研 究 ノ ー ト
発 展 途 上 国 と経 済 体 制
所 哲 也
11)ま えが き
「か つて は ア ジァの米 びつで あ った ビル マ を 国際 的 救 貧 者 に転 じさせ て しま っ た の は,16年 間 に わ た る"BurmeseWaytoSQcialism。 で あ っ た 。 … … 中 略 … … 仏 教 の修 道 僧 さえ も迷 惑 を こ うむ って い る。 彼 らの僧 衣 は,伝 統 的 な あ の輝 く緋 色 で は な くて うす 汚 れた え び 茶色 に な って い る が,そ れ は政 府 管 理 が ビル マ人 の行 うサ フ ラ ン染 料 の 生 産 を妨 げ て い る か らで あ る。」 これ は社 会 主 義 経 済 体制 の 混迷 と欠 陥 につ いて 特 集 号 を 組 ん だ1978年3月13日 付 の 米 国 の 週刊 誌 『タ イ ム』 の一 節 で あ るが,一 人 ビル マ のみ な らず,最 近,共 産 圏 諸 国 は もと よ り,西 欧 の先 進 社 会 民 主 主 義 国 や 政 府介 入度 の 強 い混 合 経 済 国 を も含
ヒ
め て,集 権 的 計画 経 済 体 制 の 色 彩 の 濃 い 国 々 の経 済 的停 滞ぶ りを伝 え る報 道 が し き りで あ る。
本 研 究 ノ ー トの 目的 は,こ う した 背 景 を受 けて,集 権 的計 画経 済 体 制 を 採 用 す る発 展 途 上 国 と分権 的市 場 経 済体 制 に依 拠 す る発 展 途 上 国 とで,そ の発 展 水 準 に つ い て,体 制 別 グ ル ー プ間 に有 意 の 差 異 が 認 め られ るか ど うか を検 証 す る こ とに あ る。 多 種 多様 な政 治 ・経 済 体 制 を と る第 三世 界 の 国 々 の 中で も,社 会 主 義 グル ー プの 経 済 発展 の立 遅 れ が,資 本 主 義 グル ー プや 混 合経 済 グ ル ー プ に 比 較 して,次 第 に 目立 つ よ うに な って き た か らで あ る。
以 下 本 稿 で は,全 部 で94か 国 の 発展 途 上 国 を と りあ げ,そ れ らを3っ の経 済 体 制 グ ル ー プ に分 類 し,様 々 な 指 標 に つ いて,そ の発 展 水 準 を 比 較 し,分 権 的
原稿受領 日1984年8月14日
ω 本稿 は,資 料整理 と統計処理の面で北大経済学部 の嶺野幸子助手の協力を得た。 こ こに謝意 を表する。
(2)7̀mε,1978年3月 工3日号.P13.
〔11〕
12
商 学 討 究 第35巻 第2。3号市 場経 済 に信 を お く国 々の 方 が,多 くの 指 標 に お い て相 対 的 に勝 れた 成 果 を あ げ て い る こ とを指 摘 す る もの で あ る。
②3っ の経 済 体 制
こ こで は,世 界銀 行 の発 行 して い る 彗Vor昭Dθ ひeZopπLθ就Rθporε ヱ983。
で デ ー タの 利用 可 能 な94の 発 展 途 上 国 を上 記rタ イム』 の 分 類方 法 に従 って, 次 の よ うな3つ の グ ル ー プ に分 類 す る 。、
第1の グル ー プ は,全 部 で27か 国 で,中 国,ベ トナ ム,キ ュー バ な ど の よ う な マ ル クス ・レー ニ ン主 義 を信 奉 す る 国 々 と,ア ル ジ ェ リァ,タ ンザ ニ ァ,ビ ル マ な どの いわ ゆ る第三 世 界 の社 会 主 義 の国 々 か らな って い て,こ れ を 社 会主 義 経 済 体 制 の 国 と呼 ぶ こ とに す る。 しか し,第 三 世 界 の 社 会 主 義 諸 国 は,そ の 政 治 ・軽 済 体 制 が 非 常 に 複 雑 ・曖 昧で あ り,イ ス ラ ム教 的 社 会 主 義,バ シス ト
的社 会 主 義,家 父 長 的社 会主 義,協 調 的 社会 主 義な ど多 種 多 様 な もの か らな っ て い る ため,厳 密 に 分類 す る こと は か な り困難 で あ る。 第2の グル ー プ は,混 合 経 済 体 制 と名 付 け られ る もの で,政 府 に よ る中央 集 権 的経 済 介 入 が 著 し く高
