター分析の結果と特徴語」は、「KH Coder」の クラスター分析機能を用いて、15~315回出現の抽出語を、 Ward法によって10個のグループに振り分けた結果である。 この分析の結果、分類不可の21語を除く語句1,796語がグ ループ化された。表1の「主な特徴語」は、各クラスターの特 徴語を検索し、上位に挙がった10語を左から順に入力した ものである。この段階ではまだ、「主な特徴語」から各クラス ターのテーマを抽出することが難しく、漠とした印象である。 特に、件数の少ないクラスターは特定のエピソードに偏っ た語が集まっていた。表2「『造形遊び』の評価に関わる語 句のテーマ抽出」は、表1の結果を踏まえて、件数の多い順 に上から並べ替え、さらに件数の少なかった表1の9と10の クラスターを分類不能扱いとし、8つにしたものである。これ は、定量的な分析結果に立脚して、筆者が構築した仮説を 表しており、筆者自身で「抽出語」を参照しながら、各テーマ を抽出した。表2の「抽出語」は、表1の「主な特徴語」と、クラ スターごとに作成した共起ネットワークの両方を検討して、 よりテーマ性の高いものを選び直している。 その結果、本研究では次のような仮説を得ることができ た。「造形遊び」の評価では、8つのテーマを念頭におきつつ、 指導のねらいや評価規準、評価の観点の言語化を図ること が有益である。そして、各テーマを構成する語彙は、表2の 「抽出語」を参考とすることができる。各テーマは、1.体全体 で味わう、2.世界との相互作用、3.材料や場所を生かす工 夫、4.関係を楽しむ、5.ダイナミックな変化、6.興味を高め発 想を引き出す、7.構成、8.意味や価値の創出、である。これら は、本論2-2.で取り上げた宇田による、①〈全身的な造形活. 042 [美術教育] No.304/2020. 043. 佐 藤. 絵 里. 子小 学. 校「 造. 形 遊. び 」の. 実 践. 例 に. お け. る ね. ら い. 、規 準. 、観 点. 、見 取. り に. よ る. 評 価. に 関. す る. 言 説. の 研. 究 ─. テ キ. ス ト. マ イ. ニ ン. グ を. 用 い. た 定. 量 的. 分 析. に 基. づ く. 仮 説. 構 築. ─ /. 研 究 論 文 :. 逃れることが困難であった。 今後の予定としては、今回構築した仮説と「造形遊び」の 理念との整合性や、いわゆる資質・能力や指導要録の4つ(3 つ)の観点との結合性の確保という問題がある。さらには、実 践的研究を通して、8つのテーマを軸とした仮説を現実の 「造形遊び」の授業計画に適用し、教師自身による言語化を 促すこと、および、共通理解に基づく専門家同士のコミュニ ケーションを促すことが課題である。本論の成果が、8つの テーマを軸として、教師自身が柔軟に「つくり、つくりかえる」、 指導と評価の実現に役立つことが期待される。. [謝辞]. 本研究はJSPS科研費 19K14254の助成を受けたものです。(若手研究:佐藤絵里 子「『造形遊び』の過程で育成される資質・能力のパフォーマンス評価モデルの開 発」日本学術振興会,2019年度交付開始). 註. 1) 昭和52年版小学校学習指導要領の表現領域に登場した「造形的な遊び」は、平 成元年の改訂において「造形遊び」と改称された。本論においては、便宜上「造形 遊び」の呼称で統一している。. 2) 宇田秀士「『造形遊び』の変遷—小学校学習指導要領図画工作編過去4回の改 訂を踏まえて—」『25年を経た「造形遊び」の功罪—<新たに切り拓いた道>と< 巻き起こした混乱・誤謬>—美術科教育学会第5回西地区会<研究発表会 in奈 良>概要集』, 奈良教育大学美術科教育第2研究室編,2013, p.3. 3) 阿部宏行「子どもの絵の発達と指導のあり方−図画工作の年間指導計画の実施 調査から−」『美術教育学』(第37号),美術科教育学会,2016,pp.17-18. 4) 阿部宏行,前掲書,p.4. 5) 宇田秀士「文部省・文部科学省小学校学習指導要領図画工作編『造形遊び』に 対する〈批評的彫琢〉の考察−“彫琢作業”をふまえた『造形遊び』について−」『美術 教育学』(第28号),美術科教育学会,2007,pp.67-87. 6) 同上,p.79. 7) 同上. 8) 同上,p.80. 9) 佐藤賢司、城野知佐「造形遊びにおける学びについての一考察−大学での授業 と小学校での実践から−」『教科教育学論集』(第6号),2007,pp.81-92. 10) 同上,p.81. 11) 同上. 12) 同上. 13) 同上. 14) 同上,p.82. 15) 文部科学省『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説図画工作編』,2019, p.26. 16) 宇田秀士「『新しい学力観』『生きる力』の時代の小学校図画工作科『造形遊び』 の内容−学習指導要領図画工作編平成元年版と平成10年版をめぐって−」『美術 教育学』(第26号),美術科教育学会,2005,p.104. 