学 堀 竹
流動動産譲渡担保 と動産売買先取特権の優劣
1.は じめ に 2, 裁半
1夕!(1)最 高裁判例 (2)下 級 審判例
3.学 説
(1)民 法333条 説 (2)民 法334条 類推適用説 (3)民 法319条 類推適用説 (4)担 保権 成立 の先後 で決す る説 (5)対 抗 要件具備 の先後で決す る説
(6)流 動動産譲渡担保 の実行 開始前後 で分類す る説
4 考察
(1)譲 渡担保 の法 的構成 との関係
(2)流 動動 産譲渡担保 の法 的構成 との関係 (3)集 合物 の固定 との関係
(4)流 動動 産譲渡担保 と動産売買先取特権 との利益衡量
5,お わ りに
1.は じめ に
民法 311条 5号 お よび 321条 によ り、動産の売買 により生 じた動産の代価お よびその利息 の債権 を有す るものは、その動産 について先取特権 を有する。 この売買の対象 となった動 産 を当該買主が譲渡担保 に供 した場合、その動産 には譲渡担保権が存す ることにな り、動 産売買先取特権 と動産譲渡担保権の どちらが優先す るか問題 にな りうる。 また、その動産 の買主がメーカー等であ り、その動産が原材料であるような場合 に、当該買主であるメー カーが倉庫内にある搬入、搬 出のある
(いわゆる流動す る )原 材料 を譲渡担保 に供す るよ うな場合 には、その原材料 には流動動産譲渡担保権
(または、集合動産譲渡担保権や流動 集合譲渡担保権 と呼ぶ こともある。 )が 存す ることになる。 この流動動産譲渡担保 の場合 にも、動産売買先取特権 との優劣の問題が生 じうる。 さらに、譲渡担保 の目的物が変動す ることか ら、 目的物が流動 しているのか固定 されているのかで状況が担保 目的物 に対する 考 え方 も異 なるととらえることもで きるので、特定の動産の譲渡担保 よ りも流動譲渡担保 の方がこの問題が複雑 となる。
そ して、 この動産先取特権 と動産譲渡担気の優劣 に関する過去の裁判例 は、二つの事件
(う
ち一つの事件 は最高裁判所 に上告 された もので、第一審判決、控訴審判決 と併せて三
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F総合政策諭叢』第
19号 (2010年3月
)つの裁判例 となってお り、 もう一つの事件 は、第一審判決で確定 している。 )が あるが、
いずれ も流動動産譲渡担保 に関す るものである。 また、従来の担保 目的物が不動産か ら債 権 ・動産 に移行 している世界的な流れ
1)からすれば、担保 目的物 たる債権 ・動産の価値 を 広 く設定で きる流動債権 ・動産譲渡担保が益 々重要になって くる
D。そこで、本稿では、動産譲渡担保 と動産先取特権の優劣の問題 につ き、流動譲渡担保 を 中心に検討 してみたい と思 う。その際には、まず、二つの事件 (四 つ )の 判例 しかないが、
最高裁判例 を中心 に検討 してみる。次 に、学説は、流動動産譲渡担保 の保護 を図るべ きと するもの、動産先取特権の保護 を図るべ きとするもの、双方の権利 の保護のバ ランスを図 ろうとす るものがあるが、その論拠は様 々である。それ らの論拠か ら学説 を評価 ・分類 し た上で、検討 してみる。その検討 を踏 まえ、 自説 を述べ ることとす る。なお、 自説の展開 にあた り、債権 ・動産譲渡担保が金融実務 における担保融資手段 の選択 を広げるもの とし て期待 されている働ことか ら、動産譲渡担保 による融資 を促進す るため には、動産譲渡担 保 の強化 をすべ きである とい う観点 を重視 したい。 また、その動産譲渡担保 による融資 を 促進するために、動産譲渡担保権の対抗要件 として動産譲渡登記 によることが期待 されて いる°。そこで、流動動産譲渡担保の動産譲渡登記 について も重視 してみたい。
2.裁 判例 (1)最 高裁判例
最高裁が流動動産譲渡担保 と動産先取特権 との優劣 について判断 した ものに最三小判昭 和 62年 11月 10国 民集41巻 8号 1559頁 が一件ある。
同判例の事実の概要は以下の とお りである。 X会 社
(原告、被控訴人、被上告人 )は 、 昭和 50年 2月 1日 、訴外 A株 式会社 との間で、以下の ような内容の根譲渡担保権設定契約 を締結 した。す なわち、① A会 社 は、 X会 社 に対 して負担する現在及び将来の商品代金、
手形金、損害金、前受金その他一切の債務 を極度額 20億 円の限度で担保するため、 A会 社 の第 1な い し第 4倉 庫内お よび同敷地 ・ヤー ド内 を保管場所 とし、現 にこの保管場所内に 存在す る普通棒銅、異形棒鋼等一切の在庫商品の所有権 を内外 ともに X会 社 に移転 し、占 有改定の方法 によって X会 社 にその引渡 を完了 した もの とする、② A会 社 は、将来上記物 件 と同種 または類似 の物件 を製造 または取得 した ときには、原則 としてそのすべてを前記 保管場所 に搬入す るもの とし、上記物件 も当然 に譲渡担保の目的 となることを予め承諾す るとい うものである。そ して、 X会 社 は A会 社 に対 し、普通棒銅、異形棒銅、普通鋼々材 等 を継続 して売 り渡 し、昭和 54年 11月 30日 現在で 30億 1787万 311円 の売掛代金債権 を取得 するに至 った。一方で、 A会 社 は、 Y会 社 (被 告、控訴人、上告人 )か ら異形棒鋼
(以下
「本件物件 Jと い う。 )を 買い受 け、 これを前記保管場所 に搬入 した。その物件の価額 は 585万 4590円 であつた。 そ して、 Y会 社 は、本件物件 につ き動産売買の先取特権 を有 して いると主張 して、昭和 54年 12月 、福 岡地方裁判所所属の執行官 に対 し、右先取特権 に基づ
き、競売法 3条 による本件物件の競売の申立てを した。
これに対 し、 X会 社 は、 A会 社 は本件物件 を Y会 社か ら買い受 けて、前記保管場所へ搬 入 したので、 X会 社 と A会 社の根譲渡担保契約 によ り X会 社 は、所有権 に基づ き、被告が
な した本件物件 に対す る前記競売手続の排除を求めて、第三者異議 の訴 えを提起 した。
そ して、第一審、控訴審 ともに Xの 請求 を認容 したので、 Yは 最高裁 に上告 した。最高
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裁 は、以 下 の ように第一審、控訴審 とほぼ同様 の こ とを述べ て、上告 を棄却 した。
「構成部分 の変動する集合動産であつて も、その種類、所在場所及び量的範囲を指定す るなどの方法 によつて目的物の範囲が特定 される場合 には、一個の集合物 として譲渡担保 の目的 とす ることがで きるもの と解すべ きであることは、当裁半」所 の判例 とするところで ある (昭 和五 三年
(オ)第 九二五号同五四年二月一五 日第一小法廷判決・民集三三巻一号 五一頁か照
)。そ して、債権者 と債務者 との間に、右 の ような集合物 を目的 とす る譲渡担 保権設定契約 が締結 され、債務者がその構成部分である動産の占有 を取得 した ときは債権 者が 占有改定 の方法 によつてその占有権 を取得す る旨の合意 に基づ き、債務者が右集合物 の構成部分 として現 に存在する動産の占有 を取得 した場合 には、債権者は、当該集合物 を 目的 とす る譲渡担保権 につ き対抗要件 を具備するに至つた もの とい うことがで き、この対 抗要件具備 の効力 は、その後構成部分が変動 した として も、集合物 としての同一性が損 な われない限 り、新 たにその構成部分 となつた動産 を包含する集合物 について及ぶ もの と解 すべ きである。 したがつて、動産売買の先取特権の存在す る動産が右譲渡担保権の 目的で ある集合物 の構成部分 となつた場合 においては、債権者は、右動産 について も引渡 を受け た もの として譲渡担保権 を主張することがで き、当該先取特権者が右先取特権 に基づいて 動産競売の 申立 をした ときは、特段の事情のない限 り、民法三三三条所定の第三取得者 に 該当す るもの として、訴 えをもつて、右動産競売の不許を求めることがで きるもの とい う べ きである。
