一 731 一
東医大誌 58(6):731,2000
巻頭言著者 猪瀬博先生(東京大学名誉教授,文部省国立情報学研究所所長)
の御逝去に接して
東京医科大学医学会会長
伊 東 洋
10日ほど前にお願いした原稿(巻頭言)が先生の最後の文章として,今この手許に有るとは信じ 難い.ある理事会で先生にお会いし,本学機関誌の原稿を口頭でお願いしたところ快く引き受けて 下さり,「私にうまく書けるかな」などと話ながらお別れした.その草稿が届いた矢先の10月10日 朝 先生の言卜報を知った.おそらく本学への原稿は米国行きを控え,すぐに執筆戴いたのに違いな い.先生の絶筆であろうと想う.
先生はこの巻頭言で話されているように人間,とりわけ日本人の心の豊かさを広げ其れを人類社 会の進歩に求めて居られる.先生は言うまでもなく,我が国の情報処理分野の第一人者で大学問
computer networkを実現され,その道の業績は素晴らしい.ご性格は気さくで何等奢った所もなく,
穏やかな方だった.最初にお会いしたときに奥様のめまい発作の心配をされて相談を受けたのを思い 出す.むしろ文化勲章や学士院賞,文化功労章を受賞された方は近寄り難い気がするが想像とは程遠 い.最近,国立情報学研究所の所長になられてから大変なお仕事に没頭されていたのかもしれない.
我が国では代え難い研究者を失った.
絶筆である先生の遺稿を見ながら御霊の安らかなることを祈り,先生への御礼の言葉としたい.
合掌
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