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都市部在住高齢者における 社会的孤立の予測因子の解明

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早稲田大学審査学位論文 博士(スポーツ科学)

都市部在住高齢者における 社会的孤立の予測因子の解明

Identfying predictors of social isolation among older adults living in urban area

2020年1月

早稲田大学大学院 スポーツ科学研究科

江尻 愛美 EJIRI, Manami

研究指導教員: 岡 浩一朗 教授

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目 次

序論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1

研究Ⅰ 都市部在住高齢者における社会的孤立の予測因子の探索

1. 目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 2. 方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 3. 結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10 4. 考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14

研究Ⅱ 都市部在住高齢者のグループ活動参加と孤立発生の関連の検討

1. 背景と目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17 2. 方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18 3. 結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22 4. 考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28

総合考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31

引用文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・35

謝辞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・44

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1

序 論

1. 健康長寿の実現に向けた社会的孤立予防の必要性

世界的な高齢化の進行に伴い、高齢者の健康の維持増進と長寿の実現が喫緊の課題であ る。世界保健機関は、健康を「単に病気あるいは虚弱でないということではなく、身体的 にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいう」と定 義しており(World Health Organization, 1948)、健康の維持増進には身体的・精神的・社会的 要因の三側面を満たす必要があることが分かる。また、これらの要素は別個に成り立つも のではなく、相互に関連するものである。たとえば、高齢者の多くは運動器疾患、特に腰 痛に悩まされており(身体的健康の悪化)、その悪化は抑うつ症状を高め(精神的健康の悪 化)(江尻ら, 2016)、社会的孤立の一因となる(社会的健康の悪化)(Iliffe et al., 2007)。高齢 者の要介護や死亡の原因について見てみても、関節疾患や転倒骨折など身体的健康の悪化 (厚生労働省, 2016)、抑うつ症状など精神的健康の悪化(Schulz et al., 2000)、孤立や孤独など 社会的健康の悪化(Steptoe et al., 2013)の三側面が挙げられる。この中でも、近年特に注目さ れているのが、社会的健康を保つことの重要性である。死亡のリスクファクターについて 検討したメタアナリシスによると、リスクファクターとして広く知られる飲酒や喫煙、運 動習慣や肥満といった生活習慣よりも、社会との繋がりの影響が最も強いことが報告され

ている(Holt-Lunstad et al., 2010)。また、高齢者の要介護の危険の高い状態であるフレイル

の進行には、身体的健康が阻害される最も初期に、社会性の低下があるとされている。し たがって、高齢者の健康長寿の実現のためには、社会や他者との繋がりを保つことが非常 に重要である。

この社会や他者との繋がりが希薄な状態を、「社会的孤立」とよぶ。孤立は、社会的な繋 がりや交流が客観的に減少した状態と定義される。加齢に伴う社会的ネットワークの変化 や社会的役割の減少により、高齢期に孤立状態に陥る者は多い(T. F. Smith & Hirdes, 2009)。 高齢期の孤立は、死亡率の上昇(Eng et al., 2002; Hawton et al., 2011; Holt-Lunstad et al., 2015;

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2

Holt-Lunstad et al., 2010; Pantell et al., 2013; S. G. Smith et al., 2018; Steptoe et al., 2013)、要介 護状態の発生(斉藤ら, 2013; 斉藤ら, 2015)、認知症の発症(Fratiglioni et al., 2000; Kuiper et al., 2015)、抑うつや睡眠障害(Choi et al., 2015)、健康関連QOLの低下(Hawton et al., 2011)と関 連している。また、こうした客観的に定義される孤立は、主観的な状態である孤独よりも、

死亡(Steptoe et al., 2013)、認知機能低下(Griffin et al., 2018)、医療費の増大(Shaw et al., 2017) との関連が強い。

一方で、古くから老年社会学においては、加齢と共に高齢者が社会から撤退することは 自然な過程であり、サクセスフルエイジングにとって必要だとする離脱理論が適応理論と して提唱されてきた(小田, 2004)。実際、高齢期に自ら望んで他者との関わりを減少させる 者も少なくない。ただし、生活に満足していても孤立状態にある高齢者は要介護状態に陥 るリスクが高く、本人が社会的孤立を肯定的に評価していたとしても孤立状態そのものが 健康上の不利をもたらすことが指摘されている(斉藤ら, 2013)。したがって、高齢者の孤立 予防を推進することは、健康寿命の延伸のために必須の課題である。しかし、これまでの 高齢者の孤立に関する研究は、そのほとんどが孤立を独立変数としてネガティブな健康ア ウトカムにつながることを示した研究であり、孤立そのものをアウトカムにした研究は少

ない(T. F. Smith & Hirdes, 2009)。したがって、孤立予防策を検討する上で必要な、予測因子

に関する知見が限られていることが指摘されている(Nicholson, 2012)。

2. 社会的孤立に関する先行研究の動向

これまで、高齢化が進んだ先進国である欧米諸国や日本を中心として、高齢者の孤立の 関連要因についての研究が行われてきた。地域在住高齢者を対象とし、孤立を社会的な繋 がりや交流の減少から客観的に定義した研究について以下に示す。

アメリカでは3編報告されている。まず、国民健康栄養調査のデータを使用して視聴覚 障害と孤立の関連が検討されている。Coyleら(2017)は、孤立のリスクの高い状況としてソ ーシャルサポートの少ない状況を挙げ、これらに視覚障害が与える影響について検討して

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いる。その結果、自覚的な視覚が悪い者は、情緒的ソーシャルサポートが少ない、親しい 友人がいないなどの孤立のリスクが高い状況にあてはまる危険性がより高かったと報告し ている。また、Mickら(2014)は聴覚障害との関連を検討しており、60代の女性では聴覚障 害があることが孤立のリスクの高まりと関連していた。特に、聴覚障害のある 60 代女性 は、必要な時に情緒的サポートや金銭的サポートを受けられていなかったことが報告され ている。

また、Jang ら(2016)は韓国系アメリカ人の移民を対象として調査を行い、家族からの孤

立と友人からの孤立のそれぞれの関連要因を検討している。その結果、男性であること、

健康度自己評価が低いことは、家族からの孤立および友人からの孤立に共通した関連要因 だった。また、家族からの孤立には、高齢である者、未婚で独居である者が該当しやすく、

一方で慢性疾患を1~2種類持つ者はそれ以上持つ者や慢性疾患がない者より家族からの孤 立の該当者が少なかった。さらに、友人からの孤立には、経済状況が平均未満であること、