これ を本件 についてみるに、前記の事実関係 の もとにおいては、本件契約は、構成部分 の変動する集合動産 を目的 とするものであるが、目的動産の種類及び量的範囲を普通棒鋼、
異形棒銅等一切の在庫商品 と、また、その所在場所 を原判示の訴外会社の第一ない し第四 倉庫内及び同敷地・ヤー ド内 と明確 に特定 しているのであるか ら、このように特定 された 一個の集合物 を目的 とする譲渡担保権設定契約 として効力 を有するものというべ きであ り、
また、訴外会社がその構成部分である動産の占有 を取得 した ときは被上告会社が占有改定 の方法 によつ てその占有権 を取得する旨の合意に基づ き、現 に訴外会社が右動産の占有 を 取得 した とい うを妨 げないか ら、被上告会社 は、右集合物 について対抗要件の具備 した譲 渡担保権 を取得 した もの と解することがで きることは、前記の説示 の理 に照 らして明 らか である。そ して、右集合物 とその後 に構成部分の一部 となつた本件物件 を包含す る集合物 とは同一性 に欠けるところはないか ら、被上告会社 は、 この集合物 についての譲渡担保権 をもつて第三者 に対抗することがで きる もの とい うべ きであ り、 したがつて、本件物件 に ついて も引渡 を受けた もの として譲渡担保権 を主張することがで きるものというべ きであ るところ、被担保債権の金額及び本件物件の価額 は前記の とお りであつて、他 に特段の事 情があることについての主張立証のない本件 においては、被上告会社は、本件物件 につ き 民法三三三条所定の第三取得者 に該当す るもの として、上告会社が前記先取特権 に基づい て した動産競 売の不許 を求めることがで きるもの とい うべ きである。 これ と同旨に帰する 原審の判断 は、正当 として是認することがで き、原判決 に所論の違法 はない。論 旨は、こ れ と異 なる見解 に基づいて原判決 を論難す るものにす ぎず、採用す ることがで きない。」
と判示 してい る。
本判決は、①最一小判昭和 54年 2月 15日 民集 33巻 1号 51頁 を踏襲 して、構成部分の変動
す る集合 (流 動 )動 産が譲渡担保の目的 とな りうることを認めたこと、②流動動産譲渡担
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)保の特定性基準 も最一小判昭和 54年 2月 15国 民集 33巻 1号 51頁 を踏襲 して種類、所在場所 お よび量 的範囲 とし、本件事例 において もその特定性 を肯定 したこと、③流動動産譲渡担 保の対抗 要件 に関 し、集合物 としての同一性が損 なわれない限 り、譲渡担録設定契約時に なされた占有改定の合意 によつて、新 たに構成要素 となった動産 について も対抗力が及ぶ としたこと、④流動動産譲渡担保 と動産先取特権の優劣を決する基準 として、流動動産譲 渡担保権者は、占有改定によつて新たに集合物の構成要素 となった動産は、民法 333条 の 引渡 しを占有改定により受けた第三取得者 として、動産先取特権の追及力を制限 し、流動 動産譲渡担保権 を主張できるとしたことの以上四点について、判断 した。
①流動動産譲渡担保の有効性、②流動動産の特定、③流動動産譲渡担保の対抗要件につ いては、本稿のテーマとは異なる。①の流動動産譲渡担保 と動産先取特権の優劣を決する 基準が本稿のテーマである。そこで、本稿では、④の流動動産譲渡担保 と動産先取特権の 優劣 を決する基準について検討するため、①流動動産譲渡担保の有効性、②流動動産の特 定については、本判決の結論通 り、流動動産譲渡担保は有効であ り、本件では流動動産の 特定がなされているという前提で議論する。また、③流動動産譲渡担保の対抗要件 につい ては、④ の流動動産譲渡担保 と動産先取特権の優劣 を決する基準の問題 と関わつて くるの で、適宜必要に応 じ検討する。
(2)下 級審判例
下級審が流動動産譲渡担保 と動産先取特権 との優劣について判断 したものに、まず、前 述の最三小判昭和 62年 H月 10日 民集 41巻 8号 1559頁 の原原審である福岡地判昭和 56年 12月 25日 民集 41巻 8号 1559頁 と原審である福岡高判昭和 57年 9月 30国 民集 41巻 8号 1559頁 があ る。福岡地判昭和 56年 12月 25日 民集 41巻 8号 1559頁 、福岡高判昭和 57年 9月 30日 民集 41巻
8号 1559買 、最三小判昭和 62年 ■月 10日 民集 41巻 8号 1559が 判示 した内容はほぼ同 じであ り、最高裁判決を示 したので、ここでは省略する。
次に、前述の最高裁判決とは異なる事件 として、福岡地判昭和 57年 10月 8日 判時 1079号 77頁 が唯一ある。
この判例の事実の概要は以下のとお りである。 X会 社 (原 告 )と 訴外 A会 社は、昭和 50 年 2月 1日 、次のとお り根譲渡担保契約を締結 した。すなわち、① A会 社は、 X会 社に対 して負担する現在および将来の商品代金、手形金、損害金、前受金、借受金その他商品取 引上 もしくはこれに関連 して生ずる一切の債務につ き、その弁済を担保するため、 A会 社 が A会 社の第 1〜 第 4倉 庫および同敷地・ヤー ド内を保管場所 とし、同場所に所有保管す る普通棒銅、異形棒銅等一切の在庫商品を、極度額 20億 円の根譲渡担保 として、その所有 権を内外共に原告に移転 し、占有改定の方法による引渡を完了する、② A会 社が将来右担 保物件 と同種 または類似の物件を製造 または取得 したときは、原則 としてすべて右保管場 所に搬入保管 し、これらの物件 も当然 自動的に譲渡担保の目的 となることをあらかじめ承 諾するというものである。そして X会 社は、 A会 社に対 し、合計額 41億 6410万 4097円 の債 権 を有 している。一方で、本件の争いの対象 となる動産 (以 下「本件物件」 という。 )は 、 元々 Y会 社 (被 告 )が 所有 していたところ、 A会 社が昭和 54年 ■月 14日 これを Y会 社 より 買い受け、前記保管場所に搬入 した。そして、一方で、 Y会 社 (被 告 )は 、本件物件につ いて、 A会 社 に対する売買代金債権 を被担保債権 とする動産売買の先取特権を有するとし て、昭和 54年 12月 28日 、 A会 社 を債務者 として福岡地方裁判所執行官に対 し、先取特権に
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基づ き本件物件 の競 売 申立 て をな した。
これ に対 し、 X会 社 は、 A会 社 は本件物件 を Y会 社 か ら買 い受 けて、前記保管場所へ搬 入 したので、 X会 社 と A会 社 の根 譲渡担保契約 に よ り X会 社 は、所 有権 に基 づ き、被 告 が な した本件物件 に対 す る前記競 売手続 の排 除 を求めて、第三者異議 の訴 えを提起 した。
福 岡地裁は以下の ように述べ て、 X会 社の請求 を認容 した。
「 1 集合物譲渡担保拠約の効力
