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< 図表 1 > 高崎経済大学附属高校学校改革プラン < 図表 2 > 2011 年度高大コラボゼミ 高経クラスの活動 4 月 19 日 コラボゼミ 第 1 回 4 月 26 日 コラボゼミ 第 2 回 5 月 17 日 コラボゼミ 第 3 回 5 月 31 日 コラボゼミ 第 4 回 6 月 12

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「高大コラボゼミ」などの高大連携活動を通じて

大学での学びの面白さを知る

理系のキャリア教育はSSHを軸に して展開すればよいが、文系でも 生徒の進路意識を高めるために、 単発の行事ではない、理系の実 験・実習に当たる取り組みができ ないか」と考えるようになった。  そこで田口校長は、高大連携に よるキャリア教育を推進。同校に は、進路指導課に加えて高大連携課が設置され、課長に 長岡先生が就任した。その後、校内で具体的な案を検討 し、2009 年、高経大教員による同校1年生に対する小 論文指導、2年生に対するディベート指導、2010 年に 3年生の「高経クラス」と矢野ゼミとの「高大コラボゼ ミ」が始まった。  1年生に対する小論文指導は、論理的な文章を書く力 の育成を目的にしたもので、高経大経済学部の教員によ る講義と実践、優秀作品の表彰を行った。2009 年度か ら始まり、2010 年度は「希望の大学」「就きたい職業」「生 活したい場所」の3つからテーマを選び、序、本論、結 びを意識した小論文指導を行った。さらに、2011 年度 は夏休みに、1年生の希望者に対して、大学生1人が高 校生2〜3名を指導する取り組みも行い、今年度は、1 年生だけでなく2年生の希望者に対しても実施する予定 である。  2009 年度から始まった2年生のディベートは5回に  高崎市立高崎経済大学附属高校では、2009 年度から 高崎経済大学との高大連携活動として、大学教員や学生 の指導・支援による小論文の書き方の学習やディベート を実施している。さらに3年生7クラス中の文系1クラ スを「高経クラス」として、矢野修一経済学部教授のゼ ミナールと連携した「高大コラボゼミ」を実施している。  今回は「高大コラボゼミ」を中心に、高崎経済大学附 属高校のキャリア教育について、校長の田口哲男先生と 高大連携課長の長岡将之先生にお話を伺った。  高崎経済大学附属高校は、「社会のために、自立的に 生きるために必要な力を育成すること」を教育目標に掲 げている<図表1>。群馬大学や高崎経済大学(以下、 高経大)をはじめとする国公立大学や、東京の私立大学 を志望する生徒の多い進学校である。  しかし、1年次では大学進学について漠然と考えてい る生徒が多いという課題を感じていた。そこで、大学で の学びを体験することによって日常的な学習意欲を高め るとともに、進路、さらにはキャリアへの意識を高める こと、自分の適性に応じた職業について考えること、社 会に出てから必要な、基礎的・汎用的能力を育成するこ とを目的に、高経大との高大連携を実施することにした。  田口校長は今年4月から現職に就いたが、これまで教 職だけでなく、教育委員会や大学で勤務した経験がある。 こうした経験から、田口校長は「高校では、理系ではス ーパー・サイエンス・ハイスクール(以下、SSH)があり、 長岡将之先生

キャリア教育を目的として

学年ごとに高経大との高大連携を実施

高崎市立高崎経済大学附属高等学校

1年生は大学教員と大学生による小論文指導

さらに 1、2年生でディベートを実施

第 6 回  7・8月号では高校でのキャリア教育について紹介する。今回は、インタビュー活動等を行いながら、身近な産業や職業に ついて生徒が調査し発表している、高崎市立高崎経済大学附属高校と三重県立津高校の2校をご紹介する。

