大学生のインターネットを介したコミュニケーショ ンの特徴とその類型化の試み
著者 宮本 聡介
雑誌名 明治学院大学心理学部付属研究所年報 = Annual
Report of the Meiji Gakuin Institute for Psychological Research
巻 6
ページ 51‑59
発行年 2013‑05
その他のタイトル Characteristics and Typology of Internet
Communication in Undergraduate Students
URL http://hdl.handle.net/10723/00003747
研究論文大学生のインターネットを介したコミュニケーションの特徴とその類型化の試み 心理学部付属研究所年報 第 6 号 P51―59
要 約
※ 1 明治学院大学心理学部
※ 2 本調査は,2010〜2011 年度の特別プロジェクト研究「若 者とコミュニケーション:変貌と将来」(研究者 宮本 聡介・緒方明子・水戸博道)の小部会「新しいコミュ ニケーションツールが若者の対人関係に及ぼす影響の 研究」(代表 宮本聡介)の研究グループによって実施 されたものである。
インターネットの浸透,SNS の普及により,コミュニケーションは多様化の一途をたどっている。
こうした状況の中で,若者たちがインターネットを介してどのようなコミュニケーションをとってい るのか,その特徴を明らかにすることを本研究では試みた。2010〜2011 年にかけて 384 名の大学生を 対象に質問紙調査を実施した。分析の結果,インターネット上でのコミュニケーションスキルの自己 評価が高い者は,利用している SNS 数が多いことが示された。またクラスター分析を実施したところ,
回答者は 5 つのタイプに分類された。このうちスマートフォンを用いて各種の SNS を使いこなす SNS 活用クラスターでは,ネット上での自己表現効力感やネットコミュニケーションスキルの自己評定が 高く,インターネットを介したコミュニケーションに積極的に関わっている姿が読み取れた。
キーワード:インターネット情報ツール,ネット上での自己表現,コミュニケーションスキル,クラ スター分析
宮本 聡介(Sousuke Miyamoto)※ 1
大学生のインターネットを介したコミュニケーションの特徴 とその類型化の試み
Ⅰ.はじめに
総務省の平成 24 年度版情報通信白書による と,平成 23 年度の携帯電話世帯保有率(スマー トフォンを含む)は 94.5%と,同年の固定電話 保有率(83.8%)を 10 ポイント以上上回ってい た。また,平成 22 年度には 9.7%だったのスマー トフォン保有率が,翌 23 年度には 29.3%にま で上昇していた。インターネットの世代別利用 状況にも変化が現れている。例えば 13〜19 歳 層ではスマートフォンからインターネットを利 用する者が 18.2%にとどまるが,20 歳代では 44.9%となっている。インターネットへのアク セス行動だけに焦点を当ててみても,わずかな 世代の開き,わずか数年調査時期が異なるだけ で,行動が大きく様変わりする様子が伺える。
短期間に大きな変化を遂げているのは,イン ターネットへのアクセスツールだけではない。
NTT アド(2012)によるデジタルコミュニケー ションライフ調査によると,10〜20 代のライ フスタイルに関する価値観の特徴として「仲間 とのコミュニケーションを円滑にしたい」と考 えている者が 8 割を超えている一方で,「状況 を考慮して電話でなくメールすることがある」
と回答した者も 8 割を超えることが報告されて いる。これは,他者との重要なコミュニケー ション場面において,メールを用いた間接的な コミュニケーションが重視されていることを意 味していると考えられる。
メールを用いたコミュニケーションが活用さ れる背景には,携帯メールの普及がある。そ れと同時に,近年,twitter や Facebook,mixi
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などのソーシャル・ネットワーキング・サービ ス(以下 SNS)が急速に浸透し,対人コミュ ニケーションが変化してきている様子も伺え る。2012 年 12 月に公益社団法人東京広告協会 が発表した「大学生の友人関係に関する意識調 査」によると,友人とのコミュニケーション 方法として,SNS でのやり取りと答えた者は,
2010 年度の 46.3%から 2012 年度には 78.3%に 増えている。このように,わずか 2 年間の間に 大学生の SNS 利用率は急激に増えている。そ の一方で,SNS サービスの人気にも浮き沈み がある。国内での代表的な SNS に mixi があ る。mixi は 2004 年にサービスを開始し,2006 年に株式上場するなど,短期間の間に急速に成 長した。しかし,近年,利用者が急激に減少 している。「大学生の友人関係に関する意識調 査」によると,2010 年の段階で「利用してい る SNS」の第 1 位を占めていた mixi(96.6%)は,
