• 検索結果がありません。

第 6 章ソビェト・ロシアの貿易取引に関する法規制

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "第 6 章ソビェト・ロシアの貿易取引に関する法規制"

Copied!
14
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

6

ソビェ ト・ロシアの貿易取引に関す る法規制

企業法学科 桑原 康行

1 総説

本報告では、国際取引の うち、一般 に貿易取引 といわれ る物品の売買お よびそれ に関連 してな され る取引 (具体的には、運送、保険、代金決済の各取引) に関す る法規制 を概観 す る1。 ソビェ ト (時代) の法規制 を中心に説明 し、現在の ロシアの法規制については若干 言及す るに とどめるOその理 由は、現在 の ロシア法は分野によってはその規制 内容が必ず しも明 らかではない こと、お よび貿易取引に限ってい えば現在の ロシア法 もソビエ ト法 と さほ ど異なる ものではない と思われ ること2にある。.

貿易取引は通常次の よ うな過程 を経て行われ る (ここでは最 も典型 的な ケースであるC iF条件売買で代金決済を荷為替信用状 によるとす るケースを前提 として説明す る)。 まず、

複数 国に所在す る当事者 が売買契約 を締結す るO次に、買主は売買契約 に基づ き自己の取 引銀行 に対 して荷為替信用状の開設 を依頼す る。続いて、買主の取引銀行は荷為替信用状 を売主に通知 ・交付す る。一方、売主は売買契約 に基づ き船会社 と運送契約 を締結 し、損 保会社 と保険契約 を締結す る。次に、売主は船会社か ら入手 した船荷証券、損保会社か ら 入手 した保険証券に自己の商業送 り状を添えて為替手形 を振 り出す。 商業送 り状な どの売 主が買主 に提供すべき書類 を総称 して船積書類 とい うO さらに、売主か ら船積書類な どの 提供 を受 けた買主の取引銀行は支払いを行 う。最終的 には、買主が取引銀行 に支払を して 船会社か ら商品を受け取 ることになる,̲,

ソビエ トでは、 1961年に民事法の基礎 と民事訴訟法の基礎 とい う二つの連邦法が制 定 され 、以後1965年 までに連邦に加盟す る各共和国は これ を指針 と して、それぞれ の 民法 と民事訴訟法 を採択 したO ちなみに、連邦法 と共和国法 との相互関係は、前者が大綱 を示 し、後者 が詳細な規定を置 くとい うものであ り、重要事項については連邦法が適用 さ れ る。

ソビエ トの貿易規制の基本規定 ともい うべき民事法の基礎33項 によれ ば 「外国貿易

1本報告の ソビエ ト法の部分は もっぱ ら以下の文献によってい るハ石川惣太郎他 『ソビエ ト 経済法』 (1972):惣太郎 『ソ連及び東欧圏における仲裁制度について』(197

5);同 『仲裁判断か らみた ソ連の仲裁』 (1976)

2現在 の ロシア法の うち、国際私法については、例 えば NataliaBogdanova,L‑ETAT ACTUELDELALEGISI.ATIONRUSSEENMATIEREDEDROITIN'IIERNATIONAL pRIV丘Rev.crlt.dr.mtBrnat.priv6.86(1)1997p.139.仲裁 については、例えば Tat]ana Wtilk,WirtschaftsgerichtbarkeitinderRussischenFOrderation1997S.77ff.

(2)

関係 は、外国貿易 を規制す るソビエ トの特別法並びに ソビエ トお よび加盟国の一般民事法 によって決せ られ る」 とされてい るC,これを受けて、例 えば、ロシア共和国民法ではその 33項でほぼ同旨を定めている。すなわち 「外国貿易関係は、外国貿易を規制す るソビ エ トの特別法及び ソビエ トとロシア共和国の一般民事法によって決せ られる」のである ( 下では ソビエ トにおけるロシア共和国の重要性か ら、主 として ロシア民法をとりあげる) かかる規定によれば、外国貿易関係は、 ソビエ トの特別法によって規定 され るが、 これ は ソビエ トの貿易国家独 占原則に基づ くものであるO又、 ソビエ ト及び ロシア共和国の一 般民事法は、補充的にのみ、換言すれば ソビェ トの特別法で規制 されない関係 に限って適 用 され ることになるOかかる特別法の一例 として、 ソビエ ト海商法典 を挙げることができ る。

現在 の ロシアでは、新民法典 (1部、第2部)が公布 ・施行 されている。 この新民法 典は ドイツ法、オランダ法をモデルに しているといわれる。

2 国際私法

各国の私法 (民法や商法)の内容が異なっていることか ら、貿易関係のよ うな、国際間 にまたが る、いわゆる渉外的私法関係について、いずれの国の法律 を適用す るかの問題 を 取 り扱 うのが国際私法であるOそ して国際私法によって渉外的私法関係 に適用 され るもの

として決定された私法 (例えば民法 ・商法)のことを準拠法 とい う。

わが国で国際私法に当たるのは 「法例」 とい う名称の法律であるが、貿易取引契約の準 拠法について、法例は、当事者 自治の原則すなわち契約 当事者がその準拠法を決定す るこ とができるとの原則を採用 している (71項)。 したがって、契約 (書) 中で 「本契約 の 準拠法は ソビェ ト法 とす る」 とか 「本契約か ら生ずるすべての問題は ソビエ ト法によって 規律 され る」 とされている場合には、 ソビエ ト法が適用 され ることになる。

