ドイ ッ刑 事 手 続 に お け る DNA鑑 定 に 関 す る立 法 の 動 向
池 田 秀 彦
‑⊥9臼つσ4⊥FOハ076
は じめに
DNA鑑 定 に関す る法律 制定 以前 の議論状 況 DNA分 析 法
DNA同 定法
2002年8月6日 の改正 法 2003年12月27日 の改 正法 お わ りに
1は じ め に
近 年,ド イ ツ に お い てDNA鑑 定 に 関 す る 法 律 の 改 正 が あ り,2004年4月1日 よ り施 行 さ れ た1)。
こ の2003年12月27日 の 改 正 法(「 性 的 自 己 決 定 に 対 す る 犯 罪 に つ い て の 規 定 等 を 改 正 す る 法 律 」[GesetzzurAnderungderVorschriftenuberdieStraftaten
gegendiesexuelleSelbstbestimmungandzurAnderungandererVorschriften])
は,全9章 か ら な り,刑 法 典 の 改 正 を 始 め と し て,刑 事 訴 訟 法,裁 判 所 構 成 法,少 年 裁 判 所 法 な ど の 広 範 な 法 改 正 を含 ん で い る 。 こ の う ち,刑 法 の 改 正 は,性 的 自 己 決 定 権 を 侵 害 す る 犯 罪 の 防 止 を 目 的 と し,よ り具 体 的 に は 児 童,少 年 お よ び 抗 拒 不 能 の 者 に 対 す る 性 的 暴 行 や 児 童 ポ ル ノ の 頒 布 行 為 の 重 罰 化 等 を 目 的 と し て い る 。 こ れ は,従 来 の 性 犯 罪 に 関 す る 刑 法 の 規 定 は,児 童 や 抗 拒 不 能 の 者 に 対 す る 性 犯 罪 (刑 法176条,176条a,179条)の 刑 罰 が 違 法 ・責 任 内 容 に 見 合 っ て お ら ず,児 童 に 対 す る 性 的 暴 行 を 予 防 す る 上 で 不 十 分 で あ る と の 指 摘 や パ ソ コ ン 通 信 に よ る 児 童 ポ ル ノ 文 書 の 頒 布 に つ い て は,現 行 の 罰 則 を 以 て し て は 有 効 に 対 処 で き な い と の 批 判 に 応 じ た も の で あ る 。
刑 事 訴 訟 法 に つ い て は,体 細 胞 の 採 取 と 分 子 遺 伝 学 的 検 査 が 特 に 性 犯 罪 の 解 明 に お い て 重 要 な 法 医 学 上 の 鑑 識 手 段 に な っ た こ と を 踏 ま え,DNA鑑 定 の 対 象 の 拡 大
を 図 っ た も の で あ る 。
本 稿 で は,こ の 法 改 正 を 機 に,ド イ ツ で の こ れ ま で のDNA鑑 定 に 関 す る 立 法 の 沿 革 に つ い て 概 観 し,併 せ て 今 後 の 課 題 に つ い て 若 干 の 検 討 を 加 え る こ と と す る2)。
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池 田秀 彦 ドイ ツ刑事 手 続 にお け るDNA鑑 定 に関 す る立法 の動 向
2DNA鑑 定 に関 す る法律 制 定 以 前 の議 論 状 況
DNAに よる個 人識別 は,1984年 に英 国の遺 伝 学者 ジェ フ リーズ に よって 開発 さ れ,今 日,多 くの国 にお いて活用 され てい る。 ドイ ツ もこの例 に もれず,か な り早 い段 階か らDNAに よる個 人識 別が 実用 化 された。 もっ と も当初 は,特 別 な立法 的 措 置 を待 たず に実 施 され ていたの であ る。
そ こで,ま ず,DNA鑑 定 に関す る法 律制 度以 前 の議 論状 況 につ い て紹 介 す る こ と とした い3)。
刑事 手続 で のDNA鑑 定 の法 的許容 性 を巡 る議論 は,こ れ を無制 限に許容 す る も のか ら,否 定 す る もの まで実 に様 々で あ り,ま たそ の論拠 も多様 で あ るが,基 本法 お よび刑 事訴 訟法 との 関係 で大 別す れ ば,下 記 の4つ の見解 が判 例 お よび学 説上主 張 され た4)。
*議 論 を検 討 す る前 に,関 係 す る基本法 上 の権 利 お よび刑訴 法 の規 定 を見 る と 次 の通 りであ る。
基 本 法上 の権 利 と して は,人 間 の尊厳(基 本 法 第1条 第1項),身 体 の不 可 侵 性(基 本 法 第2条 第2項 第1文),一 般 的人格権(基 本法 第2条 第1項),情 報 に関す る 自己決定 権(基 本 法 第1条 第1項 との 関連 にお け る第2条 第1項) が挙 げ られて いる5)。
(i)人間の尊厳 個 人 の遺伝情 報 を含 むDNAの 分析 に よっ て関係者 の 内的お よび人格 的情 報が暴 露 され る こ とに な り,こ れ は,基 本法 第一 条第一 項 の保 障 す る人間 の尊 厳 を侵 害 す る6)。
(ii)身体 の不 可侵 性DNA鑑 定 のた めの血 液 の採取 に よ り基本 法 第二 条 第二 項 第一 文の保 障す る関係 者 の身体 の完全性 が損 なわれ る7)。
(iii)一・般 的 人格 権 人 の遺伝 子 の検 査 は,内 的お よび私 的領 域 を侵 害 す る もの で あ り,基 本法 第二 条 第一項 の保障 す る一 般 的人格権 を侵害 す る8)。
(iv)情報 に 関す る 自己決 定 権1983年12月15日 の 連 邦 憲 法 裁 判所 の 判 決, いわ ゆる国勢調査 判 決 は,個 人 の デー タの開示,使 用 につ いて原則 的 に 自 ら決 定 す る権 能で あ る情報 に関す る 自己決定権 が基本 法上 の権利 で ある こ とを認 め る。 もっ と もこの情報 に関す る 自己決 定権 は,無 制限 に保 障 される もので はな く,公 共 の利益 に よる制 限 を受 け るのであ るが,こ の制 限 は,法 律 上 の根 拠 を 必要 と し,そ して,こ の法律 は,そ の制限 の要件 と範 囲 を明確 に して,規 範 の 明確 性 の要 請 に応 える と同 時 に比 例 の原 則 を考 慮 した もので なけ れ ば な らな い,と す る9)。
こ れ をDNA鑑 定 に 当 て は め れ ば,DNA鑑 定 に よ り得 られ た デ ー タ は,通 常,警 察官 に送 られ,そ こで 加工 され,そ の後検 察 官 に伝 え られ るの で あ る
が,こ の個 人 に関係 す るデ ー タの開示,伝 達 お よび利 用 は,関 係 者 の 自己決定 に委 ね られ るべ き ものであ り,そ して この権利 の制 限の ため に は,そ の侵 害の 要件 と範 囲 を明確 に規定 した法律 が必要 で はないか とい う点が 問題 となる10)。
通 信 教 育 部 論 集 第8号(2005年8月)
次 に,刑 事 訴 訟法 の関連規 定 と して は,第81条aが 挙 げ られ るll>。
第81条a第1項 「被疑 者 ・被告 人の 身体検 査 は,手 続 上 重 要で あ る事実 の確 定 の ため,命 ず る こ とが で きる。 この 目的 を遂 げるた め,医 師 に よって検 査 目的で 医術 の原 則 に従 い行 わ れ る血 液 の採 取 そ の他 の 身体 的侵 害 が,被 疑 者 ・被 告人 の健康 に とって不利 益 となるお それが ない と きは,そ の者 の承 諾 な しに許 され る」
