• 検索結果がありません。

学校と地域との連携協力・参画に関する一考察

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "学校と地域との連携協力・参画に関する一考察"

Copied!
11
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

抄録

公立学校への学校運営協議会導入を必置とする政策方向が出たが、十分な根拠に基づく ものか検証した。その結果、必ずしも十分な根拠に基づく政策決定とは言えないが、国と して基本方向を示す限りにおいては意義があること、ただし、地域独自の類似組織も学校 運営協議会として認めるなど、地域の実情を考慮した柔軟な運用が重要であることが分 かった。

キーワード

学校運営協議会、地域学校協働本部、地域との連携協力、成果の検証

はじめに

2017 年 3 月の地方教育行政の組織及び運営に関する法律の改正により、学校運営協議会 の制度に修正が加えられた。これまでの法定 3 機能(基本方針の承認、運営に対する意見 具申、人事に対する意見具申)のうち、人事に対する意見具申は自治体の判断で省略する ことが認められる一方、新たに「支援に関する協議」が加わった。また、社会教育・生涯 学習サイドで展開されている地域学校協働本部(以下「協働本部」と表記)の連携が重視 された。更に、小中一貫教育などが行いやすいよう複数校に一つ設置することも認められ た。そうした上で、学校運営協議会をすべての公立学校に導入することが自治体の努力義 務とされた。必置化の方向が打ち出されたのである。

筆者は、2017 年 3 月の改正による学校運営協議会の必置化の方向は適切ではないのでは ないか、その仕組みが柔軟化されたにしても地域の実情や教員負担等を考慮すれば、あく までも選択肢の一つという位置づけが良いのではないか、と考えていた。その理由は、学 校(特に小中学校)と地域住民との関係は、市町村ごと、さらに学区ごとに多種・多様で あり、国がトップダウン的に一定の枠組みを設定し地域に促すのは最適効果を生まないと

林   一 夫

《研究ノート》

学校と地域との連携協力・参画に関する一考察

── 学校運営協議会の必置化に関連して ──

(2)

考えられるからである。

こうした問題意識を下に、本稿では、(1)学校運営協議会は今後本当に必置とすべきな のか、(2)証拠に基づく行政の観点から、学校運営協議会の成果又は効果はどのように検 証されているのか(検証されたからこそ必置化の方向が打ち出されたのではないか)を検 討する。

調査研究の方法としては、文献研究,Web による情報収集、関係者への電話または直接 のインタビューなどである。

1 学校運営参画の仕組みとして学校運営協議会は必置の方向でよいか

1)先行研究

西川(2018)は、学校運営協議会には複数の源流があるとしている。戦後直後のカリキ ュラム改革運動から「開かれた学校つくり」までの系譜で、学校地域連携論として制度化 されつつあると言う。例としては三鷹市で小中一貫教育とともに発展してきたものがある。

もう一つは、教育改革国民会議での提言を契機に学校評議員の発展型というもの。地域分 権政策、学校の自主自律性の確保、競争原理による公立学校の活性化、スクールガバナン スの機能強化、コミュニティスクールの制度化という流れがあると言う。日本初の地域運 営学校と称した足立区立五反野小学校がその例であると言う。また、地域間格差について、

農村か都市かなどの社会要因と与党の政治スタンスなどの政治要因を検討している。しか し、必置化の適否については十分言及していない。

佐藤(2017)は、コミュニティスクールのタイプを示しつつ、その効果を検証している が、必置化の是非には十分言及していない。

2)学校運営協議会の制度化の経緯 ─ 各種答申の読解を中心として ─

学校と地域の関係は、明治時代の学制からの流れもあるが、近年は臨時教育審議会答申 で提言された「開かれた学校」の流れが大きい。臨教審第 2 次答申(1982 年)は以下のよ うに記述している(以下、下線は、筆者が引いたもの)。

第 3 に、「教育上の配慮」に名を借りた学校の閉鎖性という壁が、教育荒廃の早期発見 を妨げ、学校の無責任体制を助長し、学校や教師への社会的な信頼度を急激に低下さ せている・・。学校は、地域社会や父母・家庭に対してもっと開かれた学校運営を行 うよう努力し、・・。

