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<質疑応答>参加者からの質問を中心に 講評:井上果子先生

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Academic year: 2021

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参加者からの質問を中心に. Question-and-Answer Sessions. 【質疑応答】. 参加者からの質問を中心に. Question-and-Answer Sessions. 板橋先生の講演、桜永先生の指定討論の後、参. 加者との質疑応答が行われた。まず、事前に参加. 者から寄せられていた質問に対し、板橋先生が以. 下のように回答を提示された。. Q�.相手を自分のコントロール下に置こうとす. る人物をどのように理解したら良いか。また、. こういう人に巻き込まれやすい職員を、責任職. としてどう育成、対応したらよいか。. まず、個人を理解する文脈では、投影同一化や. 躁的防衛が背景にあることを理解していただける. と良いと思います。自分の病理の一部を相手に投. げ込んでしまう、あるいは深い抑うつ感に耐えら. れないので周囲や相手に対し支配的・軽蔑的な態. 度を取ることでその抑うつ感を防衛するというこ. とが起こりえます。また、桜永先生の事例にあっ. たように、自分が評価されていない、軽んじられ. ているということに対する憤怒、つまり「自己愛. 的憤怒」が背景に存在する可能性が考えられます. が、この場合、ある程度自己愛が満たされていな. い・確立していない場合、対応がより難しいこと. だと思います。集団についての理解からは、基底. 的想定でも他者操作が起こりうる、つまり《闘争. -逃走》基底的想定でのスケープゴーティングで. す。《つがい》基底的想定によってカップルから. 子どもが生まれ、自分たちが救われる、あたかも. 自分や自分たちが万能感になったかのような高揚. 感というものが現れることもありえます。これは. 躁的防衛の�つの表現型ですが、そういうもので、. 相手や他の集団より自分・自分たちが秀でている. という高揚感を得る、という形が起こりえます。. 《依存》基底的想定でも、万能なリーダーがメン. バーを支配しているようでいて、実はメンバー側. が、「リーダー、世話してくれ、これやってくれ、. あれやってくれ」と、無力なメンバーの方がリー. ダーのケアを引き出そうと操作しているという場. 合があり、これには気をつけていただきたいです。. 「見た目ではリーダーのほうが支配しているよう. でも実は逆」ということもあるので、リーダーば. かり責めるのは少し可哀相なこともあるかもしれ. ず、この辺を冷静に見極める必要があります。操. 作する側に対しても、巻き込まれる側に対しても、. その二人だけでなく、集団が全体として現実に向. き合う際の痛みに耐えられないSOSだ、とまず理. 解すること。そして「大丈夫、死にゃしないよ」. という安心感を保証し、集団全体がそれを抱えら. れるような、相互の成長につながることをめざす. のが集団精神療法でも組織運営という点でも課題. となりますし、そこが面白い点かなと思います。. 基底的想定・集団の文脈では、いかにも自己愛. 的な人(自己愛に関する病理を持っていそうな人). でなくとも、誰もが支配する/される人になりう. るということと、SOSだと理解してαにしてい. く、K連結を生み出せるような環境を目指してい. けたらいいのかなと思います。. Q�:保育士に感情をぶつけてくる保護者の対応. について. 先程話した鏡の話を思い出します。例えば、「自. 分に非はない・相手が謝るべきだ」という訴えは、. 「去年はいい先生だったのに、なんで今年はでき. ないのよ」というメッセージかもしれません。投. 影同一化の概念を思い出していただいて、一見、. 園や保育士に向けられている感情が、本当はどこ. 横浜国立大学大学院 教育学研究科 教育相談・支援総合センター 研究論集 第20号 2020年. −43−. 【質疑応答】. に向けられたものなのか。例えば、「他の人がで. きていることがなぜお前はできないのだ。お前が. 謝るべきだ。お前らにはがっかりだよ」という保. 護者の怒りはどこに向かっているものなのか、を. 考えることになります。「私はなぜこんなにでき. ないのかしら。みんなに謝らなければいけない、. 恥ずかしい、みっともない存在なんだ。ああ、も. う自分で自分にがっかり」という感情を抱えられ. ないと、周囲に不満や怒りの形で感情がぶつけら. れる、ということが起こりえます。これは、「人そ. れぞれ、様々な考えがあることを受け入れられな. い」からですが、その背景に、自分自身が愛され、. 