民事法の基礎 (ロシア共和国民法典)の中にも、国際私法に関す る規定が設けられてい 3ゥ民事法の基礎1261項 (ロシア民法566 1項)によれば 「貿易に関する法律 行為 によ り生ずる当事者 の権利及び義務は、当事者 による別段の定めがない限 り、行為地 法によって定められ る」 もの とされている。法律行為 とは一定の法律効果の発生を 目的 と する行為であ り、法律効果 とは権利 ・義務の発生やその内容の変更な どをい うO

この規定によれ ば、 ソビエ トにおいて も、貿易取引契約 の準拠法について当事者 自治の 原則が採用 されている。 したがって、いかなる国の法が適用 され るかは、一次的には当事 者の合意によって定まることになるC この点に関 して一例を挙げると、 ソビエ トの組織 と イギ リスの商社 との貿易取引契約で、当該契約が ノル ウェーに何 ら関連する ものでな くと

3 ソビエ トの民事法の基礎 における国際私法規定については、欧龍雲 「ソ連の民事法におけ る新国際私法規定」北大法学論集16112 1頁 (1965)も参照。

(3)

も、当事者の合意 によって ノル ウェー法 を適用す ることとし、同国法 によって権利 ・義務 を定めることが可能 となる。

次に、当事者 に よる別段 の定めがなけれ ば、行為地法 (契約締結地法) によることにな る。 この行為地について、民事法の基礎1262項 (ロシア共和国民法典5662項) はつ ぎの ように定めている 「法律行為の行為地は ソビエ トの法律によって定め られ る」。 と ころで、契約 が成 立す るためには、 申込者 による申込 とそれ に対す る被 申込者 による承諾 が必要で あるが、契約 の成立時期 ・場所 に関 しては大 きく分けて 2つの立法主義がある。

一つは発信主義であ り、被 申込者が承諾 を発 した ときにその地で契約 が成立す るとす る も のである。 も う一つは到達主義で あ り、被 申込者 の承諾が 申込者 に到達 した ときにその地 で契約が成立す る とす るものである。 ロシア民法は、その162条で契約成立時期 ・場所 につ き到達主義 を うたっている と解 され る。 そこでた とえば、モスクワ貿易組織 によって 在外商社 に申込がな され 、その承諾が到達すれば、この契約 はモス クワで成立 した もの と みな され る。

民事法の基礎 (ロシア共和国民法典)制定以前の事件であるが、貿易取引契約 につ き行 為地法 (契約締結地法)が適用 され るとした仲裁判断がある (仲裁 については第7節参照)o H社 (イ ギ リス ・ロン ドン) と全 ソ木材輸 出公団 (ソビエ ト・モス クワ) との間に木材 品 の売買契約が締結 された。本件売買契約 に関 して紛争が生 じたため、 H社は公 団を相手 ど って外国貿易仲裁委員会 に申 し立てを した。本件 においては契約 に適用 され る法につ き当 事者 による定めはな され ていなか った。 H社は本件契約 に適用 され るのは契約が成立 した 地の法であるイギ リス法である と主張 した。 これ に対 して、公団側は契約の履行が ソビエ ト領 土内で行われ た ことお よび契約 がモスクワの仲裁 にかか ってい ることか ら、本件契約 には ソビェ ト法が適用 され るべきである と主張 したO

同委員会は この点につ き次の よ うに判示 した。すなわち、 1956年に全 ソ木材輸 出公 団 とH社 間に締結 された契約 に適用 され るべ き法律 にかかる問題 に関 し、外国貿易仲裁委 員会 は、 ソビエ ト法お よび ソビェ トの通商協定において容認 され たルールに従い、外 国貿 易取引は 当該取引締結の地の法律 に よって規制 され る もの と認 めるO 前期の契約 は連合 王 国において締結 された ものであ り、 したが ってイギ リス法が本件契約 に適用 され る もので なけれ ばな らない、 と,

ちなみに、貿易取引契約 の うち海上 (物品)運送契約の準拠法については、 ソビエ ト海 商法典 (本法典については第4節参照)15条が規定を設 けている

現在 の ロシアでは、民事立法原則 に関す る1991531日法が この点に関す る規 定を設 けてい る。本法第 166条 も貿易取引契約 の準拠法について 当事者 自治の原則 を採 用 している。すなわち、 「国際商事契約 にお ける当事者 の権利お よび義務は、契約締結時 ま たは締結後に当事者によって指定 された国の法によって規律 され る。 ・・」のである。

(4)

3 売 買

それ では、貿易取引の流れに一応従い、売買、運送、保 険、決済の各取引に関す るソビ エ ト・ロシアの法規制をみてい こ う。

売買について、わが国では民転 ・商法に一連の規定があるが、 ソビエ トでは民事法の基 倭 (ロシア民法)に一連の規定を置いている4。民事法の基礎391項 (ロシア民法23

71項)によれば 「売買契約 によ り、売主は、財産を買主の所有に移転す る義務 を負い、

買主は、財産を受領 し、所定の金額 を支払 う義務 を負 う」のである。売買契約 において、

売主の第‑の義務 は、売却物の引渡である。第二の義務 は、正 当品質の ものを引き渡す こ とである。 これ に対 して、買主の義務は、買い入れた ものの受領 と定め られた代金の支払 いである

日本法 と異な り、商人間の売買の特則 を定めた規定はないが、買い主が国家的組織や そ の他の組織の場合の特則がある

小売 り契約 について も民法に若干の規定があるが、民法以外の規範、例えば連邦や各共 和国商業省の制定す る規則な どでまかなわれ る部分が多い といわれ る。

ところで、 ソビエ ト法は、納入契約 (調達契約)について も規定を置いている。 この納 入契約 は、 ソビエ トでは国民経済計画 と直接結びついているもの として最 も重要な契約 で あるとされているOそ こで、 ソビエ トとの貿易では、売買契約 の一般規定 (ロシア民法2 37〜 254条)が適用 され るのか、それ とも納入契約の規定 (258‑ 266条) が適用 され るのかが問題 となる。 この両者は、様 々な差異があるが売買契約が一般、納入 契約が特殊 とい う関係 になるので、 ロシア民法33項によって、貿易取引には売買契約 に関す る諸規定が適用 され ると解 されている。