い レベ ル に まで 浸 透 して い る43の 国 々 で あ る。 これ に は,コ ス タ リカや ポル ト ガ ル な ど の社 会 民 主 主 義 の 発 展 途上 国,メ キ シ コや ブ ラ ジル の よ うな集 権 的 中 進 国,チ ャ ドや イ ン ドの よ うな 計 画 経 済 を ベ ー ス に して い る発 展 途 上 国 が 含 ま れ る。 最後 に第3の グル ー プ と して,ジ ンバ ブ エや フ ィ リピ ンな ど,も っ ぱ ら 分権 的 市 場 経 済 に依 拠 して い る24の 国 々を ・一 括 して資 本 主 義 経 済 体 制 と呼 ぶ こ と に す る 。
以 上 の こ と を 一 つ に ま と め た も の が 第1表 で あ る が,こ こ で は,著 し く1人 当 国 民 所 得 の 高 い 石 油 輸 出 国 で あ る,サ ウ ジ ア ラ ビ ア,ク エ ー ト,ア ラ ブ 首 長
ノ
国 連邦,リ ビア の4つ のOPEC諸 国 は除 外 して あ る。 また,,こ の 表 に お け る 政 治 ・経 済体 制の 分類 は,1978年3月 時点 の もの で あ って,そ の 後 に生 じた クー デ ター や 政 変 に よ る体 制 の変 更 は考 慮 に入 れ て いな い 。 例 え ば,エ ル サ ルバ ド ル や ニ カ ラ グ アは,い ま で は社 会 主 義 経 済 体 制 に分 類 す べ きで あ るか も しれ な
(3)TheWorldBank,WorgdDeひeZopmθ π̀Repor古1983,PP148〜201
(4)丁 伽e,1978年3月13日 号.PP10〜11.
発展途上国 と経済体制 13
第1表 国別経済体制分類 体制
社会主義経済
混
合経済資本主義経済
国. 名
ア フ ガ ニ ス タ ン,ア ル ジ ェ リ ア,ア ン ゴ ラ,イ エ メ ン(南),イ ラ ク,エ チ オ ピ ア,エ ジ プ ト,カ ン ボ ジ ァ,ギ ニ ア,キ ュ ー バ,北 朝 鮮,コ ン ゴ,ザ ン ビ ア,シ リ ア,ソ マ リ ア,タ ンザ ニ ア,中 国,ビ ル マ,ブ ル ン ジ,ベ トナ ム, ベ ニ ン ,マ リ,マ ダ カ ス カ ル,モ ザ ン ビ ー ク,モ ン ゴ リ ア,ユ ー ゴ ス ラ ビ ア,
ラ オ ス.(27か 国)
イ ス ラ エ ル,イ エ メ ン(北),イ ラ ン,イ ン 、 ド.イ ン ド ネ シ ア,ウ ガ ン ダ, ウ ル グ ァ イ,エ ク ア ド ル,上 ボ ル タ,ガ ー ナ,カ メ ル ー ン,ケ ニ ア,
コ ス タ リ カ,コ ロ ン ビ ァ,ザ イ ー ル,シ ラ レ オ ー ネ,ジ ャ マ イ カ,ス ー ダ ン, ス リ ラ ン カ,セ ネ ガ ル,中 央 ア フ リ カ,チ ャ ド,チ ュ ニ ジ ア,ト ー ゴ,ト ル
コ,ド ミニ カ,ナ イ ジ ェ リァ,ニ ジ ェ ー ル,ネ パ ー ル,パ キ ス タ ン,パ プ ア ニ ュ ー ギ ニ ア,バ ン グ ラ デ ィ シ ュ,ブ ー タ ン,ブ ラ ジ ル,ベ ネ ゼ エ ラ,ペ ル ー .ボ リ ビ ア,ポ ル トガ ル,マ レ ー シ ァ,メ キ シ コ, .モー リ タ ニ ァ,モ ロ ッ
コ,ル ワ ン ダ(43か 国)
ア ル ゼ ン チ ン,エ ル サ ル バ ドル,ガ テ マ ラ,韓 国,ギ リ シ ア,ジ ン バ ブ エ, シ ン ガ ポ ー ル,象 牙 海 岸,タ イ,チ リ ー,ト リニ ダ ー ド ・ トバ コ,ニ カ ラ グ ア,ハ イ チ,パ ラ グ ア イ,パ ナ マ,フ ィ リ ピ ン,ホ ン ジ ュ ラ ス,ホ ン コ ン, マ ラ ウ イ,南 ア フ リ カ,ヨ ル ダ ン,リ ベ リ ア,レ ソ ト,レ バ ノ ン(24か 国)
〈注〉 この経済体制分類は1978年3月 時点の ものであ り,そ の後,若 干の国で体制 の変革があ った。例 えば エルサルバ ドル,ギ リシア,ニ カラグアなどで あ る。
い し,ギ リシア は 混 合経 済 グ ル ー プ に分 類 す べ きで あ る か も しれ な い が,本 稿 で と りあ げ られ る考 察 期 間 が 主 と して1960年 代 と1970年 代 とで あ る こ とか らみ て,あ え て 経 済 体制 分類 の組 み替 え は行 なわ なか った 。
③ 指 標 と記号