認められ、受け入れられたという経験がない場合. には、自分と他者との区別というのがつかない。. 自分と他者とが分化していないと、人それぞれ考. えが違うということを認めるのは難しい。また、. 他職員に担任の不満を言って「あたしってなんて. 可哀想、あの担任ってなんて酷い」と訴える行動. は、担任を悪役にして他の職員を味方にする“お. 誘い”をかけている状態です。保育園の園児が保. 育士さんをおままごとに誘う場面を思い浮かべて. ください。その場合、子どもがママ、先生が犬役. を、いったんは引き受けることがありますが、だ. からといって、その役をずっと引き受け続けるこ. とはないですよね。この感情をいったんは預か. る、あるいは、その関係性を「こういうものを求. めているんだな」と理解はしようとするけれども、. ずっとその役を持ちっぱなし・引き受けっぱなし. でいる必要はないし、そうあるべきではない、と. 思います。この“お誘い”にどう対応するかという. と、これは《闘争-逃走》基底的想定グループに陥. りやすい状況のため、職員サブグループが、“お誘. い”をどう扱うかというところが、ディスカッショ. ンのテーマとなるかと思います。ピシャリとはね. つけるのではなく、かといって、おままごとのよ. うに犬になるでもなく、こういうことを押し付け. られてるのだなということをいったんは受け入れ. て、どうお戻しするかということになるかと思い. ます。. Q�:「対応に苦慮する保護者に対応する保育士. をどのように支えるか。職員の不安を取り除. き、自分事として一緒に考える職場づくりにつ. いて話したい」. とても素敵なことをおっしゃっておられます. ね。どう支えられるか、それと同時に、その案件. を自分ごととして考える、これが共感性ですが、. 「職場作りについて皆さんとお話ができたら嬉し. い」、と私もそう思います。不安や痛みに向き合. える、そういう風に他人・他職員が感じている不. 安を自分のようにとらえて、支え合っていける、. それが作動集団のあり方です。器に受け皿がある. といいな、と思うし、職員皆で職員皆の受け皿に. なれるといいなと思います。その不安を取り除こ. うとしなくていいのです。その職員の不安は、も. ともとは保護者から投げ入れられた不安ですが、. それを投げ入れられて不安になっている職員さん. のβ、そのβをみんなでαにして、それをその職. 員さんが保護者にお返しするという二層構造にな. ります。そういう方法で、いったん担任も器に受. け入れられて、その担任もいったんはその保護者. の器として受け入れ、(感情をαにして)お戻しす. る元気が育つように、ということを考えておりま. す。この辺の具体的あり方については、皆様と一. 緒に考えて行きたいと思います。. Q�:言葉のイメージが共有できない(共有でき. ないと感じる)人との接し方の注意点、および. 行動して欲しいことを伝える時の対応方法を知. りたい。. まず、実際に発達の偏りがある方については、. そもそもイメージが共有できないので、具体的な. 参加者からの質問を中心に. −44−. 言葉で図などを使って説明する、などが必要にな. る場合があります。ただおそらくこのご質問の文. 脈は、そういうことだけではないんだろうなと私. は解釈いたしました。健全で建設的な連結が生じ. ていないと、言葉のイメージを、発達の問題以外. の文脈で共有できないという事態は、しばしば起. こります。そういうときにK連結を思い出して. ください。相手を知ろうとして、先程の-K連結. が生じていないか、情緒から遠い知性化防衛が働. いていないか、自分を観察してみる。あとは知ろ. うとしたときになにか痛みを感じるのか、もっと. 知りたいと思うのか、そういう情緒に気付けるこ. と。それから負の能力。「どうしてもわからん、. 共有できない」、そういうこともあります。そう. いうことに耐えられる、持ちこたえる負の能力(ネ. ガティブ・ケイパビリティ)を意識されるといい. と思います。. また相手に行動してほしいときは、相手の混沌. を理解可能な形にして伝える必要がありますが、. とにかく簡潔なことばであること、また、主語を. 「自分は」にする。具体的には、「あなたは◯◯し. なさい」ではなく、「私はあなたにこうしてほしい. と思っている」「私はあなたが◯◯してくれると. とてもありがたい、嬉しい」などの、主語を自分. にした言い方で伝える。そうやって、いったん相. 手を受け入れた上で、自分と相手の区別をつける. 助けをする。自他の区別がつかない病態にあった. り、もともとそうでなくてもその水準に陥ってい. ると自他の区別がつかず、それによっていろいろ. 混乱することが起こるので、自他の区別をつける. お手伝いをすることが良いのかなと思っておりま. す。. Q�:職員の皆さんのマネジメントで悩むことが. 