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奈良県の茶業と流通機構に関する一考察

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

奈良県の茶業と流通機構に関する一考察

著者 宮下 福太郎

雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学

巻 21

号 1

ページ 135‑146

発行年 1972‑11‑15

その他のタイトル A Study on the Structure and Functions of the Green Tea Market in Nara Prefecture

URL http://hdl.handle.net/10105/2819

(2)

奈良県の茶業と流通機構に関する一考察

宮 下 福 太 郎 (経済学教室)

ま え が き

総理府「家計調査年報」によれば、昭和45年(暦年)における人口5万人以上の都市1世帯当 り緑茶購入量は、 2,201グラム、紅茶の購入量は、 221グラムであるoまた、農林省「貴家生計費 報告書」によると、同年(会計年度)における全国の農村1世帯当たり日本茶の消費量は、購入 および自給を合わせて2,970グラムとなっている。ここ数年の傾向をみれば、 1世帯当り茶の消 費量は横ばいC状態にあるが、一万核家族化の進行によって世帯数は増加しており(昭和45年の 全国世帯数は29,146千世帯で、 42年を100とした指数は110.4である。)、また家庭外における消費 量も、所得の増加に伴なう食生活の社会化、就業人口の増大、冷房施設の普及による夏期消費量

の増加等によって漸増している。

こうした需要の伸長に対応して茶の輸入量はここ数年漸増しており、国内の茶栽培面積も茶価 格の堅調によって年々増加し、生産量も増加の傾向にある。奈良県の茶(大和茶)も以上のよう な一般情勢の中で発展の過程を辿っているが、殊に国営総合パイロット事業としての大和高原開 発構想(絵事業費237億円という巨額の事業として、昭和49年度から10カ年で完成する計画)が 調査の段階に入っており、大和茶振興の意欲が関係者の間にいよいよ高まっている。

本稿では、まず大和茶の実態を分析し,ついで茶の商品的性格から生じたときれる流通経路の 複雑さと、流通組織の前近代性を克服する画期的な試みとして、奈良県経済農業協同組合連合会 が、昭和45年から開設した奈良県茶広域流通センター(県内では奈良県経済連茶取引所で一般に 通っている)について、それが大和茶の振興に及ぼす影響を検討する。

I 奈良県における茶生産の概要

1荒茶生産量からみた奈良県産茶の全国的地位

農林省は茶調査にあたって、全国を各都府県単位に、茶栽培面積・生産量・機械製茶工場数な どの指標により主産県・準主産県・希薄県の3区分をしているが、それによると主産県は静岡県 1県で、準主産県としてはA地域(埼玉・三重・京都・奈良の4府県)、 B地蟻(茨城・愛知・

滋賀・高知・福岡・佐賀・熊本・宮崎・鹿児島の9県)の13府県をあげ、上記以外の都府県を希 薄県としている。主要6府県について茶栽培面積・生産量のここ数年の推移を示すと、第1表の とおりである。静岡県は栽培面積、生産量ともに群をぬいて大きく、昭和46年の荒茶生産量は全

(3)

136 奈良県の茶業と流通機構に関する一考察(宮下)

第1表 茶栽培面積・生産量の推移(全国・ 6主要県) (単位:ヘクタール、トン)

全  国l 埼  玉l 静  岡l 三  重l 京  都 奈  良l 鹿児島

100.0     2.9     54.5      6.8 】   3.4 3.3      7.9

資料:近裁農政局奈良統計調査事務所「奈良県農業の動き(昭和47年版)」

農林省農林経済局統計調査部「昭和46年 茶調査報告書」

(注)荒茶生産量の下段の数値は、昭和46年の全国荒茶生産量に対する府県別の構成比である。

国生産量の半数をこえる54.5%を占めており、また主要6府県の生産量は全国生産量の78.7%で ある。奈良県の46年荒茶生産量の全国構成比は3.3%であるが、ここ数年釆荒茶生産量は全国で 5位を保ち、地域農業のうちで極めて重要な地位を占めている。