こ こで は,各 国 の経 済 的発 展 水 準 を測 る のに 有 効 と思 わ れ る27個 の 指 標 を と りあ げ,そ れ らを8っ の グル ー プ に 分類 した。 そ の詳 細 な指 標 の 名 称,単 位, 記 号,デ ー タ年 次 な どは 第2表 に 示 されて い る 。
㈲ グル ープ 別 単 純平 均
これ らの27個 の 全 指 標 に つ い て,各 グル ー プ ご と の平 均 値 を 計 算 した 結 果 が 第3表 に示 され て い る。 これ らの 指 標 は,*印 を付 した もの以 外 は,そ の 数 値' が 大 きい ほ ど高 い 発 展水 準 を示 す の に対 し,*印 を 付 した8個 の 指 標 は,逆 に その 数 値 が 小 さい ほ ど高 い発 展 水 準 を意 味 す る 。
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商 学 討 究 第35巻 第2・3号 第2表 指 標 と 記 号 グル ー プ番 号
指標
記号 指 標 の 内 容 デ ー タ年 次
X正
平均寿命(年) 1981G1命 星 憲 X2 *粗 出生率(千 人 当人数) 1981
X3 *粗死 亡 率(千 人 当人 数) 1981
X4 1人 当GNP(ド ル) 1981
蠣 得噸
.X5 GDP60(百 万 ドル) 1960
X6
GDP81(百 万 ドル)
1981X7 1人 当GNPの 平 均 成 長 率(%)
1960〜1981
X8 GDP平 均 成 長率(A)(%)
1960〜1971
蠣 騒
Xg GDP平 均 成 長率(B)(%)1970〜1981
Xlo 農 業生産平均成長率(%)
1970〜1981
Xl1 工業生産平均成長率(%)1970〜1981
Xl2 肥 料 消 費 量(ヘ ク ター ル 当kg) 1980α纏 潔
X13 エ ネル ギ ー生 産 平均 増加 率(%)1974〜1980
X14 1人 当 エ ネ ル ギ ー消 費(石 炭 換 算kg) 1980
X15 *農 業 のGDP構 成 比(%) 1981
構 業構藻脚 X16 工 業 のGDP構 成 比 て%) 1981
Xl7 総 外 貨 準 備 高(百 万 ドル) 1981
海外 資産G
6 指 標 X18 公的海外資本の流入分(百 万 ドル) 1981
X19
*デ ッ トサ ー ビ ス レ イ シ オ(%)
1981X20 *乳 児 死 亡 率(0〜1歳)(千 人 当 人 数) 1981 X21 *幼 児 死 亡 率(1〜4歳)(千 人 当 人 数) 1981 医療 保 健G
7 指 標
X22
*医 師1人 当人 口(人)1980
X23 *看 護婦1人 当人 口(人) 1980
X24
1日 当 カ ロ リ ー 摂 取 量(カ ロ リ ー)
1980X25 成 人識 字率(%) 1980
魂 育鑛
X26 中学校就学率(%) 1980X27 高等教育就学率(%) 1979
発展途上国 と経済体制
第3表 グル ープ別指標 の単純平均
15
記号 指 標 の 名 称 ・ 内 容 総平均 社会 主義
経済平均
・混 合 経 済 平 均
資本主義 経済平均
X1 平均寿命(年)
56.6 53.5 55.7 61.8
X2 *粗 出生 率(千 人 当人 数) 38.9
41.1 39.3 35.8
X3 *粗 死 亡 率(千 人 当人 数)
13.2 15.3 13.7 10.0
X4
1人 当GNP(ド ル) 1,180.0 664.4 1,088.4 1,781.8
X5 GDP(1960)(百 万 ドル) 2,950.6
3,785.63,085.9 2,015.5
X6GDP(1981)(百 万 ドル) 26,410.9 2,454.4
29,283.422,583.6
X7
1人 当GNP平 均成 長 率(%)2.3 2.2 2.0
3.0X8 GDP(1960‑71)平 均 成 長 率(%)
4.8
3.84.7
5し8Xg GDP(1970‑81)平 均 成 長 率(%)
4.4 4.7 4.1
4.6Xlo
農業生産平均成長率(%)2.6 3.2 2.3 2.7
X11 工業生産 平均 成長率(%)
5.4 6.1 4.7 6.4
X12 肥 料 消 費量(ヘ クタ ー ル 当)〈kg) 470.7 440.0 366.0 718.0
X13 エ ネ ル ギ ー生 産平 均 増 加 率(%)
7.5
8.6 6.87.4
X14 1人 当 エ ネ ル ギ ー 消 費量(石 炭 換 算kg)
829.1 552.9 649.4
1,511.3X15 *農 業 のGDP構 成比(%)
