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龍 澤

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Z3

〈論 説 〉

中 国 の 行 政 不 服 審 査 法(行 政復議法)の 主 要 内 容 と 問 題 点 に つ い て(そ の1)

龍 澤

目 次 は じめに

第1章 行政復議の性質 と行政復議法の構

第2章 行政復議法の主要内容 第1節 行政復議法の 目的 第2節 行政復議の対象 第3節 行政復議管轄 第4節 行政復議機構

第5節 行政復議 と行政訴訟の関係 (以上、本号)

第6節 行政復議の申請手続 第7節 行政復議の審理 第8節 行政復議決定

第9節 行政復機関等の法律責任 と費用 第3章 行政復議法の運用実態

第4章 行政復議法の若干の問題点 結びにかえて

は じめ に

中 国 にお け る行 政 不 服 審 査制 度 の最 初 の基 本 法 と して 国務 院 に よ って 「中華 人 民 共 和 国 行 政 復 議 条 例 」 が 公 布 され た の は 、1990年12月24日(施 行 は 1991年10月1日)の こ とで あ る。 そ れ は 、「中華 人 民 共 和 国行 政 訴 訟 法 」 の 公 布 ・施 行(1989年4月4日 公 布 、1990年10月1日 施 行)と 密 接 に結 び 付 い

I)

て いた もの で あ った。 なぜ な ら、制 定 され た 中 国 の行 政訴 訟 法 が原 則 と して行 政 不 服審 査 と行 政 訴訟 の 自由選 択主 義 を採 用 した に もか か わ らず 、多 くの 法 令 が 依 然 と して行 政 不 服 審 査 前 置 を規 定 して いた た め に、行 政不 服 審 査 の 手 続 が 定 め られ な い限 り、行 政 訴 訟 法 は行 政 訴 訟 法 と して の機 能 を発揮 で き なか った か らで あ った 。 そ して、実 は この よ う な経 緯 のた め に、行 政復 議 条 例 は そ の制 定 当初 か ら、 大 き な限界 に直 面 す る ことに な った ので あ る。

(2)

す なわ ち 、「行 政 復 議 条 例 はr行 政 訴 訟 法 』 の 設 計 路 線 を超 え る こ とは で き なか った ので あ る。 … … この よ う な(行 政 訴 訟 法 の)付 帯 的性 質 を持っ 行 政 復 議 制 度 は 、行 政 訴 訟 法 を貫徹 す る と い う面 で は確 か に重 要 な作 用 を な した の で あ るが 、 しか し、 同時 に行政 監 督 の基 本制 度 と して の行 政 復 議 が有 す べ き作 用

を制 限 した」 ので あ った 。 した が って 、行 政 復 議 制 度 が 行 政 訴訟 法 の付 属 的地 位 か ら離 脱 す る こと を 目指 す 時 点 に至 った と き、行 政 復 議 条例 は抜 本 的 な改 正 を免 れ ない もの で あ った と い う こ とが で き るの で あ る。

具 体 的 に は 、 まず 第 一 に、 そ の名 称 か らも明 らか な よ う に、行 政復 議 条 例 は 国務 院 に よ って制 定 され た 、 いわ ば 日本 の政 令 に相 当す る もの で あ るが 、行 政 府 で あ る国務 院 が制 定 す る こと は行 政復 議 の 申請 人 と被 申請 人 を平等 な行 政 復 議 の 当事 者 とす る行政 復 議 の精 神 とは相 いれ ない もの で あ った。 ま た、 第二 に 、 そ の 内容 面 に お いて も、 必 ず しも十 分 な も ので は なか った 。 す なわ ち 、 「統 計

に よ る と、(行 政 復 議 条 例 が 施 行 され た)1991年1月 か ら1997年 末 まで の 行 政 復 議 事 件 は 全 国 で22万 件 、 わ ず か 毎 年 平 均3万 件 しか な い。 しか し、 同 時 期 の行 政 訴 訟 事件 の数 は逆 に毎 年 上昇 して、1998年 だ けで も10万 件 に達 す る。

これ は 、 行 政 復 議制 度 の優 越 性 が 十 分 に体 現 され て い ない こと を示 す も ので あ る。 これ に は、 行政 復 議 制 度 にっ い て の普 及 の 宣伝 が 不 足 して い る こ とや 、 民 衆 の行 政 機 関 に対す る信任 度 が 高 くない とい った 原 因 だ けで な く、制 度 自身 の 原 因 もあ った ので あ る。 た とえ ば 、特 に ラ イ ン管轄 を主 と して と る と き、 多 く

の場 合 、 申請 人 は 別 の都 市 に行 って 申請 しなけ れ ば な らな いた め に不 便 で あ っ た 。 また 、 申請 の期 間 もか な り短 く、 申請 人 が十 分 に準 備 す る に は不 利 で あ っ

3)

た 」 ので あ る。

したが って 、今 回 、 全 国 人 民 代表 大会 常 務 委 員 会 に よ って制 定 され た 行 政 復 議 法(1999年4月29日 公 布 、1999年10月1日 施 行)は 、 そ の法 形 式 に お い て 中 国 に お け る真 正 な意 味 で の 最初 の行 政 不 服 審 査制 度 の基 本 法 と い う ことが で き る と と もに 、 そ の 内容 にお い て も、行 政 不 服 審 査 制度 自体 の性 質 と効 能 を 反 映 す る よ うに構 想 され た もの で あ る とい え る。

中 国 にお け る行 政 不 服 審 査 制 度 の歴 史 にっ い て は、 す で に論 じた こ とが あ る

4)

の で 、本 稿 で は 、行 政 復 議 法 につ いて の主 要 内容 と問 題 点 のみ を考 察す る こ と に す る。

(3)

中国 の行 政不服 審査 法(行 政復議 法)の 主要 内容 と問題 点 につ いて(そ の1)25 なお 、「中 国 にお い て 『行 政 復 議 』 とい う言 葉 は 、1980年 代 に中 国行 政 法 と 行 政 法 学 が 興 り発 展 す るの に伴 って使 わ れ る よ うに な った 言葉 で あ り、 行政 法 学 者 は 、行 政機 関が 行政 争議 を審 査 し裁決 す る法 律 制 度 を行 政 復 議 と総称 した 。

『復 』 とは改 め て 〔重 新 〕 また は も う一 度 〔再 次 〕 と い う こ とで あ り、『議 』 とは審 議 並 び に決 定 す る こ とで あ る。 前 に冠 した 『行 政』 は 、 行政 機 関 が行 政 争議 に っ い て照 合 し 〔復 核 〕、審 議 し並 び に決 定 す る こ と を表 明 した も の で あ

5)

り、 それ ゆ え行 政 復 議 と した」 と説 明 され て い る。 中 国 語 の 「行 政 復 議 」 の語 を 目にす る とき、 漢 字 に慣 れ 親 しんで い る 日本 人 に と って は 、 ほ ぼ 同様 の 意味 に理 解 す る こと は さ ほ ど困難 で な く、 また 、 日本 の法 制 度 との違 い を意 識 で き る とい う利 点 も あ るた め 、 本稿 で は原 則 と して 、「行 政 復 議 」 「復 議 」 の 語 を そ の ま ま使 用 し、 「申請 」 にっ い て も あ え て 「申立 て」 とは 訳 さ なか った が 、論 述 の状 況 に よ って は 「行 政 不 服 審査 」 又 は 「行 政 不 服 申 立 て」 と適 宜翻 訳 した 箇 所 もあ る。 ま た、 中国 語 文献 の翻 訳 引 用 に際 して 、特 に中 国語 の原 語 を 示す

必要 が あ る とき は 〔 〕 の 中 にそ れ を記 した。

1)中 国 の行政訴 訟法 にっ いて は、拙稿 「中 国行 政訴 訟法 の特 色 と問題 点」『創 価 法学』

第22巻 第1号(1992年)所 収、参 照。

2)干 安 「中 国行 政復 議制 度 的新 発展 」『第 四回東 亜行 政 法学 術 検討 会(報 告 集)』(台 湾行政 法学 会 、2000年)所 収 、2頁 。

3)張 春生e童 衛 東 「我 国行政 復議 制度 的 発展和 完善 」 『中 国法学 』1999年 第4期 、51 頁 。

4)中 国 の行 政復議 条例 の 内容及 び問題 点 にっ いて は、拙 稿 「中 国 にお け る行 政 不服 審 査制 度 の特 色 と問題 点 にっい て」高 田敏 ・畑博行 編 『憲 法 と行政 法 の現在 一 伊 藤 満 先生 米 寿記 念 一 』(北 樹 出版r2000年)所 収 、 を参 照 され た い。 以下 、 本稿 にお い