「開かれた学校」を強調したのは、1998 年 7 月の中央教育審議会答申である。以下の記 述がある。

第 4 章 学校・家庭・地域社会の連携 第 2 部 学校・家庭・地域社会の役割と連携の 在り方 (略)

(開かれた学校)

・・学校は、自らをできるだけ開かれたものとし、かつ地域コミュニティーにおける

(3)

その役割を適切に果たすため、保護者や地域の人々に、自らの考えや教育活動の現状 について率直に語るとともに、保護者や地域の人々、関係機関の意見を十分に聞くな どの努力を払う必要があると考える。

学校運営協議会の直接の契機となる 2000 年 12 月教育改革国民会議報告―教育を変える 17 提言─では以下のような記述がある。

・・開かれた学校をつくり、説明責任を果たしていくことが必要である。目標、活動状 況、成果など、学校の情報を積極的に親や地域に公開し、学校は、親からの日常的な 意見にすばやく応え、その結果を伝える。 

・・学校評議員制度などによる学校運営への親や地域の参加を進める。良い学校になる かどうかはコミュニティ次第である。コミュニティが学校をつくり、学校がコミュニ ティをつくる。

2003 年の中教審中間報告を基に、2004 年の地方教育行政の組織及び運営に関する法律が 改正されている。そこでの記述は以下の通り。

第 2 章 地域が参画する新しいタイプの公立学校運営の在り方について

・・新たに保護者や地域住民が一定の権限と責任を持って主体的に学校運営に参画する 仕組みを制度的に確立し,新しい学校運営の選択肢の一つとして提供するも必要と考 える。

・・地域運営学校は,学校運営の在り方の選択肢を拡大するための手段の一つとして新 たに制度化すべきものである。したがって,その導入は,すべての公立学校に一律に 求められるものではなく,・・

・・学校運営協議会の役割としては,(1)学校における基本的な方針について決定する 機能,(2)保護者や地域のニーズを反映する機能,(3)学校の活動状況をチェックす る機能が考えられる。

法定 3 機能の必要が記述されているが、基本方針の承認権については、根拠の記述が十 分でない。2000 年の教育改革国民会議提言と 2003 年の政府の規制改革推進 3 か年計画によ り、国は制度化せざるを得なかったのであろう。学校評議員制度が発足して数年しか経っ ていない。あくまでも選択肢の一つとしていた。

○2015 年 3 月教育再生実行会議第 6 次提言「学び続ける社会、全員参加型社会、地方創生 を実現する教育の在り方について」

(教育機関を核とした地域活性化)

○ 国は、コミュニティ・スクールの取組が遅れている地域の存在を解消し、一層の拡

大を加速する。このための制度面の改善や財政面の措置も含め、未導入地域における

取組の拡充や、学校支援地域本部等との一体的な推進に向けた支援等に努める。そし

て、全ての学校がコミュニティ・スクール化に取り組み、地域と相互に連携・協働し

(4)

た活動を展開するための抜本的な方策を講じるとともに、コミュニティ・スクールの 仕組みの必置について検討を進める。

地方公共団体は、国の支援策も活用して、全ての学校においてコミュニティ・スクー ル化を図ることを目指す。その際、学校と地域をつなぐコーディネーターを配置する ことや、地方公共団体の判断により、小中一貫教育の取組と連携して進めることも効 果的である。さらに、こうした人的ネットワークが地域課題解決や地域振興の主体と なることを目指す。

地域活性化のために、学校運営協議会をすべての学校に置くこと、学校支援地域本部

(注 1)

との一体的推進を図ること、小中一貫教育と連携すること等が指摘された。根拠は地域活 性化のためとしか書いてない。

○2015 年 12 月中央教育審議会答申

3 月の教育再生実行会議の提言を踏まえて早くも 12 月には答申している。2003 年の時は 選択肢の一つとしていたのをすべての学校に置くことが望ましいと変更しているが、その 根拠は必ずしも十分でない。