 シリーズ「キャリア教育」

高校でのキャリア教育

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わたって行う。高経大の教員からのディベートについて の講義、大学生同士のディベートの見学、ディベート甲 子園のビデオ鑑賞を行ってディベートの手法や到達すべ きレベルを学んだ後、各クラスでグループに分かれて ディベート大会を実施。さらに各クラスから選出された 生徒代表が、同校の教員チームと対決する。2010 年度 のテーマは「時効制度は廃止すべき」で、判定は高経大 の教員と学生が担当した。結果は「生徒が僅差で勝ち、 感激のあまり泣き出す生徒もいました」(長岡先生)  2011 年度は、1、2年生がディベートを実施。その ため最後は「生徒対教員」ではなく、「1年生の代表と 2年生の代表」が「コンビニの 24 時間営業」をテーマ にディベートを行い、2年生が勝利した。今年度は新2 年生のグループと、新1年生の代表が対決する予定だと いう。ディベートも、立論のための資料集め、本番用の 資料作成、グループでの議論といった活動を通して、調 査スキルや論理的思考力を鍛えることを主な目的として いる。「高大連携も始まったばかりなので、例えば昨年 度ディベートを1年生に移行したり、今年度から2年生 に体験型クラスを設置したり、年々内容や時期を変えな がら、生徒にとって一番効果のあるものにしていきたい と考えています」(長岡先生)  3年生の「高大コラボゼミ」は、3年生の文系1クラ ス「高経クラス」(2011 年度 37 名)と高経大矢野ゼミ の学生約 20 名によるゼミナールである。月2回程度の 割合で高経大を訪れ、高校生と大学生混合の6つの班を 作り、班ごとに「ゼミナール形式」で学ぶ。では、2011 年度の「コラボゼミ」の活動を概観しよう<図表2>。  まず、4・5月は、日本経済新聞社主催の「第 11 回 学生対抗円ダービー」に参加するため、外国為替相場に ついて学習する。「円ダービー」は5月末、6月末の円 ドルレートを各グループで予想し、予想と実際の差が最 も少ないチームを決めるというもの。「高大コラボゼミ」 では「日本企業の海外戦略」に関する学習が主眼だが、 企業の海外戦略において、外国為替相場の影響は大きい。 どのような要因で円やドルが上昇したり、下落したりす るのかを学んだ上で、為替レートを予想する。実際の社 会の動きとその意味を理解して予測しなければならない ため、高校生にとっては高度な挑戦である。  「生徒たちには休み時間を使って、日本経済新聞を読 むように言いました。1年を振り返ってみると、生徒は 円ダービーに一番苦戦していたようです。でも、企業の 海外戦略にとっては大事なことです。生徒の頑張りの結 果、ある1班が円ダービーで 18 位入賞とユニーク賞を 図中央の「オナープログラム」が「高経クラス」や今年度2年生に設置した「体 験型クラス」に当たる。また、「キャリア教育」の左上にある「大学 ・ 研究機 関との連携」が高大連携に相当する部分である。 マナー コミュニケーション 5月 31 日 コラボゼミ 第4回 6月 12 日 英検 (1次) 6月 21 日 コラボゼミ 第5回 7月 12 日 コラボゼミ 第6回 7月 19 日 コラボゼミ 第7回 8月 26 日 企業訪問 9月 17 日 コラボゼミ成果発表会