第2項 「前項 に定 め る命令 を発 す る権 限は,裁 判官 に属 し,遅 滞 す れ ば検査 結 果が 失 われ るお それが あ る と きは,検 事 局 お よびそ の補 助官(裁 判 所構 成法 152条)に も属 す る」
(a)新 規 の立 法 措 置 を講 じな くと もDNA鑑 定 は可 能 で あ る とす る説一 刑訴 法 81条aに よ り行 うこ とがで きる とす る説
DNA鑑 定 の た め の体 細 胞 の採 取 お よび分 析 は,被 疑 者 ・被 告 人 の 身体 検 査 に 関 す る刑 訴 法81条aに よ り行 う こ とが で き る とす る見 解 は,Liihrs,Steinke, Meyer‑Gol3neris)等 が支 持す る他,判 例 も当初 か らこの見 解 に拠 ってい る。
判 例 を概 観 す る と,例 えば,刑 事手続 にお け るDNA鑑 定 の許容性 につ いて最初 に判 断 を示 したベ ル リ ン地 方裁 判 所 の刑 事 部 は,1988年12月14日 の決 定 で,刑 訴 法第81条aは,具 体 的 にDNA鑑 定 を規 定 してい る わ けで は ない け れ ど も,こ
の ような検査 は,そ れが学 問的 に承 認 された方 法で あ る とい う前提 の下 で認め られ る,と す る13)。そ して この検 査 が 「DNAの コー ド化 され て い ない部分 」 を対 象 と し,そ のバ ー コー ド模 様 を確認 す るだ けで,そ れ以 上の情 報 を取 り出す もの でない 以 上,人 間 の尊厳 に 関す る基本 法1条1項,一 ・般 的人格権 ない し情 報 に関す る 自己 決 定権 に関す る基 本法2条1項 の違 反 は ない。 もっ と も,一 ・般 的人格 権 の侵 害 は, 問題 とな り得 ないわ けで はないが,人 格権 の侵 害 に 関 して適用 され る比例 の原則 に 照 らす と,こ の検 査 方法 は,「 最 終 的手段 」 としての み利用 す る こ とが で きる。 こ
の よ うに解 すれ ば違憲 となる よ うな基本権 の侵 害 は ない,と 説示 す る正4)。
さ らに,ハ イル ブ ロ ン地方 裁 判 所 の刑 事 部 は,1990年1月19日 の判 決 で,刑 訴法81条aに よる遺 伝 子分析 の法 的 許容性 を詳細 に検 討 す る。 まず,こ の規 定 が DNA鑑 定 の た め の血 液 採取 の 十分 な法 的根 拠 で あ る こ とを確 認 した上 で,DNA
鑑定 それ 自体 の根 拠規 定 ともなる,す る15)。そ して大 要 次の ように述 べ る。
「刑 訴法81条aは,侵 害 の根 拠 と して十 分 であ る。刑 訴 法81条aは,手 続 上重 要 な事 実 の認定 の ため に血 液 の採 取 を認 めて いる。 同条 は,血 液 な どの検査 に よっ て痕跡 が被 疑者 に由来す る否か とい った重 要 な事 実 を認定 す る こ とをその 内容 と し て い る。 『古典 的 な』 血液 型 の検査 につ い て は}こ の こ とは,疑 い ない。 遺伝 子分 析 に 関 して は,こ の 検 査 に よ っ て 人 間 の 尊 厳,一 般 的 人 格 権 ま た は情 報 に 関 す る 自 己決 定権 とい う保護 利益 を質 的 にか な り強 く侵 害す る結果 を 目的 とした りまたは少 な くと も副 産物 と して そ の よ う な結 果 が 生ず る場合 に のみ,事 情 が異 な る。 しか し,こ の場 合 は,そ うで は ない」 「い わゆ る 『遺伝 子 指紋 』 の確 定 の場合 に,人 格 に関す る情報価 値 は,従 来 の指 紋 の場 合 と全 く同様 であ り,即 ちゼ ロで あ る。 した
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池 田 秀 彦 ドイ ツ刑 事 手 続 に お け るDNA鑑 定 に 関す る立 法 の動 向
が って,遺 伝 子分析 は,一 般 的 に許容 され る と認 め られ てい る従 来 の血液 型 の検査 よ り人格権 に対 して質 的 に重 大 な侵 害 を加 え るわ けで は な く,刑 訴 法81条aを 超 えて新 しい法律 上 の根 拠 を必 要 とす る もので は ない」16)。
連邦 通常 裁判所 第5刑 事部 も,1990年8月21日 の判決 におい て,血 液採取 お よ びDNA鑑 定が現 行法 上可 能 であ る と し,そ の 際 連 邦憲 法裁 判所 の 国勢 調査 判決 を考慮 して も,特 に問題 は な く,ま た血液 の採取 お よび これ に引 き続 いて行 わ れる
「DNAの コー ド化 され て い ない部 分 」 の検査 に よって人 格 の不 可 侵 の領 域 が侵 さ れ る こ とは な い との憲法 上 の判 断 を示 した17)。また,同 部 は,DNA鑑 定 の結 果 の 証拠価 値 につ いて学 問的 に様 々 に評価 されてい る事情等 を勘 案 して 「原判 決 は,証 拠 評価 の限界 を正 当に評価 して い る。事 実 審裁判 官 は,検 査 に よって得 られた結果
を別 の証拠 と併 せて被 告 人の有罪 の立 証 のため に補 充 的 に しか利用 してい ないか ら で あ る」 と注 目すべ き見解 を示 した18)。
また,こ の 証 拠 評価 の点 につ き同部 は,1992年8月12日 の判 決 にお い て,原 判 決 を批 判 す る 中で,「 地 方裁判 所 は,被 告 人 と被 害者 との性 交 につ いて の確 信 を DNA鑑 定 の結 果だ けで根 拠 づ けて い る。 この よ うな証拠 評価 は,事 実 的 ・法 的事 後 審 査 に耐 え る もので はな い」19>「そ の証 拠価 値 は,常 に批 判 的 に評価 され な けれ ば な らない。 当部 は,1990年8月21日 の判 決 にお い て 中略DNA鑑 定 の 証 拠価値 の限界 を指摘 した。 この批 判 的評価 義務 を地方裁 判所 は,十 分 に果 た さな か った」20)「地方裁 判所 がDNA鑑 定 に よって被告 人 には犯 人の嫌 疑が濃 厚 であ る と 考 え,そ して別 の情 況証 拠 を考 慮 して犯 人だ とい う確信 を抱 い た な らば,か か る状 況 で は地 方裁 判所 のや り方 に法 的 な暇 疵 は なか っ たであ ろ う。 しか し,地 方 裁判所 は,証 拠 評価 に際 して この ような方 法 を と らなか った。 む しろ地 方裁判 所 は,専 ら DNA鑑 定 に基 づ いて,被 告 人の主 張 に反 して被 告人 がR婦 人 と性 交 を行 った とい うこ とにつ い て確信 した 中略 か くして,地 方裁 判所 は,DNA鑑 定 の結果 に高す ぎる証拠価 値 を認 めた」21)と述べ た。
さ らに,連 邦 憲法裁 判所 もこの立場 に たつ 。 同裁判所 は,1995年9月18日 の決 定 で明確 に合憲 の判 断 を示 した22)。
まず,同 裁判所 は,重 大 な犯罪 の究 明が法 治 国家 に とって重大 な任務 であ る こ と を力 説 した上,重 大 な犯 罪 の究 明 とい う公益 は 「基本 法 が基 本権 の制 限 を容 認 し, そ してそ の本質 的 内容 が侵 害 されてお らず,か つ 憲法上 の比例 の原則 が維 持 されて い る限 りにお いて,基 本 的 に情報 に関す る 自己決定 権 を含 めて被 疑 者の基 本権 の侵 害 を正 当化 す る ことが で きる」 と前 置 きす る。
