キーワード:限局性学習症(LD)、読み困難、ディスレクシア、アセスメント、通級
1.問題と目的
平成
19
年に特別支援教育の本格的な実施が開 始されてから、10
年が経過した。LD
については、平成
18
年度末に新たに通級による指導の対象に 加えられ、以降、公立の小・中学校の通級で指導 を受ける児童生徒数は、増加の一途をたどってい る。平成29
年度にはその数16,500
名を超えてお り、平成18
年度と比較すると10
倍以上増加して いる(文部科学省, 2018
)。一口に
LD
と言っても、そのつまずきの特徴は 子どもによってさまざまである。小池(2016
)は、多くの
LD
にみられる読み書きの困難は、音韻、視覚認知、聴覚認知、記憶といった認知機能の弱 さや、論理的思考力の弱さ、語彙の不足といった スキルの未発達など、さまざまな要因によって引 き起こされていると述べている。よって、
LD
等 により学習につまずきをもつ子どもの指導を行う 上では、子どもの特徴をよく理解し、子どもに応 じた指導方法を探っていく必要がある。文部科学省(
2018
)の調査によると、通級の指 導時間については、大部分の子どもが週2
単位 時間以下(週1
単位時間が53%
、週2
単位時間が33%
)である。通級の指導担当教員については、少ない指導時間の中で、子どもの状態を的確に把 握し、最適な指導方法を考え、実践する、といっ
たスキルが求められる。しかしながら、通級の教 員の多くが、経験の浅い者や特別支援学校教諭免 許状を保有していない者である自治体が少なくは ないため、教員の指導力を充実させるための体制 整備が課題となっている(文部科学省
, 2017
)。ま た、ここ数年の間で、LD
に対する社会的な理解 は急速に進んでおり、学習につまずきをもつ子ど もの個別指導へのニーズは、今後更に高まると予 想される。そのような中、いかにして、支援を必 要とする多くの子どもに対して速やかに適切な指 導を提供するか、ということは重要な課題である。こういった現状を踏まえ、筆者らは、学習の基 礎スキルである読み書きについて、周囲の大人が 子どものつまずきに気づいた段階で、読み書きの 状態を包括的に捉え、その結果を即指導に繋げる ことができる一連のプログラムを作成中である。
本研究では、まず、筆者らが試行的に作成し た、学校の教員でも簡便に実施でき、子どもの読 みの状態を包括的・体系的に把握することができ るアセスメントツール「原因チェックテスト」(林
, 2018
)を、読みにつまずきのある児童と通常の学 級の児童に実施し、その結果の比較から、課題内 容についての検証を行った。次に、読みの「原因 チェックテスト」の結果に基づいて個別指導を行 い、その効果を検証した。最後に、これらアセス メントテストと指導を行った小学校の個別指導員【論文】
読みに困難のある児童に対するアセスメントから指導まで
――読みの「原因チェックテスト」の開発に向けた予備的調査――
林 真 理 佳
Marika Hayashi:明星大学発達支援研究センター
に聞き取り調査を行い、このプログラムが学校現 場で活用されうるかどうか検討した。
2.読みの「原因チェックテスト」の検証
2.1 方法
(1)課題の構成
読みの「原因チェックテスト」は、小貫(
2010
)(小貫ら
, 2011
;小笠原ら, 2018
改変)が提案する「読みの指導モデル」(図
1.
)に基づいて構成され ている。このモデルでは、読みの活動を【文字の 読み】、【単語の理解】、【文の理解】、【文章の理解】という
4
つの階層に分け、各階層の読みのプロセ スを、指導の際に必要な要素(「指導要素」)とい う観点で整理している。本アセスメントでは、4
つの階層にある「指導要素」を評価し、子どもの 読み困難の原因がどの階層のどのプロセスにある のか、そして、指導が必要とされる要素はどれな のか、を確認することを目的にしている。今回実施した読みの「原因チェックテスト」の 課題を表
1.