貿易取引に売買契約 の規定が適用 され る結果、貿易取引の売渡品に顎疲 (欠陥)があっ た場合には、買主の選択 に従って物品の交換、減額、弔庇の除去、契約解除のいずれかの 措置を とることもできるようになる (246条)

貿易取引 (売買)に関 してはFOB,C IF等 といった定型取引条件 (tmdeterms)が存 在 してお り、わが国で もソビエ トで も利用 されている。かか る取引条件 の解釈については 日ソにおいてインコタームズによっているといってよいであろ う。イ ンコタームズ とは、

国際商業会議所が作成 した 「定型取引条件の解釈に関する国際規則」のことである。

イ ンコタームズ (1990年版)5では、 13種の定型取引条件が取 り上げ られ、そのそ れぞれの取引条件 について売主及び買主の義務が列挙 されている。かか る取引条件の中で

4売買法については、藤 田勇他著 『ソビエ ト法概論』 (1983) 242頁以下 も参照。

5 1990年版インコタームズについては、ICCPublicationNo.460の他、Bredowetal. INCOTERMS1990,2Auf.1994等参照。なお、Schtitte.''Incoterms1953''undandere Klauselnim sowjetischenAussenhandelsrecht1970も参照O

(5)

最 も重要なのはFOB (本船渡)条件 とcIF (運賃保険料込み)条件である6。

F0B(FreeonBoard)条件は、売買契約上定め られた船積港において売主が船舶 に物 品 を船積みす ることによ り売主の引渡義務 が完了す る契約条件 である。イ ンコタームズに よ れ ば、FOB条件 において、売主は以下のよ うな義務 を負 う。 1、売買契約 に適合 した物 品を供給す ること (A‑1) 2、約定晶を約定 日 (期間内) に買主が指定す る本船上で 引渡す こと (A 1 4) これ に対 して、買主は以下の よ うな義務 を負 うo l、売買契約 の 定めに従 って代金 を支払 うこと (B ‑1) 2、 自己の費用 で運送契約 を締結 し、売主 に 対 して船積 に関す る十分 な情報 を与えること(B‑ 3, B1 7) 3、本船上で約定品の引 渡 を受 けること (B‑ 4)

CIF(Cost,nsuranceandFreight)条件は、売主が売買契約上定め られた仕 向地まで の海上運賃お よび海上保 険料 を負担す る契約条件 である。イ ンコタームズに よれ ばc I

F条件 において、売主は以下の よ うな義務 を負 う。 1、売買契約 に適合す る物品を供給す ること (A‑1) 2、 自己の費用で運送契約 を締結 し、運送書類 を買主に提供す る こと (A ‑ 3) 3、 自己の費用で保 険契約 を締結 し、保険書類 を買主に提供す ること (A ‑ 3)これ に対 して、買主は以下の よ うな義務 を負 うc l、売買契約 の定 めに従 って代金 を 支払 うこと (B‑1) 2、約定品の引渡を受けるこ と (B ‑ 4) 3、運送書類が契約 に合致す るときは これ を受領す ること (B‑ 8) 運送書類 の中で最 も代表 的な ものは海 上運送 に関す る書類である船荷証券である。

FOB条件 もCIF条件 もいずれ も船積地 において物品を引き渡す積地売買であるこ と か ら、船積港 において物 品が本船 の舷側 手摺 を通過 した ときに、危険が売主か ら買主 に移 転す る (FOB A‑5,B‑5;CIF A‑5,B‑5)。 したが って、売主は船荷証 券に記載 された数量に比較 して仕 向地における物 品数量が不足 していて も、 これ について 責任 を負わないのである。

この ことは外 国貿易仲裁委員会が一連 の仲裁判断で一貫 して確認 している ところであるO た とえば次の よ うなケースがあるC全 ソ亜麻輸出公団 (ソビエ ト・モス クワ) とA商事会 社 (米 国 ・ニ ュー ヨー ク)間に1946年か ら4 7年 にかけて各種物 品の売 買契約が締結 され た。本件契約 に関 して紛争が生 じたため、公団側 はA商事会社 を相 手 どって外国貿易 仲裁委員会に 申 し立てを した。公 団側はCIF条件売 買では船荷証券の数量 に対す る不足 の責任 は売主である公団側 にはない と主張 した。 これ に対 して、A商事会社 は両社間の関 係が通常のCiF条件売 買ではなか った と主張 した。

同委員会は この点につ き次の よ うに判示 した。.すなわち、本件売 買はCiF条件売買で あるので、仕 向港 において買主に交付す るさいの数量が船荷証券の数量 より少な くとも売 主はその不足 につ き責任 を負 わない.一 したが って、A商事会社 には公 団に対 してその不足 額 の賠償 を求める権利 はない、 とO

6これ らの取引条件については、Sasson&Merren,C..F.andF.0.B.Contracts3rded.

