9
炭素鋼の二段二重重複繰返し衝 撃引張試験について*
斎藤 葆 宮野泰治
StudyonRepeatedTensionlmpactTestunderDouble RepeatedEnergyinTwolmpactEnergyLevelsOn
CarbonSteels.
ShigeruSAIToandTaijiMIYANo
繰返し衝撃試験機用であり, (b)はシャルピー式衝撃 試験機に用いたものである。ともに試験片平行部分の直 径は6mmであり,機械仕上げ後, 表面をエメリーペ ーパー禅0000まで研摩仕上げを施した。
1緒 言
繰返し衝撃引張試験によって得られる衝撃曲線すなわ ち単一衝撃試験による衝撃値(N=1)よりN=106に 耐えうる繰返し衝撃エネルギまでを求めた曲線に不連続 点が存在することは炭素鋼,銅合金, アルミニウム合金 などを供試材料とし実験を行った結果として既に発表し
1,〜3)
た。この不連続点を境として上部は塑性疲労域,下部は 真の疲労域と区分され,真の疲労域は普通に行われる高 サイクル疲労に対応する範囲である。
高サイクル疲労における重複繰返し応力の疲労試験は 幾多の研究が発表されているが,本報においては真の疲 労域において二種の炭素鋼を供試材料とした二段二重重 複繰返し衝撃引張試験を行って,一次衝撃エネルギを E1,二次衝撃エネルギをE2とすればE,<E2の場合と E,>E2の場合について,2(n/N)=1で疲労破壊がお
4)
こるというMinerの法則を適用しうるかどうかについ て考察した。その結果を報告する。
2実験方法および供試材料
実験の大部分は藤井式万能繰返し衝撃試験機を使用し た。容量5〜40kg‑cm,毎分衝撃回数600であり, カ ムローラーにより衝撃ハンマーを上下往復運動させる型 式である。処女材料の衝撃疲労曲線の高エネルギの範囲 には30kg‑m容量のシャルピー式衝撃試験機の衝撃引 張装置を用いた。
供試材料として軟鋼と硬鋼を供給状態のまま用いたが その化学成分, 機械的性質は表1と2に示す通りであ る。試験片の形状と寸法を図1に示した。 (a)は万能
表1 化学成分 (%)
材料 C Si Mn P S
0.59 0.042 0.44 0.030
鋼鋼︲OI1硬軟
0.58 0.17
0.28 0.14
0.027 0.037
表2 機械的性質
降伏点びs 引張強さびB 絞り
材料 伸び かたさ
(kg/m2)│(kg7iinm2)│s(%) │"(%)│ Hv
(kg/mm2)(kg/mm2)s(%) Hv
706 2ラ71
45.7 30.6
鋼鋼硬軟
44.1
31.8
45.1
66.7
258311
’
(a)
W1/2
(b)
*昭和4拝5月24日, 日本機械学会東北支部郡山地方講
演会において講演 図1 試験片形状
毎−20つ■
一 ●
乱 .
3実験結果および考察 3. 1 処女材料の衝撃疲労曲線
処女材料の衝撃疲労曲線を図2に示した。硬鋼,軟鋼 をそれぞれ丸と三角のマークで現わし,塑性疲労域に属 するものは白く,真の疲労域のものは黒くしてあり,さ らにシヤルピー式衝撃試験機を用いたものは小さい黒 丸を加えてある。不連続点の衝撃エネルギは硬鋼では 1.4kg‑cm/mm2,軟鋼ではO.42kg‑cm/mm2であり,
N=106に耐え得た衝撃エネルギはそれぞれ0.15kg‑cm /mm2, 0.07kg‑cm/mm2であった。
051
10電冬§︲塁︶酎斗今幕叶婆迩恭Ⅱ
1 0
10 103
繰返し数N2
100
I
図3 二次衝撃による衝撃疲労曲線
(硬鋼E,=0.6kg‑cm/mm2)
11
︵富くE吟︲豊︶画諦会特叶欝顛ヨ製篭E2の場合とでは全く異なった様相を呈しており,E,<
E2の場合は破断繰返し数が処女材料のそれよりも増加 しており,E2がE1に近いほど,すなわちE,とE2の比が 小さいほど増加の割合は大きい。また一次衝撃の繰返し 数比n,/N&が大きいほどその傾向が大きくなっており 一次の繰返し衝撃によってかえって強化されているよう に思われる。表3(a)の聾(n/N)はn,/N」が大きいほ
ど大きな値となる傾向を示しており,最大値はn,/N,=
0.75,E2/E,=1.17におけるz(n/N)の値は4.41で あり, ,より小さいものは全くなかった。
← 1
0 仁
1『 1『 10、 1『 1『
操返し数N 1 10