に示した。各課題内容については、林(
2019
)で報告している。(2)対象
通常の学級に在籍し、個別指導を受けている 児童(以下、RR 児童):東京都
A
市の公立小学校12
校の通常の学級に在籍し、取り出しの個別指 導を受けている児童のうち、読みのつまずきを主 訴としている2
年生4
名、3
年生6
名、4
年生9
名、5
年生10
名、6
年生2
名の計31
名。取り出しの個 別指導はA
市の公立小学校全校で実施されてお り、教員免許のある指導員が、学習に困難を示す 児童に対して学習支援を行っている。取り出しの 個別指導を利用する児童は、LD
等の発達障害と 診断されているわけではなく、学習のつまずきの 状態は様々である。通常の学級に在籍し、個別指導を受けていない 児童(以下、通常学級児童):東京都A市立B小 学校の通常の学級に在籍し、取り出しの個別指導 を受けていない
2
年生34
名、3
年生38
名、4
年生33
名、5
年 生38
名、6
年 生32
名 の 計175
名。 調 査の開始が1
学期の5
月であり、小学1
年生はひ らがな文字やカタカナ文字を指導する時期であっ たことから、小学2
年生以上を対象とした。(3)手続き
RR 児童:課題の実施時期は、
2016
年5
月~7
図 1.読みの指導モデル(小貫, 2010;小貫ら, 2011;小笠原ら, 2018 改変)
表 1.読みの「原因チェックテスト」実施課題と対象児童
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月。取り出しの個別指導の時間(
1
回45
分)を使い、指導員が個別に実施した。制限時間を設けなかっ たため、実施にかかる時間は児童により異なって いた。
1
回の指導時間内に全課題が終了しなかっ た場合は、翌週の指導時間に続きから実施した。各課題の教示文は指導員が読み上げ、教示が理解 できない児童には、指導員がわかりやすく説明し てもよいこととした。
通常学級児童:課題の実施時期は、
2016
年10
月。通常の授業時間(45
分)内に、クラスごとに 担任教諭が一斉に実施した。27
の課題のうち、一斉実施ができない課題、及び
RR
児童全員が正 答した課題は除外した。授業時間内に全児童が課 題を完遂できるよう、各クラスの児童を2
群(A 群・B群)に分け、それぞれに課題を振り分けた(表
1.
)。設問を口頭で提示する必要がある課題は、テスト開始冒頭に、担任教諭が教示文と設問を読 み上げる形式で、A群・B群共に実施した。その 後、各児童がそれぞれのペースで残りの課題に取 り組んだ。教示文は児童が自分で読み、教示が理 解できない場合は、挙手をして、担任教諭に個別 で説明を受けてもよいこととした。
(4)課題の採点と分析
各課題は、設問ごとに正誤を判定し、全問正答 であれば「通過」、
1
問でも誤りがあれば「不通過」とした。
RR
児童の採点は、課題を実施した指導 員が行った後、筆者が再度確認、修正をした。通 常学級児童の採点は、筆者が行った。読みの「原因チェックテスト」の課題構成や問 題内容を検討するため、
RR
児童と通常学級児童 の各群について、設問ごとの誤答率、課題ごとの 不通過率を算出した。また、両群の不通過率に差 があるか検討するため、Fisher
の正確確率検定(両側)を行った。統計的解析には、
IBM SPSS Statistics 24
を用いた。2.2 結果
(1)通常学級児童の誤答率
通常学級児童で誤答が多かった設問について検 証するため、通常学級児童の誤答率が
20%
以上の設問を抽出したところ、
2
年生では全77
問中19
問、3
・4
年生では全86
問中11
問、5
年生では 全86
問中4
問、6
年生では全86
問中6
問あった。また、全学年通じての誤答率が
20%
以上の設問 は、6
問であった。(2)RR 児童と通常学級児童の不通過率の比較
RR
児童と通常学級児童の課題ごとの不通過率 を比較するため、両群ともに実施した21
課題に ついて、Fisher
の正確確率検定を行った。その結 果、10
課題で有意差が認められた。各課題にお けるRR
児童と通常学級児童の不通過人数、不通 過率、及び検定結果を表2.