1984参照

(6)

さらに、 ソビエ トで も貿易取引の規制について、国際協定が締結 されてい る。 この点に 関連 して、例 えば ロシア民法569条は次のように定め、協定の内容 によっては民法 ( 定)の適用が排除 され るとしている。すなわち 「ソビエ トの参加す る国際条約 または国際 協定が、 ソビェ ト民事法に含 まれている ところと異なる規定を設けた場合は、国際条約 ま たは国際協定の規定が適用 され るO ロシア共和国の参加す る国際条約 または国際協定 にお いて、 ロシア共和 国の民事法の定めるところと異なる規定が設けられた場合、 ロシア共和 国の領土においては、前項の規定が適用 され る」

かか る国際協定等の うち、最 も代表的な ものは、 1968年のコメコンの一般納入条款 であろ うが、共産主義国間のものであるので、その内容について、 ここでは省略す る7

現在 のロシアでは、売買に関 しては新民法典に一連の規定がある。なお、国際物品売買 に関 しては1980年の 「国際物品売買契約 に関する国際連合条約」(1988年発効)が あ り、現在の ロシアはその当事国 となっている。

4 物品運送

次に、運送についてであるが、運送はそれが行われ る場所如何によ り陸上運送、海上運 送、航空運送に分けることができるが、以下では海上運送、航空運送を取 り上げる。

第‑に、海上運送についてであるが、わが国は1924年の 「船荷証券に関す るある規 則 の統一のための国際条約」 (‑‑ グ ・ルール)を批准 し、それに伴い国際海上物品運送法

を制定 しているS。

これ に対 し、 ソビエ トはハー グ ・/レールを批准 してお らず、国際海上物品運送 に連邦海 商法典が適用 され る。,本法典は、 19689 17日に制定 された ものであ り、同年 1

0月1日か ら施行 された。全文19309条に及んでいる。 この中で特に重要なのが第 8章、海上物品運送計画である (12 海上保険契約 については、 6‑ 5で簡単に取 り扱 う)0

海商法典は、第8章に先立つ第7章で、海上物品運送の計画及び組織 に関す る一章 を設 けている。本章では、物品運送は所定の手続 によ り確認 された物品運送国家計画に基づい て行われ るもの とされ る (106条)な ど、特別な規定を設けている。

海上運送人の責任等については、続 く第8章で規定を置いている。運送人は運送のため 受け取 った物品の滅失、不足及び損傷につ き責任 を負 うが、滅失、不足または損傷が 自己 の責に帰すべ き事 由によらず して、 とくに次の事 由によ り発生 した場合はこの限 りではな

7本条款 については例えば、ⅠVANSZAsE,THECMEAUNIFORM LAW FORINTER‑

NATIONALSALES1985参照。

8ハー グルールを国内法化 した国際海上物品運送法については、戸田修三他編 『国際海上 物品運送法』 (1997)に詳 しい.

(7)

い とされ てい る。かかる事 由は全部で11あ り、具体的には (1)不可抗力 (2)海上お よびその他の可航水域 における危険お よび事故 (3)人命、船舶お よび物品の救助 (4) 運送人の責に帰すべか らざる事 由による火災 (5)官憲の行為 または処分 (6)軍事行動 お よび騒乱行為 (7)荷送人または荷受人の作為 または僻怠 (8)物 品の隠れたる塀庇 、 物 品の特質または 自然損耗 (9)外観上発見できない、物品の風袋お よび包装 または筏 に よる木材接合の程庇 (10)商標 の不完全 または不明瞭 (11)ス トライキまたは作業の 全部 または一部の停止 または制限に よるその他の事情、である。 また、運送人の責任 は物 品を運送 のため受 け取 った ときに発生 し、その引渡 しの ときまで継続す る (160条)。

もっ とも、国際運送 (外航運送)の場合の運送人は、物 品の滅失、不足 または損傷 につ き、それが操船 または管理 における船長 、その他 の船員及び水先人の作為または僻怠 に よ ることを立証 した場合は責任 を負 わない。 これに対 して、物 品の受取、船積み、配置 、保 管、陸揚 げ又は引渡の際の前記 の者 の作為又 は僻怠 によ り生 じた物品の滅失、不足及び損 傷 については責任 を負 うもの とされてい る (16 1条)0

この規定によれ ば、ハー グ ・ルール上のいわゆる航海上の過失 に相 当す る場合 には、運 送人免責、商業上の過失 に相 当す る場合 には、運送人有責 とい うことであろ うO航海 上の 過失 とは、例 えば、船長が航路の選択を誤 るなどして船舶 の衝突な どの海難 を引き起 こす 行為の ことをい う。これ に対 して、商業上の過失 とは、運送 品の取 り扱いに関する行為 ( 失)の ことをい う。

また、運送人 には予 め、航海 開始前に船舶 を堪航状態に してお くこと、す なわち技術 的 に船舶 の堪航状態 を確保 してお くこと、船舶 を正 しく蟻装す ること、定数の乗組員を乗 り 込 ませ ること、すべての必需品を準備す るこ と、並びに物品を積み込む船槍 、その他す べ ての船室 につ き物 品の適 当な受取、運送及び保全 を保 障す る状態 にお くことが義務づ け ら れてい る (129)Cハー グ ・ルールに も運送人の堪航能力担保義務 に関す る規定がある が、 この規定によれば、 (1)船舶が船体 ・機 関 ・属具を完備 してい ること (2)十分な 乗組員 と十分 な燃料 ・食糧 ・水な どを搭載 してい ること (3)船槍 ・冷蔵庫その他運送 品を積み込む場所 を運送品の受入 、運送お よび保存 に適す る状態 に してお くこと、が必要 とされている。

そ して、 ソビエ ト海商法典で も、運送人の責任 限度額に関す る規定が設け られてい る。

す なわち、物 品の減失、不足 または損傷 につ き、運送人は次の限度で責任 を負 う。物 品の 滅失及び不足 については、滅失 または不足にかかる物 品の実価の範囲内で、物品の損傷 に ついては、その価格減少 の額内である (163条)0

