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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

短縮版マッカーシー知能発達検査(MST)の検討

著者 清水 益治, 豊田 弘司

雑誌名 奈良教育大学教育研究所紀要

巻 28

ページ 121‑129

発行年 1992‑03‑01

その他のタイトル Analyses of McCarthy short form for rapid screening of Kindergerten children

URL http://hdl.handle.net/10105/6796

(2)

短縮版マッカーシー知能発達検査(MST)の検討^

清水益治 ・豊田弘司‡}

(奈良保育学院)   (心理学教室)

要旨:幼稚園児を対象に、Kaufman(1977)のスクリーニングテストと McCarthy(1978)のそれとの有効性を検討した。研究1ではパズル解き、こ

とばの知識、数の記憶、ことばの流暢さ、数え方・分け方、概念のグルーピン グの6つの下位検査からなるKaufmanのテストについてGCIとの相関を調べ、

研究2では左右の方向、ことばの言己憶、図形の模写、数の記憶、概念のグルー ピング、脚の整合の6つの下位検査からなるMcCarthyのテストについてGCI との相関を調べた。どの年齢でもGCIとの相関はKaufmanのテストの方が高 く、GCIの推定にはKaufmanのテストが有効であることが示唆された。

キーワード:マッカーシー知能発達検査、スクリーニングテスト、推定GCI

 マッカーシー知能発達検査はアメリカのFordham大学の名誉教授であったDorothea McCarthyによって1972年に出版されたMcCarthy Sca1es of Chi1dren s Abi1ities(MSCA)の

日本版であり、1977年に小田・茂木・池川・杉村によって日本文化科学社から出版されている。

この検査は次のような特徴を持ち、特に就学前児・学習障害児、精神発達遅滞児の診断に活用さ れている。

 l1)2%歳から8%歳までの子どもの能力を多面的に測定することができ、その長所と短所を知   ることができる。

 12〕一般的知能指数だけでなく、言語能力、知覚一遂行能力、数量能力、記憶能力及び運動能力   について指数(知能偏差値)を知ることができる。

 (3)運動能力の下位検査を実施する際に、利き手(ラテラリティ)がどのくらい確立しているか   を調べることができる。

 14〕 子ども画 や ことばの流暢さ一などの下位検査の子どもの反応を質的に分析することに   よって、子どもの特徴をとらえることができる。

 15〕年少児でも、楽しみながら飽きることなく、テストが受けられるように工夫してある。

 この検査は18の下位検査からなっており、それらは先に述べた5つの能力を査定することがで きる尺度に割り当てられている。一般知能尺度は言語尺度、知覚一遂行尺度、数量尺度を合成し

‡Ana1yses of McCarthy short form for rapid screening of Kindergerten chi1dren

lasuharu SHIMIZU(Nara Teachers Co11ege of Ear1y Chi1dhood Education)

giroshi TOYOTA(Department of Psycho1ogy,Nara University of Education,Nara)

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たものであり、一般的知能指数(GCI)として表される。このGCIについてMcCarthyは、 凹GCI が不変であると解釈したり、遺伝的要因あるいは環境的要因だけを反映すると考えてはいけない。

それは、これまでに学習したものを統合したり、マッカーシー検査の作用に対してそれを適用す る能力である と述べている(日本版検査手引)。この陳述がMSCAで査定される一般知能であ るといえる。

 さて、このような特徴を持っMSCAも、個別式検査であるが故に、全ての検査を実施してGCI を算出するまでにはかなりの時間を要する。そこでこの検査に含まれている18の下位検査の内、

いずれかに注目して、幼児の持っ能力を捕らえようと著者らは研究を行ってきた(杉村・豊田,

1985;豊田,1987;豊田・澤田,1989;豊田・清水,1990清水ら,1991)。

 例えば・杉村・豊田(1985)は 子ども画 について、合計点と項目ごとに発達的変化・性差 を分析した。その結果、合言十点の平均は4:Oから5:0,5:6から6=0にかけて増加すること、ど の年齢でも男児より女児の得点の方が高いこと、項目ごとに発達的変化の傾向が異なり、変化が あまり顕著でない項目(頭、目、鼻)と顕著な項目(髪、胴、腕と手、腕の取付け)が存在する