そ して具体 的 に論 を進 め,概 要 次の ように述 べ る。
「確 か に,検 査 の 実施 の ため に被疑 者 の意 思 に反 して身体 の侵 襲 に よって採 取 さ れ な け れ ば な らな い 比 較 資 料 が 必 要 な場 合 に は,侵 害 に対 す る法 律 上 特 別 な 授 権 を 必 要 とす る。 けだ し,こ れ に よって身体 の不可 侵性 に対す る基本 権(基 本法2条2 項)が 侵 害 され るか らであ る。 そ して それ は,基 本法19条1項 お よび2項 並 びに 比 例 の原則 を考慮 した法律 に基 づ い て のみ許 され る(基 本 法2条2項3文)。 侵 害 に際 して血液 サ ンプル の採取 が 問題 とな る場 合 には,刑 訴法81条aは,こ の ため
通信 教 育 部 論 集 第8号(2005年8月)
の十分 な法 的根 拠 を含 んで い る。 採取 され た血液 サ ンプル の検査 は,刑 訴法81条 aか ら読 み取 る こ とが で きる よ うに 『手 続 に とって重 要 な』 『事 実 の 認定 』 の ため にあ らゆ る方法 を使 用す る ことが で きる。一 定の検査 方法 へ の限定 を,血 液採取 に 関す る規 定 か ら読 み取 る こ とはで きない。血 液サ ンプルの採取 お よび検査 に対 して 適用 の あ る真相 究 明 の原 則 は,こ の ような制 限 に反対 す る。 か く して,刑 訴 法81 条aに よ りまた は任 意 に得 られ た被 疑者 の血 液サ ンプル は,原 則 的 にDNAの コー
ド化 され て い ない部 分 にお い て検 査 し,痕 跡 資料 と比 較 す る こ とが で きる。 そ こ に情 報 に関す る 自己決 定権 の侵 害 が存 在 す る と して も,こ の侵 害 も憲 法 上 十分 な 根 拠 を刑訴 法81条aに 見 いだす 。 この よ うなDNA鑑 定 の結 果 は,刑 事 訴 訟 にお い て犯 人 の認定 に も排 除 に も利用 で きる。公 権力 そ れ 自体 か ら 自由 な,私 的な生活 形成 の不 可侵 の核 の領 域 は,こ れ に よっ て侵 害 され る もので は ない。検 査 は,専
らDNAの コー ド化 されて いな い部分 の形式 的な型 に関連 してお り,そ れ は,識 別 の メル クマ.̲̲.ルと して刑事 手続 での利 用が 憲法上 許 されて い る,指 紋,血 液 型 また は毛 髪 の構 造 と同様 に評価 す る こ とがで きる。 この ような基 本権 の領域 の侵 害 に際 して も比 例 の原則が顧 慮 され なけ れば な らな い。そ れ は,特 にその措 置が刑 事手続 におい て欠 くこ とが で きずかつ犯 罪 の重大性 と適切 な関係性 が あ る ことを必 要 とす る。 こ こで 問題 とな ってい る種類 の性 犯罪 にお いて は,犯 罪 の重 大性,血 液採取 の 侵 害の軽 微性 お よび真相 究 明の利 益 を考慮 す る と,や は り軽 微 と評価 され る情報 に 関す る 自己決 定権 の侵害 との間 に必 要 な関係性 が認 め られ る。 この ように して得 ら れた検 査 結果 の利 用 目的 は,刑 訴 法81条aに 十 分 に規 定 され てい る。 手続 に とっ て重要 な事 実の認 定 のた めの利用 が許 されて い る」。
この ように連邦 憲法 裁 判所 は,検 査 が 「DNAの コー ド化 され てい ない部 分」 を 対 象 とす る限 り,現 行法 が刑事 手続 で のDNA鑑 定 の十 分 な法 的根 拠 とな り,何 ら
憲法上 の 問題 を生 じない と結 論す る。
(b)DNA鑑 定 は,新 規立 法 に よ らな くとも可 能 で あ るが,立 法措 置 を講 じた方 が望 ま しい とす る説
特 別 の立法措 置 を講 じな くと も刑 事 手続 でのDNA鑑 定 の実 施 を可 能 と理解 しつ つ,刑 訴法 に新規 定 を加 え るこ とが望 ま しい とす る理 由 は,論 者 に よって様 々で あ る。 まず,明 確 性 の要 請 が挙 げ られ て い る23)。即 ち,刑 訴 法81条aは,一 定 の条 件 の下 で血 液 の採 取 を認 めて い るが,具 体 的 な検査 につ い て は述べ て い ない こ と
と,新 しい規定 を置 くこ とに よっ て憲 法裁判 所 の国勢調 査判 決 の趣 旨に沿 うこ とが で きる とい うことであ る。
次 に,遺 伝 子技 術 に対 して社 会 の抱 く懸念 の 払拭24)或 い は遺伝 子 分析 が濫用 さ れ る こ とを防止 す る25)とい う法 政策 的 な理 由が 指摘 され てい る。
(c)DNA鑑 定 の た め に は,刑 訴 法 に 関連 規 定 を設 け る必 要 が あ る とす る 説 新 規立 法 が なけれ ばDNA鑑 定 を実 施す る ことはで きず,こ れ を行 うた め には刑 訴法 に特 別 規定 を設 け る必 要 があ る とす る論 者 に は,Keller,G6sse1等 が い る。両 者 の見 解 は,類 似 した点 も多 い ので こ こで はG6sselの 見 解 につ いて見 れ ば足 りる であ ろ う。
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池 田秀 彦 ドイ ツ刑 事 手 続 にお け るDNA鑑 定 に関 す る立法 の動 向
彼 は,DNA鑑 定 の手 続 を分 割 し,検 査 資料 の採 取,DNAの 検 査 お よび検 査 結 果 の利 用 とい う3つ の局 面 に分 け た上,資 料 の採 取 と検 査 につ い て は文 理 上,81 条a第1項 に よ るこ とが で きる と して も,最 後 の もの につ い て は,81条aは 法 的 根 拠 とはな り得 ない,と 結 論す る26)。
そ して,彼 は,な る ほ ど,「DNAの コー ドされ て い ない 部分 」 の検 査 は,人 格 の核 の 部分 を侵 害 す る もの で は ない が,情 報 に 関す る 自己決 定 権 を考慮 す る と, DNA鑑 定 の結 果 の 利 用 に関 す る 明確 な法 的根 拠 が 必 要 で あ る。 また,こ れが な い とい う状 況 は,DNA鑑 定 に関 す る全 手続 つ ま り資料 の採 取 お よび検 査 の 手 続 の許 容性 に も影響 をお よぼ し,全 手 続 を憲法 上 許容 され な い もの とす る,と 述 べ る27)。そ して立法 にあ た って は,DNA鑑 定 の利 用 の範 囲 を明確 に犯 人 の識別 に 限定 し,そ れ が 濫用 され るこ とに対 す る予 防措 置 を講 じなけ れ ば な らない,と す
る28)Q
(d)DNA鑑 定 は,新 規立 法 を もって して も許容 されない とす る説
DNA鑑 定 は,新 た な立 法 に よっ て も不 可 能 で あ り,禁 止 され る とす る論 者 は, 極 め て 限 られ て お り,Rademacherの 他DNA鑑 定 に 関す る 法律 の 立 法 過 程 で