て引用す る際 には、「中国行政不 服審査 制度」 と称 す る。

5)応 松年=劉 華 主編 『中華 人 民共 和 国行政 復議 法講 話』(中 国方 正 出版社 、1999年) 1頁(応 松 年執筆)。

6)中 国 の行 政復議 法 の 日本語 訳 と して は、拙訳 「中 国行政 不 服審 査法(行 政 復議 法) の解 説 と全訳 」 『創 大 ア ジア研究 』 第23号(2002年)所 収 、外 間 寛e葉 陵 陵 「中華 人 民共和 国行政 不服 審 査法 」『比 較 法雑a+』 第34巻 第3号(2000年)所 収 、 小 高 剛 e申 順 券 「中華 人 民共和 国行政 不 服審…査法 」 『名城 法 学 』 第49巻 第2号(1999年) 所収 、「行政 再議 法 」法 務大 臣官 房 司法 法 制調 査部 職 員監 修 『現行 中華 人 民共 和 国 六 法』(ぎ ょうせ い)所 収 があ る。 本稿で は、条 文 の引用 に際 しては拙 訳 に よ った。

(4)

第1章 行 政復議 の性 質 と行政 復議 法 の構成

と こ ろで 、 行 政 復 議 条 例(以 下 、「復 議 条 例 」 と略す)の 制 定 に際 して も問 題 に な った と ころで あ るが 、 行 政 復 議 法(以 下 、「復 議 法 」 と略 す)の 制 定 過 程 に お い て も 、 そ もそ も行 政 復 議 の性 質 を どの よ うに理 解 す るか につ い て の議 論 が あ った 。 結 果 と しては 、復 議条 例 の下 で の多 数 説 と 同 じ く、行 政 復 議 の性 質 を 一 種 の行 政 司法 行 為 な い しは準 司 法行 為 と理 解 す る こ とに な った ので あ る が 、 こ こで 中 国 にお け る行 政 復 議制 度 の 考 察 の前 提 に な るで あ ろ う行 政 復 議 の 性 質 につ い て 、多 数 説 と思 わ れ る見解 を中 国 の研 究 者 の言 を借 りて 少 し見 て お

くこ と にす る。

す なわ ち 、「行 政 復 議 の 性 質 を どの よ う に捉 え るか は 、一 つ の学 術 問題 で あ るだ け で な く、 それ は行 政 復議 を立 法 す る上 で研 究 が必 要 な実際 問題 で も あ り、

そ れ は我 々が どの よ う な行 政 復 議 制 度 を建 立 しよ う とす る のか に もかか わ って い る。 この 問題 は 、立 法 過 程 に お い て も意 見 が 異 な り、 あ る者 は 、行 政 復 議 と は 行 政 機 関 が 内部 で 自 ら誤 りを是 正 す る一種 の 監 督制 度 で あ り、 この た め 、行 政 復 議 法 の規 定 は充 分 に そ の監 督 性 を体 現す べ きで あ る と考 え 、 また 、 あ る者 は 、 それ は 主 に公 民 の権 利 の救 済 手 段 で あ り、行 政復 議 法 は手続 上 、行 政 復 議 の公 正 性 を保 障す べ きで あ る と考 え る。 この種 の 意 見 の相 違 は、理 論界 に お け る行 政 復 議 の性 質 にっ い て の 異 な る視 点 を直 接 に反映 して い る。 あ る者 は 、行 政 復 議 と は、 一 種 の純 然 た る行 政 行 為 で あ り、 そ れ は行 政 機 関 の上 下級 間 の指 導 と監 督 の関係 に基 づ い て生 まれ た も ので あ る と考 え、 あ る者 は行 政 復議 とは 、 一 種 の 司法 活 動 で あ り、 公 民 の権 利 に対 す る行 政 救済 で あ ると考 え る。 しか し、

多数 の者 は 、行 政 復議 とは 、 一種 の行 政 司法 行 為 で あ り、行 政 性 と 司法 性(あ る い は救 済 性)を 兼 ね 備 え て い る と考 え て い る。 そ の 理 由は以 下 の とお りで あ る。

まず 第 一 に 、行 政 復 議 の 主 体 、す なわ ち復 議 機 関 は 行政 機 関 で あ り、 行 政 復 議 は行 政 機 関が 行 政 復 議 権 を行 使す る行 為 で あ る。 行 政復 議 権 は行 政 権 の一 つ の構 成 部 分 で あ り、す べ て の行 政復 議 活動 は行 政 機 関 が 主導 して進 行 す る もの で あ り、 この意 義 か ら言 って、 そ れ は 一種 の行 政 行 為 で あ る。

(5)

中国の行政不服審査法(行 政復議法)の 主要内容 と問題点にっいて(そ の1)27 第 二 に、行 政 復 議 は、 行政 争議 の解 決 を 目的 と した 一種 の権 利 救 済 手段 で あ る。行 政 争 議 は行 政 機 関 が 行政 権 を行 使 す る こ と に よ って行 政 の相 手 方 との 間 に生 ず る争 議 で あ り、 行政 復 議 は第 三 者 を仲 介 人 とす る行 政 争議 の解 決 を通 じ て、 損害 を受 けた 権 利 を回復 又 は補 償 す る こ とで あ る。 この た め に 、行 政 復 議 には 司法 性 が 備 わ って い る。

第 三 に、行 政 復 議 は、行 政 の相 手 方 に よ って始 動 され る もの で あ る。 一 般 の 行 政行 為 はす べ て行 政機 関 が 法律 の規 定 に基 づ く職 権 に よ って主 動 的 に行 わ れ る もの で あ り、行 政 機 関 の 一方 的 な行 為 で あ る。 しか し、行 政 復 議 は行 政 の相 手 方 に よ って のみ 始 動 され 、行 政 の相 手 方 の 申請 が なけ れ ば行 政 機 関 は主 動 的 に復 議 活 動 をす る こと は な い。 この 一点 か ら見 れ ば 、 そ れ は 司法 活 動 と近 似 し てお り、一 般 の行 政 行為 と区別 され る。

第 四 に、行 政 復 議 は、 一 種 の 司法 性 を帯 び た手 続 に従 って進 め られ る。 す べ ての行 政 行 為 は一 定 の手 続 に従 って進 め られ る こ と を要 す るが 、 しか し、行 政 復議 は一般 の行 政行 為 と比べ て、 一層 厳 格 な手 続 が 要 求 され 、 行 政復 議 の 申請 、 受 理 か ら決 定 に至 る まで 、 す べ て一 定 の実 体 的 要 件 と形 式 的要 件 に符 合 す る こ

と を要す る。

以上 の ことか ら分か る よ うに 、行政 復 議 は一 種 の行 政行 為 で あ るが 、 しか し、

この よ うな制 度 を創 設 した 目的 は行 政 争 議 を解 決 す るた め で あ り、 公 正 性 の要 求 を考 慮 して 、行 政 復 議 は比較 的 厳 格 な手 続 を必 要 と し、 これ らの手 続 は 司 法 手続 と類 似 してお り、 しか も一 般 の行 政 手 続 とは か な り明 らか な区 別 が あ る。

この た め 、行 政 復 議 は一 種 の行 政 司法 行 為 、 あ る い は 『準 司法 行 為 』 と称 す る

こ と が で き る」 と論 ず る の で あ る。

こ の よ う な 性 質 を 有 す る行 政 復 議 の 基 本 法 と して 、1999年4月29日 に 公 布 さ れ 、 同 年10月1日 か ら施 行 さ れ た 「中 華 人 民 共 和 国 行 政 復 議 法 」 で あ る が 、 そ れ は 全7章43条 で 構 成 さ れ て い る 。

す な わ ち 、 第1章 「総 則 」(1〜5条)、 第2章 「行 政 復 議 の 範 囲 」(6〜8 条)、 第3章 「行 政 復 議 の 申 請 」(9〜16条)、 第4章 「行 政 復 議 の 受 理 」

(17〜21条)、 第5章 「行 政 復 議 の 決 定 」(22〜33条)、 第6章 「法 律 責 任 」 (34〜38条)、 第7章 「附 則 」(39〜43条)で あ る。

これ は 、 か つ て の 復 議 条 例 が 全10章57条 で 構 成 さ れ て い た の と比 較 す る と

(6)

