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ワンルーム規制がワンルーム家賃に与える影響に関する研究

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1

ワンルーム規制がワンルーム家賃に与える影響に関する研究

~東京都区部における分析~

政策研究大学院大学 まちづくりプログラム MJU10044 有井 美由紀

1. はじめに1

ワンルームは都心部に居住する単身者の住まいとして 広く普及している。しかし、このワンルームに対しては、

近隣住民から問題視されることも多く、東京都区部を中 心に建築規制が実施されてきた。一方で、ワンルームに 対し建築規制で対応すべき問題なのかという意見もあり、

ワンルーム規制のあり方については様々な議論がなされ ている。そこで、本稿ではワンルーム規制によって弊害 が生じているのではないかと考え、その一つとして規制 がワンルーム家賃に与える影響に着目して分析を行う。

2. ワンルーム規制の現状 (1) ワンルーム規制の背景

ワンルームは、地方から東京への人口流入、晩婚化に よる単身者の増加等の影響を受け増加してきた。ワンル ームが急増した

1980

年代後半、ワンルームは生活環境を 乱すとして近隣住民からの反発が広がり、各地で紛争が 起き、東京都の各区では、管理の徹底等を規定した指導 要綱を定め、各事業者に指導を行ってきた。その後、バ ブル経済の崩壊に伴い、ワンルームの供給数は一時減尐 したが、近年再び増加傾向にあり、行政側では指導要綱 の条例化や内容強化などの規制を強める動きが出ている。

規制の理由としては、居住者のマナー、住宅ストック・

世帯構成のアンバランス、地域コミュニティの希薄化等 が挙げられている。

(2) 規制内容・方法

ワンルームの規制の内容としては、大きく分けると次 のようになる。現在の東京都区部での導入状況は表

1

の とおりである。

・課税(豊島区のみ)

新築時、建築主に

50

万円

/

戸が課税される。

・ファミリー付置義務

ワンルームの一定割合(例:墨田区 総戸数の

30%

以上)にファミリータイプ(以下「ファミリー」とい う)を確保させるものである。

・最低面積規定

一戸の最低専有面積を定めるもので、全区が何らか の下限を定めている。本稿では近年引き上げが相次い だ「

25

㎡以上」を拘束力のあるものとみなし、今回の 研究の対象とする。

1 本稿は論文の要約であるため、参考文献等については論文を参照され たい。

3. ワンルーム規制がワンルーム家賃に与える影響 に関する理論分析

ワンルーム規制が導入されると、供給者は、規制に従 って建設する、規制対象外となる規模のものを作るか戸 数を抑える、建築しない、のいずれかに行動を変えると 思われる。規制に従って建設する場合、課税の場合は規 制前よりも供給コストが増加する。また、ファミリー付 置義務の場合、収益性の良いワンルームを数個あきらめ て収益性の悪いファミリーを付置せねばならない、又は、

ワンルームとファミリーの導線を分けるなどの工夫を行 うため、供給コストが増加する。また、最低面積規定に ついても、それまでそれぞれの事業者の条件に応じた最 適な面積の住宅を供給していたところ、最低面積規定に より、一部の事業者にとって最適

面積での住宅供給を阻害される ことになり、一部企業の単位面積 当たり供給コストを増加させる。

その結果、ワンルーム市場全体で は、供給量が減尐するため、供給 曲線が左にシフトし、家賃が上昇 し、余剰が減尐すると思われる。

4. ワンルーム規制がワンルーム家賃に与える影響 に関する実証分析

本章では、東京都区部内を対象とし、ワンルーム規制 がワンルーム家賃に与える影響について、規制実施区と 未実施区抽出による分析(

DID

)と東京都区部全域による 分析(

OLS

)の、2つの方法での検証を行う。

(1) 規制実施区と未実施区抽出による分析(DID)

まず、ワンルームへの各種規制の導入によりワンルー ム家賃がどのような影響を受けたかを検証するため、規 制実施区と未実施区を用いた

Difference-in-difference

(以下

DID

という)の手法による分析を行う。2004~2005年に 規制を導入・強化した区のうち、課税実施区を豊島区、

千代田区 中央区 港区 新宿区 文京区 台東区 墨田区 江東区 品川区 目黒区 大田区 世田谷区

課税 - - - - - - - - - - - -

ファミリー付置 -

最低面積

(25㎡以上)

