• 検索結果がありません。

3 アジア時報その中でも最も重要だと筆者が思うのが 白人ブルーカラー層の不満や不安をトランプ氏が見事に代弁していることであろう アメリカの中の格差が次第に広がっていく中 下層からはい上がれない人々が白人ブルーカラー層である 白人ブルーカラー層が抱えているのは 置き去りになってしまったという単なる経済

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "3 アジア時報その中でも最も重要だと筆者が思うのが 白人ブルーカラー層の不満や不安をトランプ氏が見事に代弁していることであろう アメリカの中の格差が次第に広がっていく中 下層からはい上がれない人々が白人ブルーカラー層である 白人ブルーカラー層が抱えているのは 置き去りになってしまったという単なる経済"

Copied!
8
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

  こ れ ま で の 2 0 1 6 年 大 統 領 選 挙 予 備 選 を 振 り 返 る と 、 何 と い っ て も 不 動 産 王 ・ ド ナ ル ド ・ ト ラ ン プ 氏 の 台 頭 に 尽 き る 。 ト ラ ン プ 氏 が 連 発 す る 予 想 外 の 暴 言 に ア メ リ カだ け で な く 、 世 界 が 大 き く 振 り 回 さ れ て き た 。 こ の暴 言 が 白 人 ブ ル ー カ ラ ー 層 の 屈 折 し た 感 情 に 訴 え 、 ト ラ ン プ 氏 の人 気 は 高 く な っ て い っ た 。 さ ら に 、 ト ラ ン プ 氏 を 面 白 お か し く 伝 え る メ デ ィ ア に も 、 ト ラ ン プ 現 象 を 増 幅 さ せ た 責 任 が あ る 。

白人ブルーカラー層の屈折した苛立ち

    ト ラ ン プ 氏 台 頭 の 理 由 に つ い て は、 様 々 な 解 釈 が あ る。

まえしま

 

かずひろ

(上智大学総合

学部教授)

特 集

(2)

