コンポジットレジンの色彩学的研究
-背景色と厚さの違いで得られたTP値標準曲線の情報-
日本大学松戸歯学部保存修復学講座
森 俊幸
(指導:池見 宅司 教授)
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要旨
今日の保存修復治療において、審美的な治療が求められる前歯部のコンポジッ トレジン修復では、色だけでなく質感も周囲歯質と調和していることが望まれる。
最近では、特に前歯部唇側の着色象牙質にコンポジットレジンが用いられる症 例が増加しており、この様な症例では、コンポジットレジンの厚さの違いによる 背景色遮蔽効果を含めた透明性を認識しておく必要がある。しかし、着色象牙質 が存在しても術者の感覚で修復処置が行われているのが現状である。著者はこの 様な感覚的なコンポジットレジンの色や透明性を、色彩学的理論に基づいて把握 する必要があるものと考えた。
コンポジットレジンの様な半透明性を有する材料の色彩学的色や透明性の評価 に関しては、Translucency Parameter (TP値)が採用されている。TP値は色差と 同じ式で得られるために、透明性だけでなく色の違いを表すことも可能と考えら れる。
そこで、本研究では、L*値を変化させた5種類の背景色を用い、これらの背景 色の上に市販コンポジットレジンを配置して接触式ハンディ型分光色差計で測色 し、TP値を算出した。そして、背景色の色差と2種類の市販コンポジットレジン のTP値の変化について調べ、得られたTP値標準曲線から背景色知覚色差領域を 求め、それぞれのコンポジットレジンの色と質感の再現性について調べることを 目的として実験を行った。
その結果、以下の結論を得た。
結論
1. コンポジットレジン試料が厚くなるに従って、TP値は減少した。
2. おのおののコンポジットレジン試料のTP値標準曲線から指数近似式が得ら れ、コンポジットレジンと基準白色背景とのΔE*abの関係を得ることができた。
3. 同じシェードを有する市販コンポジットレジンであっても、背景色知覚色差 領域の異なることが示された。
4. TP値標準曲線の指数近似式が得られれば、コンポジットレジン修復の術前に オペークレジンの必要性に関する情報が得られることの可能性が示された。
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緒言
今日の保存修復治療では、コンポジットレジンを用いた修復治療が主として行 われている。最近では、高齢者の修復治療が増加しており、歯肉退縮が原因で歯 根露出した唇側歯頸部や前歯部補綴物辺縁の着色を気にして来院する症例が多く なってきた。その様な症例では象牙質の深部まで黒褐色に着色しており、罹患歯 質あるいは表層の着色象牙質を除去しても、着色が窩底部象牙質に残存してしま うことが多い。
患者の要望に則して、この様な露出歯根部の審美的修復を行う場合、一般的に はコンポジットレジンが用いられている。しかし、周知のようにコンポジットレ ジンは半透明性1~9)を有しており、歯あるいは補綴物の色にマッチした修復用コ ンポジットレジンを選択しても、窩洞が浅い場合には窩底部の着色象牙質の色が 透過するために、術者の期待した色を得ることが困難な場合もある。この様な症 例では、オペークレジン10~15)で窩底部の着色を遮蔽し、その上にコンポジットレ ジンを填塞するレイヤリング法16~19)が採用される。その際、術者は色の選択がで きても、厚さの違いにともなうコンポジットレジンの背景色遮蔽効果や質感を予 知することはできず、臨床的な経験と感覚でそれらの組合せを決めているのが現 状である。著者はこの様な感覚的なコンポジットレジンの色や透明性を、色彩学 的理論に基づいて把握することができれば、術前にコンポジットレジンの表色を 予測できるのではないかと考えた。
しかし、市販コンポジットレジンに関して、コンポジットレジンの厚さと背景 色の異なるTranslucency Parameter20) (TP値)をもとにした色彩学的検討がなさ れていない。そこで、背景色とコンポジットレジンのTP値との関係が明らかに なれば、臨床におけるコンポジットレジン修復前にオペークレジンの要・不要に ついての予知が可能となるだけでなく、コンポジットレジンを選択する際の基準 として、さらにはコンポジットレジンやオペークレジンの改良・開発に役立つも のと考えられた。
本研究では、L*値を変化させた5種類の背景色を用い、これらの背景色の上に 市販コンポジットレジンを配置して接触式ハンディ型分光色差計で測色し、TP値 を算出した。そして、背景色の色差(ΔE*ab)と2種類の市販コンポジットレジ ンのTP値の変化について調べ、得られたTP値標準曲線から背景色遮蔽範囲を求 め、それぞれのコンポジットレジンの色と質感の再現性について調べることを目 的として実験を行った。
