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ある町内小中学校の情報教育環境一現状調査と支援一 岡田 正*

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(1)

ある町内小中学校の情報教育環境一現状調査と支援一

岡田 正* 山田康代**

    An lnformation Education Environment of   the Elementary and Secondary Schools in a Town

一 An on−the−spot lnvestigation and an Active Support

Tadashi OKADA  and Yasuyo YAMADA as

New Japanese government guide!ines for teaching, which will take effect next Apri1, require various information edttcation in almost all subjects of the elementary and secondary education. We firsthand survey a

computer and communication environment utilized for the infomiation education of elementary schools at Kagamino Town located in the north of Okayama prefecture. Based on the collected data, we point out several problems to put the guidelines into force, then carry out supponing activities to solve the problems.

Keywords. information education, computer and communication environment, elernentary and secondary     education, government guidelines for teaching

1.はじめに

 社会全般における急速な情報化の進展に伴い,教 育課程審議会は初等中等教育の多様な場面において 情報教育を取り入れるよう答申した1).情報化社会 のなかで生きていける人材育成と同時に,学校運営 における情報化を進展させることを意図している.

初等中等教育における情報教育を進めるためには,

可能な限り高度な情報環境施設を整備するととも に,学校運営のなかで施設が適切に管理され利用さ

れなければならない.新学習指導要領の平成14年

度からの全面実施に向けて,全国各地で環境整備と 人材養成が進行中である.

 我々は地域の種々の組織に対して情報通信技術を 提供することを通して,地域の高度情報化に関する 支援活動を行っている2 3).この一環として,上記 の新しい学習指導要領実施に向けて,初等中等教育 における情報教育推進の支援活動を行った.具体的 には,岡山県県北に位置する鏡野町を対象にして,

小中学校の情報教育環境がどのようになっている

   原稿受付 平成13年8,月31日

*情報工学科

**専攻科電子・情報システム工学専攻修了生(現,(株)ティ

 エステイ勤務)

か,どこに問題があるか,問題点を解消するために 必要な支援活動は何かなどを明らかにし,実際に支 援を行うことを目的とする.

 本論文では,現地に出向いての現状調査,その後 の分析と問題点の指摘,指摘した問題点解消に向け ての支援と言った一連の活動を行ってきた4).この ような総合的な取り組みの例は少なく,さらに一定 の成果を上げたのでこれらの概要を報告する.2.

で現状調査の内容と結果を述べ,この分析と問題点

の検討を3.で行う.これに基づき,4.で支援す

べき内容の提言や具体的な支援活動の内容と成果を

述べる.

2。調査目的と内容

 新しい学習指導要領では,新たに創設された「総 合的な学習の時間」や各教科の授業のなかで,パソ コンや情報ネットワークを活用し,広い意味の情報 教育を多様な場面で展開するように求めている.こ

のため文部科学省は,平成11年度までに小学校で

二人に一台,中学校で一人に一台の水準で教育用コ

ンピュータを設置するとともに,小学校は平成15 年度までに中学校は平成13年度までに,全国の小

中学校をインターネット接続できるよう整備を進め ている.このような環境整備が進み授業に利用しよ うとすると,各学校にふさわしい情報教育環境の整

一65一

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津山高専紀要第43号 (2001)

備,指導できる教員の不足,ネットワーク管理の困 難さといった問題の生じることが予想される.

 我々は,岡山県県北に位置する鏡野町内の初等中 等教育における情報教育を支援するため,現状の調 査と問題点の解消を目的とした活動を行った.鏡野 町は岡山県苫田郡の一部であり,総人口11,447人,

総世帯数3,523戸(平成12年10.月1日現在),総 面積122.24km2である.農1業を主体とした産業構造 で,ヒラメ(あまご)・蜂蜜・山菜おこわ・地鶏肉

・新高梨・地酒・木彫り漆芸(沈彫)を特産品とす

る.

 この鏡野町には,香北小学校・香々美小学校・大 野小学校・鶴喜小学校・南小学校の小学校5校(31 クラス,655名)と鏡野中学校の中学校1校(14ク ラス,450名)とがある(平成12年10月1日現在).

これらの学校を対象に,以下に示すような調査を行

った.

54%

i !il Vr.88一 B. Arsic , /,

「国MS−DOS

錘堂。d。W藍1

Fig.1 lnstalled OSs of PCs used in five schools

 平成11年7月15日から8月6日までの間の5日

間に,各小学校に出向き約3時間ずつの実地調査を

行った.

調査項目

 次の項目を調査記録した.

 ・パソコンの機種と台数  ・パソコンのハードウェア構成  ・周辺機器

 ・パソコンの利用目的

 ・搭載OS

 ・アプリケーション名と使用方法  ・ネットワーク接続状況

 なお,中学校については最新設備が導入されたば

かりで,生徒用47台のWindowsパソコンがOCN

でインターネットに常時接続されている.この環境 であれば,新しい学習指導要領に対応可能なので今 回の調査対象から除外した.また,この調査とは別 に先生方から問題点を聞く機会があり,この内容も 以下の報告に反映させている.