20㎡以上

渋谷区 中野区 杉並区 豊島区 北区 荒川区 板橋区 練馬区 足立区 葛飾区 江戸川区

課税 - - - - - - - - - -

ファミリー付置 - -

最低面積 (25㎡以上)

20㎡以上

20㎡以上

20㎡以上

20㎡以上

表1 各区の規制状況

図2 規制がワンルーム家賃 に与える影響

S

D 総面積 家賃/㎡

P’

P

Q’ Q S’

(2)

2

ファミリー付置義務(多)実施区を文京区、ファミリー付置 義務

(

)

実施区を新宿区・港区、最低面積規制実施区を 港区として抽出した。そして規制導入前を

2002

年、規制 導入後を

2009

年とし、株式会社

CHINTAI

発行の賃貸住 宅情報誌の

10

月第一週目号に掲載された

30

㎡未満の賃 貸住宅を対象とし、家賃等のデータを入手した。ファミ リー付置義務は区によって付置すべき戸数が異なり、そ の影響も異なると思われるため、2段階に分けた。

①推計モデル

𝑙𝑛𝑃 = 𝛼 + 𝛽

1

𝐷𝑇 + 𝛽

2

𝐷𝐹

1

+ 𝛽

3

𝐷𝐹

2

+ 𝛽

4

𝐷𝑀 + 𝛽

5

𝐷𝐴 + 𝛽

6

𝐷𝑇 ∗ 𝐷𝐴 + 𝛽

7

𝐷𝐹

1

∗ 𝐷𝐴 + 𝛽

8

𝐷𝐹

2

∗ 𝐷𝐴

+ 𝛽

9

𝐷𝑀 ∗ 𝐷𝐴 + 𝛾

𝑖

𝑋

𝑖

+ 𝜀 (1)

被説明変数

lnP

は、ワンルーム家賃(万円/月)と共益 費(万円

/

月)の和を対数にしたものを用いる。

DT

DF

1

DF

2

DM

は、各規制実施区であることを示すダミー変数 であり、

DT

は課税実施区ダミー、DF1はファミリー付置 義務

(

)

実施区ダミー、

DF

2はファミリー付置義務

(

)

実 施区ダミー、

DM

は最低面積規定実施区ダミーである。

DA

は、規制年後であることを示すダミー変数であり、規 制後の

2009

年なら1、規制前の

2002

年なら0をとる。

DT* DA, DF

1

* DA, DF

2

* DA, DM* DA

は、規制効果を表す変数 として、各規制実施区ダミーと規制年後ダミーの交差項 を設定したものである。係数が有意に正となった場合、

規制の影響を受けて家賃が上昇したと解釈できる。

X

iは その他の説明変数であり、物件の特徴や立地を示すもの を用いた。αは定数項、

β,γ

は係数、

ε

は誤差項を表す。

②推定結果

推計結果は、表

4

のとおりである。

規制効果変数として設定した規制実施区ダミーと規制 年後ダミーの交差項の係数を見ると、課税実施区では、

規制後にワンルーム家賃が約4%上昇したことが

10%水

準で統計的に有意に示された。ファミリー付置義務実施 区では、付置義務戸数が多い区は、ワンルーム家賃が約 4%程度上昇したことが

10

%水準で統計的に有意に示さ れた。付置義務戸数が尐ない区は、統計的に有意な影響 は示されなかった。付置義務割合により影響が異なるこ とが示された。最低面積規定実施区では、統計的に有意 な影響は示されなかった。

(2) 東京都区部全域による分析(OLS)

次に、東京都区部全域を対象として、各規制が家賃に 与える影響の分析を行う。ワンルーム家賃を被説明変数 とし、家賃の特性を表す変数に加えてワンルーム規制の 導入状況を変数として加え、最小二乗法(以下

