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第6章 ロシアの貿易 取 引 に関 す る法規 制

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第6章 ロシアの貿易 取 引 に関 す る法規 制

企業法学科 桑原康行 第一節 総説

本 報 告 で は、 国 際 取 引 の う ち、 一 般 に貿 易 取 引 とい わ れ る物 品 の 売 買 お よび そ れ に 関連 して な され る取 引(具 体 的 には 、 運 送 、 保 険 、代 金 決 済 の 各取 引)に 関 す る法 規 制 を概 観 す る。 まず 、 ソ ビエ ト(時 代)の 法規 制 を説 明 し1、そ の後 で 現 在 の ロシ ア の 法 規 制 を 説 明 す る こ とに す る2。そ の理 由は、貿 易 取 引 に 限 って い え ば現 在 の ロ シア 法 は ソ ビエ ト法 との 連 続 性が か な り強 い と思 われ る こ とに あ る。

貿 易取 引 は通 常 次 の よ うな過 程 を経 て行 わ れ る(こ こで は最 も典 型 的 なケ ー スで あ るC IF条 件 売 買で 代 金 決 済 を 荷 為 替 信 用 状 に よ る とす る ケ ー ス を 前 提 と して 説 明 す る)。 ま ず 、複 数 国 に所 在 す る 当 事者 が 売 買契 約 を締 結 す る 。次 に、 買主 は売 買 契 約 に基 づ き 自己 の 取 引銀 行 に対 して荷 為 替信 用状 の 開 設 を依 頼 す る 。続 いて 、 買 主 の取 引銀 行 は荷 為 替 信 用状 を売 主 に通 知 ・交 付 す る。一 方、売 主 は 売 買契 約 に基 づ き船 会 社 と運 送契 約 を締 結 し、

損 保 会社 と保 険 契 約 を締 結 す る。 次 に、 売 主 は船 会 社 か ら入 手 した船 荷 証 券 、 損 保 会 社 か ら入 手 した保 険 証 券 に 自己 の 商 業 送 り状 を添 え て 為 替 手形 を振 り出 す 。商 業 送 り状 な どの 売 主 が買 主 に提 供 すべ き書 類 を総 称 して船 積 書 類 とい う。 さ らに 、 売 主 か ら船 積 書 類 な ど の提 供 を受 け た 買主 の 取 引銀 行 は支 払 い を行 う。 最 終 的 には 、 買 主 が取 引銀 行 に支払 を し て 船 会 社 か ら商 品 を受 け取 る こ とに な る3。

筆 者 は1998年7月 〜8月 に 「ロ シ ア との貿 易 取 引 に関 す るア ンケ ー ト調 査 」 を 実 施 した が、 そ の 中 で 貿易 取 引全 般 につ いて も若 干 の 質 問 を した とこ ろ、 以 下 の よ うな 回 答 を 得 た(以 下 、 回答 を い た だ い た大 手 商 社3社 を それ ぞれ 甲社 、 乙 社 、 丙 社 と呼 ぶ こ とにす る 。これ ら3社 の 関係 者 の方 々 には 心 か らお 礼 を 申 し上 げた い)。この よ うな 質 問 は3つ あ

1本 報 告の ソ ビエ ト法の部 分 は も っぱ ら以 下 の文献 によっ てい る。石 川惣 太 郎他 『ソ ビエ ト経済 法 』(1 972年)本 書 は、 現在 にお いて も ソビエ ト(ロ シ ア)の 貿易取 引 関係法 に関す る最 も優 れ た研 究の 一 つ であ る。;石 川惣 太郎 『ソ連 及 び東欧 圏 にお け る仲裁 制度 につ い て』(1975年);同 仲裁 判 断 か らみ た ソ連 の仲 蜘(1976年)

2現 在 の ロシア法 につ いて は

、例 えば、 ツヴ ェ トコフ ・堀 合辰 夫 『ロシア貿 易 ・投 資法 』(1994年);

ロシ ア東 欧 貿易会 『ロ シアの経 済 関連 の法整 備状 況一 法律 制定 の過程 一』(1997年)等 の文 献 があ 3貿 易 実務 全般 につい てはる。

、浜 谷源 蔵 『最新貿 易 実務(増 補 改訂版)』(1997年)に 詳 しい 。貿易 取 引法一般 につ いて は、絹 巻康 史 『国際 取引 法入 門 貿 易取 引へ の法 的 アプ ロー チ』(1995年);山

田錬一 ・佐 野 寛 『国際 取引法[新 版]』(1998年)な どを参 照 。な お、 本報告 書 で検 討 してい る 国 際取 引法 規 を幅広 く収 録 してい る法 令集 と して 、澤 田嘉 夫編 『解 説 国際 取引法 令集 』(1994年) が あ る 。 さ ら に 、 か か る 法 規 を 幅 広 く 収 録 し て い る ホ ー ム ペ ー ジ と し て 、 http:lwwww.jus.Uio.noZlm!index.html、 が あ る。

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る が、 第1の 質 問 は、 契 約 締 結 まで の 交 渉 言 語 につ い て で あ る。 甲社 に よれ ば 、 ケー スバ イ ケー ス だ が一 般 的 に は ロ シ ア語 との こ とで あ り、 乙社 に よれ ば、 ロシ ア語 お よび英 語 だ が、 大 都 市 で は英 語 で 十 分 との こ とで あ り、 丙社 に よれ ば 、相 手 が ロシ ア語 しか解 さ な い 場 合 ロ シ ア語 だ が、 英 語 を解 す る場 合 はケ ー ス バ イ ケ ー ス との こ とで あ る。次 に第2の 質 問 は、 契 約 書 の使 用 言語 につ い てで あ る。 甲社 は 、 ロ シア 語 お よび 英語 の併 用 との こ とで あ り、 乙社 は、 相 手 次 第 で、 英 語 が オ リジナ ル 、 ロ シア 語 が 副 の こ と もあ れ ば 、 英語 ロシ ア語 併 記 の こ と もあ る との こ とで あ り、 丙 社 は、 英 語 は 必 要条 件 で 英語 版 と ロ シア語 版 を 併 用 して い る ケー スが あ る との こ とで あ る。続 い て第3の 質 問 は 、契 約 書 の紛 争 解 決 約 款 、 裁 判 管 轄 約 款 、 準 拠 法 約 款(準 拠 法 につ い て は 第2節 参 照)に つ い てで あ る。 甲社 は、 あ る が個 々 の契 約(客 先)に よ って 異 な る との こ とで あ り、 乙社 は、 すべ て網 羅 して い る と の こ とで あ り、 丙 社 は、 仲 裁 約 款 が あ る との こ とで あ る4。

ソ ビエ トで は、1961年 に民 事 法 の基 礎 と民 事 訴 訟 法 の基 礎 とい う二 つ の 連邦 法 が制 定 さ れ、 以後1965年 まで に連 邦 に加 盟 す る各 共 和 国 は これ を指 針 と して、 そ れ ぞ れ の 民法 と民 事 訴 訟 法 を採 択 した。 ち なみ に、 連 邦 法 と共 和 国 法 との相 互 関係 は、 前者 が 大綱 を示 し、 後 者 が 詳 細 な 規 定 を置 く とい う もの で あ り、 重要 事 項 に つ いて は連 邦 法 が適 用 さ れ る 。

ソ ビエ トの貿 易 規 制 の基 本 規 定 ともい うべ き民 事 法 の基 礎3条3項 に よれ ば 「外 国 貿易 関係 は、 外 国貿 易 を規 制 す る ソ ビエ トの 特 別 法 並 び に ソ ビエ トお よび加 盟 国 の 一般 民 事 法 に よって 決 せ られ る」 とされ て い た。 これ を受 け て 、例 え ば、 ロ シ ア共 和 国民 法 で は そ の 3条3項 で ほ ぼ 同 旨 を定 めて い た。 す なわ ち 「外 国 貿 易 関係 は、 外 国貿 易 を規 制 す る ソ ビ エ トの特 別 法 及 び ソ ビエ トとロ シア 共 和 国 の 一般 民 事 法 に よって 決 せ られ る」 とされ て い た の であ る(以 下 では ソ ビエ トにお け る ロ シア共 和 国 の重 要 性 か ら、 主 と して ロシ ア民 法 を と りあ げ る)。

か か る規 定 に よれ ば 、 外 国 貿 易 関 係 は 、 ソ ビエ トの特 別 法 に よ って 規 定 され る が、 これ は ソ ビエ トの貿 易 国家 独 占原 則 に基 づ くもの で あ る 。 又、 ソ ビエ ト及 び ロ シア 共 和 国 の一 般 民 事 法 は、 補 充 的 に のみ 、 換 言 す れ ば ソ ビエ トの特 別法 で規 制 され な い 関係 に限 っ て適