ことなどが明らかになった。清水ら(1991)は 図形の模写 と 子ども画 は両方とも知覚一 遂行尺度と運動尺度に属し、収束的思考と細かな運動整合の能力を測定しており、鉛筆を子ども に与えて、見本を見せたり、指示を与えて描画を求める描画検査であるという点で共通している ことや描画検査が一般知能の指標となることがある(例えばGoodenough,1926,Koppitz,

1968)などの点に着目し、  図形の模写 と 子ども画 の合計点とGCIとの関係や2つのテス トの関係を分析した。その結果、合計点とGCIとの相関は、それぞれの検査の単独とGCIとの相 関よりも高いこと、また2つのテストの相関は年齢が増すとともに減少することが明らかになっ

た。

 ところで、このようにMSCAに含まれるいくっかの下位検査のみを実施して、GCIを算出した り、子どもを理解しようとする試みは本検査がつくられたアメリカでは盛んに行われてきた。例 えば、Kaufman(1977)は学習障害児の早期発見の手段として、パズル解き、ことばの知識、

数の記憶、ことばの流暢さ、数え方・分け方、概念のグルーピングからなるマッカーシースクリー ニングテストを考案し、McCarthy自身もスクリーニングテストとしてマッカーシー検査のこと ばの記憶、左右の方向、脚の整合、図形の模写、数の記憶及び概念のグルーピングの6つの下位 検査を使用することを薦めている(McCarthy,1978)。またKaufman&Kaufman(1977)は 著書「マッカーシー検査による知能診断」の中で、Reyno1ds(1977)の研究を紹介し、集団ス クリーニング用として図形の模写と子ども画の2つの描画テストを利用する可能性について述べ ている。本研究では、研究1でKaufmanの、研究2ではMcCarthyのスクリーニングテストを 取り上げる。2つのスクリーニングテストを取り上げた国内の研究は、著者が知る限り、知念・

笹川(1989)しか見あたらない。知念・笹川は、境界線級知能児にこれらのスクリーニングテス

トを実施した際の2つの事例を報告している。その研究では、スクリーニングテストそのものの

有効性については触れていないので、本研究ではマッカーシー知能発達検査の全ての下位検査を

実施した健常の幼児について、2つのスクリーニングテストの一下位検査を分析することで、これ

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らのスクリーニングテストの有効性について検討する。

       研  究  1

 研究1ではKaufman(1977)が考案したマッカーシースクリーニングテストについて検討す る。このテストは次の基準で選ばれた6つの下位検査からなっている。①恥ずかしがりやや、しゃ べらない子どもを徐々にしゃべるように導く。②言語、知覚一遂行、数量、および記憶尺度が釣

り合うように代表されている。③GCIとかなりの相関がある。④多種の精神機能を査定する。⑤ 男児か女児、黒人か白人のいずれにも有利にならない。⑥特に3〜6歳児に役に立つ。⑦比較的 短時間に実施し、採点ができる。選ばれた下位検査はパズル解き、ことばの知識、数の記憶、こ

とばの流暢さ、数え方・分け方、概念のグルーピングであり、これらを実施し、その合計点から 推定GCIを算出しようとする。各下位検査の説明は次の通りである。

 ll〕パズル解き……知覚一遂行尺度と一般知能尺度に属する。子どもたちがよく知っている動物   や果実などの分割した絵を復元させる。視知覚、非言語的推理、視覚一運動整合、空間関係   の発達を調べる。

 (2にとばの知識……言語尺度と一般知能尺度に属する。第1部の「絵ことば」では、カードに   描いてある5つのものを指摘させ、その後で絵に描かれている4つのものの名前を言わせる。

  第2部の「話しことは」では具体的なものから抽象的な概念にわたる10個の単語を定義させ   携言語的概念形成、初期の言語発達、言語表現能力の発達を調べ孔

 (3〕数の記憶一・一数量尺度・一般知能尺度、記憶尺度に属する。第1部では6種類の数系列を順   唱させ、第2部では5種類の数系列を逆唱させる。聴覚的短期記憶、注意力、可逆性の発達   を調べる。

