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半導体技術分野の重要技術説明資料

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Academic year: 2021

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Ⅲ ストレージ・メモリ分野

序 文 今後のストレージと不揮発性メモリの利用形態に大きな影響を与えるものとして、インターネット の高速化と情報通信機器の高度化を挙げることができる。インターネットの高速化は、有線でも無線 でも、動画などの大容量コンテンツを手軽に配布・受信することを可能にするであろう。またモバイ ル機器を中心とする情報通信機器の高度化は、小型化、多機能化、低消費電力化を軸に進むと思われ る。 このような社会的・技術的背景を念頭に、ストレージ・メモリ分野では、システム構築の視点から 求められるストレージと不揮発性メモリの機能と特性を明らかにするとともに、それを実現するため の各デバイス技術の可能性と課題を抽出した。さらにこれらの議論を受けて、個別企業の研究開発努 力を超えて、広く産学官の連携により開発すべき重要課題の抽出も行った。なお、ストレージと不揮 発性メモリはその利用形態と技術内容が大きく異なるため、別々の項目として取りまとめた。 1.ストレージ システム構築の観点から利用形態のロードマップの議論を 5 つの分類で行った。大容量データ の保存と供給に必要な「ネットワークサーバー用ストレージ」、家庭や事業所での利用を想定した 「ホームサーバー・PC 用ストレージ」、モバイル機器や車載目的で使用される「モバイル用スト レージ」、コンテンツ配布用の「コンテンツ配布用ストレージ」、そして家庭やビジネスにおいて 重要性が増している「コンテンツ保存・アーカイブ用ストレージ」である。 次に、デバイス技術の観点から、「磁性系ストレージ技術」、「光系ストレージ技術」そして「新 規ストレージ技術」を取り上げ、その実現のためのロードマップを議論した。磁性系ストレージ 技術においては HDD の面記録密度を年率30∼40%以上で向上させることが必須であり、その ために必要な垂直磁気記録、分離トラック媒体、 パターン媒体、近接場光を用いた熱アシスト磁 気記録、TMR ヘッド、CPP-GMR ヘッド、スピントロニクスヘッドなどの各技術が議論された。 光系ストレージ技術の課題は光の回折限界をこえる記録密度の向上である。そのために有効であ ると考えられる Super-RENS、多値記録などの二次元平面記録技術と、多層記録、体積ホログラ ムなどの三次元立体記録技術が議論された。新規ストレージ技術としては薄膜光ホログラムと MEMS プローブメモリの可能性が議論された。 これらの議論を受け、産学官連携で開発すべき課題として、近接場光を用いた熱アシスト磁気 記録、スピントロニクスヘッド、Super-RENS、体積ホログラム、MEMS プローブメモリを抽出 した。 2.不揮発性メモリ システム構築の観点から利用形態のロードマップの議論を4つの分類で行った。コンテンツの 一時保管と持ち運びに使用される「コンテンツ保存用不揮発性メモリ(固体ストレージ)」、DRAM 置き換えなどの汎用メモリとして使用されインスタント・オンなどの利便性を実現する「メイン メモリ用不揮発性メモリ」、モバイル機器の低消費電力化や個人認証など多様な利用形態が想定さ れる「SoC 混載用不揮発性メモリ」、そして省スペース・多機能や超低消費電力など情報機器のノ ーマリー・オフ・コンピュータ化を可能とする「不揮発性ロジック」である。 次に、デバイス技術の観点から、各不揮発性メモリ技術の可能性と課題を議論した。「フラッシ

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ュメモリ」では高集積化、高速化、書換耐性向上を実現する材料技術が必要である。「FeRAM」 では書換耐性の向上と 1T-FeRAM 化が必要とされた。「MRAM」では MgO 系 MTJ を利用した出 力電圧の向上とスピン注入技術による書込み電力低減技術の開発が必要である。「PRAM」では書 込み電力低減、書換耐性向上が必要である。また RRAM、PMC-RAM、有機、分子、ナノチュー ブなどを用いた「新規不揮発性メモリ技術」についても議論された。 これらの議論を受け、産学官連携で開発すべき課題として、MRAM と FeRAM におけるスケー ラビリティーの実現を抽出した。 