図2 処女材料の衝撃疲労曲線
3.2二段二重重複繰返し衝撃による衝撃疲労曲線 一次衝撃エネルギE1の選定は二次衝撃エネルギE2J:
り大きい場合と小さい場合の効果を明確にする目的で不 連続点の衝撃エネルギとN=106のそれとのおよそ平均 の値をとり,硬鋼では0.6kg‑cm/mm2,軟鋼では0.2 kg‑cm/mm2とした。その場合にE,によって破断する と推定される予想繰返じ数N1は図1の曲線からそれぞ れ3.50×104, 15.0×104である。
3. ,2.1硬鋼を供試材料とした場合
E1を0.6kg‑cm/mm2とし, その予想破断繰返し数 N,の25%, 50%および75%の繰返し数だけを加え, 得 たる結果を表aに示した。E,を予め与えた試験片を処 女材料と承なしてプロットすれば図3のようになる。
E,=E2(=0.6kg‑Cm/mm2)のものは図2の曲線より
1. 0
︵直ぐ§︲望︶画塒当馬H諜還鴬川
5
累加繰返 し数N
図4 累加衝撃疲労曲線(硬鋼)
。■■■■
4Jへ
、 、b、
、、▽、△ 、¥
、 鳥
▽
、
、K
▽
詮
‐−−−−−
︑↓︑ ︑
︑△
一
E,=0.6kg・cmh㎡
0557●︒00
↑吟
一一一一一
《
】
、
叡
シャルピ 1
才
一式 蕗
l 井式
−一一 硬軟 ●鯛鯛
一一一ヨ
塑性疲労 真の疲労
1 1 1
ベ
−0−盆 ざ芝砥 △八斑
白
乏半、
、 、、
炭素鋼の二段二重重複繰返し衝撃引張試験について
表3 実 験 結 果 (硬鋼)
11
(a) E,<E2
ー
二 次 衝 撃
一次衝撃 累績繰返し数比
2(n/N).
試験片
番号 繰返し数繰返し数比
n2 ‑ 「n2/N2 繰返し数比
ni/N】
衝撃エネルギ E2(kg‑cm/mm2)
衝撃エネルギ
E, (kg‑cm/mm)
1.57 1.82 1.64 1.45 1.68 1.50 1.15 2.16 3.72 2.78 1.78
3.31 2.91
‑4.41 2.78×104
3.63×〃
3.60×〃
3.15×〃
4.15×〃
2.12×〃
1.49×〃
4.05×〃
8.98×〃
6.60×〃
2.18×〃
6.41×〃
5.60×〃
10661×〃
1.32 1.57 1.39 1.22
1.43 1.00 0.65 1.66 3.22 2.28 1.03 2.56 2.15 3.66 1.01
0.90 0.80
〃
0.70 1.00 0.89 0.80 0.70
505
2〃〃〃〃5〃〃〃〃〃〃〃〃000
β〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃0
3457602415610233333444445555
〃
1.00
0.85 0.79 0.70
(b) E,>E2
4旧〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃××××・×××××××××××××××12032050511198609530087057700467412620●●●●●●●●●︲●●●●●●●●●●4651692234533113330
132112
0.97 1.18 0.83 1.03 1d00 0.72
0.93 0.58 0.78 0.75 0.46
0.40 0.30 0.25 0.17 0.15 0.40 0.35 0.31 0.25
〃
0.20 0.17 0.40 0.35 0.25 0.20 0.16 0.13 6.″″″″″″″″″″″″″″″″・″″0
505
2〃〃〃〃〃5〃〃″〃〃〃〃〃〃〃〃〃000
︵叩︶40▲︹ノ今/︻︶﹃″″︲︵叩叩︶︵冬●一向く.−4斗▲﹃″〃巳F︻″〆41▲︵ソ︽4Ⅱユ︵Ⅱ︺4二44︵ぺ●〆/h︶︵︶︵︶
〆︽恥︶/︹︶〆︹︶!︒/︹︺l︲ン垂︹︶﹃″︲/︹︶﹃″.﹃″︲﹃″″ら﹃〃〃q←ウ″8←︲︻″〃︒︵又︑︾︲→︵︶︵︶↑︐︵︶︵︶︵︶︵︶︹︶︵︶︵︶︵︶
0.92 0.84 0.81 0.77 0.86 1.02 0.79 0.98 0.90 0.%
0.89 0.80 0.42
0.34 0.31 0.27 0.36 0.52 0.29 0.23 0.I5 0.21 0.14 0.05
E,>E2の場合は強化の現象はゑられず,2(n/N) の値は1より小さいか近似的に1であった。