つぎに昭和45年および46年産荒茶の茶種別生産量をみると、玉露は静岡、京都両府県が多く、

かぶせ茶は埼玉、三重、京都の3府県で、また、てん茶は京都府が多い。普通せん茶と番茶の割 合をみると、埼玉、静岡では普通せん茶が極めて高いが、京都、奈良ではそれほど大きな差がみ

られない。 (第2表)

2 県内茶主産地の情況

奈良県における茶の主要産地は、一般に大和高原とよばれる東部中山間地帯で、奈良市東部(

田原、柳生、大柳生の各地区)、天理市東部(福住地区)、添上郡月ヶ瀬村、山辺郡都祁村、山添 村、宇陀郡室生村(東里地区)などに集中しており、一部吉野郡大淀町(大淀地区)、東吉野村

(小川地区)に小集団産地が分布している。 (第3表)

(4)

第2表 茶種別荒茶生産量(全国・ 6主要県) (昭和45年・46年) (単位:トン)

1 昭3 5 恒 高 埼 玉 i 静 岡

k. ∵㍉ 昭 45 j 昭 46 怪 箆

資料:奈良統計調査事務所「前掲書」、農林省「前掲書」

第3表 市町村別茶栽培面積・年間生産量および機械製茶工場数  (昭和45年)

資料:奈良統計調査事務所「第19次奈良農林水産統計年報」

(注)表中C‑〕は事実のないもの、 Coコは表示単位に当たないものである。

* 自動摘採機は「第18次奈良農林水産統計年報」によったO従って44年の数字である

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138 奈良県の茶業と流通機構に関する一考察(宮下)

大和高原に位置する市町村(第3表で奈良市から室生村まで)の茶栽培面積が、県内茶栽培面 積に占める比率は87.8%の高率を占め、生葉生産量の割合は94.1%、荒茶生産量のそれは94.2%

であるO また機械製茶工場数においてもその比率は97%と高いo市町村別の自動摘採機数は府和 44年の数字しか得られなかったが、それは実に99.1?である。

茶はこの地域の茶農家の農業経営上、極めて重要な位置を占めているが、このことは怠業生産 の特化をみれば一層明瞭である0第4表は昭和45年の県内茶主産地の農業生産額構成比と特化係 数を示したものであるが、大和高原地域の農業生産額構成は県全体にくらべて茶部門の極めて高 いのが目立つ。これを県全体からみた特化という点からみると、当然茶部門への特化が著しく、

特に月ヶ瀬村は格段に高い。その反面、野菜の生産額構成は県全体にくらべていずれの市町村も 低い。畜産部門では、都祁村の鶏卵が高率で月ヶ瀬村や室生村のそれと対照的である。

第4表 県内茶主産地の農業生産額構成と特化係数    (昭和45年)

資料:奈良統計調査事務所「新しい農林業の動向」 (昭和46年12月刊)

(注1)本表で奈良市とあるのは、五ケ谷、田原、柳生、大柳生、東里、狭川の6地区をいい、天理市 は福住地区をいう。また室生村は東男地区と、三本松地区の一部であり、月ヶ瀬村、都祁村、

山添村は全域であるO

(注2)特化係数とは、奈良県平均の構成比で、それぞれ市町村の構成比を除して求めたもので、この 係数が1より大きいときは、奈良県全体にくらべて、その作目の「特化している」ことを示す。

II 大和茶振興の構想と振興対策

名前の通った高級茶としては、たとえば本山茶(静岡県安倍川流域)、川根茶(同大井川流域)、

森茶(同天竜川流域)、宇治茶(京都府)、狭山茶(埼玉県)、八女茶(福岡県)などが知られて

どうぐみ

いる。いうまでもなく茶は諸種の原料荒茶を合組(Blending)して販売されるので、極端ないい 方をすれば産地銘柄は存在しない。大和茶は全国第5位の生産量をもちながら、他の多くの県と 同様に、これまで古いのれんをもつ他府県茶産地への原料荒茶供給県としての性格を脱しきれな かったため、取引面でも全国的な水準に達し得なかった。こうしたことから奈良県経済連では茶 広域流通センターを設置することにより、取引の近代化を進めるとともに、大和茶を全国的に高 く評価される茶に仕上げていくことを目的として、大和茶振興の基本構想がたてられた。それに よると「大和高原地帯を中心とした中山同地域の農業経営に占める重要な茶業として、良質茶生