25.2 31.9 25.4 19.4
X16 工 業 のGDP構 成 比(%)
29.1 27.8 28.3
31.9X17 総 外 貨 準 備 高(百 万 ドル)
1,891.9 1,465.9 2,013.9 1,972.7
Xl8 公的海外資本の流入分(百 万 ドル)983.4
654.3 1,242.8727.4
XI9
*デ ッ ト サ ー ビス レ イ シ オ(%) 12.4 12.3 13.7
10.3X20 *乳 児死亡率(千 人当人数)
94.6 108.7
99.3 69.7 X21 *幼 児 死 亡 率(千 人 当 人 数)16.2 19.5
17.010.4
X22 *医 師1人 当 人 口(人)10,675.3 12,914.0
11,350.9 6,810.9 X23 *看 護 婦1人 当 人 日(人)2,966.8
3,547.1 3,335.01,567.1
X241日 当 カ ロ リ ー 摂 取 量(カ ロ リ ー) 2,375.7 2β47.2
2,348.02,461.2
X25 成人識字率(%)
53.5 47.0
49.8 68.2X26 中学校就学率(%)
32.5 31.0 29.4
39.qX27 高等教育就学率(%)
8.7 6.0 8.1
12.53〈注 〉*印 の 指 標 は 数値 が小 さ い方 が 発 展 水 準 が高 い と考 え られ る もの。
16
商 学 討 究 第35巻 第2。3号第3表 の数 値 に よ る と,27個 の全 指 標 の う ち,社 会 主 義 グル ー プ と資本 主 義 グル ー プ との 関係 で い え ば,GDP(1960),GDP(1981),GDP平 均 成 長 率(1970〜1981),農 業 生 産 平 均 成 長 率,エ ネル ギ ー生 産 平 均 成 長 率 の5つ の 指 標 に つ い て は,社 会 主 義 グル ー プ の方 の数 値 が 勝 って い るが,そ れ 以 外 の22 個 の 指 標 に つ い て は 資本 主 義 グ ル ー プ の方 の数 値 が 優 れて い る。 そ して,混 合 経 済 グル ー プ と資 本 主 義 グ ル ー プ と の 関 係 で は,GDP(1960),GDP
(1981),総 外 貨 準 備 高,公 的 海 外 資 本 流 入 分 の4つ の 指 標 に お い て の み 資 本 主 義 グル ー プが 劣.って い るだ け で,残 りの23個 の 指標 に お いて 資本 主 義 グル ー プが 勝 って い る。 更 に,社 会主 義 グル ー プ と混 合経 済 グ ル ー プ との 関係 で は, GDP(1960),1人 当GDPの 平 均 成 長 率,GDP平 均 成 長率(1970〜1981), 農 業 生 産 平 均 成 長 率,工 業 生産 平 均 成 長 率,肥 料 消 費 量,エ ネ ル ギ ー生 産 平 均 増 加 率,デ ッ トサ ー ビス レイ シオ,中 学 校 就 学 率 の9個 の 指標 に お いて 混 合 経 済 グル ー プ は劣 って い るが,残 りの18個 の 指 標 に お い て 混 合経 済 グ ル ー プ の方 が優 れ て い る。 な お,資 本 主 義 グル ー プ と混 合 経 済 グル ー プ が 共通 して,社 会 主 義 グ ル ー プ よ り劣 っ て い る指 標 のGDP(X5とX6)に つ い て は,そ れ が 1国 当平 均 のGDPで あ って,人 口規 模 を 計 算 に入 れ て い ない とい う意 味 で 発 展水準 を示 す 指標 と しては必ず しも適 切 な もの で は ない こ とを考 慮 に 入 れ る と, 資本 主 義 グル ー プ の成 績 の良 さ は さ らに向 上 す る もの と思 わ れ る。