ストレージ・メモリ分野の構造図 ス ト レ ー ジ ス ト レ ー ジ ス ト レ ー ジ ス ト レ ー ジ ネットワークサーバー用 ネットワークサーバー用ネットワークサーバー用 ネットワークサーバー用 ストレージ ストレージストレージ ストレージ ホームサーバー・PC用 ホームサーバー・PC用 ホームサーバー・PC用 ホームサーバー・PC用 ストレージ ストレージストレージ ストレージ コンテンツ配布用 コンテンツ配布用コンテンツ配布用 コンテンツ配布用 ストレージ ストレージストレージ ストレージ コンテンツ保存・アーカ コンテンツ保存・アーカコンテンツ保存・アーカ コンテンツ保存・アーカ イブ用ストレージ イブ用ストレージイブ用ストレージ イブ用ストレージ 大容量、小型・高密度、高 速 大容量、低消費電力、安 価、静音 モバイル用ストレージ モバイル用ストレージ モバイル用ストレージ モバイル用ストレージ 小型薄型、軽量、超低消費電力、耐衝撃、大容量 大容量、高速、低価格 大容量、耐経時変化、高 速、信頼性 要求項目 利用形態 2.5~3.5インチ HDD 2.5~3.5インチ HDD 0.85~1.8インチ HDD 光ディスク 光ディスク、HDD、 磁気テープ 製品イメージ 磁性系ストレージ技術 磁性系ストレージ技術 磁性系ストレージ技術 磁性系ストレージ技術 (方式、ヘッド技術、媒体技術等) 光系ストレージ技術 光系ストレージ技術 光系ストレージ技術 光系ストレージ技術 (記録方式、多層化等) 新規ストレージ技術 新規ストレージ技術 新規ストレージ技術 新規ストレージ技術 (カード型薄膜ホログラムメモリ、 MEMSプローブメモリ) 不 揮 発 性 メ モ リ 不 揮 発 性 メ モ リ 不 揮 発 性 メ モ リ 不 揮 発 性 メ モ リ コンテンツ保存用メモリ コンテンツ保存用メモリ コンテンツ保存用メモリ コンテンツ保存用メモリ (固体ストレージ) (固体ストレージ)(固体ストレージ) (固体ストレージ) メインメモリ用 メインメモリ用メインメモリ用 メインメモリ用 不揮発性ロジック 不揮発性ロジック不揮発性ロジック 不揮発性ロジック 大容量、安価、高速 大容量、高速、高書換耐 性、低消費電力 SoC混載用メモリ SoC混載用メモリSoC混載用メモリ SoC混載用メモリ 高速、書換耐性、プロセス整合性、低消費電力 高速、高書換耐性 要求項目 利用形態 デジタルカメラ、携帯 AUDIO、携帯電話等 用ファイルメモリ 携帯電子機器、デジ タル家電等用メイン メモリ ICタグ、RFIDタグ、 音声・画像処理LSI 等用混載メモリ ロジック回路と一体 化した不揮発性メモ リ 用途イメージ FeRAM FeRAM FeRAM FeRAM MRAM MRAM MRAM MRAM 新規不揮発性メモリ技術 新規不揮発性メモリ技術 新規不揮発性メモリ技術 新規不揮発性メモリ技術 (PMC-RAM、RRAM等) PRAM PRAM PRAM PRAM FLASH FLASHFLASH FLASH 実現技術 実現技術 インターネットの高速化により、映画等のオンデマンド配信が拡大  ⇒⇒⇒ 大容量コンテンツの供給・保存に対応した大容量ストレージ⇒ モバイル機器の多機能化、小型化  ⇒⇒⇒ 搭載されるストレージ・不揮発性メモリの大容量化・低消費電力化⇒ 無数の電子機器がインターネットを介して連携・稼働するユビキタス・コンピューティングの実現  ⇒⇒⇒⇒ 電子機器の一層の省エネルギー化 背 景 背 景 背 景 背 景

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Ⅲ−3 1.ストレージ 1.1 産業の現状 ストレージデバイスは、ビット単価の安さから、サーバ、PC 用途のみならず、ビデオレコーダ、 携帯情報端末、携帯オーディオ機器、デジタルカメラ、携帯電話などさまざまな情報家電に使われ るようになった。現状のストレージデバイスは大きくハードディスク(HDD)系ストレージ、光 ディスクストレージ、磁気テープに分けることができる。 HDDはその外形サイズから3.5インチ、2.5インチ、1.8インチ、1インチ、0.85イ ンチに仕分けされる。最も出荷台数の多い3.5インチハードディスクは、これまでは主にサーバ ーやデスクトップPCなどに使用されてきたが、最近はDVDレコーダーなどの家庭用AV機器に組み 込まれてビデオテープ機能を代替するようになっており、今後も引き続き需要が増加すると見られ る。 2.5インチ以下のHDDはノートPCや、小型情報機器、さらには携帯音楽機器などの新しいア プリケーション用に本格的に採用され始めている。 記録密度の向上はHDDにとって最も重要なファクターであるため、現在も様々な手法による研究 開発が進んでいる。