4貿 易取 引 を含 め 国際取 引一 般 の契約 書 式 につ い ては

、 国 際事業 開 発株 式会 社 編 『国際 取引 契約 書式 集』

(1992年);国 際商 事仲裁 協会 『標 準契 約条項 』 な どがあ る(国 際商事 仲裁 協会 につ い ては、 注2 8参 照 の こ と)。 特 に売 買 につ い ては、 田 中伸 幸 ・中川英彦 ・仲 谷卓 芳編 『国 際売 買契約 ハ ン ドブ ック

[改訂版]』(1994年)に 詳 しい。 また、書式 で はな いが、 ロシア語 ビジネス レター に関す る邦語 文 献 と して 、佐 藤好 明編 著 『ロ シア語 ビジ ネス レター 』(1993年)が あ る。な お、 ロ シア との ビジ ネス につい て は、以 下の 邦語 文献 も参照 。 糸賀 了 ・鈴木 啓 介 ・立 石揚 志 『中 国 ・ロシ ア ビジネス の実務 と交渉 ノ ウハ ウ』(1994年);ロ シア東 欧貿 易会編 著rビ ジ ネス ガイ ド ロシ ア』(1998年)。

さ らに、サ ハ リン との ビジネ ス を取 り扱 っ た邦語 文献(講 演録)と して、 以下 の ものが あ る。北海道 経 済 国 際化推 進会 議編 『サ ハ リン ・ビジネス(1)(II)(III)(W)』(1998年 〜99年)ち な み に これ らの講 演 録 の 内容 は、 北海道 のホ ー ムペー ジで も見 る こ とが で きる。ホ ー ムペー ジア ドレスは 以 下 の とお り。http:IAww.pref.hoktkaido.jp/keizailkz‑bkkryZkoen/koen.hst.htm

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用 さ れ る こ とに な る。 か か る特 別 法 の 一例 と して 、 ソ ビエ ト海 商 法 典 を挙 げ る こ とが で き る 。

現 在、 ロ シア で は新 民 法 典 が 公布 ・施 行 さ れて い る が、 当然 の こ とな が らも はや 貿 易 国 家独 占原 則 に関 す る規 定 は な い 。新 民法 典 は、第1部 お よび 第2部 か らな り、オ ラ ンダ法 ・

ドイ ヅ法 をモ デ ル と して い る とい わ れ る5。

第二節 国際私法

各 国 の私 法(民 法 や 商 法)の 内容 が異 な って い る こ とか ら、 貿 易 関係 の よ うな 、 国 際 間 に また が る、 い わ ゆ る渉 外 的私 法 関係 にっ いて 、 い ずれ の 国 の 法 律 を適 用 す るか の 問 題 を 取 り扱 うの が 国 際私 法 で あ る6。そ して 国 際私 法 に よっ て渉 外 的私 法 関係 に適 用 され る もの

と して決 定 さ れ た私 法(例 え ば 民法 ・商 法)の こ とを準 拠 法 とい う。

わ が 国 で 国 際私 法 に 当 た る の は 「法 例 」 とい う名称 の法 律 で あ るが 、 貿 易 取 引契 約 の準 拠 法 に つ い て 、 法 例 は 、 当事 者 自治 の 原則 す な わ ち 契約 当事 者 が そ の準 拠 法 を決 定 す る こ とが で き る との 原 則 を採 用 して い る(7条1項)。 したが って 、契 約(書)中 で 「本 契 約 の 準 拠 法 は ロ シア 法 とす る」 とか 「本 契 約 か ら生 ず るす べ て の 問題 は ロシ ア法 に よって 規 律

され る」 とされ て い る場 合 には 、 ロ シア 法 が 適 用 され る こ とに な る 。

民 事 法 の基 礎(ロ シ ア共 和 国民 法 典)の 中 に も、 国 際私 法 に関 す る規 定 が設 け られ て い た7。民事 法 の基 礎126条1項(ロ シ ア民 法566条1項)に よれ ば 「貿 易 に 関 す る 法律 行 為 に よ り生 ず る 当事 者 の権 利 及 び 義 務 は 、 当事 者 に よ る別段 の 定 め が な い 限 り、行 為 地 法 に よ っ て定 め られ る 」 も の とされ て い た。 法 律 行 為 とは 一 定 の 法 律効 果 の 発 生 を 目的 と

す る行 為 で あ り、法 律 効 果 とは権 利 ・義 務 の発 生 や そ の 内容 の変 更 な ど をい う。

この規 定 に よれ ば 、 ソ ビエ トに お い て も、 貿易 取 引契 約 の準 拠 法 につ い て 当事 者 自治 の 原 則 が 採 用 され て い る。 した が って 、 い か な る 国 の法 が適 用 され る かは 、 一 次 的 には 当事 者 の合 意 に よ って 定 ま る こ と にな る。 この 点 に 関 して 一例 を挙 げ る と、 ソ ビエ トの組 織 と イ ギ リス の 商 社 との 貿 易 取 引 契 約 で 、 当 該 契約 が ノル ウエー に何 ら関連 す る も の で な くと も、 当事 者 の 合 意 に よ って ノル ウエ ー 法 を適 用 す る こ と と し、 同 国法 に よって 当事 者 の権 利 ・義 務 を定 め る こ とが可 能 とな る。

5新 民法 典 につ いて は、例 えば、小田博 「ロシア連邦の新民法典」ジュ リス ト1065号(1995年)

57頁 参 照 。なお 、新 民法 典第1部 の翻 訳 と して、 日本 国際 間題研 究 所 『ロ シア研 究 別冊(4)ロ シ ア の 立法 動向(4)』(1995年)が あ る。

6国 際私 法 につい て は、木 棚照 一 ・松 岡博 ・渡 辺 『国際私 法 概論 〔第3版 〕』(1998年)な ど参照 。 7ソ ビエ トの民事 法 の基 礎 にお け る国際私 法規 定 につい て は

、 欧龍雲 「ソ連の民 事 法 にお け る新 国際私 法 規 定」 北大 法学 論集16巻1号121頁(1965年)も 参 照。

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次 に、 当事 者 に よ る別 段 の 定 め が な け れ ば、 行 為 地 法(契 約 締 結 地 法)に よ る こ とにな る。この 行 為 地 につ い て 、民 事 法 の基 礎126条2項(ロ シア 共 和 国 民 法 典566条2項) は つ ぎの よ う に定 め て い た 。 す な わ ち 「法 律 行為 の行 為 地 は ソ ビエ トの 法 律 に よ って 定 め

られ る」 の で あ る。 とこ ろで 、 契 約 が成 立 す る た め に は、 申込 者 に よ る 申込 とそれ に対 す る被 申込 者 に よ る承 諾 が 必 要 で あ るが 、契 約 の成 立 時期 ・場 所 に 関 して は大 き く分 けて2 つ の立 法 主 義 が あ る。 一 つ は 発 信 主 義 で あ り、被 申込 者 が承 諾 を発 した と きに そ の地 で契 約 が 成 立 す る とす る もの で あ る。 も う一 っ は 到達 主義 で あ り、 被 申込 者 の承 諾 が 申込 者 に 到 達 した とき にそ の 地 で 契約 が成 立 す る とす る も ので あ る。 ロ シア 民 法 は、 そ の162条 で 契 約成 立 時期 ・場所 につ き到 達 主 義 を うた って い る と解 され て い た。 そ こで た とえ ば、

モ ス ク ワ貿 易 組 織 に よ って在 外 商社 に 申込 が な され 、 そ の承 諾 が 到 達 す れ ば 、 この 契 約 は モ ス ク ワで 成 立 した もの とみ な され る。

民 事 法 の 基 礎(ロ シア 共和 国 民 法 典)制 定 以前 の事 件 で あ るが 、 貿 易 取 引 契 約 につ き行 為 地 法(契 約締 結 地法)が 適 用 され る と した仲 裁 判 断 が あ る(仲 裁 につ いて は第 七 節 参 照)。

H社(イ ギ リス ・ロ ン ドン)と 全 ソ木 材輸 出 公 団(ソ ビエ ト ・モ ス ク ワ)と の 間 に木 材 品 の 売 買 契 約 が締 結 さ れ た 。本 件 売 買契 約 に 関 して 紛 争 が生 じたた め 、H社 は 公 団 を相 手 ど って 外 国 貿 易 仲裁 委 員会 に 申 し立 て を した 。本 件 にお いて は契 約 に適 用 され る法 につ き当 事 者 に よ る定 め は な され て い な か っ た 。H社 は本 件 契 約 に適 用 され るの は 契 約 が 成 立 した 地 の 法 で あ るイ ギ リス 法 で あ る と主張 した 。 これ に対 して 、 公 団 側 は 契 約 の履 行 が ソ ビエ ト領 土 内 で 行 わ れ た こ とお よび 契約 が モ ス ク ワ の仲 裁 にか か って い る こ とか ら、 本件 契 約 には ソ ビエ ト法 が 適 用 され るべ きで あ る と主張 した 。