「緑 の党 」 に よって 主張 されて い る程 度 で あ る29)。RademacherのDNA鑑 定 の刑 事 実 務 に対 す る批 判 は多 岐 にわ た り,DNA鑑 定 につ い て刑 訴 法81条aが 授 権根 拠 た りえない こ と,情 報 に関す る 自己決 定権 や 比例 の原則 との関係 で問題 が ある こ
と,DNA鑑 定の技 術 に は未 だ数多 くの 問題 が あ り,誤 判 の原 因 とな りか ね ない こ と等 を指 摘 して いるが30),そ の批判 の 中心 は,DNAの 鑑 定 それ 自体 にあ る。彼 は, 大 要次 の よ うにい う。
「DNAの 分析 が,DNAの コー ド化 され てい ない部分 だ け を対 象 とす る に過 ぎず, 人の人格 の不 可侵 の領域 を侵害 す る もので はない,と 主張 され てい る。 しか し,新
しい遺伝 子分析 の方法 の開発 が驚異 的 な速 度 で進 んでい る こ とに照 らす とこれ は説 得 力が ない。
また,全 てのDNA鑑 定 は,細 胞核 を含 む資料 か ら遺伝 形 質 を抽 出す るこ とを前 提 としてい る。正 に ここ に,従 来 の検 査方 法 との違 いが ある。 人の存在 の生物 学 的 条件 そ の ものが検査 され る。 人の遺伝 形 質 を抽 出 し,分 析 す る ことは,最 も私的 な 秘 部 を さ らけだす ことを意味す る。 したが って,人 格 の不 可侵 の領域 が侵害 され て い る とい うだけで は ない。 よ り正確 にい え ば,人 の生 物学 的存在 の基盤 が それ を調 べ 上げ る 目的で取 り出 され,人 格 の現 在 お よび将 来 の状 態 がの ぞ き見 られ る潜 在 的 な危 険性 が存在 す る。 どの よ うなプ ロー ブで また如何 なる範 囲で,得 られ た遺伝形 質 が分析 され るか とい う点 につ い て有 効 な コ ン トロールの 可能性 を考 え る ことはで きない。 犯 罪 の予 防お よび対 策 目的で 人 の生物 学 的存在 の基盤 に侵 入 す る こ とは, 被 疑 者 の 主 体 的 性 格 を 著 し く脅 か す 。 な る ほ ど,一 ・般 的 理 解 に よれ ば,被 疑 者 は, 刑 訴法81条aの 枠 内 でそ の 身体 につ い て検 査 の対 象 お よび証 拠方 法 と して その意 に反 して利 用 され る こ とを甘 受せ ざ る を得 ない。 しか し,糺 問手 続 の特 徴 とい え る,被 疑 者 をその意 に反 して検査 の対象 お よび証 拠方 法 と して取 り扱 うこ とは,訴 訟 主体 と しての被疑者 が犯 罪対 策の客体 に既 め られ ては な らない とい う一般 的 に承
通信 教 育 部論 集 第8号(2005年8月)
認 さ れ,確 立 し た 原 則 と 明 ら か に 矛 盾 す る 」31>
こ の よ う な 観 点 か ら,彼 は,立 法 を 以 て し て も刑 事 手 続 で のDNA鑑 定 の 利 用 が で き な い こ と を 明 言 す る32)。
3DNA分 析 法33>
(1)DNA分 析 法 の立法 の経緯
刑事 手続 でのDNA鑑 定 に関す る立法 府 の見解 は,従 来 の法規 定 を以 て足 りる と の理解 で あ ったが34>,特 別 な法規 定 を設 け る こ とを決 めた。 その理 由 は,遺 伝 子技 術 に よ り人格 の核 心 が過度 に侵害 され るの で はない か とい う国民 の懸念 を払拭 し併
せ て連邦 憲 法裁判 所 の 国勢 調査 判 決 との 関係 で,刑 訴法81条a第1項,第81条c
第2項 に よ り得 られ た検査 資料 の 目的拘 束 と廃棄 に関 して規 定 を置 くこ とを適 当 と 判 断 したた めであ る35)。
連 邦 政府 は,刑 事 手 続 で のDNA鑑 定 に 関す る法 案36)を 第12立 法 期 中 の1993 年10月15日 に連邦 参 議 院 に提 出 した。連 邦 参議i院は,こ れ に意 見 を付 して1994 年5月2日 に連邦 議 会 に送 付 したが,同 法案 は,会 期 の終 了 まで審議 され る こ とは なか った。1995年2月28日 に同法 案 は,連 邦 政府 に よ り再 度,連 邦 議i会に提 出 さ れ37),1996年1月19日 に1995年11月21日 のDNA鑑 定 に関す るSPD法 案38)と 共 に法務 委 員会 に付 託 された39)。1996年2月28日 に法 務委 員 会 は,両 法案 につ い て公聴 会 を行 う旨決 定 し,同 年7月19日 に9人 の専 門家 か ら意 見 を聴取 した。 法 務 委員 会 は,政 府 案 に修正 を加 え,連 邦 議会 は,1996年12月6日 に法務 委 員会 の 決 定勧 告通 りに政府 案 を可決 した。1997年1月31日 に連邦 議 会 に よる承認 連 邦 大統 領 に よる署 名,1997年3月21日 の連邦 官報 で の公布 を経 て,刑 事 手続 改正 法 は,同 年 同月22日 に施行 され た40)。
(2)DNA分 析 法 の概 要
この法律 は,刑 事 手続 にお け る分 子遺伝 学 的方法 での検 査 の条件 と検 査 内容 を規 制 し,採 取 され た資料 の利用 と廃棄 に関す る規 定 を置 いてい る。規定 の 内容 につい て は,次 の ように要約 で きる。
① 目的 の限定一 被 疑者 の血 液サ ンプルは,当 該刑 事手続 また は他 の係 属 してい る 手続 におい てのみ利 用 で きる こ と(第81条a第3項 第1文)
② 廃 棄規 定一 手続 上必 要 で な くな った と きに は,採 取 され た全 てのサ ンプルの廃 棄(第81条a第3項 第2文)
③ 検査 査 目的 の特 定一 血統 の認定 また は痕 跡が被 疑者 若 し くは被 害者 に 由来 す る か否 か の認定 の た めの分 子遺伝 学 的検 査 が 許 され る こ と。 これ を超 える検査, 例 え ば 遺 伝 性 疾 患 の 素 質 の 検 査 等 が 許 さ れ な い こ と(第81条e第1項)
④裁 判官 にDNA鑑 定 の命 令権 が あ るこ と(第81条f第1項)
⑤捜 査 実施 部門 とDNA鑑 定 を実施す る部 門 とを組織 的 お よび実質 的 に分離 す る こ と(第81条f第2項 第1文)
⑥検 査 資料 の匿名化一 関係 者 の氏 名,住 所 お よび 出生 月 ・日が分 か らない ように
一50一
池 田 秀 彦 ドイ ツ刑 事 手 続 に お け るDNA鑑 定 に 関す る立 法 の動 向
検査 資料 を鑑 定人 に渡す こ と(第81条f第2項 第3文)
⑦検 査 の結 果得 られ たデ ー タは,連 邦 デ ー タ保 護 法 の適用 が あ る こ と(第81条 f第2項 第4文)。
⑧ 秩 序 違 反 行為 につ い て は,DNA鑑 定 の許 され ない こ と(秩 序 違 反法 第46条 第4項)
以下,新 し く加 え られた各 規定 につ いてそ の基本 的 内容 を考 察す る。
(a)第81条a第3項,第81条c第5項 第2文
第81条a第3項 「被疑 者 ・被 告 人か ら採 取 された血 液 サ ンプル また はそ の他 の体細 胞 は,採 取 の基礎 とな ってい る刑 事手続 また は他 の係属 してい る刑 事 手 続 のた め にの み使用 す る こ とが で きる。 それ らが これ らの手続 のため に最 早 必要 で な くなった ときは,遅 滞 な く廃 棄 しなけれ ばな らない」41)