構成部分の変動す る集合動産 について も、 目的物の範囲が特定 される場合 には、一個の 集合物 として譲渡担保 の目的 とな しうるもの と解 される。 ここに目的物の範囲の特定は、
客観的一義的に目的物の範囲が確定 される方法 をもってなすべ きところ、担保物の種類、
その所在場所及び量的範囲の指定 によつてなす ことが可能である。 ことに、一定の所在場 所 にある物の全吉Ьを担保 目的物 とす るとい う指定の場合 には、それだけで客観的一義的に 目的物の範囲が確定 された とい うを妨げない。前記認定 ‑2(一 )の とお り、本件譲渡担 保契約はこの方式 による ものであ り、特定性の要件 を満 しているとい うべ きである。 」
「 2 集合物譲渡担保 の公示方法
構成部分の変動する集合動産 に対す る譲渡担保の公示方法は、個 々の動産 に対する譲渡 担保 におけると何 ら変わるところはな く、 目的物の占有 を設定者 に留保する形態 において は、占有改定の方法 によることがで きるもの とい うべ きである。 この場合、譲渡担保の目 的物 は集合物それ自体であるか ら、一度設定契約時に集合物 自体 について占有改定がなさ れれば、以後その構成部分 に変動があった として も、集合物 としての同一性 を占有 してい る以上は、集合物 に対す る譲渡担保 としての対抗力 を継続 して有 していると解 されるので あ り、個々の物が集合物 に組み入れ られる度 ごとに、その物 について新 たに占有改定 をな す ことを要 しない。
これに対 し、被告 は、占有改定 は公示方法 として極めて不十分であつて、第二者 に不測 の損害 を与 えるおそれがあるか ら、集合物譲渡担保の対抗要件 としては明認方法 を要求す べ きであると主張する。 なるほ ど、占有改定が公示方法 として現実の引渡や明認方法に比 べ て不十分であることは否定で きない ところであるけれども、譲渡担保の公示方法、さら には動産物権変動の公示方法 として一般 に承認 されているところであって、集合物譲渡担 保 の場合 にのみ、特 にこれ と区別 して占有改定以外の公示方法 を要求すべ き理 由はみいだ せ ない
以上 を本件 についてみるに、前記認定 ‑2(一 )の とお り、設定契約時 に集合物 自体 に ついて占有改定がなされているのであるか ら、その後前記所在場所 に搬入 されて集合物の 構成部分 となった本件物件 について も、対抗要件が具備 されているとい うことがで きる。 」
「 してみると、前記認定 ‑2の 事実の もとでは、原告は譲渡担保契約 に基づ き本件物件 に 対する所有権 を取得 し、かつ、 これを被告 に対抗す ることがで きる。
他面、民法三三三条 にい う引渡 には占有改定 も含 まれるか ら、被告 は同条 により本件物 件 に対する先取特権 を行使 で きず、 したがって、本件物件 について申立てた先取特権に基 づ く競売手続 は詐 されない。」 と判示 している。
本判決は、①流動動産譲渡担保の特定性基準 は種類、所在場所お よび量的範囲 とし、本
件事例 においてもその特定性 を肯定 したこと、②流動動産譲渡担保の対抗要件 に関 し、集
合物 としての同一性が損 なわれない限 り、譲渡担保設定契約時 になされた占有改定の合意
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)によつて、新たに構成要素 となった動産についても対抗力が及ぶとしたこと、③流動動産 譲渡担保 と動産先取特権の優劣 を決する基準 として、流動動産譲渡担保権者は、占有改定 によって新たに集合物の構成要素 となった動産を民法 333条 の引渡 しを占有改定により受 けた第三取得者 として、動産先取特権の追及力が制限され、流動動産譲渡担保権 を主張で きるとしたことの以上三点について、判断 した。
最三小判昭和 62年 11月 10国 民集 41巻 8号 1559頁 と比べ、①流動動産譲渡担保 の有効性だ けが判示 されてお らず、②流動動産の特定、③流動動産譲渡担保の対抗要件、④ の流動動 産譲渡担保 と動産先取特権 の優劣 を決す る基準 については、最三小判昭和 62年 11月 10日 民 集 41巻 8号 1559頁 とほぼ同 じ判断 を示 している。 したが つて、本稿のテーマである④ の流 動動産譲渡担保 と動産先取特権 の優劣 を決す る基準は、同 じであるといえる。 よって、判 例 は、流動動産譲渡担保 と動産先取特権の優劣 を決する基準 として、流動動産譲渡担保権 者 は、占有改定 によつて新 たに集合物の構成要素 となった動産 を民法 333条 の引渡 しを占 有改定により受けた第三取得者 として、動産先取特権の追及力が制限され、流動動産譲渡 担保権 を主張で きるとした との統一 した考 えであるといえる。
なお、本判例 も最三小半 J昭 和 62年 11月 10国 民集 41巻 8号 1559頁 も訴外 A会 社 は同一であ り、原告、被告はそれぞれ異 なるが、共に大手商社 とい う点では同 じである。
3.学 説 (1)民 法 333条 説
この学説は、前述の裁判例 の考 え方 と同様 に、動産売買先取特権が存す る動産に譲渡担 保が設定 された場合、譲渡担保権者 を民法 333条 の第三取得者 とみて、同条 を適用す るこ とにより、動産売買先取特権が消滅すると考 えるものである。 しか し、 この学説 を採 るも の も、裁判例のように、譲渡担保の法的構成 について所有権的構成 を採 ることか らただち に民法 333条 を適用で きる とす る ものではな く、利益衡量 した結果、同条 を適用すべ きと する。
例 えば、売主の手 に留保 されたはずの目的物の交換価値が、 目的物が現実 に債務者
(買主 )の 手許 にとどまっているのにみすみす後発の譲渡担保権者 に取 られて しまうことは、
動産売買先取特権者 としては耐 えがたい ことであろうが、 目的物 の利用処分権 はすでに 100パ ーセ ン ト債務者狽 1に 移 っているのであ り、債務者が これを担保提供 して営業や金融 上のメリッ ト
(あるいは反対給付 )を 享受することに対 し、先取特権者 としては本来何の 文句 もいえないのである (代 金債権不払の さい、担保実行がで きることは別 として
)。し か も占有改定 とはいえ民法上 は立派な引渡 しであ り、 またそ うであるか らこそ譲渡担保権 者 としてはこれを安心 して債務者 に占有保管 を委ね、かつ担保提供の見返 りの給付
(それ が現実の融資であるか売掛 による信用供与であるかは別 として )を 債務者 に与 えるのであ る。 この意味で、譲渡担保 の設定 ならびに占有改定 による引渡 しは、文字通 り民法 333条 所定の第三取得者への引渡 しと認めて さしつかえな く、先取特権 はその引渡 しの時点で自 動消滅することになるとす るい。
また、譲渡担保 は簡便 な、 しか も強力 な担保権 として認識 され、これに対す る取引社会
の需要は大 きい。す なわち、金融機関等の ように強い立場 にない債権者 も、設定手続 も実
行方法 も簡略で、かつ強力 な担保権 としての譲渡担保 を利用す ることにより、取引 を拡大
し、典型担保 として提供す る物のない中小企業者 も譲渡担保の利用 によ り信用枠 を拡大 し て きたのである。 この ように経済社会の活性化 に対する譲渡担保の寄与は計 り知れない も のがあ り、その発展形態 として流動動産譲渡担保 も登場 して きている。 これに対 し、先取 特権 は法定担保物権であるといって も、同担保権があるか ら信用供与するというものでは ない。所有権留保 をすることもな く、すでに売 り切 って しまった物 に対する権利 にす ぎな い。 したが って、流動動産譲渡担保権 と動産売買先取特権 との優劣 については、利益衡量 か らすれば、譲渡担保 の所有権移転の法形式 か らの解釈が許 され、譲渡担保権者 は民法 333条 の第三取得者 に該当 し、先取特権の効力が及ばない と解する とす る°①