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材料および方法 1. 試料の作製
市販コンポジットレジンはシェードA3のBeautifilⅡ(松風、Lot No. 00182A) とSolare(GC、Lot No. 1202281)を使用した。直径13 mmで穿孔した塩化ビニー ル板の中にコンポジットレジンを充填して、厚さ0.5、1.5、2.5および6.0 mmの コンポジットレジン試料を作製した。なお、厚さ6.0 mmの試料はコンポジット レジン自体の測色用とした。それらの試料はポリエステルフィルムを介した2枚 のガラス板で圧接し、G-Light Prima(GC)を使用して表裏の両面から60秒間光 照射を行った。試料表面は、5μm のインペリアルラッピングフィルム(3M)に て最終研磨を行った(図1)。コンポジットレジンの種類と厚さの異なる試料の略 称は、表1に示した。
2. 背景色
使用した背景色を図2に示す。背景色(カラーランド社製)はL*値を変化させ て作製し、光沢紙に印刷したものを使用した。なお、基準白色背景は分光色差計 の白色校正板を用いた。それぞれのL*値は基準白色背景が97.71、①86.00、②66.34、
③45.06、④22.89、⑤4.67であった。なお、a*値とb*値は全ての背景色において、
-0.72< a <0.01、-1.61< b <2.04の範囲であった。
3. 測色
使用したハンディ型分光色差計(NF999 日本電色)を図3に示す。基準白色 背景と背景①~⑤の上にグリセリンを介してコンポジットレジン試料を設置後、
試料表面に測色器を垂直に接触させて測色し、それぞれのL*a*b*値を得た。測色 設定は45°円周受光、照射面積φ6.0 mm、D65光源、2°視野にて行った。
4. 背景色のΔE*abとコンポジットレジンのTP値
背景色のΔE*abは、基準白色背景(w)と背景①~⑤の測色で得られたL*a*b*
値から下記の公式で算出した。
ΔE*ab=[( L*w-L*①~⑤)2 + ( a*w-a*①~⑤)2 + ( b*w-b*①~⑤)2 ]1/2
TP値は、基準白色背景と背景①~⑤の上に設置したコンポジットレジン試料の 測色で得られたL*a*b*値から下記の公式で算出した。
TP値=[( L*w-L*①~⑤)2 + ( a*w-a*①~⑤)2 + ( b*w-b*①~⑤)2 ]1/2
なお、各コンポジットレジン試料のTP値標準曲線は、基準白色背景と背景①
~⑤の組合せで得られたTP値とした。
5. 基準白色背景と背景①~⑤のΔE*abとコンポジットレジン試料のTP値
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図4a,bに基準白色背景と背景①~⑤のΔE*ab(y軸)と厚さの異なるコンポジ ットレジン試料のTP値(x軸)から得られたTP値標準曲線を示す。おのおのの 試料のTP値標準曲線の近似式は指数関数で表され、その指数近似式のy=aebx か ら定数aとbの値を求めた。
6. TP値標準曲線から得られる情報の検討
図5a~cには、BEの厚さの違いによる基準白色背景とコンポジットレジン自体
とのΔE*ab(45.08)をy軸(-・-)に、そのΔE*abとTP値標準曲線との交点
および知覚色差を±1.5としたTP値の範囲(TP値知覚色差領域)をx軸( ) に、そしてTP値知覚色差領域に対する背景色知覚色差領域をy軸( )に示 し、さらに、仮定したエナメル質および着色象牙質と基準白色背景とのΔE*ab(エ ナメル質:33.46、着色象牙質:70.30)をy軸( )に示した(E-D背景色範囲)。
図5dには、SO2.5で得られたTP値標準曲線ならびに前述のBEと同様の領域
を示した。
7. 背景色知覚色差領域とE-D背景色範囲の検証
図6に背景①、⑤と背景②、③、④を並置した写真を示す。図7には上部に6.0 mmのコンポジットレジン試料を配置し、背景上面にグリセリンを介してコンポ ジットレジン試料を設置後、写真撮影を行い、背景色遮蔽性について背景色知覚 色差領域とE-D背景色範囲の検証を行った際の写真を示す。
結果
1. コンポジットレジン試料が厚くなるに従ってTP値は減少し、本実験で使用し たコンポジットレジンはその減少挙動がほとんど同様の傾向を示した(図4)。 2. おのおののコンポジットレジン試料のTP値標準曲線から指数近似式が得ら れ、コンポジットレジンと基準白色背景とのΔE*abの関係を得ることができた。
指数近似式を以下に示す。
