Vol.
46
イー・ワールドプレミアム
中国共産党の第19回党大会は、新最高指導部人事を決めた。
「習近平後」を占う次のリーダー像は見えず、権力の集中を図る
習総書記の「一強」ぶりが際立った。2期目の習政権は「米国に代
わる超大国」として、戦後欧米が築いた価値への挑戦を図ること
が予想される。国際社会は、そして日本は「習一強中国」にどう対
峙すべきか―。写真は、党大会の開幕を伝えるテレビ画面に向け
て中国の国旗を振る安徽省淮北市の大学生たち (AFP=時事)
cover story
Economy
冬に現れる幻のアーチ橋
有島 康 時事通信社映像センター写真部専任部長
in sight
国別好感度調査
Cyber Intelligence
首相改善に意欲も対中好感度低迷
櫻田 玲子 時事通信社外信部記者
西川 恵 毎日新聞社客員編集委員
高岡 秀一郎 時事通信社外経部記者
真壁 昭夫 法政大学大学院教授
池滝 和秀 アルアハラム政治戦略研究所客員研究員
中銀が仮想通貨を発行する日
既存通貨に取って代わる?
多国間主義追求するユネスコを守れ
米の脱退が意味するものとは
イージス事故の背景にサイバー攻撃説
北朝鮮か? 最強の軍艦の思わぬ弱点
台頭イランに対抗、イスラエル・サウジが連携強化
北朝鮮「核保有国」認定なら中東核ドミノ誘発
IMFが迫る構造改革
金融依存のアベノミクス、成長中心に転換を
日本の料理人は覚醒を
生産者との協働・社会的責任で立ち遅れ
e-World Premium Vol.46 INDEX
(写真はAFP=時事、EPA=時事、時事)
UNESCO
GEO
ECONOMY
48
42
38
54
58
64
68
4
習一強時代
特集 I
24
12
8
胡、陳両氏が「セブン」入りしなかった事情
最高指導部人事、習氏の完勝成らず
遠藤 乾 北海道大学大学院教授
18
強硬外交、技術革新大国のイメージ損ねる?
習主席が強調する「業績」、その実態とは
高口 康太 ジャーナリスト
「大国中国」奏でた習演説
目をつぶれない「楽屋裏」の現実
津上 俊哉 津上工作室代表
西村 哲也 時事通信社外信部副部長
民主主義の根本問うカタルーニャ問題
EUの限界も露呈
32
カタルーニャ「独立」の行方
現地で見た歴史的瞬間
田澤 耕 法政大学国際文化学部教授
Middle East
カタルーニャと21世紀の民族自決
特集 II
湯淺 墾道 情報セキュリティ大学院大学教授
近藤 誠一 近藤文化・外交研究所代表(元文化庁長官)
Vol.
46
イー・ワールドプレミアム
中国共産党の第19回党大会は、新最高指導部人事を決めた。
「習近平後」を占う次のリーダー像は見えず、権力の集中を図る
習総書記の「一強」ぶりが際立った。2期目の習政権は「米国に代
わる超大国」として、戦後欧米が築いた価値への挑戦を図ること
が予想される。国際社会は、そして日本は「習一強中国」にどう対
峙すべきか―。写真は、党大会の開幕を伝えるテレビ画面に向け
て中国の国旗を振る安徽省淮北市の大学生たち (AFP=時事)
cover story
Economy
冬に現れる幻のアーチ橋
有島 康 時事通信社映像センター写真部専任部長
in sight
国別好感度調査
Cyber Intelligence
首相改善に意欲も対中好感度低迷
櫻田 玲子 時事通信社外信部記者
西川 恵 毎日新聞社客員編集委員
高岡 秀一郎 時事通信社外経部記者
真壁 昭夫 法政大学大学院教授
池滝 和秀 アルアハラム政治戦略研究所客員研究員
中銀が仮想通貨を発行する日
既存通貨に取って代わる?
多国間主義追求するユネスコを守れ
米の脱退が意味するものとは
イージス事故の背景にサイバー攻撃説
北朝鮮か? 最強の軍艦の思わぬ弱点
台頭イランに対抗、イスラエル・サウジが連携強化
北朝鮮「核保有国」認定なら中東核ドミノ誘発
IMFが迫る構造改革
金融依存のアベノミクス、成長中心に転換を
日本の料理人は覚醒を
生産者との協働・社会的責任で立ち遅れ
e-World Premium Vol.46 INDEX
(写真はAFP=時事、EPA=時事、時事)
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GEO
ECONOMY
48
42
38
54
58
64
68
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習一強時代
特集 I
24
12
8
胡、陳両氏が「セブン」入りしなかった事情
最高指導部人事、習氏の完勝成らず
遠藤 乾 北海道大学大学院教授
18
強硬外交、技術革新大国のイメージ損ねる?