2.学校運営協議会の成果又は効果は十分検証されているか

学校運営協議会は必置の方向が取られたが、果たしてその成果や効果が実証的に説明さ れているのだろうか。

1)先行研究

佐藤(2017)は成果について校長等の意識調査等から検証しているが、必ずしも必置化 まで論証していない。

東京都杉並区(2015)は、学校運営協議会導入後 10 年を経過したこと(約 4 割の小中学 校)を踏まえ、2015 年 3 月に成果検証調査報告を公開した。区立の小中学校のすべての児 童生徒及び教職員にアンケート調査をしているほか、地域住民や保護者、学校運営協議会 委員にも聞いている。その結果、「学校運営協議会設置の学校の児童生徒は、そうでない学 校の児童生徒に比較して「自己効力感」が高いこと」、「学校運営協議会設置の学校の教員 は、そうでない学校の教員に比較して自校の児童生徒を肯定的に評価する割合が多いこ と」、「学校運営協議会設置の学校の保護者や地域住民は、そうでない学校に比べて学校の 運営支援活動のより多く参加していること」などが成果として挙げられている。しかし、

学力向上やいじめ件数、不登校数との関係には触れられていない。

貝ノ瀬(2010)は、三鷹市の各学園(2 小 1 中などがまとまり「○○学園」と呼称してい る)の学力の向上や不登校の減少などを記しており、具体的な成果を示している。例えば、

平成 16 年度と 20 年度の保護者アンケートを比較して 9 項目すべてにおいて期待度がほぼ 2 倍以上に増加していると言う。これなどは成果を示す根拠として有用である。しかし、こ れは小中一貫教育に対して聞いており、学校運営協議会の有効性に関するものでない。

2)学力テスト結果と学校運営協議会導入率との関係

学力と学校運営協議会の導入状況の関係を見てみよう。学力としては、文部科学省・国

(5)

立教育政策研究所が行っている全国学力・学習状況調査の小学校の結果(2018 年度)を使 用した。学校運営協議会の導入状況は文科省の公開資料による(2018 年 3 月時点)。図 1 で は、理科の結果を示しているが、他の科目でも同様であり、両者に相関関係は見られない

(どの科目も相関係数は 0.1 以下である)。すなわち、都道府県ベースで見る限り、学校運営 協議会の導入が学力向上に寄与すると言う証拠は得られないのである。

3)筆者が行った電話インタビュー等

以下は 2017 年 1 月から 2018 年 10 月にかけて筆者が行った直接または電話によるインタ ビュー結果である。相手は、市町村の担当者(指導主事など)、公立小中学校の校長などで ある。聴取事項は、以下の通り。

・ そもそも学校と地域の連携協力は重要か。

・ 重要と考えている場合、既存の仕組みとしてどのような仕組みがあるのか。

・ 学校運営協議会の有無、設置の経緯、導入状況、効果と課題、今後の予定。

・ 地域学校協働本部(活動)との関係。所管部局は学校教育関係か社会教育・生涯学習 関係か。

①学校運営協議会の導入が進んでいる市区町村の担当者(全国から筆者が選び電話などした)

・ 所管が指導課から 2017 年度に生涯学習課へ移行。協働本部はないが、学校運営協議会に 部会があり支援活動をしている。メンバーは固定化し、高齢化が課題、成果は小中一貫 など。

・ 学校評議員制度なし、協働本部もない。学校運営協議会のみで 10 年やってきた。小中一 貫教育と一緒に行っているので、学校運営協議会だけの成果や効果は分からない(両者 の効果は不登校の減少と学力アップ)。

・ 10 年経過後の効果検証を 2015 年 3 月に行い公開。意見反映や協力の度合いを 4 件法で聞 いた。学校運営協議会は 7 割に設置、将来は全校に設置予定。学校評議員はやめたが 3 割

図 1 小学理科テスト結果と都道府県別学校運営協議会の所管導入率

出典:文科省資料より筆者作成

(6)

の学校に残っている。運営協議会は「顔」、協働本部は「手足」。大人数の自治体なので 二つあってよい。学校運営協議会の委員は公募。協働本部のメンバーは元保護者が多い。