BE0.5 : y=7.4196e0.0484x BE1.5 : y=4.9552e0.1282x BE2.5 : y=3.8468e0.3357x SO0.5 : y=7.1248e0.0488x SO1.5 : y=4.5561e0.1287x SO2.5 : y=4.4099e0.3192x
本実験で得られたTP値の検量線に相当するTP値標準曲線の指数近似式は、全
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ての試料において決定係数がR2>0.980となり、良好な相関が得られた(図4)。 3. 同じシェードを有する市販コンポジットレジンであっても、背景色知覚色差 領域の異なることが示された。
得られた基準白色背景と市販コンポジットレジン自体とのΔE*abおよび厚さ の異なるコンポジットレジンのTP値を以下に示した。
ΔE*ab
BE:45.08、SO:41.90 TP値
BE0.5:37.3(図5a)、SO0.5:36.3、 BE1.5:17.2(図5b)、SO1.5:17.2、
BE2.5:7.30(図5c)、SO2.5:7.10(図5d)
なお、SO0.5とSO1.5に関しては、BEの標準曲線と同様の増減挙動を示したの
で、SO2.5を図5dに示した。
知覚色差を3として、基準白色背景とコンポジットレジン自体のΔE*abから得 られたTP値に1.5を加えた値を上限とし、1.5を減じた値を下限として指数近似 式に代入して算出された背景色知覚色差領域は、コンポジットレジンが厚くなる ほど拡大し、SOよりもBEの方が広いことが示された。
4. TP値標準曲線から求められる背景色知覚色差領域とE-D背景色範囲
図5に示す背景色知覚色差領域とE-D背景色範囲から、BEとSOの0.5、1.5 では、背景色知覚色差領域がE-D背景色範囲内に存在していた。
一方、BE2.5では、背景色知覚色差領域がE-D背景色範囲よりも大きくなるこ とが示され、背景②③④も背景色知覚色差領域の範囲内に存在していた。しかし、
SO2.5では黒色傾向の着色象牙質色が背景色知覚色差領域の範囲を軽度に逸脱し
ており、背景②③は背景色知覚色差領域の範囲内に存在していたが、④はその領 域から逸脱していた。
5. 背景色知覚色差領域とE-D背景色範囲の検証
TP値標準曲線から得られた情報の妥当性について検討するために、背景①~⑤ を用いて(図6)目視による背景色の識別の可否を調べた。検証写真(図7)から、
BEとSOの0.5、1.5では、背景①、⑤と背景②、③、④において、背景色を識別 することができた。しかし、BE2.5では背景①、⑤の背景色を識別することがで きたが、背景②、③、④では背景色の識別は困難であった。そして、SO2.5では 背景①、⑤の背景色を識別することができたが、背景②と③は識別が困難で、④
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では軽度に背景色の影響が観察された。これらの検証結果はTP値標準曲線から 得られた背景色知覚色差領域とE-D背景色範囲の結果と同じであることが示され た。
考察
審美的修復治療が求められる今日のコンポジットレジン修復で、最終的に患者 の満足を得るためには、周囲歯質と色や質感がマッチしていることが重要である。
最近では、上顎前歯部歯頸部の齲蝕治療や補綴修復された前装冠の唇側根面の 補修修復を望んで来院する症例が増加しており、この様な症例では、術者の経験 と感覚に基づいてコンポジットレジン修復を施すことが多く、時として術者の期 待した色や質感とは異なる場合がある。その理由は、コンポジットレジンは半透 明性を有しているために、窩底部に着色した象牙質が存在している症例では、着 色象牙質の色が反映してしまうことが原因である。
コンポジットレジンの透明感と背景色遮蔽効果は表裏一体の関係であり、それ らの効果はコンポジットレジンの厚さによっても異なってくる。そのために、着 色象牙質が存在する場合には、背景色を遮蔽するオペークレジンとコンポジット レジンとのレイヤリングで修復治療が施されることが多い。しかし、レイヤリン グを想定したオペークレジンの背景色遮蔽効果について、TP値を採用した報告は 認められるが21.22)、コンポジットレジンの厚さがどの程度であれば、背景色を遮 蔽できるか否かあるいはレイヤリングが必要であるか否かについての論理的な検 討はなされていない。
今日の色彩学では、色や透明性を数値で表現できる方法が確立している。その 数値的な表現方法を用いて、市販コンポジットレジンを色彩学的に検討すること で、従来では経験や感覚に頼っていた治療方針を、論理性をもった治療に変える ことができるものと考えられる。透明性あるいは背景色遮蔽効果の指標とされて いるTP値に関しては、コンポジットレジンの様な半透明性材料の透明感で得ら れる質感だけでなく、色差と同じ公式で求められることから、周囲歯質との色の 相似性も同時に値として得られる利点を有していると考えられる。したがって、