に示す。以下に、階 層ごとに結果をまとめる。【文字の読み】階層では、比較を行った
5
課題 の不通過率に有意差はみられなかった。【単語の理解】階層では、
7
課題中4
課題におい て、通常学級児童よりもRR
児童の不通過率が有 意に高いことが示された(「言葉選び(特殊音節)」「違いの判断(漢字)」(
ps
<.01
)、「言葉区切り①(ひらがな)」「絵と語のマッチング(特殊音節)」(
ps
<
.05
))。【文の理解】階層では、
7
課題中4
課題において、通常学級児童よりも
RR
児童の不通過率が有意に 高いことが示された(「助詞選び」「時制の判断」「絵 の選択②(目的語)」(ps
<.01
)、「絵の選択③(複 文)」(p
<.05
))。【文章の理解】階層では、比較を行った
2
課題 ともに、通常学級児童よりもRR
児童の不通過率 が有意に高いことが示された(「指示語と語句の 対応」「接続語の選択」(ps
<.01
))。2.3 考察
本研究では、読みの「原因チェックテスト」を、
読みのつまずきを主訴として個別指導を受けてい る児童(
RR
児童)と通常学級児童で実施し、各群 の誤答率、及び不通過率の2群間比較を通じて、各課題の必要性、手続き(教示文、回答方法など)
や問題設定(難易度)の検証を行った。
(1)通常学級児童の誤りの内容パターン 通常学級児童の誤りの内容を見ると、次の
5
パターンに大別された。①回答方法の理解が不十分 なための誤りと思われるもの、②選択問題を実施 し忘れたための誤りと思われるもの、③口頭提示 された文字の発音が不明瞭だったための誤りと思 われるもの、④イラストの解釈に齟齬が生じたた めの誤りと思われるもの、⑤それ以外の誤り。①
~③の誤りについては、主に実施手続き上の問題 であると考えられる。原因チェックテストは、本
来個別に実施することを前提に作成しているが、
今回は、多数のデータを収集するため、通常学級 児童はクラス全体で一斉に実施した。個別実施で は、教示や回答方法の理解が不十分な場合や、問 題を実施し忘れていると思われる場合には、テス ターが説明したり、促したりするようにしたのだ が、一斉実施ではそれができなかったため、これ ら誤りが多く生じてしまったと推測される。しか
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表 2.各課題におけるRR 児童と通常学級児童の不通過人数、不通過率、及びその比較
しながら、今後、個別で実施した場合にも、児童 がより理解しやすいような手続きにすることは必 要であると考える。④⑤の誤りについては、通常 学級児童での発生率(誤答率)が高い場合、各設 問の内容や難易度を中心に検討し直す必要がある と考える。
(2)【文字の読み】階層の課題の検証
形態認識に関する課題は
5
つあり、そのうち「同 じ文字の発見①(清音)」はRR
児童が全員通過し たため、通常学級児童では実施しなかった。残 り4
課題の中に、通常学級児童2
年生において誤 答率が20%
を超えた設問が4
問あった。しかし、その大半は、選択問題を実施し忘れたための誤り と思われ、形態認識のつまずきとしてカウントさ れ得る誤りは少数であると推測される。
4
課題す べてで、RR
児童と通常学級児童の不通過率に有 意差はみられなかったが、両群ともに不通過児童 が数名おり、課題の必要性が窺える。音韻認識に関する課題は、「音の弁別」「音の操 作」の
2
つであり、一斉実施ができない「音の操作」は
RR
児童のみで実施し、70
%を超える児童が不 通過であった。「音の弁別」は、通常学級児童6
年 生において誤答率が20%
を超える設問が2
問あっ た。この課題は、テスターが発声した文字の音を 弁別する課題である。通常の学級では、担任教諭 がクラス全体に向けて発声したため、その誤りが、発声された音の不明瞭さや聞きづらさによって引 き起こされた可能性もあると推察される。しかし ながら、こういった状況は個別実施においても起 こりうると考えられるため、課題の実施方法を見 直す必要があるだろう。
文字-音の対応に関する課題は、ひらがな、カ タカナの清音、濁音・半濁音、拗音の文字の読み の習得を確認する