OLS

とい う)にて分析を行う。株式会社リクルートのインターネ ットの賃貸住宅検索サイトにて

2009

12

月時点で公開 されていた東京都区部内の30㎡未満の賃貸住宅を対象と し、家賃等のデータを入手した。

①推計モデル

𝑙𝑛𝑃 = 𝛼 + 𝛽

1

𝐴𝑇 + 𝛽

2

𝐴𝐹 + 𝛽

3

𝐴𝑀 + + 𝛾

𝑖

𝑋

𝑖

+ 𝜀 (2)

被説明変数

lnP

は、ワンルーム家賃(万円

/

月)と共益 費(万円/月)の和を対数にしたものを用いる。

AT、AF、

AM

は、規制導入後建設ダミーであり、各規制が導入され た年以降に建てられた場合に1をとる。

AT

は課税導入後 建設ダミー、

AF

はファミリー付置義務導入後建設ダミー、

AM

は最低面積規定導入後建設ダミーである。係数が有 意に正となった場合、規制の影響を受けて家賃が上昇し たと解釈できる。

X

iはその他の説明変数であり、物件の 特徴や立地を示すものを用いた。

α

は定数項、

β,γ

は係 数、

ε

は誤差項を表す。

②推定結果

推計結果は、表 5 のとおりである。

規制の効果を示す規制導入後建設ダミーの係数を見る と、課税導入後に建設された物件は、ワンルーム家賃が

被説明変数:ln(ワンルーム家賃+共益費) 係数 標準誤差

課税実施区ダミー 0.0317 (0.0195)

ファミリー付置義務(多)実施区ダミー  0.0689 (0.0261) ***

ファミリー付置義務(少)実施区ダミー  0.1447 (0.0206) ***

最低面積規定実施区ダミー 0.1523 (0.0500) ***

規制後年ダミー      -0.0680 (0.0172) ***

課税実施区ダミー×規制後年ダミー 0.0441 (0.0232) * ファミリー付置義務(多)実施区ダミー×規制後年ダミー 0.0471 (0.0255) * ファミリー付置義務(少)実施区ダミー×規制後年ダミー 0.0199 (0.0239) 最低面積規定実施区ダミー×規制後年ダミー -0.0455 (0.0544)

専有面積 0.0224 (0.0014) ***

当該住戸階数 0.0128 (0.0034) ***

建物階数 0.0027 (0.0028)

建築年数 -0.0042 (0.0006) ***

最寄駅までの時間距離 -0.0033 (0.0014) **

東京駅までの時間距離 -0.0039 (0.0008) ***

構造ダミー yes

設備ダミー yes

定数項 1.4603 (0.0505) ***

自由度調整済み決定係数 0.7364

サンプル数 868

***,**,*はそれぞれ有意水準1%,5%,10%を満たしていることを示す。

表 4

DID推計結果

被説明変数:ln(ワンルーム家賃+共益費) 係数 標準誤差

課税導入後建設ダミー 0.0090 (0.0042) **

ファミリー付置導入後建設ダミー 0.0080 (0.0016) ***

最低面積導入後建設ダミー -0.0114 (0.0021) ***

専有面積 0.0281 (0.0008) ***

専有面積^2 -0.0001 (0.00002) ***

当該住戸階数 0.0203 (0.0006) ***

当該住戸階数^2 -0.0010 (0.0001) ***

建物階数 -0.0029 (0.0005) ***

建物階数^2 0.0002 (0.00002) ***

建築年数 -0.0084 (0.0002) ***

建築年数^2 0.0001 (0.000004) ***

最寄駅までの時間距離 -0.0044 (0.0003) ***

最寄駅までの時間距離^2 -0.000006 (0.00002)

バスダミー -0.0497 (0.0126) ***

東京駅までの時間距離 -0.0038 (0.0003) ***

東京駅までの時間距離^2 -0.00003 (0.000009) ***

マンションダミー 0.0248 (0.0034) ***

構造ダミー yes

設備ダミー yes

路線ダミー yes

区ダミー yes

定数項 1.5257 (0.0092) ***

自由度調整済み決定係数 0.8367

サンプル数 59,459

***,**,*はそれぞれ有意水準1%,5%,10%を満たしていることを示す。

5 OLS

推計結果

(3)