アジア時報 そ の 中 で も 最 も 重 要 だ と 筆 者 が 思 う の が、 白 人 ブ ル ー カ ラ ー 層 の 不 満 や 不 安 を ト ラ ン プ 氏 が 見 事 に 代 弁 し て い る こ とであろう。   ア メ リ カ の 中 の 格 差 が 次 第 に 広 が っ て い く 中、 下 層 か ら は い 上 が れ な い 人 々 が 白 人 ブ ル ー カ ラ ー 層 で あ る。 白 人 ブ ル ー カ ラ ー 層 が 抱 え て い る の は、 置 き 去 り に な っ て し ま っ た と い う 単 な る 経 済 的 な 不 満 感 だ け で な い。 1 9 8 0 年 代 末 か ら 急 増 し て い る ヒ ス パ ニ ッ ク 系 や ア ジ ア 系 を 中 心 と す る 移 民 の 流 入 で、 周 り に い る 肌 の 色 が 異 な る 人 々 が、 自 分 た ち よ り も ど ん ど ん い ち 早 く 社 会 の 階 段 を 上 が っ て い く。 「 白 人 の 俺 た ち の 方 が 本 来 は 上 の 社 会 階 層 に い た は ず な の に 」 と い う 屈 折 し た 苛 立 ち を、 白 人 ブ ル ー カ ラ ー 層 は 共 有 している。   筆 者 は 本 年 に 入 っ て 何 度 か 渡 米 し、 ト ラ ン プ 支 持 者 の 話 を き い た。 支 持 者 の 中 に は、 比 較 的 裕 福 そ う に み え る 人 も い な か っ た わ け で は な い が、 多 く が 服 装 を 見 て も 生 活 に 余 裕 が な さ そ う だ っ た。 職 業 を 聞 く と、 自 営 業 や 工 場 労 働 者 な ど の ブ ル ー カ ラ ー が や は り 多 か っ た。 参 加 者 の 多 く に 共 通 し て い る の は、 「 こ れ ま で 政 治 に は 関 心 が 全 く な か っ た が、 トランプは別」 「トランプの発言を聞くと本当にスカッ とする」といったトランプ氏への熱烈な支持とともに、 「ワ シントンの奴らは敵だ」という強い怒りの感情だった。   「 ム ス リ ム( イ ス ラ ム 教 徒 ) 入 国 禁 止 」「 イ ス ラ ム 国 へ の じ ゅ う た ん 爆 撃 」「 同 盟 関 係 の 見 直 し 」「 米 墨 国 境 に 万 里 の 長 城 建 設 」「 T P P( 環 太 平 洋 パ ー ト ナ ー シ ッ プ 協 定 ) は 中 国 の 陰 謀 だ 」 な ど の ト ラ ン プ 氏 が 連 発 し て き た 数 々 の 問 題 発 言 は、 白 人 ブ ル ー カ ラ ー 層 に と っ て は 極 端 な 暴 言 で は な く、 む し ろ、 心 か ら 賛 同 で き る 具 体 的 な 政 策 に 近 い か も しれない。   イ ス ラ ム 国 の 台 頭 か ら、 反 米 テ ロ に ア メ リ カ 国 民 は お び えるようになった。 ただ、 世界情勢に疎い白人ブルーカラー 層にとって、 海外のムスリムはあまりにも遠い存在である。 イ ス ラ ム 教 徒 は、 ア メ リ カ の 人 口 の 中 の 1 % に 満 た ず、 し か も そ の う ち 4 分 の 1 は、 解 放 運 動 の 一 環 で ム ス リ ム に 改 宗 し た ア フ リ カ 系 で あ る。 都 市 部 に モ ス ク が 集 中 す る 中、 多 く の 白 人 ブ ル ー カ ラ ー 層 に と っ て は ム ス リ ム と の 接 点 は ほ と ん ど な い。 「 反 米 テ ロ を 起 こ す よ う な と ん で も な い 奴 ら は 一 気 に 皆 殺 し に し ろ。 そ も そ も、 テ ロ リ ス ト の 疑 い が あ る よ う な や つ ら は、 状 況 が 改 善 す る ま で 入 国 さ せ る な 」 というのが、白人ブルーカラー層の本音かもしれない。   白 人 ブ ル ー カ ラ ー 層 の 多 く は、 さ ら に 次 の よ う に 思 っ て い る は ず で あ る。 「 税 金 で 欧 州 や 日 本、 韓 国 な ど の 同 盟 国 を ア メ リ カ が 防 衛 す る お 金 が あ れ ば、 自 分 た ち の 生 活 を 改 善 し て ほ し い 」「 俺 た ち の 雇 用 を 奪 う メ キ シ コ か ら の 移 民 は絶対入れるな」 「中国はこれまでも自分たちの仕事を奪っ て き た。 T P P と い う の が で き る よ う で そ れ に は 中 国 は い

(3)

ま の と こ ろ、 入 っ て い な い ら し い が、 中 国 は ず る い 国 だ。 い ず れ 入 り 込 み、 甘 い 汁 を 吸 う だ ろ う。 T P P は 中 国 の 罠 だ 」。 ど れ も し っ か り 考 え れ ば、 費 用 や 人 道 的 な 問 題、 国 益 な ど か ら 現 実 的 に 実 現 が 難 し い も の ば か り だ が、 こ の よ う に 考 え て い る 層 に と っ て は、 ト ラ ン プ 氏 以 上 の 候 補 は 存 在 し な い。 議 会 の 権 限 も 強 く、 大 統 領 の 判 断 に 歯 止 め を か け る 仕 組 み に な っ て い る と い う ア メ リ カ 政 治 の 基 本 中 の 基 本 も よ く 分 か っ て い ないだろう。   今 年 の 共 和 党 予 備 選 の 投 票 者 の 数 は 急 増 し て お り、 ト ラ ン プ 氏 が 明 ら か に 白 人 ブ ル ー カ ラ ー と い う 新 し い 層 を 共 和 党 に 引 き 込んでいる。 過去に選挙にあまり行ったことがない層が 「お ら が ト ラ ン プ 」 支 持 の た め に 一 気 に な だ れ 込 ん で い っ た。 予 備 選 段 階 の 投 票 率 は、 10~ 30% 程 度 と 実 際 は 高 く な い た め、 ト ラ ン プ 氏 が 必 然 的 に 勝 ち 上 が っ て い く。 こ れ が ト ラ ンプ現象の構造である。