記録密度は一時期は年率100%で伸びた結果、現在ドライブ当たり300∼400GB (80GB/3.5"Platter、60-65Gb/in2)の記録密度の製品が量産されるようになったが、最近は30∼ 50%程度の伸びに鈍っている。これまでの記録方式である面内記録方式で100Gb/in2の量産可能性 は見えてきたが120Gb/in2に届くか否かは不明である。一方、新しい記録方式として注目される垂 直記録方式では、Seagateが2003年12月に170Gb/in2のデモ発表、東芝が2004年12月に商品化発表 にこぎつけており、今後、記録技術は垂直方式に移行すると思われる。この分野の技術開発力は、 日米の企業、大学ともほぼ互角のレベルにある。 光ディスクは、可換であること、ROMの大量複製ができることを特長として、CDがオーディオ 用やPC用として既に普及しており、さらに大量のデータや動画に対応するために開発されたDVD も普及に拍車が掛かってきた。CD−ROM、DVD−ROMといった再生専用装置については用途が 限定的となりつつあり出荷数量は減少している。CD−R/RW装置については、速度競争がほぼ終 焉を向え、今後更に価格が低下していくものと予想される。一方、追記書換型DVD装置(DVD±R、 DVD±RW、DVD−RAM)は、2003年では2千万台強で前年比4倍と伸びており、HDDとDVDを組 み合わせたハイブリッドレコーダが活況である。 光ディスク装置の記録密度については、現行DVDが片面単層ディスクで3.75Gb/in2(片面2層で その倍)、次世代光ディスク(Blu-ray Disk、HD DVD)が片面単層ディスクで16.8∼19.5Gb/in2 (片面2層でその倍)である。 光ディスク分野の技術開発力は、日本の企業が世界的に圧倒的優位にある。一方、光ディスクの 将来技術であるホログラムメモリ分野においては、日米の企業、大学ともにほぼ互角レベルにある。 次世代光ディスクであるBlu-ray DiskとHD DVDにおいては、標準化に向けて日本企業が全面的 に主導的役割を果たしている一方、Blu-ray Disk陣営(ソニー、松下、他)とHD DVD陣営(東芝、 NEC、他)が主導権争いを繰り広げている。 磁気テープは、コストの安さと信頼性から銀行業務におけるバックアップ用などビジネス用の需 要が強いが、市場規模は限られている。日立マクセル、富士フイルムなどの企業が強い競争力を有

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Ⅲ−4 している。 そのほか、さまざまな物理現象を用いた多様な新規ストレージ技術の検討が行われている。 1.2 今後の見通しと課題 1.2.1 社会的・技術的背景から予測されるストレージの利用形態 図1−1.将来の社会イメージと主な技術課題 今後の 10 年間にストレージ大きなインパクトを与える要素として、インターネットの高速化 とモバイル機器の進化を挙げることが出来る。 2004 年時点で 100Mbps であるホームユース用の光有線通信速度は、2005 年頃から徐々に1 Gbps が登場し、2008 年頃以降は 10Gbps まで高速化するものと想定される。一方、高速移動 体通信では、2005 年からは最大14.4Mbps の 3.5G 携帯サービス、2010 年からは100Mbps の4G 携帯サービスが計画されている。2007 年ごろからと想定されるサーバー型 TV 放送など も勘案すると、2010 年ごろには高速に移動する通勤電車の中でも映画のストリーム受信が可能 な状態が実現されると予想される。 一方、大型計算機、パソコン、モバイル機器と小型化してきたコンピュータには、もう一段の 小型化、多機能化が見込まれる。 そしてこれらの大型計算機から超小型自立式電子機器にいたる多様で無数のコンピュータが 高速インターネットを介してお互いに連携しあう、いわゆるユビキタス・コンピューティング またはパーベイシブ・ネットワークと呼ばれる情報社会空間が本格的な展開の時期を向かえる ことになる。この動きにともない、コンテンツの配布・利用形態やモバイル機器に要求される 機能には、今後 10 年間で大きな変化が起こると見込まれる。 100Mbps のデータ転送速度が身近になった現時点で、インターネットを介した音楽提供サ ービスが本格化しつつあり、映画配信ビジネスへの試みも始められている。