習主席が強調する「業績」、その実態とは
高口 康太 ジャーナリスト
「大国中国」奏でた習演説
目をつぶれない「楽屋裏」の現実
津上 俊哉 津上工作室代表
西村 哲也 時事通信社外信部副部長
民主主義の根本問うカタルーニャ問題
EUの限界も露呈
32
カタルーニャ「独立」の行方
現地で見た歴史的瞬間
田澤 耕 法政大学国際文化学部教授
Middle East
カタルーニャと21世紀の民族自決
特集 II
湯淺 墾道 情報セキュリティ大学院大学教授
近藤 誠一 近藤文化・外交研究所代表(元文化庁長官)
冬に現れる幻のアーチ橋
かつて北海道東部を走っていた士幌線のコンクリート橋「タウシュベツ川橋梁」。
ダム 建設のため移設され、残った橋は水没や凍 結で崩壊が進み現在の姿に。
冬になるとダムの水位が減って姿を現すため、多くの鉄 道ファンや 観 光客を
引き付けている。 (映像センター写真部専任部長 有島 康)
in sight
China
とはできなかった。
習
氏
と
し
て
は、
党
大
会
で
権
力
集
中
に
成
功
し
大
き
な
勝
利
を
収
め
た
も
の
の、
有力な
「手駒」
が少なかっ
た
こ
と
か
ら、
人
事
面
で
完
勝
と
は
な
ら
な
か
っ
た。
こ
の
た
め、
任
期
途
中
の
2、
3
年
後
に
指
導
部
人
事
で
何
ら
か
の
手
を
打
っ
て
く
る
可
能
性がある。
「2階級特進」なし
中
国
共
産
党
は
10月
18日
か
ら
24日
ま
で
第
19回
全
国
代
表
大
会
を
開
催
し
た
上
で、
25日
の
第
19期
中
央
委
第
1
回
総
会(
1
中
総
会
)
で
習
総
書
記
を
再
選
す
る
と
と
も
に、
政
治
局
員、
政
治
局
常
務
委
員
を
選
出
し
た。
最
高
指
導
部
を
構
成
す
る
常
務
委
員
は
こ
れ
ま
で
と
同
様
に
7
人。
習
氏
と
ナ
ン
バ
ー
2
の
李
克
強
首
相
は
再
任
で、
1
期
目
の
政
治
局
員
か
ら
5
人
が
新
た
に
常
務
委
入
り
し
た。
中
央
委
員
か
ら
の「
2
階
級
特進」はなかった。
新常務委員は序列順
(3
~
7
位
)
に、
党
中
枢
の
事
務
を
取
り
仕
切
る
中
央
弁
公
庁
の
栗
戦
書
主
任、
お
よ
び
汪
洋
副
首
相、
党
中
央
政
策
研
究
室
の
王
滬
寧
主
任、
党
中
央
組
織
部
の
趙
楽
際
部
長、
上海市党委の韓正書記。
1
中
総
会
で、
王
氏
は
幹
事
長
に
当
た
る
党
中
央
書
記
局の常務書記、
趙氏は「反
腐
敗
闘
争
」
で
高
官
の
不
正
を
取
り
締
ま
る
党
中
央
規
律
検
査
委
書
記
に
転
じ
た。
王
氏
は
宣
伝
工
作
も
担
当
す
る
とみられる。
序
列
か
ら
み
て、
来
春
の
全
国
人
民
代
表
大
会(
全
人
代
=
国
会
)
な
ど
で、
栗
氏
が
全
人
代
常
務
委
員
長(
国
中
国
共
産
党
の
習
近
平
総
書
記(
国
家
主
席
)
2
期
目
の
指
導
部
が
発
足
し
た。
1
期
目
の
政
治
局
に
習
氏
の「
子
飼
い
」
は
皆
無
だ
っ
た
が、
新
政
治
局
員
は
25人
の
う
ち
11人
と
半
分
近
く
を
習
派
が
占
め、
圧
倒
的
な
勢
力となった。
し
か
し、
政
治
局
の
中
核
で
あ
る
常
務
委
員
会(
い
わ
ゆ
る
チ
ャ
イ
ナ
セ
ブ
ン
)
の
新
メ
ン
バ
ー
は、
胡
錦
濤
前
総
書
記
や
江
沢
民
元
総
書
記
に
重
用
さ