3

約1%上昇したことが5%水準で統計的に有意に示された。

ファミリー付置義務導入後に建設された物件は、ワンル ーム家賃が約1%上昇したことが 1%水準で統計的に有 意に示された。最低面積規定導入後に建設された物件は、

ワンルーム家賃が約1%低下したことが 1%水準で統計 的に有意に示された。

(3) 考察

規制実施区と未実施区抽出による分析

(DID)と、東京都

区部全域による分析

(OLS)

の結果より、ワンルーム規制が ワンルーム家賃に影響を与えていたことが明らかとなっ た。課税とファミリー付置義務は、両分析とも共通の結 果が出ており、規制により家賃を上昇させたという頑健 性が高い。最低面積規定は、

DID

では有意ではなく

OLS

では家賃を低下させたという結果となり、頑健性は低い が、家賃への影響はないか低下させたことが示された。

最低面積規定が

OLS

では家賃が低下したという結果 となったのは、次のような可能性が考えられる。規制が なければ

25

㎡未満市場の物件に住むのが最適であった 消費者は、規制後、一人暮らしを諦め実家に住み続ける などの選択をとり、ワンルームの需要がシフトしたこと が考えられる。また、本来

25

㎡未満が最適な場所であっ たところへ、規制を満たすために

25

㎡以上のワンルーム を建設している場合もあると考えられ、そうした建物で はただ室内廊下を尐し広げただけで実際に有効利用でき る面積はあまり拡大していないなど、質が下がっていて 価格を引き下げている可能性もある。また、最低面積規 定は、「25 ㎡以上」に引き上げられてからまだ1~2年 しか経過していない区が多く、規制前の駆け込み供給の 影響があることも一つの要因だろう。いずれにせよ、

OLS

では家賃低下で有意となっているものの1%程度であり、

規制から短期間しか経過していないことから規制の影 響が定まっていないとも思われ、長期的な調査を試み ることで市場の変化や規制の副作用をさらに精緻に分析 できると考えられる。

5. ワンルームが周囲に与える影響に関する実証分析 ワンルーム規制を行う自治体は、ワンルームの数を減 らすことで居住者マナーや住宅ストック、世帯構成バラ ンスといった問題を解決しようとしていると思われる。

本節では、そのようにワンルームが追い出されるべき理 由があるのか、外部不経済を周囲に与えているのかを検 証するため、ヘドニックアプローチを用い、地価とファ ミリー家賃を被説明変数とした2種類の分析を行う。便 益は地価に帰着するという資本化仮説に基づくと、ワン ルームが何らかの負の影響をもたらしているとすると、

その周辺地域の居住需要が減尐し、住宅供給量が減尐し、

土地需要も減尐し、地価が下落していくという現象につ ながることになる。

(1) 単身世帯割合が地価に与える影響の分析

まず、単身世帯割合が及ぼす地価への影響を分析する ために、地価公示価格を被説明変数に、単身世帯割合を はじめ観測地点の属性を表すいくつかの変数を説明変数 として用い、

OLS

による推計を行った。分析対象区域は、

東京都区部における住居系地域とし、国勢調査のあった

2000

年、

2005

年のクロスセクションデータを用いる。

①推計モデル

𝑙𝑛𝑃 = 𝛼 + 𝛽

1

𝑇𝑅 + 𝛾

𝑘

𝑋

𝑘

+ 𝜀

(3) 𝑙𝑛𝑃 = 𝛼 + 𝛽

1

𝑇𝑅 ∗ 𝐷𝑌

1

+ +𝛽

2

𝑇𝑅 ∗ 𝐷𝑌

2

+ 𝛽

3

𝑇𝑅 ∗ 𝐷𝑌

3

+ 𝛾

𝑘

𝑋

𝑘

+ 𝜀

(4)

被説明変数

lnP

は、地価公示価格による住宅地地価を 対数にして用いた。

TR

は、地点の属する丁目別の単身世 帯割合であり、国勢調査の世帯人員別世帯数のデータよ り、各地点における一般世帯総数を分母に、単身世帯数 を分子として算出した。この値が大きくなるとその地域 での単身世帯の集中居住の度合いが高いと考えられる。

