静岡大学教育学部研究報告 (自 然科学篇 )第 47号 (1997.3)27‑45
幼児服 の動作性 についての着用実験 に関す る基礎的研究
Fundamental Study on Mobility of lnfants' clothes when worn
大村 知子・ 杉 山直美 *・ 大村 篤子・・
Tomoko OMuRA,Naonli SuGIYAMA and Atsuko OMuRA
(平 成 8年 10月 7日 受理
)I緒 言
近年 、少子化傾 向が続 き、一人 の子 どもに対 して財布 を開 く人が両親の他 に両祖父母 を加 え 6人 いるとい う「 シックスポケ ッ ト現象」がみ られた り、少な く産んで「一児豪華主義」 で育 て るとい う現象 が現 れて いる。このような親心を狙 った子 ども服の高級化 と市場 の拡大 とが図 られ、若 い母親 の ブラン ド志向を強調 した リペアル ックの流行 など、子 ど も服生産側の仕掛 け と販売戦略 もみ られ る。酒井 1)は 既製子 ども服 につ いて「 価格が高す ぎる、実用性・ 機能性 に 劣 るなどの不満 も多 い」 と指摘 してお り、高価格 であることが必ず しも品質の高級化 と着用者 に とって着 やす く着心地 がよい被服 の供給 には直結 していないことを示 している。
また、幼児服 の調達行動 に関 して 日本家政学会被服構成学部会の調査結果 2)に お いて 1サ イ ズ大 きめの衣服 を選択 していることが報告 されている。 この時期 の著 しい成長量への対応 、つ ま り経済性 とい う大人 の都合 を優先 しているといえよ う。子 どもは、着心地の良否を具体 的 に 表現 した り、それによ って着脱 の回避を した りで きないが、動作の不都合 や安全性 に差 し障 り があ った り、着心地 の悪 さを感 じて いることが推測 される。
従来、子 ど も服設計 に関わ る研究 は、成長期 の体型 に関す る報告 3卜 9)ゃ 手指 の巧緻性 と着 脱 行動 1の あ るいは歩容研究
n】②などが多い。他方、乳幼児 の着装実態 に関す る研究 につ いて は布 施谷 0〜 0、 山名 ら。や前出の被服構成学部会 の調査報告 2)が ぁ るが、幼児 の動作 と着 くづ れ や 大 きめサイズの衣服着用 の動作性 に関す る報告 はほとん ど見 あた らない。これは、乳幼児 を被 験者 とす る実験 では、実験条件 を一定 に維持 した り、実験条件を伝え ることや理解 を得 るな ど 意志 の疎通 に困難が多 いので、精度 の高 い実験 が難 しいことによると考え られる。
そ こで本研究 では、衣服寸法 と幼児の動作 との関係 につ いて、幼児 の日常行動 の フイール ド 観察か ら幼児 の動作特性 を把握 し、 2〜 3の 着用実験事例か ら実験方法 や実験条件 につ いて検 討す ることを 目的に考察 を試 みた。
Ⅱ 日常行動 の観察
1.研 究方法
観察 は、戸外 は市街地 の公園・ 保育園で 1992年 (御 殿場市、静岡市 )と 1995年 (三 島市 、静 岡市 )に 、室内 は 1992年 (御 殿場市 )に 実施 した。観察対象 は、公園・ 保育 園庭 また は家 の中
*静 岡星美高等学校教諭 **大 妻女大家政学部附属児童臨床研究センター研究協力員
大村知子・ 杉山直美・ 大村篤子
で遊 んでいる幼児で、観察 の内容 は、 30分 間 または 120分 間 の姿勢 の変化 (動 作 )と その回数 や継続時間 などであ る。
観察方法 は、 ビデオ撮影 による記録 と観察者 による記録 で、 1992年 の観察 は杉 山、1995年 の 観察 は大村 らがお こな った。
幼児 の 日常生活 における動作 とそれに伴 う衣服 の「着 くずれ」の実態を把握す るため に、幼 児 の行動発達 の観察法を参考 に、観察項 目のチ ェック リス トを用意 した。
1)上 肢 と下肢 の動 きについて