17) 文部科学省,前掲書,p.26. 18) 武藤智子、金子一夫「『造形遊び』の発生についての歴史的研究 (1)−教育課程 の改善、及び造形教育センター−」『茨城大学教育学部紀要(教育科学)』(第53号), 2004,pp.27-50,「『造形遊び』の発生についての歴史的研究 (2)−昭和52年発表図 画工作科学習指導要領の編成作業−」『茨城大学教育学部紀要(教育科学)』(第53 号),2004,pp.51-68,「『造形遊び』の発生についての歴史的研究 (3)−『行為の美術 教育』−」『茨城大学教育学部紀要(教育科学)』(第54号),2005,pp.39-58,「『造形遊 び』の発生についての歴史的研究 (4)−大阪教育大学教育学部附属平野小学校−」. 『茨城大学教育学部紀要(教育科学)』(第54号),2005,pp.59-77. ている。 さらに、仮説を実際の授業で活用する際には、表2「『造形 遊び』の評価に関わる語句のテーマ抽出」に掲載した8つの テーマと、本論の研究テーマを構成する「授業のねらい、指 導目標、評価規準、評価の観点、および見取り」との関係性を 問うことが有効である。例えば、テーマ「6.興味を高め発想を 引き出す」は授業のねらいや指導目標との関連性が高く、 「1.体全体で味わう」、「2.世界との相互作用」、「3.材料や場 所を生かす工夫」、「4.関係を楽しむ」、「5.ダイナミックな変 化」、「7.構成」、「8.意味や価値の創出」は、授業のねらい、指 導目標、評価規準、評価の観点、見取りのいずれとも相性が 良い。今後は、教師が自らの意図に応じて、8つのテーマ個々 に対して、あるいは取捨選択しながら、具体的な文言を付加 することによって、教師自身で「造形遊び」の目標、規準、観点 等を言語化することが期待される。. 6.結語. 本研究の目的は、先行する「造形遊び」の評価に関する実 践的研究を収集し、授業のねらい、評価規準、および見取り に関わる言説を対象としたテキストマイニングを実施し、概 念同士の関係性を定量的に明らかにすることであった。40 件を対象として、テキストマイニング分析のためのデータ収 集を行ったところ、合計72,828文字に上った。収集したデー タは、文を単位とし、先行する「造形遊び」の評価に関する実 践例の内、授業のねらい、指導目標、評価規準、評価の観点、 および見取りについて記述された箇所に概要する。調査の 結果、材料や場所、空間のような、新学習指導要領と関わり の深い言葉が多用されていたことや、「造形遊び」の価値創 出的側面は実践的研究でも考慮されていたこと等が明らか となった。また仮説構築を通して、「造形遊び」の評価では、 1.体全体で味わう、2.世界との相互作用、3.材料や場所を 生かす工夫、4.関係を楽しむ、5.ダイナミックな変化、6.興味 を高め発想を引き出す、7.構成、8.意味や価値の創出という 8つのテーマが重要であると考えられることが確認された。 研究の限界として、次のことを述べる。「造形遊び」に関す る先行文献は膨大な数に上ったため、検索語や検索方法 に制限を設けることで候補数を絞り、その中から、評価へ言 及のある実践的研究を選定した。調査対象から漏れた関 連度の高い文献が存在している可能性は否定できない。ま た、本論で筆者は、物や現象と言葉は厳密な対応関係にな いことを踏まえ、言語化以前の領域と意味の世界との往還 の余地を残す重要性を主張したが、現在のところ理想論の 域を出ていない。このジレンマについては、長い期間をかけ て考え続ける必要がある。加えて、表2「『造形遊び』の評価 に関わる語句のテーマ抽出」では、テーマ1「体全体で味わ う」の件数が573に上ったため、仮説構築に際して恣意性を. 044. A Discourse Study about Educational Aim, Criterion, Perspective, and Observational Evaluation in Practice Examples of Elementary School “Artistic Play Activities” : Hypothesis Building Based on Quantitative Analysis Using Text Mining. SATO, Eriko. This study aims to analyze previous studies written about evaluations of “artistic play activities” in Japanese elementary schools and build a hypothesis about educational aim, criterion, perspective, and observational evaluation. The author used text mining