この よ うに,グ ル ー プ別 の各 種 指 標 の単 純 平 均 値 か らみ た分 権 的市 場 経 済 体 制 の 発展 水 準 の相 対 的 な高 さは 明 白 で あ るが,こ う した グル ー プ別 比 較 の 手 法 には注意 しなけ れば な らない 問 題 が 一 つ 含 まれ て い る。 そ れ は 各 グ ル ー プ と も, 全 て の 指 標 に つ い て,そ れ が プ ラス の方 向で あ れ マ イ ナ ス の方 向で あれ,こ の 程度 のサ ンプル数(国 の 数)で は,極 端 な 偏 りを も った少 数 の 国 が 存在 す ると, 平 均 値 全 体 が 大 き く撹 乱 されて しま うと い う問題 で あ る。 例 え ば,社 会 主 義 グ ル ープの1人 当GNP水 準 は 資 本 主 義 グル ー プ の それ の%程 度 に な って い るが, 少 数 の1人 当GNPの 著 しく低 い 国 が社 会 主 義 グ ル ー プ の 中 に 含 ま れ て お り, 少 数 の1人 当GNPの 著 し く高 い 国 が 資 本主 義 グ ル ー プ の 中 に 入 って い る と, そ の両 グル ー プの 単 純 平 均 値 の 差 異 が 必 要以 上 に 大 き くな って しま い,必 ず し
発 展途上 国と経済体制
17
も真 の格 差 を示 す こ と には な らな い で あ ろ う。 この点 に つ い て な ん らか の工 夫 が 必 要 と され る と ころで あ る。 但 し,サ ンプ ル数 が 非 常 に多 くな れ ば,こ の種 の 問 題 は 大 幅 に改 善 され る こと に な る。
⑤ 撒 布 図
単 純 平 均 値 によ る グル ー プ 別比 較 の不 十 分性 を 補 う第1の 方 法 と して,1人 当GNPと1人 当GNP平 均 成 長 率 の2つ の 指 標 に つ いて 撒 布 図 を描 いて み た。
第1図 は,縦 軸 にX4(1人 当GNP)を 測 り,横 軸 にX7(1人 当GNP平 均 成 長 率)を と って,94か 国 全 て に っ い て の 数値 を撒 布 した もので あ る。*印 が 社 会 主 義 国,◇ 印 が 混 合 経 済 国,そ して+印 が 資本 主 義 国 を それ ぞ れ 表 わ して い る。 も しも,社 会 主 義 経 済 体 制 が経 済 的 に停 滞 して い て,1人 当国 民 所 得 水 準 も低 くかっ その 成 長 率 も低 い 水 準 に と ど ま るの に対 し,資 本 主 義 経 済 体 制 は 経 済 活 動 が 旺 盛 で,1人 当 国 民 所 得 水 準 も高 くか つ そ の 成 長率 も高 い水 準 に あ
第1図 撒 布 図(X4とX7) 6説
5000
4000
3000
2000
1000
0
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18 商 学 討 究 第35巻 第2・3号
り,混 合 経 済 体 制 が 両 者 の 中 間 に 位 置 す る とい うの で あ れ ば,そ の こ とが 撒 布 図 に 明示 さ れ るで あ ろ う とい うの が この 図 を描 く こと の意 味で あ る。 その 結 果 は第1図 に示 され て い るよ うに,高 度 に有 意 な もので はな いが,そ の よ うな 仮 設 が あ る程 度 成 立 して い る と考 え て よ い だ ろ う。 ◇ 印 の標 本 は散 らば って い て は っ き り と した傾 向 は 認 め られ な い が,*印 の標 本 は明 らか に1人 当GNPも ま た その 成 長 率 も低 い と ころ に集 中 す るの に対 し,+印 の 標 本 は1人 当GNP
も高 く,そ の成 長 率 も高 い と こ ろに か な り多 く集 る傾 向が 認 め られ るか らで あ る。 本 稿 で はX4とX7の 撒 布 図 だ け しか 描 か な か っ た が,も っ と多 く の 指 標 に つ いて 撒 布 図 を作 成 して み る こ とが 必 要 で あろ う。
(6)ペ ァ別 国際 比 較
3つ の グ ル ー プ の単 純 平 均 値 を比 較 して,グ ル ープ 別 の 標本 間 差異 を検 証 す る と い う方 法 に は,既 述 の よ うに,特 定 標本 国 の極 端 な偏 向数 値 に よ る撹 乱 の た め,平 均 値 に バ イ ア ス が生 ず る とい う困難 が あ っ た。,こ こで は そ う した 難点 を 回 避 す る第2の 方 法 と して,94か 国 の 発展 途 上 国 の中 か ら16か 国(社 会主 義 国 と非 社 会 主 義 国 を 丁 度 半 分 ず つ)を 選 び 出 し,8個 のペ アを つ くって,14個