滅失 または損傷 にかか る物品の実価 については、船舶が指定地 に到着、または到着す べ か りしときにお ける同地 の価格に よ り、及び この価格 を決定す ることが不可能な場合 は、

運送賃 を付加 した物品積 出地及び時の価格 により定め られ る。

海商法典 は船荷証券について も規定を設 けてい る。船荷証券には船舶 の名称をは じめ と す る一定の事項を記載 しなければな らない (124条)( なお、船荷証券を利用 した国際 物 品運送 について、物品の価額が表示 されていない場合は、滅失 または損傷物品の1.個 ま

(8)

たは通常単位 に対す る補償額は2 5 0ルーブルを超 えることはできない ことになってい る (16 5条)0

なお、現在 の ロシアにおいて も本海商法典が適用 されてい るよ うであるが、法改正 の動 きもみ られ るよ うであるO

第二 に、航空物 品運送につい‑で あるが、わが国 もソビエ トも、 1929年の 「国際航 空運送 についてのある規則 の統一に関す る条約」 (ワル ソー条約)を批准 している9。わが国 もソビエ トもワル ソー条約 を改正す る、 1955年 のハー グ議定書を批准 しているので、

同議定書によって改正 された ワル ソー条約 (改正 ワル ソー条約)が適用 され ることになる10。

改正 ワル ソー条約 (以下では ワル ソー条約 と略称) は運送人の責任 について過失 を推 定 し、無過失の立証責任 を運送人に負わせ る‑方で、運送人の責任 に限度額 を設けてい る。

すなわち、航 空運送 中の事故 による物品の破壊 、滅失、穀損 による損害及び物品の航 空 運送にお ける延着か ら生 じる損害 について、運送人は責任 を負わなけれ ばな らない (ワル ソー条約181、 19条)O航空運送 中 とは、物品が飛行場 も しくは航空機上において または、飛行場外 に着陸 した場合 には場所の如何 を問わず運送人の管理 の もとにある期 間 をい う (182項)。運送人が責任 を免れ るためには、 自己お よびその使用人の無過失 を 証明す ることが必要である (20条)。運送人の責任 限度額は、物 品1kgにつ き2 50 ラン (6千 円)である (222a号)。

もっ とも、責任 限度額の適用 されない例外 の場合が3つ存在 してい る。第一に、荷送人 が運送人に物品を弓lき渡す際に、その価額を申告 し、必要な割増料金を支払 った場合には、

この限度額は適用 され ない (同号但書)。第二に、物品の損害が、運送人またはその使用人 の 「損害 を生 じさせ る意 図をもって、または無謀 にかつ損害の生ず るおそれがあることを 認識 して行 った」行為か ら生 じた ことが証明 され た場合 には、運送人は責任 限度額 を援用 す ることはで きない (2 5条)。 この規定は英米法の考えをとりいれた もの と理解 されてい るが、改正前の規定 と類似性 のある もの とい えよ う。改正前 ワル ソー条約2 5条では、運 送人は故意 または故意に相 当す ると認め られ る過失がある場合には責任 限度額 を援用す る ことはで きない もの とされていた。最高裁判決で、故意に相 当す る と認 め られ る過失 とは わが国では重過失 のことである とす るものが ある。第三 に、航空運送 の書類 である航 空運 送状 の不発行、 ワル ソー条約 に関す る注意書の航 空運送状‑の不記載 の場合 には、運送人 は責任 限度額 を援用す ることはできない (9条)

現在 の ロシア も、 ワル ソー条約 の当事国 となってい るので、国際物 品運送には本条約 が 適用 され るO

9ヮル ソー条約 については、GiemullaetaLWarschauerAbkommen‑Internationales Lufttransportrecht‑Kommentar1986:Goldhirsch,TheWarsawConventionAn notated AlβgalHandbook1988等参照。

IO 1961年 ソビエ ト航空法については、野上鉄夫 『世界統一空商法の形成‑の道』 (19 94) 173頁以下参照。

(9)

5 貨物保険

続いて、保 険のなかで最 も重要な特 に海上保険について説 明す る110

わが 国では商法 の中に海 上保 険 に関す る規定はあるが、国際貨物保 険 (一般 に外航 貨物 保 険 と呼ばれ る)は、イ ギ リスの法 と慣習12に準拠 してな され てい るOイ ギ リス海上保険法 に よれ ば、海 損 (海上損害)は、全損 と分損 に分 け られ る。 全損 とは被保険利益 物 につ き保険事故 が発生す ることに よ り保険契約 の利益 を受 ける者 が損 害を被 る恐れ の あ る経済的利益 の こ と が全部滅失 した場合をいい、それ以外 の場合 が分損 である。 分 損 の 中には、被害 を受 けた者 のみが損害 を負担す る単独海損 とそれ以外 の者 も損害 を負担 す る共 同海損が含 まれ るC

ソビエ トでは、海上保 険 については、海 商法典 に もかな り詳細な規 定があ る (12章 海 上保 険契約 194灸‑231条) が特 に貨物海 上保 険については、貨物運送保 険規則 が 詳細 な規定 (1‑ 23条) を置いている。

海 上保 険契約 に よ り、保 険組織 (保 険者) は契約所 定の料金 (保 険料) を徴収 して 、船 舶 または貨物 につ き契約 所定の危 険 または事故 (保 険事故) が発生 した さい、保 険契約者 または契約締結 の利益 を受 けるそ の他の者 に対 し、生 じた損害 をてん補 しな けれ ばな らな い (海 商法典194条)。

