吸水走査曲線のフィッティングパラメータに関する一考察
昭和エンジニアリング株式会社 正会員 ○中村 聡司 大阪工業大学 正会員 日置 和昭
1.はじめに
最近では,誘電率を利用した水分センサーの開発に伴い不飽和浸透パラメータが比較的容易に求められるように
なった1),2).本研究では,
ADR
センサーを利用した不飽和浸透試験により得られた吸水走査曲線を,van Genuchten
モデル3)を用いてフィッティングし,そのフィッティングパラメータ(
α
sw,n
sw)と疑似飽和体積含水率θ
s’
について種々 の考察を行った.2.試料および試験方法
試験に用いた試料の諸性質と主排 水曲線のフィッティングパラメータ を表-1に示す.また,不飽和浸透試 験装置の概略図2)を図-1に示す.試 験装置は,アクリル製円筒(カラム)
中央に
ADR
センサー挿入口を設け,その挿入口から
90
°回転させた箇 所の側面にテンシオメーターを取り 付けることで,供試体中央部の比誘電率と間隙水圧
ψ
を同時に測定できるようにした.試 験手順は,以下のとおりである.1
) 所定の初期体積含水率θ
0となるように含水比調整 した試料を,所定の密度でカラム内に均質となる ように詰め,同時にADR
センサーの挿入針を挿入 した.2) ADR
センサーとテンシオメーターの読み取り間隔,スタート時間を設定し,水位差
5cm
を与えること で通水を行った.なお,通水は上蓋の排水口から 水があふれ出るまで続けた.3
) 試験終了後,カラム内から試料を取り,炉乾燥法により疑似飽和体積含水率
θ
s’を求め, θ
0とθ
s’から測定毎に ADR
センサーの検量線を引き,測定した比誘電率 から試験中における供試体中央部の体積含水率θ
を算出した.4)
試験結果に基づいて,van Genuchten モデルにより吸水走査曲線のフィッティングを行った.なお,計算上の 残留体積含水率θ
r’については,得られたフィッティングパラメータ(α
sw,nsw)を用いて,(θ0,ψ0)を通過す る値を算出した.3.試験結果および考察
α
sw,n
swおよびθ
s’
とθ
0の関係を図-2~4に示す.まず,α
swはすべての試料においてθ
0にかかわらずほぼ一定の値 となり,主排水曲線のα
mdと比較し約2
倍の値を示した.Luckner
ら4)は,主吸水曲線のα
mwはα
mdと比較し約2
倍 の値を示すとしており,このことからα
swとα
mwはほぼ同値を示すものと推察される.次に, nswもすべての試料にお キーワード 不飽和浸透 吸水走査曲線 擬似飽和体積含水率連絡先 〒540-0037 大阪市中央区内平野町2丁目2番7号 昭和エンジニアリング株式会社 技術部 TEL06-6943-7627 図-1 試験装置の概略図
h=5cm
ADRセンサー データロガ
供試体 φ50×h100mm 排水
パソコン 排水口
吸水口 テンシオメータ
ADRセンサー データロガ
供試体 φ50×h100mm 排水
パソコン 排水口
吸水口 テンシオメータ
h=5cm h=5cm
ADRセンサー データロガ
供試体 φ50×h100mm 排水
パソコン 排水口
吸水口 テンシオメータ 金網フィルター
ADRセンサー
データロガー
供試体 φ50×h100mm 排水
パソコン 排水口
吸水口 テンシオメーター
定水位槽
表-1 試料の諸性質
試料A 試料B 試料C 試料D
2.628 2.690 2.601 2.646
100 95 85 44
0 3 3 33
0 2 12 23
2.8×10
-44.2×10
-51.5×10
-53.2×10
-6 αmd(cm
-1) 0.0105 0.0363 0.0133 0.0081
nmd
4.825 2.122 2.166 4.212
θ
s0.403 0.389 0.449 0.488
θ
r0.060 0.080 0.056 0.158
不飽和浸透 パラメータ
(主排水曲線)
飽和透水係数(m/s) 粘土分(%) シルト分(%) 砂分(%)
ρs(g/cm
3)
土木学会第65回年次学術講演会(平成22年9月)
‑261‑
Ⅲ‑131
いて
θ
0にかかわらずほぼ一定の値となり,主排水曲線のn
mdとほぼ同値を示した.