 (4〕ことばの流暢さ……言語尺度と一般知能尺度に属する。4つのカテゴリーに属することばを   20秒間に、素早く、できるだけ多く挙げさせる。言語的概念形成、論理的分類、創造性(拡   散的思考)、言語表現の発達を調べる。

 (5〕数え方・分け方……数量尺度と一般知能尺度に属する。積み木を数えたり、同じ数に分けた   り、端から2番目や4番目の積み木を指ささせる。機械的教え方、数概念、数的推理力の発   連を調べる。

 (6)概念のグルーピング……知覚一遂行尺度と一般低能尺度に属する。形、大きさ、色が異なる   12個の積み木を選択したり、グルーピングしたり、取り除いたりさせる。論理的分類、非言   語的推理・言語的概念形成の発達を調べ乱

       方     法

 調査対象 調査対象は1979年から1990年ま.でに奈良市内のN幼稚園にてマッカーシー知能発達 検査を受検した幼児であり、延べ人数は578名であった。その内訳は表1に示されている。

 実施法と採点法 どの下位検査も日本語版手引きに従って実施、採点した。実施の順序はラン

ダムであった。

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表1 調査対象の年齢別、性別の人数

平均 4:0  4:6  5:0  5:6  6:0  6:6

   3−9−16 4−3−16 4−9−16 5−3−16 5−9−16 6−3−16 範囲  ↓   ↓   ↓   ↓   ↓   ↓

  4−3−I5 4−9−15 5−3−15 5−9−15 6−3−15 6−9−15

男児  39  40  47  46  75  68 女児  ]9  29  42  43  60  70 合計  58  69  89  89  135  138

表2 Kaufmanのスクリーニングテストにおける下位検査ごとの平均得点(標準偏差)

下位検査 4歳半 5 歳     5歳半 6 歳     6歳半

芋旨数{GCI)

パズル解き ことばの知識 数の記憶I 数の記憶u ことばの流暢さ 数え方・分け方 概念のグルーピング

107. (1君.崎)

 4.7(呂.9〕

12.6( 6.5)

 4.4( 1.7)

 0.9( 2.O〕

 9.6( 窒.6)

 5.8( 2.0)

 τ.3(1.9)

l08.6(15.3)

 τ.2〔 2.8)

1室.8{ 2.O)

 5.2(1. )  2.5( 2.9)

11.3( 4.5〕

 τ.O( 2.O〕

 o.3(1.9)

10宮.5{15.7)

7.O( 2.9)

一5.O(2.9)

5.6〔 1. ) 3.6( 3.1〕

12−7{ 4.8)

7,8( 1.5)

S.1( 1,7)

l02.3(14.9)

9.O(2.8)

15.9(雪.6)

6.0( 1.5)

 5.4( 3.1)

14.O( 5.4〕

8.O( 1.4)

9.4(1.8)

…i8.6(17.9)

一〇.4( 2.5)

17.4(3.5〕

6.o( 1.7)

6.2(2.7)

15.4( 5.O〕

8.6( O.9)

10.2( 1.6)

99.6(15.9)

11.3( 里.2)

10.6( 3.6〕

6.τ(1.8)

7.3(2.5)

17.τ(5.3)

8.8(0.6〕

10.8( 1.6)

合計得点 .2(8.2) 55.3(一1.1) 6一.5(lO.6)   58.3(10.1)   τ4.3(】0.6) 81.1( 9.7)

       結 果 と 考 察

 表2は年齢別にGCIと各下位検査、及び合計得点の平均得点と標準偏差を示したものである。

4歳と4歳半では平均がやや100より高いが、そのほかはほぼ平均は100に近い。また4歳では標 準偏差が16よりもやや小さい値であるが、そのほかはほぼ標準偏差は16に近い。

 合計得点の平均をみると、4歳から6歳半にかけてどの年齢の間でも適度に得点が増加してい る。このことは、Kaufmanのスクリーニングテストがこの年齢の子どもの能力を測定するのに 適当な最低条件を満たすことを示している。知念・笹川(1989)はこのような合計点を求めずに、

6つの下位検査の相当テスト年齢を算出して、下位検査間の能力のアンバランスによってスクリー

ニングを試みているが、本来のこのスクリーニングテストの使用法ではこの合計得点が推定GCI

を算出する元になる。

(6)

