翻刻および諸本校異
凡 例
一、
本 文は︑東山御文庫本の行款に従って︑現行字体による忠実な翻刻に努めたが︑読み易さをはかって︑文節 分 かち書きを施した︒︵ただし︑おのずから分節効果をなす漢字の前後まではいちいち切らない︒︶
二︑括弧内に本文丁数と表・裏を示し︑上部に5・10行の行数指示を付した︒
三︑内容によって全篇を二四節に分けた校注書︵次田香澄・笠間書院刊︶との連絡を考慮して︑その切れ目に当
る行頭に太字で節数を示した︒
四︑下欄に諸本による校異を示した︒校本およびその略号は次の通りである︒
◎ 尊経閣文庫本
◎
平松
文庫
本
⑦ 扶 桑 拾 葉 集 本
@ 群書類従本︵板本︶
また︑底本の東山御文庫本は⇔︑底本以外の諸本をまとめ言う場合には●を用いた︒
なお︑校注書による意改本文等を︵一説︶と注して掲げた︒
五︑諸本校異のうち︑単に漢字とかなの区別に過ぎないものは掲出しない︒ただし﹁夜∬よ﹂﹁音11をと﹂のご
とく︑底本の漢字のよみや校本のかなつかいに係わるものは適宜採りあげた︒
六︑校異はおおむね当該行の下部に示すように努めたが︑項目の多い場合は左右にずれることとなった︒掲出形
式
は次の通りである︒
行数・当該語句ー異文・校本略号︵ー異文・校本略号︶
七︑底本の語形に近いものから序でるのを原則とし︑同形の場合は⑦⑨⑦⑲の順に従った︒
八︑説明の必要な場合には︹ ︺内に注した︒説明部分にはカタカナを用いた︒
57 翻刻本文
うた〜ね
安
嘉門院四条
一ものおもふ事のなくさむにはあらねともねぬよの
ともとならひにける月のひかりまちいてぬれは
・れいのつまとをしあけてたsひとりみいた
したるあれたる庭の秋の露かこちかほな
る虫のねも物ことに心をいたましむるつまとなり
けれは心に乱れおつるなみたををさへてとはか
りこしかたゆくさきを思ひつsくるにさも
mあさましくはかなかりける契りの程をなとか
くしも思ひいれけんと我心のみそかへすくうら
(一オ︶
1うたsねーうたsねの記⑫
2安嘉門院四条1阿仏⑦の︶ーナシ◎◎
5をしあけてーおしあけて◎
6秋の露−秋露⑲
8乱れおつるーみたれをつる⑦8をさへてーおさへて◎
11けんーけむ◎◎
11 我
心ーわかこsろ◎◎
58
一一
めしかりける 夢うつsともわきかたかりし
育のまよりせきもりのうちぬる程をたにいたくも
たとらすなりにしや打しきる夢の通ひちは一夜
はかりのとたえもあるましきやうにならひにけるを
・さるはつき草のあたなる色をかねてしらぬにしも
あらさりしかといかにうつりいかにそめけるこ\ろ
に
かさもうちつけにあやにくなりし心まよひには
ふし柴のとたえにおもひしらさりけるやうく色
つきぬ秋のかせのうき身にしらるsこsうそう
Mたてくかなしきものなりけるををのつからた
むる管はありしにもあらすうちすくるかねの
(一ウ︶
4と
ち
え1と た へ◎
3な
り
にし や|なり
にし に や
◎
◎ 8と
零
え に1と
た へ に
◎iと
た に
◎ に
ノへ変
〕 7 心まよ
ひ1
心まと
ひ
◎1
ころまと
ひ
◎
10をのつからーおのつから◎
10 たむるーたのむる㊥︹行末ノ脱︺
59 翻刻本文
ひsきをつくくときsふしたるもいける心ちたに
せ ね
はけに今さらにとりはものかはとそおもひ
しられけるさすかにたえぬ夢の心ちはありしに
かはるけちめもみえぬものからとにかくにさはり
舟落欺・かちなるあしわけにて神な月にもなりぬふりみ
ふらすみさためなきころの空のけしきはいとs袖
の
いとまなき心ちしておきふしなかめわふれと
た え て
ほとふるおほつかなさのならはぬ日かすの
へた
つるもいまはかくにこそとおもひなりぬるよの
n 心 ほ
そさそなにsたとへてもあかすかなしかりける
三
いとせめてあくかるs心もよほすにやにはかにう 書︺ーあしわけ舟にて⑦ーあしわけ船にて 5あしわけにて︹㊧ハけノ右下二舟落欺ト傍 3たえぬーたへぬ②
⑫
7おきふしーをきふし◎
8たえてーたへて◎◎
(ニオ︶ 11もよほすーもよをす◎
60
つまさにまうてsんとおもひ立ぬるもかつうはいと
