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計算化学 中項目 3-1

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Academic year: 2021

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ディビジョン番号 ディビジョン名

理論化学・情報化学・計算化学

大項目 3. 計算化学

中項目 3-1. シミュレーション

小項目 3-1-10. タンパク質量子化学計算

概要(200字以内)

量子力学による精密なタンパク質全電子計算 が図のインスリン 6 量体(アミノ酸 506 個)で 達成された。現在のコンピュータの発達から 予測すると 20~30 年後にはタンパク質の反応 シミュレーションが自由にできるようになる。

細胞内の DNA 発現や酵素反応ネットワークの ダイナミック・シミュレーションが実現され、

がん細胞抑止など各種の薬剤の設計ができる ようになる。また、植物の光合成系にならった 高効率の太陽電池の開発により抜本的な地球 温暖化対策が現実のものになる。

現状と最前線

精密なタンパク質量子化学計算には現在 2 つの方法がある。(1)筆者らが開発した密度汎関 数法コーン・シャム方程式の QCLO 法[1]、(2)北浦、中野らによるフラグメント分子軌道法[2]

である。いずれもわが国で初めて開発され世界をリードしている計算方法である。(2)は 1 種 の局在化分子軌道法で計算はきわめて高速でより実用的あるが、タンパク質全体が関与する現 象に対応できないという限界がある。(1)と(2)の利点を組み合わせることも可能である。

密度汎関数法は半導体素子の設計などで実用化している方法であり、筆者らがタンパク質向 けの QCLO 法を研究し、ProteinDF というプログラムを開発した。このプログラムは、文部科学 省の「戦略的基盤ソフトウエア開発プロジェクト」「戦略的革新シミュレーションソフトウエ アの研究開発プロジェクト」により佐藤を中心に発展を続け、一般に公開されている。

2000 年にシトクロム c(104 アミノ酸残基)の計算が達成され、2005 年に上記のインスリン 6 量体(306 残基)が計算され、1~2 年のうちに 1000 残基の計算が実現する見込みである。こ れまでに数十種のタンパク質の計算がされ、その結果がデータベースに蓄積されている。

インスリン6量体の計算には 64 プロセッサの並列計算機で 77 時間かかっている。これを基 準にして将来のタンパク質の計算時間を予測したのが次頁のグラフである。ここ数十年、コン ピュータは 10 年で 100 倍高速化している。それに計算方法やソフトウエア技術の改良を加え ると 10 年に 1000 倍の高速化になる。

(2)

グラフの 1 番上の斜め線は 64 台の プロセッサを使った場合のインスリン 6 量体の計算時間の予測である。2030 年には 100 分の 1 秒で計算できること を示している。1 番下の斜め線は 640 万 台の並列計算機を用いた計算時間で、

2030 年に 1 秒間に 1 千万回計算できる ことを示している。すなわち、密度汎 関数法で精密な分子動力学計算ができ

るということである。

この時代になるとタンパク質の反応 シミュレーションが自由にできるよう になり、細胞内の DNA 発現や酵素反応 ネットワークのダイナミック・シミュ

レーションが実現する。その結果、がん細胞抑止薬剤や分子マシン、分子コンピュータの設計 ができるようになるだろう。植物の光合成システムにならった高効率の太陽電池が開発され、

地球温暖化に対する抜本的な解決策になるだろう。

地球温暖化対策は急がなければならない。この目的だけのためにも人材と大規模なコンピュ ータ資源を投入して、化石燃料に依存しないエネルギー生産方法を開発しなければならない。

文献

[1]柏木 浩、佐藤文俊・監修:「タンパク質量子化学計算-ProteinDF の夢と実現」,アドバン スソフト(2004).

[2] K. Kitaura, E. Ikeo, T. Asada, T. Nakano, M. Uebayasi: “Fragment Molecular Orbital Method:

An Approximation Computational Method for Large Molecules“, Chem. Phys. Lett., 313 (1999) p.701.

将来予測と方向性

・5年後までに解決・実現が望まれる課題

タンパク質の化学反応シミュレーションのための計算科学者の研究開発チームを組織するこ と。ぺタフロップス・クラスのコンピュータを上記の目的のために投入すること。

・10年後までに解決・実現が望まれる課題

高効率の太陽電池の開発、およびがん抑止薬剤などの開発のため計算科学者と実験科学者の研 究開発チームを組織すること。

キーワード

タンパク質量子化学計算、密度汎関数法、QCLO 法、フラグメント分子軌道法、DNA、

酵素反応ネットワーク、がん抑止薬剤、高効率太陽電池、エネルギー生産

(執筆者:柏木 浩 )

参照

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