(6)

産を目槙として、経営規模を拡大するとともに、近代的施設等の導入により、安定的な奈良県茶 業の振興を図る。」としている。

その施策と方向についてみると、まず生産対策としては、 (1)集団地の造成(基盤の整備され た近代的産地の形成) (2)優良品種の普及(育苗はの設置と計画的な優良品種の普及と導入) (3)防災施設の整備(被覆による晩霜対策、定置配管による病虫害防除の徹底) (4)栽培管理の 省力化(経営の近代化、共同化並びに技術の確立)等があげられ、つぎに流通対策としては、

(1)処理加工の共同化(高能率の共同処理加工場の推進)と(2)販売機構の改善(茶広域流通セ ンターの設置による取引の近代化)を打ち出している。

茶園の経営は山間貴家経済に大きな比重を占めているだけに、成果をあげている茶生産農家は かなり多いが、第5表でみるように、茶栽培規模が50アール未満の農家数が年々減少し、 50アー ル以上の農家数が増加しているものの、 1戸当り茶栽培面積は昭和46年に漸く10ア‑ルになった という零細な規模である。茶園の経営規模が零細な理由としては、まず第1に労働生産性の底い 急傾斜地茶園が多いことo第2に茶農家の茶園が小区画で各所に散在し、しかも多くは茶園に通 ずる農道がないこと。第3に茶の摘採には大きな労力を要すること。さらに小規模な機械設備に よる個人製茶の茶農家が多いことなどが指摘されてきた。

第5表 奈良県における茶に関する主要指標の推移  (昭和40‑46年) 臼umz

農家数

茶栽培規模別内訳 1a未満1‑10 10‑50 50a以上

1戸当り 栽  培 ifa  枯

10アール 生薬収量当り年間

O  i H  d  CO

^f  L f5 ( O

^ ^ ^ ^ ^ "* ^

p

13,827 13,753 13,715

l‑lFI 2,280304 2,328306 2,3㌢324 12,265375 2,219 2,19。禁

械茶数

機製工 動み数

摘台i n

n 日

kg 1,079 1,194 1,238 1,181 1,132 1,213

5fo'﹂>エー31潤

l1

1.247 1,151 1,082 1,062 1,155  1,052

台N W O5 ^ O> <O M

t

D

 

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l‑1  1‑I 1‑  T‑H T‑H

資料:奈良統計調査事務所「奈良県農業の動き(昭和47年版)」

農林省「昭和46年 茶調査報告書」

こうしたことから上述の諸施策がうちだされたが、最近は集団化による茶園造成とともに、優 良品種茶園が増加しつつある。なお自動茶摘み機は年を追って普及しているが、機械製茶工場が 年々減少の傾向にあるのは、共同経営などによる製茶工場の大型化に伴ない、従前の小規模工場 が廃業しつつあることを示している。

1 大和茶の流通経路と流通割合

茶の流通経路は複雑で、産地ごとに販売の方法や形態が異なるが、本稿では奈良県茶広域流通 センター開設前と開設後の大和茶の流通経路について簡単にのべてみたい。

まず茶広域流通センター開設以前の流通経路を極めて単純化して示したのが第1図である。茶 栽培農家で生産された生葉は荒茶加工場で半製品である荒茶に加工されるが、これには共同加工

(7)

[EH 奈良県の茶業と流通機構に関する一考察(宮下)