あやしく仏の御心の中はつかしけれとふたはより
まいりなれにしかはすくれてたのもしき心ちして
心 つ
からのなやましさもうれへきこえんとにやあらむ
・しはく御まへにともなる人々時雨しぬへしはや
かへり給へなといへはこ\うにもあらすいそきいつる
に
ほうこんかう院の紅葉このころそさかりと見
え て
いとおもしろけれはすきかてにおりぬかうらんの
つまなるいはのうへにおりゐて山のかたをみやれは木々
皿
の 紅
葉色々に見えて松にかsれる枝心の色もほかには
なる心地していとみ所おほかるにうきふるさとは
ニ(ウ︶
2御心の中︹◎ノのハ補入︺ーみ心の中@
4うれへきこえん−愁ひきこえむ@
5しはくーしはしは︵一説︶5人々ー人く◎θ
7ほうこんかう院ーほうこんこう院@7見えてーみへて◎
8おりぬーをりぬ◎◎
9つまなるーつまの@9うへーうゑ◎9おりゐてーおりいて◎◎
10 色
々 にー色くに◎◎
10 トキ字体︺ 枝ーつたの⑫︹つハ変︑いトつノ中間ノゴ 10 ほ か ーほかにもことなる@ にはなる︹⑦ハはトなノ間二挿入符︶
61 翻刻本文
10
いとsわすられぬるにやとみにもたsれすおりしも
風さへ吹てものさはかしくなりけれはみさすやうにて
た
つ程
人しれすちきりしなかのことの葉を
あらしふけとはおもはさりしを
さ さ欺
とおもひつ〜くるにもすへて思ひまする乙となきこsろ
のうちならんかし 帰てもいとくるしけれはうちやすみ
四
たるほと御ふみとてとりいれたるもむねうちさはき
て
ひきひろけたれはたsいまの空のあはれにひ
ころのをこたりをとりそへてこまやかにかきなされ
たるすみつき筆のなかれもいとみところあれと
(三オ︶ も◎ 7帰てもー帰りても@1返ても◎ーかへりて さ欺ト傍書︺ー思ひさまさる⑦⑫ 6思ひまする︹㊧ハひノ右下二さ補入︑す二 1おりしもーをりしも◎
62
れ
い
のなかくかきみたすごsうまよひにことの葉
の
つsきも見えすなりぬれは御かへりもいかs聞えけん
なこりもいと心ほそくてこの御文をつくくとみるにも
日比のつらさはみなわすられぬるも人わろき心の程や
・とまたうちをかれて
これやさはとふにつらさのかすくに
なみたをそふる水くきのあと
れ い の
人しれすなかみちちかきそらにたにたと
くしきゆふやみにちきりたかへぬしるへはかり
皿
に て
つきせす夢のこsちするにもいてきこえん
か
たなけれはたsいひしらぬなみたのみむせかへり
(三ウ︶
3 心 ほ そく て︸ 心ほほ
そく て◎
2聞 えけ ん︸きζ
えけ む
㊦
6とふにーとふも◎
63 翻刻本文
たるあか月にもなりぬまくらにちかきかねのをとも
たsいまのいのちをかきる心ちして我にもあらす
おきわかれにし袖の露いとsかこちかましくて君
やこしともおもひわかれぬなかみちにれいのたの
・もし人にてすへりいてぬるもかへすく夢こsち
軍なんしける かのところにはむめきたのかた月ころ
わつらひ給けるかつゐにきえはて給にけれはその
ほとのまきれにやまたほとふるもことはりなからいひ
しにたかふつらさはしもありしにまさる心地
mするはいかにおほしまとふらんととりわきたりける御 思
ひ
のなこりもいとくるしくをしはかり聞ゆれと
(四
オ︶ 5いてぬるーいてゐる@5夢ー夢の⑱6なんーなむ⑦◎⑫6月ころーナシ◎7つゐにーついに⑫7きえはてーきへはて◎
11 をし は かり 1おし
は かり
◎ 10ら ん1ら
む
②
64 あはれしるこsろのほとなかくきこえんかたなくて
日かすふるいふせさをかれくそおとろかし給つるつ
れなきよのあはれさもみつからきこえあはせたくなと
あれはれいのうちぬるほとの鐘のひsきに人しれ
・すたのみをかくるもおもへはあさましくよのつねな
らすあたなる身のゆくゑつゐにいかになりはてんと
すらんと心ほそく思ひつsくるにもありしなからの
心ならましかはうきたる身のとかもかうまては思ひ
しらすそすきましなと思ひつsくるにいまさら
皿身のうさもやるかたなく悲しけれはこよひはつれなく て や
みなましなと思ひみたるsにれいのまつほと
(四ウ︶
3きこえーきこゑ◎