4
課題であり、RR
児童のみで 実施した。RR
児童の約20
~70
%が不通過であ り、4
課題すべてにおいて高学年でも不通過がみ られたことから、全学年で実施する必要があると 考える。(3)【単語の理解】階層の課題の検証
単語のかたまりの認識(ひらがな・カタカナ)
に関する課題は
2
つあり、うち一斉実施ができな い「単語速読検査」はRR
児童のみで実施した。「単 語速読検査」は稲垣ら(2010
)から引用した課題 であり、RR
児童の70%
以上が不通過であった。「言葉区切り①(ひらがな)」は、
RR
児童の不通 過率が通常学級児童よりも5%
水準で有意に高い ことが示されている。よって、これらは実施が適 当な課題であると考える。音節構造の理解(特殊音節)に関する課題は
2
つあり、どちらもRR
児童の不通過率が通常学級 児童よりも有意に高いことが示されている。よっ て、これらは実施が適当な課題であると考える。語彙(ひらがな・カタカナ)に関する課題は「仲 間探し」の
1
つで、RR
児童と通常学級児童の不 通過率に有意差はみられなかった。この課題は、提示された複数の単語の中から、指定されたカテ ゴリーに属する単語すべてに○をつけるという方 法で実施した。誤答のほとんどは、単語の不足に よる誤りであったため、その要因が、語彙力の弱 さにあるのか、眼球運動の弱さや不注意などにあ るのか、判断することができなかった。この課題 については、出題方法の変更や設問内容の見直し が必要であると考える。
単語のかたまりの認識(漢字)に関する課題は
「言葉区切り②(漢字)」の
1
つで、不通過率はRR
児童と通常学級児童の両群で60%
を超えており、有意差はみられなかった。この課題は、「言葉区 切り①(ひらがな)」(通常学級児童の不通過率
7%
未満)と同様の形式であり、実施手続き上の ミスが多発したとは考えにくい。よって、誤答の 多くは、難易度が高すぎたために生じたものと推 測され、問題設定を再検討する必要があると考え られる。文字-音・意味の対応(漢字)に関する課題は、
「違いの判断」の
1
つであった。RR
児童の不通過 率が通常学級児童よりも1%
水準で有意に高いこ とが示されており、実施が適当な課題であると考 える。語彙(漢字)に関する課題は、「仲間集め」の
1
つで、通常学級児童3
・4
年生において誤答率20%
以上の設問があった。また、RR
児童と通常 学級児童の不通過率に有意差はみられなかった。この課題は、提示された漢字熟語を
2
つの意味カ テゴリーに分類し、それぞれのカテゴリー名を考 えさせるものであった。誤答の半数以上がカテゴ リー名の細かな誤りであったため、語彙量や語義 の知識を評価できているとは言い難かった。よっ て、この課題ついては、出題方法の変更が必要で あると考える。(4)【文の理解】階層の課題の検証
意味のかたまりの抽出(単語・文節)に関する 課題は「文節区切り」の
1
つで、通常学級児童2
~
4
年生の誤答率が20%
を超える設問が複数み られた。また、RR
児童と通常学級児童の不通過 率に有意差はみられなかった。この課題は、文 節に線を引かせる(線の数は指定)ものであった が、教示文の中で文節のことを「『、』が入る場所」と示したため、誤解を与えてしまったようであっ た。通常学級児童の誤答の大半は、区切り線が足 りない誤りであり、線が不足している箇所はたい てい読点が打たれないような文節であった。よっ て、通常学級児童の誤答については、教示文の不 適切さが大きな要因であると考えられる。一方で、
RR
児童の誤答は、助詞の前や単語の途中に線を 記入した誤りであり、文節の認識におけるつまず きと推察された。以上のことから、この課題は、教示の仕方を見直した上で実施する必要があると 考える。
助詞の理解に関する課題は「助詞選び」「絵の 選択①(助詞)」の
2
つであった。「助詞選び」は、RR
児童の不通過率が通常学級児童よりも1%
水 準で有意に高いことが示されており、実施が適当 な課題であると考える。一方、「絵の選択①(助詞)」は、設問①の誤答率が通常の学級の全学年を通じ て
40%
を超えており、RR