「怒り」を行動原理とする

ティーパーティ運動との親和性

    ところで、 トランプ氏の支持者と話しながら、 筆者は「ど こ か で こ ん な 集 団 に あ っ た こ と が あ る 気 が す る 」 と い う 奇 妙な感覚に襲われた。   そ れ は、 数 年 前 に テ ィ ー パ ー テ ィ 運 動 を 調 査 し た 際 の 運 動 の 参 加 者 と の 会 話 だ っ た。 テ ィ ー パ ー テ ィ 運 動 が 全 米 的 に 認 知 さ れ る よ う に な っ た 契 機 は、 そ れ ま で 別 個 で 活 動 し て い た 様 々 な テ ィ ー パ ー テ ィ の 運 動 団 体 が 2 0 0 9 年 9 月 12日にワシントンに結集した 「納税者ワシントン行進」 (別 名「 9・ 12プ ロ ジ ェ ク ト 」) で あ る。 筆 者 は 現 地 で こ の 行 進に参加する人々に話を聞いた。 その際、 非常に印象深かっ た の は、 全 米 か ら 集 ま っ て い る の に か か わ ら ず、 参 加 者 が 極 め て 同 質 的 だ っ た こ と で あ る。 参 加 者 の ほ ぼ す べ て が 白 人 で、 会 話 を し て も 知 的 と は 到 底 言 え ず、 明 ら か に ブ ル ー カ ラ ー 層 が 中 心 だ っ た。 「 オ バ マ ケ ア( 医 療 保 険 改 革 ) は 上智大学総合グローバル学部教授。上智大学外国語学部英 語学科卒、ジョージタウン大学大学院政治学部修士課程修 了(MA)、メリーランド大学大学院政治学部博士課程修了 (Ph. D.)。専門は現代アメリカ政治。主な著作は『アメリ カ政治とメディア:政治のインフラから政治の主役になる マスメディア』(北樹出版、2011 年)、『オバマ後のアメ リカ政治:2012 年大統領選挙と分断された政治の行方』(共 編著、東信堂、2014 年)など。

(4)

アジア時報 俺 た ち の 税 金 を 盗 み、 ア フ リ カ 系 や 移 民 し て き た ば か り の や つ ら を 富 ま せ る 」「 オ バ マ は 共 産 主 義 者 だ 」 な ど と、 参 加者は口をそろえてオバマ政権批判を繰り返した。   オ バ マ 大 統 領 の 写 真 に ち ょ び 髭 を 描 き、 ヒ ト ラ ー に 見 立 て た 看 板 も 複 数、 目 に し た。 参 加 者 を 見 て い る と、 自 分 の 生 活 や 将 来 へ の 不 安 を オ バ マ 批 判 に 置 き 換 え て い る よ う だ っ た。 参 加 者 が 白 人 で あ り、 ア フ リ カ 系 で あ る オ バ マ を な じ る こ と で、 自 分 た ち の 中 の 抑 圧 さ れ た 人 種 差 別 的 な 意 識 を 吐 き 出 し て い る よ う な 参 加 者 も 少 な く な い よ う に 見 え た。   ト ラ ン プ 氏 の 支 持 層 と テ ィ ー パ ー テ ィ 運 動 参 加 者 と は 先 が 見 え な い 不 安 感 に さ い な ま れ た 怒 り と い う 強 い 共 通 項 が ある。   テ ィ ー パ ー テ ィ 運 動 は 一 般 的 に は「 小 さ な 政 府 」 を 希 求 す る 財 政 保 守 運 動 の 総 称 で あ る。 2 0 1 6 年 選 挙 で は、 ト ランプ氏ではなく、 そのライバルで、 財政保守的なテッド ・ ク ル ー ズ 上 院 議 員 を 支 持 し て い る テ ィ ー パ ー テ ィ 運 動 参 加 者 も 数 多 い。 た だ、 も と も と 自 然 発 生 的 な 運 動 だ っ た こ と も あ り、 こ の 運 動 は 一 枚 岩 で は な い。 筆 者 が 聞 き 取 り を し た 中 で も ト ラ ン プ 氏 の 支 持 層 に も テ ィ ー パ ー テ ィ 運 動 参 加 者 が 何 人 も い た。 あ く ま で も 筆 者 の 調 査 の 範 囲 だ が、 両 者 の親和性は実際に高かったように感じた。   ブ ル ー カ ラ ー 層 の「 怒 り 」 を 行 動 原 理 と す る テ ィ ー パ ー 2016年4月15日、ニューヨーク州プラッツバーグの選挙集会で演説するトランプ氏