多いです。今回参加して、ヒントを探したいと. 思っています。. 私のお話より、皆様同士でセルフディベートの. 機能を働かせながら情報交換して頂く時間を取る. ことができれば一番いいのかなと思いながら、. しゃべりすぎてしまい、申し訳ございません。た. だ、私のお話の一部でも心の隅に留めていただい. て、ヒントにしていただければと思います。印象. に残ったことであったり、「ああ身につまされる」. と思うことであったり、逆に「何これ」と違和感. や引っ掛かりなどがあった場合、それを持ち帰っ. て味わっていただければと思っております。. Q�:個人の在り方と組織の在り方にはレベルが. それぞれにあり、お互いに関連していることを. 知りました。私たちの目指す所は、「連携よく. 学びを大切に成長し合う。主体的に挑戦し合う. 関係」ですが、個性あり考え方も違う個々人が、. 全体で同じ目標に向かって進める職場を作るた. めに大切にしなければならないことを学びたい. です。. これがまさに作動集団の特徴です。お互いに違. う個性を持ちながらも、�つの目標やタスクに向. かって協力しあえる、これが作動集団の目標です。. ということは、目標を実現するために自分の個性. や相手の個性がどの程度同じでどの程度違うの. か、観察自我を働かせる必要があります。一見集. 団の中で問題を起こす「問題児さん」を排除しよ. う、ではなく、その人が何かメッセージをくれて. るんだと思って、一緒に考えていける、そうやっ. て作動集団として成長していくことが期待されま. す。. Q�:近年、男性の保育士も増えてきました。男. 性と女性とで精神構造や思考に多少の違いがあ. ると思いますが、対話する際、気を付けること. や、良好な関係を築くコツがあれば知りたいで. す。. 横浜国立大学大学院 教育学研究科 教育相談・支援総合センター 研究論集 第20号 2020年. −45−. 私もいろいろとコメントをしようと考えまし. た。「男女の精神構造の違いを聞きたいのかな」. それとも「対話する際のコツや関係構築のコツを. 聞きたいのかな」、それは男性保育士ならではの. ことなのか、それとも男性職員と女性保護者、男. 性職員と女性職員…ということに限らず、人間理. 解全般に対することなのかな、と、どこか�つを. 想定して回答してしまうと、今度は質問者の意図. とどんどんずれて-Kになってしまいそうな気が. いたしまして…。男性脳と女性脳の違いを私がこ. こで延々として-K連結になるというようなこと. にならないように、ご質問の意味を一緒に吟味し. て、職員・保護者の中には男性もいらっしゃれば. 女性もいらっしゃる、そういう意味も吟味して、. その中で集団を理解し組織運営を進めていく、こ. れはみなさんと一緒に考えながらK連結をつな. げていく、そういうご質問を頂いたのかなあと思. いました。. 自由にディスカッションする時間がかなり限ら. れていたが、会場の参加者に質問を投げかけた。. 参加者:今お話を聞かせていただいて、10年前か. ら井上先生と一緒に取り組んできたことが、あ. あなるほどこういう理論があって井上先生がア. ドバイスしてくださったんだなって、今日10年. 目にして分かりました。そのとき私達は言われ. たものを必死でやっていたのですが、今それが. こういう理論があったんだと思い、なるほどと. 思い聞かせてもらいました。. それを踏まえて、どこの保育園にもあると思. うことを質問させていただきます。一人の保護. 者が特定の保育士に対して威圧的であったり、. クレームを訴えるケースです。定期的に爆発さ. れるので、きっかけは些細なことなんですが. きっと根本にいろいろ今までのことがあったん. だろうなと思いますし、そのときのターゲット. がたまたま担任であったと捉えています。た. だ、さきほどの鏡ではないですけれども、よく. よく考えると、同じような病理ではないですけ. れども、スタッフ側にも言われやすい方がいる。. 今回は、まず担任への直接の訴えがあり、帰宅. 後に園への電話があって別のスタッフが対応し. た。翌日、それを聞いた園長である私が、保護. 者に連絡すると、「私は今忙しいので。もうそ. のことはいいです」とピシャっと断ち切られた. ので、その場で「ああ〜…もうこれは今触らな. いほうがいいな」と引きました。その後、園全. 体での対応を考えて相談した際に、「今はその. 人はそういう状態なので、園として敢えていま. 対応しなくていいんじゃないか」ということを. 伝え、また、シフトでいろいろな職員が対応す. るので、クレームに関しては管理職が対応する. という形で園全体の方針が決まりました。. けれどもどうも、クレームを言われた担任が. 「このままでは嫌だからきちんと謝りたい」と. 