日常生活動作(Activities of Daily Living: ADL)・手段的日常生活動作(Instrumental Activities

of Daily Living: IADL)に援助が必要であること、米国に移住してからの期間が短いことが

関連していた。

イギリスでも3編報告されている。Iliffeら(2007)がロンドンで行った横断研究では、男 性、独居、低い健康度自己評価、抑うつ症状、認知機能障害が孤立のリスクを高めると報 告されている。また、Kharichaら(2007)は、世帯構成に着目して研究を行い、独居者におけ る孤立者の割合は家族との同居者の倍であり、人口統計学的要因を調整した上でも独居が 孤立のリスクとなることを明らかにしている。de Koningら(2017)は、イギリスの農村部の 地域高齢者を対象に、家族からの孤立と友人からの孤立の関連要因を横断的に検討してい る。その結果、男性が孤立のリスクが高く、居住期間が長いほどリスクが低いことが家族 からの孤立と友人からの孤立に共通した要因だった。また、暮らし向きが悪いと回答して いる者は家族からの孤立のリスクが低く、地域活動に参加している者は友人からの孤立の リスクが低い結果だった。

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カナダでは2編の報告がある。Havensら(2004)は、カナダの都市部と地方部に在住する 高齢者を対象に孤立の関連要因を検討している。その結果、両地域で共通していた関連要 因は独居のみであり、その他の要因は地域によって差があることが明らかとなっている。

都市部では、より高齢(85歳以上)であること、援助が必要なIADLが多いことが関連要 因であり、地方部では、親戚の居住地が遠いこと、生活満足度が低いこと、認知機能低下、

援助が必要な ADL が多いことが関連していた。また、都市部の方が地方部より孤立者の 割合が多かったと報告されている。Kobayashiら(2009)が行ったインタビュー調査では、高 齢である者、男性、未婚者や未亡人、健康度自己評価の低い者、低年収の者、借家に住ん でいる者で孤立のリスクが高く、調査対象地域での居住年数が長い者ほど孤立のリスクが 低いという結果が得られている。

そして日本では、世帯構成に着目し、独居者と家族との同居者の孤立の関連要因を検討 した研究が2編報告されている。まず、Shimadaら(2014)は都市部の地域在住高齢者を対象 に調査を行い、独居・同居に関わらず、精神的健康度が低いことと同居家族以外からのサ ポートが少ないことが孤立状況と関連していること、家族との同居者では知的能動性が低 いことや健康的な生活習慣が少ないことも孤立と関連していたことを報告している。また、

斉藤ら(2010)は首都圏ベッドタウンに在住する高齢者を対象として調査を行い、独居・同

居に関わらず、男性、子供がいない者および近居子がいない者、所得の低い者が孤立に該 当しやすいことを報告している。また、独居者では、婚姻中の者や死別者と比較して離別 者と未婚者が孤立に該当しやすく、同居者ではより高齢の者と日常の移動能力に障害のあ る者が孤立に該当しやすかったと報告している。

また、マレーシアの地域在住高齢者を対象としたIbrahimら(2013)の横断研究では、女性 であること、兄弟姉妹や子どもの数が少ないこと、都市部に住んでいること、健康度自己 評価が低いこと、借家であることが孤立のリスクを高める要因として挙げられている。女 性でリスクが高いとした点が、高齢化が進んだ先進諸国での研究とは異なっていた。

これらの先行研究をみると、男性、加齢、独居、経済状況、心身機能の低下が主に関連

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5

要因として挙げられている。しかし、これらの先行研究はいずれも横断研究であり、縦断 研究は行われていない。孤立予防策を検討する上では、縦断的研究デザインを用いて研究 を行い、予測因子を明らかにする必要があるといえる。加えて、これまでに先行研究で検 討されてきた孤立の関連要因は、高齢者の身体的・心理的・経済的側面や環境的要因が主

であり(Nicholson, 2012)、社会的側面については十分に検討されてこなかった。上記に示し

た先行研究でも、社会的な要因について検討しているのは、地域活動への参加を取り扱っ た一編と(de Koning et al., 2017)、外出頻度を取り扱った一編(Shimada et al., 2014)の計二編の みであった。したがって、高齢者の社会参加や外出頻度という社会的要因についても考慮 し、孤立の予測因子を多面的に検討する必要があると考えられる。そして、都市部に在住 する高齢者は、孤立者の割合が多いことが報告されている。カナダでは地方部と比較して 都市部の孤立者が多く(Havens et al., 2004)、この傾向は我が国でも同様である。先行研究に おける孤立者の割合をみてみると、東京都区部で25.7%(Shimada et al., 2014)、首都圏ベッ ドタウンで 26.8%(斉藤ら, 2010)であるのに対し、愛知県知多半島では 15.8%と(斉藤ら,

2015) と、都市部で多いことがわかる。また、我が国の都市部に在住する高齢者は、他地

域と比較して友人との交流が少ないことも報告されている(斎藤ら, 2015)。さらに、国にお いても、都市部において高齢者が地域から孤立した状態で死亡する事例が発生しているこ とを受け、高齢者の孤立予防のための取り組みの推進が求められている(総務省, 2013)。こ れらの点から、特に孤立しやすい都市部在住高齢者において、孤立の予測因子を明らかに することは意義が大きいと考えられる。

3. 本研究の目的

本研究の目的は、都市部の地域在住高齢者における社会的孤立の予測因子を縦断的に明 らかにし、孤立予防のための効果的な対策を検討することとした。

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研究Ⅰ 都市部在住高齢者における社会的孤立の予測因子の探索

1. 目的

都市部の地域在住高齢者における社会的孤立の予測因子を2年間の前向きコホート研究 により明らかにすること。

2. 方法 1) 対象者

本調査は、2012年10月1日時点で東京都板橋区の9町丁目に在住する65歳から85歳 の高齢者に対する悉皆調査として実施した。対象者の抽出には板橋区の住民基本台帳を用 い、調査対象地域に在住する該当年齢の高齢者全数を抽出した。抽出した対象者のうち、

地域内の施設の入居者174名は、地域在住高齢者に該当しないため除外した。また、東京 都健康長寿医療センター研究所で実施している既存のコホート研究の参加者289名は、当 該コホートでの追跡調査を受けることから、対象者への負担増を避けるために除外した。