30分 間の関節 の屈曲姿勢 の出現回数 を数えた。方法 は ビデオテープを 5秒 ごとに区切 って、
肩 、肘、股、膝 の 4つ の関節 において、 90° 以上 の屈曲姿勢 (aと 900以 下 の角度 の屈 曲姿勢 lbl に分 けて、それぞれ屈曲の出現頻度 を数 えた。
2)動 作 の時間
120分 間 にブランコに乗 っていた時間、 シーソーに乗 っていた時 間 お よび滑 り台 に昇 って滑 り降 りて いた時間 につ いて測定 した。
また、30分 間 に幼 児 が地面 に臀部 を直接 つ けた座位姿勢 や瞬躍 の維持 時 間 を測 定 した。
0.1秒 単位 でカウン トしてその合計 タイムを求 めた。座位姿勢時間を測定す る基準 につ いて は、
幼児 が地面 に臀部 をつ けて座 っている時間 とした。瞬鋸を維持 している時間 につ いて は、臀部 は地面か ら離 れていることを条件 として測定 した。
着用実験 における階段昇降動作 の タイムは、踏面 25cnl、 けあげ
18。5clllの 階段 7段 を昇 る時 間
と降 りる時間を測定 した。 5回 の くり返 しを行 いその平均値を求 めた。
3)動 作 の回数 につ いて
30分 間の公園での遊 びの動作 につ いて は、予備観察 において出現頻度 の高か った以下 の動 作 別 にカウン トした。カウン トの対象 とした事例 は、年齢を聞 き取 りした 1歳 児 (1歳 6カ 月 )、
2歳 児 (2歳 5カ 月 )と 3歳 児 (3歳 5カ 月 )を それぞれ 1人 ずつ抽 出 した。比較 の ため に同 じ場所 に居 た成人 2人 (20歳 代 と 30歳 代 )に つ いて もデー タを採取 した。即 ち、「 歩行 (3歩
以上前進す るときに片足 が地面か ら離 れない状況 )」 、 「 走 る (3歩 以上前進 す るときに両 足 が 地面 か ら離 れ る状態 )」 、 「 また ぐ」、 「 座 る (座 位 )」 、 「 椅子 に座 る (椅 座位
)」、 「陣躍」 、 「 かがむ」 、
「抱 き上 げ られ る」、 「 ぶ ら下 が る」、 「手をあげる (上 肢上挙 )」 、 「手をつな ぐ」、 「 よ じのぼ る」
の 13項 目につ いて動作 の回数を カウ ン トした。
2。 観察結果および考察
1)幼 児 の動作 につ いて
上肢 と下肢 の動作 につ いての観察か らは、 30分 間の遊 びの自然 な動作 の うちにそれぞれの関 節 を頻繁 に屈伸 して いることがわか る。また、肩関節 につ いて は、立位 で上肢を 自然 に下垂 し た状態か ら上腕 が 90° 以上上挙す る動作 が特 に頻繁 に観察 された。 これ は「大人 に抱 か れ る」
や「 大入 と手をつな ぐ」 「 自分 の肩 の高 さよ り高 いところの ものを とる」 「 自分 よ り高 い と ころ にぶ ら下 が る」などが頻繁 に観察 された ことによる (表 1)。
また、幼児 の動作 は、場面 や個体差 によるば らつ きが大 きいことも検証 された。それ は同年 齢 で も体格 や運動 などの発達 に個人差があることや、同一 の人間で もその場 の状況 に応 じて動 くことの必然性 や欲求が異 な るか らといえよ う。幼児 に特有 の動作 としては、 「 Fe躍 (し ゃがむ
)」「 抱 きつ く」動作 な どや「立 ち上 が る」 「歩 く」の くり返 しが頻繁 であ った ことな どである。
幼児期の動作性についての着用実験に関する基礎的研究
表 1 30分 間の関節の屈伸頻度
観察対象 肩関節 a 肩関節 b 肘関節 a 肘関節 b股 関節 a 股関節 b 膝関節 a 膝関節 b
回
1歳 児 91
2 鍔 詑 り 己 120
3歳 児 87
20歳 代成人 7
35歳 代成人 33
202 100 98 144 88 216 87 162 252 150
150 170 105 162