6つゐにーついに◎6なりはてんーなりはてむ◎
7すらんーすらむ◎
9すきましーすきなまし◎@
65 翻刻本文
10 うちた︑くをき︑つけたるにはかしこくおもひしっ きふしたるにかのちいさきわらはにやしのひやかに すきぬるはいかなるにかとさすかめもあはすみしろ
めるこsうもいかなりぬるにかやをらすへりいてぬるもわれ
なからうとましきに月もいみしくあかけれはいとはし
たなきこsちしてすいかいのおれのこりたるひまにた
ちかくるsもかのひたちのみやの御すまゐ思ひいて
らるsにいるかたしたふ人の御さまそことたかひて
おはしけれと立よる人の御おもかけはしもさとわ
か ぬ ひ
かりにもならひぬへきこsちするはあなかち思ひ
い
てられてさすかにおほしいつるおりもやと心を ︵五オ︶ 10 9おはしけれーをはしけれ◎ 7御すまゐー御すまひ◎ 6おれの乙りたるーをれのこりたる◎⑦ 4いかなりぬるーいかになりぬる◎θ 3しつめるーしつむる⑦⑲ーしつめつる◎ 2ちいさきーちゐさき◎
あなかちーあなかちに⑦⑳
11おほしいつるーをほしいつる◎ー覚し出る
⑫
11おりーをり◎
66
やりておもひつsくるにはつかしきこともおほかり
六しはすにもなりぬゆきかきくらして風もいとすさ
ましき日いととくおろしまはして人二三人はかりして
物かたりなとするに夜もいたく更ぬとて人はみな
・ねぬれと露まとろまれぬにやをらおきいてsみる
によひには雲かくれたりつる月のうきくもまか
は
すなりなから山のはちかきひかりのほのかにみ
ゆるは七日の月なりけりみし夜のかきりもこよひ
そ
かしと思ひいつるにたsそのおりの心ちしてさた
m か
にもおほえすなりぬる御おもかけさへさしむかひ
たる心ちするにまつかきくらす涙に月のかけも
(五ウ︶
2しはすーしわす◎◎
4夜もーよも◎◎
5おきいて〜ーをきいて︑◎
8夜のーよの◎
9おりーをり◎
10御おもかけー御をもかけ◎
67 翻刻本文
見 え
すとて仏なとの見え給つるにやとおもふに
はつかしくもたのもしくもなりぬさるは月日にそへ
て た
へしのふへきこsちもせす心つくしなること
の
みまされはよしやおもへはやすきとことはりに思ひ
・たちぬる心のつきぬるそ有し夢のしるしにやとうれ
しかりける今はとものをおもひなりにしもといへは
七 え に
かなしきことおほかりける 春ののとやかなる
に
何となくつもりにける手ならひのほんこなとや
りかへすつゐてにかの御文ともをとりいてsみれは
皿
む あ か え
の色つきそめしはしめより冬草かれは
つるまておりくのあはれしのひかたきふしくを
(六オ︶ 6おもひなりにしもーおもひなるにしも◎ー 1見え給つるーみへ給つる◎ 1見えすーみへす◎
思
ひなるにしも㊤
8何となくーなにとなく◎θ8ほんこーほうこ◎◎
9つゐてにーついてに◎9御文ともをー御文とも◎◎
10 む め か
えーむめかへ◎
68
うちとけて聞えかはしけることのつもりにけるほと
も今はとみるはあはれあさからぬなかにいつぞや
つ
ねよりもめとsまりぬらんかしとおぽゆるほとにこ
なたのあるしこよひはいとさひしく物おそろしき
・こsちするにこsにふし給へとて我かたへもかへ
らすなりぬあなむつかしとおほゆれとせめて心の
おにもおそろしけれはかへりなんともいはてふしぬ
人 は
みな何心なくね入ぬる程にやをらすへりいれは
ともし火の残りて心ほそき光なるに人やおとろ
か
んとゆsしくおそろしけれとたsしやうし
ひとへをへたてたる居ところなれはひるよりよう
1つもりにけるー積ける⑲ (六ウ︶1聞えかはしけるーきこゑかわしける◎
4物おそろしきーものをそろしき◎
5我かたへもーわかsたへも◎◎
7おにーをに◎7おそろしけれはーをそろしけれは②7かへりなんーかへりなむ◎◎
8すへりいれはーすへり出れは◎◎
9おとろかんーをとろかん◎
11
ひとへをーひとつを◎◎
11
居ところーいところ◎1ゐところ◎
69 翻刻本文
いしつるはさみはこのふたなとのほとなく手にさはるも
いとうれしくてかみを引わくるほとそさすかそsろお
そろしかりけるそきおとしぬれはこのふたにうち