さらに、流動動産譲渡担保 と動産売買先取特権の優劣 の決定基準 については、 どちらを 優先 させ るのが実務上妥当か という実践的問題 と、条文操作 によってどの様 に基礎づける か とい う解釈理論 的な問題 という二面における立場の相違 によって、見解が分かれている と指摘する ものがある
D。そ して、その論者は、 まず流動動産譲渡担保 と動産売買先取特権 の どちらを優先 させる のが実務上妥当か とい う実践的問題 については、①現在 の取引実務 において譲渡担保は広 く行 われてお り、その効力 をむげに制限 して しまうとかえって債務者の金融の道 を閉ざす ことにもな りかねない とい うこと、② 目的物が高額化 している現在、流動動産譲渡担保 を 無条件 に優先 させ ることは不意打 ちの弊害 を生 じさせることの 2点 が重要であるとする。
その結果、原則 として流動動産譲渡担保が金融実務上の有効であることを認めつつ、第三 者 に対す る不意打 ちの弊害 をな くすべ きであるとされる。
その議論 を踏 まえた上で、条文操作 によって どの様 に基礎づけるか とい う解釈理論的な 問題 については、民法 319条 の先取特権の即時取得の規定 を類推適用 しようとす る考えに ついては、即時取得制度の目的が、取引の安全 を保護することにあるか ら、本来取引行為 の存在 しない法定担保物権 には即時取得の余地がない。先取特権 にも例外的に規定 した民 法 319条 は、条文上掲 げ られた三つの先取特権 に制限 して列挙 された ものであ り、動産売 買先取特権 には類推適用で きない とす る。次 に、民法 334条 を類推適用 しようとす る考 え に対 しては、同条が直接 占有型担保である質権 に関する規定であ り、譲渡担保 には類推で きないのではないか とする。それよりも、譲渡担気の所有権 の移転 とい う外形 に注 目する な らば、む しろ民法 333条 の規定の方が近い としている。 しか し、動産売買先取特権者 に も配慮 して、既 に動産売買の先取特権が存在 していることを知 りなが らあえて目的物 を譲 渡担保 にとった ような者 まで保護する必要はないか ら、 この場合 には、た とえ占有改定が 民法 333条 の引渡 しにあたるとして も、先取特権の方が優先するべ きとしている
D。この ように民法 333条 適用説 にあって も、判例 と異 な り、学説 は動産先取特権者 との利 益衡量 を図つていることが うかがえる。
(2)民 法 334条 類推適用説
この学説は、動産譲渡担保権の設定は、動産の担保権の設定である動産質権に近いもの とみて、民法 334条 を類推適用する。そ して、動産譲渡担保権 を民法 330条 1項 1号 の第一 順位 として、同条同項 3号 の動産売買先取特権 に優先す ると考 える。 この説によれば、民 法 330条 2項 によ り、流動動産譲渡担保権者が、 目的の動産が集合物の内容 をなす ことを 知 ったときに、当該動産の上 に動産売買先取特権が存在す ることを知 っていた場合 には、
先取特権が優先 されることになる
9。‑27‑
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19号 (2010年3月
)この説の論拠は、譲渡担保は、動産担保 とい う性格か ら、質権 と同質・同列 と考 えられ、
従 って、民法 334条 か ら 330条 の第一順位 とされ、動産売買先取特権 に順位的に優先する。
また、動産売買先取特権 の効力が弱 く、 330条 1項 の中で も劣後的地位 に置かれているこ と、他方、実際上の使われ方 を見て も、集合物譲渡担保ではかな り大 きな与信枠
(昭和 62 年最高裁判例 では 20億 円 )が 設定 されていることなどを考 え併せ ると、譲渡担保が動産売 買先取特権 に順位的に優先すると考 えるのである ゆ 。
他 にも、次の三点を挙げるものがある。 まず、動産譲渡担保 に一香接近 した動産の法定 担保物権 は質権であ り、譲渡担保制度の発展の経緯か らして動産質権 より効力 を弱めるこ とは妥当で ない。次 に、譲渡担保の順位 をすべての動産先取特権 より先順位 とす ることに は、何 らの類推の根拠規定 を欠 くものだけに疑問がある。第三 には、譲渡担保 を民法 330 条の第一順位 の先取特権 と同一順位 と解 して も不当な結果 をもた らさないことである。す なわち、第一順位の先取特権中旅店の宿泊お よび運輸の先取特権は目的物が先取特権者の 事実上の支配下にあ り、不動産賃貸の先取特権 も間接的 とはいえ目的物は先取特権者の支 配下 にある。それゆえ譲渡担保が先 に設定 されていて も、それを知 らない先取特権者は先 取特権の行使 を期待 しうる立場 に立ち、その期待 は保護 されるべ さだと解せ られる し、他 方譲渡担保が この先取特権 より後 に設定 される場合 には、譲渡担保権者はそれ らの先取特 権の存在 をある程度 まで予測 し得 るのであつて、不測の損害 を被 ることはないか らである
とする ・
)。さらに、民法 330条 2項 が適用 されるのは、流動動産譲渡担保権者が、 目的の動産が集 合物の内容 をなす ことを知ったときに、当該動産の上 に動産売買先取特権が存在すること を知 っていた場合であるとする論拠 は以下の とお りである。すなわち、流動動産譲渡担保 では動産が集合物 に搬入 されると自動的にその効力が及ぶので、譲渡担保権者は搬入 され たこと、換言すると、動産に担保権が設定 されたこと自体知 らない ことが多 く、そのため に同条同項 を適用する余地はな く、常 に譲渡担保権が優先す ると考 えられるが、その結論 は譲渡担保権者 に強い効果 を与えす ぎることになる。そこで、当該動産が集合物の内容 を なす ことを知 った時点にしている 〕。
(3)民 法 319条 類推適用説
この学説 は、動産売買先取特権が存す る動産 に譲渡担保が設定 された場合、民法 333条 が適用 され ることを前提 とするもの Dと 民法 334条 を類推適用 されることを前提 とす る も のいがある。その上で、民法 312条 か ら 318条 の先取特権者 に しか適用 されない民法 319条 の先取特権者の即時取得規定 を類推適用 しようとす る考 えである。
まず、前者の論拠は、動産先取特権 の追及力の制限の解釈 について も、動産先取特権者 が、善意 ・無過失の場合 は、いかに民法 333条 が動産先取特権 の追及力 を制限 して動産取 引の安全 に資す る趣旨をもつにせ よ、債務者が終始一貫 して直接 占有 をな し、先取特権者 が善意・無過失であつた場合 について、占有改定後 は先取特権の行使 を許 さない とするの は、実質的不均衡 さは否定 し難い。解釈論 としては、民法 319条 を拡大 し、類推適用す る ことは、若千枠 を超 えた きらいはあるが、善意 ・無過失の動産売主 を保護す るため、やむ をえない と考 えるとする n。
次 に、後者の論拠は、 目的物の上 に先取特権 を有す るもの と信 じて契約 を結 んだ債権者 の信頼 を保護す るために、取引行為の存在 しない法定担保物権 たる先取特権 に善意取得 の
‑28‑