れ
た
人
物
ば
か
り
で、
習
氏
の
直
系
は
1
人
も
入
ら
ず、
指
導
部
内
で
有
力
長
老
2
人
の
間
接
的
影
響
力
を
払 ふっしょく
拭
す
る
こ
8
西村哲也
時事通信社外信部副部長
最高指導部人事、習氏の完勝成らず
胡、陳両氏が「セブン」入り
しなかった事情
特集 I 習一強時代
会
議
長
に
相
当
)、
汪
氏
が
国
政
諮
問
機
関
の
人
民
政
治
協
商
会
議(
政
協
)
主
席、
韓
氏
が
常
務
副
首
相
に
就
任
す
る可能性が高い。
胡系、江系
バランスに配慮、
規律担当は中立系
5人のうち、
栗、
汪、
韓
の
3
氏
は
胡
錦
濤
氏
や
李
克
強
氏
と
同
じ
く
若
手
エ
リ
ー
ト
組
織
の
共
産
主
義
青
年
団
(
共
青
団
)
出
身。
共
青
団
派
(
団
派
)
は
近
年、
政
治
的
地
盤
沈
下
が
進
み、
今
回
の
人
事
で
も、
定
年
前
の
李
源
潮
国
家
副
主
席
と
劉
奇
葆
党
中
央
宣
伝
部
長
が
政
治
局
員
を
退
任
し
た
が、
そ
の
一
方
で、
団
派
出
身
者
は
政
治
局
常
務
委
7
人
中
4
人
と
過
半
数
を
占めた。
栗、
汪
の
両
氏
は
胡
氏
に
抜
て
き
さ
れ
た
団
派
の
有
力
者。
胡
総
書
記
時
代
に、
栗
氏
は
総
書
記
を
支
え
る
中
央
弁
公
庁
主
任
に
起
用
さ
れ、
汪
氏
は
閣
僚
級
ポ
ス
ト
わ
ず
か
4
年
の
キ
ャ
リ
ア
で
政
治
局員に昇進した。
一
方、
韓
氏
は
団
出
身
だ
が、
上
海
勤
務
が
長
く、
上
海
閥(
江
沢
民
派
)
に
属
す
る
と
み
ら
れ
て
き
た。
上
海
の
国
際
政
治
学
者
か
ら
理
論
官
僚
に
転
向
し
た
王
氏
も
上
海
閥
の
一
員。
江
氏
直
々
の
指
示
で
上
海
か
ら
北
京
に
呼
ば
れ
た
エ
ピ
ソ
ー
ド
を、
中
国
共
産
党
系
の
香
港
紙
が
紹
介したことがある。
つ
ま
り、
新
常
務
委
に
は、
胡
氏
系
と
江
氏
系
が
そ
れ
ぞ
れ
2
人
入
っ
た
こ
と
に
な
る。
今
回
の
党
大
会
で「
1
強
」
体
制
を
強
化
し
た
習
氏
だ
が、
最
も
重
要
な
常
務
委
人
事
で
は
政
治
的
バ
ラ
ン
ス
に
か
な
9
中国共産党の新たな最高指導部。左から韓正、王滬寧、栗戦書、習近平、李克強、汪洋、趙楽際の各氏(10月25日、AFP=時事)
China
り配慮したようだ。
こ
れ
ら
の
4
人
は、
派
閥
色
が
比
較
的
薄
い
と
い
う
共
通
点
が
あ
る。
胡
氏
や
李
克
強氏が団中央のトップ
(第
1
書
記
)
だ
っ
た
の
に
対
し、
栗、
汪
の
両
氏
は
団
の
地
方
幹
部
出
身。
団
で
胡
氏
ら
と
共
に
働
い
た
こ
と
は
な
い。
韓
氏
は、
胡
総
書
記
時
代
に
上
海
閥
の
ホ
ー
プ
だ
っ
た
陳
良
宇
上
海
市
党
委
書
記
が
反
腐
敗
で
打
倒
さ
れ
た
事
件
に
連
座
せ
ず、
う
ま
く
立
ち
回
っ
て
生
き
延
び
た。
王
氏
は
理
論
官
僚
と
し
て、
江、
胡、
習
の
3
総
書
記
に
仕
え
て
き
た。
こ
の
た
め、
4
人
は
習
氏
に
と
っ
て
外
様
な
が
ら、
受
け
入
れ
や
す
く、
こ
の
5
年
で
習
氏
か
ら
一
定
の
信頼を得たと思われる。
も
う
1
人
の
趙
氏
は、
団
派
で
も
上
海
閥