138 170 130 96 194 110 137 170 140
168 163
135 95
208
184 224
129 132
61
85 aは 90° 以上の屈伸、
表 2 30分 間の動作回数
bは 90° 以下の屈伸である
回
動 作 1歳児 2歳 児 3歳 児 20歳 代成人 30歳 代成人
5 0 1 0 0 2 3 1 0 0 0 0 0 9
0 1 0 0 6 2 3 0 0 0 1 0
く る ぐ
歩 走 跨
跳 躍
座 る (座 位 )
座 る (椅 座 位 )
陣 鋸 か が む 抱 き つ く ぶ ら 下 が る 手 を挙 げ る(上 挙 )
手 を つ な ぐ よ じ 登 る
25 0 0 0 8
1
12 4 7 0 6 3 0
21 8 2 3 7 5 5
1
2 3 4
1
0
20 6 2 2 5 11 4 2 0
1
3 0 3
1歳 児 で は「 歩 く」 「 瞬鋸」 「地面 にすわ る」などの動作 が多 く、それ らの動作 は静 止 す る こ とも多か った。 3歳 児 で は多様 で複雑 な動 きをかな り安定 して行 っていた。例 えば、砂場 の縁 を また ぐ時、 1歳 か ら 2歳 前後 の子 どもは、砂場 の縁 に手をつ いてまた ぐので 6〜 15秒 を要 す ることが ほとん どであ ったが、 3歳 前後 にな ると同 じ砂場 の縁 を 2歩 程度 でまた ぎ、 1〜 2秒
間で越 え ることがで きた (表 2)。
幼児 の動作 の特徴 は、成人 と比較 して上腕 が肩 の高 さよ り上 にあが る動作が頻繁であること、
短 時間 に様 々な動作 を展開 していることなどがあげ られ る。従 って、幼児服の 日常着 と して の 条件 を満 たす には、 これ らの動作が円滑 に行 え る構成 や素材 の被服 を適切 な着方 をす ることが 必須事項 であ ると確認 した。
2)幼 児 の服装 につ いて
幼児 の服装 はTシ ャツと半 ズボ ン、 もしくはサ ン ドレスが ほ とん どで あ った。 Tシ ャッ と半
ズボ ンの組 み合 わせでは、大 きめなTシ ャッを着用 しているとTシ ャツの袖付線 が上腕最大 囲
周辺 まで落 ちて いた り、袖 口や首回 りなどの開 口部が大 き く開 き過 ぎて しま う傾 向が観察 され
た。上衣 の裾 をズボ ンやスカー トにタックイ ンしている状態で は、下衣か ら上衣を タックイ ン
大村知子・ 杉山直美・ 大村篤子
している裾が中途半端 に出て くるなどの着 くずれが観察 された。また、丈が長 めの ワンピー ス で は裾 を引 き摺 ることが しば しば観察 され、それによって 自分で裾を踏 んで しま った り、裾 が 汚 れ るとい う不都合 が観察 された。
以上 のよ うに、大 きめの上衣 の着用 によって、襟 ぐりや袖 回の開 口部 の着 くずれや ウエ ス ト 周辺 の着 くずれ、動作への不都合や衣服 の汚損 などを生 じることがわか った。従 って、大 きめ の衣服着用 は子 どもにとって快適 とはいえない し、着 ごこちがよいともいえない。
Ⅲ 着用実験
1。
上衣丈の長短 と動作 による着 くずれに関わる着用の事例実験
1)被 験者 につ いて
着用実験 では被験者が実験者側 の指示す る言葉の意味を理解す ることが必要であ る。その た め、今回の実験 の被験者 は 3歳 以上 が適 当であると考 えた。また、身長 にたい して頭 囲・ 腹 囲 が大 き く四肢 が短 いなどの幼児 の特有 の体型であることや動作がまだ不安定であること、被 服 の着脱 が 自立 で きていないことを被験者 の条件 として実験条件を設定 したので、 4歳 以下 が適 す ると考 えた。そ こで本実験では 3歳 女児 1名 を被験者 と してサ ンプ リング した。
本事例実験 の被験者 は、御殿場市で生育 し、家族構成 は両親、祖父母 と姉・ 妹 の 8人 で あ っ た。出生時の体重 3.5kg、 身長