同委 員 会 は この 点 につ き次 の よ う に判 示 した 。 す な わ ち、1956年 に全 ソ木 材輸 出公 団 とH社 間 に締 結 され た 契約 に適 用 され るべ き法 律 に か か る問題 に関 し、 外 国 貿 易仲 裁 委 員会 は 、 ソ ビエ ト法 お よび ソ ビエ トの通 商 協 定 にお いて 容 認 され たル ー ル に従 い 、外 国 貿 易 取 引 は 当 該取 引 締結 の 地 の法 律 に よって 規 制 され る もの と認 め る。 前 期 の 契 約 は連 合 王 国 にお い て 締結 され た もの で あ り、 した が って イ ギ リス法 が 本件 契 約 に適 用 され る もの で な け れ ば な らな い 、 と。

ち な み に、 貿 易 取 引 契 約 の うち海 上(物 品)運 送 契 約 の 準拠 法 につ い て は 、 ソ ビエ ト海 商 法 典(本 法 典 にっ い て は第 四節 参 照)15条 が 規 定 を設 けて お り、基 本 的 には 当 事 者 自 治 の 原則 が 採 用 され て い る 。

現 在 の ロシ ア で 国 際私 法 に 当 た る法 律 は 、 民 事 立 法 原則 に関 す る1991年5月31日

法 で あ る8。本 法 は 、第166条 第1項 で 貿易 取 引契 約 の準 拠 法 につ い て 当 事者 自治 の原 則

81991年 法 にっ い て は

、NataliaBogdanova,L「ETATAσrUELDELALEGISLATIONRUSSEEN MATIEREDEDROITINTERNATIONALPRIVE,Rev.crit.dr.intemat.priv6,86(1),1997,p.139.1

991年 法 の 仏 語 版 か らの 翻 訳 と して 、 次 の 文 献 が あ る 。 笠 松 俊 宏 「ロ シ ア 国 際 私 法 の 改 正 と そ の 背 景 につ い て 」 比 較 法(東 洋 大 学)35号(1997年)152頁 以 下 。

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を採 用 して い る 。すな わ ち、 「国 際 商 事 契 約 にお け る 当事 者 の 権利 お よび義 務 は 、契 約 締 結 時 また は締 結 後 に当事 者 に よ って指 定 さ れ た 国 の法 に よっ て規 律 され る 。… 」ので あ る。

本 法 は続 い て 当事 者 に よ って 指 定 され た 国 の 法 が な い 場 合 につ い て も規 定 を設 け て い る。 こ の場 合 で 、 当事 者 の一 方 が1.売 買契 約 に お け る売 主 で あ る とき、2.輸 送(運 送) 契 約 にお け る輸 送(運 送)業 者 で あ る と き、3.保 険 契 約 に お け る保 険 業者 で あ る と き、

4.銀 行 契 約 にお け る銀 行 業 者 で あ る とき には 、 その 当事 者 が設 立 され た か 、 そ の住 所 を 有 す る か、 ま た は そ の活 動 の本 拠 を有 す る 国の 法 が 適 用 され る こ とにな る。 さ らに本 法 で は、166条2項 以 下 で特 定 種 類 の契 約(例 えば 、 合 弁 契 約 ・産 業 協 力 契 約 な ど)に つ い て特 別 な規 定 を 置 い て い る 。

第三節 物品売 買

それ で は、 貿 易 取 引 の流 れ に一 応 従 い 、 売 買 、 運 送 、 保 険 、決 済 の各 取 引 に 関 す る ソ ビ エ ト ・ロ シア の法 規 制 をみ て い こ う。

売 買 につ い て 、 わ が 国で は民 法 ・商 法 に一 連 の 規 定 が あ るが、 ソ ビエ トで は 民 事 法 の基 (ロシ ア 民法)に 一連 の規 定 を 置 いて い た9。民 事 法 の 基 礎39条1項(ロ シア 民 法237 条1項)に よれ ば 「売 買契 約 に よ り、 売 主 は、 財 産 を 買主 の 所 有 に移 転 す る義 務 を負 い 、 買 主 は、 財 産 を 受領 し、所 定 の金 額 を 支払 う義 務 を負 う」 ので あ る。 売 買 契 約 にお い て 、 売 主 の第 一 の 義務 は 、 売却 物 の 引渡 で あ る 。第 二 の義 務 は、 正 当品 質 の も の を 引 き渡 す こ とで あ る。 これ に対 して 、 買 主 の 義 務 は 、 買 い 入 れ た もの の 受領 と定 め られ た代 金 の 支払 い で あ る。

日本 法 と異 な り、 商 人 間 の 売 買 の 特則 を定 め た 規 定 は な い が、 買 主 が 国 家 的組 織 や そ の 他 の組 織 の場 合 の特 則 が あ っ た。

小売 り契 約 に つ いて も民 法 に若 干 の規 定 が あ っ たが 、 民 法 以外 の 規 範 、 例 え ば 連 邦 や 各 共 和 国商 業 省 の制 定 す る規 則 な どで まかな わ れ る部 分 が 多 か った とい わ れ る。

と ころ で、 ソ ビエ ト法 は、 納 入 契 約(調 達 契 約)に つ い て も規 定 を置 い て い た。 この 納 入 契約 は 、 ソ ビエ トで は 国 民経 済 計 画 と直 接 結 び つい て い る も の と して 最 も重 要 な 契 約 で あ る とさ れ て い た。 そ こで、 ソ ビエ トとの 貿易 で は、 売 買契 約 の一般 規 定(ロ シ ア民 法2

37条 〜254条)が 適 用 さ れ るの か 、 そ れ と も納 入 契 約 の規 定(同258〜266条)

が 適 用 され るの か が 問 題 とな った 。 この 両 者 は、 様 々 な 差異 が あ る が売 買契 約 が一 般 、 納

9日 本 法 の売 買 に関す る諸規 定にっ い ては、例 えば、 江頭 賢 治郎 『商取 引法(第2版)』(1996年)

1頁 以 下参 照 。 ソ ビエ ト売 買法 にっい ては 、藤 田勇他 著 『ソビエ ト法概 論』(1983年)242頁 以下 も参 照。

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入 契 約 が 特 殊 とい う関係 に な るの で、 ロ シ ア民 法3条3項 に よ って 、 貿 易 取 引 には 売 買契 約 に 関 す る 諸規 定 が適 用 され る と解 され て い た。

貿 易取 引 に 売 買 契約 の規 定 が適 用 さ れ る結 果 、 貿 易 取 引 の 売渡 品 に毅 疵(欠 陥)が あ っ た 場 合に は 、 買 主 の選 択 に従 っ て物 品 の交 換 、減 額 、 環疵 の除 去 、 契 約 解 除 の い ず れ か の 措 置 を と る こ と もで き る よ う にな る(同246条)。

さ らに、 ソ ビエ トで は 貿易 取 引 の規 制 にっ いて 、 国 際協 定 が締 結 され て い た 。 この 点 に 関連 して、 例 え ば ロ シ ア 民法569条 は次 の よ う に定 め、 協定 の 内 容 に よ って は 民法(規 定)の 適 用 が排 除 さ れ る と して い た 。 す なわ ち 「ソ ビエ トの参 加 す る国 際条 約 また は 国 際 協 定 が、 ソ ビエ ト民事 法 に含 まれ て い る とこ ろ と異 な る規 定 を設 けた 場 合 は 、 国 際条 約 ま た は 国際 協 定 の規 定 が適 用 さ れ る。 ロ シア 共 和 国 の 参 加 す る国 際条 約 また は 国 際協 定 にお い て 、 ロシ ア共 和 国 の 民事 法 の定 め る とこ ろ と異 な る規 定 が 設 け られ た 場 合、 ロ シア 共和 国 の領 土 に お い て は、 前 項 の規 定 が適 用 され る」。

か か る 国 際協 定 等 の うち、 最 も代 表 的な もの は 、1968年 の コ メ コ ンの 一般 納 入 条 が 款 で あ ろ うが、 共 産 主 義 国 間 の もの で あ る の で、 そ の 内容 につ い て、 こ こで は 省 略 す る10。

と ころ で、 現 在 ロ シ ア な ど との貿 易 取 引(売 買)に お い て は、 どの よ うな商 品 が輸 出入 さ れ て い る の で あ ろ うか 。 こ の点 につ いて は 、 日本 で 使 用 され て い る.トレー ド ・タ ー ム ズ の実 態 調 査 を行 っ た 『我 が国 で 使 用 され る トレー ド ・タ ー ム ズ(貿 易 定 型 取 引条 件)の 動 向調 査 』 と題 す る報 告 書(1997年)の 「No.1ア ン ケー ト(社 団法 人 日本 荷 主 協 会 加 盟 企 業 の使 用 す る トレー ド ・ター ムズ)回 答 分 析 」 か らも知 る こ とが で き る。本 報 告 は、