き、 章 の数 も条 文 数 も少 な くな つてい る。 しか し、 これ は 必ず しも内 容が 簡 略 化 され た訳 で は な く、 む しろ立 法 技 術上 の進 歩 に よ って体 系 的 に整 理 され た の

2)

で あ り、 そ の 内 容 に お い て も一 層 充 実 した もの とい う ことが で き るの で あ る。

と ころで 、復 議法4条 は 「行 政 復 議機 関 は 、行 政 復 議 の職 責 を履 行 す るに あ た って は 、適 法 、公 正 、公 開 、 迅 速 、人 民 に便 利 とい う原 則 に従 い 、誤 りが あ れ ば必 ず 是 正 す る こ とを堅 持 し、 法 律 、 法規 の正 確 な実 施 を保 障 しなけれ ば な らない」 と規 定 して い る。 この 復 議 法4条 とかっ て の復 議 条例6条 の規 定 を比 較 す る と、公 正 と公 開 の原 則 が 新 た に加 え られ た こ とが 分 か るが 、 これ らの原 則 こそ 、行 政 復 議 の準 司法 的 性 質 を強調 して い る もので あ る と い う こ とが で き

3)

る 。

1)張 春 生=童 衛 東 、前 掲論文 、48〜49頁 。

2)湛 中楽=姜 岸 「論我 国行政 復議 立法 的 得与失 」『行 政法論 叢』 第3巻(2000年)所 収 、361頁 。

3)湛 中楽=姜 岸 、前掲 論文 、362頁 。 も っとも、復議 法4条 は行 政復 議制 度 の基本 原 則 と して、適法 原則 、公 正 原則 、公 開原 則 、迅速 原則(又 は効 率原 則)、 人 民に便 利 の原 則 〔便 民原則 〕、誤 りを是 正す る原則 〔有錯 必究原 則〕、法 律 ・法規 の正確 な実施 を保 障す る原 則 を挙 げ てい るが 、応松年 教授 は 、 これ らの原則 に加 えて訴訟終 局原 則 (又 は司法最 終 の原則)を 挙げ 、 これ らを更 に行政復 議制 度 の一般原 則 と行政 復議制 度 に特 有 な原 則 の二っ に分類 して い る。 す なわ ち、応松年 教授 は、適 法原則 、公正 原 則 、公 開原則 、迅速 原則 、法律 ・法規 の正確 な実施 を保 障す る原則 は、行政 訴訟や 国 家賠 償制 度 な どにも共通す る一般 原則 で あ り、人 民 の便 利 の原 則、誤 りを必 ず是正 す る原 則 、訴訟 終局原 則 は、そ の他 の法律 制度 と区別 され る行政復 議制 度 に特 有 な原 則 で あ る と い う(応 松年=劉 華主 編 、前 掲書(応 松 年執 筆)、36頁)。 そ して、公 開 原 則 と訴 訟終 局原則 はそ の執 行過程 にお いて認 識上 の異議 は存在 しない し、 また融通 を きかす 余地 もな く、ただ厳 格 に法 律 に基 づ い て行 うだ けで あるが 、それ以外 の原則 は 具体 的 な適用 の場面 にお いて相互 に衝 突す る可能性 が あ るので、 それ らの原 則 の間の 位 階 を 明 らか にす る必要 が あ る と して 、「行政復 議 の八 大原 則 の うち、公 開原 則 と訴 訟 終 局原則 を除 くと、 その他 の原則 の位 階 はおお よ そ次の とお りで あ る と考 え る。す なわ ち、誤 りを必 ず是正す る原則 はす べ ての指導 的思想 で あ り、適 法原則 と法律 ・法 規 の 正確 な実施 を保 障す る原則 は、最 も基本 的 な原則 であ り、公正 原則 はその次 の基 本 的 原則 で あ り、効 率 原則 と人 民 の便 利 の原 則 は また その次 の原則 で あ る」(同 書 、 49頁)と 述 べ る。

そ もそ も行 政不 服審査制 度 を どのよ うに構 築すべ きか とい う問題 の根底 には 、実 は これ らの原則 の位 階 を どの よ うに考 え るべ きか とい う根 本 問題 が常 に横たわ ってい る

(7)

中国 の行 政不服 審査 法(行 政 復議 法)の 主要 内容 ど問題 点 につ い て(そ の1)Z9 ので あ り、 その意味 にお い て、 これ か ら考 察す る中 国 の行 政復議 法 の特 色 といわ れ る

ものは、観 点 を変 えれば 、誤 りを必ず是 正す る原則 を第一 の指 導的 思想 と した ことに 由来す るもので ある とい うこと もで き よう。

第2章 行政復議 法 の主 要 内容

第1節 行 政 復 議 法 の 目 的

先 に見 た よ う に、行 政 復 議 は 「行 政 司法行 為 」 な い しは 「準 司 法行 為 」 と理 解 され て い るの で あ るが 、 この こ とを端的 に表 現 した規 定 が 復議 法1条 で あ る。

それ は 、「違 法 又 は 不 当 な具 体 的行 政 行 為 を 防 止 及 び是 正 し、公 民 、 法 人 及 び そ の他 の組 織 の 適法 な権 利 利 益 を保 護 し、行 政 機 関 の法 に よ る職 権 の行 使 を保 障及 び監 督す るた め に 、憲 法 に基 づ き、 この法 律 を 制 定 す る」 と定 め て い る。

もち ろ ん 、「公 民 、 法 入 及 び そ の他 の組 織 の適 法 な権 利 利 益 の保 護 と 、行 政 機 関 の法 に よ る職 権 行 使 を保 障及 び監 督 す る こ とは 、行 政復 議 制 度 の体 系 を建 立 す る出発 点 で あ り、 帰着 点 で あ り、違 法 又 は不 当 な行 政 行 為 を 防止 及 び是 正

1)

す る こと は、 この 目的 を実 現 す る手 段 で あ る」 こ とは 言 う まで も ない。 事 実 、 行 政 復 議 は 、公 民 の権 利 救 済 とい う 司法 性 と行 政 機 関 に よ る職 権 行 使 の保 障及 び監 督 とい う行 政 性 を兼 ね 備 え て い るが 、 しか し、「行 政 復 議 の権 利 救 済 と比 べ た と き、 そ の保 障 と監 督 の効 能 は第 二 次 的 な もの で あ る」 ので あ る。

2)

この こ とは 、復 議 法 と復 議 条 例 のそ れ ぞれ の第1条 を 比較 す る ことで よ り明 らか に な る。 す なわ ち、復 議法1条 と復 議条 例1条 とは ほ とん ど同 じで あ るが 、 異 な る点 は 、第 一 に 、行 政 復 議 条 例 で は 「行 政 機 関 の法 に よ る職 権 行 使 を保 障 及 び 監 督」(も っと も復 議 条 例 で は 「保 障 」 の 語 が 「保 持 」 〔維 護 〕 と な って い た)す る と の語 句 が 、 「公 民 、 法 人 及 び そ の他 の組 織 の適 法 な権 利 利 益 を 保 護 し」 の 前 に置 か れ て い た こと と、 第 二 に、 「憲 法 に基 づ き 、 この 法 律 を制 定 す る」 との 語 句 が 、「憲 法 及 び 関 係 法 律 に基 づ き 、 この条 例 を制 定 す る」 と な っ て い た こ とで あ る。

第 一 の 点 にっ い て は 、「行 政 復 議条 例 第1条 と比 べ る と、表 面 的 に は説 明 上 少 し調 整 した だ け の よ う に見 え るが 、実 際 にお いて は 、 内容 及 び 意 義 にお い て

(8)

比 較 的 大 き な変 化 が あ り、 『保 持 〔維 護 〕』 『監 督 』 『防止 』『是 正 〔糾 正 〕』 『保 護 』 と い う これ らの キ ー ワー ドの順 序 の変 化 は、行 政 復 議 が公 民 の権 利 利益 に

3)

対す る保 護 作 用 で あ る こ とを意 味 し、そ れ を よ り強調 して い る」 と指 摘 され て い る。 これ は 、 「保 持 〔維 護 〕」 の 語 を 「保 障 」 に変 え た 点 か らも伺 え るの で

4)

あ る。

第 二 の点 は 、行 政 復 議 の基 本 法 が行 政 府 で あ る国務 院 が 制 定 した政 令 の形 式 か ら最 高 立 法 機 関 で あ る全 人代 常 務委 員 会 に よ って制 定 され た 法律 の形 式 に変 更 され た こ とに伴 う 当然 の結果 で あ り、 い う まで も な く、 そ の一般 的拘 束 力 は か っ て の 「条 例 」 よ りも上 位 に あ る。