巨∃ 人

′′

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′ 方 問 屋 \

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\\ 一服/ 〝 /

覆 屋

第1一国 奈良県茶広域流通センター開設以前の茶流通経路 注1)産地問屋とは奈良県内にある問屋、消費地問屋とは京阪神市内

にある問屋、地方間屋とはその他の地域にある問屋をいう。

2) ‑I‑‑は、系統共販によるルートを示す。

場と個人加工場があり、後者には自園自製が多かった。一次加工された荒茶は直接産地問屋、消 費地問屋、地方問屋等に販売されるほか、農協・県経済連の系統販売のルートを経由するもの、

さらに「トンビ」とよばれる仲買人の手を通るものがある。産地間屋や地方間屋の中には再製加 工を兼ねるものもあり、購入した荒茶はそのまま或いは仕上加工して消費地問屋や小売店へ販売

されるO仲買人や系統共販によるルートは矢印のように各地の茶問屋へ販売された。蛇足である が消費地問屋にも再製兼業のものがある。

以上が茶生産農家から消費者に至るまでの茶の流通経路の大胆な素描であるが、つぎに昭和43 年当時の荒茶の流通割合をみると、系統共販によるものが全荒茶生産量の26%で、その代金決済

は現金支払いである。残りの74%は問屋、仲買人などによる個人取引で、その内訳は仲買人の手 を通るものが20%、直接産地問屋、地方問屋、消費地問屋へ販売される割合はそれぞれ30%、 15 0/0、 7%であった。また極めてわずかであるが2%は直接小売店へ売られていたO これらの場合 の代金決済は、買い主が売買契約時に売買価額の10%乃至20%の現金を支払い、残金は150日か ら250日(長いものは1年)の間に支払いをする延取引が普通であった。いうまでもなく茶の摘 採期はおおむね一定しているが、消費は年間を通じて行なわれるため代金の回転が鈍く、これが 中間業者の資本力の脆弱きと相まって、個人取引における延取引の期間を長くする大きな理由で ある。

また個々の茶農家と仲買人の問の個別取引は俗に「トンビ取引」といわれ、秀れた品質の茶でも 安く買い叩かれるという不利な売買を強いられることが多く、さらに冷蔵施設が少ないことも農 家に亮急ぎを余儀なくさせる結果となり、適正価格での取引が行なわれる場は存在しなかった。

しかし茶の生産量の増加につれて個人取引の場は狭くなってきた。即ち一万では製茶工場の大 型化に伴なって取引数量が大きくなり、他方問屋白身の体質改善が進められるなど、産地仲買人 が活動する領域は非常に狭められた。以上のことから系統共販体制を強力に推進する必要性が生

じ、茶広域流通センターも新らしい条件に即応する狙いをもって登場したといえる。

(8)

つぎに経済連茶取引所開設以後の大和茶の流通経路をみると、第2図が示すように従前の販売 ルートと大きく変っているQ この図では上述した理由で活動の韻域が非常に狭まるであろう仲買 人などによる個人取引のルートは意識的に省いてある。

茶生産農家 m

第2園 茶広域流通センター開設後の新流通経路

茶広域流通センターについては後述するので、ここでは茶取引所における取引の実情について のべてみたい。荒茶の取引は、農協が茶生産貴家から委託をうけた茶を出品し、経済連が、指定 した商社(茶問屋)に対して入札または相対で販売する。入札販売の場合、引札と多額の値開き があった場合は、供給者の側で荷をひきとる道が講じられており、価格形成の上で農家の発言力 が強められたことは大きな進歩である。経済連指定商社の年次別、都府県別分布は第6麦のとお りである。昭和46年は兵庫県の1社が倒産したため前年より1社減少したが、 47年は‑拠に13社 も増加した。

第6表 奈良県経済連茶指定商社 年次別都府県別分布表

w 45 . iw ‑w  口;¥ 47

奈良県 京都府

大ドI蝣"]ォf 蝣V.'‑J 三重県

!'"‑咋u 愛知県 静岡県 東',',都

合  計

資料:奈良県経済連調べ

取引は6‑7 月の茶シーズンには毎週1回の割 で行なわれ、 10月には1乃至2回程度行なわれる。

これを茶種別でみると、初茶・番茶で5乃至6回、

2番茶で4回、秋茶で1回程度となっている。因み に今年の第1回初茶入札は5月20日に行なわれた。

取引代金の決済は、生産農家に対しては、農協が 販売代金の全額を即日現金による立替え払いとする 建前であり、商社に対しては、商談成立と同時に20 0/Oの東金を徴収し、残金は手形または現金支払によ るとしている。また農協に対しては、販売代金の20