(5)

ィ 運 動 に 対 し て、 共 和 党 は こ こ 数 年、 そ の 動 き を 看 過 す だ け で な く、 党 の 支 持 層 と し て 大 切 に 育 て て い っ た。 そ 帰 結 と し て、 ト ラ ン プ 現 象 が 生 ま れ た の で は な い だ ろ う 大 切 に 育 て た 層 が ト ラ ン プ 支 持 に な り、 そ の ト ラ ン プ が 共 和 党 の 指 導 部 か ら 徹 底 的 に 嫌 わ れ て い る と い う 現 状

メディアが生み出したモンスター

ト ラ ン プ 氏 が 白 人 ブ ル ー カ ラ ー 層 を と ら え た の は、 ト ラ プ 氏 が メ デ ィ ア の 使 い 方 を 熟 知 し て い る こ と も 大 き い。 ト ラ ン プ 氏 は 1 9 8 8 年 か ら 大 統 領 選 に 色 気 を 見 せ、 こ ま で も 何 度 も 立 候 補 の 意 欲 を 示 し て き が、 実 際 に 立 候 補 た の は 今 回 が 初 め て だ。 ビ ジ ネ ス マ ン で も あ る ト ラ ン プ は、 離 婚 や 倒 産 を 経 験 し、 金 持 ち の プ レ イ ボ ー イ と い う 代 の 寵 ちょうじ 児 の よ う な 扱 い で、 常 に テ レ ビ の 注 目 を 集 め て き テ レ ビ の 有 名 人 ” で あ る。 特 に 過 去 10年 ほ ど は、 「 リ リ テ ィ シ ョ ー」 の ホ ス ト と し て 出 演 し、 自 分 が ど の よ う 見 え る の か、 人 々 に ど の よ う に し た ら 訴 え か け る こ と が き る の か、 約 30年 の 経 験 を 基 に 自 己 P R の 術 を 学 ん で き 「 リ ア リ テ ィ シ ョ ー」 と は 台 本 が な く、 現 実 に 起 こ っ い る 状 況 で ど の よ う に 出 演 者 が 行 動 す る か を 楽 し む テ レ の 人 間 ド キ ュ メ ン ト 番 組 で あ る。 「 リ ア リ テ ィ シ ョ ー」 は 日 本 で は い い 例 が あ ま り な い が、 あ え て 言 え ば か つ て の 「進め!電波少年」などに近いかもしれない。   メ デ ィ ア に と っ て は、 今 回 の 大 統 領 選 に お け る ト ラ ン プ 氏 の 存 在 そ の も の が、 「 リ ア リ テ ィ シ ョ ー」 で あ る。 ト ラ ンプ氏主演のこの 「ショー」 はさしずめ 「“テレビの有名人” が 大 統 領 に な る ま で 」 と い っ た タ イ ト ル が ぴ っ た り か も し れ な い。 ト ラ ン プ 氏 に 対 し て、 テ レ ビ だ け で な く、 新 聞、 雑 誌 な ど の メ デ ィ ア も 人 気 歌 手 の ジ ャ ス テ ィ ン・ ビ ー バ ー などと同じように面白おかしくトランプ氏を扱った。   テ レ ビ の 方 程 式 を 知 り 尽 く し て い る と い う 意 味 で、 ト ラ ン プ 氏 は 抜 群 に 賢 い 男 で あ る。 