趣 旨を拡張す る規定が、民法 319条 である とまず解す る。その上で、 このような債権者の 信頼が保護 されなければならないのは、 これ らの契約関係 にあっては、債権者側の給付が 先履行の関係 にあるか らに他 な らない。そ うであるならば、民法 312条 か ら 318条 の先取特 権者 に しか即時取得の適用 を限定する必要はない。流動動産譲渡担保権が成立後、設定者 に対 して動産が売却 され、当該動産が集合物内に組み入れ られた場合 にも、動産売主は売 却 した目的物 に対 して先取特権 を行使 しうるとい う期待 を有 してお り、占有改定 とい う不 完全 な公示手段 しか具備 しない流動動産譲渡担保権 によって、動産売買先取特権者の期待 が奪 われることは妥当でないか らである とする n。
以上の ように、この説は、流動動産譲渡担保 と動産売買先取特権の優劣 について問題が 生 じた場合、 まず民法 333条 を適用するのか民法 334条 を類推適用するのか検討 しなければ な らない。その上で、動産売買先取特権が劣後する場合 にり、民法 319条 が類推適用すべ きか とい う問題 になる。
(4)担 保権成立の先後で決す る説
この学説では、流動動産譲渡担保権の 目的物 となる動産が搬入 された ときと動産売買先 取特権の成立時期の先後 によって決す るとす る考 えである。
その論拠 は、動産売買先取特権 と流動動産譲渡担保 は、双方 ともに、対抗要件 により第 三者 に対抗 しうる担保権ではないので、対抗要件具備の有無 ・先後 によって決めるわけに はいかない。動産先取特権 は、その成立 によ り第三者 に対 してその効力 を主張 しえ、譲渡 担保 は占有改定 により第三者 にその効力 を主張 しうるのであるか ら、先取特権の成立時 と、
譲渡担保 の目的動産が集合物の構成部分 となった時、すなわち、譲渡担保設定契約で定め られている所在場所 に搬入 された時の先後 によることになるとす る n。 また、譲渡担保の 法的構成 について担保権的構成 を採 ることを前提 に、動産所有権の譲渡 についてのみ対抗 要件 た りうる占有改定 をもって譲渡担保 の対抗要件 とすることはで きず、占有改定 とい う 観念 的技巧のみによつて対抗力 を持 たせ ることはで きない とする。その上で、流動動産譲 渡担保権 も動産売買先取特権 も公示性のない担保であることを考 え、動産に担保権 として 先 に付 されている動産売買先取特権が流動動産譲渡担保権 に優先 しているとする劫。
(5)対 抗要件具備の先後で決す る説
この説 は、占有改定による対抗要件性 を否定 して、少 な くとも第三者 に対す る関係 では 譲渡担保の主張 を否定 し、第三者が譲渡担保の所在 を知ることがで きるような何 らかの方 法
(明認方法 )を 講 じた ときに対抗要件 の具備 を認めることを前提 とす る。その上で、対 抗要件 を具備 した流動譲渡担保である場合 には、売主が設定者に動産を売却することによっ て一旦先取特権が発生 したにもかかわ らず、編入により遡及的に担保の客体 とな り、流動 動 産譲渡担保権 と動産売買先取特権 の競合 を生 じ、流動動産譲渡担保権が優先す る とす
る
20。その論拠は、占有改定の場合、譲渡担保権者 は間接 占有者であ り、その譲渡担保権が一 般債権者 に対抗で きない以上、 この間接 占有 を保護する必要がないので、民法 333条 は適 用せず、売主は動産売買先取特権 を行使 しうると解すべ きだとす る。他方、譲渡担保権者 が対抗要件 を具備 した場合 には、買主の支配か ら離れ、買主が第三者 に引 き渡 した場合 に 準 じた状態 となることか ら、流動動産譲渡担保権が動産売買先取特権 に優先することにな る とする
tll。‑29‑
島根県立大学
F総合政策論叢』第
19号 (2010年3月
)(6)流 動動産譲渡担保の実行開始前後で分類する説
この学説は、流動動産譲渡担保の実行 開始の前後で分類 して考 えるものである。流動動 産譲渡担保の実行が開始 される前 には、流動動産譲渡担保の目的物である動産の流動性が 失われていないか ら、流動動産 (集 合物 )を 構成す る個別動産 に対 して譲渡担保 の効力が 及ばないか ら、動産売買先取特権が優先する と考 える。これに対 し、流動動産譲渡担保が 実行 開始 して担保 目的物が固定 された ときには、個別動産に対 して譲渡担保の効力が及ぶ か ら、流動動産譲渡担保 と動産売買先取特権の競合が生ずるとす る。そ して、動産上の非 占有担保 として、流動動産譲渡担保 と最 も近似性がみ られることか ら、動産抵当理論 を援 用すべ きとす る。具体的には、 自動車抵 当
(自動車抵当法 11条
)、建設機械抵当 (建 設機 械抵当法 15条
)、農業動産抵当 (農 業動産信用法 16条
)、航空機抵当 (航 空機抵当法 11条
)などでは、いずれ もこれ らの動産抵当権 は民法 330条 1項 に規定す る第一順位 の先取特権 と同順位 とされていることか ら、流動動産譲渡担保権 もその順位 として、民法 330条 1項 3号 の動産売買先取特権 に優先すると解 している 勿。また、動産抵当理論ではな く、動産 質権 に近い ものとみて、民法 334条 を類推適用 して、動産譲渡担保権 を民法 330条 1項 1号 の第一順位 として、同条同項 3号 の動産売買先取特権 に優先すると考 えるもの もある
2)。この説の論拠は、流動動産譲渡担保 の法的構成 について、集合物 とい う概念で限定 され た価値枠 にある有体的動産 によつて捉 えられる限度の浮動的価値 を担保的に支配す るもの として、限定的浮動的担保 として構成す ることを前提 にする 劾。そ して、流動動産譲渡担 保 と動産売買先取特権 との関係 は、両担保権の担保力 についての優劣 に関わる価値判断の 問題 とされる。そ して、この優劣の価値判断は比較衡量 によつてなされ、その比較衡量は、
一般的には流動動産譲渡担保権 については、単純 にその目的物である流動動産 を個別動産 に行 っているにす ぎない とする。そ して、重要なのは集合物 を構成する個別動産 に対する 担保力 につ き比較衡量す ることである と指摘 される。その上で、動産売買先取特権の場合 は当該個別動産が 目的物 として特定 されるのに対 して、流動動産譲渡担保権の場合 は個別 動産 についての流動性が前提 とされるわけであるか ら、個別動産に対す る担保力文配 につ いては動産売買先取特権の方 を優先 させ るべ きであると考 える。 しか し、流動動産譲渡担 保権 は、特 に中小企業者 に対する信用供与のための担保制度 として、正常 に機能する限 り
においては、その担保力 を確保することも必要である。そこで、個別動産が流動性 を失い 確定的に集合物 を構成するに至 った時点 においては、流動動産譲渡担保権の方 を優先 させ る必要があるとするか。そ して、流動動産譲渡担保権の方 を優先す る方法 は、前述の よう に民法 334条 の類推適用 によつている。
4.考 察
(1)譲 渡担保の法的構成 との関係
譲渡担保の法的構成 については、周知の ように大別 して、譲渡担保 は所有権移転の法形 式 をとるため、 目的物の所有権が譲渡担保権者 に移転するとい う所有権的構成 と、譲渡担 保の実質か らみて、所有権 は移転せず、譲渡担保 はあ くまで担保権であるとす る担保権的 構成がある。
そ して、本稿のテーマである流動動産譲渡担保 と動産売買先取特権の優劣 の決定基準 に 関 し、民法 333条 の第三取得者 は所有権者のみ を対象 としているか ら 郷 、譲渡担保の法的
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構成 について所有権的構成 を採れば、同条 を適用 して動産売買先取特権者 は追及力が制限 され、動産売買先取特権が消滅 し、流動動産譲渡担保権者が もっぱ ら権利主張で きるとい う考 えに導 き易い。判例 はこの ように解 している冽。 これに対 し、譲渡担保 の法的構成に ついて担保権的構成 を採れば、流動動産譲渡担保 を動産担保権たる動産質権、あるいは特 別の動産抵当