50。Omで 、実験開始時 は 3。 0歳 であ った。四人姉妹 の三女 で大 人 の話す言葉 はよ く理解 し、自分 の意志を具体的 に説明で きない ことはあるが、実験 に関 して伝 達 された事項 の理解力 は十分であ った。また、日常 の動作か らみ る運動発達面 で は、発達相談 指導標 に示 された動作がで き、階段 は足 を交互 に出 してのぼ り、 30〜 60cmの 高 さか ら跳 ぶ こと などがで きた。匙 や箸 が使 え、排泄行為が 自立 したばか りであ った。 ごっこあそびを好 み、 ク レヨンで「 おい も」の絵 などを描 き、手指の巧緻性 については、折 り紙を 2つ に折 る ことはで きるが、正確 ではないので、事物 をあ らわす形 は形成で きず「 みたて」の道具 にな る。人形 を 背負 うときに紐 を結ぶが、結 び目は二重 にね じって留 めてある程度 の発達段階 にあった。数 は、
8く らいまで数 え られ るが途 中でわか らな くなることもあ った。
以上 の ことか ら、被験者 は精神的発達、運動発達 において順調 な成育状態であるといえ る。
2)実 験方法
まず、 ここでい う「 着 くずれ」 とは、上衣が下衣 の ウエス トか らせ り出 して ウエ ス ト周辺 の 着衣が乱 れ ることを示す。 この「 着 くずれ」には、上衣丈や身幅 のゆ とり、袖の形 態 、 ズボ ン の股上寸法、下衣 の ウエス トの拘束性 などが要因 として考 え られ る。本実験 で は、それ らの要 因か ら「 上衣丈」、 「 拘束性」 と「 上肢 の上挙 などの動作」の関連 につ いて事例実験 を試 み る。
(1)実 験期 日と実験環境
実験 は 1992年 8月 〜 11月 に各 1日 ずつ 3日 間実施 した。実験 の場所 は被験者 が リラックス し、
平常 の動 きがで きるよ うに被験者 の自宅で行 った。実験 の 日時 は以下 の とお りであ る。
第 1日 :1992年 8月 31日 天気晴れ 室温 30℃
第 2日 :1992年 10月 29日 天気雨 室温 21℃
第 3日 :1992年 11月 14日 天気晴れ 室温 17℃
υ )実 験方法
① 着 くずれ量 の計測方法 上衣 と下衣を着用 した立位正常姿勢 において、 ウエ ス
トライ ンに沿 って上衣 と下衣が接す る境界 に シールを添付 し、上肢 の上挙 によって ウエス ト部
幼児期の動作性 についての着用実験に関する基礎的研究
で下衣 にタ ックイ ンしてあ った上衣の裾のせ り出て きた分量 を測定 した。印の位置 は前中心 、 後 中心、右脇線 と した。
② 観察視点 と方法 実験衣を着用 した被験者 の 自然 な動作 を、主 に肩関節、股 関 節 の動 きによる上肢 や下肢 の動作 に伴 う着衣 の変化 につ いて観察 した。具体的な動作 は上肢上 挙動作 、歩行 、走 る、階段 を昇 る、座 る、瞬鋸、跳躍 などであ った。また、遊 びの動 作 と して 滑 り台や ブランコ遊 びの様相 を観察 した。
③ 実験条件
A.上 衣丈 に関す る実験 :ニ ッ ト、布 吊の 2種 類 の素材 を用 いて上衣丈 が 1サ イズ分長 い丈、
適合 サイズの上衣丈、 1サ イズ分短 い上衣丈 の 3条 件 による着用実験を行 った下衣 はウエ ス ト に ゴムを入 れ るタイプの半 ズボ ンを着用 した。ウエス トゴムによる拘束性 は全て同条件 にな る よ うに調整 した。上衣丈設定方法 はは基準 とした身長 に適合 サイズであ る 39mに プ ラスマイ ナ ス 1サ イズ ピッチ (2m)の 3段 階 と した (図 1)
B.ウ エス トの拘束性 と着 くずれに関す る実験 :身 長 95clll、 ウエス ト 45cmの 着衣基体 に対応 す るウエス トゴムい リズボ ンの完成時寸法 は42cmで ある。それに対 して本実験 の実験衣 は ゴム の伸 び率が 7%を 基準 に し、 14%、 21%の 伸 び率を設定 した。上衣丈 は身長 の適 合 サ イ ズの T