1)王 成棟8張 興祥 『中華 人民共和 国行政 復議 法精解』(中 国政法大 学 出版 社 、1999年) 4頁 。

2)張 春 生=童 衛 東、前 掲論文 、49頁 。 3)王 成棟=張 興祥 、前掲書 、4頁 。

4)同 書 、5〜6頁 、参照 。かっ て、復 議i条例1条 の語順 をめ ぐって 「行政 不服審 査制 度 の重 点 を、行 政職 権 にたいす る擁 護 ・監 督お よび違 法 また は不 当 な具体 的行政 行為 にた いす る防止 ・是 正 の面 」 にお いた もの とす る指摘 が あ ったが(張 勇r中 国行 政 法 の生 成 と展 開 一 日本法 との比較 の視点 か ら見 る一 』(信 山社 、1996年)109頁)、

これ に対 して筆者 は必ず しも中国 の研究者 はその よう に解 して い ない こ とを論 じた こ とが あ る(拙 稿 「中 国行政 不 服審 査制度 」248〜250頁)。 今 回 の改正 は、 その意 味 に お い て、語順 か ら来 る無用 の争 いに一応 の終止符 を打 った とい う こともで きよ う。

第2節 行政復議 の対象

1申 請可能 な具体的行政行為の範 囲を拡 大

1)

復 議 法2条 は 「公 民、 法 人 そ の他 の 組織 は 、具 体 的 行 政 行 為 に よ りそ の 適 法 な権 利 利 益 が侵 害 され た と認 め 、 行 政機 関 に対 し行 政 復 議 の 申請 を提 出 し、行 政 機 関 が行 政 復 議 の 申請 を受 理 して行 政復 議 の決 定 をす る場 合 に は、 この 法律 を適 用 す る」 と規 定 して 、行 政 復 議 の対 象 につ い て原 則 と して概 括 主 義 を採用 しなが らも、後 の6条 で は 「次 に列 挙 す る状 況 の一 に該 当す る場 合 は、 公 民 、 法 人 そ の他 の組 織 は 、 この法 律 に よ り行 政復 議 を 申請 す る こ とが で き る」 と定 め て11項 目を列 挙 して い る。 した が って 、「行 政 復 議 法 は、 受理 す べ き復 議 事

(9)

中国 の行 政不服 審査 法(行 政 復議 法)の 主要 内容 と問題点 にっ いて(そ の1)31

2)

項 にっ い て 、概 括 と列 挙 の結 合 方 式 を採 用 した 」 とい う ことが で き る。

す なわ ち 、復 議 法6条 は 、「(1)行政 機 関 の 行 った 警 告 、 過 料 〔罰 款 〕、 違 法 所 得 の没 収 、不 法 財物 の没 収 、生 産 及 び営 業 の停 止 命 令 、許 可 証 の 一 時 差 押 え 又 は取 消 し、免 許 の一 時 差押 え 又 は取 消 し、 行 政 拘 留 等 の行政 処 罰 の決 定 に対 して不 服 が あ る と き 。(2)行 政 機 関 の行 った 人 身 の 自 由の 制 限 、 又 は 財 産 の 封

t

印 、 差 押 え 、 凍 結 等 の 行 政 強 制 措 置 決 定 に対 して 不 服 が あ る と き。(3)行 政 機 関 の行 った 許 可 書 、 免 許 、 資質 証 、資 格 証 等 の 証 書 の変 更 、 中止 、 取 消 しの決 定 に対 して 不 服 が あ る と き。(4)行 政 機 関 の行 った 土地 、 埋 蔵 鉱 物 、 水 流 、 森 林 、 山岳 、 草 原 、 未耕 地 、砂 浜 、海 域 等 の 自然 資 源 の所 有 権 又 は 使用 権 の 確 認 に関 す る決 定 に対 して 不 服 が あ る と き。(5)行 政 機 関 に よ っ て適 法 な経 営 自主 権 が 侵 害 され た と認 め る と き。(6)行 政 機 関 が 農 業 請 負 契 約 を 変 更 又 は 廃 止 し

て、 そ の適 法 な権 利 利 益 を侵 害 した と認 め る と き。(7)行 政 機 関 が 違 法 に 資 金 を集 め 、財 物 を徴 収 し、 費用 を割 当 て 、又 は そ の他 の義 務 の履 行 を違 法 に要 求 した と認 め る と き。(8)法 定 の条 件 に適 合 して 、 行 政 機 関 に 、 許 可 証 、 免 許 、 資 質 証 、資 格 証 等 の 証 書 の発 給 を 申請 し、 又 は行 政 機 関 に関係 事 項 にっ い て の 審 査認 可 、登 記 を 申請 した に もかか わ らず 、 行政 機 関 が 法 に従 って 取 り扱 わ な か った と認 め る と き 。⑨ 行 政 機 関 に 、 人 身 上 の権 利 、 財 産 上 の権 利 、 教 育 を 受 け る権 利 を保 護 す る法 定 の職 責 の履 行 を 申請 した に もか か わ らず 、行 政 機 関 が 法 に従 って履 行 しなか った と き。 ⑩ 行 政 機 関 に 、 法 に従 って 傷 病 者 遺 族 補 償 金 、社 会 保 険 金 又 は 最 低生 活保 障 費 の給 付 を 申請 した に もか か わ らず 、 行 政 機 関 が 法 に従 って給 付 しなか った と き。 ⑪ 行 政 機 関 の そ の他 の具 体 的行 政 行 為 が 、 そ の適 法 な権 利 利 益 を侵 害 した と認 め る と き」 と列 挙 して い る。

この よ うな 「概 括 と列 挙 の結合 方 式 」 は復議 条 例 に お いて も同様 で あ った が 、 そ の列挙 項 目の 内容 にっ い ては 、復 議 条例 とは 相 当 に異 な って い る。す なわ ち、

「行 政 復 議条 例 の規 定 によ る と、復 議 申請 範 囲 は 、 法 律 及 び法 規 が 明確 に規 定 した 、人 身権 と財産 権 にか かわ る具 体 的行 政行 為 に 限 られ て お り、 これ は行 政 訴 訟 法 の受理 範 囲 と大 体 同 じで あ った 。 行政 争 議 を 解 決 す る方 面 に お け る行 政 復 議 制 度 の積 極 的作 用 を充 分 に発 揮 して、 法 律 によ る行 政 を促 進 す るた め に、

行 政 復 議 法 は復 議 を 申請 す る具 体 的 行政 行 為 の範 囲 を拡 大 した。 行 政 復 議 法 の 規 定 に基 づ き、行 政機 関 の具体 的行 政行 為 は作 為 ・不 作 為 を 問わ ず 、 ただ 公 民 、

(10)

法 人及 び そ の 他 の組織 が これ らの行 為 を違 法 又 は 不 当 で あ り、 自己 の 法律 上 の 権利 利 益 を 侵 害 した と認 め られ さ えす れ ば 、す べ て法律 に基 づ い て復 議 を 申請 す る こ とが で き る。 現行 制 度(復 議 条 例 … …訳 者 注)の 復 議 申請範 囲 と比べ る

37

と、以下 の よ う な内容 を 明確 に増加 して い る」 と して 、上記 の第6号 、第7号 第8号 、第9号 、 第10号 が増 加 した 内 容で あ る と い う。 これ らは 、 いず れ も 復 議条 例 下 で の実 際 の運 営 に お い て 問題 とな った 事 項 で あ る。

さ らに 、 「行 政 機 関 の そ の他 の具 体 的 行 政 行 為 が 、 そ の 適 法 な権 利 利 益 を侵 害 した と認 め る とき」 と の概 括 条 項(6条11号)が 規定 され る こ とに よ って 、 原 則 と して 、 あ らゆ る具 体 的行 政 行 為 が行 政 復 議 の対 象 に な る こと に な った の で あ る。 した が って、 行 政復 議 法 の 申請 範 囲 は 、行 政 訴 訟 の受 理 範 囲 よ りも 明 らか に広 い とい う ことが で き る。 た だ し、復 議 法8条 は 行政 復 議 の対 象 と な ら な い事 項 と して 、第̲̲̲̲.に、行 政機 関 が そ の公 務 員 に対 して な した 懲 戒 処 分 又 は そ の他 の 人事 処 理 の決 定 な どの行 政機 関 の 内部 的行政 行 為 に不 服 が あ る ときは 、 行 政 復 議 の 申 請 の代 わ りに、 関係 す る法 律及 び行 政 法 規 の 規 定 に基 づ い て 、行 政 監察機 関 又 は関係 の主 管機 関へ の不服 申立 て 〔申訴 〕 をす る こと(同 条1項)、