2 年後の 2012 年調査では 70.8%にまで減少し た。一方,2010 年調査では名前の挙がってい なかった LINE, Twitter が 2012 年にはそれぞ れ 90.7%,87.7%と利用者が急増している。当 該調査では,mixi の利用者が減少している理 由として,「なりたくない人から,マイミク申 請が来た」「友達の知りたくない一面を垣間み てしまった」「友人の投稿で自分が不在だった ので寂しかった」など,mixi を利用すること によって生じる対人関係の束縛感を敬遠したか らではないかということが指摘されている。
このように,インターネットツール,インター ネットサービスの多様化によって,対人コミュ ニケーションに急激な変化が生じていることを 読み取ることができるだろう。本研究では,こ うした目まぐるしく変化するネット環境のなか で,20 代前半の若者は対人関係構築のために インターネットをどのように活用しているのか を質問紙調査を用いて明らかにすることを試み る。本研究の目的は以下の 2 点である。1. イン
ターネットを介した対人コミュニケーションの 特徴を明らかにすること,2. インターネットの 利用状況から,利用者を類型化することが可能 かどうかを探索的に検討すること。この 2 点を 明らかにするために,以下の調査を実施した。
Ⅱ.調査の概要
調査時期:2010 年 6 月〜 2011 年 10 月
回 答 者:回答者は大学生 384 名(男性 192 名,
女性 185 名,不明 7 名:1 年生 208 名,
3 年生 170 名)だった。授業時間中 に質問紙を配布し,集合回答形式で 回答を求めた。
質問項目:具体的な質問項目は結果の中で随時 報告する。
集計結果
はじめに本研究では,質問項目を性別,学年 別に集計した結果を報告する。
(1)現在,保有・利用している情報ツール
(表 1:多重回答)
回答者が保有している情報ツールは,携帯電 話(男性 63.5%,女性 69.2%),自分保有のパ ソコン(男性 64.1%,女性 68.1%)が 6 割を超 えて最も多かった。家族保有のパソコン(男性 42.7%,女性 44.3%),スマートフォン(男性 38.5%,女性 37.6%)がそれに続いていた。タ ブレット PC(男性 4.2%,女性 5.4%)やポケッ ト Wi-Fi(男性 4.7%,女性 5.4%)の利用者は 5%
前後だった。平均ツール数は男性で 2.7 個,女 性で 2.5 だった。携帯電話とスマートフォンの 保有パーセンテージを合計すると,男女共にわ ずかながら 100%を超える事から,携帯電話と スマートフォンを両方とも保有する回答者が数 名いる。性差,学年差は認められなかった。
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(2)メール送信ツール(表 2)
メール送信のために使用している情報ツー ル(多重回答)は,携帯電話が最も多く(男性 62.5%,女性 64.7%),スマートフォン(男性 38.0%,女性 38.0%),自分保有のパソコン(男 性 28.6%,女性 35.3%)がこれに続いていた。
1 年生(25.5%)よりも 3 年生(39.6%)の方 が自分専用のパソコンでメールを送信する者の 割合が有意に高かった。表 1 をみると,自分専 用のパソコン保有者は 6 割を超えているが,自 分専用のパソコンからメールを送信する者は男 性では 2 割台,女性では 3 割台にとどまってい る。この事から,メール送信ツールとして最も 頻繁に活用されているのは携帯電話やスマート
フォンであり,自分専用のパソコンをメール送 信ツールとして活用している者は,パソコン保 有者の半数程度にとどまっている事が予想され る。
メール送信ツール数は 1 年生よりも 3 年生の 方が有意に多かった(1 年生 1.5 個,3 年生 1.7 個)。学年が進むにつれて,インターネットを 介したコミュニケーションが多様化してくるこ とがその背景にあると予想される。また,男性 よりも女性の方がメール送信ツール数が有意に 多かった(男性 1.52 個,女性 1.7 個)。インター ネットを介した対人コミュニケーションへの依 存度が男性よりも女性の方が高いことがその背 景にあるかもしれない。
表 1 現在保有・利用している情報ツール(多重回答)
性別 学年
男子(N=192) 女子(N=185) 1 年生(N=208) 3 年生(N=170)
度数 % 度数 % 度数 % 度数 %
携帯電話 122 63.5% 128 69.2% 134 64.4% 117 68.8%
スマートフォン 74 38.5% 70 37.8% 80 38.5% 64 37.6%
パソコン(自分保有) 123 64.1% 126 68.1% 133 63.9% 116 68.2%
パソコン(家族で保有) 82 42.7% 82 44.3% 88 42.3% 76 44.7%
タブレット PC 8 4.2% 7 3.8% 8 3.8% 7 4.1%
携帯型 WIFI 9 4.7% 10 5.4% 9 4.3% 10 5.9%
自宅の LAN 回線 53 27.6% 48 25.9% 57 27.4% 44 25.9%
その他 0 0.0% 2 1.1% 0 0.0% 2 1.2%
平均値 S.D. 平均値 S.D. 平均値 S.D. 平均値 S.D.