3.調査結果と検討

 2.で収集したデータに基づいて,主に,搭載OS

・利用ソフトウェア・情報ネットワーク環境という 3つの面から検討し,新しい情報教育を行う上での 問題点の検討を行う.検討にあたっては,学校間の 比較が目的ではないので,町内を平均したデータを 使っている.なお,収集したデータの概要を付録に

示す.

搭載OS

 設置されているパソコンの台数からだけ見ると,

クラス単位の授業であれば児童当たり平均0.92台 あり,各小学校とも二人で一台という文部科学省の 方針を上回っていた.しかし,Fig.1に示すように MS−DOSやNEC N−88 BASIC(86)Ver.2.0といった

古いOSを搭載したパソコンが4分の3を占めてお

り問題である.すなわち,現在のネットワーク対応

のGUI環境に対応していないので,適切な教育課

題を設定しづらい.また,データの相互利用に困難

さを伴う,

 なお,一部のパソコン上ではあるが,各校ともス ピーカ・ディジタルカメラ・スキャナ・プリンタと いった周辺機器を授業に活用したり,MO(magneto opitica1)ディスクを使ったデータバックアップも行 われていた.

利用ソフトウェア

 利用しているソフトウェアは,各小学校ともほぼ

同じものであった.

 DOS系パソコンでは,マウス操作に慣れるため

に使う「5択どす」・「モグラたたき」といったゲ ームソフトウェアや,「キューブ系ソフトウェア」

・「ロゴライター」・「ばりりんランド」といった学 習ソフトウェア,「一日の気候の変化」・「超高速天 文シミュレーション」といったシミュレーションソ フトウェアを使っていた.

 一方,Windows系のパソコンでは,「算数シミュ レーション」・「小学生の音楽鑑賞」といったシミ ュレーション系ソフトウェアや,Microsoft Of丘ce系 のソフトウェアが使用されている.

 各校とも同じようなソフトウェアを使っているの で,この範囲内であれば互いにデータやノウハウを 共有するのに問題はない.

一66一

(3)

ある町内小中学校の情報教育環境 一現状調査と支援一  岡田・山田

情報ネットワーク環境

 平均して一つの小学校に4台のパゾコンがダイヤ ルアップ接続で外部につながっており,外部とのコ

ミュニケーションがとれる状況であった。だだ,コ

ミュニケーションができる環境といっても,

MS−DOSパソコンでインターネット接続は困難であ り,実際にインターネットに接続できる端末機が不 足しているという問題が残る.

 ネットワーク環境を整備すると,学外からの不正 アクセスを監視したり,利用者の登録・削除などの ネットワーク管理が必要となる.中学校や一部の小

学校でプロキシを使った接続がなされていたもの

の,ボランティア歳一スの管理であり,セキ4リテ ィ対策が十分とは言えない状況である.児童が安心 してインターネットに接続できる環境を構築し,こ

れを管理するための支援組織を準備する必要があ

る.

4.教育環境整備と支援

 これからの初等中等教育における情報教育を実践 するためには,以下に示すような教育環境が必要で

あると言われている5).

(1)小学校なら二人に一台,中学校なら一人に一  台の割合でパソコンが割り当てれるような環墳で  あること

(2)LANを使ったネットワーク結合がされてお

 り,パスワードを使ったシステム管理がされてい  ること

(3)OSがGUI対応している現在主流のWindows

 系であること

(4)児童・生徒を十分にサポートできる教師が一  つの学校に必ず一人はいること

 このような条件から見ると,今回調査した鏡野町 の小学校では,(1)から(3)を満たしておらず,

(4)も十分とは言えない状況であった.こうした 問題点を鏡野町の関係者は十分に理解しておられ,

平成11年度から新しいパソコン導入の検討が始ま っている.新学習指導要領実施までには,ネットワ

ーク接続されたWindows系パソコンが,すべての

小学校で一人一台利用できるように整備が進んでい

る.

 残された問題は,(4)の教師の教育と(2)の

一部のネットワーク管理である.これらの問題は,

人に絡むことで学校間の人事異動もあり,我々の扱 える範囲外にある.しかし,側面からの支援は可能 であり,どのような考え方で取り組むかの提言や,

これまでに我々が行ってきた実際の活動を以下に述

べる.

新しい情報教育環境の構築支援

 新しいパソコンが導入されることになったので,

機器構成や搭載機能の決定にあたって,留意点を指 摘したり技術的な助言を行って,適切なシステムが 導入されるような支援を行った.検討会への出席や 担当者の研究室への来訪に加え,電子メール・電話 での連絡は延べ15回以上にのぼる.

 助言を行うにあたっては,

 ・長期に渡って安定に運用できること  ・児童に使いやすく教師に管理しやすいこと  ・地域内での利用情報の共有が可能なこと など,授業で利用する上で教師側に余分な負担をか けないことを優先した.

 さらに,小学校を各地区の核とした町内ネットワ ーク化を提言し,このことを前提にしたシステム構 築を進めている.すなわち,中学校がインターネッ ト常時接続の高度な環境を持つので,ここを中心と して小学校や町役場をネットワーク化し,さらに町 内全体に広げるというものである.この構想に将来 に渡って対応できるよう,ネットワーク形態につい ての提言やセキュリティに関する問題点の検討など

を行った.