の指 標 にっ いて 国 際 比 較 を 試 み る こ とに した 。16か 国 の選 定 に際 して は次 の よ うな基 準 に依 拠 した 。(イ)人 口規 模 が ほ ぼ同 じで あ る こ と,(ロ)地 理 的 に 近 接 して い る こ と,(ハ)歴 史 的文 化 的 に類 似 性 を もつ こ と,の3っ の 基 準 で あ
る 。
第4表 に そ の結 果 が 示 され て い る。 各 ペ ア と も上 段 が社 会 主 義 経 済 で,下 段 が資 本 主 義 経 済 な い し混 合 経 済 の 国 で あ る。 この 表 か ら得 られ る結 果 も,さ き の グル ー プ別 単 純 平 均 比 較 の 場 合 と同 じよ うに,多 くの 指 標 に お いて 非 社 会 主 義 経 済 体制 の方 が勝 って いて,グ ル ー プ別 経 済 体 制 間 に 有 意 の 差 異 が存 在 す る と判 定 して よ いで あ ろ う 。
(7)構 造 棒 グ ラフ
グ ル ー プ別 単 純 平 均 法 の もつ 欠 陥 を 回 避 す るた め の も っと体 系 的 な方 法 と し て,最 後 に,構 造棒 グ ラフ を描 いて み よ う。 この 手 法 は,各 指 標 ご とに グ ル ー プ 内部 で の 数値 の分 布 状 態 を 視 覚 化 す る もの で,こ こで は 各 指標 と も数 値 を5
発展途上国 と経済体制
19
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20
商 学 討 究 第35巻 第2・3号段 階 に 分 け て,そ の構 成 分 布 を棒 グ ラ フで 示 して あ る。 但 し,最 大 値 と最 小 値 の 差 の 非 常 に大 きい もの は対 数 ス ケ ール で 示 し,最 大値 と最小 値 の差 の比 較 的 小 さい もの は一 部 に 分布 が偏 らな い よ うに工 夫 を 施 して あ る。
第2図 は,こ の よ うな方 法 で求 め られ た構 造 棒 グ ラ フの 申 か ら,国 別 グ ル ー プ 間 の 差 異 が 比 較 的 よ く示 さ れ て い る と思 わ れ る もの12個 を 選 び 出 して か か げ た もの で あ る。 なお これ らの 図 で,country1は 社 会 主 義 グ ル ー プ を,count‑
rシ2は 混 合 経 済 グル ー プ を,country3は 資本 主 義 グル ー プ を,そ れ ぞ れ表 わ して い る。 こ こで は一 例 と してX4(1人 当GNP)を と り あ げ て み よ う。
こ の 指標 は,最 大 値 と最 小 値 の差 が 非 常 に大 きい の で対 数 ス ケ ール を使 って 描 いて あ るが,明 らか に小 さい 数 値 の もの が 社会 主 義経 済 体制 の グ ル ー プに 分 布 し,大 き な数 値 の もの が 資 本 主 義 経 済 体制 グル ー プ に 多 く分 布 して い る。 これ
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2
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商 学 討 究 第35巻 第2・3号1
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23
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1
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〔===ニ コ1000く=X22(3162
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COUNTRY
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2
3
5 10 15 20 25 3.0 35 40
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FREO 24
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に 、 コ316《 ≡X23く1000
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24