第 二 に 、 民 事 紛争 にっ い て行 った行 政 機 関 の調 停 又 はそ の他 の処 理 は 、 いわ ば 一 種 の特 殊 な具体 的 行 政 行 為 で あ り、 行 政機 関 は第 三 者 の地 位 で も って 民事 紛 争 の 間 に 立 って調 停 又 は処 理 す る もの で あ るか ら、 これ に対 して不 服 が あ る と

き は 、行 政 復 議 の 申請 で は な く、 法 律 に基 づ い て仲 裁 を 申請 す るか人 民法 院 に 訴 訟 を提 起 しなけれ ば な らな い こと(同 条2項)を 規 定 して い る。

2申 請 可能 な範 囲を抽象的行政行為 にまで拡 大

また、復 議条例 は、具体的行政行為 に限 っていたために、 日本の行政立法 に 相 当す る抽象的行政行為 〔抽象行政行為〕はすべて行政復議 の対象か ら除外 さ

れ て い た 。 しか しなが ら、 中 国 の行 政 法 学 者 の一部 は早 くか ら、 この 抽 象 的行

5}

政行 為 につ い て も復 議 の 申請 を 可能 とす べ きで あ る と主 張 して いた ので あ る。

この点 にっ いて は 今 回 の復 議 法 の制 定 過 程 にお いて も意 見 の対 立 が あ った こ とが 伝 え られ てお り、 「行 政 復議 法(草 案)」 の段 階 で は抽 象 的行 政行 為 を行 政

6)

復 議 の対 象 に一 切含 め ない こ とで合 意 して いた 。 しか し、 そ の後 の審 議 にお い て、 一部 の抽象 的行 政行 為 にっ い て は行政 復 議 の申請 を認 め る ことに変 更 した 。

(11)

中国の行政不服審査法(行 政復議法)の 主要 内容 と問題点にっいて(そ の1)33 す なわ ち、具 体 的 行 政 行 為 に対 す る復 議 申請 に際 して 、 当該 具 体 的 行 政 行 為 の

7)

根 拠 と な った 国務 院 各 部 門及 び 一 定 の 地 方 人 民 政 府 の 「規 定 」 〔規 定 〕 にっ い て は 、 そ の審 査 の 申請 を認 め る こ と に した ので あ る。

復 議 法7条 は 「① 公 民 、法 人 そ の他 の 組 織 は 、 行 政機 関 の 具 体 的行 政 行 為 が 依 拠 した 以下 に掲 げ る規 定 〔規 定 〕 が不 適 法 で あ る と認 め る場 合 に は 、 そ の 具 体 的行 政 行 為 に対 す る行 政 復 議 の 申請 の と き に併せ て行政 復 議 機 関 に 、 当該 規 定 に 対 す る審 査 を 申請 す る ことが で き る。(1)国 務 院 の部 門 の規 定 。(2>県 級 以 上 の地 方 各級 人 民政 府 及 び そ の業 務 部 門 の規 定 。(3)郷 、 鎮 人 民政 府 の規 定 。

② 前 項 に掲 げ た規 定 に は 、 国務 院 の 部 及 び 委 員 会 の規 則 〔規 章 〕 並 び に地 方 人 民政 府 の規 則 〔規 章 〕 を含 ま な い。 規 則 の審 査 は 、法 律及 び行 政 法 規 に よ り 取 り扱 う」 と定 め た ので あ る。

と ころで 、行 政 復 議 法 が 抽 象 的行 政 行 為 に ま で そ の 申請 対 象 を拡 大 した 理 由 と して は 、次 の よ う に主 張 され て い る。

す なわ ち 、「まず 第 一 に 、理 論 的 に い って 、 いか な る権 利 もす べ て保 護 と救 済 が必 要 で あ り、 そ うで なけ れ ば これ を権 利 と称 す る こ とはで きな い。 抽 象 的 行 政 行 為 が 公 民 の権 利 を 侵害 す る可能 性 が 存 在 す る以 上 、公 民 に それ に相 応 す る救 済 の道 を与 え な けれ ば な らない。 我 が 国 の憲 法 と法 律 は、 抽 象 的 行 政 行 為 に対 して監 督 す る制 度 を 規 定 して い るが 、 そ れ は権 力 機 関 の監 督 で あ ろ う と行 政 機 関 の監 督 で あ ろ う と、主 にす べ て監 督 機 関 自身 を信頼 して 始 ま る も の で あ り、抽 象 的 行 政 行為 によ って侵 害 され た 公 民 は 、 た だ 密告 し、 糸 口を提 供 す る こ とが で き るだ け で あ る。 この よ うな密告 は 法律 に定 め られ て い ない手 続 を活 用 す る もの で あ るた め に 予期 した 目的 に達 す る こ とが 困難 で あ り、公 民 の 法 律 上 の権 利 利益 にっ い て の十 分 な保 護 を妨 げ て い る。

第 二 に、 行 政 復議 の性 質 か らい うと、 そ れ は上 級 機 関が 下 級 の行 政 機 関 に対 して監 督 す る形 式 で もあ り、 また 行 政 の相 手方 に提 供 す る行 政 救 済 の手 段 で も あ る。 監 督形 式 と して 、行 政 復 議 は規範 性 を有 す る公 文 書 の制 定 と、 法 律 、 法 規 、 規 則 〔規 章 〕及 び そ の他 の規 範 性 を有 す る公 文 書 の執 行 にっ い て、 全 面 的 監 督 で あ るべ きで あ り、 また 、救 済 手段 と して、 行 政 復 議 は行 政 活 動 の そ れ ぞ れ の方面 を貫 くべ きで あ り、 そ れ は 、公 民が 何 らか の違 法 及 び 不 当 な行 政 活 動 に よ って 自身 の法 律 上 の権 利利 益 が侵 害 され る こと に な った と き に、 当 然 受 け

(12)

るべ き全 面 救 済 で あ る。

第 三 に、 行 政 復 議 と行 政 訴 訟 の関係 か らい って も、行 政 復 議 の受 理範 囲 は拡 大 され るべ きで あ る。 行 政 行為 の監 督 制 度 して 、行 政 復 議 と行 政 訴 訟 は 、 そ の 趣 旨 と 目的 は 同 じで あ る。 どち らも行 政 機 関 の職 権 の行 使 を保 持 ・監 督 して 、 公 民 、法 人 そ の他 の組 織 の法 律 上 の権 利 利益 を保 護 す るた め の も ので あ る。 し か し、 それ らは 同 一制 度 の重 複 で は な く、 両 者 は 分業 と協 調 の関 係 にあ る。 行 政 訴 訟(又 は 司 法審 査 〉 は 、 司法権 と して、 行政 権 を監 督 す る形 式 で あ り、 そ れ は一 国 の政 治体 制 、法 律 の伝 統 及 び 法制 の観 念 な ど多 くの要 素 の影 響 を受 け 、 司法 権 が 行 政 権 を監 督 す る広 さ と深 さ の いず れ も制 限 を受 け て い る。 これ に対

して 、行 政 復 議 は 、0種 の行 政 上 の救 済 制 度 と して 、 それ 自身 の存 在 す る特 殊 な価 値 を有 し、 それ は 当然 に 司法 救 済 の不 足 を補 う こ とが で き るべ きで あ り、

公 民 の権 利 利 益 を 『真空 』 に しな い よ う にす べ きで あ る。 この た め に、行 政 訴 訟 と比 べ る と、 そ れ は救 済 の広 さ と深 さ のい ずれ につ い て も 自己 の特 色 を有 す べ きで あ る。 と りわ け現 在 の行 政 訴 訟 制 度 が い ま なお幾 らか の極 限性 を有す る

8)

状 況下 に あ るた め に、 この一 点 は よ りい っそ う体 現 され るべ きで あ る」 と論 ず る。

そ して、 こ の抽 象 的行 政 行 為 を行 政 復 議 の 対 象 とす る根 拠 条 文 と して、 憲 法 41条1項 、2項 及 び89条 、地 方 組 織 法59条 を挙 げ て い る。

と も あれ 、 「抽 象 的行 政 行 為 を復 議 の審 査 範 囲 に入 れ た こと は、 行 政 復 議 制

9)