言うため、私も悩みましたが、結局許可した所、. やはりまたそこで再発してしまった…(会場か. ら「あ〜」とため息と笑い)。「あなたに別に謝っ. てほしくない」と言われてしまった。このよう. な経緯があって、現在はもう、そのままにして. おこう、これ以上のことがあれば私になにか. 言ってくるから、絶対大丈夫だよ、そのままで. いいですよ、と伝えている。今は組織はまあま. あ落ち着いている状態で、その保護者も担任以. 外の職員に対してはすごく普通に話ができる。. それが逆に広がってしまうと困るので、このま. までいいですという状態なのです。. ただ、今はいいのですが、これから先、園長. として、組織の管理者として、今の状態は保た. れてはいるけれども根本的な解決になっている. のかという点で、これからどのようにしていっ. 参加者からの質問を中心に. −46−. たらいいのか、どういった点で着地点、解決点. を見つけていったらいいのかというところで、. アドバイスをいただけたらと思います。. 板橋先生:ご質問ありがとうございます。一番安. 全な方法をお取りになられたと思いますし、保. 護者の方は特定の職員、担任の先生と関わるこ. とで怒りが触発されやすい、それが何によるも. のかわからないけれども、そこを距離をとられ. た方が、集団は安定が保たれる。わからないも. のをわからないままにすることに耐えながら、. 一旦そこは過ごすことができる。けれども、担. 任の先生の気持ちは収まりがついていない。そ. ういうときに、おそらくは園長先生になると思. われますが、担任の先生のお話しを聞いていく. 中で、保護者に直接気持ちを伝えられない、そ. の「このままでは自分が収まりがつかない」と. いう気持ちの受け皿として機能する。そうして. いるうちに、卒園してしまうと、解決されない. ままに終わってしまうこともあります。その場. 合、その集団全体、園長先生と担任と園全体、. 集団全体とその保護者が、「もしかしたらそこ. で直接対決できたら解決できたかもしれない」. という気持ちが出てくると思います。ただ、「直. 接対決したら解決したかもしれない」というこ. と自体、現実的な希望かかなわない希望か、と. いうこともアセスメントすることになります。. そして、「対決したほうがいいのか」、それとも. 「知らないままにしたほうがいいのか」を考え. て次につなげていく、痛みや経験知としてつな. げていくことになります。そこの見極めという. のも、どなたかお一人で抱えるのではなく、そ. ういう考え方もありなんだという逃げ道は残し. ておく、ということが、私はありうることでは. ないかと思います。実際にキンダーカウンセリ. ングに関わっていらっしゃる方のご意見も参考. にしていただけたらと思います。. 山田先生:今の板橋先生のお話は、「曖昧さ」を抱. えておける組織、個人の「曖昧さ」を抱えてい. けるということ、具体的には例えば、それを集. 団の中で話し合えるということ、に繋がるかと. 思います。でもやはり耐えられないわけです. ね。というのは曖昧さというのはすごく気持ち. の悪いものなので。それを集団でフォローしあ. いながら、組織としてやっていけるということ. に繋がる、そうすると、必ずしも謝らなくても. いい場合がある。この場合ですと、謝らないほ. うがいいかもしれない。ということを連想しな. がら、聞いておりました。. 杉山先生:ちょっと口を挟んでよいですか?いま. 先生方のお話を聞いていて思ったのは、「『根本. 的解決』というのは基本的に無い」と思った方. がいいということです。保育園はいろんな人が. いて、いろんなものを持ち込んでくる場なので、. 根本的解決は無い=救世主はいない、という前. 提です。むしろ、いつも何かしらの痛み(傷み). であったり、不具合がある、それを大きく暴走. させずに、皆で役割分担しながら、小康状態で. ひとまず前に進んでいけるという状態が作業集. 団だと思うのです。ですから、根本的解決が無. いと思っている方が�つの健康さであり、ネガ. ティブ・ケイパビリティの最も大事なところか. なあと。みんなスッキリしたいんですよね。何. かあった時に、「さっさと片付けて、じゃあ次い. こう」となりたいんだけれども、そうもいかな. い。そこをみんなで支え合ってどう作っていけ. るかということも、健康な組織であり強力な組. 織であるという考え方です。みんなで傷みをわ. けあって、ちょっとずつ我慢して、凌いで凌い. でいく。凌げる程度の傷みをみんなで確認し、. ちょっとずつ分担して、今は私が、これはあな. たがお願いね、という形で上手にできることが. 健康な集団かなということを思いました。子育. 横浜国立大学大学院 教育学研究科 教育相談・支援総合センター 研究論集 第20号 2020年. −47−. て、保育の現場は特にそうだと思いますが、思っ. たようにいかないことが多い中で、凌いで継続. して行くことが、回り回って、お子さん自身の. 