対象者には、説明文書、質問紙、返信用封筒を送付し、本研究の趣旨、データの利用範囲、

プライバシーの保護について書面にて説明し、文書にて同意を得た。2012年に7,015名に 対して質問紙を送付し、3,696 名から回答を得た(ベースライン調査、回収率52.7%)。ベ ースライン調査の回収不能数は3,319名であり、その内訳は、未返送3,256名、転居41名、

死亡21名、対象者以外が回答1名だった。そして、2012年の回答者に対して2014年に再 度質問紙を送付し、2,375名から回答を得た(フォローアップ調査、追跡率64.2%)。フォ ローアップ調査の回収不能数は1,321名であり、その内訳は、未返送1,288名、転居23名、

死亡9名、対象者以外が回答1名だった。フォローアップ調査回答者のうち、調査項目に 欠損がない1,760名を分析対象とした。(図1)。

なお、本研究は、東京都健康長寿医療センター研究所の倫理委員会の承認(承認番号:

平成25年度61、承認年月日:平成25年9月18日)を得て実施した。

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図1 調査フロー

2) 調査項目

①従属変数

従属変数は、フォローアップ時の孤立状況とした。孤立状況は、別居の家族・親戚およ び友人・近所の人との接触頻度を、対面接触(会ったり、一緒に出かけたりする)頻度と

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非対面接触(電話で話したり、電子メールやファックスでやりとりしたりする)頻度のそ れぞれについて、「週に6、7回(ほぼ毎日)」「週に4、5回」「週に2、3回」「週に1回く らい」「月に2、3回」「月に1回くらい」「月に1回よりも少ない」「まったくない」の8件 法で尋ねた。分析にあたっては、斉藤ら(2010)の定義を基に、別居家族・親戚および友人・

近所の人との対面接触がいずれも「月に2、3回以下」であり、それらの人々との非対面接 触も「月に2、3回以下」である人、つまり週1回未満である人を「孤立」、いずれかの関 係の人との対面もしくは非対面接触が週に1回以上である人を「非孤立」と定義した。な お、同一内容の接触頻度が、別居家族・親戚と友人・近所の人のいずれも「月に2、3回」

の場合は、2 種類の関係を合わせると週に 1回を超えるため、「非孤立」に分類した(斉藤 ら, 2010)。また、これらの項目のうち一部に回答していない場合でも、回答された項目の うちいずれかで「週に1回」以上であれば「非孤立」に分類した(斉藤ら, 2010)。

②独立変数

独立変数は、ベースライン時の健康度自己評価、慢性疾患、IADL障害、外出頻度、グル ープ活動参加頻度、世帯構成、主観的経済状況、孤立状況とした。

健康度自己評価は、「非常に健康である」「まあ健康である」「あまり健康でない」「健康 でない」の4件法で尋ねた。

慢性疾患については、高血圧、糖尿病、脳卒中、がん、肝臓病、心臓病、歯科疾患、整 形外科疾患、その他について、現在治療中の疾患を複数回答で選択させ、いずれかを治療 している場合は「治療中の疾患あり」、ない場合は「治療中の疾患なし」とした。

IADL は、老研式活動能力指標の手段的自立に関する 5項目(公共交通機関を利用した 単独での外出、日用品の買い物、食事の用意、請求書の支払い、預貯金の管理)で評価し

(Koyano et al., 1991)、「できない」と回答した活動の数をIADL障害数とした。

外出頻度は、「毎日2回以上」「毎日1回」「2~3日に1回程度」「1週間に1回程度」「月 1~2回程度」「年に数回程度」「ほとんど外出しない」の7件法で尋ね、閉じこもりで用い

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られる定義(新開ら, 2005)を元に、「週2回以上」、「週1回以下」の二群とした。

グループ活動参加頻度は、自治会、老人クラブ、趣味のグループ、スポーツのグループ、

ボランティアのグループ、政治団体、業界団体、宗教団体、その他について当てはまるも のを複数回答で選択させ、いずれかに参加している場合はそれらの活動への合計の参加頻 度を「週1回以上」、「月1~3回」、「月1回未満」、「この1年は参加せず」から選択させ た。いずれにも参加していない場合は「所属していない」とした。

世帯構成は、現在同一敷地内に居住している者の続柄について、配偶者、息子、娘、子 の配偶者、父母、配偶者の父母、孫、その他から当てはまるものを複数回答で選択させ、

いずれかと同居している場合は「同居者あり」、同居していない場合は「独居」とした。

主観的経済状況については、回答者の世帯の今の暮らし向きについて、「非常にゆとりが ある」「ゆとりがある」「どちらともいえない」「苦労している」「非常に苦労している」の 5件法で尋ね、非常にゆとりがあるからどちらともいえないを「苦労していない」、苦労し ているから非常に苦労しているを「苦労している」として二群化した(Jang et al., 2016)。 ベースライン時の孤立状況は、従属変数と同様の定義と分類を用いた。

3) 分析方法

フォローアップ時の孤立状況とベースライン時の各独立変数との関連を、それぞれ t 検 定、カイ二乗検定で検討した。次に、フォローアップ時の孤立状況の予測因子を検討する ため、フォローアップ時の孤立の有無を従属変数としたロジスティック回帰分析を、各独 立変数の単変量のModel1、すべての独立変数を投入した多変量のModel2の2つのモデル で行った。

分析にはIBM SPSS Statistics version 23を用い、有意水準5%未満で統計学的有意と判断 した。

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10 3. 結果

分析対象者のうち、フォローアップ時の孤立者は335名(19.0%、ベースライン時の平均

年齢73.1±5.4歳、男性67.8%)、非孤立者は1,425名(81.0%、ベースライン時の平均年齢

72.2±5.2歳、男性41.6%)だった(表1)。孤立者は、非孤立者と比較して、男性の割合が

高く(p<0.001)、年齢が高く(p=0.004)、健康度自己評価が低い者の割合が高く(p<0.001)、 IADL障害数が多く(p<0.001)、外出頻度が週1回以下の者の割合が高く(p<0.001)、グル ープ活動へ参加していない者の割合が高く(p<0.001)、主観的経済状況が苦労している者 の割合が高く(p<0.001)、孤立している者の割合が高かった(p<0.001)。

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表1:ベースライン時の対象者特性(n=1,760)

n % n %

性別

 女性 108 32.2% 832 58.4%

 男性 227 67.8% 593 41.6%

年齢

 Mean(SD)