保 険規則 に従 って締結 された保 険契約 に基づ き、運送 中の事故及 び危険 よ り惹起 され た 損害がてん補 され るが、保 険契約 は、次 の三つの条件 のいずれ か に基 づいて締結す る こ と がで きる。す なわ ち、 (1)すべての危険 に対す る責任 を ともな う場合、 (2)単独海 損 に 対す る責任 を ともな う場合、 (3)単独海損 に対す る責任 を ともなわない場合 (規則2)

(1) の条件 で締結 された保 険契約 に よれ ば、次の損害がてん補 され る。

本規則6イ〜 リの場合 を除 く一切の原 因に よって生 じた貨物の全部 または一部 の損 傷 または全損 による損害

口 共 同海損 に よる損害、費用及 び分担金

損害が保 険条件 によ りてん補 され る場合、貨物 の救助 、損害の縮減及 び損害額 査定 についてのい っ さいの必要 に して有効 に支 出 され た費用

(2) の条件で締結 され た保 険契約 によれ ば、次の損害がてん補 され る。

火災、稲妻 、暴風雨、竜巻及 びその他 の天災、船舶 、飛行機及 びその他 の輸送 手段 の難破 または相 互間の衝突 もしくは静止物か航行物 との衝突 、船舶 の座礁 、船橋の崩 落、爆発 、氷 に よる船舶 の損傷 、舷外の水 による湿潤 並びに救助 または鎮火 のため と

られた措置の結果の、貨物 の全部 または一部 の損害 も しくは全損に よる損害 消息不明の船舶 または飛行機 の喪失 による損害

11詳 しくは、坂元毅 『ソ連 ・中共の海上保 険』 (1961)参照0

12イ ギ リスの海上保険については、Arnold.TheLawofMarinelnsuranceandAverage.

16thed.1981参照

(10)

貨物 の積 込み、積上 げ、荷 卸 し及び船舶 の燃料補給 の さい の事故の結果の、貨物 の 全部 または一部の損傷 も しくは全損 による損害

共 同海損 による損害、費用及 び分担金

損害が保 険条件 に よ りて/'補 され る場合、貨物 の救助 、損害 の縮減及 び損害額 の査 定についてのい っ さいの必要に して有効 に支 出され た費用

(3)の条件 で締結 された保 険契約 に よれ ば、次の損害がてん補 され る。

火 災、稲妻 、暴風 雨及びそ の他 の天災、船舶 、飛行機 及びその他 の輸送手段 の難破 または相互間の衝突、も しくは静止物か航行物 との衝突、船舶 の座礁 、船橋 の崩落、

爆発 、氷 による船舶の損傷、舷外 の水 による湿潤並びに救助 または鎮火 のため とられ た措置 の結果の、貨物 の全部 または一部 の全損 に よる損害

消息不明の船舶 または飛行機 の損失 に よる損害

荷物 の積 み込み 、積上げ、荷卸 し及 び船舶 の燃 料補給 の さいの事故 の結果 の、貨物 の全部 または一部の全損 に よる損害

船舶 、飛行機及 びその他 の輸送手段 の難破 また は相互 間の衝突 も しくは静止物 か航 行物 (氷 を含む) との衝突、船舶 の座礁 、船舶、飛行機 またはその他 の航行手段 内の 火 災 も しくは爆発 による損害

共 同海損 による損害、費用及 び分担金

損害が保 険条件 に よ りてん補 され る場合、貨物 の救助 、損害 の縮減及 び損害額 の査 定についてのい っ さいの必要 に して有効 に支出 され た費用

しか し、 これ ら三つ の条件の も とで も次 の事項 によって生 じた損害 は、てん補 され ない もの とされてい る (規則6条)C

あ らゆる種類 の軍事行動 または軍事措置及 びその結果 、地雷、水雷、爆弾その他 の 武器 に よる、並びに内乱、騒擾 、軍 もしくは非軍 当局の要求 に もとづ く貨物 の没収 、 徴発 、差押 または廃棄 に よる損傷 または壊滅

原子爆発 の直接 または間接 の影響、原子エネル ギーの任意 の応用及 び核分裂材 料 の 使用 に関連 した放射能 または放射性感染

保 険契約者 または利益取得者 もしくはその代理 人の故意 または重大な過失並び に右 の うちいずれかの者 による貨物 の運送、転送及び保 管 につ き定 め られ た規則違反

気温の影響 、船槍 の空気 または乾減 を含む貨物 の特性及 び 自然 の性質 貨物の不適 当な包装 または荷造及 び損傷状態での貨物 の発送

保 険契約者 または利益取得者 も しくはその代理人は知 る も、イ ンゴス トラフ (ソ ビ エ ト外 国保険局) は関知 しない、爆発 も しくは 自然発火の危 険のあ る物 品を積 み込 んだ ことによる火 災または爆発

卜 外装が完全 な さいの貨物 の不足

うじ虫、げっ し歯類 虫及 び昆 虫による損傷

リ 貨物 の到達 の遅延及 び値 下が り、保 険条件 によ り共 同海損 の手続 でてん補 され るべ き場合 を除 き、保 険契約者 の前記以外のいっ さいの損害 もてん補 され ない。

(11)