%を支払い、残金は商社の手形期日決済後、経済連 から支払われる。

委託販売手数料は、経済連、単協ともに販売価額 の1.5%であるが、このほか価格安定基金として0.5

%、さらに粉引料として本茶の場合は3%、番茶の 場合は5.0%差引かれるので、生産者の実質手数料は本茶の場合6.5%、番茶の場合は8.5%とな m

以上述べたように茶広域流通センターの開設によって茶は公開で取引きれることになり、生産 者、商社、農協のそれぞれに多くの利点をもたらしたO即ち生産農家は貸倒れの心配がなくな り、適正価格で茶が販売できる上に販売代金の入手が早くなったO また自家で生産した茶の品質

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142 奈良県の茶業と流通機構に関する‑考察(宮下)

が他と比較できるようになり、良質茶の生産に専念できるようになった。商社の利点としては、

第1に茶取引所で各種の原料荒茶をまとめて仕入れることができるので、集荷が省力化され販売 に専念できること。第2に茶広域流通センターの低温恒湿貯蔵庫や再製加工場を利用する商社 は、購入した茶の貯蔵・保管や仕上加工を自由に委託できることO第3に上述のように資金面で 経済連の間接的な支援があるなどである。また農協は農家に対して自信をもって指導できるよう になり、農協自体の体質改善にも積極的に取組むようになった。このことは大切である。

2 奈良県茶広域流通センターの概要

前項で奈良県茶広域流通センターにおける茶取引の実情をのべたが、茶広域流通センターは、

昭和44年度農林省特産蔑産物茶広域流通近代化推進事業として、国および県費補助を得て奈良県 経済農業協同組合連合会が昭和44年8月に起工し、 45年3月未に竣工したものである。

事業費総額は153,311千円で、このうち約3分の1は国および県から補助をうけたが、残りは 経済連と茶生産貴家が出資していることが注目される。即ち国庫補助金は26,433千円で絵額の 17.2%、県費補助金は30,966千円で20.2%であり、経済連資金が76,330千円、 49.8%と約2分の 1を占め、残額の19,582千円、 12.8%を関係農協出資即ち生産者負担となっている。従って自己 資金と補助金の割合は、前者が62.6%、後者が37.4%である。

この事業に関係のある農協は、田原、柳生、大柳生(以上奈良市)、福住(天理市)、月ヶ瀬村 (月ヶ瀬村)、都介野、針ケ別所(以上都祁村)、波多野、豊原、東山(以上山添村)、東里、室生 (以上室生村)、大淀町東部(大淀町)、小木津川、小川(以上東吉野村)の8市町村15蔑協であ るが、その後都介野、針ケ別所両島協が合併して都祁村農協となり、また柳生、大柳生面農協が 奈良市東里、狭川南農協との合併で奈良東部農協となったため、数の上では8市町村13農協とな

った。

茶広域流通センターの所在場所は奈良県山辺郡都祁村白石1240番地で、大和高原を貫通してい る名阪国道針インターチェンジの南側にあり、地域間の交通は最大30分という好条件である。ま た奈良市‑30分、大阪市へ1時間、京都市へ1時間半の道程である。

施設の概要は次のとおりである。

(1)敷地面積は15,869m2で、施設の増設を見越して広くとられているO

(2)茶取引荷捌所は620m2で、鉄骨スレ‑ト茸平家建である。検茶台、茶取引所、荷捌所、 3ト ン合組機が設置されている。

(3)茶低温恒湿貯蔵庫は1,847.6t?」、鉄筋コンクリ‑ト鉄板葺平家建で、電気室、機械室、貯蔵 庫3室がある。ここでは茶が常時温度4oC,湿度45%を基準として冷蔵保管されるO 従っ