度 の重 大 な進 歩 で あ り、新 機 軸 を打 ち 出 した もの で あ る」 とい う ことは 間違 い な い。 しか し、 司 法救 済 とい う観 点 か ら見 る と き、す で に世 界 の各 国で 抽 象 的 行 政 行 為 につ いて は何 らか の 司法 監 督 を受 け る よ うに な って い るの に対 して 、 中 国 の場 合 は、 抽 象 的行 政 行 為 を行 政 復 議 の 範 囲 に入れ る こ とで 、や っと抽 象 的 行 政 行 為 にっ い ての過 渡 的 な 司法 監 督 の制 度 が 成 立 した とい う こ とも事 実 で あ る。 また 、具 体 的行 政 行 為 と関係 の な い抽 象 的行 政 行 為 に対 す る復 議 申請 は 許 され て い な い こと、 さ らに 、 そ の抽 象 的 行 政行 為 も、 国 務 院 の各 部 ・各 委 員 会(日 本 の省 庁 に相 当)及 び地 方 人 民政 府 が制 定 す る 「規 則 〔規 章 〕」 に対 す る復 議 申請 は許 され ず 、 それ よ り も下 位 の行 政 法 規 で あ る 「規 定 」 に限 られ て い る こと にっ い ては 、 中 国 の行 政 法 学 者 に よ って不徹 底 で あ る との批 判 が な さ

ユの

れ て い る。

(13)

中 国の行政不 服審 査法(行 政 復議 法)の 主要 内容 と問題点 にっ い て(そ の1)35

1)中 国では 「行 政行 為 」 を 「具体 的行 政行 為 〔具 体行 政行為 〕」 と 「抽 象 的行政 行 為

抽 象行 政行 為〕」 とに分 け 、「いわ ゆ る抽 象 的行 政 行為 とは 、行政 庁 〔行政 主 体 〕 が不 特定 の対象 に的 を合わせ て普 遍的 拘束 力 を有す る行為規 範 を設定 又 は規定 す る活 動 を指す。 … …いわ ゆ る具体 的行 政行 為 とは、行 政庁 が特 定 の対 象 に的 を合わ せ て法 律規 範 を適用 して行 い 、か つ、特 定対 象 に対 して拘 束 力 を生 じる活 動 を指 す」(王 連 昌主編 『行 政法学(修 訂 版)』(中 国政法大学 出版社 、1997年)123頁(方 世 栄執 筆)) のであ り、 日本 の行政 法で い う ところの 「行 政処 分」 と類似 してい る といわれ る(同 書(方 世 栄 執 筆)158頁)。 本稿 で は、「行政 行 為 」 とか 「行 政処 分」 と翻 訳 せ ず に、

具 体的行 政行為 」 と いう用 語 を用 い るこ とに した。

2)応 松年=劉 華主編 、前 掲書(馬 懐徳 執 筆)、53頁 。 3)張 春生=・童 衛東 、前掲 論文 、49〜50頁 。

4)も っとも、「この よ うな規 定 は、 当時 の我が 国 の状況 と法制 の発 展状 況 に基 づ い て 考慮 され た ものであ り、 また、 国外 の多数 の 国家 の規定 と も一致 してい る」 〈張 春 生

=童 衛東 、前 掲 論 文、50頁)と の指 摘 は正 当で あ り、 日本 の行 政不 服審 査 法 も そ の 例外 で はない。

5)こ れ にっ いて は、拙稿 「中 国行政不 服審 査制 度」276〜277頁 、参照。

6)楊 景宇 「関干 《中華 人 民共 和 国行政 復 議 法(草 案)的 説 明》」(以 下 、張 桂 龍;劉 淑強=徐 景和 二沈 小英 編 『行政 復議 法 新 旧規 定対 照 分解 手冊』(法 律 出版 社 、1999) 収録 の も の によ った)351頁 以下 、「全 国人 大 法 律委 員 会関 干 《中華 人 民共 和 国行 政 復議 法(草 案)》 修改 情 況 的 彙 報 」(同 書)360頁 以 下 、「全 国人 大 法 律 委 員 会 関干

《中華人 民共 和 国行 政復 議法(草 案)》 審議 結果 的報 告」(同 書)364頁 以下 、参 照。

以下 、楊景宇 報告 を始 め とす る一連 の報告 文書 にっ いては、 この書 か ら引用 した。

7)石 本茂 彦 と江 口拓哉 の両弁 護士 は 「規 定 」 にっ い て、 「一 般 に規定 とは 、規 章(中 央政府 の場合 で い うと、国務 院の各部(日 本 にお け る省庁 に相 当)お よび 同委 員 会が 制 定す る レベル の法規 をい う。 法規 の名称 と しては、「弁 法 」「細 則」 な ど幾種 類 もあ り、一定 してい ない)よ りも下位 の行政法規 をい う。 ただ し、 この 「規定」 と 「規 章」

の 区別 が果 た して明確 にで きる のか は 、筆 者 と して若干 の疑 問 が残 る と ころ で あ る (と くに地 方 法規 の場 合)」 と述 べ てい る。石 本茂 彦=江 ロ拓 哉 「中国 にお け る行 政 不 服審i査法 の制 定」 『国際商 事法務』 第27巻 第7号(1999年)822頁

8)張 春生e童 衛 東 、前掲論文 、50頁 。 9)同 論文 、51頁 。

10)湛 中楽8姜 岸 、前掲 論文 、367頁 。

第3節 行政 復議 管轄

行政 復議管轄 とは、行 政復 議機関 が行政 復議事件 を受理 す る分担 と権 限 を 指 す 。 それ が 解決 す る問題 は、 す なわ ち どの級 の どの行 政 機 関 が どの よ う な復

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議 事 件 を受 理 す るの か と い う こ とで あ る」。 復 議 条 例 は 、 そ の 第3章 を 「復 議

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の 管 轄 」 と題 して 、12力 条 に 及 ぶ 規 定 を置 い て い た の に対 して、 復 議 法 は独 立 した 章 を 設 け る こ と な く、 第3章 「行 政 復 議 申 請 」 の 中 で4力 条(12 条 乃 至15条)を 置 くに止 ま って い るが 、 そ れ は簡 略 化 され た と い う よ り も、

条 文 の体 裁 を 整理 した とい う ことが で き る。

まず12条 は1項 で 「県 級 以 上 の 地 方 各 級 人 民政 府 の業 務 部 門 の具 体 的行 政 行 為 に対 して 不 服 が あ る場 合 は 、 申請 人 の選 択 に よ り、 当該 部 門 のそ の級 の人 民政 府 に行 政 復議 を 申請す る こ と も、 又 はそ の一 級 上 の 主管 部 門 に行 政 復 議 を 申請す る こと もで きる」 と規 定 して、 申請 人 に復議 管 轄 の選 択 権 を与 え てい る。

これ は行 政 復 議 の 「人 民 の 便 利 の 原則 」 を管 轄 に関 して体 現 した もので あ る。

と こ ろで 、復 議 条 例 は1990年 の制 定 当時 、 県級 以 上 の地 方 各 級 人 民政 府 の 業 務 部 門 の,具体 的 行 政 行為 に対 す る不 服 にっ い ては 、相 当す る直近 上 級 主 管 機i

関が 存 在 し ない か 、法 律 が 人 民政 府 の管 轄 を定 めた 場 合 を除 き、 原則 と して直 近 上 級 の主 管 機 関(通 常 、 直 近 上 級 の 人 民政 府 に所 属 す る同種 の業 務 機 関)を 管轄機関 と していた。確か に耳近 上級の主管機関 を復議機関 とす ることは・当 該 具 体 的 行 政 行 為 を した 機 関 と の上 下 の縦 の監 督 関 係 を体 現 してお り、上 級 主 管 機 関 は業 務 の専 門性 を発 揮 す る こ とが で き る とい う利 点 が あ る一方 で 、 直近 上級 の主 管 機 関 が 多 くの場 合 当該 具 体 的行 政 行 為 を した行 政機 関 と異 な る地 域 に設 立 され て お り、 とき に はそ の距 離 が 非 常 に遠 く離 れ て い るた め に 申請 人 に と っては 時 間的 に も経 済 的 に も大 き な負担 に な る とい う欠点 もあ った。 そ こで 、 1994年 の 復 議 条 例 の改 正 の 際 に、 そ の級 の 人 民政 府 か 直 近 上 級 の主 管 部 門 か のいず れ か を申 請 人 が選 択 す る ことが で き る よ うに 、管 轄 選 択 制 に変 更 した の で あ る。 しか し、 この 改 正 され た条 例11条 の但 し書 きで 、「そ の 他 の 法律 、 法 規 に別 の規 定 が あ るとき は、 そ の規 定 に よ る」 と定 め 、 また 、絶 対 多数 の法 律 、 法 規 の規 定 が 、 直 近 上級 の主 管 部 門 の管轄 を定 め て い た た め に 、実 際 に は復 議