TP値を利用することで、必要最小限の背景色遮蔽効果を有するオペークレジンや コンポジットレジンの開発・改良に有意義な示唆を与えてくれるものと思われる。
しかし、これまでのTP値は、L*値が0に近似した黒色背景と100に近似した 白色背景で得られたL*a*b*値の色差で表現されており20)、試験体試料の透明性や
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遮蔽効果の比較は可能であったが21~24)、コンポジットレジンによる着色象牙質の 背景色遮蔽範囲を想定することができなかった。それに対して、関根はL*値の異 なった背景色とオペークレジンのTP値との関係を報告しており、基準化した白 色背景を用いてTP値標準曲線が得られると、3点測色法で背景色遮蔽に必要な TP値を計算で予測できるとしている19)。
そこで、著者は、背景色のΔE*abとコンポジットレジンの厚さの違いによる TP値標準曲線を求め、それをもとにして、背景色遮蔽範囲を想定できる可能性に ついて調べることを目的として本実験を行った。
今回使用した市販コンポジットレジンの厚さの違いによるTP値標準曲線から
(図4)、BEとSOの両方とも厚さが厚くなる程、TP値標準曲線は左方に移動し て背景色遮蔽効果が高くなることが示された。そして、おのおののTP値標準曲 線において、背景色のΔE*abとTP値の関係は、y=aebxの指数近似式で表され、
決定係数は全試料において0.980以上の良好な相関を示した。したがって、得ら れたTP値標準曲線の指数近似式により、基準白色背景とコンポジットレジン自 体のΔE*abおよび遮蔽できる背景色の範囲はy軸に相当する部分から、コンポジ ットレジンのTP値はx軸に相当する部分から予測できるものと考えられた。
知覚色差に関して、半透明性材料では3程度と報告されており25~31)、色差は
L*a*b*色空間の三次元座標における2点間の差のベクトルであることから、本実
験ではコンポジットレジン自体のTP値の±1.5とすることで、その範囲の背景色 では色の違いが感知できないものと仮定して検討した(図5)。その結果、背景色 知覚色差領域はコンポジットレジンの厚さが厚くなる程拡大し、SOよりもBEの 方が広いことが示された。このことは、SOの方がBEよりも透明性が高く、着色 の無い健全象牙質が存在する症例のコンポジットレジン修復では、SOの方が周囲 歯質の色と調和しやすいものと考えられた。
次に、コンポジットレジン修復の臨床において、着色象牙質が存在する場合に、
コンポジットレジンとオペークレジンとのレイヤリングが必要であるか否かにつ いて論理的かつ事前に予測する方法を、前述の3点測色法に基づいて検討した。
その条件として、窩洞周囲のエナメル質および着色象牙質が測色されたと仮定し、
窩洞の深さ0.5、1.5、2.5 mmとした際のコンポジットレジンの表色に影響を与え る着色象牙質の色についてTP値標準曲線をもとにして調べた。
その結果、BEとSOの0.5、1.5では、背景色知覚色差領域が、E-D背景色範囲 内に存在していることが示された(図5a,b)。このことは、BEとSOの0.5 mmあ
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るいは1.5 mmの厚さでは、着色象牙質の色を遮蔽することができないと考えら
れた。したがって、コンポジットレジン自体の色とは異なった色となり、窩洞の 深さの配慮あるいはオペークレジンとのレイヤリングの必要性が予測された。
一方、BE2.5では、背景色知覚色差領域がE-D背景色範囲よりも大きくなるこ とが示された。このことは、エナメル質と着色象牙質の色が知覚色差の範囲内に 含まれていることを示しており、コンポジットレジンは着色象牙質の色を遮蔽し てエナメル質に近似した色で表色されるものと考えられた。さらに、本実験で用 いた背景②③④が背景色知覚色差領域内に存在していた(図5c)。しかし、SO2.5 では黒色傾向の着色象牙質色が背景色知覚色差領域の範囲を軽度に逸脱していた。
そして、本実験で用いた背景②③は背景色知覚色差領域内に存在していたが、④ はその領域外であった(図5d)。
これらのTP値標準曲線から得られた情報の妥当性を検討するために、おのお のの背景(図6)の上にコンポジットレジン試料を設置し、6.0 mmのコンポジッ トレジンとともに配置して目視にて検証した。その結果、BEとSOの0.5、1.5で は、背景①、⑤と背景②、③、④において、背景色を識別することができた。し
かし、BE2.5では背景①、⑤の背景色を識別することができたが、背景②、③、