い れ て
かきをきつる文なともとりくしてをかんと
・するほといてつるしやうし口より火のひかりのなをほの
か に
みゆるに文かきつくるす﹀りのふたもせて有
けるかかたはらにみゆるを引よせてそきおとしたる
か み
をおしつ\みたるみちの国かみのかたはらにたs
うちおもふ事をかきつくれと外なるともし火の
・
ひ
かりなれは筆のたちとも見えす
なけきつs身をはやきせのそことたに
(七オ︶ 11 9かきつくれとーかきつれと◎ 8みちの国かみーみちのくにかみ◎◎ たる⑦㊤1かみををしつ︑みたる◎ 8かみをおしつsみたるーかみをsしつsみ 7そきおとしたるーそきをとしたる◎ 4をかんーをかむ◎ 4文なともーふみとも◎㊦ 置つる@ 4かきおきつるーかきをきつる◎◎◎ーかき 3このふたにーはこのふたに◎◎ 3そきおとしぬれはーそきをとしぬれは◎ 2そ〜ろーナシ⑫
と傍書︺ーなけきわひ◎◎ なけきつ︑︵つx二◎ハ佗イ︑@ハわひイ
70
しらすまよはんあとそかなしき
八身をもなけてんとおもひけるにや たs今もいてぬへき
こsちしてやをらはしをあけたれはつごもり比の月
なき空にあまくもさへたちかさなりていとものおそ
・うしうくらきに夜もまたふかきにとのゐ人
さへ折しも打こはつくろふもむつかしときsゐたるに
かくても人にやみつけられんとそらおそろしけれはもと
の
やうにいりてふしぬれとかたはらなる人うちみ
しろきたにせすさきくもとのゐ人の夜ふかく
ω
かとをあけていつるならひなりけれはそのほとを人
しれすまつにこよひしもとくあけて出ぬるをと
(七ウ︶
4ものおそろしうー物をそろしう◎
5夜もーよも◎◎
6折しもーをりしも◎ーおりしも◎6打こはつくろふーうちこはつくろう◎◎6きsゐたるにーきsいたるに◎◎
7そらおそろしけれはーそらをそろしけれは
◎
9とのゐ人ーとのい人◎
11
をとーおと◎
71 翻刻本文
すれはさるは心さす道もはかくしくもおほえすこsも
み
やこにはあらすきた山のふもとsいふ所なれは人めし
けからす木の葉のかけにつきて夢のやうにみ
をきし山ちをたsひとり行こ\ちいといたくあやう
・くものおそろしかりける山人のめにもとかめぬまsに
あやしくものくるをしきすかたしたるもすへてう
つsのことsもおほえすさてもかのところにし山の
ふもとなれはいとはるか成によなかよりふりいて
つるあめのあくるまsにしほくとぬるsほとになり
口
ぬ
ふるさとよりさかのわたりまてはすこしもへたs
らすみわたさるsほとの道なれはさはりなく行つきぬ 8はるか成にーはるかなるに◎◎@ 6ものくるをしきーものくるおしき@ 5ものおそろしー物をそろし◎ーおそろし⑲ 4行ーゆく◎㊦
(八オ︶ 11行つきぬーゆきつきぬ◎◎@
72
九夜もやうくほのくとするほとになりぬれはみち
ゆき人もこsもとはいとあやしととかむる人もあれは
ものむつかしくおそろしき事この世にはいつかはおほ
え ん
たs一すちになきになしはてつる身なれはあし
・のゆくにまかせてはや山ふかく入なんとうちもやす
まぬま\にくるしくたへかたきことしぬはかりなり
いるあらしの山のふもとにちかつく程雨ゆsしく
ふりまさりてむかへの山をみれは雲のいくへともなく
おりかさなりてゆくさきも見えすからうしてほう
nりんのまへすきぬれとはては山ちにまよひぬるそ
すへきかたなきやおしからぬ命もたs今そ心ほそ
(八ウ︶ 1夜もーよも②
3おそろしきーをそろしき②3おほえんーおほえむ◎◎④
5入なんーいりなん◎◎1入なむ@
6たへかたきーたえかたき◎
8いくへともーいくとも◎
9おりかさなりてーをりかさなりて②
10まへーまへは◎⑦
10すきぬれとー過ぬれは⑲
73 翻刻本文
くかなしきいと㌧かきくらす涙のあめさへふりそひ
てこしかた行さきも見えす思ふにもいふにも
たらすいまとちめはてつるいのちなれは身の
一〇
ぬ
れとをりたること伊勢のあまにもこえたり いたく
・まはりはてにけれは松かせのあらくしきをたの
もし人にてこれもみやこのかたよりとおほえてみ
の
かさなときてさえつりくる女ありこわらはのおな