保有ツール数 2.7 0.85 2.5 0.88 2.4 0.9 2.6 0.87
表 2 メール送信ツール(多重回答)
性別 学年
男子(N=192) 女子(N=185) 1 年生(N=208) 3 年生(N=170)
度数 % 度数 % 度数 % 度数 %
携帯電話 120 62.5% 119 64.7% 130 62.50% 110 65.10%
スマートフォン 73 38.0% 70 38.0% 81 38.90% 62 36.70%
パソコン(自分保有) 55 28.6% 65 35.3% 53 25.50% 67 39.60%**
パソコン(家族で保有) 21 10.9% 28 15.2% 21 10.10% 29 17.20%* パソコン(大学) 21 10.9% 25 13.6% 21 10.10% 25 14.80%
タブレット PC 2 1.0% 1 0.5% 3 1.40% 0 0.00%
その他 0 0.0% 2 1.1% 0 0.00% 2 1.20%
平均値 S.D. 平均値 S.D. 平均値 S.D. 平均値 S.D.
保有ツール数 1.52 0.708 1.7 0.75* 1.485 0.801 1.675 0.758**
*:p<.05,**:p<.01
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(3)インターネット閲覧ツール(表 3)
インターネット閲覧に用いている情報ツー ル は 自 分 保 有 の パ ソ コ ン が 最 も 多 く( 男 性 60.4%,女性 65.9%),携帯電話(男性 46.4%,
女性 43.8%)が 40%台でそれに続いていた。
性差,学年差は認められなかった。閲覧ツール 数は男女とも平均 2.0 個だった。性差,学年差 は認められなかった。
表 3 インターネット閲覧ツール(多重回答)
性別 学年
男子(N=192) 女子(N=185) 1 年生(N=208) 3 年生(N=170)
度数 % 度数 % 度数 % 度数 %
携帯電話 89 46.4% 81 43.8% 94 45.2% 77 45.3%
スマートフォン 72 37.5% 65 35.1% 75 36.1% 62 36.5%
パソコン(自分保有) 116 60.4% 122 65.9% 125 60.1% 113 66.5%
パソコン(家族で保有) 62 32.3% 60 32.4% 68 32.7% 55 32.4%
パソコン(大学) 40 20.8% 41 22.2% 39 18.8% 42 24.7%
タブレット PC 3 1.6% 5 2.7% 4 1.9% 4 2.4%
その他 1 0.5% 2 1.1% 1 0.5% 2 1.2%
平均値 S.D. 平均値 S.D. 平均値 S.D. 平均値 S.D.