健康度自己評価

 非常に健康である 26 7.8% 184 12.9%

 まあ健康である 218 65.1% 1,005 70.5%

 あまり健康でない 62 18.5% 195 13.7%

 健康でない 29 8.7% 41 2.9%

慢性疾患

 治療中の疾患なし 50 14.9% 263 18.5%

 治療中の疾患あり 285 85.1% 1,162 81.5%

IADL障害数  Mean(SD)

外出頻度

 週2回以上 301 89.9% 1,361 95.5%

 週1回以下 34 10.1% 64 4.5%

グループ活動参加頻度

 週1回以上 43 12.8% 473 33.2%

 月1~3回 71 21.2% 324 22.7%

 月1回未満 24 7.2% 126 8.8%

 この1年は参加せず 26 7.8% 62 4.4%

 所属していない 171 51.0% 440 30.9%

世帯構成

 同居者あり 263 78.5% 1,132 79.4%

 独居 72 21.5% 293 20.6%

主観的経済状況

 苦労していない 231 69.0% 1,171 82.2%

 苦労している 104 31.0% 254 17.8%

孤立状況

 非孤立 107 31.9% 1,216 85.3%

 孤立 228 68.1% 209 14.7%

Mean: 平均値、SD: 標準偏差

IADL; Instrumental Activities of Daily Living

孤立者(n=335) 非孤立者(n=1,425)

73.1(5.4) 72.2(5.2)

0.3(0.9) 0.1(0.5)

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単変量のロジスティック回帰分析の結果(Model1)、フォローアップ時の孤立の有意な予 測因子となったのは、男性、年齢、健康度自己評価、IADL障害数、外出頻度、グループ活 動参加頻度、主観的経済状況、孤立状況だった(表2)。そして、多変量のロジスティック 解析では(Model2)、男性(オッズ比:1.88、95%信頼区間:1.41-2.50、p<0.001)、年齢(1 歳増加)(オッズ比:1.03、95%信頼区間:1.01-1.06、p=0.017)が、フォローアップ時の孤 立の有意な予測因子であった(表2)。また、IADL障害数が1種類増加するごとに孤立に 該当する確率が有意に高まった(オッズ比:1.30、95%信頼区間:1.01-1.66、p=0.041)。さ らに、グループ活動に週 1 回以上参加している者と比較して、月1~3 回参加している者 は、フォローアップ時に孤立に該当する可能性が有意に高かった(オッズ比:1.65、95%信 頼区間:1.05-2.58、p=0.030)。そして、主観的経済状況が苦労していない者と比較して、苦 労している者は孤立に該当する可能性が有意に高かった(オッズ比:1.69、95%信頼区間:

1.21-2.36、p=0.002)。さらに、ベースライン時に孤立していなかった者と比較して、孤立し

ていた者は、フォローアップ時に孤立に該当する可能性が有意に高かった(オッズ比:10.35、 95%信頼区間:7.66-14.0、p<0.001)。

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13 表2:フォローアップ時の孤立状況に関連する要因(n=1,760)

全体 孤立者

n n オッズ比 オッズ比

性別

 女性 940 108 1.00 1.00

 男性 820 227 2.95 ( 2.29 - 3.80 ) 1.88 ( 1.41 - 2.50 )

年齢 1.03 ( 1.01 - 1.06 ) 1.03 ( 1.01 - 1.06 )

健康度自己評価

 非常に健康である 210 26 1.00 1.00

 まあ健康である 1,223 218 1.54 ( 0.99 - 2.37 ) 0.96 ( 0.58 - 1.59 )  あまり健康でない 257 62 2.25 ( 1.36 - 3.71 ) 1.01 ( 0.56 - 1.84 )  健康でない 70 29 5.01 ( 2.67 - 9.38 ) 1.73 ( 0.76 - 3.96 ) 慢性疾患

 治療中の疾患なし 313 50 1.00 1.00

 治療中の疾患あり 1,447 285 1.29 ( 0.93 - 1.79 ) 1.07 ( 0.72 - 1.58 ) IADL障害数 1.66 ( 1.38 - 1.99 ) 1.30 ( 1.01 - 1.66 ) 外出頻度

 週2回以上 1,662 301 1.00 1.00

 週1回以下 98 34 2.40 ( 1.56 - 3.71 ) 0.90 ( 0.51 - 1.60 ) グループ活動参加頻度

 週1回以上 516 43 1.00 1.00

 月1~3回 395 71 2.41 ( 1.61 - 3.61 ) 1.65 ( 1.05 - 2.58 )  月1回未満 150 24 2.10 ( 1.23 - 3.58 ) 0.87 ( 0.47 - 1.59 )  この1年は参加せず 88 26 4.61 ( 2.65 - 8.03 ) 1.73 ( 0.90 - 3.31 )  所属していない 611 171 4.28 ( 2.99 - 6.12 ) 1.43 ( 0.94 - 2.18 ) 世帯構成

 同居者あり 1,395 263 1.00 1.00

 独居 365 72 1.06 ( 0.79 - 1.41 ) 1.23 ( 0.86 - 1.76 )

主観的経済状況

 苦労していない 1,402 231 1.00 1.00

 苦労している 358 104 2.08 ( 1.59 - 2.71 ) 1.69 ( 1.21 - 2.36 ) 孤立状況

 非孤立 1,323 107 1.00 1.00

 孤立 437 228 12.40 ( 9.44 - 16.3 ) 10.35 ( 7.66 - 14.0 )

ロジスティック回帰分析 Model1:単変量

Model1 Model2

(95%信頼区間) (95%信頼区間)

Model2:性、年齢、健康度自己評価、慢性疾患、IADL障害、外出頻度、団体参加頻度、世帯構成、

主観的経済状況、孤立状況で調整

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14 4. 考察

都市部の地域在住高齢者の社会的孤立の予測因子を縦断的に調査した結果、性、年齢、

IADL障害、グループ活動参加頻度、主観的経済状況が2年後の孤立状況に関連していた。

まず、男性は社会的孤立のリスクが高いことが明らかとなった。先行研究においても、

男性がより孤立していることが報告されており(de Koning et al., 2017; Iliffe et al., 2007; Jang et al., 2016; Kobayashi et al., 2009; 斉藤ら, 2010)、本研究はこれを支持していた。我が国の 高齢者において、男性は女性と比較して、団体・会への参加や友人・知人との交流が少な