ホームユースで数 Gbps、高速移動体通信で100Mbps が可能となるこれからの 10 年間には、このようなインタ ネットワークトラフィックの増加に対応した 有線・無線ネットワークの高速化・大容量化・高信頼化 サービスセンター 病院 学校 店舗 国、自治体 遠隔医療 企業 無線基地局 家庭内外の相互接続性・相互運用性、セキュ リティの確保 ユーザーフレンドリなヒューマンインタフェース 高精細な大画面フラットパネルディスプレイ 小型・大容量・低消費電力のストレージ、 不揮発性メモリの実現 携帯・車載情報機器の高機能化 ポータブルディスプレイの高機能化 フレキシブルディスプレイの実現 コミュニティでの相互接続 セキュリティ確保 技術基盤としての半導体の高集積化、低消費電力化、多品種少量生産対応 サーバの高機能化・高信頼化 膨大な情報からの情報検索 ネッ トワーク ネッ トワークネッ トワーク ネッ トワークネッ トワーク ネッ トワークネッ トワーク ネッ トワーク技術技術技術技術技術技術技術技術 コンピュータ コンピュータ コンピュータ コンピュータ コンピュータ コンピュータ コンピュータ コンピュータ技術技術技術技術技術技術技術技術 電子政府 ストレージの大容量化 不揮発性メモリの大容量化 半導体 半導体 半導体 半導体 半導体 半導体 半導体 半導体技術技術技術技術技術技術技術技術 柔軟な職場環境 外出先と自宅・職場とのコミュニケーション 情報家電の遠隔操作、 連携操作 省エネモニタリング e ラーニング 遠隔健康管理 ホーム ゲートウェ イ ホームネットワーク ホームネットワークホームネットワーク ホームネットワーク ビデオ・オン・デマンド 新たなコンテンツビジネス ストレージ・メモリ技術 ストレージ・メモリ技術 ストレージ・メモリ技術 ストレージ・メモリ技術 ストレージ・メモリ技術 ストレージ・メモリ技術 ストレージ・メモリ技術 ストレージ・メモリ技術 ユーザビリテ ィ技術 ユーザビリテ ィ技術 ユーザビリテ ィ技術 ユーザビリテ ィ技術 ユーザビリテ ィ技術 ユーザビリテ ィ技術 ユーザビリテ ィ技術 ユーザビリテ ィ技術 デジタル放送 高精細画像の 視聴、録画 ストレージ・メモリ技術 ストレージ・メモリ技術 ストレージ・メモリ技術 ストレージ・メモリ技術 ストレージ・メモリ技術 ストレージ・メモリ技術 ストレージ・メモリ技術 ストレージ・メモリ技術 ユーザビリテ ィ技術 ユーザビリテ ィ技術ユーザビリテ ィ技術 ユーザビリテ ィ技術ユーザビリテ ィ技術 ユーザビリテ ィ技術ユーザビリテ ィ技術 ユーザビリテ ィ技術 ネットワークを活用した 新たな情報サービス 車のインテリジェント化 将来の社会 将来の社会 将来の社会 将来の社会 将来の社会 将来の社会 将来の社会 将来の社会イメージとイメージとイメージとイメージとイメージとイメージとイメージとイメージと主な技術課題主な技術課題主な技術課題主な技術課題主な技術課題主な技術課題主な技術課題主な技術課題 ネットワークトラフィックの増加に対応した 有線・無線ネットワークの高速化・大容量化・高信頼化 サービスセンター 病院 学校 店舗 国、自治体 遠隔医療 企業 無線基地局 家庭内外の相互接続性・相互運用性、セキュ リティの確保 ユーザーフレンドリなヒューマンインタフェース 高精細な大画面フラットパネルディスプレイ 小型・大容量・低消費電力のストレージ、 不揮発性メモリの実現 携帯・車載情報機器の高機能化 ポータブルディスプレイの高機能化 フレキシブルディスプレイの実現 コミュニティでの相互接続 セキュリティ確保 技術基盤としての半導体の高集積化、低消費電力化、多品種少量生産対応 サーバの高機能化・高信頼化 膨大な情報からの情報検索 ネッ トワーク ネッ トワークネッ トワーク ネッ トワークネッ トワーク ネッ トワークネッ トワーク ネッ トワーク技術技術技術技術技術技術技術技術 コンピュータ コンピュータ コンピュータ コンピュータ コンピュータ コンピュータ コンピュータ コンピュータ技術技術技術技術技術技術技術技術 電子政府 ストレージの大容量化 不揮発性メモリの大容量化 半導体 半導体 半導体 半導体 半導体 半導体 半導体 半導体技術技術技術技術技術技術技術技術 柔軟な職場環境 外出先と自宅・職場とのコミュニケーション 情報家電の遠隔操作、 連携操作 省エネモニタリング e ラーニング 遠隔健康管理 ホーム ゲートウェ イ ホームネットワーク ホームネットワークホームネットワーク ホームネットワーク ビデオ・オン・デマンド 新たなコンテンツビジネス ストレージ・メモリ技術 ストレージ・メモリ技術 ストレージ・メモリ技術 ストレージ・メモリ技術 ストレージ・メモリ技術 ストレージ・メモリ技術 ストレージ・メモリ技術 ストレージ・メモリ技術 ユーザビリテ ィ技術 ユーザビリテ ィ技術 ユーザビリテ ィ技術 ユーザビリテ ィ技術 ユーザビリテ ィ技術 ユーザビリテ ィ技術 ユーザビリテ ィ技術 ユーザビリテ ィ技術 デジタル放送 高精細画像の 視聴、録画 ストレージ・メモリ技術 ストレージ・メモリ技術 ストレージ・メモリ技術 