図4はn,/N、と等しい繰返し数の二次衝撃を与えた としてそれに実験による二次衝撃の破断繰返し数n2を 加えた換算繰返し数を横軸にとって示した累加衝撃疲労 曲線である。これによって上記のE,<E2,E,>E2の 場合の現象が明らかに見られ,E,=E2の点で曲線はい
ちじるしく屈曲している。また聾(n/N)とE2および
一次二次衝撃エネルギ比E2/E,との関係を図5に示し たoE1<E2の場合はn,/N,が0.25ではE2によるZ (n/N)の大きい変化は承られないが, n,/N,が0.50 から0.75と一次の繰返し数比が大きくなるとE2がE, に接近するほどz(n/N)の値は増大している。E,>
E2の場合はE2の大小にかかわらずz(n/N)の値は大 きい増減が承られなかった。
異は観察されなかった。2(n/N)はE,<E2の場合は 1の前後に分布しており,E,>E2の場合はすべて1よ り小さかった。図6は図3と同じ方法で現わし燭もので
1.0
5
●0
宿導︑5︐蟹︶酎琲会祷叶餅鍾気川
口
0.1
1炉
1ぴ 1炉
繰返し数N2
図6 二次衝撃による衝撃疲労曲線
(軟鋼E,=0.2kg‑cm/mm2) 曲線には大きな屈曲はあらわれていない。図7は図4と 同様な方法で書いた累加衝撃疲労曲線で処女材料の曲線 のE,の点で交わっているのがわかるが,非常に接近し ており,硬鋼の場合と比較すれば近似的にはMinerの
4,
法則に従っていると見ることができる。図5と対比され る図8において聾(n/N)の値はn,/N]やE2の大き さによって大きく影響されず,曲線が交わっている
1.5
0510
画︑酋聟琲会梼叶篭軍鶏川無I
1.0
5
●0
電員︑§︲望︶酎群会特H割迩莞川
2 4
Z(d/N)
J,2k厘一Er 0.2k厘一cm/、
図5 2(n/N)と衝撃エネルギの関係
(硬鋤
3.2.2彰鰯を供試材料とした場合
n,/N,を0.25および0.50としてE,=0.2kg‑cm/
rnrn2を予め加え,さらにE2を破断まで与えて得たる結 果は表4に示す通りである。軟鋼では硬鋼の場合に見ら
0.1 ー
1炉
累加繰返し数N
1『
図7 累加衝撃疲労曲線(軟鋼)
黄
〈=0.2kg‑函加且デ
ーーq■■‑ー‑■■■■■■一一一一一一一一
nL
■■■■
、
入
、
、
戸011︽U〃
︶一グ
ググ
、V ,、
ハハづ
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一
1
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︶︐llllII︑rt ‑一一・・・一・○・・一・
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0.露一 0.50
−−−←q75
●I 1
−−−−−
炭素鋼の二段二重重複繰返し衝撃引張試験について 表4 ‐実 験 結 果 (軟 鋼)
13
(a) i E,<E2
二 次 衝 撃
一次衝撃 累績繰返し数比
2(n/N) 試験片
番号
−
繰返し数
,2
衝撃エネルギ 繰返し数比 E,(Kg‑cm/mm2) │ ‑n,/N」
繰返し数比 n2/N2 衝撃エネルギ
E2(kg‑cm/mm2)
4蛆〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃××××××××××××××××821013298121980800750102474035570●●●●●●●●●●●●●●●3735575074353664
1
0.77 1.32 0.80 1.06
0.88 1.04 0.69 1.15 0.90 1.28 1.00 1.13 0.93 1.23 1.09 0.92 0.52
1.05 0.55 0.81 0.63 0.79 0.44 0.90 0.65 0.78 0.50 0.63 0.43 0.73 0.59 0.42
50
2〃〃〃〃〃〃〃〃ら〃〃〃〃〃〃00
0.440.40
〃
〃
0.35 0.30 0.25
〃
〃
0.44 0.40 0.34
2︒″″″″″″″″″″″″″″″0
0415267395681239222222.2221111111
〃
0.30 0.26 0.25
(b) E,>E2
I 11.31×104
17.00×〃
14.46×〃
15.86×〃
91.00×〃
14.20×〃