い(斎藤ら, 2015)。本研究における孤立の定義には、友人・近所の人との接触頻度を用いて

いるため、男性において孤立の危険性が高まる結果となったと考えられる。

また、年齢も孤立の予測因子であった。先行研究においても、都市においては高齢であ ることが孤立のリスクを高めることが明らかとなっている(Havens et al., 2004)。英国におい ては、加齢と共に孤立者は増加し、前期高齢者での孤立者の割合が12.3%であるのに対し、

75歳から79歳では15.2%、80歳から84歳では20.2%、85歳以上では31.8%と報告されて

いる(Iliffe et al., 2007)。この理由として、加齢に伴い、友人や親戚など社会的繋がりのある

人が減少することや(Victor et al., 2001)、同世代の者が相次いで死亡することにより交流が 制限されること(Steptoe et al., 2013)が挙げられている。したがって、高齢期に縮小する社会 的ネットワークを保持することが、都市部の高齢者の加齢に伴う孤立を防ぐと考えられる。

そして、IADL 障害数が増加すると孤立に該当するリスクが高まった。都市部に在住す る高齢者において、IADL 障害が社会的孤立と関連することは先行研究でも指摘されてお

り(Havens et al., 2004)、本研究はこの知見と一致していた。したがって、IADLを維持する

ことが孤立予防において重要であると考えられる。高齢者の高次生活機能において、IADL は最後に低下する機能であり、知的能動性の低下がIADLの低下を予測する因子であるこ

とから(Fujiwara et al., 2003)、知的能動性を保つことは、IADL低下予防を通じて孤立予防に

も役立つ可能性がある。

さらに、グループ活動に定期的に参加していても、参加頻度が週1回以上の者と比較し

(17)

15

て、月1回から3回の者は孤立状態となるリスクが高かった。これまで、孤立と社会的要 因との関連は十分に検討されておらず、本研究はこれを明らかにした数少ない研究である。

本研究により、孤立を予防するためには、定期的なグループ活動への参加頻度を高めるこ とが重要であることが示唆された。グループ活動に参加している高齢者は参加していない 者と比較して健康度自己評価が良好であることが報告されており(Kishimoto et al., 2013)、 高齢期のグループ活動への参加は、健康度自己評価の改善を通じて社会的孤立を予防する 可能性があると考えられる。一方、参加頻度が月に1回未満もしくはこの1年は参加して いないと回答した、社会活動への参加頻度が不定期の者では、孤立のリスクは高まらなか った。社会活動への参加頻度に影響を及ぼすと考えられる就労が解析に含まれていないこ とが関連していた可能性がある。

一方で、複数の先行研究により孤立の危険因子とされている独居(Grenade & Boldy, 2008;

Havens et al., 2004; Iliffe et al., 2007; Kharicha et al., 2007)は、本研究では2年後の孤立の予測 因子とはならなかった。これらの先行研究は横断研究であり、独居率は32.9%~52.0%であ ったが(Havens et al., 2004; Iliffe et al., 2007; Kharicha et al., 2007)、本研究は縦断研究で、独居

率も 20.8%と異なる。このことから、孤立と独居の関連は横断的であり、孤立のリスクを

高めるのは同時期における世帯構成(独居)である可能性がある。近年、我が国において 独居高齢者の割合は男女ともに顕著に増加しており、1980年には男性4.3%、女性11.2%で あったが、2010 年には男性 11.1%、女性 20.3%と倍増したことが報告されている(内閣府,

2016)。さらに、2020年には、高齢世帯(世帯主が65歳以上の世帯)において、独居世帯

の占める割合が最も多くなると推計されている(国立社会保障・人口問題研究所, 2018)。し たがって、本研究では関連が認められなかったものの、独居高齢者に対する孤立予防の取 り組みの必要性は依然として高いと考えられる。

また、本研究において、ベースライン調査とフォローアップ調査のデータが完備した者 の孤立者の割合は 19.4%であったが、ベースライン調査の回答者 3,696 名の孤立状況を横 断的に検討した結果、949名(25.7%)が孤立していた。我が国における先行研究では、東

(18)

16

京都区部で25.7%(Shimada et al., 2014)、首都圏ベッドタウンで26.8%(斉藤ら, 2010)と報告 されており、本研究はこれらと同等の結果であった。一方、愛知県知多半島では15.8%(斉

藤ら, 2015)であると報告されており、都市部は地方部と比較して孤立している高齢者が多

いという先行研究(Havens et al., 2004)を支持する結果となった。

本研究の限界として、郵送法による質問紙調査の回収率が 52.7%、追跡率が 64.2%と高 くなかった点が挙げられる。したがって、ベースライン時に孤立状態にある者や、健康状 態が不良である者の回答が得られていない可能性がある。ただし、ベースラインの回答者 と対象者集団の年齢や男女比に乖離は認められなかった。

本研究で孤立の予測因子として挙げられた要因のうち、新たな知見であり介入により修 正可能な要因と考えられるのはグループ活動への参加頻度であった。このグループ活動へ の参加のような、社会や地域における他社との関わりをもたらす活動への参加は、社会参 加と定義されている(Levasseur et al., 2010)。高齢期の社会参加は、全死亡(Aida et al., 2011;

Eng et al., 2002; Hsu, 2007; Pantell et al., 2013)、認知機能低下(James et al., 2011; Wang et al., 2002)、抑うつ(Chiao et al., 2011; Cruwys et al., 2013)等のリスクを低下させ、主観的健康観を 高める(中村ら, 2002)。本研究により、社会参加を促すことが孤立予防においても役立つ可 能性が示唆された。

(19)

17

研究Ⅱ 都市部在住高齢者のグループ活動参加と孤立発生の関連の検討

1. 背景と目的

研究Ⅰで都市部在住高齢者の孤立の予測因子を縦断的に検討した結果、介入により修正 可能な因子としてグループ活動への参加頻度が挙げられた。こうしたグループ活動への参 加を始めとした社会参加の効果を検討する上では、研究Ⅰで検討した参加頻度だけでなく、

その活動の種類や量にも着目する必要がある。

まず、活動の種類については、地域コミュニティの活動への参加よりも趣味やスポーツ のグループへの参加の方が新規要介護認定率やIADL低下を抑制することが先行研究で明 らかとなっている(Kanamori et al., 2014; Tomioka et al., 2017a)。このように、活動の種類に よりアウトカムとの関連に差があるため、どのような活動への参加が健康の維持に有効か を明らかにすることは重要である。しかしながら、孤立の発生に対して活動の種類を検討 した研究は行われていない。また、活動の量に関しては、多くの活動に参加しているほど 精神的な健康状態が良いという報告や(Cruwys et al., 2013; Lam et al., 2018)、3種類以上の活 動に参加することが要介護認定を防ぐという先行研究がある(Kanamori et al., 2014)。しか し、孤立の発生と社会参加の量との関係性は明らかになっていない。どのような活動にど れだけ参加することが孤立を防ぐかを明らかにすることは、高齢者に対する具体的な孤立 予防策を検討する上で重要であると考えられる。