「 リ ア リ テ ィ シ ョ ー」 は 予 測 不 可 能 な 行 動 が で れ ば で る ほ ど 人 気 が 高 く な る。 次 か ら 次 へ と 予 想 も し な い 展 開 を 生 み 出 す た め に、 ト ラ ン プ 氏 自 身 の 言 動 は ど ん ど ん 過 激 に な る。 ト ラ ン プ 氏 に 引 き ず ら れ る よ う に「 偽 善 者 」「 嘘 つ き 」 な ど 相 手 を こ き 下 ろ す 言 葉 が 連 日 の 選 挙 戦 に 登 場 し、 そ の 頻 度 は 過 去 に な い ほ ど の ひ どいレベルで、メディアを埋め尽くしてきた。   ト ラ ン プ 氏 は ス ピ ー チ に 様 々 な 工 夫 を し、 彼 の 支 持 層 で あ る 白 人 ブ ル ー カ ラ ー 層 の 心 に 響 く よ う に 簡 単 な 言 葉 を 繰 り 返 し な が ら、 言 い た い こ と の あ り の ま ま の イ メ ー ジ を 伝 え る と い う 手 法 を と っ た。 ト ラ ン プ 氏 の ス ピ ー チ の 言 葉 は 非 常 に 単 純 で あ り、 「 小 学 校 6 年 レ ベ ル 」 な ど と い う 研 究 者の分析結果もある。

(6)

アジア時報   言 葉 だ け に と ど ま ら な い。 相 手 候 補 や 自 分 に 否 定 的 な ジ ャ ー ナ リ ス ト た ち を 大 き く 体 を ゆ す っ て な じ る ト ラ ン プ 氏 の 下 品 な 振 る 舞 い に、 識 者 の 多 く は 眉 を ひ そ め た が、 白 人ブルーカラー層は「俺たちと一緒だ」と共感する。   毎 回 毎 回、 ハ ラ ハ ラ さ せ る 言 動 を ト ラ ン プ 氏 が 取 り 続 け れ ば、 ど う し て も 見 続 け て し ま う。 ト ラ ン プ 氏 が 登 場 す る 共 和 党 の 討 論 会 は、 2 0 1 5 年 8 月 6 日 の 第 1 回 目 か ら、 毎 回、 記 録 的 な 数 の 視 聴 者 数 を 生 み、 広 告 収 入 は 上 が っ て い く。 討 論 会 が 終 わ れ ば 24時 間 ニ ュ ー ス 専 門 局 は ト ラ ン プ 氏 の 様 子 を 何 度 も 何 度 も 繰 り 返 し 放 映 す る。 こ う し て ト ラ ン プ 氏 を 取 り 上 げ れ ば、 メ デ ィ ア も 儲 か る と い う 構 造 が 成 り立っていく。   「 俺 の 知 っ て い る ト ラ ン プ で は な い 」 と い う ト ラ ン プ 氏 の 昔 か ら の 知 人 の 証 言 が 時 々 登 場 し て い る よ う に、 ト ラ ン プ 氏 は 大 統 領 選 と い う「 リ ア リ テ ィ シ ョ ー」 の 中 で、 望 ま れる自己像を演じていく。自分がお金になる “売れる候補” で あ る こ と を ト ラ ン プ 氏 は 熟 知 し て い る。 過 激 に な る 分、 こ の「 リ ア リ テ ィ シ ョ ー」 は 回 を 重 ね る ご と に、 抜 群 に 面 白 く な る の は 当 た り 前 だ。 こ う し て、 視 る 人 た ち の 心 を わ しづかみにしていく。