貿易 取 引 を 以下 の4つ に分 けて い る。す な わ ち 、船 舶 利 用 貿 易 取 引(輸 出)、船 舶 利 用 貿 易 取 引(輸 入)、 航 空機 利用 貿 易 取 引(輸 出)、 航 空 機 利 用 貿 易 取 引(輸 入)の4つ で あ る。

ま ず船 舶 利 用 貿 易 取 引(輸 出)に お い て は 、 対 旧共 産 圏諸 国(ロ シ ア に 限 らな い が、 ロシ ア が 中心 と思 わ れ る)で は、 回答49件 の う ち、 一般 機 械16.3%、 化 学 品14.3%、

鉄 鋼10.2%、 事 務 用機 械8.2%、 自動 車8.2%な どの順 位 とな って い る。 次 に、

船 舶 利 用 貿 易 取 引(輸 入)に お い て は 、 対 旧 共産 圏諸 国で は、 不 明 回答 を除 く17件 の う ち、 金 属 原 料17.6%、 木 材17.6%、 繊 維 製 品17.6%、 魚 介 類11.8%、 炭 ・コー ク ス ・れ ん炭11.8%の 順 位 にな って い る 。続 い て航 空 機 利 用 貿易 取 引(輸 出) にお い て は 、対 旧共産 圏諸 国 で は、不 明 回答 を除 く12件 の うち 、事 務 用 機 械25.0%、

映 像 機 器25.0%、 自動 車16.7%、 精 密 機 械16.7%の 順 位 とな って い る。 最 後 に、 航空 機 利 用 貿 易 取 引(輸 入)に お い て は、 対 旧共 産 圏諸 国 で は、 回 答4件 の うち 、 金 属 品50.0%、 魚 介 類25.0%、 そ の他 の加 工 製 品25.0%の 順 位 とな って い る。

筆 者 の ア ンケ ー ト調 査 で も 同様 の商 品 が挙 げ られ て い る。 甲社 は 、 輸 出で は 家 電 ・自動 車 ・化 学 品 な ど、 輸 入 で は木 材 ・水 産物 ・非 鉄 な どで あ るが 、 サ ハ リン とは ほ とん ど取 引

(7)

は な い との こ とで あ る 。乙社 は、輸 出 で は通 信 機 器(交 換 機)・ 建 設 機 械 ・コ ン ピ ュー ター な どで、 輸 入 で は石 炭 ・木 材 ・貴 金 属 な ど との こ とで あ る。 丙 社 は、 輸 出で は 自動 車 ・家 電 ・事務 機 な ど、輸 入 で は鋼 鉄 原料 ・非鉄 金 属 ・漁 船 用重 油 な どで あ り、 サハ リ ン との 関 係 で い え ば 最 近鋼 管 の輸 出 契 約 が1件 あ っ た との こ とで あ る 。

貿 易取 引 に 関 して はFOB、CIF等 とい っ た定 型 取 引条 件(tradeterms)が 存在 して お り、 ソ ビエ トで も ロ シア で も使 用 され て い る。 ロ シア との 貿易 取 引 に お い て どの よ うな 定 型 取 引 条 件 が使 用 され て い るか は 前 記 動 向調 査 報 告 書 で 取 り上 げ られ て い る。 「総 合 商 社A社 の 使 用 す る トレー ド ・ター ム ズの 国 別 、 商 品別 分 析 」 に よれ ば、 以 下 の とお りで あ る。船 舶 利 用 貿易 取 引(輸 出)で は、CIP45.2%、CIF28.2%、DDU1

9.1%と い う順 序 で あ る 。船 舶 利 用 貿易 取 引(輸 入)で は 、FOB29.6%、CIF

29.3%、C&F21.7%の 順 序 で あ る。航 空 機 利 用 貿 易 取 引(輸 出)で は 、CIF 58.2%、FOB38.0%の 順 序 で あ る。航 空 機 利 用 貿 易 取 引(輸 入)で は 、CIF

68.8%、FOB16.7%、C&F14.6%の 順 序 で あ る 。

筆者 の ア ンケ ー ト調 査 で実 際 に使 用 して い る取 引条 件 と して 回答 が あ っ た も の は 以下 の 条 件 で あ る。 甲社 は 、 輸 出 で はCIPで 、 輸 入 で はC&F、CIF、FOBで あ る。 乙社 は 、輸 出 で はCIF、CIPで あ り、輸 入 で はC&Fで あ る が、 最 近 はDDPが 増 加 し て い る との こ とで あ る。 丙 社 は 、CIF、DAF、CPTと の こ とで あ る 。

ロ シア との 取 引 にお いて も他 の 国 との 取 引 の 場 合 と 同 じよ うに 、CIF、C&F、FO Bの3取 引条 件 が重 要 で あ る とい え よ う。

で は、 かか る取 引 条 件 の解 釈 はい かな る国 際 規 則 に準 拠 して い る ので あ ろ うか 。 か か る 取 引条 件 の解 釈 につ い て は 日 ロに お いて イ ンコ ター ム ズ に よ って い る とい って よ いで あ ろ う 。筆 者 の ア ンケー ト調 査 で も、 甲社 ・乙社 ・丙 社3社 ともイ ン コ ター ムズ を使 用 して い る との こ とで あ る。

イ ンコ タ ー ム ズ とは 、 国 際 商業 会 議 所 が作 成 した 「定 型 取 引条 件 の解 釈 に 関 す る 国際 規 則 」 の こ とで あ る11。 イ ン コ タ ー ムズ(1990年 版)で は 、13種 の定 型 取 引 条 件 が 取 り上 げ られ 、 そ の そ れ ぞ れ の 取 引 条 件 につ い て 売 主及 び 買 主 の義 務 が列 挙 さ れ て い る 。 こ こで は 実 際 上 の 重 要 性 に鑑 み 、FOB(本 船 渡)条 件 、CIF(運 賃 保 険料 込 み)条 件 、 C&F(運 賃 込 み)条 件 の3つ を 中心 に取 り上 げ る12。

lo本 条 款 に つ い て は 例 え ば、IVANSZASE,THECMEAUNIFORMLAWFORINrlERNATIONAL SALES,1985.参 照 。

11国 瀦 業 会 謝(lnternationalCharnberofCommeroe)は 、 ヨー ロ ッパ と ア メ リカ の 産 業 界 の リー タ"

一 に よ っ て1919年 に設 立 さ れ た 国 際 的 な 民 間 団 体 で あ る 。 一 般 にICCと 略 称 さ れ 、イ ンコ ター ム ズ の ほ カイ言用 状 統 一 規 則(第 六 節 参 照)な ど を作 成 して い る 。ICCに は ホ ー ム ペ ー ジ が あ る が 、 そ の ア ド レス は 、 以 下 の とお りで あ る。http:〃www.iccwbo.org!『1990年 イ ン コ タ ー ム ズ 』 お よ び 『19 90年 イ ン コ タ ー ム ズ の 手 引 き 』 は 、い ず れ もICGの 日本 委 員 会 か ら入 手 で き る 。イ ン コ タ ー ム ズ につ い て は 、Bredowetal.INCOTERMS,1990,2Auf.1994,な ど参 照 。な お 、S6hUthe,"Incoterms1953"

undandereKlausellimsowjetischenAussenhande‑iSrecht,1970,も 参 照 。

12こ れ らの 取 引 条 件 に つ い て は、Sasson&Merren,C.1.F.andF.OB,Contracts3rded.1984,に 詳 しい 。

(8)

FOB(FreeonBoard)条 件 は 、 売 買 契約 上定 め られ た船 積 港 にお い て売 主 が船 舶 に 物 品 を船 積 み す る こ とに よ り売 主 の 引 渡 義 務 が 完 了す る契 約条 件 で あ る 。 イ ンコ タ ー ム ズ に よれ ば 、FOB条 件 にお い て 、 売 主 は 以 下 の よ うな 義務 を 負 う。1、 売 買契 約 に適 合 し た物 品 を供 給 す る こ と(A‑1)。2、 約 定 品 を約定 日(期 間 内)に 買主 が指 定 す る本 船 上 で 引 渡 す こ と(A‑4)。 これ に対 して 、買 主 は 以下 の よ うな義 務 を 負 う。1、 売 買契 約 の 定 め に従 って代 金 を支 払 う こ と(B‑1)。2、 自己 の 費 用 で 運 送 契 約 を締 結 し、売 主 に対 して 船積 に関 す る十 分 な 情 報 を与 え る こ と(B・ 一・‑3、B‑7)。3、 本 船 上 で 約 定 品 の 引渡 を受 け る こ と(B‑4)。

CIF(Cost,InsuranceandFreight)条 件 は 、 売 主 が 売 買契 約 上定 め られ た仕 向 地 ま で の 海上 運 賃 お よび海 上保 険料 を負担 す る契 約条 件 で あ る 。 イ ンコ ター ム ズ に よれ ば、C