シャツを用 いた。
④ 実験衣 につ いて
A.上 衣丈 に関す る実験 :服種 は、Tシ ャツと半 ズボ ンで、上衣 の素材 はニ ッ トと布 品の 2 種類 である。サイズは、身長 100‑胸 囲 52の Tシ ャツを用 いた。
Oニ ッ トの上衣 :丈 は被験者の身長 に対す る適合サイズの上衣丈、 1サ イズ分長 い上衣丈、 な らびに 1サ イズ分短 い上衣丈 の 3サ イズ (2 cmピ ッチ )と した。実験 には上衣丈 を図 の よ うに 2 cmづ つ 2回 、合計 4 cmあ げを した状態か ら開始 して、順次縫 い糸を引 き抜 いて、上 衣丈 の条 件 を長 くす る方法を用 いた (図 1)。 また、観察の 目印には実験衣 の裾 か ら 9 cmの 水平 位 周径 に赤色 の O。 3cnl幅 の リボ ンを抜 い付 け、その上方 2 cmに ピンク、 4 cll上 方 に青 、 6 cm上 方 、即 ち裾か ら15cm上方 に茶色 の リボ ンを縫 いつけた。
・ 布 串の上衣 :既 製 のニ ッ トのTシ ャツか ら型を取 り、着脱 などのための あ きを後身 頃 に付 け 作製 した。丈 の設定条件 と丈 の調節方法 はニ ッ トの上衣 と同様 であ った。
O下 衣 :被 験者 の胴囲寸法 に適合す る既製 の半 ズボ ン (95〜 105で ウエス ト 45〜 51)を 用 いた。
‑1サ イズ丈 (4 cIIl折 る
)、も
(単 位 cm)
の構成
一 丈
︱ 効
︱
+1サ イズ丈
図 1 実験衣 (Tシ ャツ 0ス カー ト )
大村知子・ 杉山直美 0大村篤子
表 3 実験衣 の諸元
月艮 種 組 成 (%) 組 織 タテ糸密度 ヨコ糸密度
ニ ッ ト Tシ ャ ツ 布 吊 Tシ ャ ツ 半 ズ ボ ン
下 衣 ス カ ー トa 長 袖 ブ ラ ウ ス 下 衣 ス カ ー ト b
B。 ウエス トの拘束性 と着 くずれに関す る実験 :上衣 は実験 1で使 った布吊とニ ットのTシ ャ ツを使用 した。下衣 (ス カー ト )は 被験者 の ウエス ト寸法 に対 して、ウエス トゴムの伸 び率 を
7%、 14%、 21%の 3段 階 に調節 で きるよ うに作製 した。
実験衣 の諸元 は表 3の とお りであ った。
⑤ 動作について
動作 は上肢に関 しては、立位正常姿勢か ら右上肢上挙姿勢への移行 と立位正常姿勢か ら両上 肢上挙姿勢への移行の 2種 類である。上挙の しかたは見本を示 し、安定 した姿勢になるよ うに
した。階段の昇降動作 は、蹴上げが18.5mで 踏面 は 25cmの 被験者の自宅の階段で行 った。
3)結 果並びに考察
上衣丈 と着 くずれの関係は、 1サ イズ大 きい上衣丈 と 1サ イズ小さい上衣丈の時の「着 くず れ量」の差 は、最大で右脇線において 2。 8cm、 最小では後中心で 0.4cmで あった。表 4に 示す よ うに、動作別にみると両上肢上挙、右上肢上挙 と隣開においていずれの素材で も、上衣丈が短 いものほど着 くずれ も大 きくなる傾向がみ られた。つまり、適合サイズより小 さい場合 の着 く ずれが大 きいことが捉え られた。部位別 にみると右上肢上挙では側面 >前 面 >後 面の順に着 く ずれが大 きか った。岡本 ら0は 、高校生女子の右上肢上挙によるワンピース ドレスのつ り上 が
り量を後胴高、右脇胴高、前胴高について測定 し、 『 つ り上が りの最大 にな る部位 は右脇 で、
