博士課程用(甲)
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(様式4)
学 位 論 文 の 内 容 の 要 旨
( 内田 慎也 ) 印
Differences in heart rate variability may be related to the appearance of postoperative pain in patients undergoing breast cancer surgery
(心拍変動解析の差異が乳癌患者の術後痛の出現に関連している可能性がある)
(学位論文の要旨)
1) 研究の背景と目的
疼痛発現の予測が出来れば、疼痛発現前より鎮痛薬投与を開始するなどの方法を行うことができる。このため術 後疼痛の管理が容易となり、患者にとっても医療者側にとってもメリットがある。心拍変動(Heart Rate Variability: HRV)は、心電図のRR間隔の時間変動を指し、HRV解析は自律神経機能の活動性の指標として広 く利用されている。また、痛みは自律神経活動を介してHRVに影響を及ぼしているといわれている。以上の報 告より、周術期のHRV解析評価は術後痛の有用な指標となる可能性が示唆された。更に、今までに麻酔覚醒後 のHRVを測定し、術後数時間後の術後痛出現を予測できたという報告はない。そのため、今回我々は、術後早 期のHRVを解析することで数時間後の疼痛発現の予測が可能であるかどうかを検討した。
2) 研究方法
本研究は群馬県立がんセンターの倫理委員会の承認を得てUMIN登録の後に実施された(UMIN000023285)。 2015年から2016年まで当院での同意が得られた乳癌に対する乳房切除術を受けた患者82人を解析対象とした。
手術終了後に回復室に入室した直後に、HRVおよび数値評価スケール(Numerical Rating Scale: NRS)を記 録した。この中から回復室入室直後にNRS≦2の疼痛の訴えが無い患者を抽出した。これらの患者を、入室直 後~12時間後も痛みを訴えずに鎮痛薬を必要としなかった群(A群16名)と、約1時間後までに痛みを訴えて疼 痛治療を開始した群(B群:4名)に分けた。それぞれの群で、回復室入室直後、および2時間後のHRVを測定し、
周波数領域解析を行った。この中で、低周波数帯域パワー(low frequency power of R-R interval: LF)/高周 波数帯域パワー(high frequency power of R-R interval: HF)比(LF/HF)およびHFを統計学的解析対象と し、また同時に記録したNRSも2群間で統計解析した。統計解析にはマン-ホイットニーのU検定を行い、
p<0.05を有意水準として2群間での比較検討を行った。
3) 結果
麻酔時間のみA群が有意に長かったが(p=0.038)、その他の患者背景では有意差は認められなかった。PACU 入室時は、A群、B群ともに入室時のバイタルとNRS(p=0.169)に有意差がなく、かつPACU入室時の疼痛の 訴えは両群とも認めなかった。しかし一方で、HFはB群で有意に上昇し(p=0.016)、LF/HFはB群で有意に低下 していた(p=0.016)。1時間後のNRSでは有意にB群が上昇し(p=0.005)、B群に鎮痛薬を使用した後、入室2時 間後のNRSには両群に有意差はなく(p=0.292)、HF(p=0.621)、LF/HF(p=0.603)にも有意差が無かった。
4) 結語
術後2時間後の鎮痛薬投与後ではHRV、NRSともに有意差が無く、麻酔覚醒直後のHRV解析では、術後疼痛の 出現との関連性が認識された。HRV解析を行うことによって、有効な術後鎮痛手段を早期に開始できる可能性 がある。