ストレージ・メモリ技術 ストレージ・メモリ技術 ストレージ・メモリ技術 ストレージ・メモリ技術 ストレージ・メモリ技術 ユーザビリテ ィ技術 ユーザビリテ ィ技術ユーザビリテ ィ技術 ユーザビリテ ィ技術ユーザビリテ ィ技術 ユーザビリテ ィ技術ユーザビリテ ィ技術 ユーザビリテ ィ技術 ネットワークを活用した 新たな情報サービス 車のインテリジェント化 ネットワークトラフィックの増加に対応した 有線・無線ネットワークの高速化・大容量化・高信頼化 サービスセンター 病院 学校 店舗 国、自治体 遠隔医療 企業 無線基地局 家庭内外の相互接続性・相互運用性、セキュ リティの確保 ユーザーフレンドリなヒューマンインタフェース 高精細な大画面フラットパネルディスプレイ 小型・大容量・低消費電力のストレージ、 不揮発性メモリの実現 携帯・車載情報機器の高機能化 ポータブルディスプレイの高機能化 フレキシブルディスプレイの実現 コミュニティでの相互接続 セキュリティ確保 技術基盤としての半導体の高集積化、低消費電力化、多品種少量生産対応 サーバの高機能化・高信頼化 膨大な情報からの情報検索 ネッ トワーク ネッ トワークネッ トワーク ネッ トワークネッ トワーク ネッ トワークネッ トワーク ネッ トワーク技術技術技術技術技術技術技術技術 コンピュータ コンピュータ コンピュータ コンピュータ コンピュータ コンピュータ コンピュータ コンピュータ技術技術技術技術技術技術技術技術 電子政府 ストレージの大容量化 不揮発性メモリの大容量化 半導体 半導体 半導体 半導体 半導体 半導体 半導体 半導体技術技術技術技術技術技術技術技術 柔軟な職場環境 外出先と自宅・職場とのコミュニケーション 情報家電の遠隔操作、 連携操作 省エネモニタリング e ラーニング 遠隔健康管理 ホーム ゲートウェ イ ホームネットワーク ホームネットワークホームネットワーク ホームネットワーク ビデオ・オン・デマンド 新たなコンテンツビジネス ストレージ・メモリ技術 ストレージ・メモリ技術 ストレージ・メモリ技術 ストレージ・メモリ技術 ストレージ・メモリ技術 ストレージ・メモリ技術 ストレージ・メモリ技術 ストレージ・メモリ技術 ユーザビリテ ィ技術 ユーザビリテ ィ技術 ユーザビリテ ィ技術 ユーザビリテ ィ技術 ユーザビリテ ィ技術 ユーザビリテ ィ技術 ユーザビリテ ィ技術 ユーザビリテ ィ技術 デジタル放送 高精細画像の 視聴、録画 ストレージ・メモリ技術 ストレージ・メモリ技術 ストレージ・メモリ技術 ストレージ・メモリ技術 ストレージ・メモリ技術 ストレージ・メモリ技術 ストレージ・メモリ技術 ストレージ・メモリ技術 ユーザビリテ ィ技術 ユーザビリテ ィ技術ユーザビリテ ィ技術 ユーザビリテ ィ技術ユーザビリテ ィ技術 ユーザビリテ ィ技術ユーザビリテ ィ技術 ユーザビリテ ィ技術 ネットワークを活用した 新たな情報サービス 車のインテリジェント化 将来の社会 将来の社会 将来の社会 将来の社会 将来の社会 将来の社会 将来の社会 将来の社会イメージとイメージとイメージとイメージとイメージとイメージとイメージとイメージと主な技術課題主な技術課題主な技術課題主な技術課題主な技術課題主な技術課題主な技術課題主な技術課題

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Ⅲ−5 ーネットを介したコンテンツ配信が大きく伸びると見るのが自然である。そのため、これらの 大量のデータを保存して供給するための超高速・超大容量のネットワークサーバー用ストレー ジに対する需要は増加の一途をたどるであろう。通信トラフィックは無限ではあり得ないので、 大量のミラーサーバーの設置による需要増も想定される。このデータを受信する家庭や事業者 などではセットトップボックスなどに高速・大容量なホームサーバー・PC 用ストレージが必要 となる。また車載目的などを含めて、モバイル機器には受信データや、独自に生成したデータ を保存するための、信頼性と消費電力に考慮した小型・大容量のモバイル用ストレージが必要 とされる。ただし、モバイル用ストレージのカテゴリーでは容量に応じた不揮発性メモリとの 棲み分けも想定される。一方、インターネットを介したコンテンツ流通の一般化により、コン テンツ配布用ストレージの重要性は下がっていくと見られるが、長期間のデータ保持を保証で きるリムーバブル形状のコンテンツ保存・アーカイブ用ストレージは、銀行などのビジネス用 とともに家庭用にも強い需要が残ると思われる。また、リムーバブルメディアはインターネッ トサーバーのサブシステムとしても使用されることが想定される。このように、今後 10 年間で 高性能ストレージへの需要はますます高まっていくと想定される。