閲覧ツール数 2.0 0.7 2.0 0.7 2.0 0.7 2.1 0.7
表 4 利用しているソーシャルネットワーキングサービス(SNS:多重回答)
性別 学年
男子(N=192) 女子(N=185) 1 年生(N=208) 3 年生(N=170)
度数 % 度数 % 度数 % 度数 %
mixi 140 72.9% 127 70.9% 146 70.2% 122 74.4%
GREE 43 22.4% 31 17.3% 42 20.2% 32 19.5%
モバゲータウン 44 22.9% 33 18.4% 50 24.0% 27 16.5%*
goo ホーム 7 3.6% 4 2.2% 6 2.9% 5 3.0%
Facebook 36 18.8% 36 20.1% 39 18.8% 33 20.1%
twitter 115 59.9% 100 55.9% 115 55.3% 101 61.6%
その他の SNS 19 9.9% 14 7.8% 19 9.1% 14 8.5%
利用なし 20 10.4% 23 12.8% 24 11.5% 19 11.6%
平均値 S.D. 平均値 S.D. 平均値 S.D. 平均値 S.D.
利用 SNS 数 2.1 1.349 1.9 1.289 2 1.31 1.97 1.33
(4)利用しているソーシャルネットワーキン グサービス(以下 SNS:表 4)
最も利用率の高い SNS は mixi だった(男 性 72.9 %, 女 性 70.9 %)。twitter が そ れ に 続 い て 多 か っ た( 男 性 59.9 %, 女 性 55.9 %)。
Facebook の利用は 2 割程度にとどまっていた
(男性 18.8% , 女性 20.1%)。東京広告協会大学 生意識調査プロジェクト(2012)では,LINE
(90.7%),twitter(87.7%)の利用者が上位を
占めていた。本調査では twitter 利用が 2 位だっ たが,利用者の割合は 6 割弱にとどまっていた。
LINE サービスが開始されたのは 2011 年 6 月 であり,本調査が開始された時期よりもサービ ス時期が遅かったことから,今回の調査の回答 選択肢には含まれていない。
学年別に見ると 1 年生ではモバゲータウンの 利用者が有意に多かった(1 年生 24.0%,3 年 生 16.5%,χ(1)= 3.73,5%水準)。2
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(5)保有メールアドレス数(表 5)
保有メールアドレス数は 2 個という回答が 男女ともに最も多かった(男性 47.9%,女性 42.9%)。メール送信ツールとして携帯電話の 利用率が最も高かったこと,また大学在学中に 配布されるメールアドレス(以下,学内メール アドレス)を所有していることから,主に携帯 電話で用いるメールアドレスと学内メールアド
レスの 2 つを所有していることが予想される。
性差,学年差は認められなかった。なお,3 個,
4 個のメールアドレスを保有している回答者が 男性で 31.8%,女性で 35.4%いた。また少数で はあるが 5 個以上と回答した者もおり,3 割を 超える回答者が,3 個以上のメールアドレスを 保有していることが明らかにされた。
表 5 保有メールアドレス数
性別 学年
男子 女子 1 年生 3 年生
度数 % 度数 % 度数 % 度数 %
0 個 0 0.0% 1 0.5% 0 0.0% 1 0.6%
1 個 35 18.2% 32 17.4% 40 19.2% 27 16.0%
2 個 92 47.9% 79 42.9% 97 46.6% 75 44.4%
3 個 47 24.5% 50 27.2% 54 26.0% 43 25.4%
4 個 14 7.3% 15 8.2% 14 6.7% 15 8.9%
5 個以上 4 2.1% 7 3.8% 3 1.4% 8 4.7%
(n. s.) (n. s.)
表 6 ネット上の自己表現効力感
性別(n. s.) 学年
男子 女子 1 年生 3 年生
度数 % 度数 % 度数 % 度数 %
十分表現できる 12 6.3% 9 4.9% 13 6.3% 8 4.70%
ある程度表現できる 83 43.7% 66 35.7% 81 39.1% 68 40.20%
どちらとも言えない 45 23.7% 50 27.0% 59 28.5% 37 21.90%
あまり表現できない 44 23.2% 50 27.0% 46 22.2% 48 28.40%
全く表現できない 6 3.2% 10 5.4% 8 3.9% 8 4.70%
(n. s.) (n. s.)