高大コラボゼミでの企業研究によって

何倍にもなった企業訪問の意義

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「キャリア教育」第 6 回 高校でのキャリア教育 受賞しました」(長岡先生)  6月からは、「日本企業の海外戦略」研究が始まる。 長岡先生は、「生徒は日本企業の海外戦略を学びますが、 目的の主眼は大学での学びの面白さを知ること、企業研 究を通して社会に目を向けること、ここでも基礎的・汎 用的能力を伸ばすことにあります」とその目的を説明す る。具体的には、高校生6名、大学生2〜3名ずつの6 グループに分かれて行った。主に総合的な学習の時間を 活用し、生徒が大学に行き大学生と一緒に学ぶ。対象と なる企業は矢野先生が選択したが、個別の研究テーマは、 高校生と大学生が考えた<図表3>。  8月終わりには、「高大コラボゼミ」のメインイベン トとも言うべき、企業訪問を行う。高校生と大学生が、 グループごとに研究した東京にある企業を訪問する。企 業によって内容は異なるが、企業担当者からの海外戦略 に関する説明の後、高校生から質問する場合が多い。  企業訪問での海外戦略に関する説明は具体的だ。例え ば、ある食品メーカーでは、東南アジアはおおむね日本 より物価が安いため、日本で販売するより少量にして現 地の人々が買いやすい金額で販売しながら知名度を上げ ていく戦略であることを説明した。菓子メーカーでは、 中国で事業を展開する際、現地では簡単には真似できな い技術を使った製品を販売し、それを主力製品にしてい るなどの説明があった。  また、「発展途上国の市場を拡大するためには対象国 の国力向上が必要との長期的な視点から、現地の子ども の教育状況改善に尽力している企業もありました。生徒 たちは企業訪問する前は、企業というとあまり具体的な イメージがなく、ともすれば企業=利益追求と思ってい る場合がありました。しかし、企業は自らの利益だけ でなく、現地の人のことを考えた生産・販売活動を行っ たり、教育にも尽力していることが意外だったようです。 このように、企業訪問で具体的な企業の活動を知ること により、働くことや社会の仕組みを学ぶことができます。 また、説明している企業の方が自分の会社に誇りを持っ て説明し、働いていることも、生徒には強い印象を残し ているようです」(長岡先生)  「高大コラボゼミ」の総仕上げは、9月に実施され る、高校と大学の教職員、市教育委員会の関係者、大学 生、高校生(2年生文系クラスと1年生希望者)、保護者、 市民ら約 200 人の聴衆を前にした成果発表会である。事 前に発表資料のパワーポイントを作成し、約 20 分のプ レゼンテーションと質疑応答を行う。  ところで、「高大コラボゼミ」では、実用英語検定試 験(以下、英検)の受験を推奨している。高校生はまず 6月に英検を受験する。「高大コラボゼミ」に参加する 大学生は、コラボゼミ初期に行われる為替レート予想の 最初のプレゼンテーションを英語で行っている。大学生 が英語を話す姿に高校生は大いに触発されるそうだ。ゼ ミを通して英語の重要性を実感した結果、「高大コラボ ゼミ」が終了した後の 10 月や1月に英検を再度受ける 生徒もいるという。中には推薦入試で大学合格が決まっ

大学で学ぶ楽しさを知り、学習意欲が向上

今年度からコラボゼミを2年にも拡大

<図表4>生徒の感想(一部抜粋) ●円ダービーについて  私は経済については初心者で、最初は『円高、円安という言葉は、聞いたことはあるけれど・・・』という状態でした。しかし、大学生に教えてもらっ たり、同じグループのみんなと一緒にやっていく中で経済の仕組みがわかり、また、円高、円安になる根拠を見つけていくのが楽しくなったりも しました。それによって自然と世界で起こっているさまざまなことについて興味がわいてきました。この円ダービーに参加して自分の周りの世界 が広がったように思いました。 ●企業訪問について  当初は製薬会社にとっつきづらさを感じていました。大学生にお借りした専門書を読み、課題をこなし、自分で予備知識を詰めたことで、製薬市 場を理解できただけでなく自然と自ら興味を持ち出すほどになりました。下調べをたくさん行い、実際に企業を訪問しました。社内には独特な緊 張感があり、雰囲気にのまれそうでした。私たちは企業理念よりも企業戦略重視で調べていましたが、エーザイの社員の方の説明は、企業理念を 大切にしていることを念頭に置いたものでした。また製薬会社は薬品開発・生産・販売をするだけだと思っていましたが、消費者や患者のライフ ケアも行っていました。正直、自分たちの調べてきたこととの方向性の違いに驚きましたが、企業に関して直接教えていただいたことで、企業像 がより鮮明に理解でき、とても勉強になりました。 <図表 3 > 2011 年度「高大コラボゼミ」企業と       調査テーマ(例) 丸紅 「LNG船事業の海外展開」 三菱マテリアル 「海外銅鉱山権益」「リサイクル事業」 ヤマト運輸 「ヤマトの精神およびヤマトソリューション」 JFE スチール 「海外高炉建設」「資源権益の確保」「業界の再編」 エーザイ株式会社 「企業理念(hhc–Human Health Care)」「中期戦略計画」 森永製菓 「中国をはじめとする市場戦略」「社会貢献活動」