第81条c第5項 第2文 「第81条a第3項 は,こ れ を準 用す る」
この法改 正 に よって加 え られ た刑 訴法 第81条a第3項 の 規定 は,そ の第1文 に おいて被 疑者 ・被告 人 か ら採取 された血 液サ ンプル またはそ の他 の体細 胞 がそ の理 由 となった刑事 手続 また はそ の他 の係 属 して い る刑事 手続 の ため にだけ利用 で きる 旨 を定 めて い る。 第2文 で は,被 疑 者 ・被 告入 か ら採 取 され た血 液 サ ンプル また は 体 細胞 が これ らの手続 の上 で 必要 性 が な くなれ ば 直 ち に破 棄 され な けれ ば な らな い,と 定 め てい る。 同様 に法 改正 に よ り加 え られ た第81条c第5項 第2文 は,第 81条c第2項 の規定 に よ り被 疑者 ・被告 人 以外 の人 か ら採取 され た血 液 サ ンプル に対 して第81条a第3項 が準 用 され る こ とを明 らか に して い る。
当該 規定 は,DNA鑑 定 のた め に採 取 され た血 液 サ ンプ ル また は体細 胞 に限定 さ れず,第81条a第1項 に よ り採 取 され た血 液 サ ンプル また は体細 胞 を もそ の対象
とす るため,血 中アル コー ル濃 度の 認定 のた め に採取 され る血液 サ ンプ ル もそ の対 象 となる。被疑 者か ら採取 される血 液サ ンプ ルは,係 属 中の刑 事 手続 のた め に また は他 の係属 中の刑事手 続 のた めに だけ利用 す る こ とが で きるた め,他 の 目的,例 え ば,重 大 な病気 に罹 っ てい るか 否か を確認 す るため に利 用 した り,民 事 手続 で の立 証 や学術 的研 究 目的 で利用 す る こ とはで きない42)。
第81条a第3項 第1文 中 の 「他 の係 属 中の 刑事 手続 」 に関 して は,こ の手 続 が 血 液サ ンプ ル採 取 の時 点 で既 に実 施 され てい る必 要 は な く,「 利用 」 の時 点 がそ の 基準 となる,と 解 されて い る。
第2文 の定 め る資料 の即 時の廃 棄義 務 は,資 料採 取 の理 由 となった刑 事手続 また は他 の係属 中の刑 事手 続 の事 件解 明 のた めに資料 が最早 必要 で な くなる ときに生ず る。採 取 の理 由 とな る刑事 手続 にお い ては,手 続 の確 定 的終結 の ときで あ り43),検 察官 に よる捜査 手続 の打 ち切 りの場合 には,手 続 の再 開の可 能性 が確 実 に排 除 され る場 合 で あ る。
資料 の廃 棄 は,検 察 官 の 命令 に基 づ い て行 わ れ るが44),こ の廃 棄 に 関す る規定 は,明 らか に問題 を含 ん でい る。 けだ し,資 料 の廃 棄 によって有罪 を基礎 づ け る鑑 定 の根 拠 となった資料 を後 に再鑑 定す るこ とが で きな くな り,有 罪 の言 い渡 しを受 けた者 に とって再 審 開始 の上で不 利 にな るか らであ る。
通 信 教 育 部 論 集 第8号(2005年8月)
(b)第81条e
第81条e第1項 「第81条a第1項 の措 置 に よって得 られ た資料 につ い て は, 血統 の認定 また は発 見 され た痕 跡 資料 が被 疑者若 し くは被 害者 に 由来す るか どうか の事実 の認 定の ため に必要 であ る限 りにお いて分子 遺伝学 的検 査 を実 施 す る ことがで きる。 第1文 に よる検査 は,第81条cに よる措 置 に よって 得 られた資料 に対 して も,こ れ と同 じ認 定の ため に行 うこ とが で きる。第1 文 で述べ る事 実以外 の事 実 の認定 は,行 うこ とが で きない。 これ を 目的 と し
た検 査 は,許 され ない。」
第2項 「第1項 に よ り許 され る検 査 は,発 見 され,保 全 され または押収 された 痕 跡 資料 に対 して も行 うこ とが で きる。第1項 第3文 お よび第81条a第3 項 第1文 は,こ れ を準用 す る」
刑訴 法 第81条e第1項 第1文 お よび第2文,第2項 第1文 は,検 査 が血 統 の認 定 または発見 され た痕跡 資料 が被疑 者 ・被 告人 また は被 害者 に由来す るか 否か の事 実 の認 定の ため に必 要 であ る場 合 に は,第81条a第1項,第81条c第2項 よ り得 られ た血 液 サ ンプ ル若 し くは体 細 胞 につ い て分子 遺 伝 学 的検 査 の実 施 を認 め てい る。 第1項 第3文 は,資 料 につ き第1文 での 制 限 を超 える確 認 を行 うこ とを禁 じ, 併 せ て これ を 目的 とす る検査 行為 を明確 に禁止 して いる。 第81条e,第81条a第
3項 の規 定 か ら,血 統 の問題 または痕跡 資料 が被疑 者 ・被 告 人 に由来す るのか,被 害者 に由来 す るのか とい う事実 の解 明が,第81条a第3項 の 意味 にお ける,そ の 基礎 とな って いる刑 事手 続 また は他 の被疑 者 ・被告 人 に対 す る刑 事手 続 に とって証 拠 としての 関連性 を持 っ てい なけ れ ばな らな い こ とが 明 らか とな る。 第81条a第
1項,第81条c第2項 に よ り得 られた 資料 につ い ての血 統 の検 査 は,そ れが その 基礎 となって いる刑 事 手続 また は他 の係 属す る刑事 手続 にお いて認 定す る必要 が な く,単 に父 性 の認 定 に しか寄 与 しな い場合 に は,許 され ない。 さ らに規 定 の文 言 上,刑 事 手 続 にお いて 得 られ た資料 を精神,性 格 若 し くは病 気 に 関連 す る人格 的 メル クマー ル また は遺伝 形質 につ いて調べ る ことを認め てい ない45)。連 邦参 議 院 は,そ の禁 止 を明文化 す る こ とを求 めたが46),こ の禁止 が法律 の文言 か ら明 らかで あ る こと を理 由に採 用 されなか った47)。
また,連 邦 参議 院 は,検 査 を 「DNAの コー ド化 されて い ない部 分」 に限 る よ う 提 案 したが48),こ れ も容 れ られ なか った。そ の理 由 は,こ の よ うに限定 した か ら と い っ て人格 を調 べ尽 くす こ とを 阻止 す る こ と を保 障 で きるわ け で はな い とい う こ と,ま た 「コー ド化 され てい ない部分 」の検査 を通 して少 な くとも,保 護 に値 す る 人格 の メル クマー ルの逆推 論が可 能 とな り,そ の意味 で 「コ.̲̲̲ド化 され て いない部 分」 も人格 の領域 の情 報 を含 む こ とに なる,と い うこ と,さ らに,分 子 遺伝学 的検 査 方 法 を詳 細 に決 定 して し ま う と,今 後 新 た に確 立 され る か も しれ な い 分 析 方 法 を 将来 の刑事 手続 にお いて利 用す る こ とがで きな くなって しまう,と い うこ とで あっ た49)。
第2項 は,発 見 され,押 収 され,ま た は差 し押 さえ られ た痕 跡 資料 につ いての分 子遺伝 学 的検査 を認 めて い る。 これ に よ り第81条a第1項,第81条c第2項 に よ