単身者の集中居住に何らかの負の影響があるとすれば、

係数の符号が有意に負になると考えられる。(4)式の

TR*DY

1

TR*DY

2

TR*DY

3は、単身世帯割合と用途地域 の交差項であり、ワンルームがあまり立地していないと 思われる低層住居専用地域と、ワンルームが立地してい ると思われる中高層住居専用地域、住居地域とを分けた 分析を行うために用いた。

X

iはその他の説明変数であり、

地点の特徴や時点を示すものを採用した。また、単身世 帯割合と地域の所得水準とは相関があると推測され、そ の影響をコントロールするため、地域の所得水準の代理 指標として非オフィスワーカー比率を用いた。

α

は定数項、

β,γ

は係数、εは誤差項を表す。

②推定結果

推計結果は、表

6

のとおりである。

単身世帯割合が増えても地価は有意に負の影響を受け ていないことが示された。また、用途地域別に検証した 場合でも統計的に有意な影響はなく、ワンルームが多く 立地していると思われる中高層住居専用地域、住居地域 においても、単身世帯割合が増加しても地価に負の影響

被説明変数:ln(地価) 係数 標準誤差 係数 標準誤差

単身世帯割合 0.0136 (0.0335)

単身世帯割合×低層住居専用地域 0.0540 (0.0424)

単身世帯割合×中高層住居専用地域 -0.0633 (0.0476)

単身世帯割合×住居地域 0.0256 (0.0499)

非オフィスワーカー比率 -1.0362 (0.0488) *** -1.0423 (0.0489) ***

2005年ダミー -0.1146 (0.0050) *** -0.1147 (0.0050) ***

東京駅までの時間距離 -0.0117 (0.0007) *** -0.0117 (0.0007) ***

最寄駅までの道路距離 -0.0001 (0.000007) *** -0.0001 (0.000007) ***

地積 0.0002 (0.00002) *** 0.0002 (0.00002) ***

指定容積率 0.0001 (0.0001) * 0.0001 (0.0001) *

前面道路幅員 0.0153 (0.0012) *** 0.0151 (0.0012) ***

用途地域ダミー yes yes

区部地域ダミー yes yes

路線ダミー yes yes

定数項 14.2046 (0.0377) *** 14.1897 (0.0390) ***

自由度調整済み決定係数 0.9068 0.9069

サンプル数 1958 1958

***,**,*はそれぞれ有意水準1%,5%,10%を満たしていることを示す。

単身者割合 単身者割合×用途地域

表6 地価への影響 推計結果

(4)

4

は与えていないことが示された。これにより単身世帯割 合の増加による周辺への負の影響はないといえる。

(2) 近隣ワンルーム戸数割合がファミリー家賃に与える 影響の分析

次に、近隣ワンルーム戸数割合がファミリー家賃へ及 ぼす影響を分析するために、ファミリー家賃を被説明変 数に、近隣ワンルーム戸数割合をはじめ物件の属性を表 すいくつかの変数を説明変数として用い、OLSによる推 計を行う。株式会社リクルートのインターネットの賃貸 住宅検索サイトにて

2009

12

月時点で公開されていた 東京都区部内の賃貸住宅を対象とし、家賃等のデータを 入手して分析を行った。

①推計モデル

𝑙𝑛𝑃 = 𝛼 + 𝛽𝑂𝑅 + 𝛾

𝑘

𝑋

𝑘

+ 𝜀

(5)