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さらに国公立大学に合格する生徒も、クラス平均が7名 程度であるのに対し、「高経クラス」は半数以上にのぼっ た(2011 年度)。  そして3年目の今年度は、「高経クラス」35 名の募集 に対して 60 名以上が応募し、最終的に 41 名でスタート した。これについて長岡先生は「当初、3年次の9月ま でゼミ活動を行っては受験に差し障りがあるのではない かと心配しましたが、大学で学ぶ意味や楽しさがわか れば、受験勉強のモチベーションも高まることがわかり、 2年生にもコラボゼミの意義が伝わってきたためだと思 います」と分析する。田口校長も「教員が自信をもって 生徒にすすめることができれば、生徒にも意義がより深 く伝わるのではないでしょうか」と語る。  こうした成果を受け、同校では今年度から、2年生に も高経大経済学部平井裕久准教授のゼミと一緒に、大学 生にサポートしてもらいながら「日経 STOCK リーグ」 に参加し、バーチャルでの株式投資を通じて企業研究を 行う文系クラスを1クラス設置した。またこのクラスで は、東証アローズへの見学や「熱血! 高校生販売甲子 園」(高崎商工会議所・高崎えびす講市実行委員会主催、 高崎経済大学学生企画・運営)にも参加し、地域の活性 化や商店街の在り方などについて学ぶ計画だ。 「大学にとって、高校との連携によって入学してもらい たい学生を育成することができれば、大学入試の在り方 も変わってくるのではないでしょうか」と指摘する。  高大連携で行われる「コラボゼミ」は、高校と大学の 接続や、高校と大学で連続しての基礎的・汎用的能力の 育成を考える上でも試金石となる取り組みであると言え るだろう。 ◇所在地:群馬県高崎市浜川町 1650-1  ◇沿革:1924(大正 13)年、高崎実践女学校設立認可 1947(昭和 22)年、高崎市立女子高等学校と改称 1994(平成6)年、高崎経済大学附属高等学校開校  ◇学級編成:各学年普通系7クラス、芸術系1クラス ◇生徒数:833 名(男子 378 名、女子 455 名)2012 年 4 月1日現在 ◇特色:校訓は「自主自律」「自学自習」。普通系は1クラス 35 名 前後の少人数クラス編成とし、基礎的・基本的な知識・技 能の定着と個に応じた指導の充実を図っている。高崎経済 大学との高大連携以外においても、教育活動全体を通して 基礎的・汎用的能力が身につくような取り組みを重視して いる。部活動や、海外との国際交流事業も盛ん。 ◇卒業生の進路:2011年3月卒業生 281 名 ・進学先 : 4年制大学 186名 短期大学17名 専門学校41名 ・合格の内訳(延べ数) : 国公立大学 70名 私立大学293名 高崎市立高崎経済大学附属高等学校

文系キャリアプロジェクトとして津市中心市街地活性化プランを作成

答えのない課題を考えるゼミを経験し、論理的思考力を鍛える

を主に担当する林仁大先生にお話を伺った。  三重県立津高等学校は、三重大学を筆頭に、中部・関 西地区を中心とする国公立大学に多くの合格者を出す県 内屈指の進学校であり、「高い知性と教養をもったリー  昨年、三重県立津高校ではキャリア教育の一環として、 三重大学西村訓弘教授の協力を得て「西村ゼミ」を実施 し、 「津市中心市街地の活性化を高校生が考える」をテ ーマに、1、2年生の希望者 14 名が取り組んだ。そこ で今回は、同校のキャリア教育の方針と「西村ゼミ」で の取り組みについて、進路指導部主任の上村和弘先生、 ゼミを企画した土方清裕先生、昨年に引き続き今年ゼミ