さらに、 (2)及び (3)の条件で締結 された保険契約 の場合には、次の事項 によって生 じた損害 もてん補 されない。

洪水及び地震

外装が完全なさいの風袋の汚染または変質による貨物の価値 下港

甲板積貨物 または無 甲板船舶 によ り運送 され る貨物の船外投棄及び波浪による喪失 貨物の窃取または不足

なお現在 の ロシアにおいて も本規則が適用 されているよ うである。

6 代金決済

貿易取引にお ける代表的決済手段 は、荷為替手形 と荷為替信用状であろ う。 この うち、

荷為替手形は、船積書類 (船荷証券、保険証券、商業送 り状な ど)の添付 された為替手形 の ことをい う.かかる荷為替手形 には2つの種類があるC一つはD/P(Documentsagainst Payment)条件の ものであ り、 もう一つはD仏(DocumentsagainstAcceptance)条件の も

のである。前者 は為替手形の支払 と引換 に船積書類 を引き渡す条件 の ものであ り、後者 は 為替手形 の引受 と引換に船積書類 を引き渡す条件 の ものであるO為替手形の引受 とは為替 手形の支払人が手形金額 の支払義務 を負担す ることをい うO

かか る荷為替手形の取 り立てに関 しては、国際商業会議所が1978年 に作成 した 「 立統一規」 (最新版は1995年版)がある。本規則は全部で23ヵ条か らな り、総則 と 定義、義務 と責任 、呈示、支払、引受な どの見出 しの もとに取立取引における手続 き、 当 事者 の義務お よび責任 について規定 している。 ソビエ トの銀行 も邦銀 と同 じよ うに本規則 を一括採択 していた。

次 に、荷為替信 用状であるが、 これ は、買主 (発行依頼人)の依頼 に基づいて、その取 引銀行 (発行銀行)が一定の条件 の下に売主 (受益者)が提供す る書類 の支払いな どを約 束 した書面の ことである13。売主お よび買主が売買契約の中で代金決済を荷為替信用状 ( 下、信用状 と略称)によることを合意 した場合に、買主は 自己の取引銀行に売主に対す る 信用状の開設 を依頼す る。買主の取引銀行が信用状開設 に同意す る と、買主 ・取引銀行 間 に信 用状 開設契約が締結 され る。本契約 に基づき、取引銀行は売主に対 して信用状 を開設 す る。売主は信用状で定め られた書類 を発行銀行に呈示 して支払を受 けることになる。

荷為替信用状 に関 しては、国際商業会議所が1983年 に改訂 した 「荷為替信用状 に関 す る統一規則及び慣例」 (以下統一規則 と略称 最新版は1993年版)がある14。本

13荷為替信用状 については、Eisemann/Schtitze,DasDokumentenakkreditivimlnter nationalenHandelsverkehr,3Auf.1989参照

14 1983年版統一規則 については、ICCPublicationNo.400の他、Balosslni.NORME EDUSIUNIFORMIRELATIVIAICREDITIDOCUMENTARI,4ed.1988;朝岡良平編

(12)

規則 は全部で55ヵ条か らな り、総則 と定義、信用状 の形式 と通知、義務 と責任 、書類 、 雑則お よび譲渡の見出 しの もとに信用状取引にお ける手続 き、当事者 の義務お よび責任 に ついて規定 してい る。 ソビェ トの銀行 も邦銀 と同 じよ うに本規則 を一括採択 していた。

信用状は、発行銀行の確約の有無 を基準 として、取消不能信用状 と取消可能信用状 に分 け られ る (統一規則7条)。取消不能信用状 は、関係 当事者全員の同意がなければ発行銀行 が取消 ・条件変更のできない信用状 のことをい う (統一規則 10条)。 これに対 し、取消可 能信 用状 は、発行銀行が事前の通知 な しにいつで も取消 ・条件変更ので きる信用状の こと をい う (統一規則9条)。 実務では圧倒的に取消不能信用状が利用 されている。

信 用状 には2つの重要な原則 がある。その一つは独立抽象性 の原則 であ り、 もう一つ は 厳格 一一致 の原則 であるこ独立抽象性 の原則 とは、信用状 (債務)は信用状発行の原 因 とな った売買契約 その他 の契約か ら独 立 した、別個の債務 である とい うことである (統一規則 3条)。かかる原則 の認 め られ る根拠は、信用状を売買契約 な どの原因関係か ら切断す るこ とに よって、信用状の迅速かつ 円滑な取引をはか ることにあるとされている。独立抽象性 の原則 の効果 と して、発行銀行は、売買契約 上の事 由 (例 えば、売主 による債務不履行) を もって、売主に対 して支払を拒絶す ることはで きない。 また、発行銀行は、信用状 開設 契約上の事 由 (例 えば、買主の破 産)を もって、売主 に対 して支払を拒絶す ることもでき ない。

厳格一致の原則 とは、売主の提供す る書類が信用状 に定め られた条件 と厳格に一致 して いなけれ ばな らない との原則である。わが国の判決で、信用状条件 と して包装明細書が要 求 されているのに、包装明細書が独立の書類 となっていない 「重量 ・包装お よび品質 明細 書」 を売主が提供 した場合に、条件不一致はない とした ものがあるが、批判がある。信用 状取引においてはすべての関係 当事者は書類 の取引を行 うものであって、その書類がかか わる物 品の取引を行 うものではない (統一規則4条)。 したがって、銀行は相応 の注意を も ってすべての書類が信用状条件 と文面上一致 しているか どうかを点検 ・確認すればよい。

文面上相互に矛盾 してい る書類 は信 用状条件 と文 面上一致 していない もの とみ な され る (統一規則15条)C

ソビエ トでは、 日本か らソビエ ト‑の輸 出には支払遅延 問題が起 こる1988年頃まで イ ンカ ッソ (取引 ・方式) と呼ばれ る決済手段が利用 された。売主が買主に対 し為替手形 を伴 わない船積書類 を銀行経 由で (あるいは直接買主に)取 り立てに出すのである。D/P の 一種 であるとされ るが為替手形の振 り出 しは伴わない。対 ソ輸入では信用状 による決済が 主体であ ったO