④では背景色の識別は困難であった。そして、SO2.5では背景①、⑤の背景色を 識別することができたが、背景②と③は識別が困難で、④では軽度に背景色の影 響が観察された(図7)。これらのことは、それぞれのTP値標準曲線から得られ た情報と同じ結果を示しており、TP値標準曲線はコンポジットレジン修復の臨床 に応用できることが示唆された。
したがって、TP値標準曲線が得られれば、背景色知覚色差領域がE-D背景色 範囲よりも大きい場合には、着色象牙質の色を遮蔽してエナメル質と着色象牙質 の識別が困難な程度にエナメル質に近似した色が得られるものと考えられた。本 実験で仮定した窩洞周囲エナメル質色と着色象牙質の色で、2.5 mmの窩洞の深さ であれば、BEはL*値が23~66程度の着色象牙質を遮蔽でき、周囲エナメル質と 近似した色のコンポジットレジン修復ができることが示された。一方、SOでは軽 度にE-D背景色範囲が背景色知覚色差領域を逸脱しており、窩洞の深さやオペー クレジンの考慮が望ましいことが示された。
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結論
1. コンポジットレジン試料が厚くなるに従って、TP値は減少した。
2. おのおののコンポジットレジン試料のTP値標準曲線から指数近似式が得ら れ、コンポジットレジンと基準白色背景とのΔE*abの関係を得ることができた。
3. 同じシェードを有する市販コンポジットレジンであっても、背景色知覚色差 領域の異なることが示された。
4. TP値標準曲線の指数近似式が得られれば、コンポジットレジン修復の術前に オペークレジンの必要性に関する情報が得られることの可能性が示された。
以上のことから、市販コンポジットレジンのTP値標準曲線が得られれば、コ ンポジットレジン修復の前に、基準白色背景とエナメル質、着色象牙質の3点測 色法ならびに窩洞の深さの情報で、オペークレジンの要・不要が予測できるもの と考えられ、臨床に応用できる可能性だけでなくコンポジットレジンやオペーク レジンの改良・開発に役立つものと思われた。
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Scientific Study of the Color of Composite Resins
- Information of Standard Curve of TPValuesObtained from Different Background Colors and Thicknesses -
Abstract
In contemporary treatments in operative dentistry, restoration using composite resin performed in the anterior region, where aesthetic treatment is expected, require that not only the shade but also the texture of the restoration be matched to those of the adjacent teeth. In recent years, an increasing number of cases in which composite resin is used as a restorative material for the labial side discolored dentin of the anterior teeth. In these cases, the transparency of composite resin should be recognized, including its masking effects on the background color in accordance with the difference in thickness of the composite resin. However, clinicians perform restorative procedures based on their individual perception even when discolored dentin is present. The author considered that the shade and transparency of composite resins currently evaluated intuitively should be assessed based on a scientific theory of color.