 表3は、年齢別の各下位検査の素点とGCIとの相関係数、及び合計得点とGCIとの相関係数を 示したものである。どの年齢においても平均してGCIとの相関が高いのは、言葉の流暢さである。

ことばの流暢さは食べ物、動物、からだにっけるもの、乗り物り4つのカテゴリーに属するもの を各20秒間に思い出してできるだけ多く言わせる。これと類似した課題には、鈴木ビネー法(鈴 木、1936)の9歳級の問題に類似の名詞がある。この問題では鳥の名、果物の名、獣の名を30秒 間に思い出してできるだけ多く言わせる。概念の水準(Rosch,1978)を比べると、マッカーシー 検査の方が鈴木ビネー法よりもより包括的な上位概念を求めているが、前者の場合には子どもは どの水準の概念を言及しても得点になる。そのためどちらの課題が困難であるとは言えないであ ろう。豊田・清水(1991)では、ことばの流暢さは子どもの能力だけでなく、子どもの興味や個 性の理解に役立つと述べた。その論文ではGCIとの相関係数は算出していなかったが、本研究で

はそれが高いことが明らかになった。この下位検査は、単独で実施しても、子どもの情報を多く 引き出すことのできる検査であるといえる。

表3 Kaufmanのスクリーニングテストにおける下位検査とGClとの相関係数

ド位検査

{ズル角孕き

ことばの知識 数の■記憶I 数の■記憶口 ことばの流暢さ 数え方・分け一方 概念のグルーピンゲ

4 歳     4歳半 5ミ麦  5歳半  6歳  6歳1{

27      33      49 30      49      50 46      39      53 26      43      55 44      65      48 64       42       89 57      39      34 合計得.1点       82

36      41      39 52      64      58 26      53      44 42      52      42 54      46      54 34      37      20 24      44      23 78      84      83 84       84

 ことばの知識については・4歳では相関が低いものの、徐々に増加する傾向がうかがえる。こ の下位検査は第1部「絵ことば」と第2部「話ことば」に分かれており、その合計得点をこの下 位検査の得点とする。5歳以上の子どもは第2部から実施し・項目1と2がそれぞれO点でない 場合には、第1部を満点とみなす。このように2段階で得点を算出するために、4歳では相関が 低かったのかも知れない。この下位検査と類似した課題には、ウユクスラー式検査の「知識」や

ビネー式検査(鈴木ビネー法や田中ビネー知能検査法:田中教育研究所,1987)の「定義(事物 の定義など)」などがあり、「OOとは何ですか」という質問形式の課題が知能の測定には妥当な 課題の1っであるといえる。

 一方、教え方・分け方については、年齢とともに相関係数は低下する傾向が認められた。この 下位テストの満点は9点であり、表2を見ると、5歳でも平均が8.O、標準偏差が1.4とほとんど 満点に近い。このような天井効果が相関係数を減少させた原因であろう。

 合計得点とGCIの相関はどの年齢においても高く、6つの下位検査を実施するだけでも、GCI

の高低についてかなり正確な情報が得られることを示唆する。本研究では推定GCIを算出するま

でには至らないが、MSCAの全ての下位検査を実施することが困難な場合には、スグリ■ニング

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テストとして、6つの下位検査を実施するだけでもGCIの推定はかなり信頼できるといえる。

       研  究  2

 研究2ではMcCarthy(1978)が考案したマッカーシースクリーニングテストについて検討す る。このテストは次の基準で選ばれた6つの下位検査からなっている。①学業の成就に重要な能 力を測定する(これらの下位検査で低い得点を取る子どもは学業が困難であろうと予測できる)。

②4歳から6歳半(就学前)の子どもの興味にあう。③性差、人種差が少ない。④実施、得点化 が容易で、教師でも実施でき私選ばれた下位検査は左右の方向、言葉の記憶、図形の模写、数 の記憶、概念のグルーピング、脚の整合の6つであり、マッカーシースクリーニングテストでは これらの下位検査をこの1順で実施し、いくっの下位検査で測定される能力が基準よりも低いかを 調べることで、リスク児と非リスク児を区別しようとするものである。本研究では健常の幼児を 対象としているので、リスク児の診断としての有効性を調べることはできない。そこで研究1と 同じ分析をすることで、もしKaufmanのスクリーニングテストと同様にして推定GCIを算出す