また、社会参加が健康に与える影響には、性差があることが多数の先行研究で指摘され ている(Aida et al., 2011; Amagasa et al., 2017; Kishimoto et al., 2013; Sun et al., 2007; Takagi et

al., 2013; Tomioka et al., 2017a)。さらに、孤立にも性差があることが多数の先行研究で報告

されており(de Koning et al., 2017; Iliffe et al., 2007; Jang et al., 2016; Kobayashi et al., 2009; 斉

藤ら, 2010)、研究Ⅰにおいても男性は女性と比較して孤立者の割合が多かった。従って、

孤立と社会参加の関係を検討する上では、性別の検討が必要であると考えられる。

そこで、本研究の目的は、都市部の地域在住高齢者におけるグループ活動参加の種類お

(20)

18

よび参加数と孤立の発生の関連を、3 年間の前向きコホート研究により性別に明らかにす ることとした。

2. 方法 1) 対象者

本研究の対象者は、研究Ⅰのコホート研究の参加者とした。つまり、2012年に東京都板 橋区の対象地域に在住する65歳から85歳の全高齢者7,015名に対して実施した郵送調査

の回答者3,696名である。本研究では、2014年に転居者や死亡者を除く3,518名に調査票

を送付し、2,374名から回答を得た(ベースライン調査、回収率67.5%)。回収不能数は1,144 名であり、その内訳は、未返送1,123名、転居14名、死亡7名だった。また、回答者のう

ち523名(22.0%)が既に孤立状態だった。2017年に、これらの孤立者および孤立に関す

る設問への回答が不十分であり孤立状況が不明である者を除く 1,644 名に再度調査票を送

付し、1,314名から回答を得た(フォローアップ調査、追跡率79.9%)。回収不能数は330名

であり、その内訳は、未返送266名、転居54名、死亡10名だった。回答者のうち、調査 項目に欠損のない1,070名(男性398名、女性672名)を分析対象とした(図2)。なお、

分析対象者とデータ欠損による除外者の年齢と性には有意差は認められなかった。

本研究は、東京都健康長寿医療センター研究所の倫理委員会の承認(承認番号:平成25 年度61、承認年月日:2013年9月18日)を得て実施した。対象者には、調査の目的、参 加は自由意思であること、プライバシーと匿名性は厳守されること等を書面にて説明し、

文書にて同意を得た。

(21)

19

図2 調査フロー

(22)

20 2) 調査項目

①従属変数

従属変数は、フォローアップ時の孤立状況とした。孤立の定義には、研究Ⅰと同様に、

別居の家族・親戚および友人との、対面接触(会う、一緒に出かける)頻度と非対面接触

(電話で話す、メールでやりとりする)頻度を用いた。これらがいずれも週1回未満の場 合、「孤立」と定義した(斉藤ら, 2015)。

②独立変数

独立変数は、ベースライン時に参加しているグループ活動の種類および参加数を用いた。

まず、活動の種類として、8つのグループ活動(自治会、老人クラブ、趣味のグループ、ス ポーツのグループ、ボランティアのグループ、政治団体、業界団体、宗教団体)それぞれ への参加の有無を尋ねた。そして、これを元に参加している活動の数を加算して参加数を 算出し(値の範囲:0~8)、先行研究を基に、分布の均等を考慮して4つのカテゴリに分類 した:0(不参加)、1、2、3以上(Kanamori et al., 2014)。ここで、自治会とは、コミュニテ ィを快適で安全な環境とすることを目的とした組織であり、防火・防災活動、交通安全活 動、美化活動等の活動を行っている。2017年の内閣府の調査によると、約20%の高齢者が 自治組織に参加しているが、参加率は都市規模が大きくなるほど減少する(内閣府, 2017)。

また、老人クラブは、1963年の老人福祉法に基づいて設立された団体で、地方自治体の支 援を受けている。老人クラブの活動は、学習、スポーツ、レクリエーション、趣味や文化 活動など多岐にわたり、これらの活動を通じて高齢者の生活を豊かにすることを目的とし ている。老人クラブは、自治会と同様に、コミュニティベースの結合型組織ととらえられ ている(伊藤 & 近藤, 2013)。

③共変量

先行研究で孤立との関連が指摘されている、年齢、健康度自己評価、慢性疾患、IADL障

(23)

21

害、外出頻度、世帯構成、主観的経済状況、ソーシャルサポートの認知を共変量とした。

健康度自己評価は4件法で尋ね、健康である(非常に健康である/健康である)と健康で ない(あまり健康でない/健康でない)に二群化した。慢性疾患は、高齢期に一般的な 8 種類の疾患(高血圧、糖尿病、脳卒中、がん、肝臓病、心臓病、歯科疾患、整形外科疾患)

の中からあてはまるものを全て選択させた。IADL は、老研式活動能力指標の5 つの設問

(公共交通機関を利用した単独での外出、日用品の買い物、食事の用意、請求書の支払い、

預貯金の管理)で評価し(Koyano et al., 1991)、IADL障害は「できない」と回答した数を用 いた(値の範囲:0~5)。外出頻度は、閉じこもりの定義を基に、週2回以上と週1回以下 に二群化した(新開ら, 2005)。世帯構成は、独居か同居者ありに二群化した。主観的経済状 況は、苦労している(非常に苦労している/苦労している)と苦労していない(どちらと もいえない/ややゆとりがある/非常にゆとりがある)で評価した。ソーシャルサポート の認知は、情緒的サポートとして、心配事や愚痴を聞いてくれる人、手段的サポートとし て、数日間病気で寝込んだときに看病してくれる人を、配偶者、同居の子、別居の親戚、

近隣住民、友人、その他からあてはまるものを全て選択させ、それぞれ合計数を算出した (Murata et al., 2017)。

3) 分析方法

フォローアップ時の孤立状況別に、対象者の属性をカイ二乗検定および対応のないt 検 定で検討した。つぎに、ベースライン時に参加していたグループ活動の種類もしくは参加 数を独立変数、フォローアップ時の孤立の有無を従属変数としたロジスティック回帰分析 を、以下の3つのモデルで行った:単変量のModel1、年齢と、種類の分析のみ全ての種類 を調整したModel2、Model2に全ての共変量を追加したModel3。また、参加数の分析では、