(自動車抵当
(自動車抵当法 11条
)、建設機械抵当 (建 設機械抵当法 15条
)、農業動産抵当
(農業動産信用法 16条
)、航空機抵当 (航 空機抵当法 11条 ))と 同視 して、民 法 334条 を類推適用す る考 えを導 き易い。
しか し、それぞれの説が強い根拠 とする所有権移転の法形式 と実質的に担保であること は看過で きないことであるか ら、中間説があ りこれが多数説 となっている。たとえば、授 権説か、設定者留保権説効、物権 的期待権説 30な どがある。 これ らの学説 は所有権の移転 とい う形式か ら所有権の移転 を認めるが、その所有権は完全 な ものでな く、担保権 により 制限されているとしている。
結局、譲渡担保 においては所有権移転の形式 をまった く無視することもで きない し、ま た、所有権移転 とい う形式 を採 っていて も、担保権 という実質 を備 えていることも無視で きない といえる。す なわち、第三者 に対す る公示力がある不動産登記は登記原 因が譲渡担 保 と記載 されていて も、所有権移転登記が行 われてお り、それを第三者 は認識するのであ る。 また、動産 ・債権譲渡特例法 (動 産及び債権の譲渡の対抗要件 に関す る民法の特例等 に関する法律 )3条 1項 の動産譲渡登記では、譲渡の目的が何 らの制限 もな く、担保 目的 で も、所有権移転一般で もどち らで もよいことになっている。 また、同法 7条 2頂 4号 に より登記 ファイルには動産譲渡登記の登記原 因が記録 され、譲渡担保 ならば、売買、贈与 等 と区別 して譲渡担保 と記録 されるが
a)、動産で も所有権移転登記がなされてお り、それ を第三者は認識するのである。 さらに、譲渡担保の実行 においては、 目的物 を処分 して清 算する (処 分清算 )よ りも、譲渡担保権者 に目的物の所有権が帰属 して清算す ること (帰 属清算 )が 原則である
3か。 ょって、所有権移転の法形式は譲渡担保 の法的取 り扱いにおい ては、十分考慮 されるべ きである といえる。他方で、譲渡担保設定契約 における取引の実 態や弁済による受戻 しが認め られていること 39か らすれば、譲渡担保が担保権の側面 を有 している、あるいは少 な くとも担保的性格 もあることか ら完全 な所有権移転ではないこと が うかがえる。 この担保権の側面 も譲渡担保 の法的取 り扱いにおいては、十分考慮 される べ きである。
以上か ら、譲渡担保の法的構成 には、両側面があることか ら、判例の ように譲渡担保の 法的構成 によって、論理必然 として民法 333条 適用説 となった り、あるいは、反対 に民法 334条 類推適用説 となった りす るわけではない と考えられる
30。(2)流 動動産譲渡担保の法的構成 との関係
流動動産譲渡担保 の法的構成 は、 ドイツにおける伝統的通説で もある分析論 とい うもの があ り
3)、流動動産 を一個 の契約 によ リー括 して譲渡担保 に供する場合で も、法的には個 別動産 ごとに複数の担保権が成立するとす る
30。この理論では、客体範囲の基準 は、個別 動産が譲渡担保権の個別的客体 として特定 されるための要件であ り、抽象的な枠 にとどま るものではない。なお、個別動産力潮贋次時期 を具 にして搬入 されて債権者 に帰属するのは、
設定契約上、搬入 を停止条件 として所有権移転お よび占有改定 を生ずべ き予めの合意によ るものであ り、個別動産が設定者の営業活動 に伴い順次搬出され、有効 に処分 されるのは、
‑31‑
島根県立大学『総合政策論叢』第
19号 (2010年 3月)や は り設定契約 にお け る搬 出 を解 除条件 とす る予 めの合意
(また は処分権 の授 与 )に 基 づ
くもの とされる初。
これに対 し、判例鋤 ・通説鋤 は、集合物論 を採用する。その理論 は、以下の とお りであ る。すなわち、構成部分の変動す る集合動産で も、上記基準 によ り目的物の範囲が特定 さ れる場合 には、一個 の集合物 として譲渡担保の目的 とすることがで きる。それ とともに集 合物の管理利用権が設定者 に与 え られることは、特定物譲渡担保の場合 と異 ならない。 ま た、この関係 において、個別動産は、元来それぞれが一個の有体物 としての独立存在 を失 うものではないが、集合物の構成部分 としてそれに属する限 り、譲渡担保権の支配 に服す るが (個 別動産所有権 も債権者 に帰属す る
)、設定者 に与 えられた集合物管理利用権 の行 使 により集合物か ら分離 される限 り、個別動産 自体の法的運命 に したがい、第三者への有 効な移転 も可能 となる。 また、譲渡担保の対抗要件 について、担保設定の対抗要件 を占有 改定 とするが、それが当初の設定 に具備 されると、集合物 としての同一性が損 なわれない 限 り、構成部分が変動 した後の集合物 にも効果 を及ぼす。 したが って、後 に加入 した個別 動産 も当然債権者 に引渡 されたことにな り、 しか もその対抗力は当初の担保設定の対抗力 具備の時期 まで遡 って認め られるとす る
40。以上 より、集合物論の場合 は、当初の譲渡担保設定の対抗要件 を占有改定 とすれば、そ れ以後の流動す る
(この場合、搬入す る )集 合物 に効力 を及ぼ しうるが、分析論 の場合で も、その都度占有改定 を生ずべ きとの予め (設 定時 )の 合意 により、流動する
(この場合、
搬入する )集 合物 に効力 を及ぼ しうることになるので、異 なるところはない。ただ し、対 抗力が、集合物論では遡及す るが、分析論では遡及 しない とい う違いだけはある。
しか し、分析論では、譲渡担保 の目的物 は、あ くまで個々の動産その もの となるか ら、
譲渡担保権者の権利 も個 々の動産それ 自体 に及んでいるので、動産売買先取特権 との優劣 をどのように決するかの問題 にな りうる。 しか し、集合物論では、譲渡担保の 目的物は集 合物その ものであ り、対抗要件 も集合物 について備 えられているにす ざない。すなわち、
個々の動産は譲渡担保の目的物ではないのであ り、集合物の構成要素 としての地位 しかな く、個別動産 には譲渡担保の効力が及ばない結果、動産売買先取特権 との優劣 をどのよう に決するかの問題 にな りえない とも考 えられる。そこで、集合物論 は、集合物 に譲渡担保 権が設定 される結果、同時 に、個別動産 も直接 に譲渡担保 目的物 となる二重帰属性 を採用 している。その考 えによれば、動産売買先取特権 との優劣 をどの ように決するかが問題 と な りうる
41)。このように、分析論で も、集合物論で も、流動動産譲渡担保 と動産売買先取特権の優劣 の問題 にな りうるのである。
ところが、 これ らの説 と異 な り、集合物論 の矛盾 を解消す るため り に生 まれた価値枠 論 40と ぃ ぅ考 え方がある。 この考 えが、前記 3.学 説 (6)流 動動産譲渡担気の実行 開始前 後で分類する説の前提 となるものである。すなわち、集合物 とい う概念で限定 された価値 枠にある有体的動産によつて捉 えられる限度の浮動的価値 を担保的に支配するもの として、
限定的浮動的担保 として構成す るものである。そ して、流動動産譲渡担保が実行 され、集 合物が固定 されれば、特定の動産譲渡担保 と同 じように物
(当該動産 )に 対 して直接譲渡 担保権の支配が及ぶ とする ものである。