児童と通常学級児童 の不通過率に有意差はみられなかった。この課題 は、文に合うイラストを選択する形式で行ったの だが、設問①はどちらのイラストを選んでも文 意に沿わないとは言い難く、設問内容が不適切で あったと言える。しかし、それ以外の設問②③では、
RR
児童と通常学級児童ともに数名ずつ誤答 が生じており、それらは助詞の理解が不十分であ るための誤りであると考えられる。以上のことか ら、この課題は、設問の内容を見直した上で実施 することが必要であると考える。時制の理解に関する課題は
1
つで、RR
児童の 不通過率が通常学級児童よりも1%
水準で有意に 高いことが示されており、実施が適当な課題であ ると考える。しかしながら、通常学級児童2
~4
・6
年の誤答率が30%
を超えた設問が1
問あったた め、内容を見直すことは必要であろう。構文理解に関する課題は
2
つあり、どちらもRR
児童の不通過率が通常学級児童よりも有意に 高かった。よって、これらは実施が適当な課題で あると考える。文意の理解に関する課題は「文の真偽判断」
1
つ であった。RR
児童と通常学級児童の不通過児童 の数はそれぞれ1
名、2
名と少なく、不通過率に も有意な差はなかった。また、不通過児童のうち1
名は、答えが○の場合のみ記入し、×の場合の 記入が無かったために誤りとなっていた。よって、この課題については、全面的な見直しが必要であ ると考える。
(5)【文章の理解】階層の課題の検証
指示語の理解に関する課題は
1
つであった。RR
児童の不通過率が通常学級児童よりも1%
水 準で有意に高いことが示されており、実施が適当 な課題であると考える。ただし、通常学級児童で も50%
を超える不通過率であった。誤りの内容 を見ると、2
年生では、RR
児童と通常学級児童 ともに、選択する語句自体を誤ることが多かった が、3
年生以上では、RR
児童にそのような誤り が多くみられた一方、通常学級児童は正答の語句 を含んだ選択範囲の誤りが多かった。よって、問 題設定や問題内容、回答方法を再検討する必要が あると考える。接続語の理解に関する課題は
1
つで、RR
児童 の不通過率が通常学級児童よりも1%
水準で有意 に高いことが示されており、実施が適当であると 考える。ただし、通常学級児童2
年生で、誤答率20%
以上の設問が複数あった、問題設定の見直 しは必要であると考える。3.読みの「原因チェックテスト」の結果に 基づく指導とその効果
3.1 方法
(1)対象
先述の読みの「原因チェックテスト」を実施し た
RR
児童(2
年生4
名、3
年生6
名、4
年生9
名、5
年生9
名、6
年生2
名の計30
名)。なお、読みの「原 因チェックテスト」の全課題が「通過」であった5
年生1
名については、指導の対象から除外した。(2)手続き
指導は、各小学校で行われている取り出しの個 別指導時間の一部(
1
回10
分程度)を使い、指導 員が個別に実施した。各児童の指導要素は、「原 因チェックテスト」の結果に基づいて、指導を担 当する各指導員及び筆者が選択、決定した。具体 的には、「原因チェックテスト」で「不通過」課題 が1
つ以上ある指導要素の中から、不通過課題の 数や課題中の誤答の数がより多いもの、より下の 階層にあるものを選んだ。指導要素は、児童1
名 につき最大3
つまでとした。1
回目の指導では、指導要素ごとに筆者が作成したプリント教材サン プルを使用した。
2
回目以降の指導では、サンプ ル教材の雛形に、各指導員がそれぞれの児童に合 わせて問題を書き込んだ教材を使用した。2016
年9
月~12
月の指導期間中、1
つの指導要素につ き、1
~3
回(児童によって異なる)の指導を実施 した。指導の効果を確認するため、指導終了後(
2016
年12
月)に、指導を行った要素の「原因チェック テスト」を実施した。個別指導の時間の一部(約10
分)を使い、各指導員が個別に行った。課題は、前回調査で実施したものと同じであった。その他 の実施方法は先述の通りである。
3.2 結果
今回の指導を行った指導要素、使用した教 材、及び指導を受けた各児童の指導前後の「原因 チェックテスト」誤答数を表
3.
~6.