しこゑなるとものかたりする也けりこれやかつらの
さとの人ならんとみゆるにたsあよみにあゆ
m
みよりてこれはなに人そあな心う御まへは人のて
をにけいて給かまたくちうんなとをし給たりける
(九オ︶ 二皇 2行さきもーゆくさきも◎◎@ 1ふりそひてーふりそへて⑫
錺
聾
5
霞
↓
9 聾
旨
9
4ζ
え たり 1
こ
へたり
②
7さえつりくるーさへつりくる◎
9人ならんー人ならむ◎9あよみにーあゆみに@
11くちうんーくちろむ@
11し給たりけるにかーし給たりけるか◎◎
74
に
かなにゆへかsるおほあめにふられてこの山な
かへはいて給ぬるそいつくよりいつくをさしておはす
るそあやしくとさえつるなにといふ心にかしたを
た ひくならしてあないとおしくとくりかへし
・いふそうれしかりけるしきりに身のありさま
をたつぬれはこれは人をうらむるにもあらすまた
くちうんとかやをもせすたsおもふことありてこのや
まのおくにたつぬへきことありて夜ふかくいて
つ
れとあめもおひた\しく山ちさへまとひてこし
u
かたもおほえす行さきもえしらすしぬへき心地さ
へすれはこsによりゐたる也おなしくそのあたり
(九ウ︶
1山なかへはー山中へ◎
2おはするそーをはするそ◎
3さえつるーさへつる◎
4いとおしーいとをし◎◎
7くちうんーくちろむ⑫
8おくーをく◎
9おひたsしくーをひたsしく◎◎
10 行さきもーゆくさきも◎◎
11よりゐたるーよりいたる②
Uおなしくーおなしくは◎⑫ーをなしくは◎
75 翻刻本文
まてみち引たまひてんやといへはいよくいとおし
かりて手をひかへてみちひくなさけのふかさそ仏の御
しるへにやとまてうれしくありかたかりけるほとなくを
=くりつけてかへりぬ まちとるところにもあやしく
・ものくるをしきものsさまかなとみおとろく人おほ
かるらめなれともかつらのさと人のなさけにをとら
め や
はさまくにたすけあつかはるsほと山ちはなを人
のこsちなりけるかいまはとうちやすむほとすへて
こsちもうせて露はかりおきもあかられすいたつら
mものにてふしたりしをみやこ人さへおもひのほ
か に た つ
ねしるたよりありて三日はかりはとにかくに
(十オ︶
1いとおしかりてーいとほしかりて⑫ーいとをしかりて◎
6 をと
め や は1 おと鶴霞
⑬
5 みお
とろく
1 みを
とろく
◎
9おきもーをきも◎
76
さはりしかともひとひにほいとけにしかは一すちにうち
もうれしく思ひなりぬさてこの所をみるにうき世な
からかsるところもありけりとすこくおもふさまなる
に
をこなひなれたるあまきみたちのよひあか月の
・あかをとたsすごsかしこにせぬれいのをとなとをきく
に
つけてもそ\うにつもりけむとし月のつみもかs
らぬところにてやみなましかはいかにせましとおもひ
い
つるにそみもゆるこsちしけるふるさとのにはも
せ
にうきをしらせしあきかせはほけ三まいのみねの
m松かせに吹かよひなかむるかとにおもかけそみし月
かけはりやうしゆせんの雲井はるかに心を送るしる
1うちもーうきも◎㊦ (十ウ︶1ひとひにーひといに◎◎
2うき世ーうきよ◎
4をこなひーおこなひ②
5あかーあかの◎5をとた〜すこ︑かしこにーおとたsすこし かしこに◎◎︹⑰ノおハを︺ーをこたらす 麦かしこに⑦⑫1をとたえすこ︑かしこに
︵一説︶
6つもりけむーつもりけん◎◎@
7おもひいつるー思ひ出る⑫1思ひつる◎◎
10 吹
かよひーふきかよひ②e
10おもかけそみしー面かけと見し◎@
77 翻刻本文
へとそなりにける
す
てsいてしもしのみやまの月ならて
た
れをよなく恋わたりけん
三 ゆ た の
たゆたにものをのみおもひくちにしはては
・うつs心もあらすあくかれそめにけれはさまくよの
た
めしにもなりぬへくおもひのほかにさすらふる身
のゆくゑををのつからおもひしつむる時なきにしも
あらねはかりの世の夢の中なるなけきはかりにもあ
らすくらきよりくらきにたとらむなかき夜のま
抽とひをおもふにもいとせめてかなしけれと心はこsう