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池 田秀 彦 ドイ ツ刑 事 手 続 にお け るDNA鑑 定 に 関す る立 法 の 動 向
り得 られ た資料 と痕 跡 資料 の分 子遺 伝 学 的検査 が 可 能 とな る。 痕跡 資料 は,第81 条a第3項 に述べ られ た刑事 手続 のた め にだけ利 用 す るこ とが で きる。第2項 第2 文 は,第81条a第3項 第2文 を準 用 して い ないので,廃 棄 の規定 は適用 されない。
第81条eは,DNA鑑 定 を行 う要件 と してSPD法 案50)が その要 件 と して必要 と した 「差 し迫 っ た嫌疑 」 の よ うな高 いハ ー ドル を置 か なか った。 この 理 由 と して, 分 子遺伝 学 的検査 に よ り事件 に関係 ない者 をで きるだ け早 く被疑 者 か ら外す こ とを 考 慮 した ため で あ った こ とが 指摘 され て い る51)。また,第81条e第1項 第1文 の
「それ が…必 要 で あ る限 りにお い て,分 子遺伝 学 的検 査 を実施 で きる」 との文 言 か ら,DNA鑑 定 は,「 最 終 的手段 」 で は な く,こ れ に代 わ るべ き他 の鑑 識 手段 が あ る場 合 で も可 能 であ るこ とが 導か れ る。 第1項 第3文 は,同 項 第1文 の述べ る事実 以外 につ い ての確 認が許 されない こ とを定め,被 処 分者 の遺伝形 質等 の調査 を禁止
してお り,こ の違 反 は,証 拠利 用禁 止 に帰 着す る52)。
(c)第81条f
第81条f第1項 「第81条eに よる検査 は,裁 判 官 に よって のみ これ を命 令 で きる。 命令 は,検 査 を嘱託すべ き鑑 定人 を指 定 した書面 に よ り行 う」
第2項 「第81条eに よる検 査 を嘱託 す る鑑定 人 は,公 的 に選 任 された者 若 し くは根拠 法 に よ り義務 を負 って い る者,ま たは捜査 実施 官庁 に所 属 してい な い公務 員,若 し くは捜査 実施 官庁 に所 属 す るが,捜 査 を実施す る部 門か ら組 織 的 お よび実質 的 に分 離 されて い る部 門 に所属 す る公務 員で なけれ ば な らな い。鑑 定 人は,違 法 な分子遺伝 学 的検 査 お よび無権 限 な第三者 によ る知得 を 排 除す るための,技 術 的お よび組織 的措 置 を講 じなけ れば な らない。 鑑定 資 料 は,鑑 定 人 に関係者 の氏名,住 所 お よび誕 生月 ・日を伝 える こ とな く,委 ね なけれ ばな らない。鑑 定 人が官署 で ない場合 には,監 督官庁 に連邦 デー タ 保 護法 に関す る諸 規定 の違反 に対 す る十分 な根 拠が な く,か つ鑑 定 人が個 人 のデ0タ をデー タフ ァイル に処 理 しな くと も,監 督 官庁 が 当該 規定 の実施 を 監 督す る とい う条 件 に よ り,連 邦 デー タ保 護 法第38条 を適用 す る」
第1項 第1文 は,分 子 遺伝学 的方 法 での検 査命 令 を発す る権 限 を専 ら裁判 官 に委 ねてい る。 この点 につ き連邦参 議 院 は,遅 滞 の虞 のあ る ような場 合 に も裁判 官 に し か命令 を発す る権 限 を認 め ないの であ れば検 査 の成 果が危 う くな りかね ない こ とを 理 由に,例 外 的場合 に検 察官 に命令 権 を与 え るこ とを求 めた が53),結 局受 け容 れ ら れ なか った。理 由 と して は,分 子 遺伝 学 的検 査 に対 す る 国民 の懸 念 に対 処 す るた め,命 令権 を裁判 官 に だけ委 ね る こ とが 適 当 と判 断 され たた めで あ った54)。また, 少 し古 くなった細胞 につ い て も検査 が実施 で きるこ と も検 察官 の緊急 命令権 を認 め ない理 由 として指摘 された55)。
第2項 は,分 子 遺伝 学 的 検 査 の 実 施 の枠 組 み につ い て定 め て い る。 第1文 は,鑑 定人 につ いて定 めるが,こ の規 定 の 目的 は,人 お よび設備 の上 で必要 な水準 に達 し てい る適切 な施設 だ けがDNA鑑 定 を委 嘱 され る こ とを担保 す る ことであ る56)。こ のた め,官 庁 または公 的 に選任 され また は根 拠 法 に よ り義 務 を負 う鑑 定人 にのみ検 査 の実 施 を委 嘱す る こ とが で きる こ とと した。 法 の定め る利用 制 限を組織 的 に確保
通信 教 育 部 論 集 第8号(2005年8月)
す るため に,捜 査 を実施 す る官 庁 に所 属 してい ないか,ま た は これ に所 属 してい る と して も捜査 実施 部 門か ら組織 的 お よび実質 的 に分 離 された部 門に所 属 して いる公 務 員 だけが この任 に当た る ことが で きる こ とと した。
連邦参 議 院 は,鑑 定 人 は,公 的 に選任 され た者若 しくは根 拠 法 に よ り義務 を負 っ てい る者 また は公 務 員 であ れ ば足 り,「捜 査 実施 官庁 に所 属 して いな い こ と,ま た は所 属 していて も捜 査実 施部 門 と組織 的 または実 質的 に分 離 され てい る部 門に所 属 して い る者 」 とい う制 限 を置 く必要 性 は存 しな い,と の見解 で あ った57)。これに対 し,連 邦 政 府 は,一 方 にお いて濫 用 の危 険 を排 除す るため に,刑 事訴 追 とDNA鑑 定 とは機 能 的 に分離 され るべ きで あ り,ま た他 方 にお いて,連 邦検事 局 と州検事 局
とが特 別 な専 門知 識 に基づ き,信 頼 で きるDNA鑑 定 を実施 で きる研 究 部 門 を もっ てい る とい うこ とを,考 慮す る と原 案が 適 当だ と した58)。
なお,委 嘱 され た鑑 定 人 は,適 切 な措置 を講ず る こ とに よって違法 なDNA鑑 定 が行 われ ない よ うに しな ければ な らないが,し か し,違 法 な検査 を阻止す るため に どの よ うな措 置が 講 じられ るべ きであ るか につい て は,法 律 で は具体 的 に規定 され てい な い。 「技術 的お よび組織 的措 置」 とい う文 言 に よっ て検 査担 当者 がDNA検 査 の濫用 的 実施 を確 実 に阻止 す るため に,現 時点 で可能 な全 ての予 防措 置 を講 じな けれ ばな らない とい うこ とが 明確 に され る59)。
さ らに,第2項 第2文 は,具 体 的 な検査 に よ り生 ず る(中 間的)結 果 を含 めて検 査 結果 が第 三者 に よる不 当 な知得 か ら保 護 され るべ きこ とを定 め る。 このた め,検 査 目的か ら見 て可 能 な場 合 に は,検 査 に利 用 され た資料 サ ンプ ル と,得 られ た個 人 関連 の情 報 が匿名化 され なけれ ばな らない こ と とな る。 この規 定 の関係 か ら外 国の 鑑 定人 は,事 実上排 除 され る こ とに なる と理解 されて い る。 その理 由 として,外 国 の鑑 定 人 では,第2項 第2文 に定 め られた特別 の保 護措 置,即 ち違法 な分 子遺伝 学 的検 査 が行 われず,ま た不 当 に第三 者 が検 査結 果 につ いて知 るこ との ない よ うに技 術 的 お よび組織 的措 置 を講ず る こ とが で きない ことが挙 げ られ てい る60)。第3文 お