成長を支える保育や、お子さんを育てる保護者. の皆さんへの支援に繋がるのが次のステップか. なと思います。. 〇講評:井上果子先生. General Comment. 最後に、本企画の責任者である井上先生から、. 講評が述べられた。. 先生方長時間、ありがとうございました。板橋. 先生、桜永先生、ご質問いただいた先生ありがと. うございました。�時間、お疲れさまでした。さ. きほどのご参加の先生からのご質問ですが、既に. 先生方からもお答えがありましたが、「曖昧さを. 引き受ける」、ネガティブ・ケイパビリティを作る. ということ、これは、園長−副園長−主任、とい. う管理職にとってとても大事なことだと思いま. す。そこに、もう一つ、日本というのは「謝りの. 文化」だと思うんです。“すみません、失礼しまし. た、ごめんなさい”の連続。先ほどの質問につい. て私も考えたのですが、�分間での回答は、園長. が「謝らない」・「謝らせない」・「謝らないことで. 生じる罪悪感を抱える」ということです。なぜ保. 育士が謝るか。それは謝った方が楽だからです。. 謝らないことで生じる罪悪感を抱えられないので. す。でも、そもそも抱えなくていい罪悪感、不必. 要な罪悪感です。よくあるのは、怪我をしたら謝. れということ。怪我は子どもにとって大事な大事. な経験です。先生方にはいつも、「謝ることで子. どもの大事な経験を剥奪するのか」と、ある意味. 逆説的な問ですが、“脅迫”をしているんです。以. 前、何人かの先生方には申し上げたんですが、今. 福島で起こっていることとして、子どもが転ぶと. きに、顔から転ぶ、手をつかないんだそうです。. それはなぜか。転んだ経験がないから。転ぶこ. と、怪我することが大事な経験である証拠です。. だから怪我させたくらいで謝らない。健康な親御. さんには謝っていいんですよ、何やったっていい. んです。だけど「転んで怪我してこうしてこうな. りました、わっはっは」「あーよかったね」という、. このやり取りが普通だと思ってほしいのです。. 「怪我するという小さな転びを許さない」という. のは、やっぱり不自然ですよ。そして、謝らない. と気がすまない保育士をどう園長が抱えるか、そ. れが先生方の腕の見せどころではないでしょう. か、という思いをもって聞いておりました。. そしてもう一つ、今先生方がおっしゃったこと. でとても大事なことがありました。そこにちょっ. と付け加えるとすると、やはり、「(病理の)重い人」. の共通点・特徴として「全く見通しがつけられな. いこと」が挙げられます。先程から「想定」「見通. し」などという話が出ておりますが、「見通しがつ. けられない」と、相手の立場で物事が見えない。. それと、さきほど、最初に板橋先生が書いておら. れた goodとbadってありましたよね。あれがな. にかというと、アルプス山脈の天地だと思ってく. ださい。こっちでは吹雪で嵐であり、あっちでは. 晴天である、そしてこっちとこっちに連続性が無. いのです。だからすごく酷い失礼なことを言いな. がら、次の日にはまったく違う良いお母さんにな. る、謝りもなく。そういうような、こないだのあ. れはなんだったの?というようなことがあると思. うんです。そこら辺をイメージしながら「ふりま. わされないでいる」ことの大事さを、先生方がおっ. しゃったんだと思います。これは、我々が査定す. るときに、あるいは保育園の先生方に何か申し上. げるときに、今日の講演でお話しいただいた理論、. これが裏にあったということなんです。精神分析. 的オリエンテーションをもった臨床心理士は、向. こうが何をしゃべったかではなく、こちらが何を. 参加者からの質問を中心に. −48−. しゃべったかで向こうがどう変化したかを見てい. る。だからこっちが何をしゃべったかということ. がすごく大事になります。どういう風に我々がも. のごとを見ているか、その入口です。ほんの入口。. でもここを一緒に勉強しませんか、関心のある方. は一緒に来て勉強しませんか、というオファーな. んです。先生方と一緒に学びたい。先生方にはす. でに実績がおありなので、我々の理論がどう通用. するのかを知りたい。精神分析は治療だけじゃだ. めなんです。やはり現場にいって、先生方のサ. ポートをするのも精神分析だと思っています。. 我々が何をしたいか。板橋先生の講義にあった受. け皿、皿の皿の皿、地べたを這うような皿になれ. たらと思っております。. 長らくのご清聴、ありがとうございました。(拍手). 横浜国立大学大学院 教育学研究科 教育相談・支援総合センター 研究論集 第20号 2020年. −49−

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