(6)ネット上での自己表現効力感(表 6)
ネット上で,どの程度自己表現ができている かという問いに対し,「十分表現できる」「あ る程度表現できる」と回答した者が男性では 50.0%,女性では 40.6%だった。4 割を超える 回答者がネット上での自己表現への効力感を示
している。しかしその一方であまり表現できな い,全く表現できないと回答した者が男性では 26.4%,女性では 32.4%だった。3 割前後の回 答者がネットでの自己表現に否定的であること が示された。性差,学年差は認められなかった。
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(7)ネット上でのコミュニケーションスキル
(表 7)
ネット上でのコミュニケーションが得意かど うか(以下コミュニケーションスキル)という 問いに対して,「得意な方だと思う」「ある程度 は得意な方だと思う」と回答した者が男性では 36.5%,女性では 28.6%と 3 割前後の回答者が
ネット上での自分のコミュニケーションスキル を肯定的に捉えていた。一方,「あまり得意で はないと思う」「全く得意ではないと思う」と 回答した者が男性で 28.6%,女性で 35.1%と 3 割程度の回答者が自分のネット上でのコミュニ ケーションスキルに否定的だった。有意な性差,
学年差は認められなかった。
表 7 ネット上のコミュニケーションスキル
性別(n. s.) 学年
男子 女子 1 年生 3 年生
度数 % 度数 % 度数 % 度数 %
得意な方だと思う 10 5.20% 6 3.20% 10 4.80% 6 3.50%
ある程度は得意な方だと思う 60 31.30% 47 25.40% 59 28.40% 48 28.20%
どちらとも言えない 67 34.90% 67 36.20% 82 39.40% 53 31.20%
あまり得意ではないと思う 50 26.00% 52 28.10% 50 24.00% 52 30.60%
全く得意ではないと思う 5 2.60% 13 7.00% 7 3.40% 11 6.50%
(n. s.) (n. s.)
表 8 ネット上のコミュニケーションで不快な思いをしたことがあるか
性別(n. s.) 学年
男子 女子 1 年生 3 年生
度数 % 度数 % 度数 % 度数 %
全くない 34 17.7% 32 17.4% 42 20.2% 24 14.2%
過去に一度くらいはある 49 25.5% 57 31.0% 54 26.0% 52 30.8%
2〜3 度ある 73 38.0% 57 31.0% 70 33.7% 61 36.1%
けっこうある 35 18.2% 35 19.0% 40 19.2% 30 17.8%
頻繁に有る 1 0.5% 3 1.6% 2 1.0% 2 1.2%
(n. s.) (n. s.)
(8)ネット上での不快経験(表 8)
ネット上のコミュニケーションで不快な思い をしたことがあるか(以下,不快経験)との 問いに対し,「全くない」と回答した者は男性 17.7%,女性 17.4%にとどまっており,8 割以 上の回答者が程度の差はあれ,ネット上でのコ ミュニケーションで不快な経験をしていること
が示された。このうち,「結構ある」「頻繁にある」
と回答した者が男性で 18.7%,女性で 20.6%と 2 割前後おり,これらの回答者はネット上での コミュニケーションに負担を感じている可能性 があると考えられる。性差,学年差は認められ なかった。
自己表現効力感,コミュニケーションスキル,
不快経験の 3 変数の相関係数を男女別に算出し たところ,男性では自己表現効力感とコミュニ ケーションスキルとの間に .60 の有意な相関が
見られた。女性では自己表現効力感とコミュニ ケーションスキルとの間に .41 の有意な相関が 見られた。男女ともネット上での自己表現が上 手くできると感じている者ほど,ネット上での
研究論文 宮本 聡介
大学生のインターネットを介したコミュニケーションの特徴とその類型化の試み
コミュニケーションが得意であると感じている ことになる。ただし相関係数の値は男性の方が 高く,この傾向が男性でより顕著である可能性 がある。また,自己表現効力感,コミュニケー ションスキルは不快経験とは有意な関連を示さ なかった。本調査対象者の中では,ネット上で の自己表現の効力感やコミュニケーションスキ ルと不快経験との間に関連は見いだされなかっ たことから,ネット上での不快経験はコミュニ ケーションスキルの巧拙とは無関係に経験する ものなのかもしれない。