・ 発足時は、市長・教育長及び校長の両方から要請があった。数年後にすべての公立校へ 設置予定。目的は地域の人に学校に入ってもらうこと。成果としては、土日の学校支援。

趣味のある人のゲスト教師、学力向上。課題は、委員のなり手がいないこと。学校運営 協議会は、委員は 1 校 10 名を限度、年間 10 回程度開催、謝金は 1〜2 万円。校長推薦で PTA、自治会、保育園長、民生委員などから選ぶ。支援活動が多いが学校のチェックも する。

・ 学校運営協議会は、小学校 19 校中 7 校、中学校 8 校中 1 校。十分定着。一方、市教委社 会教育サイドに協働本部が一つあり、各学校にブランチを設けコーディネーターが配置 されている。女性、元保護者、民生委員など。成果としては教員アンケートで見ると 5 年前に比較して全体的に良くなっている。

・ 小中 20 数校すべてに学校運営協議会がある。一部の学校には協働本部のようなものがあ る。成果としては学校の様子が良く分かるようになったこと。課題としては地域住民は 忙しくて公開授業などに参加できないなど。

以上をまとめると、成果としては明確なものは小中一貫教育が挙げられていることであ った(2 名)。なお、協働本部との連携を見ると、協働本部がない市町村がある一方、存在 するところでも、市町村の中央に組織があり、各学校にはブランチが存在するという形態 が見られた。所管が文科省と同様、生涯学習へ移行した市町村もあった。

②学校運営協議会の導入が余り進んでいない市区町村の担当者(首都圏から筆者が選び電 話などした)

・ もともと協働本部あり。学校支援ネットという組織もあるので、それを学校運営協議会 へ移行させる。今年はモデル校 10 数校。小中一貫などテーマ別に導入する。

・ 設置が自治体の努力義務となったので、2018 年度から実施検討開始。学校運営協議会と 協働本部の両方を予定。人事の具申は、個別名を挙げるのはやめる。

・ 既存の「開かれた協議会」制度があり、これが全公立校に設置されている。学校運営協 議会はこの仕組みの中にある。この仕組みでは 5 つの機能がある。①協議、②評価、③ 支援(土曜授業、学校安全など)、④調整、⑤実施。学校運営協議会自体は、全体の約 1 割でありこの 2 年増えていない。

以上をまとめると、もともと協働本部や既存の類似組織があるので、学校運営協議会の 設置に積極的でないが、国の方針に従おうとの考えが伺われる。

③公立小中学校の校長・副校長・教頭又は元校長(知人・友人である管理職など)

・ 地域連携は必要。見守り、出前授業、花壇、畑作り、イネ、そばつくり、昔話、英語など。

校区には 3〜4 の地区があり、管理職は時々顔出しを行う。防災会議には出席する。顔つな ぎになるし、災害時には学校は避難所になるので。

地域独自の連携組織が 10 年以上前からある。学校運営への口出しの仕組みは困難校には 必要だ。

・ 地域連携は重要。教員は移動するので。一番は親だが、地域の人も。新住民も多いがそ れでも地域住民との連携が大切

・ 開校時より運営協議会あり。現在生徒 800 人。建物も小中一体化。コミュニティハウス

(7)

あり。支援本部会長はコーディネーター。以前、年 12 回開催していたが、現在は 6 回程 度。成果は、現在の本学の成果自体。

・ 地域連携協力の成否は校長による。以前は区市からお金が来ていたが、今はない。お付 き合いに金がかかる。若い人は行事に出るようになった。いじめは減る、いろいろ情報 も入る。「開かれた学校つくり」で皆やるようになった。伝統ある地域では成功する。

・ ○○第 1 小、○○第 2 小は伝統校で地域との連携もできている

・ 地域連携・協力には功罪あり。若手には地域の行事等には参加するよう指導している。

・ 郊外の○○市には「地域」があった。しかし都心の○○区には「地域」はない。

・ 隣接する 2 小学校と 1 中学校の 3 校で学校運営協議会を設けている。校長は出席している が副校長の私は参加していないので詳しく知らない。このあたりは昔から(40 年前)地 域と一緒に活動。特に組織はないが、ボランティア、花壇つくり、イモ堀大会が盛ん。