IF条 件 にお い て 、 売 主 は 以 下 の よ うな 義務 を負 う。1、 売 買契 約 に適 合 す る 物 品 を供 給 す る こ と(A‑1)。2、 自己 の 費 用 で 運 送契 約 を締 結 し、運 送書 類 を 買主 に提 供 す る こ と

(A‑3)。3、 自己 の 費 用 で 保 険 契約 を締 結 し、保 険書 類 を 買主 に提 供 す る こ と(A‑3)。

これ に対 して 、 買 主 は 以 下 の よ うな 義 務 を負 う。1、 売 買 契約 の定 め に従 って 代 金 を 支払 う こ と(B‑一 ・1)。2、 約 定 品 の 引渡 を 受 け る こ と(B‑4)。3、 運 送書 類 が 契 約 に合 致 す る と きは これ を受領 す る こ と(B‑8)。 運 送書 類 の 中 で最 も代 表 的 な も の は海 上 運 送 に 関 す る書 類 で あ る船 荷 証 券 で あ る。

C&F(CostandFreight)条 件 は 、CIF条 件 といわ ば兄 弟 の 関係 に あ る条 件 で 、 売 主 に保 険契 約 締 結 義務 が な い こ とを 除 け ば、 あ とはCIF条 件 と同 じ と考 えて よい。

FOB条 件 もCIF条 件 もい ず れ も船 積 地 にお い て物 品 を引 き渡 す積 地 売 買(条 件)で あ る こ とか ら、 船 積 港 にお い て 物 品 が 本船 の舷 側 手 摺 を通 過 した と きに、 危 険 が売 主 か ら 買 主 に移 転 す る(FOBA‑‑5、B‑5;CIFA‑5、B‑5)。 した が って 、売 主 は 船 荷 証 券 に記 載 さ れ た数 量 に 比 較 して仕 向地 にお け る物 品数 量 が 不 足 して いて も、 こ れ に

つ い て責 任 を 負 わ な い の で あ る。

こ の こ とは外 国 貿 易 仲 裁 委 員会 が 一連 の 仲 裁 判 断 で 一貫 して 確 認 して い た と こ ろ で あ る 。 た とえ ば次 の よ うな ケー ス が あ る 。全 ソ亜 麻 輸 出公 団(ソ ビエ ト ・モ ス ク ワ)とA商 事 会 社(米 国 ・ニ ュー ヨー ク)間 に1946年 か ら47年 にか け て 各 種 物 品 の 売 買 契 約 が 締 結 され た 。本 件 契 約 に 関 して紛 争 が生 じた た め、 公 団側 はA商 事 会 社 を相 手 どって 外 国 貿 易 仲裁 委 員会 に 申 し立 て を した 。公 団側 はCIF条 件 売 買で は 船 荷 証 券 の数 量 に対 す る 不 足 の責 任 は売 主 で あ る公 団側 に は な い と主 張 した。 これ に対 して 、A商 事 会 社 は 両 社 間

の 関係 が 通 常 のCIF条 件 売 買 で は な か っ た と主 張 した。

同委 員 会 は こ の点 につ き次 の よ うに判 示 した。 す な わ ち、 本 件 売 買 はCIF条 件 売 買で あ る ので 、 仕 向港 にお い て 買 主 に交 付 す る さ いの 数 量が船 荷 証 券 の数 量 よ り少 な く とも売 主 は そ の不 足 につ き責 任 を負 わ な い。 した が って 、A商 事 会 社 に は公 団 に対 して その 不 足 額 の賠 償 を求 め る権 利 は な い、 と。

(9)

CPT(輸 送 費込 み)条 件 は、 売 主 が物 品 を指 定 仕 向地 まで 運 送 す る た めの 輸 送 費 を支 払 う条 件 で あ る 。CIP(輸 送 費保 険料 込 み)条 件 は、 売 主 が 輸 送 費 を支 払 うほ か、 貨 物 保 険 も手 配 す る条 件 で あ る 。DAF(国 境 持 込 渡)条 件 は、物 品 が 国境 の指 定 地 点(場 所) で 提 供 され た と き、 売 主 が 引 渡義 務 を履 行 した こ とに な る条 件 で あ る。DDP(仕 向地 持 込 渡(関 税 込 み)条 件 は 、 物 品 が輸 入 国 内 の指 定 場 所 に お い て提 供 され た と き売 主 が 引渡 義 務 を履 行 した こ と にな る条 件 で あ る。

FOB、CIF、C&Fの3っ は い ず れ も海 上運 送 用 の条 件 で あ る が、 これ に 対 してC PT、CIP、DAF、DDPの4っ は そ れ 以 外 の運 送 の 場 合 に も使 用 で き る条 件 で あ る。

ま た、CPT、CIPはFOB、CIF、C&Fと 同 じ く積 地 売 買(条 件)で あ るが 、D AF、DDPは 陸揚 地 で物 品 を 引 き渡 す 揚 地 売 買(条 件)で あ る とい う違 い が あ る。

イ ンコ ター ム ズ は、 売主 ・買主 の権 利 ・義 務 を定 め て い るが 、 各 当事 者 が か か る義 務 に 違 反 した場 合 の効 果 に つ い て は言 及 して い ない 。 従 っ て、 義 務 違 反 の効 果 お よび 相 手 方 の 救 済 に つ い て は 、 当事 者 が契 約 中 で定 め て い な け れ ば、 各 国 国 内法 ま た は条 約 の規 定 が適 用 され る こ とに な る 。

現 在 の ロシ ア で は 、 新 民 法 典 第2部 第30章 に 売 買 に関 す る規 定 が 設 け られ て い る13。

売 買 法 の 最 初 には 、 売 買総 則 の 規 定 、 具 体 的 には 売 買 契 約 の定 義 ・売 買 の 目的物 を は じめ と す る一 連 の 規 定 が 置 か れ て い る(454条 〜491条)。 総 則 に続 い て 、各 種 の 売 買契 約 につ い て 規 定 して い る(492条 〜566条)が 、 そ の 中で は納 入 契約 が 重 要 で あ る。 ソ ビエ ト法 にい う納 入 契 約 とは 異 な り、 新 民 法 典 で い う納 入 契 約 は 、 企業 が 企 業 活 動 に関 わ る物 品、 ま たは 個 人 ・家 庭 用 品で な い物 品 を売 買 す る(506条)も の で あ る とされ て お

り、 も っ ぱ ら商 事 売 買 た る性 質 を も って い る。

次 に 国 際物 品 売 買 に 関 して は、1980年 の 「国際 物 品売 買 契 約 に関 す る国 際 連 合 条 約 」 (1988年 発 効)が あ り、 現 在 の ロシ ア は そ の 当事 国 とな って い る。 日本 は ま だ 当事 国 とな って い な い が 、 当 事 国 で な くと も本条 約 が適 用 さ れ る可能 性 が あ る ので(そ の適 用 範 囲 につ い て 規 定 す る1条 参 照)、 こ こで触 れ て お くこ とに した い。

本 条約 は、 国連 国 際 商 取 引 法 委 員 会(UNCITRAL)が 作 成 した も ので 、 全 文101力 条 か らな り、 大 き く4部 に分 か れ て い る14。条 約 の適 用 範 囲 及 び総 則規 定 を定 め た第1部

(適用 範 囲及 び 総 則)に 続 い て 第2部(契 約 の成 立)で は 、 申込 ・承 諾 な ど にっ い て規 定 が あ る。第3部(物 品 の 売 買)は 、売 主 ・買 主 の権 利 ・義 務 に つ い て 詳 細 に規 定 して い る。

13新 民 法 典 の売 買に 関す る諸規定 につ いて は

、伊藤 知義 「ロ シア にお ける契 約 法」

の変 動 一そ の社会 ・文 化的 諸相 一2(1997年)所 収 、95頁 以下参 照 。

『ス ラ ブ ・ユ ー ラ シ ア

(10)

売 主 の主 た る義 務 と して は、1.物 品 の 引 き渡 し、2.関 連 書 類 の 交付 、3.物 品 の所 有 権 の 移 転 、の3つ が挙 げ られ て い る(本 条 約30条 参 照)。 売主 の義 務 不 履 行 の場 合 に 買主 に与 え られ る救 済 には 、1.履 行 請 求 、2.契 約 解 除 、3.代 金 減額 、4.損 害賠 償 、 の 4っ があ る(45条)。 買 主 の 主 た る 義務 は、1.代 金 支 払 い 、2.物 品 の 受領 、 の2つ で あ る(53条)。 買 主 の義 務 不 履 行 の場 合 に売 主 に与 え られ る救 済 には 、1.履 行 請 求 、2.