ついで前中心、後中心の順であった』と報告 している。両上肢上挙では 1サ イズ分小 さいサイ ズのニッ ト着用時に前中心で、 2.8cll、 右脇線で 3。 Oclllと わずかに前面より側面の着 くずれが大 きかったが、その他の条件では前面 >側 面 >後 面の順に着 くずれが大 きか った。成人女子 にお いての両上肢上挙によるウエス トラインの移動 は前中心の変化が最大で体側・ 後面の順で分量 は減少す ることが知 られており、この前面 0側 面・ 後面の各部位におけるずれの変化 は、動作 に伴 う姿勢の変化に呼応 してお り、被験者によって、ずれる分量が異なるのは動作時の姿勢 の 変化に個体差があるためと思われる。今回と実験条件が異なるので、単純な比較 はできないが 部位別にみた場合、子 どもについて も成人の上肢上挙の様相 と近い傾向を示すことがわかった。
瞬躍では着 くずれの大 きさが後面 >側 面 >前 面の順であった。後股上の伸展の大 きさか らの予 測通 りの結果であった。
また、ウエス トゴムの拘束による違 いは、図 3に 示すように側面 >後 面 >前 面の順で着 くず れが大 きか った。ここでは下衣の構造上などの影響をできるだけ除 くためにスカー トを用いた。
従 って、上肢の上挙によって胴部前面のスカー トのベル ト部分その ものが上方へ移動 した こと に関連 していると思われる。部位別の着 くずれ量の割合をみるのに、右上肢上挙では右脇線 の
糸 吊 (100) 糸 吊 (100) 剰 吊 (100) 剰宅 (100) 糸 吊 (100) ポ リエステル (100)
メ リヤス編 平 織 平 織
平 織 平 織 平 織
34.4 27.4
29。
0 34.0
55。
2 40.0
19.4
22.8
22.2
23.0
30.4
34.6
幼児期の動作性についての着用実験に関する基礎的研究
布 串 ニ ツ ト
図 2 布 吊およびニ ッ ト Tシ ャツの着 くずれの様相
(い ずれ もウエス トゴム拘束 7%で 適合サイズ着用時を ビデオか らトレース したものである )
着 くずれ量 を基準 と し、両上肢上挙 は前中心 を基準 と した (図 2)。 右上肢上挙 は側面 10に 対 し て前面 6。 0、 後面 1.3で あ った。両上肢上挙の着 くずれの割合 は前面 10に 対 し側面 7。 0、 後面
0。7 であ った。 ウエス トゴムによる拘束が強 くなることによって着 くずれが小 さ くなった。しか し、
被験者 自身 か ら「 きつ い」 とい う反応 があ り、 21%の 伸 び率 での強い拘束 で はウエ ス トが きっ いだけでな く、明 らかに上肢 の上挙が しに くい様相が観察 された。今後 は拘束性、被服圧 の定 量化 が実験条件 に重要 な課題 であることがわか った。
以上 の結果 にあわせて、観察記録 か らは次 の状況が明 らかになった。すなわち、眸鋸 だ けで
な く、立位か ら椅座位 や座位への移行 において も、後中心の着 くずれが最 も顕著であった。 し
34 大村知子・ 杉山直美・ 大村篤子
14 21 布串 拘束 《 %)
図 3 素材別 にみた ウエス トの拘束
●― ●前中心 右上肢上挙
■…■右脇線
▲
▲後 中心
O一
〇前中心 両上肢上挙□…□右脇線
△
△後中心
7 t4
frt*-mt :y
F,')ffiS &l'HI#riJ.6-E< firEt
表 4 着丈サイズ別・ 動作別にみる部位別 0素 材別にみた Tシ ャツの着 くずれ量・
1(cnl)
前中心 後中心
ニット 布 吊 ニット 布 吊 ニット 布 畠 右脇線 サ イ ズ 姿 勢
‑1サ イ ズ
適合 サイズ
+1サ イ ズ
両上肢上挙 右上肢上挙 両上肢上挙 右上肢上挙 両上肢上挙 右上肢上挙
1.3 2.8 1.7 2.0
0。 3 1.0 1.0 0.5 0.2
3.1 3.9 2.3 3.4 0.4 1.0 1.4 1.0 0.5
0.8
0。 4 0.3
0。 1
0 0 4.0 3.5 1.8
0.8 0.5 0.5
0。 3 0 0.1 4.8 4.0 2.0
3.0 3.0 2.0 1.5 1.4 0 1.0 0.8 0.8
4.2 3.8 2.8 2.8 1.4
0。 4 1.8 1.4 1.2
‑1サ イズ 瞬 開