として猶思ひなれにしゆふくれのなかめにうちそ 9夜のーよの◎⑰⑲ 9たとらむーたとらん◎㊦ 9くらきより︹◎ノきハ補入︶ 8かりの世のーかかりの世の◎︹改行ノ術︺ 7ゆくゑーゆくへ② 6さすらふるーさすらうる②㊦ 5うつs心も〜うつし心も②◎ 2もしのーわしの◎の︶
(十一オ︶ 11猶ーなを◎㊦
78
ひ て ひとかたならぬ恨もなけきもせきやるかたなき ︵+一ウ︶
む ね
のうちをはかなき水くきのをのつからこsろの行
たよりもやとて人しれすかきなかせといとsしき
な み た
のもよほしになんいてやをのつからおほかたのよの
・なさけをすてぬなけのあはれはかりをおりくにちり
くることの葉もありしにこそ露のいのちをもかけて
けふまてもなからへてけるをうき世の人のつらきいつ
ならひか
はりにさへなひはてにけることもあるにや同し世とも
おほえぬまてにへたsりはてにけれはちかのしほかま
mもいとかひなき心ちして
みちのくのつほのいしふみかきたえて @ 9へた︑りはてにけれは1隔りててにけれは 書︺ーならひはてにける⑦⑫ 8なひはてにける︹⑥ハなひ二ならひかト傍 7うき世のーうきよの◎@ 6いのちをも︹◎ノをハ補入︶ 5おりくにーをりくに◎ 4をのつからーおのつから◎ 4なんーなむ⑲ 4もよほしーもよをし◎ 2行ーゆく◎◎@
11
かきたえてーかきたゑて◎
79 翻刻本文
はるけきなかとなりにけるかな
三日ころふりつるああのなこりにたちまふ雲間のゆふ
つく夜のかけほのかなるにをしあけかたならねとうき
人しもとあやにくなるこsちすれはつまとは引たて
・つれとかとちかくほそき川のなかれたる水のまさるにや
つ
ねよりもをとするこsちするにもいつのとしにか
あらんこの川に水の出たちし世人しれすなみをわけ
し事なとロバいまのやうにおほえて
おもひいつるほとにもなみはさはきけり
m
うきせをわけて中川の水
あれたる庭にくれ竹のたsすこしうちなひきたる ︵+ニオ︶ 7出たちし世〜いてたりし世◎◎ー出たりし 7この川にー此川の⑫ 7あらんーあらむ◎ 6をとする︹◎ノすハ補入︺ 5川ー河◎ 4引たてつれとーひきたてつれと◎◎⑫ 2ゆふつく夜のーゆふつくよの◎⑨ 2雲間のー雲まの◎θ⑫
に
◎
@
10うきせをーうきよを@
80
さへそsうにうらめしきつまとなるにや ︵+ニウ︶
よとsもにおもひいつれはくれたけの
うらめしからぬそのふしもなし
をのつからことのつゐてになとはかりおとろかしきこえ
・たるにもよのわつらはしさにおもひなからのみなん
さるへきつゐてもなくてみつからきこえさせすなと
なをさりにかきすてられたるもいと心うくて
きえはてんけふりののちのくもをたに
よもなかめしな人めもるとて
・・とおほゆれとこsろの中はかりにてくたしはてぬるはいと
茜 か ひ
なしや 其比こs地れいならぬことありて命もあや11 10中ーうち⑫ くちの◎◎ 8けふりののちの1煙の〜ちの@ーけふりの 8きえはてんーきえはてむ◎ 6きこえさせすーきこゑさせす◎ 6つゐてもーつひても◎ーついても◎ 5なんーなむ◎ 4おとろかしーをとろかし◎ 4つゐてにーついてに◎◎ 4をのつからーおのつから◎ 2おもひいつれはーおもひいつれと◎◎
其
比ーそのころ◎⑫
81 酬刻本文
うきほとなるをこ\なからともかくもなりなはわつら
はしかるへけれはおもひかけぬたよりにてをたきの
ちかき所にてはかなきやとりもとめいてsうつろひなんと
すかくとたに聞えさせまほしけれととはすかたりも
・あやしくてなくくかとをひきいつるおりしもさきに
たちたるくるまありさきはなやかにおひてこせんなと
ことくしくみゆるをたれはかりにかとめとsめかたけれは
か の
人しれすうらみきこゆる人なりけりかほしるき
すいしんなとまかふへうもあらねはかくとはおほし
拍よらさらめとそsうにくるまの中はつかしくはした
なきこsちしなからいま一たひそれとはかりも見をく ︵士ニオ︶ 7とsめかたけれはーとsめたりけれは⑲ 6おひてーをひて◎ 5おりしもーをりしも◎ 3うつろひなんーうつろひなむ◎◎ 2をたきのーおたきのの︶
82 りきこゆるはいとうれしくもあはれにもさまく ︵±ニウ︶