Luckner
ら4)は,主吸水曲線のn
mwはn
mdとほぼ同値を示すとしており,このことから
n
swとn
mwもほぼ 同値を示すものと推察される.一方,θ
s’
はθ
0が低くなるに従 い小となる傾向にあることが確認された.そこで,θs’/θ
sと主 排水曲線のθ
0における比水分容量C
(図-5参照)との関係を 求めると,図-6 のようになり,両者には高い相関性が認めら れた.以上のことから,吸水走査曲線の各種パラメータ(αsw,n
sw,θ
s’
)は,主排水曲線の各種パラメータ(α
md,n
md,θ
s)か ら比較的容易に推定し得る可能性が示唆される.4.おわりに
今後は,Scottら5)の報告,Kool and Parker6)の報告,Luckner4)らの報告との整合性について考察する予定である.
参考文献
1) 杉井俊夫,山田公夫,植村真美,奥村恭:水分分布近似法による砂質土の不飽和透水特性の評価,土木学会論文集,Vol.Ⅲ-71,No.792,pp.131-142,
2005.
2) 中村聡司,日置和昭,長谷川昌弘,青木一男:水分量の経時変化に基づく吸水走査曲線の推定手法とその精度について,地盤の環境・計測技 術に関するシンポジウム2008論文集,pp.33-38,2008.
3) van Genuchten, M. Th.:A Closed-form Equation for Predicting the Hydraulic Conductivity of Unsaturated Soils, Soil Sci. Soc. Am. J., Vol.44, pp.892-898, 1980.
4) Luckner, L., van Genuchten, M. Th. and Nielsen, D. R.:A Consistent Set of Parametric Models for the Two-Phase Flow of Immiscible Fluids in the Subsurface, Water Resour. Res., Vol.25, No.10, pp.2187-2193, 1989.
5) Scott, P. S., Farquhar, G. J. and Kouwen, N.:Hysteretic Effects on Net Infiltration, in Advances in Infiltration, pp.163-170, American Society of Agricultural Engineers, St. Joseph, Mich., 1983.
6) Kool, J. B., and Parker, J. C.:Development and Evaluation of Closed-form Expressions for Hysteretic Soil Hydraulic Properties, Water Resour. Res., Vol.23, No.1, pp.105-111, 1987.
図-2
α
swとθ
0の関係図-4
θ
s’
とθ
0の関係 図-5 水分特性曲線の模式図 体積含水率サクション
主排水曲線
吸水走査曲線
(θ
0,ψ0)
θ
rθ
r’ θ
sC
θ
s’
図-3n
swとθ
0の関係0.00 0.10 0.20 0.30 0.40 0.50
0.00 0.10 0.20 0.30 0.40 0.50 θs’
θ0
試料A 試料B 試料C 試料D 0.00
0.02 0.04 0.06 0.08 0.10
0.00 0.10 0.20 0.30 0.40 0.50 αsw(cm-1)
θ0
試料A 試料B 試料C 試料D
αsw=0.0821
-
αsw=0.0262
-
αsw=0.0320
-
αsw=0.0171
-
0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0
0.00 0.10 0.20 0.30 0.40 0.50 nsw
θ0
試料A 試料B 試料C
nsw=5.114 試料D
-
nsw=2.303
-
nsw=2.231
- nsw=5.095
-
R2= 0.840
R2= 0.987 R2= 0.896
R2= 0.968
0.50 0.60 0.70 0.80 0.90 1.00
0.001 0.01 0.1
θs’/θs
C (cm-1H2O)
試料A 試料B 試料C 試料D
図-6
θ
s’/θ
sとC
の関係 土木学会第65回年次学術講演会(平成22年9月)‑262‑
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