Model3 においてトレンド検定も併せて行った。また、ロジスティック回帰分析に先立ち、

多重共線性を避けるため、独立変数の相関分析を行った。その結果、相関係数は最大で自 治会と老人クラブの0.33(p<0.001)であったため、Model2およびModel3では全ての種類

(24)

22

を分析に投入した。全ての分析は性別に実施し、各モデルにおいて不参加を参照カテゴリ とした。

分析にはIBM SPSS Statistics version 23を用い、有意水準5%未満で統計学的有意と判断

した。

3. 結果

分析対象となった1,070名(男性398名、女性672名)のうち、フォローアップ時に孤 立した者は、男性75名(18.8%)、女性59名(8.8%)だった。ベースライン時の属性をみ ると、男性の新規孤立者は、非孤立者と比較して、高齢で(p=0.027)、自治会、趣味のグル ープ、スポーツのグループ、政治団体への参加率が低く(それぞれp=0.038、p=0.009、p=0.002、

p=0.040)、活動の参加数が少なく(p<0.001)、情緒的サポートの認知数が少なかった(p=0.002)

(表3)。女性の新規孤立者は、非孤立者と比較して、自治会、趣味のグループ、ボランテ ィアのグループへの参加率が低く(それぞれp=0.021、p=0.038、p=0.032)、参加数が少なく

(p<0.001)、健康度自己評価が良い者が少なく(p=0.010)、情緒的サポートや手段的サポー

トの認知数が少なかった(いずれもp<0.001)(表4)。特に、参加数は、非孤立者では0(不 参加)の者が男性で3割、女性で2割だったのに対し、新規孤立者は男女共に半数近くが 全くグループ活動に参加していなかった。

(25)

23

表3:ベースライン時の対象者特性; 男性 (n=398)

n % n %

年齢 (Mean(SD)) 75.6 (6.0) 73.9 (4.9) グループ活動の種類

 自治会 15 20.0% 104 32.2%

 老人クラブ 6 8.0% 43 13.3%

 趣味のグループ 15 20.0% 115 35.6%

 スポーツのグループ 7 9.3% 83 25.7%

 ボランティアのグループ 3 4.0% 29 9.0%

 政治団体 1 1.3% 25 7.7%

 業界団体 4 5.3% 41 12.7%

 宗教団体 1 1.3% 12 3.7%

グループ活動の参加数

 0 38 50.7% 97 30.0%

 1 27 36.0% 94 29.1%

 2 6 8.0% 70 21.7%

 ≧3 4 5.3% 62 19.2%

健康度自己評価:よい 62 82.7% 284 87.9%

慢性疾患:1種類以上 63 84.0% 267 82.7%

外出頻度:週1回以下 4 5.3% 11 3.4%

世帯構成:独居 11 14.7% 50 15.5%

主観的経済状況:苦労している 14 18.7% 54 16.7%

IADL障害数 (Mean(SD)) 0.19 (0.46) 0.15 (0.48) 情緒的サポート (Mean(SD)) 1.3 (0.8) 1.7 (0.9) 手段的サポート (Mean(SD)) 1.2 (0.6) 1.3 (0.7) Mean: 平均値、SD: 標準偏差

IADL; Instrumental Activities of Daily Living

非孤立者 (n=323)

孤立者 (n=75)

(26)

24

表4:ベースライン時の対象者特性; 女性(n=672)

n % n %

年齢 (Mean(SD)) 74.7 (5.1) 74.0 (5.1) グループ活動の種類

 自治会 11 18.6% 204 33.3%

 老人クラブ 5 8.5% 110 17.9%

 趣味のグループ 21 35.6% 305 49.8%

 スポーツのグループ 13 22.0% 211 34.4%

 ボランティアのグループ 1 1.7% 63 10.3%

 政治団体 1 1.7% 23 3.8%

 業界団体 1 1.7% 25 4.1%

 宗教団体 1 1.7% 41 6.7%

グループ活動の参加数

 0 27 45.8% 127 20.7%

 1 15 25.4% 198 32.3%

 2 13 22.0% 148 24.1%

 ≧3 4 6.8% 140 22.8%

健康度自己評価:よい 44 74.6% 532 86.8%

慢性疾患:1種類以上 52 88.1% 504 82.2%

外出頻度:週1回以下 2 3.4% 21 3.4%

世帯構成:独居 13 22.0% 173 28.2%

主観的経済状況:苦労している 10 16.9% 83 13.5%

IADL障害数 (Mean(SD)) 0.10 (0.40) 0.06 (0.38) 情緒的サポート (Mean(SD)) 1.5 (0.8) 2.0 (1.0) 手段的サポート (Mean(SD)) 1.0 (0.6) 1.4 (0.8) Mean: 平均値、SD: 標準偏差

IADL; Instrumental Activities of Daily Living

非孤立者 (n=613)

孤立者 (n=59)

(27)

25

つぎに、男性におけるグループ活動の種類と孤立の関連をみると、単変量のロジスティ ック回帰分析の結果(Model1)、自治会、趣味のグループ、スポーツのグループへの参加が、

新規孤立発生のリスクを有意に抑制した(表5)。老人会、ボランティアのグループ、業界 団体への参加はフォローアップ時の孤立とは関連が認められなかった。性、年齢、グルー プ活動の種類を調整した Model2 では、スポーツグループへの参加のみが有意な関連を示 し、自治会と趣味のグループへの参加の関連は消失した。そして、全ての共変量を調整し

た Model3 では、趣味のグループへの参加と(オッズ比:0.52、95%信頼区間:0.27-0.99、

p=0.048)、スポーツのグループへの参加が(オッズ比:0.38、95%信頼区間:0.16-0.91、

p=0.029)、それぞれの活動への不参加と比較して有意に孤立のリスクを抑制した。また、

すべてのモデルにおいて、参加数が0の者と比較して、2種類および3種類以上の活動に 参加していた者が有意に孤立のリスクが抑制された。全ての共変量を調整した Model3 で は、不参加の者と比較して、2 種類の活動に参加していた者では 79%(オッズ比:0.21、 95%信頼区間:0.08-0.55、p=0.001)、3種類以上の活動に参加していた者では82%(オッズ 比:0.18、95%信頼区間:0.06-0.55、p=0.003)、孤立のリスクが抑制された。