で
も
太
子
党
(
高
級
幹
部
子
弟
)
で
も
な
い
の
に、
地
方
官
僚
と
し
て
猛
烈
な
ス
ピ
ー
ド
で
昇
進
し
た
謎
の
経
歴
を
持
つ。
出
世
し
た
の
が
胡
総
書
記
時
代
だ
っ
た
た
め、
香
港
メ
デ
ィ
ア
で
は
胡
氏
に
近
い
と
い
わ
れ
て
き
た
が、
新
常
務
委
員
の
中
で
は
最
も
政
治
的
位
置
付
け
が
は
っ
き
り
し
な
い。
高
官
を
粛
清
す
る
強
大
な
権
限
を
持
つ
規
律
検
査
委
書
記
に、
有
力
視
さ
れ
て
い
た
栗
氏
で
な
く
趙
氏
が
起
用
さ
れ
た
の
は、
こ
う
し
た「
中
立
性
」
が理由かもしれない。
キャリアの差
党
大
会
人
事
の
焦
点
は、
「
ポ
ス
ト
習
近
平
」
を
担
え
る
50代
の
指
導
者
が
政
治
局
常
務
委
入
り
す
る
か
ど
う
か
だ
っ
た。
下
馬
評
で
は、
習
氏
直
系(
浙
江
人
脈
)
で
重
慶
市
党
委
書
記
の
陳
敏
爾
氏
10
北京で、中国共産党大会の重慶市代表団の討論会に
出席した陳敏爾・同市党委書記(10月19日、時事) 北京での会議に出席する胡春華・広東省党委書記(10月19日、時事)
特集 I 習一強時代
続きは本編をご覧ください
と、
団
派
の
ホ
ー
プ
で
広
東
省
党
委
書
記
の
胡
春
華
氏
の
名
前
が
挙
が
っ
て
い
た
が、
陳
氏
は
政
治
局
員
に
な
り、
胡
春
華
氏
は
政
治
局
員
にとどまった。
胡
春
華
氏
は
こ
の
世
代
の
指
導
者
の
筆
頭
格。
世
間
で
「
ミ
ニ
胡
錦
濤
」
と
い
わ
れ、
胡
錦
濤
氏
に
か
わ
い
が
ら
れ
て
き
た。
経
歴
か
ら
言
っ
て、
常
務
委
員
に
な
る
資
格
は
十
分
あ
っ
た
が、
自
派
の
拡
大
と「
1
強
」
体
制
づ
く
り
を
進
め
る
習
氏
と
し
て
は
当
然、
認め難い。
そ
の
対
抗
馬
と
し
て
注
目
さ
れ
た
の
が
陳
氏
だ。
し
か
し、
既
に
5
年
も
政
治
局
員
を
務
め
て
い
る
胡
春
華
氏
と、
約
2
0
0
人
も
居
る
中
央
委
員
の
1
人
で
し
か
な
い
陳
氏
で
は、
キ
ャ
リ
ア
に
差
が
あ
り過ぎる。
2
0
0
7
年
初
め
の
時
点
で
若
手
筆
頭
だ
っ
た
李
克
強
氏
と
習
氏
も
似
た
よ
う
な
関
係
に
あ
っ
た。
そ
の
後、
習
氏
は
上
海
市
党
委
書
記
を
短
期
間
務
め
る
こ
と
で、
李
氏
と
の
キ
ャ
リ
ア
を
縮
め、
2
人
同
時
に
常
務
委
入
り
し
た
段階で序列を逆転させた。
し
か
し、
陳
氏
と
胡
春
華
氏
の
差
は
こ
の
2
人
よ
り
は
る
か
に
大
き
い。
習
氏
が
陳
氏
を
無
理
や
り
常
務
委
に
引
き
上
げ
れ
ば、
胡
春
華
氏
も
昇
格
さ
せ
な
く
て
は
な
ら
な
く
な
り、
し
か
も、
序
列
は
胡
春
華
氏
が
上
に
な
る。
こ
れ
を
逆
転
さ
せ
る
力
は、
習
氏
に
は
ま
だ
無
か
っ
た
よ
う
だ。
後
継
者
候
補
が
常
務
委
員
に
な
ら
な
か
っ
た
こ
と
で、
結
果
的
に
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最高指導部
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