契 約 解 除 、3.損 害 賠 償 の 、3つ が あ る(61条)。 第4部 は、 最 終 規 定で あ る 。

第四節 物品運送

次 に、 運 送 につ い て で あ るが 、 運 送 は そ れ が 行 わ れ る場所 如 何 に よ り陸 上 運 送 、 海 上運 送 、 航 空 運 送 に分 け る こ とが で き るが 、 以 下 で は 海 上 運 送 、航 空 運送 を 取 り上 げ る。

第 一 に 、 海 上 運 送 につ い て で あ るが 、 わ が 国 は1924年 の 「船 荷 証 券 に 関 す る あ る規 則 の統 一 の た め の 国 際 条 約 」(ハ ー グ ・ル ー ル)を 批 准 し、そ れ に伴 い 国 際海 上物 品運 送法

を制 定 して い る15。

これ に対 し、 ソ ビエ トは ハ ー グ ・ル ー ル を批 准 して お らず、 国 際海 上 物 品運 送 に連 邦海 商 法 典 が 適 用 さ れ る。 本 法典 は 、1968年9月17日 に制 定 さ れ た も の で あ り、 同 年1

0月1日 か ら施 行 され た 。 全 文19章309条 に及 ん で い る 。 こ の 中 で特 に重 要 な の が第 8章 、海 上 物 品 運送 契 約 で あ る(第12章 海上 保 険 契 約 に っ い て は、 第5節 で簡 単 に取 り扱 う)。

海 商法 典 は、 第8章 に先 立 っ 第7章 で、 海上 物 品運 送 の計 画 及 び組 織 に 関 す る一 章 を設 け て い る 。 本 章 で は、 物 品運 送 は所 定 の手 続 に よ り確 認 さ れ た物 品運 送 国 家計 画 に基 づ い て 行 わ れ る もの と され る(106条)な ど、 特別 な規 定 を設 け て い る 。

海上 物 品運 送 契約 に つ い て は 、続 く第8章 に規 定 を 置 いて い る 。 ソ ビエ ト海 商法 典 にお け る海 上 物 品運 送 契約 は 、基 本 的 に傭 船 契 約 と個 品運 送 契 約 との2種 類 にわ か れ る(12

0条)。 傭 船 契 約 は 、運 送 の ため 船 舶 の 全 部 、船 舶 の一 部 ま たは 一 定 の 場 所 提 供 の条 件で 締 結 さ れ る(全 部 傭 船 、 一 部傭 船 お よび指 定 場所 傭 船)契 約 で あ り、 個 品運 送契 約 は、 この よ うな条 件 を伴 う こ との な い 契約 で あ る。

14国 連 物 品 売 買 条 約 に 関 す る邦 語 文 献(図 書)と して 以 下 の も の が あ る

。新 堀 聰 『国 際 統 一 売 買 法 一 ウ イ ー ン 売 買 条 約 と貿 易 契 約 』(1991年);曽 野 和 明 ・山 手 正 史 『国 際 売 買 法 』(1993年);シ ュ レ ヒ ト リー ム 『国 際 統 一 売 買 法 』(1997年)。 国連 国 際 商 取 引 法 委 員 会(UnitedNationsCommission onIntemationalTradeLaw)は 、 「国 際 商 取 引 法 の 漸 進 的調 和 お よ び 統 一 の促 進 」 を 目的 と して19

66年 に 設 立 さ れ た 国 連 総 会 直 属 の 委 員 会 で あ る 。 一 般 にUNCHRALと 略称 さ れ 、 国 連 物 品 売 買 条 約 の ほ か 国 際 商 事1中裁 模 範 法 な ど を作 成 して い る 。UNCITRALに も ホ ー ム ペ ー ジが あ る が 、 そ の ア ド

レス は 、 以 下 の とお りで あ る。http:/fwww.un.or.at/uncitra]/

15ハ ー グ ・ル ー ル を 国 内 法 化 し た 国 際 海 上 物 品運 送 法 に つ い て は

、戸 田 修 三 他 編 『国 際 海 上 物 品 運 送 法 』 (1997年)に 詳 しい 。

(11)

第8章 の 中で 特 に重 要 な の は 海 上 運 送 人 の 責任 等 に つ い て で あ る 。運 送 人 は運 送 の た め 受 け取 っ た物 品 の滅 失 、 不 足 及 び 損 傷 につ き責 任 を負 うが 、 滅 失 、 不足 また は 損傷 が 自己 の責 に帰 すべ き事 由 に よ らず して 、 と くに次 の 事 由 に よ り発 生 した 場合 は この 限 りで は な い とさ れ て い る 。 か か る事 由 は全 部 で11あ り、 具 体 的 には 、(1)不 可抗 力、(2)海 お よび そ の 他 の可 航 水 域 にお け る危 険 お よび 事 故 、(3)人 命 、 船 舶 お よび 物 品 の救 助 、

(4)運 送 人 の 責 に帰 すべ か らざ る事 由 に よる火 災 、(5)官 憲 の 行 為 ま た は処 分 、(6) 軍 事行 動 お よび騒 乱 行 為、(7)荷 送 人 ま たは 荷 受 人 の作 為 ま たは 解 怠 、(8)物 品 の 隠 れ た る蝦疵 、物 品 の特 質 ま た は 自然 損 耗 、(9)外 観 上 発 見 で きな い 、物 品 の 風 袋 お よび 包 装 ま たは 筏 に よ る木 材 接 合 の 暇 疵 、(10)商 標 の不 完 全 また は不 明瞭 、(11)ス トライ キ ま たは 作 業 の 全 部 ま た は一 部 の停 止 ま たは 制 限 に よ るそ の他 の事 情 、 で あ る。 また 、運 送 人 の責 任 は物 品 を運 送 の た め受 け取 っ た とき に発 生 し、その 引 渡 しの とき まで 継 続 す る(1

60条)。

もっ と も、 国 際運 送(外 航 運 送)の 場 合 の運 送人 は 、 物 品 の 滅 失 、 不 足 また は 損 傷 につ き、 そ れ が操 船 また は管 理 に お け る船 長 、 そ の他 の船 員及 び 水 先 人 の作 為 ま たは 解 怠 に よ る こ とを 立証 した場 合 は貴 任 を負 わ な い 。 これ に 対 して、 物 品の 受 取 、 船 積 み 、 配 置 、 保 管 、 陸 揚 げ又 は 引 渡 の 際 の 前 記 の 者 の作 為 又 は解 怠 に よ り生 じた物 品 の滅 失、 不 足 及 び損 傷 につ い て は 責 任 を負 うもの とされ て い る(161条)。

この規 定 に よれ ば 、 ハ ー グ ・ル ー ル 上 の い わ ゆ る航 海 上 の過 失 に相 当 す る場 合 に は 、運 送 人免 責 、 商 業 上 の過 失 に相 当 す る場 合 に は、 運 送 人 有 責 とい う こ とで あ ろ う。 航 海 上 の 過 失 とは、 例 え ば、 船 長 が航 路 の選 択 を誤 るな ど して 船 舶 の 衝 突 な どの 海 難 を引 き起 こす 行 為 の こ とを い う。これ に対 して 、商業 上 の過 失 とは、運 送 品 の取 り扱 い に関 す る行 為(過

失)の こ とを い う。

また 、 運 送 人 には 予 め 、航 海 開 始 前 に船 舶 を堪 航 状態 に して お くこ と、 す な わ ち技 術 的 に船 舶 の 堪 航 状 態 を確 保 して お くこ と、船 舶 を正 し く礒 装 す る こ と、 定 数 の乗 組 員 を乗 り 込 ませ る こ と、 すべ て の必 需 品 を準 備 す る こ と、 並 び に物 品 を積 み込 む船 鎗 、 そ の他 すべ て の船 室 につ き物 品の 適 当な 受 取 、 運 送 及 び 保 全 を保 障 す る状 態 にお くこ とが 義務 づ け ら れ て い る(129条)。 ハ ー グ ・ル ー ル に も運 送 人 の 堪 航 能 力担 保 義 務 に関 す る規 定 が あ る が 、 この規 定 に よれ ば、(1)船 舶 が 船 体 ・機 関 ・属 具 を完備 して い る こ と、(2)十 分 な 乗 組 員 と十分 な燃 料 ・食 糧 ・水 な ど を搭 載 して い る こ と、(3)船 槍 ・冷蔵 庫 そ の他 運送 品 を積 み 込 む 場所 を運 送 品 の 受 入 、運 送 お よび保 存 に適 す る状 態 に して お くこ と、 が必 要 と され て い る。

そ して 、 ソ ビエ ト海 商 法 典 で も、 運 送人 の 責任 限 度額 に 関 す る規 定 が設 け られ て い る 。 す な わ ち、 物 品 の減 失 、 不 足 ま たは 損 傷 につ き、 運 送 人 は 次 の 限 度 で責 任 を 負 う。物 品 の 滅 失 及 び 不 足 につ いて は、 滅 失 ま たは 不 足 にか か る物 品 の 実価 の 範 囲 内 で、 物 品 の 損傷 に つ い て は、 そ の価 格 減 少 の額 内で あ る(163条)。