よび第4文 は,連 邦 議会 の法務 委 員会 の勧 告 に遡 る61)。
連邦参 議 院 は,デ ー タ保護 法 に規 定 が存 す る こ とか ら して刑 訴法 中 にデー タ保 護 に 関す る規 定 を置 く必 要 が ない と して連邦 政 府 案 の第2項 第4文 の 削 除 を求 め た が62),受 け容 れ られ なか っ た。 この結 果,公 的 な地位 にない鑑 定人 の場合 には,連 邦 デ ー タ法 第38条 は,管 轄権 あ る監 督官 庁 が保 護i措置違 反 また はデー タの濫用 に つ い ての十分 な根拠 の ない場合 で も第2項 第2文 に定 め られ た保護措 置 の実行 を監 督 す る こ とがで きる,と い う条件 で適用 され る こ とにな る。
(d)秩 序違 反法 第46条 第4項 第2文,第3文
第46条 第4項 「刑 事 訴訟法 第81条a第1項 第2文 は,採 血お よび他 の軽微 な 侵 襲 の 限 度 にお い て 適 用 す る 。 刑 事 手 続 に お い て採 取 され た血 液 お よ び他 の 体 細胞 は,そ の採 取が 第1文 に よ り過料 手続 にお いて も許 され たであ ろ う と
き は,こ れ を 利 用 す る こ と が で き る 。 刑 事 訴 訟 法 第81条eの 意 味 に お け る 検 査 を実施 す るた めの血 液 お よび他 の体 細 胞 の使 用 は,許 され ない」63)(下 線 部分 が今 回の立 法 に よる)
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池 田秀 彦 ドイ ツ刑 事 手 続 にお け るDNA鑑 定 に 関す る立 法 の 動 向
秩 序 違 反法 第46条 第4項 に第2文 を加 え る こ とに よっ て,刑 事 手続 にお いて採 取 され た血液 サ ンプル が刑事 手続 か ら過料 手続へ と手続が 移行 した後 に過料 手続 に お いて も利用 で きる こ とが 明確 になっ た。 これ 以外 に刑事 手続 にお いて採取 された 体細 胞 は,軽 微 な侵 襲 とい う第4項 第1文 の要件 に よ りその採取 が 許 され たで あ ろ う と思 われ る場 合 にの み過料 手続 にお いて利 用す る こ とが で きるの であ るが,こ の 場合 に,廃 棄 は,秩 序 違 反法 第46条 第1項 の規定 に よ り刑訴 法 第81条a第3項 が 準用 され る。
第4項 第3文 は,刑 事 手続 また は過料手続 にお いて採取 された血液 サ ンプ ル また はその他 の体細 胞 を,過 料 手続 にお い て分子 遺伝 学 的検査 の実施 の ため に利 用す る
こ とを禁 止 して いる64)。
4DNA同 定 法65)
(1>DNA同 定 法 の 立 法 の 経 緯
将 来 の 刑 事 手 続 の た め のDNA鑑 定 の 利 用 に 関 し て 定 め る1998年5月26日 の CDU/CSUお よ びFDP法 案66)は,法 務 委 員 会 で の 修 正 を 経 て67),1998年9月7
日 のDNA同 定 法(DNA‑ldentitatsfeststellungsgesetz)68)と し て 成 立 し,同 年9月 11日 に 施 行 さ れ た 。
同 法 の 目 的 は,2つ あ る 。1つ は,1998年4月17日 に 連 邦 検 事 局 に 設 置 さ れ た DNAデ ー タ フ ァ イ ル に 対 す る 法 的 根 拠 を 創 出 す る こ と で あ り,2つ 目 は,刑 訴 法 第81条a第1項,第81条eお よ び 第81条fの 規 定 を,被 疑 者 ・被 告 人,確 定 有 罪 判 決 を 受 け た 者,精 神 疾 患 の た め に 弁 論 能 力 の な い 者,刑 法 第20条 に よ る 責 任 無 能 力 者 ま た は 少 年 裁 判 所 法 第3条 の 意 味 で の 刑 事 責 任 無 能 力 者 に つ い て 一 定 の 条 件 下 で,将 来 の 刑 事 手 続 で の 個 人 識 別 の た め に,体 細 胞 を 採 取 し,こ れ を 分 子 遺 伝 学 的 に 検 査 し,そ し て そ の 検 査 結 果 を 連 邦 刑 事 局 法69)(Bundeskriminalamtgesetz)
の 規 定 に よ りデ ー タ フ ァ イ ル に 保 存 し,加 工 し,そ し て 利 用 す る 可 能 性 を 開 く こ と で あ っ た 。 こ れ は,将 来 の 刑 事 手 続 を 目 的 と し た 鑑 識 上 の 措 置 で あ り,同 時 に 将 来 の 刑 事 手 続 の た め の 証 拠 保 全 行 為 と し て の 意 味 を 持 つ 措 置 で あ る が,こ の よ う な 措 置 は,刑 訴 法 第81条a第1項,第81条eお よ び 第82条fに よ っ て は 許 さ れ な い 。
こ れ ら の 規 定 で は,係 属 中 の 手 続 に お い て 行 為 者 の 有 罪 の 認 定 に 必 要 で あ る 限 り に お い て 被 疑 者 か ら体 細 胞 を 採 取 し て,分 子 遺 伝 学 的 に 検 査 す る こ と が 許 さ れ る 。 従 っ て,本 法 第1条,即 ち 刑 訴 法 第81条gに よ り,行 為 者 が 自 白 し た り,他 の 証 拠 方 法 に よ り有 罪 の 証 明 が 可 能 で あ る た めDNA鑑 定 が 行 為 者 の 有 罪 の 認 定 に 必 要 で な い 場 合 に お い て も,将 来 の 刑 事 訴 追 に 備 え た 措 置 と し て 利 用 で き る こ と に な る70)。
な お,CDU/CSUお よ びEDP法 案 の 理 由 書 は,連 邦 憲 法 裁 判 所 の 国 勢 調 査 判 決 の 情 報 に 関 す る 自 己 決 定 権 を 考 慮 し て,検 査 資 料 の 目 的 拘 束 と廃 棄 の た め の 規 定 を 設 け た こ と を 明 ら か に し て い る71)。
(2)DNA同 定 法 の 概 要
通信 教 育 部 論 集 第8号(2005年8月)
同法 は,5条 か らな り,第1条 は,刑 訴 法 に第81条gを 加 える 旨を定 め,第2 条 は,刑 訴法 第81条gに よる措 置 の対 象 を刑事 手 続が 係属 して いな い一 定 の人 に 拡 げ る。 第3条 は,同 法第2条 お よび刑 訴法 第81条gに よ り得 られ たDNAの 個 人識別 の標本 につ い ての利用,特 にデ ー タフ ァイルへ の保 存 に関す る規 定 を含 んで い る。 第4条 は,基 本法 第2条 第2項 の定 める 身体 の不可 侵 に関す る基本権 が本 法 に よっ て制約 され る こ とを規 定 し,第5条 は,法 律 の施行 につ いて規 定 してい る。
以下,第1条 か ら第3条 までその基 本 的内容 を簡 潔 に見 るこ と とす る。
(a)DNA同 定法 第1条
第1条 は,刑 訴 法 に第81条gを 加 え る旨 を定 め る。