て茶の品質(色沢、香気、味)が年間を通じて新鮮に保たれ、新茶同様に消費者に供給きれ るo貯蔵庫の収容能力は1,300トンであるo貯蔵保管料は年間1枠当り(13.5トン) 15万円 とされている。なお今年5月に同じ規模のものが竣工したので、現在は2棟である。

(4)茶再製加工場は297m2で鉄骨スレート茸平家建、山盛式2.5トン綜合機、乾燥機、悟機、合 組機が配置されている。ここでは荒茶加工の委託をうけて仕上加工(煎茶、番茶、培茶)が 行なわれ、処理能力は日産2.5トンである。委託加工料は作業内容や仕上がり品質によって 決められる。なお再製加工場も昨年7月に同規模のものが既設工場に接して増設されたの

(10)

で、規模並びに処理能力は当初の2倍になった。

(5)以上のほかに管理事務所(270m2、鉄骨鉄板茸平家建、事務室、商談室、会議室、宿直室、

ロッカー室、食堂、機械室等)と、管理人住宅が設置されているO

3 奈良県経済連茶取扱実績の推移 大和茶の起源については諸説があって明 瞭にすることはできないが、その歴史は古 い。しかし茶の栽培が次第に増加したのは 明治時代以降であり、明治25年における県 内の茶栽培面積は2,026/ia、荒茶生産量は 1,017トンと記録されている。栽培面積が 最高を示したのは明治27年の3,207/ioで、

以後漸減し、大正初期の養蚕業の発達や第 2次世男大戦のために一時衰退した(昭和 20年の栽培面積は505ha 、荒茶生産量は802 トン)が、戦後再び茶の栽培が復興し、既 にみてきたように現在製茶は盛んである。

第7表 奈良県経済連茶取扱高

資料:奈良県経済連調べ 第8表 昭和45 ‑ 46年度産地別取扱高

合    計     1,959.8   1,060,046    2,175.4   1,044,190 資料:奈良県経済連調べ

(荏)諸口とあるのは、昭和45年は鹿児島県経済連、 46年は鹿児島、宮崎両県の経済連より 出荷されたものである。

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144 奈良県の茶業と流通機構に関する一考察(宮下)

経済連は県下の茶の生産・販売の指導に積極的に取り組んできたが、系統共販について資料が得 られる昭和36年以降についてみれば第7表のとおりである。即ち多少の曲折はあるが茶の取扱高 は年を追って増加し、茶広域流通センターの設置が現実の問題となった昭和44年には前年より‑

拠に430トンも取扱数量が増加している。センタ‑が事業を開始した昭和45年と昨年の産地別取 扱高は第8表で示したが、諸口とあるのは虎児畠、宮崎両県産の茶である。現在までのところ県 外産茶の取扱数量は全取扱数量に対して昭和45年が13.1* 、 46年が14.3%であるが、九州におけ

る茶の増樽は著しく、特に鹿児島県の増加は第1表でみたように極めて顕著なので、将釆九州産 茶の割合が高まることも考えられる。

つぎに第1表と第7表から奈良県産茶に占める経済連取扱数量の割合を計算すると、昭和40年 が11.3%、 41年12.8%、 42年19.7%、 43年25.3? 、 44年40.3%、 45年54.2%、46年60.6%となる。

(但し45年、 46年については県外産の茶を差引いた県内産茶についての比率である。)即ち40年 当時系統共販は11%にすぎなかったが、わずか数年の間に60%に達し、しかもこの比率は更に上 昇する傾向にある。

あ と が き

以上簡単に大和茶生産の概要と大和茶振興の構想・方策を述べたが、茶広域流通センターの構 想が容易に実現したわけではない。それはセンターの建設に対して茶問屋や茶問屋の利益を代弁 する一部政治家の根強い抵抗があったからである。しかし県当局や経済連の粘り強い説得によっ て、わが国で初めての画期的な茶広域流通センターの実現をみたのである。