application software, “KH Coder,” as a method of quantitative analysis to elucidate frequencies of the words and word distribution, generate a co-occurrence network, and execute a cluster analysis. Because of this research, it became apparent that the words embedded in a new arts and crafts course, such as “material,” “place,” and “space,” were frequently used, and aspects of creating meanings and/or values in “artistic play activities” were significantly valued in the practice examples. Teachers should inherently utilize the hypothesis based on the outcomes of cluster analysis to ensure that their linguistic representation about educational evaluation is stimulated.. 19) 宇田秀士「小学校図画工作科における初期『造形遊び』の内容−学習指導要領 解説図画工作編昭和43年版と昭和52年版をめぐって−」『美術教育学』(第25号), 美術科教育学会,2004,pp.95-111,宇田秀士,前掲書,2005,. 20)国立教育政策研究所教育課程研究センター『評価規準の作成、評価方法等 の工夫改善のための参考資料(小学校 図画工作)』,2011. 21) 守屋建「図画工作科における汎用的資質・能力の育成に関する考察Ⅱ−造形 遊びでの事例を通して−」『美術教育学研究』(第50号),2018,pp.361-368. 22) 「特集Ⅱ新学習指導要領に向けた指導の在り方[図画工作]造形遊びの充実」 『初等教育資料』(第970号),2018,pp.50−72. 23) 「特集Ⅰ指導に生きる評価の考え方と実践」『初等教育資料』(第747号),東洋 館出版社,2013,pp.46−49. 24) その他に調査した項目は、(A)5年単位の出版年、(B)文献種別(論文、実践報告、 紀要論文、雑誌記事、レビュー論文、報告書、その他)、(C)「造形遊び」を主たるテー マとする文献であるかどうか、(D)「造形遊び」の評価への言及の有無、(E)「造形遊 び」の実践例の掲載の有無、(G)統計データの有無。. 25) 形態素解析によって切り出された語句をデータベース機能やグラフ理論、統 計的手法を用いて解析することである。牛澤賢二『やってみようテキストマイニ ング–自由回答アンケートの分析に挑戦!−』朝倉書店,2018. 26) 西野範夫「〈生命〉の表現と造形遊び」『教育美術』(第840号 ),公益財団法人教 育美術振興会,2012,6月号,p.49. 044 [美術教育] No.304/2020. 045. 佐 藤. 絵 里. 子小 学. 校「 造. 形 遊. び 」の. 実 践. 例 に. お け. る ね. ら い. 、規 準. 、観 点. 、見 取. り に. よ る. 評 価. に 関. す る. 言 説. の 研. 究 ─. テ キ. ス ト. マ イ. ニ ン. グ を. 用 い. た 定. 量 的. 分 析. に 基. づ く. 仮 説. 構 築. ─ /. 研 究 論 文 :

参照

関連したドキュメント

大学設置基準の大綱化以来,大学における教育 研究水準の維持向上のため,各大学の自己点検評

テキストマイニング は,大量の構 造化されていないテキスト情報を様々な観点から

本節では本研究で実際にスレッドのトレースを行うた めに用いた Linux ftrace 及び ftrace を利用する Android Systrace について説明する.. 2.1

学期 指導計画(学習内容) 小学校との連携 評価の観点 評価基準 主な評価方法 主な判定基準. (おおむね満足できる

瓦礫類の線量評価は,次に示す条件で MCNP コードにより評価する。 なお,保管エリアが満杯となった際には,実際の線源形状に近い形で

児童生徒の長期的な体力低下が指摘されてから 久しい。 文部科学省の調査結果からも 1985 年前 後の体力ピーク時から

部分品の所属に関する一般的規定(16 部の総説参照)によりその所属を決定する場合を除くほ か、この項には、84.07 項又は

本稿で取り上げる関西社会経済研究所の自治 体評価では、 以上のような観点を踏まえて評価 を試みている。 関西社会経済研究所は、 年