3.4 シミュレーションによるせん断応力の解析
図3.4.1 圧密貯留層のセメント・ケーシング周辺図
今、半径
R
で厚さH
の円柱形の貯留層が地層から深度D
の所に存在している場合を考え る。貯留層におけるヤング率、ポアソン比はそれぞれEr、
rとする。また、貯留層周辺の 帽岩のヤング率、ポアソン比はそれぞれE
c、
cとする。貯留層が圧力減退を起こすと、貯 留層上部では鉛直下向き、貯留層下部では鉛直上向きの垂直応力を受け貯留層は圧密する。しかし、ケーシングはヤング率が高いので、貯留層と同程度には歪まず、坑井周辺にはせ ん断応力が生じる。せん断応力はケーシング/セメント面であればケーシングの、地層/セメ ント面であればセメントの受ける応力を示している。
貯留層が垂直応力を受け、歪んだときに作用するせん断応力の向きと大きさを示したも の(断面)を図3.4.2に示す。矢印の向きと大きさが、せん断応力の向きと大きさを示してい る。ケーシングが全くなく圧力減退が生じる仮想的な圧密状態では、貯留層の坑井中心か
0 D
R
H Er
,
rc
E
c,
p
Shear stress at cement and casing interface
Shear stress at formation and cement interface
cement cement
E ,
きが変わる地点は中心ではなく、少し下にずれる。
図3.4.2 地層が内側の構造物に作用するせん断応力(断面)
図3.4.1のように貯留層の圧密現象によるケーシング周辺のせん断応力、垂直応力の大き さ評価を、有限要素法Radialモデル用いて行った(シミュレーションや実験との相関の詳 細についてはY, Jinnai., et al. (2008)を参照)。また生産井におけるケーシング周りを対象 とするので応力状態を把握するために圧密排水で想定している。
セメント 地層
ケーシング
3.4.1 単一層の場合
現実的にはありえないが、貯留層が均質で周辺帽岩と同様の硬度を持つ、単一の層であ ると仮定してシミュレーションを行った。
● Case 1
貯留層条件
Er
3000 kpsi ,
r 0 . 23
E
c 3000 kpsi ,
c 0 . 23
E
cement 3000 kpsi ,
cement 0 . 25
D
= 10000 ft,R
= 2604 ft,H
= 150 ftp 3 kpsi
,
He 3 . 2 kpsi ,
Ve 5 kpsi
Borehole diameter(坑井直径) = 8.5 inch Casing OD (ケーシング外径)= 7 inch Casing ID (ケーシング内径)= 6.538 inch
図3.4.3は地表から貯留層下部までのせん断応力を計算したものである。縦軸のDepthは 地表を 0 とし深度を負の値で示している。以降特に明記しない限り深度はこれに準じるこ ととする。また図3.4.4は貯留層内部とその近辺を拡大したものである。横軸にせん断応力 [kpsi]の大きさ、縦軸に地表面からの距離[ft]をとり、坑井中心からの水平距離[ft]ごとにせ ん断応力の変化を見る。せん断応力は鉛直上向きを正とする。
図3.4.3と図3.4.4をみると、地層/セメント面、およびケーシング/セメント面では貯留層 と上部・下部の帽岩と接する周辺でせん断応力が大きいことがわかる。しかしこのケース では貯留層の岩石が周辺岩石と同様に硬いためそれほどせん断応力は大きくない。
図3.4.4より貯留層の上部においては、坑井中心からの距離が大きく地層との境界面近傍 では正のせん断応力が働き、距離が小さい場合には負のせん断応力が働くことが分かる。
一方、貯留層の下部では全く逆であり、坑井中心からの距離が大きく地層との境界面近傍 では負のせん断応力が働き、距離が小さい場合には正のせん断応力が働くことが分かる。
つまり、地層はケーシング付近ではケーシングを引張り込むように圧縮する。しかし、ケ ーシングはヤング率が高くて地層と同じには圧縮しないため、地層とケーシングの間にず れを生じるということになる。これは図3.4.2の概念と同じ結果である。
また、横軸に垂直応力とせん断応力[kpsi]、縦軸に貯留層周辺部の深度[ft]をとったものを
-10200 -10150 -10100 -10050 -10000 -9950
-0.3 -0.2 -0.1 0 0.1 0.2 0.3
Shear Stress [kpsi]
Depth [ft]