るのであれば、これらの下位検査がどの程度有効かを調べる。各下位検査の説明は次の通りであ

る。

 (1〕左右め方向……知覚一遂行尺度と一般知能尺度に属する。自分の身体についての左右の知識   と他人と向かい合った時の左右の知識を問う。空間関係、言語的概念形成、非言語的推理、

  指向性の発達を調べる。5歳以上にのみ実施する。

 (2〕ことばの記憶……言語尺度・一般知能尺度、言己憶尺度に属する。第1部は単語の系列と文の   反復を求める。第2部は物語を読み聞かせ、本質的な要素やアイディアを再現させる。聴覚   的短期記憶、言語理解、注意、集中力、言語表現の発達を調べる。

 (3〕図形の模写・・一知覚一遂行尺度、一般知能尺度、運動尺度に属する。検査者が描いた図形や   印刷された図形を模写させる。視知覚、視覚一運動整合、空間関係の発達を調べる。

 14〕数の記憶一・・研究1参照。

 15〕概念のグルーピング……研究1参照。

 (6〕脚の整合……運動尺度に属する。後ろ向きに歩いたり、つま先で歩いたり、一直線に歩いた   り、片足で立ったり、スキップをしたりさせる。全身運動(特に一ド肢)の整合とバランスの   発達を調べる。

       方     法

 調査対象 研究1で用いた幼稚園児578名。表1参照。

 実施法と採点法 どの下位検査も日本語版手引きに従って実施、採点した。尚、マッカーシー

スクリーニングテストでは検査の実施順も手引きに明記されており、今まで述べてきた1順に実施

することになっているが、本研究では実施はランダムな順に行われた。

(8)

      結 果 と 考 察

表4は年齢別にGCIと各下位検査、及び合計得点の平均と標準偏差を示したものである。GCI と概念のグルーピングのそれは表2のものと同じであり、数の記憶のそれは数の記憶Iの得点と 皿の得点の素点(表2の値の%)を合計したものである。

表4 McCarthyのスクリーニングテストにおける下位検査ごとの平均得点(標準偏差)

一ド位検査 4歳  4歳半  5歳 5歳半  6歳  6歳半

指数(GC1〕    lOτ.4(lS.6) 108.6(15.9) 103.5(15.7) 102.3(14.9〕 98・6(17・9) 99・6(I5・9)

た一右の方向        一      一

ことばの記憶      5.4(2.τ)  6.6(2.9)

図形の模写       5.8(3.2)  9.5(3.6)

籔のI1己憶        4.8(2.1)  6.4(2.竃)

概念のグルービング   7.3(1.9)  8.3(1.9)

脚の整合        9.9(2.1〕 10.5(2.1)

4.3(呂.5〕 5.7(3.1) 7.1{3.3) 7−9(3.1〕

7.S( 2.7)   8.2( 2.7)   8,4( 害.1)   9.4( 2.5)

11.6(3.9〕 13.0(3.3) 15.O(2.8) 16.2(2,4)

7.4(2.4) 8.7(2.4) 9.1(2.5) 10.3(2一)

9.1( 1.7)   S.4( 1.8)  10.2( 1.6)  lO.8( 1.6)

ll.6(1.8) 12.0(1.3) 12. 1.1) 12.6(O.8〕

33.3(τ.5〕 41.3(8.O) 51.2(9.6) 57,O(τ、8) 02.2(8.1) 6τ、1(6.O)

 合計得点の平均は、どの年齢の間でも適度に得点が増加している。左右の方向が5歳から実施 することになっているので、4歳半と5歳の間の増加は他の年齢間と同じように考えることはで きないが、先の述べた最低条件は満たしていると考えられる。

 表5は、年齢別各下位検査の素点とGCIとの相関係数、及び合計得点とGCIとの相関係数を示 したものである。GCIと最も相関が高いのは、ことばの記憶でありいずれの年齢でも実質上の相 関がみられた。豊田・澤田(1990)は物語構造の中で重要であると考えられる項目ほど、正答率 が高いことを示したが、GCIが高い者は物語構造における重要性に敏感なのかも知れない。