これ に対 して、現在 の ロシアにお ける代金決済 ・関連す る国内法な どについては今 の と ころ明 らかではないぐ

著 『実務家のための逐条信用状統一規則』 (1985)参照

(13)

7 紛争解決

国際取引 (貿易取引 も含 めて)に伴 う紛争解決手段 の代表的な ものは、訴訟 (裁判) と (国際商事)仲裁 である。 ソビエ トにおいては、仲裁 が特に重要である。仲裁 とは、 当事 者 の合意 によ り、第三者 に紛争の解決を委ね、その判断に当事者が服す るとい う裁判外 の 紛争解決 制度である。仲裁は、裁判 と比較 して、一審 限 りで時間 も余 りかか らず、費用 も 比較的低廉であ り、判断内容が原則 として非公開であることな どの利点がある。

ソビエ トには、貿易仲裁 ・海事仲裁 にかかわる機 関 として、商工会議所付設の外国貿易 仲裁委員会 と、海事仲裁委員会 とが ある。前者は、国家機 関ではな く、定款 を持つ公 的組 織 であ り、かつ外 国貿易 の分野 にお ける常設 の仲裁機 関である。 この委員会は、貿易紛争 を審理す るが、 この紛争 に該 当す る もの としては、外 国での商品購入 、外国‑の商品販売 取引、委任契約か ら生ず る請求にかかる紛争お よび これ らの商品の運送 、保険、保管、発 送お よびその他 の外国貿易業務 にかかる紛争がある (外国貿易仲裁委員会令1条、同委員 会事件審理規則1条)。 この委員会の仲裁判断15についてみれ ば、その論理操作に格別特異 な ものはな く、一部で危倶 されてい るよ うな偏頗 で不公正を疑わ しめる仲裁判断は、一見 した ところ見 あた らない とされてい る。 ソビェ トでは、仲裁 を極 めて重視 してい るので、

その審理や判断 も慎重 になされてお り、同委員会 の実務 はかな り信頼で きる との評価 がな されている。

後者 の海事仲裁委員会は、 1930年 にモスクワの全 ソ商業会議所 に付設 された もので、

海事紛争、よ り具体的には海難救助 、船舶衝突、傭船、曳船 、海 上保険、漁船、漁網 、漁 具 に対す る損傷な どに関す る紛争について審理する (海事仲裁委員会規則1条)

日ソ間の動 き と しては、 1956430日にモスクワの全連邦商業会議所 (現在 の 商工会議所) と東京 の国際商事仲裁協会 との間に貿易仲裁協定 (貿易取 引か ら直接 間接生 じた紛争 の処理 についての)が締結 され た。本協定によれば、 日ソ貿易 当事者 の契約 中に

本契約 につ き、 もしくは、その契約 に関連 して発生す ることあるべ きすべての紛争 また は見解の相違 は、通常裁判所の管轄 を排除 し、仲裁 によ り裁定 され る もの とす るO・・・・・‑」

とい う仲裁約款 を挿入す るよう勧告す ることに同意す るとしている,,

時間的順序 と して、 これ を うけた形で195859日に発効 した 日ソ通商条約 14 条は、仲裁 による紛争解決が契約 自体に、 または しか るべ き形式で作成 され た別個の約定 に規定 されている限 り、 日ソ両国は紛争 に関す る仲裁判断を執行す る義務 を負 うと規定 し てい る。 さらに、各貿易支払協定に も、両国政府 は紛争解決のため、両国の仲裁機 関の利 用を、あ らゆる可能な方法で奨励す るもの とす ることが うたわれてい る

現在 の ロシアにおいて も二つの常設仲裁機 関があるO‑つは国際商事仲裁裁判所であ り、

も う一つが海事仲裁裁判所である。いずれ もロシア連邦商工会議所 に設置 されてい る

15本委員会の仲裁判断の具体例については、石川 ・前掲注 (1)『仲裁判断か らみた ソ連の 仲裁』 5貢以下参照。

(14)

8 結びに代えて

本報告では主 と して貿易取引に関す るソビエ トの法規制 について検討 した。 この検討 か ら明 らかなよ うに、貿易取引にBElす る限 り、 ソビエ トの法規制は資本主義諸国の法規制 と かな り類似性 がある (もちろん体制 の相違に よる法規制の違いが全 くない とい うわけでは ないが) とい えよ う。かか る類似性 は、 ロシアが市場経済に移行 した ことか ら、ます ます 強 まるであろ うことが予想 され る。次年度の報告 においては、現在の ロシアの貿易取引に 関す る法規制について よ り詳細 に検討す る予定である。

参照

関連したドキュメント

この基準は、法43条第2項第1号の規定による敷地等と道路との関係の特例認定に関し適正な法の

第14条 株主総会は、法令に別段の 定めがある場合を除き、取 締役会の決議によって、取 締役社長が招集し、議長と

  

2 当会社は、会社法第427 条第1項の規定により、取 締役(業務執行取締役等で ある者を除く。)との間

[r]

12―1 法第 12 条において準用する定率法第 20 条の 3 及び令第 37 条において 準用する定率法施行令第 61 条の 2 の規定の適用については、定率法基本通達 20 の 3―1、20 の 3―2

(1) 会社更生法(平成 14 年法律第 154 号)に基づき更生手続開始の申立がなされている者又は 民事再生法(平成 11 年法律第

計量法第 173 条では、定期検査の規定(計量法第 19 条)に違反した者は、 「50 万 円以下の罰金に処する」と定められています。また、法第 172