r = 3778 ft r = 2369 ft r = 1563 ft r = 312.5 ft r = 0.359 ft r = 0.283 ft f
図3.4.3 坑井からの水平距離ごとのせん断応力
-12000 -11000 -10000 -9000 -8000 -7000 -6000 -5000 -4000 -3000 -2000 -1000 0
-0.3 -0.2 -0.1 0 0.1 0.2 0.3
Shear Stress [kpsi]
De pt h [f t]
r = 3778 ft r = 2369 ft r = 1563 ft r = 312.5 ft r = 0.359 ft r = 0.283 ft
f
図3.4.4 坑井からの水平距離ごとのせん断応力(拡大)
-10300 -10200 -10100 -10000 -9900
-6 -5 -4 -3 -2 -1 0 1 2
Effective stress [kpsi]
De pt h [f t]
Formation/Cement Shear
Formation/Cement Normal
Casing/Cement Shear
Casing/Cement Normal
図3.4.5 地層/セメント面とケーシング/セメント面の垂直応力とせん断応力
3.4.2 軟らかな均質貯留層の場合
貯留層が均質地層であるが、軟らかな地層で、周辺地層とのヤング率が大きく異なる場 合である。
● Case 2
貯留層条件
Er
300 kpsi ,
r 0 . 23
E
c 3000 kpsi ,
c 0 . 23
E
cement 3000 kpsi ,
cement 0 . 25
D
= 10000 ft,R
= 2604 ft,H
= 150 ftp 3 kpsi
,
He 3 . 2 kpsi ,
Ve 5 kpsi
Borehole diameter = 8.5 inch Casing OD = 7 inch
Casing ID = 6.538 inch
この場合もCase 1と同様、図3.4.6に示すように地層/セメント面、ケーシング/セメン ト面のせん断応力は貯留層の上部・下部の境界面付近に集中している。しかし、貯留層岩 のヤング率が小さいのでせん断応力は大きくなる。
-10300 -10200 -10100 -10000 -9900
-6 -5 -4 -3 -2 -1 0 1 2 3 4
Effective Stress [kpsi]
De p th [ ft ]
Formation/Cement Shear
Formation/Cement Normal
Casing/Cement Shear
Casing/Cement Normal
図3.4.6 地層/セメント面とケーシング/セメント面の垂直応力とせん断応力
3.4.3 貯留層の孔隙圧が変化する場合
貯留層内で流体のくみ上げなどにより孔隙圧が減退した場合のシミュレーションで、頁 岩などのシール層の互層のために孔隙圧が互層ごとに変化する場合である。
● Case 3(貯留層の孔隙圧が20 ftごとに0 kpsiと3 kpsiで変化する)
貯留層条件
Er
300 kpsi ,
r 0 . 23
E
c 3000 kpsi ,
c 0 . 23
E
cement 3000 kpsi ,
cement 0 . 25
D
= 10000 ft,R
= 2604 ft,H
= 150 ftp 3 kpsi
,
He 3 . 2 kpsi ,
Ve 5 kpsi
Borehole diameter = 8.5 inch Casing OD = 7 inch
Casing ID = 6.538 inch
図 3.4.7 より、貯留層境界の周辺および孔隙圧が変化する区間前後では、地層/セメント 面、ケーシング/セメント面でのせん断応力は非常に大きいものとなり、またせん断応力の 大きい区間幅の総計も長いことがわかる。
-10300 -10200 -10100 -10000 -9900 -9800
-8 -6 -4 -2 0 2 4
Effective Stress [kpsi]
De pt h [ ft]
Formation/Cement Shear
Formation/Cement Normal
Casing/Cement Shear
Casing/Cement Normal
図3.4.7 地層/セメント面とケーシング/セメント面の垂直応力・せん断応力
3.4.4 混合貯留層の場合
貯留層内で物性の異なる層が交互または混合している場合である。