ただし実際のストレージの 利用形態は技術的要因以外にコンテンツ提供側の著作権管理方針やユーザ側の所有感覚などの 社会的・心理的な要因にも多くを依存する性格を持つため、主流となるビジネスモデルを現時 点で予測をすることは難しい。この側面は、特に、配布用およびアーカイブ用のストレージに 対して影響が大きいと思われる。 以上のような社会的・技術的背景をもとに、ここではストレージの利用形態を以下の5つに分 類し、それぞれに求められる特性を整理するとともに、その実現のための可能性と課題を述べ る。 ネットワークサーバー用ストレージ ホームサーバー・PC 用ストレージ モバイル用ストレージ コンテンツ配布用ストレージ コンテンツ保存・アーカイブ用ストレージ 1.2.2 利用形態別にみたストレージデバイスに求められる機能と特性 ネットワークサーバー用ストレージ すでに、ユーザーに受け入れられた音楽やゲームソフトなどのダウンロードサービス(=オン デマンド配信)は今後ますます普及していくと予想される。特に今後は、電子レンタルビデオ、 サーバー型TV放送などの形により大容量のビデオ映像のオンデマンド配信が広まることは確実 である。そのためコンテンツ供給側には大容量のストレージシステムが大量に設置されることと なろう。このネットワークサーバー用ストレージに要求される特性は、大容量、高速そして高信 頼である。また、この用途のストレージシステムには、同時に多数のアクセスが生じたときにも 高速で読み書きできること、ドライブ故障に備えミラーリングを自動で行う自律型であること、 故障が起きてもシステムを停止しないでドライブの交換ができることなど、システム全体のパー フォーマンスを確保するためのソフトウエア技術が欠かせない。この種の使用目的ではドライブ 単体で使用されることはないため、システムとしてのアクセス速度が重要である一方、個々のド ライブそのものに要求される速度は現製品からみて著しく高いものではない。それよりも、1台

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Ⅲ−6 あたりの容量は抑えてより多くのドライブを搭載することでシステムの速度(パフォーマンス) の向上が実現できる。つまり、この分野においても小型・高密度化は重要なファクターである。 ただし、小型化してもデータアクセス速度が低下することは許容されないので、ドライブサイズ の小型化かつ高密度化に伴って転送レートは増加し、2010年ごろには4Gbps程度になるものと予 想される。 この目的で使用されるドライブの主役は HDD である。大容量が不可欠ではあるが、信頼性の 確保も欠かせないため一般用途の HDD よりは容量を抑えて使用される。それでも数十∼百 GB /ドライブ程度の容量を有し、RAID システムとして数十 TB クラスのものが市販されている。 TB クラスのものでは、装置サイズも薄型ラックサイズ(19”ラック等)と小型であり、装置体 積当りの容量(設置パフォーマンス、省スペース性)にも優れている。ただし、HDD の寿命は 約 5 年と比較的短い。このため、光ディスクからなるアーカイブ用ストレージデバイスも、イ ンターネットサーバー用ストレージシステムに組み込まれる可能性がある。 ホームサーバー・PC 用ストレージ 従来の据え置き型 PC 以外に、大容量の動画データを受信するためのセットトップボックスな どに大量のストレージが必要となっている。地上波デジタル放送が始まるのが 2006 年であるの で、その 1~2 年後の 2007~8 年ごろには 1 テラバイト程度の装置容量が必要になるであろう。 これらのコンテンツは、DRM(Digital Right Management)を付加することで見る回数や時間 の制限、コピーの回数など細かな利用形態が指定されたコンテンツが、通信、放送、パッケー ジメディアの 3 つの方法によって配布されるようになる可能性が高い。ただし、DRM のような 著作権保護の仕組み(コピーコントロールの仕組み)を使用したコンテンツビジネスのビジネ スモデルが未だ確立されておらず、きちんと成り立っていくのかどうか自体、予想がつかない。 また、配信先の標準フォーマットが確立していないこと、配信先の家庭のセキュリティが未確 保のままであること、HDD と光ディスクが共存する場合のコピープロテクションのルールが未 確立であること、などの問題もある。このストレージに要求される特性は、大容量、低消費電 力、安価、高速などのほかに静音なども重要である。 この目的で使用されるデバイスとして最有力なのは 3.5 インチ型 HDD である。 