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聴
2
3
商 学 討 究 第35巻 第2・3号
***X25***
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510且52025303540
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と同 じことが 他 の 多 くの 指 標 に つ い て も妥 当 す る。 と ころで,X3(粗 死 亡 率) X15(農 業 のGDP構 成 比),X21(幼 児死 亡 率),X22(医 師1人 当 人 口),
X23(看 護婦1人 当人 口)の5つ の 指 標 は,逆 に,数 値 の小 さ い方 が 発 展 水 準 の 高 い こ とを意 味 す るか ら,こ れ らの構 造 棒 グ ラ フを 読 む と きは 注意 が必 要 で あ る。
⑧ あ とが き
以上 の 考 察 か ら,発 展 途 上 国 の 経 済 発 展 の 水 準 は 経 済 体 制 を 異 に す る こ とに よ って,グ ル ー プ 間 に か な り有 意 の差 異 が 存 在 す る と結 論 づ けて よ い よ うに思 わ れ る。す なわ ち,分 権 的 市 場 経 済 体 制 を 採 用 して い る途 上 国 グル ー プの 方 が, 集 権 的 計 画 経 済 体 制 を と る途上 国 グル ー プ よ り も,各 種 の指 標 か らみ て,そ の 発 展 水 準 が よ り上 位 に あ る とい う結 論 で あ る。 国 内的 に 多 くの 難 問 を か か え て い る と は い え,韓 国,台 湾,ホ ン コ ン,シ ンガ ポ ー ルな ど の ア ジ アの 資 本 主 義 経 済 体 制 に依 拠 す るNICsの 最 近 の経 済 的躍 進 ぶ りに接 し,北 朝 鮮,中 国, ビル マ,キ ュ ーバ な どの 社会 主 義 国 の 経済 的停 滞現 象 を 観 察 す る な らば,我 々 が 本 稿 で 得 た この 結 論 は十 分 に裏 付 け られ るよ うに思 わ れ る 。
しか しなが ら最 後 に,こ う した 結 論 に つ いて 若干 の限 定 事 項 の あ る こ とを付 言 して お く必 要 が あ る。 それ は,社 会 主 義経 済 体 制 だか ら市 場 メ カニ ズ ムが 全 く無視 さ れ,資 本 主 義 経 済 体 制 だ か ら市 場 メ カ ニ ズ ムが 十 分 に整 備 ・発 達 せ し め られ て い る と想 定 す る こ とは 誤 解 を 招 くとい う指摘 で あ る 。 発 展 途 上 国 は, そ の政 治形 態や 経 済 体 制 に関 係 な く,多 大 の 政 治 的介 入 が あ るた め市 場 メ カニ
発展途上国 と経済体制
25
ズ ムが 歪 め られ て いて,本 来 の機 能 を 発揮 で き な いで い る ケ ー スが 多 い。 集 権 的 計画 経 済 で あ るが 故 に 経 済 的停 滞 に 落 ち込 ん で い ると い う事 実 の他 に市 場 機 構 が 未 発 達 で あ るが た め に,計 画 経 済 体 制 に依 拠 せ ざ る を得 な い とい う側 面 も あ るだ ろ う。 あ る い は,急 速 な 経 済 発 展 の プ ロセ ス で は,社 会 経 済 の 大 幅 な構 造 的変 革 が 必 要 で あ り,市 場 メ カ ニ ズ ムの よ うな 限界 的 ・漸 次 的調 整 力 に頼 る こ とが で きず,な にか ドラス テ ィ ックな 政 策 の 採 用 で き る集 権 的 計画 経 済 の フ レー ム ワ ー クを もつ 必 要 が あ る とい う事 情 もあ るだ ろ う。 さ らに,一 口 に 「社 会 主 義経 済 体制 」 とい って も,そ の 内容 は多 岐 に亘 って お り,そ の 政 治形 態 区 分 は複 雑 かつ 曖 昧 な部 分 が 多 い 。 多 数 の 発 展 途上 国 は,そ の政 治 ・経 済 体 制 に 関 して,ま だ試 行 錯 誤 の プ ロセ ス に あ り,「 政 変 」 のた び ご と に 体 制 そ の もの が 大 き く変 動 す る とい う不 安 定性 に つ い て も十 分 な 注意 を払 う必 要 が あ るだ ろ
う。