公立小中学校の管理職の認識を見ると、学校運営協議会が必須とみる者はいなかった。

地域との連携協力は必要とする者は多いが、「地域」がないとの発言も聞いた。また、既に 行っているとの意見も少なくなかった。

④都道府県の担当者(平均的と考えられる県の担当者)

・ 国の方針通り行う。もともと学校運営協議会を設置する学校は少なかったが、昨年度よ り 15 校増えた。県の指導というより市町村自ら。運営協議会制度より以前から、「開か れた学校つくり」として類似の制度があった。所管は生涯学習。

・ 県独自のコミュニティスクール(国の要件を欠く)を普及させる。既に 50 数小中にあ り。小規模市町村から、何故国のものをやる必要があるかと聞かれている。成果は事例 集に掲載されている。

4)2018 年 9 月某日に行った無作為 9 市町村電話インタビュー結果 目的:市町村担当者の考え方を聴取

聴取事項:①学校運営協議会の設置の有無、②設置していない場合、今後の対応はどう か:設置するのか、検討はするのか、検討も未定なのか。③生涯学習や社会教育サイドで 展開している学校地域協働本部(支援本部)の有無。

対象自治体の決定方法

総 務 省 の 自 治 体 戦 略 2040 構 想 研 究 会 が 作 成 し た 「 人 口 階 層 別 市 区 町 村 の 変 動

(2015→2040) (H30 推計)」を利用して、人口規模と今後の人口減少率を勘案して、(ア)比 較的大規模な市区町村として、人口 20 万人〜50 万人の市で 2040 年までの減少率が 10%以 内に留まる市の集団を、(イ)中間的な規模の市町村として、3 万〜10 万人の市町村で減少 率が 20%から 30%の市町村の集団を、(ウ)小規模な町村として、1 万人未満で 40%から 50%の減少が見込まれる町村の集団を、それぞれ選び、さらにその中から、無作為で 3 市 町村を選んだ。計 9 市町村を対象とした。

回答要旨は次頁の通り。

(8)

表 1 人口規模別 3 層無作為抽出の 9 自治体担当者の回答要旨

(9)

上記表 1 の説明

ア 20 万〜50 万人の大きな市では、設置する市としない市に分かれた。首長主導の地方分 権が進む現在、トップの関心によるのであろう。また、大きな市では、学校運営協議会 を担当する学校教育の部署と協働本部を担当する生涯・社会教育の部署とが疎遠であり、

縦割りの弊害が心配される。

イ 3 万〜10 万人の中規模の市町村である 3 市町では、いずれも設置していなかった。類 似の仕組みがあるとのこと。担当者(指導主事)は、国の方針なので、いずれ取り組む とのことであったが、都道府県や教育長等の上司からの指示待ちであろう。要するに、

学校運営協議会の設置は、トップダウン型なのである。

ウ 1 万人以下の 3 町村では、いずれも 1 小学 1 中学であり(中には義務教育学校もあり)。

小中連携と学校運営協議会の共同設置という特色がみられた。インタビュー後にホーム

ページなどを参照すると、これらの学校では、例えば全国学力調査で小 6 の時に比較し

て中 3 の時に大きく学力を伸ばしていることが紹介されている。この原因は、学校運営

協議会による部分と、小中一貫教育による部分と、新しいタイプの学校に優秀な教職員

を送りこむなどの行政の努力の部分の相乗効果であろう。

(10)

まとめと課題

1)必置化は必要か

必置化の論拠は不十分である。中教審答申の文言分析、既存研究等で根拠データが十分 得られていないこと、関係者への意見聴取等の結果等から見て、選択肢の一つとしては首 肯できるが、必置とするにはどうだろうか。地域の仕組みは地域で考えるのが建前でもあ る。しかし、学校運営に対して地域住民が参加することは、諸外国の事情を見ても重要な ことであり、日本の学校文化として大切に育てていくべきであろう。これを基本と考え、

実際には現場は国が主導した方が動きやすいことを考えれば、学校運営協議会の仕組みを より柔軟とし、地域独自の学校運営協議会類似の仕組みも広い意味の学校運営協議会に包 含し、その必置化を進めていくことは良いのではないか。今後は、学校運営協議会を地域 に適合するようより柔軟なものとし、育てていくことが求められよう。