表5 McCarthyのスクリーニングテストにおける下位検査とGClとの相関係数

一下位検査 左一右の方向 ごとばの記憶 図形の模写

数の一…己憶

概念のグル■ビング 脚の整合

合I1H号一点

4歳  4歳半  5歳

一        一        26

50     6 1     59 57       45       58 49      51      65 57       39       34 33      18      31 79       7 1

5歳半    6 歳    6歳半 38      38      38 53      63      53 43      37      30 44      64      54 24      44      23 20      12      03

78      73      82 73

 数の記憶とGCIとの間も実質上の相関があった。さらに表3に示されている数の記憶IとGCI の相関係数や数の記憶皿とGαの相関係数と表5に示されている相関係数を比べると、いずれの 年齢でも表5の値が一番大きな値であった。このことは単独の下位検査よりも、複数の下位検査 を合計した方が、GCIと相関が高くなることを示唆している。

 最も相関が低かったのは脚の整合であり、4歳と5歳を除くと、いずれも無視できる相関であっ

た。この結果はMcCarthy(1978)と一致しており、国を越えて一般性があるといえる。脚の整

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合はGCIの算出には関与していない下位検査であることが原因かも知れない。

 興味深いのは、図形の模写と概念のグルーピングであり、年齢が高くなるにつれて相関係数が 小さくなってくる。これらの下位検査が測定している能力と一般知能の関係には年齢やその他の 要因という媒介を考える必要がある。

 合計得点とGCIとの相関は高い相関であった。表3の値と比較すると、いずれの年齢でも表5 の方が高い値になっている。このことに関して、マッカーシーのスクリーニングテストは、元来、

GCIを推定するために実施するのではなく、リスク児と非リスク児を区別するのが目的である。

そのため下位検査も合計してGCIを推定できるようにではなく、就学時に求められる能力を考え て選ばれている。GCIの推定を目的として利用するのは、マッカーシースクリーニングテストの

6つの下位検査ではなく、Kaufmanのスクリーニングテストの方が望ましいであろう。

 Te11egen&Briggs(1967)はウエスクラーの知能検査の短縮版としての使用法を考案した。

それはウエスクラー式の知能検査の下位検査をいくつか実施し、実施した下位検査問の相関係数 の合計と下位検査の標準得点の合言十から偏差指数を算出しようとするものである。この方式は標 準得点が算出でき、下位検査間の内部相関が手引きに示されている知能検査の場合は、どの検査 でも利用できる。残念なことにMSCAは標準得点を算出するようになっておらず、下位検査間の 内部相関も手引きには示されていない。スクリーニングとして使用するためには、Kaufman

(1977)の方法かMcCarthy(1978)の方法しか現在のところ知られていない。本研究では Kaufmanの方法がGCIの推定には有効であるという結論がでたが、本研究にも調査対象が1つ の幼稚園児に限られており、またGCIの平均と標準偏差が100や16から離れた年齢群が存在する などの問題がある。今後の研究が期待される。

<付記>本研究は、MSCAの日本語版著者である杉村健教授(奈良教育大学)の主催する「マッ カーシー知能発達検査の基礎的研究」と連携したものであり・同教授に心から感謝の意を表しま す。また資料の収集には奈良保育学院附属幼稚園(奥村晋園長)と心理学教室の学生の協力を得 ました。厚くお礼申し上げます。

      引 用 文 献

知念ともみ・笹川宏樹 1989 マッカーシースクリーニングテストの検討  鈴木ビネー法を併     周した事例について  日本教育心理学会第31回総会論文集,444.

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小田信夫・茂木茂八・池川三郎・杉村健 1977マッカーシー知能発達検査手引(1981年修正版)

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豊田弘司 1987 マッカーシー知能発達検査における 図形の模写 の分析 奈良保育学院研究     紀要 3,11−30.

豊田弘司・澤田忠幸 1989 マッカーシー知能発達検査における 物語記憶 の分析 奈良教育     大学教育研究所紀要 26,85−93.

豊田弘司・清水益治 1991マッカーシー知能発達検査における ことばの流暢さ の分析 奈     良教育大学教育研究所紀要 27,151−159.

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参照

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