上記 3 変数と SNS 利用数との相関係数を算 出したところ,男女ともコミュニケーションス キルと SNS 利用数との間に有意な正の相関が 見られた(男性 r=.24,p < .001,女性 r=.25,
p < .001)。これはネット上でのコミュニケー ションスキルが高いと認識している者ほど,多 くの SNS を利用していることを意味している。
この 2 変数の因果関係をここで推測することは 難しいが,SNS の利用にコミュニケーション スキルの自己評価が関わっていることが本研究 から示唆された。
クラスター分析
インターネット行動は,ユーザーを取り巻く インターネット環境によってその行動が大きく 異なることが予想される。例えば,携帯電話と スマートフォンではインターネットへのアクセ スしやすさが異なる。そのため,スマートフォ ンユーザーではスマートフォンがインターネッ トアクセスの主要ツールとなり得るが,携帯電 話ユーザーでは別のツールに依存する可能性も ある。そこで本調査では,表 1〜表 5 に関連す る質問項目を投入し,WARD 法による階層的 クラスター分析を行い,インターネット行動の 特徴から,回答者をグルーピングすることを試 みた。2 クラスター解から順にクラスターを増 やし,その都度クラスターの特徴を解釈して いったところ,5 クラスター解において興味深 い特徴が抽出された。本研究では 5 クラスター 解を採用したクラスター分析の結果を報告する
(表 9)。以下に解説するように,インターネッ ト行動に主にどの情報ツールを活用しているか という点から,5 つのクラスターの特徴を記述 することができる。
表 9 インターネット利用行動にもとづいたクラスター分析結果
携帯依存層 パソコン利用層 スマホ依存層 SNS 活用層 無関心層
N=96,25.7% N=51,13.7% N=66,17.7% N=62,16.6% N=98,26.3%
情報ツール数 少ない 多い 少ない 少ない 少ない
具体ツール 携帯 パソコン(自己所有)
自宅の LAN 回線
スマホ スマホ 携帯
メール送信ツール数 中程度 多い 少ない 少ない 少ない
具体ツール 携帯 パソコン(自己保有) スマホ スマホ 携帯
ネットアクセスツール数 中程度 多い 中程度 多い 少ない
具体ツール 携帯 パソコン(自己保有) スマホ (スマホ)
利用 SNS 数 中程度 多い 中程度 多い 少ない
利用 SNS mixi, twitter mixi,gree,モバゲー,
Facebook, twitter
自己表現効力感 高い 中程度 低い 高い 低い
コミュニケーションスキル やや高い 中程度 低い 高い 低い
不快経験 多い 多い 中程度 多い 少ない
学年 3 年 1 年生
研究論文大学生のインターネットを介したコミュニケーションの特徴とその類型化の試み
第 1 クラスターは情報ツールに携帯電話を用 いており,他のツールとの併用の少ない,携帯 電話に極端に依存したクラスターであることか ら携帯依存クラスターと命名した。第 2 クラス ターの主要な情報ツールは自分所有のパソコン である。ネットアクセスツール数が多いことか ら,パソコンのみを使用しているのではなく,
携帯電話やスマートフォンを併用している可能 性が高いが,メール送受信やインターネットア クセスの主要ツールとしてパソコンを使用して いるユーザー像が伺え,パソコン利用クラス ターと命名した。第 3 クラスターは情報ツール にスマートフォンを用い,他のツールとの併用 の少ない,極端にスマートフォンに依存した利 用者クラスターであることから,スマホ依存ク ラスターと命名した。第 4 クラスターは第 3 ク ラスター同様スマートフォンに依存したクラス ターである。ただしネットアクセスや SNS の 利用にスマートフォンを活用する傾向が強いこ と,また複数の SNS サイトのユーザーアカウ ントを所有し活用している点が第 3 クラスター と異なることから,SNS 活用クラスターと命 名した。第 5 クラスターは携帯電話以外の情報 ツールを持ち合わせず,またメール送信ツール,
ネットアクセスツール数,利用 SNS 数が少な いなど,インターネットに無関心な様子が伺え ることから,無関心クラスターと命名した。以 上の 5 クラスターについて,学年差を検討した ところ,パソコン利用クラスターには 3 年生が 多く,SNS 活用クラスターには 1 年生が多かっ た(χ(1)=14.22,p < .001)。性差は認めら2 れなかった。
次に,5 クラスター間の自己表現効力感,コ ミュニケーションスキル,不快経験を比較する ために一元配置分散分析を行ったところ,い ずれの尺度も有意だった(自己表現効力感 F