適合サイズ 瞬 鋸 +1サ イズ 隣 開
・ 1こ こでい う着 くずれとは、上衣の裾部分が下衣のウエス トよりせ り出 した量 とした。
か し、隣鋸 ほど著 しい変化 ではな く、それ らの着 くずれは復元 しやす い傾向を示 し、 また、ず れを解消す るために、座位姿勢 を数分間持続 す る間 に は、下 衣 の ウエ ス トゴムの位 置 が下 方 (被 験者 の腹囲の方 )に ずれ ることによつて対応す ることも観察 された。
ニ ッ トと布 畠の素材別 にみた結果、最大で両上肢上挙 において前 中心 は 1.8cElの 差 が あ り、
布 吊着用時 の方 が着 くずれ量 が大 きか った。 1サ イズ大 きい上衣を着用時 には右上肢上挙 、両 上肢上挙で は両者 にはほとん ど差 が認 め られなか った。瞬躍動作で も両素材 の着 くずれ量 の差
は、極 めて小 さか った。
実験条件 につ いて は、上衣 は 1サ イズ大 きい衣服を着用 させ る傾向がみ られ るとい う報告
2)に基づ いて、被験者 の身長 に適合 したサイズの上衣丈、 1サ イズ大 きい上着丈、 1サ イ ズ小 さ い上衣丈 と したが、丈 の差 に関 して は特定の部位 にのみ差がみ られ る程度であ った。
幅へ のゆ とり量 の違 いの影響 についてや幅 と丈 の両方向にゆ とりを入れた場合 の動作性 へ の 影響 につ いて は、今後検討す る必要があるといえ る。また、本実験 では最 も平面構 成 に近 い T
シャツで、デ ィテール もシンプルな もの としたが、ボタンで前開 きの構造 や袖 を幼児服 によ く
幼児期の動作性 についての着用実験に関す る基礎的研究
み られ るパ フス リー ブなどの構造 に変化 させた場合 の「 着 くずれ」や動作性への影響 も検証 条 件 に加 え る必要 があ ると考え る。さ らに、着用方法 につ いて は、サスペ ンダーなどによ って下 衣 を肩 で吊 ってある場合 とか、上衣 の裾 を外 に出 して着用す る (オ ーバ ー ブラウス )場 合 に腹 が出 ることなど別の着 くずれの発生 や動作性への影響 について検証す る必要が考 え られ る。
2.袖 丈 と上肢の動 きに関する実験
1)目 的
幼児 にサイズの大 きい被服 を着用 させた ときに、袖丈が長 い ことによる不都合 が上 げ られて お り、袖丈が長 い ときは折 り曲げて袖丈を調節 し着用 して いると報告 されて い る
2)。本実験 で は、袖丈 が長 いときの幼児 の挙動 や動作 による袖 回の状態 を観察 し、作業時間を測定 した。袖 丈 の長 さに関わ る実験 を行 うときの袖丈の条件 、着方 (図 5)と 幼児の所作への対応 の可 否 を検 討 した。
2)方 法
被験者 は前章 と同 じ 3歳 児であ る。実験期 日と実験環境 は以下 の通 りであ った。
01992年 11月 6日 天気 曇 り 室温 15℃ 被験者 の自宅 01992年 11月 20日 天気 雨 室温 16℃ 被験者 の 自宅
実験衣 は、図 4に 示 したよ うな構成 の袖 の実験衣を製作 した。実験衣 の袖丈 は被験者 に適 合 す る袖丈、プ ラス 1サ イズ、プ ラス手長 の 3種 類 であった。着用時 にプ ラス手長 の袖 丈 に関 し て は図 5に 示す よ うに 1回 折 る、 2回 折 るなどの着装方法 を設定 した。
実験方法 は、被験者 が 20cal四 方 の正方形 の箱 にあけた条件 の異 なる穴 (1辺 5 cmの 正 方形 、 円周 18cmと 円周 25cmの 円 )か らチ ョコ レー ト
を取 り出す方法 を設定 した。箱 の穴 の大 きさ は、袖 回の大 きさか ら算 出 した。その所 要時 間の測定 と袖 回の着 くずれ状態 につ いて観察 を した。
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