(12)

滅 失 ま たは 損 傷 にか か る物 品 の 実 価 にっ い て は 、船 舶 が指 定 地 に到 着 、 ま た は到 着 すべ か り し とき にお け る 同地 の価 格 に よ り、及 び この価 格 を 決定 す る こ とが不 可 能 な場 合 は、

運 送 賃 を付 加 した物 品 積 出地 及 び 時 の 価格 に よ り定 め られ る 。

海 商 法 典 は船 荷 証 券16に つ い て も規 定 を設 けて い る。 船 荷証 券 に は船 舶 の 名 称 を は じめ とす る一 定 の事 項 を記 載 しな けれ ば な らな い(124条)。 なお 、船 荷 証 券 を利 用 した国 際 物 品 運 送 につ い て 、 物 品 の価 額 が 表 示 され て い な い 場合 は 、滅 失 また は 損傷 物 品 の1個 ま

た は通 常 単 位 に対 す る補 償 額 は250ル ー ブル を超 え る こ とは で きな い こ とに な っ て い る (165条)。

傭 船 契 約 書 に も、 一 定 の 事 項 を記 載 しな け れ ば な らな い こ と とされ て い る(122条) が 、 そ の 契約 書 式 は 一 般 に標 準 様 式 に基 づ い て作 成 さ れ て い る。 か か る書 式 と して 最 も有 名 な もの と して バ ル チ ック国 際 海運 同盟 が 作成 したGENCON書 式 が 挙 げ られ る が 、本 書 式 は 現 在 も使 用 され て い る17。

な お 、 現 在 の ロ シア にお い て も本 海 商法 典 が適 用 さ れ て い る よ うで あ る が、 法 改 正 の動 き もみ られ る よ うで あ る。

第 二 に、 航 空 物 品運 送 につ い て で あ るが 、 わ が 国 も ソ ビエ トも、1929年 の 「国 際 航 空 運 送 にっ い て の あ る規 則 の 統 一 に 関 す る条 約 」(ワ ル ソ ー条 約)を 批 准 して い る18。わ が 国 も ソ ビエ トも ワル ソー条 約 を改正 す る、1955年 のハ ー グ議 定 書 を批 准 して い る ので 、

同議 定 書 に よ って 改正 され た ワル ソ ー条 約(改 正 ワル ソー条 約)が 適 用 され る こ とに な る。

改 正 ワル ソー 条 約(以 下 で は ワル ソー条 約 と略 称)は 運 送 人 の責 任 につ い て 過 失 を推 定 し、 無 過 失 の 立 証 責任 を運 送 人 に負 わ せ る 一 方で 、運 送 人 の責 任 に限 度 額 を設 けて い る。

す な わ ち 、航 空 運 送 中の 事 故 に よ る物 品 の破 壊 、 滅 失、 殿 損 に よ る損 害 及 び物 品 の航 空 運 送 にお け る延 着 か ら生 じる損 害 に つ い て、 運 送 人 は責 任 を負 わ な けれ ば な らない(ワ ル ソー条 約18条1項 、19条)。 航 空 運 送 中 とは 、物 品 が 飛 行場 も し くは航 空 機Lヒに お い て また は、 飛行 場 外 に着 陸 した 場 合に は場 所 の如 何 を問 わ ず運 送 人 の管 理 の も と にあ る期 間 を い う(18条2項)。 運 送 人 が 責 任 を免 れ る ため に は 、 自己 お よび そ の使 用 人 の 無 過 失 を 証 明 す る こ とが 必 要 で あ る(20条)。 運 送 人 の責 任 限 度額 は、物 品1kgに っ き250フ

ラ ン(約6千 円)で あ る(22条2項a号)。

16海 上 運 送 で 使 用 さ れ る書 類

、 例 え ば 船 荷 証 券 ・傭 船 契 約 書 な ど の 書 式 につ い て は 、 日本 海 運 集 会 所 『日 本 海 運 集 会 所 契 約 書 式 集 』 に収 録 さ れ て い る。 ち な み に 、 日 本 海 運 集 会 所(JapanShippingExchange

Inc.)は 、 海 事 に 関 す る商 取 引 の 健 全 な 進 歩 発 達 を 図 り、 広 く海 事 関 係 諸 産 業 の 隆 盛 に 寄 与 す る こ と を 目的 と して1921年 に 創 立 され た 機 関 で あ る 。 本 集 会 所 に も ホ ー ム ペ ー ジ が あ るが 、 そ の ア ドレ ス は 以 下 の と お りで あ る。http:〃wwwjseinc.org/

i7GENCON書 式 の 詳 細 な解 説 と して、 高 橋 正 彦 『標 準 航 海 傭 船 契 約 の研 究 』(1976年)が あ る 。 18(改 正)ワ ル ソ ー 条 約 に つ い て は 以 下 の 文 献 参 照

。 ま ず 邦 語 文 献 と して は 、 坂 本 昭 雄 『国 際 航 空 法 論 』 (1992年)236頁 以 下;坂 本 昭 雄 『新 しい 国 際 航 空 法 』(1999年)147頁 以 下 、 次 に外 国 語 鰍 と して は 、Giemu]laetal.,WarschauerAbkommen‑IntemationalesLuittransportJreeht‑

Kommentar,1986;Goldhirsch,TheWarsawConventionAnnotatedALegalHandbook1988.な お 、 1961年 ソ ビエ ト航 空 法 に つ い て は 、 野 上 鉄 夫r世 界 統 一 空 商 法 の 形 成 へ の 道 』(1994年)17

3頁 以 下 参 照 。

(13)

もっ と も、 責任 限 度額 の 適 用 さ れ な い例 外 の場 合 が3つ 存 在 して い る 。第 一 に、 荷 送 人 が 運 送 人 に物 品 を引 き渡 す 際 に、そ の価 額 を 申告 し、必 要 な割 増 料 金 を支 払 っ た場 合に は、

この 限 度 額 は 適 用 され な い(同 号但 書)。第 二 に、物 品 の損 害 が 、運 送 人 ま た は そ の使 用 人 の 「損 害 を生 じさせ る意 図 を も って 、 ま たは 無 謀 にか っ 損 害 の生 ず るお そ れ が あ る こ と を 認 識 して 行 っ た」 行 為 か ら生 じた こ とが 証 明 され た場 合 には 、運 送 人 は 責任 限 度 額 を援 用 す る こ とはで きな い(25条)。 この 規 定 は 英 米 法 の 考 え を と りい れ た もの と理 解 され て い る が、 改 正 前 の規 定 と類 似 性 の あ る もの とい え よ う。 改 正 前 ワル ソー 条 約25条 で は、 運 送 人 は故 意 ま た は故 意 に相 当 す る と認 め られ る過 失 が あ る場 合 には 責 任 限 度 額 を援 用す る こ とは で きな い もの と され て い た 。 最高 裁 判 決 で 、 故 意 に相 当す る と認 め られ る過 失 とは わ が 国 で は 重過 失 の こ とで あ る とす る もの が あ る 。第 三 に、 航 空 運 送 の書 類で あ る航 空 運 送状 の 不 発 行 、 ワル ソー条 約 に関 す る注 意 書 の航 空運 送状 へ の不 記 載 の場 合に は、 運 送 人 は 責任 限 度額 を援 用す る こ とは で きな い(9条)。

現 在 の ロ シア も、 ワル ソー 条 約 の 当事 国 とな って い るの で 、 国 際航 空 物 品運 送 には 本条 約 が適 用 され る 。

航 空 運 送 にお いて 、 海 上 運 送 の船 荷 証 券 に相 当す る書 類 は 航空 運 送状 で あ るが 、航 空 運 送 状 は、荷 送 人 が作 成 して 運 送 人 に交 付 す る こ とにな って い る(5条1項)。 実 務 で は、航 空 貨 物 代 理 店 が これ を作 成 して い る 。航 空 運送 状 の記 載 事 項 も、 船 荷 証 券 と同 じよ う に法 定 され て い る(8条)19。

第五節 貨物保険

続 い て 、 保 険 の なか で 最 も重 要 な 海 上 保 険 につ い て 説 明 す る 。

わ が国 で は商 法 の 中 に海 上 保 険 に 関 す る規 定 は あ るが 、 国 際 貨 物 保 険(一 般 に外航 貨 物 保 険 と呼 ばれ る)は 、 イ ギ リス の法 と慣 習 に準 拠 して な され て い る。 イ ギ リス 海 上保 険 法 に よれ ば 、海 損(海 上 損害)は 、 全 損 と分 損 に分 け られ る。 全 損 とは 被 保 険 利 益 一 貨 物 に つ き保 険 事故 が 発 生 す る こ と に よ り保 険契 約 の利 益 を受 け る者 が 損 害 を被 る恐 れ の あ る経 済 的利 益 の こ と一 が 全 部 滅 失 した場 合 を い い、 そ れ 以外 の場 合が 分 損 で あ る。 分 損 の 中 に は 、被 害 を受 け た者 の み が損 害 を負担 す る 単独 海 損 とそ れ以 外 の者 も損 害 を負 担 す る共 同 海 損 が含 まれ る。

19航 空 運 送 状 に つ い て は、 来 見 田実 『新 訂 航 空 貨 物 の 理 論 と 実 椥(1995年)111頁 以 下 参 照 。 国 際 航 空 運 送 協 会 は(InternationalAirTran耳porむAssociation)は 、航 空 産 業 を代 表 し、 か つ 同 産 業 に 貢献 す る こ と を 目的 と して1945年 に 設 立 さ れ た協 会 で あ る 。 一 般 にIATAと 略 称 さ れ 、 航 空 運 送 状 の 統 一 様 式 も作 成 して い る。本 協会 に も ホ ー ム ペ ー ジ が あ るが 、そ の ア ドレス は 以 下 の とお りで あ る 。 htむP:IAKrww.iata.org!