(4,368)=22.8,p < .001: コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ンスキル F(4,368)=30.3,p < .001:不快経
験 F(4,368)=16.8, p < .001)。以下に多重比 較の結果を述べる(Duncan,5%水準)。
自 己 表 現 効 力 感 は 携 帯 依 存 ク ラ ス タ ー と SNS 活用クラスターが最も高く,他のクラス ターと有意な差が見られた。スマホ依存クラス ターと無関心クラスターは他のクラスターに比 べて自己表現効力感が有意に低かった。コミュ ニケーションスキルは SNS 活用クラスターが 他のクラスターに比べて有意に高かった。スマ ホ依存クラスター,無関心クラスターはコミュ ニケーションスキル得点が他のクラスターに比 べて有意に低かった。不快経験は携帯依存ク ラスター,パソコン利用クラスター,SNS 活 用クラスターが有意に多かった。無関心クラス ターでは不快経験が最も少なかった。以上のこ とから,携帯依存クラスターや SNS 活用クラ スターは,携帯電話,スマートフォンを活用し た積極的なインターネット行動が行われている ことがわかる。
Ⅲ.まとめ
本調査の結果から,携帯電話やスマートフォ ンを中心に,自分保有のパソコンも利用しなが ら,メールコミュニケーションを行っている基 本的な若者像が浮かび上がってくる。1 年生よ りも 3 年生の方がメール送信ツール数が多いこ とから,インターネット経験を重ねるにつれ,
ネットアクセスデバイスが多様化していると言 える。最も利用している SNS は mixi だった。
ただし,民間調査の近年の結果を総合的に判断 すると,数年後には他の SNS サービスが主流 になっている可能性は否定できない。
半数の回答者はネット上での肯定的な自己表 現効力感を示していた。また 3 割前後の回答者 が自らのネット上でのコミュニケーションスキ ルを肯定的に評価していた。その一方で 3 割前 後の回答者の中に,ネット上での自己表現効力
研究論文大学生のインターネットを介したコミュニケーションの特徴とその類型化の試み 宮本 聡介
感,スキルを否定的に捉えている。また 8 割を 超える回答者が,程度の差はあれ,何らかの形 でネット上で不快経験をしている。こうした若 者がネット上での対人コミュニケーションに慣 れず,戸惑い,不安を感じ,不適応を起こして いないかどうか,今後,見守っていく必要があ ると考える。
クラスター分析の結果から,大学生を中心と した現代の若者を,ネット上でのコミュニケー ションの特徴から 5 つの類型に分類することが 可能ではないかということが示唆された。具体 的には「携帯依存」「パソコン利用」「スマホ依存」
「SNS 活用」「無関心」の 5 つのクラスターで ある。携帯依存と SNS 活用の 2 クラスターで は自己表現効力感が高かった。また SNS 活用 クラスターではコミュニケーションスキルが高 かった。スマホ依存クラスターはコミュニケー ションスキルが低かったが,これは,スマート フォンを保有するにとどまり,あまりスマート フォンの持つ種々の機能を活用していないこと と関連があると考えられる。
本研究では,各種インターネット情報ツール 利用の側面に焦点を当て分析を行った。その一 方で,例えば宮本(2009,2011)では携帯電話 に登録されている友人数が自尊心と正に相関す ることなどが報告されている。また各個人が持 つ SNS コミュニティーが個人に与える影響を 探る研究も次第に増えて来ている。今後はこう した SNS コミュニティーの性質と対人コミュ ニケーションの問題とを結びつけた研究も必要 になると考えられる。
引用文献
公益社団法人東京広告協会大学生意識調査プロ ジェクト(FUTURE 2012)(2012).「大学 生と友人関係」に関する意識調査(http://
www.tokyo-ad.or.jp/pdf/FUTURE2012.
pdf)
総務省(2012).平成 24 年度版情報通信白書.
宮本聡介(2011).友人ネットワークサイズと 社会的自尊心の関連―日米大学生の比較―
明治学院大学心理学紀要,22,61-72.
宮本聡介(2009).友人ネットワークサイズと 自尊心の関連について 明治学院大学心理 学紀要,20,19-26.
NTT ア ド(2012). デ ジ タ ル コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ラ イ フ 調 査(http://www.ntt-ad.
co.jp/research̲publication/research̲
development/report/120515/index.html)