2)成果・効果の検証の方法

第 3 期教育振興基本企画では、証拠に基づく政策決定が重視されている。その意味で、

学校運営協議会の必置化の判断に当たっては、成果の検証が重要である。一部の事例では 取り組まれているが、今後一層の検証方法の充実発展が必要である。

学校運営協議会の成果検証では、測定指標として、2015 年の中教審答申から読み取れば

①学校運営の改善、②教職員の意識改革、③学習意欲の向上、④生徒指導上の課題の解決、

⑤保護者や地域住民への周知度、⑥管理職の負担などが考えられる。しかし、これでは抽 象的なので、より具体的な指標が、例えば、学力テストの結果、いじめ件数の変化、不登 校率などが、学校ごとに考案されるべきであろう(一部の市ではすでに行われている)。ま た、測定期間として、少なくても 5 年程度以上を考えるべきであろう。

3)生涯学習サイドへの所管の影響

2018 年 10 月文科省は大幅な組織改正を行い、その一環で学校運営協議会は社会教育・生 涯学習サイドへ移管された。協働本部との一体推進には効果的だが、他方、関係者評価、

小中一貫教育、学校評議員など学校教育サイドの施策との整合性が不十分となることが危 惧される。

謝辞

学校運営協議会及びそれに関連する施策や業務を担当する行政関係者及び学校関係者の 方々には、直接又は電話等でインタビューし、貴重なご教示を賜りました。厚くお礼申し 上げます。

注 1 「学校地域支援本部」は、その後「地域学校協働本部」と改称された。

(11)

参考文献等

貝ノ瀬滋 小・中一貫コミュニティ・スクールのつくりかた ポプラ社 2010 年

西川信廣 義務教育学校における多様性と平等性に関する実証研究─コミュニティスクールに着目して─

京都産業大学学術総合研究所所報8 2013年

西川信廣 中央レベルでのコミュニティスクール政策過程の考察 教育行財政研究 45 2018 年

佐藤晴雄 コミュニティスクールの成果と展望 ミネルヴァ書房 2017 年

国立教育政策研究所 平成 30 年度全国学力・学習状況調査実施状況 全国 都道府県(公立)

http://www.nier.go.jp/18chousakekkahoukoku/factsheet/18prefecture-City/18p̲101.pdf(最終アクセス 2018 年 11 月 1 日)

文部科学省 コミュニティ・スクールの導入・推進状況(平成 30 年 4 月 1 日現在 都道府県別)

http://www.mext.go.jp/a̲menu/shotou/community/shitei/detail/̲̲icsFiles/afieldfile/

2018/06/08/1405722̲02.pdf(最終アクセス 2018 年 11 月 1 日)

文部科学省 総合教育政策局の設置について http://www.mext.go.jp/a̲menu/other/1410115.htm

(最終アクセス 2018 年 10 月 31 日)

総務省 自治体戦略 2040 構想研究会 第一次・第二次報告の概要 

www.soumu.go.jp/main̲content/000562116.pdf(最終アクセス 2018 年 9 月 1 日)

表 1 人口規模別 3 層無作為抽出の 9 自治体担当者の回答要旨

参照

関連したドキュメント

― 365 ― ジリエンスのレベルと相関関係があるのではないかと考える。 Figure 1 組織の活動ベクトルの分解

また, RFID とその読み書きに必要なリーダ・ライタから構 成されるシステムを特に指す場合は, RFID シス テムと呼ぶこととする....

学校教育への支援の図書館界の考え方  2001年「 公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準 」(文 部科学省告示) * ・「市町村立図書館」

1996 年に出された第 1 次答申の冒頭では,「我々

として,「地域教育会議」が行政(教育委員 会)により設置(予算措置)された。ただし,

「江別市初の総合型地域スポーツクラブとして,上江別地域の誰もが気軽にスポーツに楽しみ

オクイ カズキ

学生意識の質的・量的併合分析から見た地域教育連携力の拡大と変化