Translucency parameters (TP values) are used to scientifically evaluate the color shades and transparency of materials as composite resins, which have translucent
characteristics. Since TP values are calculated by the same formula as the one used for obtaining color difference, it is likely that TP values can also indicate not only
transparency but also color difference.
Thus, in the present study, we prepared five background colors with varying L*
values and commercial composite resins were placed on the respective background colors.
Then, the colors were measured with a portable contact spectrophotometer and TP values were calculated. Subsequently, color differences between the background colors and changes in TP values of two kinds of commercial composite resins were examined to obtain standard curves of TP values, from which perceivable color difference area of background color were obtained. Then, experiments were conducted in order to evaluate the restorability of color and texture achieved by each composite resin.
As a result, the following conclusions were obtained:
1. TP values decreased as the thickness of the composite resin sample was increased.
2. Exponential approximation formula of the standard curve of TP values calculated from each composite resin sample were obtained, and the correlation of color difference
between the composite resins and the based white background was obtained.
3. It was implicated that commercial composite resins of the same shade exhibit different perceivable color difference area of background color.
4. It was demonstrated that it may be possible to obtain the information of necessity for layering opaque resin before composite resin restoration, from exponential function formula of the standard curve of TP values.
表 表 表
表 1 市販コンポジットレジンと略称 市販コンポジットレジンと略称 市販コンポジットレジンと略称 市販コンポジットレジンと略称
Beautifil Ⅱ BE
(松風 ) BE0.5 0.5 mm BE1.5 1.5 mm BE2.5 2.5 mm
Solare SO
( GC ) SO0.5 0.5 mm SO1.5 1.5 mm SO2.5 2.5 mm コンポジット
レジン 略 称 厚 さ
BE
SO
図 図 図
図 1 使用した市販コンポジットレジン 使用した市販コンポジットレジン 使用した市販コンポジットレジン 使用した市販コンポジットレジン
0.5mm 1.5mm 2.5mm 6.0mm
厚さ厚さ 厚さ厚さ
図 図
図 図 2 基準白色背景と本実験で使用した背景 基準白色背景と本実験で使用した背景 基準白色背景と本実験で使用した背景 基準白色背景と本実験で使用した背景
基準白色背景 基準白色背景 基準白色背景 基準白色背景
(白色校正板)
(白色校正板)
(白色校正板)
(白色校正板) ①①①① ②②②②