第81条g第1項 「犯罪 の種 類 若 し くは態様,被 疑 者 ・被告 人 の人格 またはそ の他 の知見 に基づ き,相 当 に重大 な犯 罪,特 に重罪,性 的 自己決 定 に対 す る 軽 罪,危 険 な傷 害,特 に重 い事態 の窃 盗 また は恐 喝 につ いて被 疑者 ・被告 人 に対 して将 来新 た に刑事 手続 が実行 され る こ とが あ り得 る と認 める に足 りる 理 由が ある と きは,将 来の刑 事手続 での 同一性 の確 定 を 目的 と して,当 該 犯 罪 の嫌疑 のかか って い る被疑 者 ・被 告 人か ら,体 細 胞 を採取 し,か つ,こ れ をDNAの 個 人識別 の型 の確 定 のた め に分子 遺伝 学 的 に検 査す る こ とが で き る」
第2項 「採取 された体細胞 は,第1項 に定 め られ た分 子遺伝 学 的検査 の ため だ け に利用す る ことが で きる。 そ れ らが このため に最早必 要 で な くな った と き は,遅 滞 な く廃 棄 しなけれ ばな らない。 検査 に際 して は,DNAの 個 人識 別 の型 の調査 の ため に必 要 な認 定 以外 の認定 を行 って は な らない。 これ を 目的
とす る検査 は,許 され ない」
第3項 「第81条a第2項 お よび第81条fは,こ れ を準用 す る」
第81条g第1項 は,被 疑 者 ・被告 人が 将来 の刑 事 手続 にお い てDNAの 同一・性 を確 定す る 目的 で体細 胞 が採 取 され,分 子遺伝 学 的 に検 査 され得 る条件 を定め る。
この要件 と しては,・ 相 当 に重大 な犯 罪 ・措 置 の必要性 ・再 犯 の虞が あ る。
① 相 当 に重大 な犯罪 被疑 者 は,相 当 に重 大 な犯 罪 につ き嫌 疑が かか っ てい なけ れ ばな らず,こ の嫌疑 は,体 細 胞 の採取 お よび検査 の時 点で存 在 しなけれ ばな らな い。 「相 当 に重 大 な犯 罪」 とい う不 明確 な法 的概 念 は,つ とに刑 訴法 第98条a,第 110条aお よび第163条eで 用 い られ て い るの で,そ こで の解 釈 が 参考 に な る72)。
「相 当 に重 大 な犯罪 」 とい うため に は,少 な くとも,中 程度 の犯 罪 の領域 に含 まれ ね ばな らず,法 的平穏 を害 し,国 民 の法 的安全 性 の感情 を相 当 に損 な うに足 る もの で なけれ ば な らない73)。第1項 の挙 げ る犯 罪 は,不 明確 な法 的概 念 をあ る程 度 限定 す る機 能 を有す る。
② 措 置 の 必 要 性 刑 訴 法 第81条gは,将 来 発 生 す る 犯 罪 の 犯 人 の 識 別 の た め で あ るか ら,第81条gの 定 め る措 置 に よって将 来 の刑事 手続 にお け る事 件 の解 明が 期 待 で きる場 合 に,体 細 胞 の採 取 とそ の分 子 遺伝 学 的 検査 が考 慮 され る こ とに な る。 そ れ故,本 条 に よる措 置 は,犯 人 が犯 罪 の 実行 に際 して,体 細 胞 を排 泄 した り,分 泌 しない犯 罪 につい て は許 され ない。 この観 点か ら,刑 法 第153条 以下 の供
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池 田秀 彦 ドイ ツ刑 事 手 続 に お け るDNA鑑 定 に 関す る立 法 の動 向
述 に関す る犯罪74),犯 人隠避 罪,犯 人蔵 匿罪,詐 欺 罪,背 任罪 等 はそ の対 象 か らは ず れ る75)。また,被 疑 者 が刑 訴法 第81条aに よ り係 属 中 の手 続 におい て既 に体 細 胞 を採 取 され て いる場 合 に も,第81条gに よる措 置 の必 要性 は ない。 けだ し,第 81条gの 要件 が存 在す る限 り,刑 訴法 第81条e,第81条fに よ り得 られた検査 結 果 は,将 来の刑事 手続 において被 疑者 の識別 の ため に利用 す る こ とがで きるか らで あ る。
③再 犯 の虞 犯罪行為 の性 質 また は実行,被 疑者 の 人格 また はそれ以外 の知見 に 照 らして被 疑者 に対 して将 来相 当 に重大 な犯罪 につい て再度捜 査 が行 われ る懸念 が なけ れ ば な らな い。 この予 測 は,個 々の事 件 の状 況 を考慮 して行 わ れ る こ とに な るが,Sengeに よれ ば,そ の際 保 安処 分 に関す る刑法 第63条,第64条 お よび第 66条76)に よ って求 め られ る予測 の判 断 につ いて判 例 が展 開 した諸 原則77)が 考慮 さ れ るこ とに なる78)。刑 訴 法 第81条gに よ り得 られ たDNA個 人識 別標 本 は,そ の 獲 得が 恣意 的 に命 じられ た場 合 に は,将 来 の刑 事 手続 にお いて利用 す る こ とはで き
ない。
81条g第2項 は,利 用 お よび廃棄 に関す る規 定 であ る。
それ は,第1項 に よ り採 取 され た体細 胞 の検 査 がDNA個 人識 別標 本 を抽 出す る 目的での み行 うことがで きるこ とを明確 に し,そ れ以外 の 目的で の検 査 を禁止 して い る。
第3項 は,命 令 の権 限お よび検査 手続 に関す る規 定 であ る。
体 細 胞 の採 取 命令 と資料 の分 子 遺伝 学 的検 査 命 令 とは別個 の規 定 に よ り行 われ る。 前 者 は,第81条g第3項 に よ り第81条a第2項 が 準 用 され る こ とに な る。
原則 的 には,裁 判 官が これ を命ず るが,遅 滞 によ り検査 の成功 が危 ぶ まれ る ような 場 合 に は,検 察 官が命令 を発 す る こ とがで きる。被 疑者 が 同意す る場 合 に は,命 令
は必 要 な い もの と理 解 され てい る79)。後 者 の,採 取 され た資料 の検 査 につ いて は, 第81条g第3項 に よ り第81条f第1項 が準 用 され,常 に裁判官 が これ を命 じるこ とにな る。但 し,こ の場 合 も被疑者 が 同意す れ ば,命 令 は必要 ない と考 え られてい る80)。
(b)DNA同 定法 第2条
第2条 「刑 事 訴訟 法 第81条gに よ り許 され る措置 は,関 係 人 が刑事 訴 訟法 第 81条g第1項 に挙 げ られ た犯罪 につ い て確 定 あ る有 罪 の言 い渡 しを受 け た とき,ま た は責任 無 能力で あ る こ とが証 明 され若 しくはそ の無能力 が排 除 さ れ な い こ とだ け の理 由で,ま た は精神 疾 患 に よる弁 論 無 能力 若 し くは責任
(少年 裁判所 法 第3条)の 欠如 若 しくはそれ が排 除 で きない こ とだ けの理 由 で有 罪の 言い渡 しを受 けず,か つ 連邦 中央登 録簿 また は教 育登 録簿 中 のその
旨 の登 録 が抹 消 され て い な い と き に も,実 施 す る こ とが で きる 」
本 条 に よ り,体 細 胞 の採 取 お よび その分 子遺 伝 学 的検査 は,刑 訴法 第81条g第 1項 の定 め る犯罪 につ いて既 に確 定 有罪 判決 を受 けた者,責 任 無 能力 が証 明 され, 若 し くはその疑 いが払拭 で きな い こ とを理 由に有罪 とな らなかっ た者,精 神 病 のた め弁論 無能力 で あ るこ とを理 由 に有 罪 とな らなか った者,ま たは少 年裁判所 法 第3