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氏名岩佐

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Academic year: 2021

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(1)

氏 名 岩佐

イ ワ サ

マ サ

ユ キ

属 都市環境科学研究科

都市環境科学専攻 分子応用化学域 学 位 の 種 類 博士(工学)

学 位 記 番 号 都市環境博 第

182

号 学位授与の日付 平成

28

3

25

日 課程・論文の別 学位規則第4条第1項該当

学 位 論 文 題 名 高分子薄膜ならびに有機ナノ結晶の構造科学的研究 論 文 審 査 委 員 主査 教 授 吉田 博久

委員 教 授 高木 慎介 委員 准教授 武井 孝

【論文の内容の要旨】

物質のサイズがスケールダウンし、m 、

nm

スケールに達すると、バルクとは異なる物 性が発現するようになる。これは、体積に対する表面(固体物質と空気の界面)や界面(固 体物質と基板の界面)の割合が増加するためである。家電製品、携帯機器、自動車などの 工業製品が高性能化、多機能化し使用される材料への要求が益々高度になっている。これ を満たすために物質が微細化あるいは複合化して使用されることが多くなるに伴い、表面 や界面の影響を考慮せずに材料設計することは困難になってきている。そこで本研究では、

①薄膜の相転移ならびに

nm

・m サイズの結晶形態の評価方法を確立することである。そ の技術を利用し、②有機薄膜・高分子薄膜の相転移と結晶形態におよぼす表面・界面の影 響を明らかにすることを目的とした。さらに③物質表面・界面を反応場として利用し新規 材料の開発を検討した。本論文は

7

つの章から構成されており、第

1

章と第

7

章は本論文 全体の序論と結論である。第

2

章は①について、第

3

章から第

5

章は②について、第

6

章 は③について議論した。以下第

2

章から第

6

章までの主な結果を記載する。

2

章では薄膜の相転移と結晶形態の評価技術を確立した。物質の相転移を観測する手 段として熱分析が挙げられるが、従来の熱分析は

mg

オーダーのバルク試料を対象としてお り、表面や界面の情報を検出することは出来なかった。我々は熱電対を多重化して高感度 化し、基準物質と試料への熱流の最適化や外乱の除去に徹した高感度型示差走査熱量計

DSC

)を開発した。g オーダーの微量試料の測定を可能にしたことで、薄膜に対する界

面や表面の影響を議論することができるようになった。また結晶形態の観察には走査型プ

ローブ顕微鏡(

SPM

)を用いた。共振モードは振幅を一定に制御するためのフィードバッ

ク制御が行われるが、従来法では表面をトレースする際に凸部でプローブが試料に衝突し

たり、凹部で離れたりする課題があった。そこでプローブを試料に対して垂直に接近・退

(2)

避させる動作を取り入れた

SIS

モードを開発し、nm・m サイズの結晶の安定な測定を実 現した。

2

章で確立した高感度

DSC

を長鎖アルコールナノ結晶の相転移観測に応用し、界面と表 面の効果を第

3

章で明らかにした。従来の

DSC

による

mg

オーダーのバルク試料の観測か ら長鎖炭素が奇数のアルコールは固相転移と融解が独立して観測され、偶数のアルコール では両者が近接して生じるために単一の吸熱ピークとして観測されることが知られている。

g

オーダーの薄膜について高感度型

DSC

を用いることで固相転移と融解を分離して観測 することができた。相転移は質量の減少に伴って低温へシフトしたが、固相転移は表面の 影響を受け、融解・結晶化は界面の影響を受けた。また高分子結晶の融点は、折りたたみ 面の表面自由エネルギーを考慮した

Thomson-Gibbs

式で示されることが知られているが、

長鎖アルコールナノ結晶はこれに則らなかった。表面だけでなく基板との界面の影響を考 慮した拡張型

Thomson-Gibbs

式を提案した。

4

章では長鎖アルコールナノ結晶の形態におよぼす厚さの影響を明らかにした。充分 厚い融液から冷却してできた結晶はドロップ状形態であったが、薄膜化することで基板の 影響を大きく受け、単結晶的に成長した板状多角形形状であった。基板影響を受けた薄膜 の厚さはおよそ

400 nm

以下であった。また基板影響を受けた厚さには長鎖炭素数の偶奇性 があり、これは結晶核形成頻度と成長速度の偶奇性が関係すると考えられた。

5

章では、高感度型

DSC

SPM

を高分子薄膜に応用し、相転移と結晶形態に及ぼす膜 厚の影響を明らかにした。試料には質量が

3 mg

から

6 g

で膜厚の異なるポリエチレンオ キシド(

PEO

)薄膜を用いた。結晶ラメラの表面(非晶質との界面)の影響を受けて融点 は降下し、折りたたみ面の表面自由エネルギーを考慮した

Thomson-Gibbs

式で表すことが できた。薄膜の厚さが薄くなるに従い、結晶化は界面の影響を受けた。重合度

272

PEO

薄膜はおよそ

200 nm

以下で結晶化しなかった。

SPM

の形態観察より、結晶核は形成する が成長が妨げられたことが示唆された。

6

章では表面の高エネルギー相を利用し下記

2

つの新規材料の開発を検討した。①両 親媒性ブロック共重合体のミクロ相分離した親水性ドメインを反応場として金ナノ粒子を 合成し、均一サイズの粒子を二次元に規則配列することができた。金粒子の表面積を大き くでき高活性な触媒への応用などが期待できる。②羊毛の高エネルギー表面層を利用し、

プルシアンブルーのナノ結晶を羊毛表面にのみ合成した。担体から脱離せず高効率な吸着 層として働くことから、放射性物質の除去フィルターとしての応用を検討している。

本研究では、微量な物質の相転移ならびに形態の評価技術を確立し、有機薄膜、高分子

薄膜の相転移と結晶形態に及ぼす界面や表面の影響を明らかにした。さらに物質表面を活

用した新規材料の開発を検討した。

SPM

で観察される

nm

・m オーダーの領域の相転移

を高感度

DSC

で観測できるようにしたことは、今後益々高度化する材料開発のための知見

を深め、材料コントロールの精度を高めるとともに開発スピードの加速に寄与することが

期待できる。

参照

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