む
ねしつかならすつゐにこなたかなたへゆきわかれ
給
ほといといたうかへりみかちにこsろほそしかのとこ
ろに行つきたれはかねてきsつるよりもあやしく
・はかなけなる所のさまなれはいかにしてたへしのふへく
もあらす暮はつる空のけしきも日ころにこえて
心 ほ
そくかなし宵ねすへきともsなけれはあやしく
しきもさためぬとふのすかこもにたsひとりうち
ふしたれとsけてしもねられす
m
は
かなしなみしかき夜半の草まくら
むすふともなきうたsねのゆめ 10 7宵ねーよひね◎ーよひゐ◎1宵ゐ⑦@ 6こえてーこへて◎ 6暮はつる空のーくれはつるそらの⑫◎ 4行つきたれはーゆきつきたれは⇔ ハ錯簡︺ 3こ︑ろほそし1心ほそし◎ーナシ◎⑫︹◎ 3給ほとー給程◎◎ー給ふほと⑦ー給ふ程⑲ 2つゐにーついに◎◎
みしかきーみちかき⑦
83 翻刻本文
日ころふれととひくる人もなく心ほそきまsにきやう
つとてに持たるはかりそたのもしきともなりけるせかい
ふらうことあるところをしゐておもひつsけてそ
うき世の夢もをのつから思ひさますたよりなりける
・けふかあすかと心ほそきいのちなからうつきにもなりぬ
三
いさよひのひかり待いてs程なきまとのしとみたつ
ものもおろさすつくくとなかめいてたるにはかなけ
なるかきねの草にまとかなる月かけに所からあ
はれすくなからす
日
をく露のいのちまつまのかりのいほに
こsろほそくもやとる月かけ
(十
四オ︶ 7つくくとーつらくと⑦ 7おろさすーをうさす◎ 6待いてxーまちいてs②◎1まち出て◎⑳ 2持たるーもちたる◎◎ 1なくーなし⑦⑫
84 い
つくにかあらんかすかに笛のをとの聞えくるかの御
あたりなりしねにまよひたるこsちするにもきと
む ね ふ た
かる心ちするを
まちなれしふるさとをたにとはさりし
・ 人はこsまておもひやはよる
さても猶うきにたへたるいのちのかきりありけれは
やうく心ちもをこたりさまになりたるをかくてし
もやとて又ふるさとにたちかへるにもまつならぬ
木すゑたにそsうにはつかしくみまはされて
m きえかへりまたはくへしとおもひきや
露 の い
のちの庭のあさちふ
(十
四ウ︶
1あらんーあらむ◎1笛のをとーふえのをと◎ー笛の音⑦⑫ーふ へのおと◎1聞えくるーき乙ゑくるか◎2まよひたるーまかひたる︵一説︶
6猶ーなを◎
7をこたりーおこたり◎7なりたるをーなりぬるを◎◎
10きえかへりー消かへり⑦⑫ーきへ返り◎
10またはくへしとーまたいくへしと︵一説︶
85 酬刻本文
宍なけきなからはかなくすきて秋にもなりぬなかき
おもひのよもすからやむともなきsぬたの音ねやちか
ききりくすのこゑみたれも一かたならぬねさめのもよ
ほしなれはかへにそむけるともしひのかけはかりを友
・としてあくるをまつもしつ心なくつきせぬ涙のし
つくはまとうつあめよりもなりいとせめてわひはつる
なくさみにさそふ水たにあらはと朝夕のこと草に
なりぬるをそのころのちのおやとかのたのむへきことはり
もあさからぬひとしもとをつあふみとかやきくもはる
けき道をわけてみやこの物まうてせんとてのほり
きたるに何となくこまやかなり物かたりなとする ︵十五オ︶
2音ーをと◎㊦
3こゑーこゑの㊨3もよほしーもよをし◎
4かけはかりをーかけはかりの︶
8おやーをや◎8とかのーとか⑦⑲
10 物まうてーものもうて命︶
11 何となくーなにとなく◎◎
11
こまやかなりーこまやかなる⇔
86 つ ゐ て に
かくてつくくとおはせんよりはゐ中のす
まゐもみつsなくさみ給へかしかしこも物さはかしくも
あらすすまさん人はみぬへきさまなるなとなをさり
なくいさなへとさすかひたみちにふりはなれなむ
・みやこのなこりもいつくをしのふ心にか心ほそく思ひ
わ
つらはるれとあらぬすまゐに身をかへたるとおも
ひなしてとたにうきをわするsたよりもやとあや
毛なく思ひたちぬ くたるへき日にもなりぬ夜ふかくみや
こをいてなんとするにころは神な月の廿日あまり
な れ
はあり明の光もいと心ほそくかせのをともす
さましく身にしみとをる心ちするに人はみなおき
(十五ウ︶