三重県立津高等学校

文系のキャリア教育の機会として

大学教授によるゼミを実施

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第1回 10月20日 今という時代についての討論 (番外編) 津市4大学まちおこし隊 第3回のグループ討論に参加 第2回 11月12日 津市4大学まちおこし隊と津高生による市長との座談会 第3回 11月17日 自分たちが考える津市の中心市街地についての討論 第4回 12月10日 商店街の方々との意見交換 第5回 2月9日 理想的な津市中心市街地についての討論 (番外編) 長浜商店街の視察 第6回 3月21日 津市長に自分たちの活性化案を提案 「キャリア教育」第 6 回 高校でのキャリア教育 ダーの育成」を目指している。しかし、教員の異動も多 く、各教員の生徒指導、進路指導の経験や考え方はさま ざまであった。  そこで同校では5年前から、教員が今、津高校で教鞭 を執る意味を再確認し、目的意識を共有するための「オ フサイトミーティング」を開始した。ミーティングは年 に2〜3回開かれ、ほとんどの教員が少なくとも1回は 参加。自由に発言し、KJ法などを用いてワークショッ プを行った。  「ミーティングで確認したのは、『人間力』のある生徒 を育成しようということです。そのために、部活動、文 化祭や体育祭などの行事を充実させ、生徒に濃密な3年 間を過ごしてもらおうと考えました。ただし、強制では なく自主的に参加させる方針です。学習面については、 2007 年にスーパー・サイエンス・ハイスクール(SSH) の指定を受けて、大学や科学研究機関と連携し、科学的 な創造性や独創性の育成を図っています」と上村先生は 説明する。  「SSHにより、理系の生徒は、知を探求する楽しさを 知る機会、課題解決能力を育む機会を豊富に得ることが できるようになったので、今度は文系の生徒に対しても、 世のため人のために活躍できる人材になるための機会を 提供したいと考えました」(上村先生)  土方先生は「文系でSSHと同様の効果を得るには、大 学のゼミのような学習に取り組む必要があると考えまし た。そこでかねてから本校の生徒や保護者への講演など をお願いしていた西村教授にご協力いただいて、“文系 キャリアプロジェクト”として『西村ゼミ』を実施する ことにしたのです」と説明する。ちなみに西村教授は三 重大学大学院医学系研究科教授だが、民間のバイオ関連 企業の研究者や社長を務めた経歴を持ち、三重大学では 現在、大学と地域社会との連携を担当する役職にも就い ている。  「西村ゼミ」のテーマは、「日本三大観音」の1つであ る津観音を有し、江戸時代には津藩の城下町として栄え たにもかかわらず、現在は人口減少や商店街の衰退の問 題を抱えている津市中心市街地の活性化案を考えること にした。これを通して、生徒が将来担うことになる日本 の在り方について考えることも狙いだ。1、2年生に対 して希望者を募ったところ、1年生 11 名、2年生3名 が応募した。ゼミは 10 月から2月にかけて6回にわたっ て開かれた。2年生を班長に3グループに分かれ、各班 でゼミの時間以外にも自主的に集まるなどして、調査や 討議を行い、市街地活性化プランを作成した。  「西村ゼミ」の活動について概要を見ていこう<図表 1>。活動は 10 月から2月までの放課後約1時間半を 基本として、計6回行われた。  ゼミの1回目は、「今という時代についての討論」と 題し、西村教授から、現代社会は成長社会から成熟社会 への移行過程にあり、それは量的拡大から質的向上を求 める社会への移行であること、情報技術の進化等により 地方でも都会と同様の活躍ができるようになったことな どについて講義があり、ゼミのテーマと目的が説明され た。この後、生徒たちは、「番外編」として津市に立地 する三重大学、三重短期大学、三重県立看護大学、高田