に示す。【文字の読み】階層では、音韻認識の指導を行っ た
2
名中1
名、文字-音対応(濁音・半濁音・拗 音)の指導を行った10
名中7
名に、誤答数の減少 がみられた。【単語の理解】階層では、単語のかたまりの認 識(ひらがな・カタカナ)の指導を行った
8
名中6
名、単語のかたまりの認識(漢字)の指導を行っ た4
名中3
名、文字-音・意味の対応(漢字)の指 導を行った5
名中4
名、語彙(漢字)の指導を行っ た2
名に、誤答数や音読に要する時間の減少がみ られた。【文の理解】階層では、単語・文節の認識の指 導を行った
1
名、文法の理解(助詞)の指導を行っ た3
名中2
名、文法の理解(時制)の指導を行った2
名、文法の理解(修飾-被修飾の関係)の指導を 行った5
名中4
名に、誤答数の減少がみられた。【文章の理解】階層では、文法の理解(指示語)
の指導を行った
9
名中8
名、文法の理解(接続語)の指導を行った
2
名に、誤答数の減少がみられた。表 3.【文字の読み】階層の指導を行った児童における指導要素、使用教材、及び指導前後の
「原因チェックテスト」誤答数
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表 4.【単語の理解】階層の指導を行った児童における指導要素、使用教材、及び指導前後の
「原因チェックテスト」誤答数
表 5.【文の理解】階層の指導を行った児童における指導要素、使用教材、及び指導前後の
「原因チェックテスト」誤答数
表 6.【文章の理解】階層の指導を行った児童における指導要素、使用教材、及び指導前後の
「原因チェックテスト」誤答数
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3.3 考察
結果に示したように、個別指導を実施した約
8
割の児童で、指導を行った要素の原因チェックテ ストの誤答数が減少しており、指導の有効性が示 唆された。学習につまずきのある児童にとって、苦手な領 域の学習に取り組むことは大きな負担であるため、
プリント教材作成においては、次のような点を配 慮した。①
1
つの指導要素につき、1
回10
分程度 でできる量にし、短時間で集中して取り組むこと ができるようにした。②指導要素以外の読み・書 き作業を減らすことにより、指導要素の習得に注 力できるようにした。③簡単な問題から、スモー ルステップで無理なく進められるようにした。④プ リント1
枚あたりの問題量を少なくしたり、カラフ ルなイラストを多用したり、ゲーム要素を取り入れ るなどし、前向きに楽しく取り組めるよう工夫した。今回行った個別指導の回数は、
1
つの指導要素に つき1
~3
回と決して多くはなかった。よって、誤 答数の減少に影響した要因として、授業や家庭学 習といった普段の学習における学力向上や、原因 チェックテスト課題の学習効果といったものも否定 できない。これについては、今後、指導効果の検 証方法を見直し、継続的な指導において、より詳 細に効果を検討することが必要であると考える。今回は、
1
つの指導要素に対し、1
セットの教 材で指導を行った。今後は、「原因チェックテスト」での子どものつまずきに関する評価を基に、その 子どもにより適した方法で指導を行えるよう、
1
つの指導要素に対し、複数の方法の教材サンプル を用意する必要があると考える。4.読みの「原因チェックテスト」及び指導 を行った個別指導員への聞きとり調査
4.1 方法
(1)対象
先述の読みの「原因チェックテスト」及び指導 を行った指導員のうち、東京都
A
市内の公立小学校
7
校から各1
~2
名ずつ参加。指導員は、東 京都A
市の公立小学校各校に所属し、学習に困 難を示す児童に対して取り出しの個別指導を行っ ている。なお、全ての指導員は教員免許を有して いる。(2)手続き
2017
年1
月10
日、及び1
月12
日に、東京都A
市の発達・教育支援センターの施設内で実施した。各日で参加者は異なり、初日は
3
校の小学校から 各1
~2
名ずつ、2
日目は4
校の小学校から各1
~
2
名ずつの指導員が参加した。聞き取り調査は、各日の参加指導員複数名、本 研究の実施者
2
名(筆者+1
名)、A
市教育委員会 の職員1
~2
名によるミーティング形式で行った。聞きとった項目は、個別指導の現状、及び今回の 実施に対する所感であり、各項目に対して指導員 が自由に意見を述べた。
4.2 結果
(1)個別指導の現状
指導する領域(読み・書き・算数)については、
児童の保護者や担任教諭の意向に沿って決められ るとのことだった。
アセスメントについては、個別指導を開始する 際には、担任教諭からの申し送り、クラスで受け たテスト、
A