この考 えを採れば、流動動産譲渡担保権が実行 されない限 り、流動動産譲渡担保権は価
‑32‑
値枠 の 中で、担 保 的支 配 を してい るだけであ り、搬 出 されれ ば、追 及力 が失 われ る もので あ るか ら、個 別動 産 に対 す る担保力支配 につ いては動産売買先取特権 の方 を常 に優先 させ るべ きとい うことになる。すなわち、 この判断により流動動産譲渡担保 と動産売買先取特 権の優劣 をどの ように決するか という問題 に もはやならな くなるとい うことである。
この ように価値枠論 を採用するか否かは別 に して、流動動産譲渡担保の実行開始前 には この ように決す ることが妥当か、すなわち集合物が流動 しているか固定 されているかで こ のように分 けて考 えるのが妥当か次章で検討 してみる。
(3)集 合物の固定 との関係
流動動産譲渡担保 と動産売買先取特権の優劣 の問題 について、集合物が流動 しているか 固定 されているかで この ように分けて考 えるべ きであるとする ものの中で、価値枠論か ら 論理的に考 えるの とは別 に、実質的に考 える論拠 として次の ものがある。すなわち、動産 売買先取特権 に関 しては、売買の ときか ら目的動産は特定 しているのに対 して、流動動産 譲渡担保 は個 々の動産が流動 しているため、確定 と離れては考 えられない と、 まずその差 異 を示す。そ して、流動動産譲渡担保 は、通常の動産譲渡担保 と異な り、集合物 という枠 の範囲内に存す る動産が担保 目的物 とされるが、個 々の動産が変動、流動 している場面 に おいては、潜在 的に担保 目的物 になる可能性 は秘め られているが、 この段階では、かかる 動産は処分、売却 されることが容認 されてお り、具体的、現実的に担保 目的物の対象 とさ れる動産か否かは、未だ確定 してはいない。 したがって、この流動段階において、最高裁 が判示 した ように先取特権の主張 を排除で きるとすると、担保 目的物 となるか どうか未確 定の動産 をすべ て流動動産譲渡担保権者が把握す ることにな り、譲渡担保権者の保護 に偏 りす ぎることにな りは しないか。 さらに、先取特権者 は、売却 した動産は買主の手許にそ れが存す るに もかかわ らず、売却 した動産 を譲渡担保設定者 (買 主 )に 引 き渡 した時点で すでに、先取特権 を主張す る余地がな くなって しまう。 しか し動産売買の先取特権 は、明 文のある法定担保物権であ り、その根底 には動産売主の気護 を目的 として規定 されている 点に鑑みれば、先取特権者 (売 主 )が 動産 を譲渡担保設定者 に売却 した結果、そこに存す るのであ り、 したが つて先取特権者 との関係 においては、譲渡担保権者が担保 目的物 とし てその価値交換 を現実に把握する必要性 と法定担保物権者である先取特権者 を比べれば、
この時点では後者 に比重が置かれると考 えられるべ きであるとする
40。まず、最三小判昭和 62年 11月 10日 民集 41巻 8号 1559頁 の ように判示すれば、常 に先取特 権の主張 を排除で きることにな り、譲渡担保権者の保護 に偏 りす ぎることにな りは しない か とい う点については、反対 に流動動産譲渡担保が成立 していて も、実行 されない限 り、
常 に動産先取特権 に劣後することになるのではないか 1)と い う暴間がある。後述す るが、
筆者 は民法 333条 を適用 して も、民法 319条 を類推適用することも認めるので、動産先取特 権者が常 に劣後することにはならない。次 に、動産先取特権の 目的物が将来その 目的物 に なるか どうかは未確定である流動動産譲渡担保権 よりも、権利 もまた物 自体
(買主の手許 であるが )も 現存 している動産売買先取特権 を利益衡量上、優先すべ きとい う考 えに対 し ては、流動動産譲渡担保が実行開始 まで優先権 を持 たない とすれば、実行開始 までは担保 としての交換価値の把握が著 しく減退 して しまうことになる。その ような価値が減退 した 担保権 を利用 しようとい う機運はな くなる。流動動産譲渡担保権 の利用促進 とい う観点か らは、実行時点 に担保価値があることは当然重要であるが、実行前 にも担保価値がなけれ
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島根県立大学『総合政策論叢』第
19号 (2010年3月
)ばならないのは同様 に重要である。あるいは、担保価値 を高い ものにするため、流動動産 譲渡担保 の利用 を諦め、多数の特定動産の譲渡担保 を設定せ ざるを得 な くなって しまう。
これでは、流動動産譲渡担保 を認めることによ り、担保価値 を高めて高額の融資 を可能に した趣 旨、 また何度 も譲渡担保 を設定 しな くて もよい便宜 を図つた趣 旨が無 に帰すること にな りうる。
以上 よ り、流動動産譲渡担保 と動産売買先取特権の優劣 の問題 について、集合物が流動 しているか固定 されているかでこのように分 けて考 えることには反対であ り、 またその前 提 となる流動動産譲渡担保 の法的構成 を価値枠論で捉 えることも反対である。
(4)流 動動産譲渡担保 と動産売買先取特権 との利益衡量
これまでの検討 により、流動動産譲渡担保 と動産売買先取特権の優劣の問題 について、
譲渡担保 の法的構成 により直ちに決することはで きない。 また、流動動産譲渡担保 の法的 構成 について集合物論 を採用 して も分析論 を採用 して も差異 はほ とんどない し、その法的 構成か らは直ちに結論 を導 くこともで きない。そこで、やは り流動動産譲渡担保か動産売 買先取特権 か どちらを保護すべ きか実質的な利益衡量 をすべ きであると考 える。以下では、
前記 (3)集 合物の固定 との関係で論 じ終えた (6)流 動動産譲渡担気の実行開始前後で分類す る説 を除 き、動動産譲渡担保か動産売買先取特権 を利益衡量 しなが ら、各学説の検討 をし てみたい と思 う。
まず、 (4)担 保権成立の先後で決す る説であるが、流動動産譲渡担保権の 目的物 となる 動産が搬入 された ときと動産売買先取特権の成立時期 の先後 によつて決するとするのであ るか ら、通常 は目的動産 を購入 してか ら搬入 されるので、常 に流動動産譲渡担保が動産売 買先取特権 に劣後することになる。 これは、流動動産譲渡担保の担保価値 を減少 させ るこ
とになるので、流動動産譲渡担保が利用 されな くな り、不動産の担保 を持たない中小企業 等 にとり資金調達の方法 を奪われることになるので妥当でない。
次 に、 (5)対 抗要件具備 の先後で決す る説 については、何 らかの明認方法 を講 じること について、公示手段 として永続性、記載事項 の範囲について も問題があるとの指摘があ る O。 また、流動する多数の動産にいちいち明認方法 を講 じるのか疑間である
4つ。 したがっ て、明認方法 により対抗要件 を具備す ることは困難である。 しか し、動産 ,債 権譲渡特例 法による動産譲渡登記であれば、現実問題 としては可能である。ただ し、動産譲渡登記は、
動産 ・債権 譲渡特例法 3条 1項 によ り、民法 178条 の引渡 しがあった もの とみなされる。
そ して、 占有改定 も民法 178条 の引渡 しに含 まれるのであるか ら、占有改定で も同様 に対 抗要件が具備 されたことになるが、占有改定はこの学説では対抗要件 として認めなかった
ことと矛盾が生 じ妥当でない。 よって、 この学説 も採用することがで きない。