申請 人 の 不 便 は解 消 され なか った ので あ る。 そ こで 、復 議 法 は 、 この よ う な但 し書 きを 削 除 す る こ とで 、個 別 法 の異 な る規 定 を統 一一して 、管 轄 選 択 の原 則 を 基 本 的 にす べ ての 領 域 内で 貫徹 し、人 民 の便 宜 を 図 る こ とに した ので あ る。

続 く13条1項 は 「地 方 各 級 人 民 政 府 の具 体 的 行 政 行 為 に対 して不 服 が あ る 場 合 は 、 そ の一 級 上 の地 方 人 民政 府 に行 政 復 議 を申 請 す る」 と規 定 して い る。

行 政 復 議 の管 轄 の基 本原 則 は 直近 上 級 の行 政機 関 の管 轄 で あ るか ら、地 方 各 級

(15)

中国の行政不服審査法(行 政復議法)の 主要内容 と問題点にっいて(そ の1)37 人 民政 府(省 級 人 民政 府 を含 ま ない)が 行 った具 体 的 行 政行 為 に 対 して 不 服 の 場合 に は、 直近 上 級 の地 方 人 民政 府 に行 政 復 議 を 申請 す る こ とに した ので あ る。

した が って 、行 政 復 議 の管 轄 は 、 各級 人 民政 府 が 当該 人 民 政府 の業 務 部 門 を 監 督 し、 上級 人 民政 府 が 下 級 人 民 政府 を監 督す る と い う、 中 国 の 憲 法 及 び 関 係

3)

組 織 法 の 定 め る監 督精 神 に沿 った もの と い う こ と もで き る。 も っと も、 実 際 に は、 人 民 政府 が 直接 に具 体 的 行 政 行 為 を行 う主 な もの は 、 土 地 、鉱 物 資 源 、 森

林 草 原 資 源 な どの管 理 領 域 に関 連 す る もの だ け で あ る。

ま た 、14条 は 「国務 院 の部 門 又 は 省 ・自治 区 ・直 轄 市 の人 民 政 府 の 具 体 的 行 政 行 為 に 対 して不 服 の あ る場 合 は 、 当該 具体 的 行 政 行 為 を した 国務 院 の 部 門 又 は省 ・自治 区 ・直轄 市 の人 民政 府 に行 政 復議 を 申請す る。 そ の行 政 復 議 の決 定 に対 して 不服 のあ る場 合 は 、人 民 法 院 に行政 訴 訟 を提 起 で き、 又 は 国 務 院 に 裁 決 を 申請 す る こ と もで きるが 、 国務 院 は 、 こ の法 律 の 規 定 によ り最 終 裁 決 を す る」 と定 め る。 これ は 、 い わ ゆ る 「当該 機 関 管 轄 〔本 機 関 管 轄 〕」 で あ り、

「当該 機 関 管轄 とは 、具 体 的 行 政 行 為 を行 った行 政 機 関 を復 議機 関 と し、 そ の

5)

機 関 が 申請 人 の提 出 した復 議 申請 を受理 し、 か っ 、 復議 決 定 を下 す 」 こ と を い う。 直近 上級行 政機 関 が管 轄す ると い う原則 に従 え ば 、 国務 院 の各部 門 及 び 省 ・ 自治 区 ・直 轄 市 人 民 政府 の具 体 的 行 政行 為 にっ い て の行 政復 議 は 、 国務 院 が 管 轄 す る こと に な るが 、 国務 院 の性 質 ・地 位 ・職 権 及 び中 国 の 行政 機 関 の 設 置 の

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実 際 的 な状 況 を考 慮 して 、「当該機 関管 轄 」 とい う例 外 を定 めた の で あ る。 も っ とも 、復 議 条 例(11条2項 ・12条1項)と 異 な り、 復 議 法 で は、 当 該 機 関 に よ る決 定 に不 服 の場 合 は 、 国務 院 に も再 度 、復 議 申請 が で き る と して い る点 は 大 き く異 な った 点 で あ る。

と ころで 、 実 は、 省等 の一 級 人 民政府 と国務 院 の各 部 門 が な した具 体 的 行 政 行 為 に対 す る復 議 の 担 当機 関 を どこ にす るか につ い て は 、1990年 の 復 議 条 例 制 定 当 時 か ら激 烈 な論 争 が あ った 。 そ れ は 、「行 政 復 議 条 例 の起 草 を 担 当 した 国務 院 法 制 局 の人hは 、 国務 院 は 国家 の最 高行 政 機 関 で あ り、 そ の主 要 な任 務 は行政 決 定で あ り、多 す ぎ る事 務的業 務 を担 当 すべ き では ない。 そ の ほ か に も、

国務 院 の各 部 門 と省 一級 人 民政 府 の具 体 的行 政 行 為 に対 す る監 督 に は そ の 特 殊 性 が あ る と考 えた 。 そ の た め に 、『行 政 復 議 条 例 』11条2項 と12条1項 は 、 国務 院 の各 部 門 の具 体 的行 政 行 為 に対 して不 服 を 申請 す る復 議 は 、 当該 具 体 的

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行 政 行 為 を行 った部 門 が管 轄 す る と規 定 した 。 また 、 省 ・自治 区 ・直轄 市 人 民 政 府 の具 体 的行 政 行為 に対 して不 服 を 申請 す る復 議 は、 具 体 的行 政 行 為 を な し た省 ・自治 区 ・直轄 市 人 民政 府 が管 轄 す る と規 定 した 。 国 務 院 が全 国人 民大 会 常務 委 員 会 の 審 議 に 提 案 した 『行 政 復 議 法(草 案)』11条3項 と12条2項 は依 然 と して 復 議 条 例 の 規 定 を保 留 して い た。 そ の理 由は 行 政復 議 条例 を制 定 した と きの 二 つ の点 の ほ か 、 さ らに 、省 、部 の一 級 行 政 機 関 の階 層 は 比較 的 高 く、 それ に応 じて復 議 事件 を具 体 的 に 引 き受 け る職 員 の素 質 も比較 的 高 く、彼 らは行 政 紛 争 を公 正 に処 理 す る こ とが で き る と信 ず るべ きで あ り、 しか も、行 政復 議 は 行 政 紛 争 の 最 後 の 救 済 手段 で は な く、復 議 決 定 の不 服 は なお 訴訟 を通

じて解 決 す る ことが で き る とい う もの で あ った。

しか し、 大 多 数 の専 門 学 者 と相 当 多 くの 実際 部 門 の人 々は、 これ らの機 関 が 自己 の な した 具 体 的 行 政 行 為 を復 議す る こ とは 、 実際 にお いて 、 自己が 自己 の 法 官 と な り、 法 理 上 そ れ は 許 され な い し、公 民 の法 律 上 の権 利利 益 を十 分 に保 護 す る の に不 利 で あ り、 復 議 の 効果 を果 た さ ない と して、 国務 院 が さ らに一 級 復 議機 構 を設 け るか 国務 院 を復 議機 関 とす る こ とを建 議 した ので あ る。全 国 人 民大 会 常 務 委 員会 の 審 議 の と き も、 草 案11条 と12条 の規 定 に対 して強 烈 に こ の よ う な意 見 を反 映 して、 あ る委 員 は 、 歴 史 的経 験 に基 づ き、 行 政 復議 は や は り具 体 的 行 政 行 為 を行 った機 関 の上 級機 関 に よ って管 轄す るこ とが適 当で あ り、

同級 の 間で は 問題 を解 決 し得 な い と の意 見 を提 出 した。 大 多 数 の委 員 は 、 国 務 院 を復 議 機 関 か ら排 除 す る こ とは妥 当で ない と考 え た。0面 で は、 国務 院 の各 部 門 と省 級 政 府 が 自己 を復 議 す る行 政行 為 は法 理 に違 背 し、執 行 も非 常 に困 難 に な り、法 律 に よ る行 政 の促 進 に不 利 で あ る し、 別 の一 面 で は 、 国務 院 の各 部 門 と省 級 政 府 の正 当 な行 政 行 為 を擁 護 す る こ と に も不 利 で あ る。 法 治 国 家 の 人 民政 府 と して、業 務 の多 忙 さ は理 由 と な らな い。 憲法 の規 定 に基 づ い て、 国 務 院 は 国 家 の 最 高行 政 機 関 と して 、 国務 院 の各部 門 と省 、 自治 区 、直 轄 市 人 民政 府 に対 して直 接指 導 す る責 任 を負 ってお り、 国務 院 の各 部 門 と省 、 自治 区 、 直 轄 市 人 民政 府 にか かわ る行 政 復 議 事 件 を受 理す る こ とは 国務 院 が大 義 名 分 上 辞 退で き な い職 責 で あ る。 しか も、 国務 院 が 行政 復 議 事件 を受 理 す る こと は、 下