モバイル用ストレージ 音楽プレーヤの普及、内蔵カメラによるビデオ撮影機能や地上波デジタル TV 放送の受信録画 機能などが加わると考えられる携帯電話など、各種モバイル機器の高性能化がさらに進むと想 定され、モバイル機器にも高性能のストレージが必要となっている。このストレージには、小 型薄型、低消費電力、耐衝撃、大容量、軽量などの特性が必要となる。携帯電話が最大の市場 と考えられるが、その場合、コンパクトフラッシュ(CF)メモリ程度の小型化、できれば既存 のメモリスロット規格がそのまま使えることが望まれる。地上波デジタル放送が本格化する 2007 年ごろに容量アップの需要が高まると見込まれ、そのときの装置容量は 10 ギガバイト以 上が必須であろう。耐衝撃性に関しては、携帯電話での使用を考えると大人の耳の高さから落 としても壊れないことが要求され、2007 年には 600G 以上のロバスト性が必要とされる。この 目的で使用されるストレージデバイスとしては HDD が最有力であり、1.0 インチ以下の HDD の大容量化(>10GB)と低コスト化(<50$)により市場急拡大が見込まれる。ただし、フラッシ ュメモリとのコスト比は年々縮小傾向にあり、2008∼2009 年ごろには、一部は不揮発性メモリ にとって代わられる可能性もある。

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Ⅲ−7 もう一つのモバイル用ストレージデバイスとして車載向けの需要がある。カーナビ地図情報の 記録などに膨大な容量が必要なためこの分野でも HDD の普及が進むものと予想される。自動車 に搭載される場合、様々な環境温度湿度での使用が想定されるため、極めて高い信頼性が不可 欠である。ただし、重さや大きさの制限はゆるいので記録密度はあまり重要な因子ではない。 コンテンツ配布用ストレージ これまでソフトウエア、音楽、動画などのコンテンツの配布はもっぱら CD や DVD などの光 ディスクにより行われてきたが、ネットワークの高速化に伴ってネットワーク経由の配信が伸 びていくと予想されるため、その形態は大きく変わっていくと思われる。その場合、著作権保 護とこれに関連したビジネスモデルのありようが大きな影響を与えるため、現状では見通しが 難しい状態にある。いずれにしろ特性としては、大容量化と高速化、低価格が求められ、光デ ィスクが中心的な役割を果たすことになろう。コンテンツ配布用光ディスクとしては、2010 年 頃までには記録容量 200GB、転送速度 200Mbps、価格百円程度(コンテンツ代抜き)の ROM 型次世代光ディスクの実用化が期待される。また、将来的に動画コンテンツの容量増加がネッ トワークの高速化により対応しきれない場合には、2012∼2013 年頃に、容量∼1TB、転送速度 ∼1Gbps の ROM 型・次々世代光ディスクが実用化される可能性もある。 コンテンツ保存・アーカイブ用ストレージ ここでは、様々なコンテンツの長期的な保存のために用いられる、書換または追記が可能なリ ムーバブルストレージをコンテンツ保存・アーカイブ用ストレージとして定義する。この種のス トレージには、法的な要請に基づく銀行業務や大容量コンテンツ配信のためにネットワークサー バーにおけるバックアップなどのビジネス用途から、音楽・動画などのエンドユーザが直接手に するコンシューマ用途まで多様な形態ものがある。 ビジネス用途には、超大容量で高速であることに加えて、きわめて高い信頼性と超耐経時変化 が要求される。一方、コンシューマー用途には、大容量、耐経時変化、高速、安価が求められ る。 アーカイブ用ストレージの主役は、光ディスクとみられる。磁気テープは劣化の問題から 10 年程度のデータ保存期間が限界と言われているため、保存期間が半永久(30 年以上)である光 ディスクが、容量やアクセス・スピードの観点から普及の遅れていたビジネス用途でも主役に なると思われる。2010 年頃までには、ビジネス用途で容量∼1TB、転送速度∼1Tbps、コンシ ューマ用途でも容量∼200GB、転送速度∼200Mbps の光ディスクの実用化が必要とされるであ ろう。これらが実現すれば、従来から光ディスクの弱点であったメディア当りの容量不足が解 消されると共に、対 HDD 優位性である高コストパフォーマンス、高セキュリティにより、アー カイブの他、バックアップ用途も期待できる。また、光ライブラリ装置は、光ディスクのもつ 大容量性に加えて、長期保存、高セキュリティの特長を最大限に活かした情報記録用途(電子 メール、動画コンテンツの 2 つが重要)への展開が予想され、これらの情報を全て保存するに は超大容量アーカイブの構築が必要である。また、今後、出版物、芸術作品、文化遺産などを デジタル画像化して保存する大規模情報 DB 倉庫の構築が予想され、光ライブラリがその主要 ストレージになると期待できる。 磁気テープも高記録密度化が急速に進んでいる。現状 LTO 規格のテープでは、非圧縮時 200GB