センターが業務を開始してから2年を経過したにすぎないが、これまでの実績から、茶取引の 合理化、適正価格の実現、低温恒湿貯蔵による品質の保持と良質茶の供給、茶の流通金融の円滑 化、系統共販体制の整備・拡充のための拠点作り等々、経済連がセンター設置の目的としてきた 諸項目が漸進的に実を結びつつあると判断される。

わが国の農政が多くの貴家に不安を与えている今日、茶流通センターの誕生が地元生産農家に 測り知れない精神的支えとなったことは疑いない。他の茶生産県に対してもよい刺戟となり、産 地間競争を通じて日本の茶業をレベルアップする一要因ともなろう.鹿児島県や高知県で類似の 施設設置を推進中と聞くし、その他2、 3の茶生産県においても設置の動きがある。奈良県経済 連が先鞭をつけた意義は大きい。本稿は大和茶に関する一面を叙述したにすぎない。機会を得て 補足したい。

文     献 本文および各表に資料として掲げたものは省略する。

1貴林省統計調査部「第46次貴林省統計表」 (昭45. 12)

2   同  上 「1970年世界農林業センサス 奈良県統計書」 (昭46. 12)

3 近畿農政局奈良統計調査事務所「1970年世界農林業センサス 農業集落調査市町村別統計書」 (昭46) 4     同    上   「奈良県農業の動き」 (昭和44・45・46年版)

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5 奈良県知事より農林大臣宛陳情書「茶広域流通近代化推進に関する陳情書送付について」 (昭43. 8. 5 付 貴改第118号)

6 奈良県経済連「昭和44年度 特産農産物広域流通近代化推進事業計画書」

7 奈良県農林部「昭和46年版 奈良県費業協同組合要覧」 (昭46)

8 都介野・針ケ別所農協「都祁村農業協同組合合併経営計画書」 (昭46. 5)

9 柳生・大柳生・奈良市東里・狭川農協「奈良東部農業協同組合合併経営計画書」 (昭47. 3) 10 日本農業年鑑刊行会「日本農業年鑑1972年版」 (昭46. ll)

11堀井甚一郎「最新 奈良県地誌」 (昭36. 9)

C付記〕

本稿執筆に際して種々御教示を頂いた大阪府立大学山内豊二教授、奈良県経済連吉村宗一郎専務理事並 びに資料の提供その他で御世話になった経済連池幡貞治営農部長、中田文一企画調査室長、近畿農政局奈 良統計調査事務所中村善宙業務部長、経済調査課古川勇技官の各氏に深謝しますo

(1972年5月27日 受理)

(13)

146

A Study on the Structure and Functions of the Green Tea Market in Nara Prefecture

Fukutaro Miyashita

Department of Economics, Nara University of Education, Nara, Japan

Nara prefecture is one of leading green tea production prefectures like Shizuoka,

Kagoshima, Mie and Kyoto. The ranking on yearly output of roughly processed

tea in Nara is the 5th among tea production prefectures in our country.

The green tea which is famous as the "Yamatocha" is main crops of farming in the hilly region of so-called Yamato Plateau.

The Nara Green Tea Market had been established in March of 1969 to develope the tea-plant farming in this plateau further by Nara Economic Federation of Coo- peratives. For this purpose about 150 million yen was invested, which was shared among the Federation, Prefectural Government and Central Government.

Purposes on the establishment of tea market are as follows : 1) Modernization of green tea marketing.

2) Expectation on actualization of reasonable price through market function.

3) Preservation of good quality of tea through storing under the condition of proper low temperature and constant humidity.

4) Contribution to improvement on farm finace and farm credit.

5) Strengthening the system of tea marketing by cooperatives and expansion of marketing functions by cooperatives.

Considering the actual marketing activities of Nara Tea Market, it will be able to indicate the following merits on the establishment of this market.

1) Technical improvement of tea planting and intesification of tea farming operation.

2) Contribution to strengthening economic activities of cooperatives in this re- gion.

3) Appreciation by consumers on the supply of clean tea through the market.

4) Appreciation by buyers on the creditability of the market to them.

参照

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