市が配布している行動・学習のチェッ クリスト、自己紹介における児童の様子の観察か ら情報を得ているということであった。具体的な 指導内容を決めるにあたっては、市販の問題集に あるまとめのテストなどを使用し、できないとこ ろや間違いの傾向を探っているとのことだった。まとめのテストは、読み・書き・算数すべてを行 う者もいれば、指導領域を中心に行う者もいた。
認知能力については、市販のビジョントレーニン グを実施しているという意見があった一方、認知 特性を見る検査を実施していたが、指導に活かさ れないためやらなくなった、という意見もあった。
指導内容については、授業内容の補充を中心に 行っている指導員が多かった。その理由として、
担任教諭は授業のフォローを希望している、「授
業がわかる」「テストができる」など、成果が児 童のモチベーションに結びつきやすい、といった ことが挙げられた。指導員達には、児童が習得で きていない基礎学力を向上させる指導も行いたい という思いもあるが、短い指導時間の中で両方行 うことは難しいとのことだった。
(2)今回のアセスメント及び指導の
実施に対する所感 「原因チェックテスト」については、初めて見 る児童のことを知る手がかりとして役立った、す でに指導している児童のつまずきに関して新たな 発見があった、という意見が出た一方、すでに把 握できている児童のつまずきが確認されただけで あった、つまずきの要因が把握できなかった、と いう意見も聞かれた。また、すべてのテストを行 うのに時間がかかるため、児童ごとに実施するテ ストを選択できるとよい、という意見も挙がった。
「原因チェックテスト」の結果から指導要素を 決定するプロセスについては、指導員が選んだ指 導要素以外で、筆者の方で選択した指導要素が役 に立った、という意見が聞かれた。
教材サンプルについては、指導している児童の 状態に対する指導の方法がわかったのでよかっ た、という意見があった。教材作成に関しては、
教材サンプルの雛形に問題を書き込む際、イラス ト部分を描いたり貼ったりする作業が大変だっ た、という意見や、小学校でのコピーは基本的に モノクロなので、カラー教材を作ることができな い、という意見が挙がった。
4.3 考察
指導員が個別指導で日頃行っているアセスメン トについて、個別指導開始時に得ている情報は、
どの指導員も大体共通していた。一方、具体的な 指導内容を決めるために児童に実施する直接的な アセスメントについては、各指導員がそれぞれの 方法で行っており、個人間のばらつきが大きかっ た。また、アセスメントにおいて児童の認知特性 を把握しても、それを指導方法に結びつけられて いない場合もあることがわかった。指導内容につ
いては、現状では、授業内容の補充を中心に行っ ているが、読み書きといった学習の基礎スキルに 関する指導の必要性も感じており、短い指導時間 の中でどう兼ね合いを取るか、という難しさがあ るようだった。
こういった現状に対し、「原因チェックテスト」
は、簡便な手続きで小学生のどの児童にも実施で きるため、指導員の経験や専門性の差に関わらず、
児童の基礎学力を包括的に把握し、その情報を共 有することができるというメリットがある。「原 因チェックテスト」を部分的に使用したいという 意見も挙がったが、今回の実施では、担任教諭や 指導員が見落としていたつまずきが発見された事 例や、指導員が選択しなかった指導要素の指導を 行い効果がみられた事例があったことから、学習 の基礎となる領域(本研究では、読み)の一連の 力を評価し、指導内容に反映させることは必要で あると考える。今後、「原因チェックテスト」に ついて、評価に必要な問題量と実施時間のバラン スを検討すること、指導要素を選択する際の視点 をより明確に示すことが必要であると考える。
教材サンプルの提供については、どの指導員に おいても専門的な視点に基づいた指導方法を取り 入れることができるというメリットがある。しか し、作成に時間がかかってしまったり、コピーす るとモノクロ教材になってしまったりするといっ た問題点も浮かび上がったため、教材サンプルを デジタル化するといったことも視野に入れて検討 する必要があるだろう。
今回の実施では、「原因チェックテスト」でつ まずきがみられた読みの要素に対し、短時間で行 える教材で指導を行った結果、多くの児童で指導 要素の課題の誤答数が減少し、その効果が示唆さ れた。
LD
等により読み書きに困難を抱える子ど もに対して、その時々の授業内容に対処的な指導 を行うだけで学習内容を定着させることは、難し いと考えられる。よって、「原因チェックテスト」で学習の基礎スキルである読み書きに関する一連 の要素について評価を行い、それぞれのつまずき に応じた指導を取り入れるといったことは、読み