商店街へのヒアリング等により

現実を知った上で、活性化プランを作成

上村和弘先生 土方清裕先生 林仁大先生 <図表 1 >文系キャリアプロジェクト 2011 の概要

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市街地について考えた。  3回目は、パワーポイントで作成した資料を用いて中 間発表を行った。「この時はまだ、生徒の案はイベント の羅列程度にすぎませんでした。しかし西村教授から厳 しい質問や指摘がなされ、生徒にも他の班の発表に質問 することが義務づけられて、活発な議論をすることがで きました。この回で生徒たちは、自分たちの考えが不十 分であることを自覚するとともに、議論しながら考えを 深めていくことを学びました」(土方先生)  冬休み前の4回目は、津市中心部の大門商店街振興組 合の協力を得て、理事長や理事からのヒアリングを行っ た。「津市内の高齢化率は津市全体が 24.9%なのに対し 市街地が 32.1%と高いこと、売り上げが非常に少ない店 も多いなどといった、街が抱える問題についてリアルに 語っていただきました」(土方先生)  ほかに、国道沿いにあった百貨店の市街地への移転、 大規模小売店鋪法の改正に伴う郊外への大型ショッピン グセンターの出店といった商店街の推移が説明され、生 徒は、社会経済の状況や法律改正の影響等を具体的に 知った上で、街の問題を考える必要があることを理解し た。「知識がないから深く考えられないと感想を述べた 生徒もいました。また、現代社会の授業で知識として学 んだことが目の前にあり、重い現実を商店街の方から直 接伺えたことは、生徒にとって意義深い経験となりまし た」(土方先生)  2月に行われた第5回では、班ごとに街の再生案を発 表した。具体的にどんな発表だったかを紹介しよう。  A班のテーマは「At 大門」。津市ならではのモノを キーワードにして、人々が大門を訪れたくなる街作りを しようというもの。「商店街の床や壁に、プロ、アマチュ アを問わず、市民の描いた絵を展示する」「商店街に留 学生会館をつくり、三重大学などの留学生に安価な住居 を提供するとともに留学生がコーディネートしたカフェ を設け、来客は留学生と異文化交流ができるようにする」 「商店街に子どもが遊べるスペースを設けたり、冬には こたつを出したりするカフェを設け、小さい子どもから 老人まで、世代を超えて交流できるスペースにする」「大 幼稚園・保育園から大学までの教育を通し、常に子ど も・若者が行き来する街作りをしようというもの。例 えば 「観音寺に子ども園とお年寄りのデイサービスセン ターを併設することで子どもと高齢者のふれあいの場に する」「大門商店街を小学生の調べ学習や体験学習の場、 中学生の職場体験の場とする」「商店街に専門学科の高 校生が出店する」「商店街の方を講師に、高校生が経営 について学ぶ」「商店街にダンス部や茶道部など大学の 文系クラブの練習や発表の場を設ける」などを提案した。  C班のテーマは「津のまちを歩こう」。現在津の街は、 津駅や三重県庁のあるエリア、津観音や大門商店街のあ るエリア、津城趾や津市役所があるエリアなどエリア間 の交通の便が悪い。そこで「市街地周辺の国道沿いに駐 車場を設置し、市街地には路面電車を附設して、路面 電車で街をまわること自体を楽しむ」「地元の人以外に は津の名物や津発祥であることが意外と知られていない、 鰻料理や、いちご大福、天むすといった食べ物のPR」「エ リアの店を回りスタンプを押すイベントや月に1度の津 観音でのイベント開催」などを提案した。  さらに「番外編」として、希望者が市運営の施設主催 による視察ツアーに参加して、町おこしの成功事例とし て有名な滋賀県長浜市の「黒壁スクエア」を訪問した。 そして当初予定していなかったが、前葉市長にプランを プレゼンテーションの上、レポートを提出。地元メディ アの取材も受けた。また、実現に向けて検討するに足り 得るプランができたことから、今年の5月末に津市が開 催した市民による「中心市街地活性化 オープンディス カッション」にも2人の生徒が参加してゼミの成果を報 告。市民による議論の端緒となった。  「学年を超えて、論理的思考を重ねながら答えのない 問題に取り組めたことも生徒の成長につながりました」 と土方先生。「論理的思考力は教科学習でも育てること ができますし、学年を超えた活動には部活動もあります が、答えのない課題への学年を超えた取り組みは、ゼミ