結局、動産売買先取特権 と比較 して、流動動産譲渡担保が優位であるような効力 (動 産 先取特権 の追及効 を制限 )を 認める民法 333条 を適用す るべ きか、流動動産譲渡担保 も動 産売買先取特権 と同様 に担保であるので、その担保 とい う限度で認め られる効力 を与 える 民法334条 を類推適用するべ きか、 とい うことになると思われる。なお、民法 319条 類推適 用説 は、 どち らかの条文が適用 ない しは類推適用 された後の問題である。
この点、民法 334条 類推適用説 は、流動動産譲渡担保 を動産担保 とい う性格か ら、動産 質権 と同質 ・同列 と考 えを基礎 においている。 これに対 し、動産の譲渡担保 は債務者の手 許 に目的物 をとどめてお くべ きことに特徴があ り、だか らこそ動産抵当であるとされるの
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であって、動産質権 とは類似性が な く、民法 334条 の類推適用 は無理である との批判があ る
40。もう少 し詳 しくみてみると、動産質権 は担保権者が直接 占有するものであ り、設定 者 はその目的物 を使用す ることがで きない。 これに対 し、流動動産譲渡担保 は設定者が占 有 し、使用するので、設定者の収益性が高 く、担保価値 としては高い といえる。 また、集 合物であ り、流動性があることか らも担保価値が高い といえる。 この後者の理は、動産上 の非占有担保である自動車抵当、建設機械抵当、農業動産抵当、航空機抵当に対 してであっ て も、それ らに集合物性、流動性が考 え られないので、同様である。 したが って、流動動 産譲渡担保 は、その価値 としては、 これ らの担保物権 よりも優越するもの と考 える。
ところで、民法 333条 の趣 旨は、不動産上の先取特権 は登記 によって公示 されるが、動 産上の先取特権は占有 を要件 とせず、公示 を伴 わないか ら、第三者は、その動産 について いることを知 らないでこれ を譲 り受ける場合が多い、そこで、このような第三者 を保護 し て、動産取引の安全 を図ろうとした ものである
1°。流動動産譲渡担保権者は、担保 となる 不動産 を保持 していない中小企業者等 に融資 をしやす くするために、多数の動産である集 合物で、かつ設定者の営業 も促進するように流動性がある動産 を目的物 にして、多額の融 資の担保 として流動動産譲渡担保 を設定 しているのだか ら、取引の安全 を図 られるべ き第 三者 といえる。この ように流動動産債権譲渡担保権者 を保護することが、金融実務 におけ る担保融資手段の選択 を広 げるもの として期待 されている動産譲渡担保 による融資 を促進 することにつながる。 また、動産先取特権者 との利益衡量の観点か らも、譲渡担保の 目的 物の利用処分権はすでに債務者側 に移 っているのであ り、債務者が これを担保提供 して営 業や金融上のメリッ トを享受することに対 し、先取特権者 としては本来何の文句 もいえな いのであるか ら
50、リスクを冒 して多額の融資 を している流動動産譲渡担保権者の利益が 保護 されるべ きであると考 える。なお、前記 4.考 察 (1)譲 渡担保の法的構成 との関係で も述べ たが、譲渡担保 は所有権移転の法形式 を取 り、譲渡担保 には所有権的構成の側面 も
認められるので、流動動産譲渡担保権者が民法 333条 の第三取得者になりうることは問題
ない。
ただ し、民法 333条 説 を採 る論者 に も、 目的物が高額化 している現在、流動動産譲渡担 保 を無条件 に優先 させ ることは、動産売買先取特権者 に対する不意打 ちの弊害 を生 じさせ ることを配慮すべ きことの指摘があった W。 それに対する配慮 としてなのか、動産売買先 取特権者 にも配慮 して、既 に動産売買の先取特権が存在 していることを知 りなが らあえて 目的物 を譲渡担保 にとったような者 まで保護する必要はないか ら、 この場合 には、たとえ 占有改定が民法 333条 の引渡 しにあたる として も、先取特権の方が優先す るべ きとしてい る
5D。しか し、民法 333条 は第三取得者 に善意であることを要求 していない。 また、流動動産 を抱 える企業は掛で売買 をしているのが通常であるか ら、流動動産 に動産売買先取特権の 存在 について悪意 とな り易い。 さらに、た とえ動産売買先取特権の存在 を知 っていて も、
買主 (設 定者、債務者 )が 売買代金 を支払 えば、その動産売買先取特権 は消滅す る と考え ているのであるか ら、悪意 というだけで劣後すると解するのは妥当でない。もし悪意とい うだけで劣後するようなことになれば、担保 目的物 を精査する勤勉な金融機関ほど、担保 価値を低 く見積 もって融資額を減少 した り、融資 を行わなくなった りする可能性がある。
金融実務における担保融資手段の選択 を広げるものとして期待 されている流動動産譲渡担
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島根県立大学『総合政策論叢』第
19号 (2010年 3月)保 による融資 を促進するためにも、悪意者 を排除すべ きでない と考 える。
それ よりも、動産売買先取特権者 に対する不意打 ちを防 ぐには、民法 319条 の類推適用 を認めて、動産売買先取特権者の保護 を図るべ きであると解す る。
この民法 319条 の類推適用 については、即時取得制度の目的が、取引の安全 を保護する ことにあるか ら、本来取引行為の存在 しない法定担保物権 には即時取得の余地が ない。先 取特権 にも例外 的に規定 した民法 319条 は、条文上掲げ られた三つの先取特権 に制限 して 列挙 されたものであ り、動産売買先取特権 には類推適用で きない との批判がある
50。また、
流動動産譲渡担保権者が明認方法 を講 じていた場合 には、売主の過失が推定 されるが、実 務的にはこのような公示方法 を具備す ることが難 しいとの指摘があ り、そ うであれば、実 際には先取特権の即時取得が認め られる場合が多 くなるとの批判 もある 謝。
まず、即時取得制度の 目的が取引の安全 を保護することにあ り、本来取引行為の存在 し ない法定担保物権 には即時取得の余地がない との批判については、動産売買先取特権 も動 産の売買の結果発生 した ものであ り、その代金債務が履行 されないのを担保 しているのだ か ら、売主が取引行為の一環 として動産売買先取特権が存するとの期待 は、即時取得の典 型例である物の買主が所有権 を取得で きるとの期待 とそれ程変わ らない といえる。次 に、
明認方法では実際には先取特権の即時取得が認め られる場合が多 く、流動動産譲渡担保権 が爆護 されな くなるとい う点については、動産 ・債権譲渡特例法 による動産譲渡登記であ れば、実際に利用 される可能性があ り問題 ない といえる。特 に、動産譲渡担保設定後、担 保 目的物 を取得する第三者の即時取得 を防 ぐ手段 として、流動動産譲渡担保権 を設定する 場合 は、動産譲渡登記 による対抗要件具備 を原則 とするべ きであるとされていることか ら すれ
tガ働、動産先取特権の存在の有無に関わらず、流動動産譲渡担保権者に動産譲渡登記 を要求することは酷ではない といえる
30。さらに、民法 319条 が類推適用で きない悪意の動産売買先取特権者は、流動動産譲渡担 保が設定 される前 に、その設定の可能性 を知 りうる場合 もあるか ら、その場合 には対抗手 段 として、売買拠約の解除または当該動産 に譲渡担保 を設定す ること mが 考 え られる。 こ
の ように同条 を類推適用す ることによ り、流動動産譲渡担保 と動産売買先取特権 のバラン スを図る解釈 は妥当であると思われる。
5。