③
③
③
③ ④④④④ ⑤⑤⑤⑤
∆E
****ab:11.73 ∆E
****ab:31.41
∆E
****ab:52.65 ∆E
****ab: 74.85 ∆E
****ab:93.07
図 図 図
図 3 ハンディ型分光色差計( ハンディ型分光色差計( ハンディ型分光色差計( ハンディ型分光色差計( NF999 日本電色) 日本電色) 日本電色) 日本電色)
図 図 図
図 4a BE の厚さの異なる試料から得られた の厚さの異なる試料から得られた の厚さの異なる試料から得られた の厚さの異なる試料から得られた TP 値標準曲線 値標準曲線 値標準曲線 値標準曲線
①
①
①
①~⑤:背景 ~⑤:背景 ~⑤:背景 ~⑤:背景
y = 7.4196e
0.0484xR² = 0.99066 y = 4.9552e
0.1282xR² = 0.99263 y = 3.8468e
0.3357xR² = 0.98056
0 20 40 60 80 100
0 10 20 30 40 50 60
BE 0.5 BE 1.5 BE 2.5
②
③
④
⑤
TP 値 値 値 値
∆E*ab
①
図 図 図
図 4b SO の厚さの異なる試料から得られた の厚さの異なる試料から得られた の厚さの異なる試料から得られた の厚さの異なる試料から得られた TP 値標準曲線 値標準曲線 値標準曲線 値標準曲線
①
①
①
①~⑤: ~⑤: ~⑤: ~⑤:背景 背景 背景 背景
y = 7.1248e
0.0488xR² = 0.98583 y = 4.4099e
0.3192xR² = 0.982
y = 4.5561e
0.1287xR² = 0.99382
0 20 40 60 80 100
0 10 20 30 40 50 60
SO 0.5 SO 2.5 SO 1.5
①
③
④
⑤
TP 値 値 値 値
∆E*ab
②
0 20 40 60 80 100
0 10 20 30 40 50 60
図 図 図
図 5a BE0.5 の の の の TP 値標準曲線から得られ 値標準曲線から得られ 値標準曲線から得られ 値標準曲線から得られた た た情報 た 情報 情報 情報
ー・ー
コンポジットレジン自体のコンポジットレジン自体のコンポジットレジン自体のコンポジットレジン自体のTP
値と値と値と値と∆E*ab TP
値値値値知覚知覚知覚知覚色差色差色差領域色差領域領域領域背景色知覚色差領域 背景色知覚色差領域背景色知覚色差領域 背景色知覚色差領域
E-D
背景色範囲背景色範囲背景色範囲背景色範囲TP 値 値 値 値
∆E*ab
0 20 40 60 80 100
0 10 20 30 40 50 60
TP 値 値 値 値
∆E*ab
図 図 図
図 5b BE1.5 の の の の TP 値標準曲線から得られた情報 値標準曲線から得られた情報 値標準曲線から得られた情報 値標準曲線から得られた情報
ー・ー
コンポジットレジン自体のコンポジットレジン自体のコンポジットレジン自体のコンポジットレジン自体のTPTPTP値とTP値と値と値と∆E*abTP
値値値値知覚知覚知覚知覚色差色差色差領域色差領域領域領域背 背 背
背景色知覚色差領域景色知覚色差領域景色知覚色差領域景色知覚色差領域
E-D
背景色範囲背景色範囲背景色範囲背景色範囲0 20 40 60 80 100
0 10 20 30 40 50 60
TP 値 値 値 値
∆E*ab
図 図 図
図 5c BE2.5 の の の の TP 値標準曲線から得られた情報 値標準曲線から得られた情報 値標準曲線から得られた情報 値標準曲線から得られた情報
ー・ー
コンポジットレジン自体のコンポジットレジン自体のコンポジットレジン自体のコンポジットレジン自体のTPTPTP値とTP値と値と値と∆E*abTP
値値値値知覚知覚知覚知覚色差色差色差領域色差領域領域領域背 背 背
背景色知覚色差領域景色知覚色差領域景色知覚色差領域景色知覚色差領域
E-D
背景色範囲背景色範囲背景色範囲背景色範囲0 20 40 60 80 100
0 10 20 30 40 50 60
TP 値 値 値 値
∆E*ab
図 図 図
図 5d SO2.5 の の の の TP 値標準曲線から得られた情報 値標準曲線から得られた情報 値標準曲線から得られた情報 値標準曲線から得られた情報
ー・ー
コンポジットレジン自体のコンポジットレジン自体のコンポジットレジン自体のコンポジットレジン自体のTPTPTP値とTP値と値と値と∆E*abTP
値値値値知覚知覚知覚知覚色差色差色差領域色差領域領域領域背 背 背
背景色知覚色差領域景色知覚色差領域景色知覚色差領域景色知覚色差領域
E-D
背景色範囲背景色範囲背景色範囲背景色範囲① ①
① ① ⑤ ⑤ ⑤ ⑤ ② ② ② ② ③ ③ ③ ③ ④ ④ ④ ④
図 図 図
図 6 検証に使用した背景 検証に使用した背景 検証に使用した背景 検証に使用した背景
背景 背景背景
背景 ①①①① ⑤⑤⑤⑤ 背景背景 ②背景背景 ②②② ③③③ ④③ ④④④
BE
0.5 1.5 2.5 0.5 1.5 2.5
SO
背景背景背景背景①⑤①⑤①⑤①⑤背景背景背景背景②③④②③④②③④②③④