9.01×〃
10.03×〃
15.69×〃
0.15
〃
0.14 0.12
〃
0.15 0.14 0.12
50
2〃〃〃〃5〃〃〃00
0.470.67 0.54 0.39
(非
(
0.33 0.25 0.38
0.72 0.92 0.79 0.64 断)
)
0.83 0.75 0.88
2︒″″″″″″″″0
3476925触加
I
’
破〃’
〃
昭和46年1月
E1=E2の点以下において2(n/N)がやや減少してい
る傾向が見られた。
雷目50碁︶酎斗会梼H斜鱈気川
2 04
3
11
画︑国墨聯会梼H謝逼黒川黒I
0
0 10 20
ど (%)
図9 二次衝撃エネルギE2と伸び との関係(硬鋼)
0
21
0. 0
1.0
5
●0
宿這§︲基︶酎斗会梼H誤轌係Ⅱ
1 2
Z (n/N) 図8 2(n/N)と衝撃エネルギと
の関係(軟鋼)
1
1
3.3塑性変形について
試験片破断後における塑性変形については,伸びは標 点距離を40mmとして, また絞りは万能投影器を用い て測定を行ったが,軟鋼の場合は重複衝撃による伸びと 絞りはそれぞれ処女材料の衝撃エネルギー伸び曲線,衝 撃エネルギー絞り曲線の周囲に散布し,注目するべき何 らの傾向も見いだすことはできなかった。硬鋼の場合は 図9に示すE2と伸びの曲線において,E,>E2の範囲 ではn,/N,の大きいものほど伸びも大きく,処女材料 よりはいずれも増加しているoE1<E2になる付近で曲 線は交わっているが,それぞれの曲線自身の形状には大 きな変化はあらわれていない。 これに対してE2と絞り の関係は図10に示す曲線のように,E,>E2の範囲では E2の大きさがE1に近づくにつれて絞りは増大しており n,/N!が大きいほど絞りは大きくなる傾向があるoE』
<E2になると曲線は処女材料のそれに類似した形状と
0.1
0 10 20
紗 (%)
図10 二次衝撃エネルギEと絞りや の関係(硬鋼)
30
曲線のE,=E2の点の上下を置換したような形状となっ ているのは興味ある現象である0
4結 言
通常の疲労試験において二段二重重複繰返し応力の場
■
〃
O
函
4■■■■
…
nm/Ni 一一●−− 1 (処女材料)
−−つ‑−0.25
一一圭一 q50
−.−千− 0.75
|
○I
1
−−0f
一
○△
△
I↑
ユ
八
− ○を
一
l0J0JⅢ叩
箕
−
「
△○
n'/N,
−
5025●●0.0一一
一考
’
I I I
.‐/
ー−−−−−E,=0.6kg‑cmmnf
〜
、
、
妙 nj/N,
=1 (処女材料)
5025●●00
一
一 一
◇一一
‑‑‑←0.75
炭素鋼の二段二重重複繰返し衝撃引張試験について 15
(3)重複衝撃による塑性変形は硬鋼におけるE,>E2 の場合,E2と絞りの曲線に大きい屈曲が承られた。
以上の実験を行うにあたって終始協力していただいた 柴山幹男,小玉久男,田村寿朗の諸君に厚く謝意を表す
る。
の場合は聾(n/N)>1となり, 。,>o2の場合はz(n/
5)
N)<1となる傾向があると言われているが,本報の 衝撃疲労試験においても同様な傾向があらわれ,特に硬 鋼の場合において明らかであった。硬鋼ではMinerの 法則に従わないが,軟鋼ではほぼ従うと承なし得る。4)
得たる結果を要約すれば次の通りである。
(1)硬鋼においてE,<E2の場合は全部が蟹(n/N)
>1であり, n,/N]が大きいほど, またE1とE2の 比が小さいほどz(n/N)は大きくなる。E,>E2 の場合は1の前後に分布するが, n,/N」が0.5, 0.75ではほとんど2(n/N)<1であった。
(2)軟鋼ではE,<E2,E1>E2の場合で著しい差異
参 考 文 献
1)藤村,斎藤材料試験8, 71, 673(1959)
2)藤村,斎藤材料試験11, 109, 613(1%2)
3)藤村,斎藤材料 12, 119, 594(1%3)
4)M.A.Miner, J.Appl.Mech., 12(1945),
A−159.
5)例えば日本材料学会編、'金属の疲労〃302
(1%4) 丸善
河本実 、、材料試験〃 141 (1%5)朝倉書店 は見だし得なかったが,E,<E2では1よりわずか
に大きいか近似的に1であり,E,>E2の場合は 2(n/N)はわずかに1より小さく,E2の大きさに
よる著しい変動はない。
昭和46年1月