る「

    と こ ろ で、 そ も そ も な ぜ ト ラ ン プ 氏 の よ う な 全 く の ア ウ トランプ支持者と重なる「白人ブルーカラー層」が多数参加したティーパーティ運 動の「納税者ワシントン行進」(2009年9月12日。ワシントン市内にて筆者撮影)

(7)

サ イ ダ ー が 立 候 補 し、 善 戦 で き る 仕 組 み に な っ て い る の を 少 し 説 明 し て お き た い。 か つ て の 立 候 補 者 は 政 党 幹 部 息 が か か っ た 人 物 が リ ク ル ー ト さ れ、 候 補 者 を 選 出 す る 法 も 党 の 顔 役 の 意 見 が 重 要 と な る 党 員 集 会 が ほ と ん ど っ た。 1 9 6 0 年 代 後 半、 大 統 領 選 挙 の 予 備 選 挙 段 階 で 選 挙 過 程 の 透 明 化・ 民 主 化 」 を 目 的 と し た 代 議 員 改 革 ま ず 民 主 党 で 本 格 検 討 さ れ た。 こ れ を 検 討 し た マ ク ガ ・ フレーザー委員会( McGovern-Fraser Commission ) 勧 告 に 従 っ て、 各 州 の 民 主 党 支 部 は 1 9 7 0 年 代 か ら 党 集 会 に 代 わ っ て 幅 広 い 有 権 者 が 投 票 す る こ と が で き る 予 選 挙 を 本 格 的 に 導 入 す る こ と に な っ た。 そ の 後、 共 和 党 予 備 選 挙 段 階 の「 透 明 化・ 民 主 化 」 か ら 40年 以 上 た ち、 の 制 度 は 完 全 に 定 着 し、 今 回 の ト ラ ン プ 氏 の よ う な ア ウ サ イ ダ ー も 自 由 に 出 馬 で き る よ う に な っ た ほ か、 有 権 者 自 由 に 投 票 で き る よ う に な っ た。 一 方、 一 般 の 有 権 者 が 票 す る 際 に 最 も 参 考 に す る の が 候 補 者 の 動 向 を 伝 え る メ ィ ア の 報 道 で あ る。 特 定 の 候 補 に 対 す る 報 道 の 内 容 や、 道 の 量 そ の も の の 多 寡 が 有 権 者 を 動 か し、 候 補 者 選 び に このようにして、 メディ の 選 挙 過 程 で 影 響 力 が 飛 躍 的 に 大 き く な り、 メ デ ィ ア が 党 に 代 わ っ て キ ン グ メ ー カ ー の 役 割 を 実 質 的 に 行 な う よ に な っ た。 ト ラ ン プ 氏 の よ う な ア ウ ト サ イ ダ ー が 善 戦 で きる「メディア仕掛けの選挙」が制度化されていった。