1つゐてにーついてに◎1おはせんーをはせん◎1すまゐーすまひ◎㊦︹◎ハひヲゐと訂︶
3すまさんーすまさむ◎⑦ー心すまさん◎3みぬへきーすみぬへき⑰
4ふりはなれなむーふりはなれなん⇔
6すまゐにーすまひに◎
8夜ふかくーよふかく⑫
10あり明ー在明◎ー有明◎
11おきーをき◎
87 翻刻本文
さはけと人しれすこsろはかりにはさてもいかにさすら
ふる身の行ゑにかとたsいまになりては心ほそきこと
の
みおほかれとさりとてとsまるへきにもあらねは出ぬる
みちすからまつかきくらす涙のみさきにたちて心ほそ
・くかなしきことそなにsたとふへしともおほえぬほと
なくあふさか山にもなりぬをとに聞しせきのし水も
た え ぬなみたとのみ思ひなされて
こ
え わ
ふるあふさかやまのやまみつは
わかれにたえぬなみたとそみる
.。あふみのくにのちといふところよりあめかきくらしふり
い
てsみやこの山をかへりみれはかすみにそれとたに ︵+六オ︶ 9たえぬーたへぬ● 8こえわふるーこゑわふる◎ 7なみたとのみ︹◎ノとハ補入︺ 7たえぬーたへぬ◎ 6をとーおと◎ 6あふさか山にもー逢坂山に⑲ 2行ゑーゆくゑ⇔
88
見
え す
へた
sり行もそsうに心ほそく何とて思ひ ︵+六ウ︶
たちけんとくやしきことかすしらすとてもかく
てもねのみなきかちなり
すみわひてたちわかれぬるふるさとも
・ きてはくやしき旅ころもかな
六 みちのほとめとsまる所々おほかれとこsはいつくく
ともけちかくとふへき人もなけれはいつくに野も山も
はるくとゆくをとまりもしらす人のゆくにまかせて
夢ちをたとるやうにて日かすふるまsにさすかなら
口はぬひなのなかちにおとろへはつる身もわれかの
こsちのみしてみのをはりのさかひにもなりぬすのまた 11 7いつくにーいつくの⑦⑫ 6おほかれとーをほかれと◎ 6所々ー所く◎◎ 1行もーゆくも⇔
をはりーおはり⑦@
89 疏刻本文
10 とかやひろくとおひたsしき河ありゆきsの人あつまり
て
舟をやすめすさしかへるほといとsこsうせうかしかまし
くおそろしきまてののしりあひたりからくしてさる
へき人みなわたりはてぬれと人々もこしやむまと待い
つるほと河のはたにおりゐてつくくとこしかたをみれは
あさましけなるしつのをともむつかしけなるものともを
舟にとりいれなとする程何事にかゆsしくあら
そ ひ
てあるひは水にたふれいりなとするにもみ
なれすものおそろしきにかsるわたりをさへへたてはて
ぬ れ は
いとsみやこのかたはるかにこそはなりゆくらんと
おもふにはいとsなみたおちまさりてしのひかたくかへ︵+七オ︶ 1おひたsしきーをひたsしき◎⑦1河ー川⑫◎2いとsこ〜うせう︹◎ノこsハ変︺ーいと x心せう◎ーいと〜ころせうの︶4人々もーひとくも◎ー人とも◎◎4待いつるーまちいつる⇔5河ー川◎◎5おりゐてーをりいて◎ーおりいて◎6しつのをともー賎の男とも@ーしつのをのをとも◎◎8あるひはーあるいは◎8たふれいりーたはふれいり◎◎9ものおそろしきー物をそろしき◎10
か
たーかたは◎
10 はるかにこそはーはるかにこそ⑲
10なりゆくらんーなりゆくらめ@
11なみたおちまさりて1涙をちまさりて②
90
らんほとをたにしらぬ心もとなさに過きつる日かすの
ほとなさにとまる人々の行すゑをおほつかなく恋
しきこともさまくなれとすみたかはらならねはことs
ふ
へきみやことりも見えす
・ おもひいてs名をのみしたふみやことり
あとなきなみにねをやなかまし
一九このくにsなりてはおほきなる川いとおほしなるみの
うらのしほひかた音にきsけるよりもおもしろくはま
千とりむらくにとひわたりてあまのしわさにとし
口
ふりにけるしほかまとものおもひくにゆかみたてたる
す か
たともみなれすめつらしき心ちするにも思ふ事
十(
七ウ︶
1らんーらむ⑫1心もとなさにー心もとなさよ⑳1過きつるーすきsつる◎⑰
2ほとなさにーほとなきに◎2人々のー人くの◎◎
3かはらーかわら◎
8音にーをとに◎◎8おもしろく〜をもしろく◎
9しわさーしはさ⑦
10ゆかみたてたるーゆかみたてる⑫