● Case 4(貯留層内で20ftごとにヤング率が300 kpsiと3000 kpsiの互層)
貯留層条件
Er
300 kpsi ,
r 0 . 23
, Er 3000 kpsi ,
r 0 . 23
E
c 3000 kpsi ,
c 0 . 23
E
cement 3000 kpsi ,
cement 0 . 25
D
= 10000 ft,R
= 2604 ft,H
= 150 ftp 3 kpsi
,
eH 3 . 2 kpsi ,
Ve 5 kpsi
Borehole diameter = 8.5 inch Casing OD = 7 inch
Casing ID = 6.538 inch
図 3.4.8 より、貯留層境界周辺および地層のヤング率が変化する区間において、地層/セ メント面、ケーシング/ケーシング面でのせん断応力は非常に増加している。
-10300 -10200 -10100 -10000 -9900
-8 -6 -4 -2 0 2 4
Effective Stress [kpsi]
De pt h [f t]
Formation/Cement Shear
Formation/Cement Normal
Casing/Cement Shear
Casing/Cement Normal
図3.4.8 地層/セメント面とケーシング/セメント面の垂直応力とせん断応力
3.4.5 傾斜坑井
坑井・ケーシングが一定の傾斜をもって貯留層内に存在する場合であり、傾斜角30°と 60°についての場合である。
● Case5(坑井が傾斜角30°と60°をもって存在している)
貯留層条件
Er
300 kpsi ,
r 0 . 23
E
c 3000 kpsi ,
c 0 . 23
E
cement 3000 kpsi ,
cement 0 . 25
D
= 10000 ft,R
= 2604 ft,H
= 150 ftp 3 kpsi
,
He 3 . 2 kpsi ,
Ve 5 kpsi
Borehole diameter = 8.5 inch Casing OD = 7 inch
Casing ID = 6.538 inch
図3.4.9 傾斜坑井周囲にかかるせん断応力の方向
傾斜坑井の場合、図3.4.9に示すようにケーシング周囲の応力状態は変化し、せん断応力 3.4.10 3.4.11
き起こされるベンディングによるものであると考えられる。この傾向は傾斜が大きくなる ほど顕著であり、貯留層内のせん断応力は小さくなっている。
-10200 -10100 -10000 -9900
-10 -8 -6 -4 -2 0 2 4
TVD (ft)
Shear stress at formation
Normal stress at formation
Shear stress at casing
Normal stress at casing
30-degree
-10300 -10200 -10100 -10000 -9900 -9800
-10 -8 -6 -4 -2 0 2 4 6 8
Average effective stress (kpsi)
TVD (ft)
Shear stress at formation Normal stress at formation Shear stress at casing Normal stress at casing
図3.4.11 傾斜角30°坑井における水平方向の平均垂直・せん断応力
60-degree
-10200 -10100 -10000 -9900
-15 -10 -5 0 5
Effective stress(kpsi)
TVD (ft)
Shear stress at formation Normal stress at formation Shearstress at casing Normal stress at casing
図3.4.12 傾斜角60°坑井における坑井の上下水平方向の垂直・せん断応力
-10200 -10100 -10000 -9900
-15 -10 -5 0 5 10 15
Effective stress(kpsi)
TVD (ft)
Shear stress at formation Normal stress at formation Shear stress at casing Normal stress at casing
図3.4.13 傾斜角60°坑井における水平方向の平均垂直・せん断応力