被説明変数

lnP

は、ファミリー家賃(万円

/

月)と共益 費(万円

/

月)の和を対数にしたものを用いる。

OR

は、

物件の属する丁目別の近隣ワンルーム戸数割合であり、

各地点における一般世帯総数を分母に、ワンルーム戸数 を分子として算出した。この値が大きくなるとその地域 でのワンルームの集中居住の度合いが高いと考えられる。

近隣にワンルームが多いことがファミリー家賃を低下さ せているとすると、係数の符号は負になることになる。

X

iはその他の説明変数であり、物件の特徴や立地を示す ものを採用した。

α

は定数項、

β, γ

は係数、

ε

は誤差項を 表す。

②推定結果

推計結果は、表

7

のとおりである。

近隣ワンルーム戸数割合の増加がファミリー家賃に負 の影響を与えていることが1%有意水準で示された。ワ ンルームが近くに多く存在すると、周辺のファミリー家

賃が下がる、つまりファミリー層の効用が下がるという ことが示された。

(3) 考察

単身世帯割合が地価に与える影響の分析と、近隣ワン ルーム戸数割合がファミリー家賃に与える影響の分析の 結果を合わせて考えると、ワンルームはファミリー層に 選別的に負の影響を与えている、外部不経済を与えてい る可能性があるが、全体的には負の影響がないというこ とが示された。

6. まとめ

本稿では、近年、東京都区部で強化が相次ぐワンルー ム規制を取り上げ、規制による弊害の一つであるワンル ーム家賃への影響についての分析を行った。

まず、ワンルームへの各種規制がワンルーム家賃に与 える影響について実証分析を行い、各規制の影響を定量 的に明らかにした。「課税」「ファミリー付置義務」は、

家賃を上昇させていたことが分かり、「最低面積規定」は、

影響がないか低下させている可能性があることが分かっ た。生産者側から見れば最適なものを作ることができず、

消費者側から見れば最適な選択ができない、という弊害 を与えているものだと言える。

次に、ワンルームが負の影響を周囲に与えているのか を検証するため、被説明変数を地価またはファミリー家 賃としたヘドニックアプローチによる実証分析を行い、

ワンルームは、ファミリー層に選別的に負の影響を与え ており、外部不経済を与えている可能性があるが、全体 的には負の影響がないということが分かった。ファミリ ー層への負の影響が外部不経済であれば、外部不経済の 問題に対処するにはその外部不経済の発生要因に対して 直接規制を行うことが望ましいと思われる。ワンルーム の存在は外部不経済の問題を間接的には生じさせる可能 性はあるものの、全体的には負の影響が無いため、外部 不経済の観点からワンルーム規制を正当化することはで きないだろう。

以上より、ワンルーム規制は、ファミリー層への負の 影響の軽減に間接的に寄与する可能性はあるものの、外 部不経済の対応政策としては望ましくない。同時に、最 適ではない住宅供給を強制し、ワンルーム家賃へ影響を 及ぼすといった多くの弊害を生み出しているため、課税、

ファミリー付置義務、最低面積規定といったワンルーム 規制は、非効率な政策と言わざるを得ないだろう。

なお、ワンルームがファミリー層に及ぼす外部不経済 の可能性については、その要因やメカニズムの特定、実 際の住環境の違いによる分析等、詳細な検討が必要だと 思われる。また、規制の家賃への影響は導入されてから の期間によって変わる可能性があると思われるため、今 後の長期的な影響も検証していく必要があると思われる。

被説明変数:ln(ファミリー家賃+共益費) 係数 標準誤差

近隣ワンルーム戸数割合 -0.1913 (0.0448) ***

専有面積 0.0170 (0.0001) ***

専有面積^2 -0.00003 (0.0000003) ***

当該住戸階数 0.0102 (0.0004) ***

当該住戸階数^2 -0.0001 (0.00001) ***

建物階数 0.0030 (0.0003) ***

建物階数^2 -0.00004 (0.000006) ***

建築年数 -0.0161 (0.0002) ***

建築年数^2 0.0002 (0.000006) ***

最寄駅までの時間距離 -0.0053 (0.0005) ***

最寄駅までの時間距離^2 -0.0001 (0.00002) ***

バスダミー -0.0769 (0.0119) ***

東京駅までの時間距離 -0.0018 (0.0004) ***

東京駅までの時間距離^2 -0.0001 (0.00001) ***

構造ダミー yes

路線ダミー yes

区ダミー yes

定数項 2.1399 (0.0084) ***

自由度調整済み決定係数 0.9251

サンプル数 37,460

***,**,*はそれぞれ有意水準1%,5%,10%を満たしていることを示す。

表7 ファミリー家賃への影響 推計結果

参照

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