講習会等の学習支援

 パソコンが普及したとは言うものの,授業で問題 なく使えるまでの技量を持った教師は,いまだ多く ない.教師の学習を支援するため,講習会等を設定 し学習できる環境を設けることが必要である.この ため,津山高専で講師・補助者と場所を提供した研 修会(7名参加)を実施し,インターネット体験や パソコン操作の問題点に関する情報交換を行った.

また,小学校の先生方の事例発表会(約20名参加)

に出向き,講演と助言を行ったりしている.その後,

岡山県情報教育センターと鏡野町が連携した開放講1 座へと発展し,研修の場が拡大している.

運用管理体制の提言

 情報教育を効果的に実施し,情報の共有により活 性化を図るためには,鏡野町独自の情報教育運営組 織が必要と考える。この組織は,何か問題が起きた ときに相談でき,解決策を得られるとともに,これ らの情報を収集し再利用できるようなものでなけれ ばならない.人的なつながりを形成するとともに,

最終的には電子的なヘルプデスクとして整備すべき であると提言している.

 電子化されたヘルプデスクを持てば,日常出会う

問題に対する解決策や地域の固有の情報を蓄積で

き,これを共有しいっでも取り出せる.さらに,コ

一67一

(4)

津:山高専紀要第43号 (2001)

ミュニケーションの場として,電子メールや掲示板 を使った情報交換も可能となる.インターネット利

用を中心とするが,これ以外にFAXや電話を利用

した情報提供ができるようにする.

 実際にWWWによるヘルプデスク試作版を作成

した.今回作ったヘルプデスクのトップページは,

次のようになっている.

 ・用語集:情報教育を行う上では必要となる用語   のリンク集

 ・情報教育支援:情報教育を行うために必要なハ   ードウェアやソフトウェア知識を得られるリン   ク集

 ・情報教育の具体例:教育現場の事例を紹介して   いる場所へのリンク集

 ・地域交流の場:地域固有の情報交換に利用する   ための掲示板やWebページ(パスワード付き)

し,新しい学習指導要領を実施する上での問題点を 指摘するとともに,各種の支援活動を行ってきた.

我々の調査を一つの契機として,全小学校に最新の パソコン環境が導入されることになり,喜ばしいこ

とである.これは,鏡野町役場や鏡野町議会が重要 性を十分理解され,素早く動かれた結果である.地 域社会の学校教育への理解に敬意を表したい.

 実際に運用が始まると,多くの問題がでてくると 思われる.情報教育運営組織やヘルプデスクを実現

し,町内情報通信基盤の構築にあわせて整備してい く必要がある.実際の現場で出てきた問題を解決す るには,現場との話し合いが必要である.この点に 留意しながら,今後とも継続的な支援を行っていき

たい.

謝 辞

システム管理支援

 インターネットに接続するためには,ネットワー クサーバの安定な運用管理が必須である.しかし,

サーバの設定には各種の高度な知識が必要であり,

費用を負担して業者に依頼するか,勉強して教師自 ら行わなければならない.実際にはどちらも現実的 ではなく,苦慮されている.

 今回,中学校のネットワーク形態が変わったこと

で,ファイアウォール上のDNSを再設定する必要

が生じた.急なことで費用の出所がなく困っておら れたので,現地に出向いて設定変更を行った.この ような作業が中学校の教師に任されているのは問題 である。学校以外での運用管理も視野に入れ,町全 体を支援できるような管理体制を作るべきであると

提言している.

7.あとがき

鏡野町の小中学校における情報教育環境を調査

 実地調査にあたっては,鏡野町教育委員会や各小 学校の校長先生ならびに担当の先生方に大変お世話 になりました.特に,このような支援活動を行うき っかけを作っていただいた鶴喜小学校の渋谷陽先生 には,何かと協力いただいております.これらの皆 さまにこの場を借りてお礼申し上げます,

参 考 文 献

1)学習指導要領=http:〃www.monbu.go.jp/news/00000317/

2)岡田・近藤:津山工業高等専門学校紀要No.41(1999)5−11.

3)岡田:論文集「高専教育」No.23(2000−3)369−373.

4)山田・岡田:平成12年度電気・情報関連学会中国支部第51

回連合大会講演論文集(2000−10−21)559.

5)情報化の進展に対応した教育環境の実現に向けて:http:〃

www.monbu.go.jp/singi/chosa/OOOOO301f

      付録 調査データの概要

 調査したデータのうち,本文の分析で使用したものの概要を示す。本研究は学校間の比較が目的ではない ので,学校名は省略している.

      Table A−1 lnstalled OSs and the lnternet Connection

Tota1 N−88BASIC MS−DOS Windows95/98 Connected PCs 24

P8 P2 P9 P1

15

@2

@0

@0

@1

 4

P2

@7

P5

@7

545*43 54343

84

18

45 21

19

 lncluding Windows 3.1

一68一

参照

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