一方、女性では、単変量のロジスティック回帰分析では自治会と趣味のグループへの参 加が孤立のリスクを有意に抑制したが(表6、Model1)、活動の種類を調整したModel2と

Model3では、新規孤立発生と有意な関連のあるグループ活動はなかった。一方、参加数は、

1 種類以上のグループへの参加と新規孤立に有意な関連が認められ、全ての共変量を調整

したModel3では、参加していない者と比較して、1種類の活動に参加していた者(オッズ

比:0.40、95%信頼区間:0.20-0.80、p=0.010)、3種類以上の活動に以上参加していた者(オ ッズ比:0.21、95%信頼区間:0.07-0.65、p=0.006)は、有意に孤立のリスクが抑制された。

また、トレンド検定の結果、男女共に、参加数と孤立の発生に有意な負の量反応関係が 認められた(男性:p for trend<0.001、女性:p for trend=0.004)。

(28)

26

表5:フォローアップ時の新規孤立発生に関連する要因; 男性 (n=398

全体孤立者

nnオッズ比オッズ比オッズ比

ループ活動の種類*

 自治会119150.53(0.29-0.97)0.61(0.31-1.18)0.61(0.31-1.22)

 老人会4960.57(0.23-1.38)0.70(0.26-1.86)0.81(0.30-2.19)

 趣味のルー130150.45(0.25-0.83)0.53(0.28-1.01)0.52(0.27-0.99)

 スポーツのルー9070.30(0.13-0.67)0.39(0.17-0.91)0.38(0.16-0.91)

 ボランティアのグループ3230.42(0.13-1.43)0.69(0.20-2.45)0.66(0.18-2.42)

 業界団体4540.39(0.13-1.12)0.46(0.15-1.35)0.50(0.17-1.53)

ループ活動の参加

 0135381.001.001.00

 1121270.73(0.42-1.30)0.72(0.40-1.27)0.73(0.40-1.32)

 27660.22(0.09-0.55)0.21(0.08-0.53)0.21(0.08-0.55)

 ≧36640.17(0.06-0.48)0.16(0.05-0.47)0.18(0.06-0.55)

トレンド検定0.54(0.40-0.72)*孤立者における参加者が1名だったループ活動に関しては分析を行わなかった。

Model 1:単変量

Model 2:年齢で調整(グループ活動の種類の分析のみ、全6種類の活動も投入

Model 3:Model 2に加え、健康度自己評価、慢性疾患、IADL障害、外出頻度、家族構成、主観的経済状況、ソーシャルサポートの認知で調整 Model1Model3(95%信頼区間)(95%信頼区間) Model2(95%信頼区間)

(29)

27

表6:フォローアップ時の新規孤立発生に関連する要因; 女性(n=672

全体孤立者

nnオッズ比オッズ比オッズ比

ループ活動の種類*

 自治会215110.46(0.23-0.90)0.58(0.29-1.18)0.68(0.33-1.39)

 老人会11550.42(0.17-1.08)0.52(0.19-1.41)0.58(0.21-1.58)

 趣味のルー326210.56(0.32-0.97)0.67(0.38-1.19)0.75(0.41-1.36)

 スポーツのルー224130.54(0.29-1.02)0.65(0.33-1.25)0.78(0.39-1.55)

ループ活動の参加

 0154271.001.001.00

 1213150.36(0.18-0.70)0.36(0.19-0.71)0.40(0.20-0.80)

 2161130.41(0.21-0.83)0.42(0.21-0.85)0.51(0.24-1.06)

 ≧314440.13(0.05-0.40)0.14(0.05-0.40)0.21(0.07-0.65)

トレンド検定0.64(0.48-0.87)*孤立者における参加者が1名だったループ活動に関しては分析を行わなかった。

Model 1:単変量

Model 2:年齢で調整(グループ活動の種類の分析のみ、全4種類の活動も投入

Model 3:Model 2に加え、健康度自己評価、慢性疾患、IADL障害、外出頻度、家族構成、主観的経済状況、ソーシャルサポートの認知で調整 Model1Model2Model3(95%信頼区間)(95%信頼区間)(95%信頼区間)

(30)

28 4. 考察

本研究では、高齢者の孤立予防に有効なグループ活動の種類や参加数を3年間の縦断研 究で明らかにした。その結果、男性は趣味やスポーツのグループに参加していることが孤 立のリスクを下げることが明らかとなった。また、男性は2種類以上、女性は1種類もし くは3種類以上のグループ活動に参加していることが、孤立予防に効果的である可能性が 示された。

グループ活動の種類と孤立発生の関係を検討した結果、趣味やスポーツのグループへの 参加が男性の孤立発生を抑制した。先行研究では、こうした趣味やスポーツのグループへ の参加は、高齢者の要介護認定の抑制や(Kanamori et al., 2014)、IADLの低下予防の効果が あることが報告されている(Tomioka et al., 2017a)。また、趣味やスポーツのグループに参加 している高齢者は、参加していない者と比較して健康関連 QOL や社会関係が良好である という先行研究もある(Toepoel, 2013; Tomioka et al., 2017b)。本研究により、これらの活動 が孤立予防にも有効であることが示された。高齢男性に趣味やスポーツのグループへの参 加を促していくことで、孤立者を減らせる可能性がある。一方、自治会や老人クラブなど のコミュニティベースの活動への参加は、孤立との関連は認められなかった。この結果は、

要介護認定とグループ活動の種類の関連を検討した先行研究の結果と一致している (Kanamori et al., 2014)。コミュニティベースの活動は、地縁ゆえに避けがたい関係が心理的 負担になる可能性が指摘されている(伊藤 & 近藤, 2013)。さらに、参加の自律性(活動へ の参加が義務的であるか、自由であるか)に着目すると、参加が義務的である場合には社 会参加は高齢者の健康状態にネガティブな影響を与えることもあることが報告されている

(Tomioka et al., 2017b)。趣味やスポーツのグループと比較して、自治会や老人クラブに参加

している高齢者は参加が義務的だと感じている者が多いことから(Tomioka et al., 2017b)、活 動への参加の自律性が結果に影響している可能性がある。一方、女性においては、特定の グループ活動と孤立に関連は認められなかった。

グループの参加数と孤立の新規発生との関係を検討した結果、男女共に、参加している

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