「リアリティショー」の行方

    こ の「 リ ア リ テ ィ シ ョ ー」 の 結 論 そ の も の も、 過 去 の ア メ リ カ の 歴 史 に な い よ う な 極 め て ド ラ マ テ ッ ク な も の に な る か も し れ な い。 現 在、 代 議 員 獲 得 数 1 位 の ト ラ ン プ 氏 が 今 後 の 選 挙 戦 で 6 割 の 代 議 員 を 取 得 で き な け れ ば、 共 和 党 の 大 統 領 候 補 を 決 め る 全 国 党 大 会 ま で 過 半 数 に 届 か な い 可 能 性 が 高 く な っ て い る と い う 見 方 が あ る た め だ。 も し、 代 議員数の過半数を獲得できなかった場合には、 「ブローカー ド・ コ ン ベ ン シ ョ ン( あ る い は コ ン テ ス テ ッ ド・ コ ン ベ ン シ ョ ン )」 と な る。 各 州 で の「 党 員 集 会 」「 予 備 選 」 の 結 果 の 拘 束 が な く な り、 決 選 投 票 で は 自 由 に 支 持 候 補 を 決 め る 権 限 が 代 議 員 に 与 え ら れ る。 も し、 共 和 党 候 補 と し て 他 の 人 物 が 擁 立 さ れ た 場 合、 ト ラ ン プ 氏 は 怒 り 狂 い、 支 持 者 を 党大会から連れだすかもしれない。   こ れ だ け で 十 分 す ぎ る「 シ ョ ー」 の 結 末 だ。 し か し、 「 シ ョ ー」 に は 続 編 が あ る か も し れ な い。 ト ラ ン プ 氏 は こ れ だ け で 終 わ ら ず、 無 党 派 候 補 と し て 選 挙 戦 に 残 る 可 能 性 も あ る。 そ う な る と 本 選 挙 は、 民 主 党 候 補、 共 和 党 候 補、 ト ラ ン プ 氏 の 三 つ 巴 と な り、 5 3 8 人 の 選 挙 人 投 票 で 過 半 数 の 2 7 0 を 取 っ た 候 補 が い な い と い う 19世 紀 初 め に 1 度 だ け し か な い 例 外 中 の 例 外 と な る よ う な ド ラ マ が 生 ま れ る

(8)

アジア時報 か も し れ な い。 も し、 選 挙 人 の 過 半 数 を 取 っ た 候 補 が い な い 場 合 に は 下 院 が 大 統 領 を 選 出 し、 上 院 が 副 大 統 領 を 選 出 す る。 現 在 は 上 下 両 院 と も に 多 数 派 は 共 和 党 で あ り、 今 年 秋 の 選 挙 で も お そ ら く 下 院 は 共 和 党 が 死 守 す る 可 能 性 が あ る。 そ う す る と、 さ す が に ト ラ ン プ 大 統 領 は 生 ま れ な い。 そ れ で も 徹 底 的 に 楽 し ま せ た と い う 意 味 で、 「 リ ア リ テ ィ ショー」は素晴らしい大団円となるだろう。

おわりに

    扇 動 的 な 政 治 と ど う つ き あ う か は、 民 主 主 義 の 永 遠 の テ ー マ で あ る。 ト ラ ン プ 氏 は 自 ら 主 演 す る 大 統 領 選 挙 と い う「 リ ア リ テ ィ シ ョ ー」 の 中 で 白 人 ブ ル ー カ ラ ー 層 を 目 覚 め さ せ て い っ た。 し か し、 こ の 層 は、 所 得 水 準 も 教 育 水 準 も 低 く、 ポ ピ ュ リ ズ ム に な び き や す い の は 悲 し い 現 実 で も あ る。 い ず れ に し ろ、 ト ラ ン プ 氏 の「 リ ア リ テ ィ シ ョ ー」 の結論がどうなるのか、とても興味深い。

参照

関連したドキュメント

 トルコ石がいつの頃から人々の装飾品とし て利用され始めたのかはよく分かっていない が、考古資料をみると、古代中国では

第四。政治上の民本主義。自己が自己を統治することは、すべての人の権利である

わからない その他 がん検診を受けても見落としがあると思っているから がん検診そのものを知らないから

はありますが、これまでの 40 人から 35

自閉症の人達は、「~かもしれ ない 」という予測を立てて行動 することが難しく、これから起 こる事も予測出来ず 不安で混乱

巣造りから雛が生まれるころの大事な時 期は、深い雪に被われて人が入っていけ

層の積年の思いがここに表出しているようにも思われる︒日本の東アジア大国コンサート構想は︑

単に,南北を指す磁石くらいはあったのではないかと思