ゼミだからこそ実現した

答えのない課題への取り組み

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「キャリア教育」第 6 回 高校でのキャリア教育 だからこそできたと思います」と上村先生は語る。  「西村ゼミ」終了後の生徒の自己評価<図表2>を見 ると、5段階評価で4や5とする生徒がほとんどである。 その他自由記述からも、非常に充実したゼミ活動を行 なった様子がうかがえる<図表3>。  2年目の今年は林先生が主担当となって、秋から「西 村ゼミ」を計画している。「今年は、西村教授がいつも『自 分たちの可能性を自分たちで蓋をしない』『不戦敗をし ない人生』とおっしゃっていることから、生徒が自らの キャリアプランを考えることをテーマにする予定です」 (林先生)  ただしキャリアプランといっても、単に就きたい職業 を考えるだけではない。「西村教授からの講義や個人や グループでの研究、ディスカッションを通し、世界の動 向、世界の中での日本の立ち位置などを理解し、これか らの社会を担っていくのは自分たちであるという自覚を 持った上で、生きていく上での価値観を形成し、将来像 を描いていけるようなゼミにします。そして最終的には 発表の場を設けて、高校内外に発信するつもりです」(林 先生) ◇所在地:三重県津市新町 3-1-1  ◇沿革:1880(明治 13)年、津藩校有造館跡に津中学校開校 1901(明治 34)年、三重県立高等女学校開校 1948 (昭和 23)年、   ◇学級編成:各学年普通科9クラス ◇生徒数:1,080 名(男子 587 名、女子 493 名)2012 年 6 月1日現在 ◇特色:旧津藩校「有造館」跡に開校された、130 年の歴史を持つ 進学校。2学期制や 65 分授業を導入。また、類型制、選 択制を実施し、生徒の進路希望にきめ細やかに対応してい る。校訓の「自主・自律」の精神を伝統とし、生徒会活動 や部活動は非常に盛んである。 ◇卒業生の進路:2012年3月卒業生 355 名 ・進学先 : 4年制大学272名 短期大学3名 準大学・専門学校5名 ・進学先の内訳 : 国公立大学187名 私立大学85名 短期大学3名 三重県立津高等学校 【自己評価の理由】 ▶学校では常に正解があり、それを求めるために勉強をして いますが、ここでは正解がなく、とても自由な取り組みだっ たので、わくわくした気持ちで参加することができました。 ▶町おこしのことだけでなく、将来大人(答えのない答えを 見つけること)になった時、自分でどう行動したら良いの かということや、それ以外にも、外国とのかかわりも聞け て良かったです。 ▶他の人の意見を聞いて、自分の考え方も広がったし、どう したら周りの人に自分の思いが伝わるのかを学ぶことがで きました。 ▶大変だったが得るものがたくさんあった。特に、何かを新 しく作り上げるためには基礎知識がとても重要で、知識が なければしっかりした案は出せないし、何もつくれないと いうことがわかったのが良かったです。 【反省点】 ▶実現不可能に近いことから具体化して、実現可能とするた めにどうしたらよいかということをもっと話しておけば、 市長さんに実現してもらいやすかったように思います。 ▶みんな部活が忙しかったこともあり、レポートやパワーポ イントの作成がギリギリになってしまい、もう少しスムー ズに進められたらよかったなと思う。 ▶問題の解決法を考えるときに、もっと本を読んだり、他の 地域の取り組みを調べたらよかった。 ▶自分で「やりたいな」と思ったときにすぐ行動できなかっ たので、もっと積極的に行動できていればよかったと思う。 【自分で向上したと思うこと】 ▶あきらめないこと。締切直前に良い考えが浮かぶことが多 かった。 ▶文章にまとめたり、よりわかりやすい表現になるように気 をつけて文章を書くように心がけるようになった。 ▶自分で問題(何が問題か)を見つける力。 ▶考える力。パソコンで文字を打つ速さ。 ▶情報収集能力。人に伝える力。 <図表 3 >生徒の感想(一部抜粋) <図表 2 >文系キャリアプロジェクト 2011      自己評価シートより とても充実していた 全く充実していなかった 段階 5 4 3 2 1 人数 7 4 0 0 0 割合 63.6% 36.4% とても良かった 全く良くなかった 段階 5 4 3 2 1 人数 9 2 0 0 0 割合 81.8% 18.2% とても向上した 全く向上しなかった 段階 5 4 3 2 1 ①論理的思考力 人数 4 5 2 0 0 割合 36.4% 45.5% 18.2% ②課題解決能力 人数 2 8 1 0 0 割合 18.2% 72.7% 9.1% ③コミュニケー  ション能力 人数 2 6 3 0 0 割合 18.2% 54.5% 27.3% ④学問への  興味関心 人数 3 7 1 0 0 割合 27.3% 63.6% 9.1% ■ゼミでの活動は充実していたか ■ゼミに参加してよかったか ■この半年間で向上した力は何か 津中学校と津高等女学校が統合し て、男女共学の三重県立津高等学 校設立

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