(14)

わ が 国 の 損 保 会 社 は 、 い わ ゆ る ロイ ズSG保 険証 券 を模 範 と した英 文 保 険 証 券 を使 用 し て お り、 そ の 裏 面 には 協 会 貨 物 約 款 が 印刷 さ れ て い る20。

ソ ビエ トで は 、 海 上 保 険 につ い て は 、海 商 法典 に もか な り詳 細 な規 定 が あ る(第12章 海 上 保 険 契 約194条 〜231条)が 特 に貨 物海 上 保 険 に つ いて は、 貨 物 運 送保 険規 則 が 詳 細 な規 定(1〜23条)を 置 い て い る21。

海 上 保 険契 約 に よ り、 保 険 組 織(保 険 者)は 契 約所 定 の料 金(保 険料)を 徴 収 して 、 船 舶 ま た は貨 物 にっ き契 約 所 定 の危 険 ま たは 事 故(保 険 事故)が 発 生 した さ い、 保 険 契約 者 ま たは 契 約 締 結 の 利 益 を受 け るそ の他 の者 に 対 し、 生 じた損 害 をて ん補 しな けれ ばな らな い(海 商 法 典194条)。

保 険規 則 に従 って 締 結 され た保 険 契 約 に基 づ き、 運 送 中 の事 故 及 び 危 険 よ り惹 起 さ れ た 損 害 がて ん補 され るが 、 保 険 契 約 は 、 次 の 三 つ の条 件 の い ず れ か に基 づ いて 締 結 す る こ と がで き る。 す なわ ち、(1)す べ て の 危 険 に対 す る責任 を と もな う場 合 、(2)単 独 海 損 に 対 す る責 任 を とも な う場 合 、(3)単 独 海 損 に対 す る責 任 を ともな わ ない 場 合(規 則2条)。

(1)の 条 件 で 締 結 され た保 険契 約 に よれ ば 、 次 の 損害 が て ん補 され る 。

本 規 則6イ 〜 リの 場 合 を除 く一切 の原 因 に よっ て生 じた貨 物 の全 部 ま た は一 部 の損 傷 ま たは 全 損 に よ る損 害

共 同海 損 に よ る損 害 、 費 用 及 び 分担 金

損 害 が保 険条 件 に よ りて ん 補 され る場 合、 貨物 の救 助、 損 害 の縮 減 及 び 損 害 額 査 定 につ いて の い っ さ い の必 要 に して 有 効 に支 出 され た 費 用

(2)の 条 件 で 締 結 され た保 険契 約 に よれ ば 、 次 の 損害 が て ん補 され る。

火 災 、 稲 妻 、 暴 風 雨 、 竜 巻 及 び そ の 他 の 天 災 、船 舶 、飛 行 機 及 び そ の他 の輸 送 手 段 の難 破 ま た は相 互 間の 衝 突 も し くは 静 止 物 か航 行 物 との衝 突、 船 舶 の座 礁 、 船 橋 の崩 落、

爆 発 、 氷 に よ る船 舶 の 損 傷 、 舷 外 の 水 に よ る湿潤 並 び に救 助 ま た は鎮 火 の た め と られ た措 置 の結 果 の、 貨 物 の全 部 ま たは 一 部 の 損 害 も し くは 全 損 に よる損 害

消 息 不 明 の船 舶 ま たは 飛 行機 の 喪 失 に よ る損 害

貨 物 の積 込 み 、 積 上 げ、 荷 卸 し及 び船 舶 の燃 料 補給 の さ い の事 故 の結 果 の、 貨 物 の 全 部 ま た は一 部 の損 傷 も し くは 全 損 に よ る損 害

共 同海 損 に よ る損 害 、 費 用 及 び 分担 金

損 害 が保 険条 件 に よ りて ん補 され る場 合 、 貨 物 の救 助、 損 害 の縮 減 及 び 損 害 額 の査 定 につ い て のい っ さい の 必 要 に して 有効 に 支 出 さ れ た 費用

20我 が 国 の 外 航 貨 物 保 険 に つ い て は

、 東 京 海 上 火 災 保 険 株 式 会 社 編 『損 害 保 険 実務 講 座4貨 物 保 険 』(1 987年)56頁 以 下 参 照 。 我 が 国 損 保 会 社 が 使 用 して い る英 文 保 険 証 券 につ い て は 、 葛 城 照 三 『19 81年 版 英 文 積 荷 保 険 証 券 論 』(1981年)で 詳 細 な 検 討 が な さ れ て い る 。イ ギ リス の 海 上 保 険 に つ い て は 、Amold,'lheLawofMar[ineInsuraneeandAverage,16thed.1981,な ど参 照 。 な お 、 ロ イ ズ の ア ドレ ス は 以 下 の とお りで あ る 。http:〃wwwJloydso且ondon.co.uk/homepageslwelcome.html

21詳 し くは

、 坂 元 毅 『ソ 連 ・中共 の 海 上 保 険 』(1961年)参 照,

(15)

(3)の 条件で締結された保険契約によれば、次の損害がてん補 される。

イ 火災、稲妻、暴風雨及びその他の天災、船舶、飛行機 及びその他の輸送手段の難破 または相互間の衝突、もしくは静止物か航行物 との衝突、船舶の座礁、船橋の崩落、爆発、

氷による船舶の損傷、舷外の水による湿潤並びに救助または鎮火のため とられた措置の結 果の、貨物の全部または一部の全損による損害

ロ 消息不明の船舶 または飛行機の損失による損害

ハ 荷物の積み込み、積上げ、荷卸 し及び船舶の燃料補給のさいの事故の結果の、貨物 の全部または一部の全損による損害

船舶、飛行機及びその他の輸送手段の難破 または相互間の衝突もしくは静止物か航 行物(氷 を含む)と の衝突、船舶の座礁、船舶、飛行機 またはその他の航行手段内の火災

もしくは爆発による損害

ホ 共同海損による損害、費用及び分担金

へ 損害が保険条件によりてん補される場合、貨物の救助、損害の縮減及び損害額の査 定についてのいっさいの必要に して有効に支出された費用

しか し、これ ら三つの条件のもとでも次の事項によって生 じた損害は、てん補されない ものとされている(規 則6条)。

あ らゆる種類の軍事行動または軍事措置及びその結果、地雷、水雷、爆弾その他の 武器による、並びに内乱、騒擾、軍もしくは非軍当局の要求にもとつ く貨物の没収、徴発、

差押または廃棄による損傷または壊滅

ロ 原子爆発の直接または間接の影響、原子エネルギーの任意の応用及び核分裂材料の 使用に関連 した放射能 または放射性感染

保険契約者 または利益取得者 もしくはその代理人の故意または重大な過失並びに右 のうちいずれかの者による貨物の運送、転送及び保管につき定め られた規則違反

気温の影響、船鎗の空気または乾減を含む貨物の特性及び 自然の性質 貨物の不適当な包装または荷造及び損傷状態での貨物の発送

保険契約者または利益取得者もしくはその代理人は知るも、インゴス トラフ(ソ ビ エ ト外国保険局)は 関知 しない、爆発もしくは自然発火の危険のある物品を積み込んだこ

とによる火災または爆発

ト 外装が完全なさいの貨物の不足

うじ虫、げっし歯類虫及び昆虫による損傷

リ 貨物の到達の遅延及び値下が り、保険条件によ り共同海損の手続でてん補されるべ き場合を除き、保険契約者の前記以外のいっさいの損害もてん補されない。

さらに、(2)及 び(3)の 条件で締結された保険契約の場合には、次の事項によって生 じた損害 もてん補されない。

ヌ 洪水及び地震

参照

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