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級行 政機 関 の監 督 に有 利 で あ り、法 律 に よ る行 政 の推進 に有利 で あ る」 とい う もの で あ った 。 結局 、 全 国人 民代 表 大 会 常 務 委 員 会 は 、 これ ら二つ の意 見 を総

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中国 の行 政不服審 査法(行 政 復議法)の 主要 内容 と問題 点 につ い て(そ の1)39 合 して、 国務 院 の各部 門 と省等 の一級 政 府 の具 体 的行 政 行 為 に不服 の場 合 には 、

原機 関 に復 議 を 申請 した後 に更 に人 民 法 院 に提 訴す る方 途 と原 機 関 に復 議 を 申 請 した後 に更 に 国務 院 に裁 決 を 申請 す る方 途 を規 定 した 、 いわ ゆ る 「二 層構 造 」

を採 用 した の で あ り、 これ に つ い ては 、 「具 体 的 行 政 行 為 に対 す る こ の よ う な 監 督構 造 は 中国 の特 色で あ り、 中 国 の現 在 の法 治 の 現 実 に符 合 した 合 理 的 選 択

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で あ る」 と評価 され て い る。

この ほか 、 「税 関 、金 融 、 国税 、外 国為 替 管 理 等 の 垂 直 的 な指 導 を実 施 して い る行 政 機 関 及 び 国家安 全 機 関 の具 体 的 行政 行 為 に不服 のあ る場 合 は 、 そ の一 級 上 の 主管 部 門 に行 政 復 議 を 申請 す る」(12条2項)と 規 定 して 、復 議 管 轄 の 選択 制 の例 外 にっ いて 明確 に規 定 して、 申請 人 が 正確 に権利 行使 で き る よ う に

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した こ と も改 善 され た点 と して指 摘 され て い る。

1)宋 雅芳 主編 『行 政復議i法通論 』(法 律 出版社 、1999年)99頁 2)湛 中楽=姜 岸 、前掲 論文 、369頁 。1

3)同 論 文、369頁 。 なお 、13条2項 は 「省又 は 自治 区 の人 民政府 が法 に よ り設立 した 出先機 関が所 属す る県級地 方人 民政府 の具体 的行政 行為 に対 して不 服 のあ る場合 は 、 当該 出先機関 に行政復 議 を申請す る」 と規定 してい る。 出先機 関 とは、主 に 「地 区行 政公署 」 を指す 。行 政復議管 轄 の原則 は、指導 ・監 督権 を有す る行政 機 関が復 議 管轄 権 を有 す るのが原則 で あ るが、実 は これ まで、行政 公署 が県 ・市 に対す る指 導 ・監督 権 を有 す るか否 か にっ いて法 律 は 明確 に定 めて い なか ったが 、実際 にお いては 、行政 公署 は この種 の権利 を持 ち、かっ 、それ を履行 して きたので あ る。 また、 中国 の省級 政 府が所 轄す る県級 人民政府 の数 は非 常 に多いた め、 も しこれ らの行 政機 関の行 政行 為 につ い ての復 議事 件 をす べて省級 行政機 関の管轄 とす れ ば、一方 で はい いか げん に 処 理す る事態 が 出現す るであ ろ う し、他 の一方 で は行政復 議制 度 の本来 の 目的 を達成 す るこ とが で きな くな り、復 議 申請権 は形 式 に流れ て しまう。 そ こで 、今 回制 定 され た復議 法で は、 これ まで の実 施状 況 に基 づ いて地 区行政 公署 を復議機 関 と して 明確 に 規 定 したので あ る。王 成棟=張 興祥 、前掲 書 、126〜127頁

4)張 桂 龍e劉 淑 強主 編 『《中 華 人 民共 和 国行 政 復 議 法 》 詳 釈』(北 京 大 学 出版 社 、 1999年)47頁

5)張 桂龍=劉 淑 強主編 、前掲 書、48頁 。 6)同 書 、48頁 。

7)王 成棟=張 興祥 、前 掲書 、128〜130頁 8)同 書 、130頁 。

9)復 議 法 の制 定過程 で 、公安 部 門 を含 め るか否 か で争 いが あ った。す なわ ち、 国務 院 に提 出 され た行 政復 議法(草 案)と 二 次審 議稿 で は 、「県級 以上 の地 方人 民政府 の公

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す る」 との規定 が あ った。 これ に対 して、全 国人 民大会 常務委 員会 と学 者 さ らには こ れ らの実 際部 門 に従事 す る者 まで もが 強烈 に反 対 し、結 局 、公 安部 門 につ いて も申請 人 に復議 管 轄 の選 択権 を与 え る ことに な った ので あ る。1999年4月24日 に全 国人 民 代表 大会 法律 委員会 が行 った報告 は 「行政拘 留 は公 民 の人身権 に及 ぶ もので あ り、実 施過 程 にお いて幾 っ か の問題が 出現 した ので あ るか ら、 同 じ級 の人 民政 府が これ につ いて実施 監督 に当た るべ きで あ り、一 級上 の公安部 門 だけ に行 政復 議 を 申請す る こと を許 すべ きで はない。 このた め、法律 委員会 は、公安部 門 の行 政拘 留 の不服 につ い て はただ一 級 上 の公安 部 門 にのみ行 政復 議 を 申請す るこ とがで き るとの特 殊規 定 を削除 した」(「全 国人大 法律委員 会関於 《中華人 民共和 国行政 復議 法(草 案)》 審議 結果 的 報告 」365頁)と 述べ て い る。

第4節 行政復議機構

中 国 の行 政復 議制 度 の特 色 の一 つ と して、行 政 復 議 を対 外 的 に担 当す る 「復 議 機 関 」 の 中 に、復 議事 件 の受 理 、審 査 及 び復 議 決 定 を 実質 的 に担 当す る 「復 議 機 構 」 と称 す る内部 組織 を設 置 して い る こ とが 挙 げ られ る。 す なわ ち、 復 議 決 定 は 、そ の 内部 に設 置 され た復 議 機構 が 原 案 を作成 し、復 議 機 関が それ を認 可 した後 に復 議 機 関 の名 義 で送 達 され る こと に な るの で あ る。

と ころで 、復 議 法3条 は 「この法 律 に よ り行 政復 議 の職 責 を履 行 す る行 政 機 関 は 、行 政 復 議 機 関 で あ る。 行政 復 議 機 関 は、 法 制 業 務 の機 構 が 具体 的 に行 政 復 議 事項 を処 理 す る こと に責 任 を 負 い 、次 に掲 げ る職 責 を履 行す る」 と して 、 (1)行 政 復 議 の 申請 の 受 理 、 ② 関 係 組 織 と関 係 者 を調 査 し、 証 拠 を 集 め 、 文 書 及 び資 料 を 閲 覧す る こ と、(3)行 政 復 議 が 申 請 され た具 体 的 行 政 行 為 の違 法 又 は 不 当 を 審 査 し、 行 政 復 議決 定 を 立案 す る こ と、(4)本 法 第7条 に定 め る関 係 規 定 に つ い て の 審 査 の 申請 を 処 理 し、 又 は転 送 す る こ と、(5)本 法 の規 定 に 違 反 す る行 政 機 関 の行 為 に対 して、 当該規 定 の権 限 と手 続 に よ る処 理 を建議 す る こ と、⑥ 行 政 復 議 の 決 定 を 不 服 と して行 政 訴 訟 が提 起 され た 場 合 の 応 訴 事 項 を取 り扱 う こ と、(7)法 律 、 法規 に定 め るそ の 他 の職 責 、 を 規 定 して い るが 、 こ こにい う 「法制 業 務 の機 構 が具 体 的 に行 政復 議 事 項 を処 理 す る」 との文 句 が 、 復 議 機 構 にっ い て現 行 の復 議 法 が定 め た ほ とん ど唯一 の規 定 で あ る。

復 議 機構 は、 行政 機 関 の 内部 に設 置 され た業 務機 構 の 一 つ に過 ぎ ない ため に 、 これ らの業 務 機 構 は行 政 首長 に対 して責 任 を負 い、 自己 の名 義 で 独 立 して行 政

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