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Ⅲ−8 /巻、圧縮時 400GB/巻の容量が実現しており、数年先のロードマップには各々800GB/巻、 1.6TB/巻と 1 メディア当たり 1TB を超える仕様が挙げられる。磁気テープの場合、長期保存 性が懸念されるが保存環境が良ければ数年の保存も可能と言われている。また、塗布型テープ においてバインダが原因で年一回程度必要であったリワインド、リテンションが、蒸着テープ では不要となり、取り扱いも容易になってきている。大容量化に伴い、数十 TB クラスのテープ ライブラリ装置がラックに薄型サイズで収まる。 1.2.3 各種ストレージ技術の可能性と課題 磁性系ストレージ技術 年率 40%の装置容量アップが課題である。少なくとも、年率 30%程度の面密度アップは確保 しなければならない。今後も高記録密度化が最大の課題であることは間違いない。 磁気記録系での最大のノイズ発生源は記録媒体である。単位ビットサイズの中にたくさんの磁 性微粒子があるほど S/N は高くなるため、高記録密度化に伴い微粒子化が必須となる。ところ が、単位磁性粒サイズが小さくなると熱的に不安定になる。熱的に安定な媒体を得るため磁気 エネルギーの高い材料を探索し実用化することになる。この結果、熱的には安定になるが大き な記録磁界強度が必要になるため、磁気ヘッドの飽和磁束密度 Bs を上げなければならない。ヘ ッド媒体間の磁気スペーシング短縮も磁界強度を増加させるが、ヘッド先端部サイズの小型化 は磁界を弱くするので不十分である。このため、高い Bs の材料を実用化することでこれまでは 対応してきた。しかし、2002 年ごろには、地球上に存在する最高飽和磁束密度 2.4 テスラの材 料 FeCo まで使い果たしてしまったため、2003~4 年になると記録密度の伸びが急激に低下した。 これがいわゆる熱ゆらぎによる限界である。 この熱揺らぎ限界を打破するには Bs に頼らず記録磁界を増加させることが必要であり、それ を実現できるのが垂直磁気記録方式である。垂直方式は 2005 年に初めて実用化される見通しで ある。 しかし、垂直方式であってもいつまでも磁界強度が確保できるわけではない。このため 2.4 テ スラの Bs の壁をやぶる材料を人工的に作りだす技術が望まれ、実際、そのような努力が行われ ている。2006∼2007 年ごろには Bs が 2.4 テスラ以上材料の実用化が求められる。 上記のように新規の記録ヘッド材料を開発する一方で、媒体を工夫することで書きやすくする 技術の開発も重要である。磁性粒子の成長軸を垂直ではなく斜めに制御することで実現できる ことがシミュレーションなどから予測されている。 しかし、このような媒体改良による垂直方式の延命策が進んだとしても、2009 年から 2012 年ごろには再度、熱ゆらぎ限界と記録磁界強度限界に突き当たると考えられる。これを打破す るためにはもう一度、記録方式のパラダイムシフトが必要であろう。現在、最も有力視されて いるのが、パターン媒体記録再生方式と熱アシスト記録方式である。近接場光を用いれば、光 の波長限界を超えた小スポットが実現できるので、微小な領域の加熱が可能になる。近接場光 を用いた熱アシスト記録方式はパターン媒体と組み合わせることでより大きな効果が期待でき るため、パターン方式の後継技術、すなわち熱アシストパターン媒体記録方式と見ることもで きる。パターン媒体の一歩手前の方式が分離トラック媒体記録方式(DTR)である。DTR では ヘッドおよびチャネル LSI へのインパクトが比較的小さくてすむ代わりに、見込まれる効果も 小さい。

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Ⅲ−9 上記はいずれも媒体および記録ヘッドに係わる“記録“のブレークスルー技術であるが、記録 磁界が確保できて記録に成功したとしても、微細な磁化情報を読み出すためには再生感度の確 保も必要である。すなわち”再生“の技術開発も必要である。 2005~6 年には、従来のスピンバルブ型 GMR ヘッドの数倍の感度を持つトンネル効果 MR 膜 を使った TMR ヘッドが実用化されるであろう。しかし、TMR ヘッドには電気抵抗が高いため 再 生出 力は 大きく ても S/N はあ まり 高くで きな いと いう 欠点が ある。 これ を補 うた め CPP-GMR 膜の開発が精力的に行われているが、2007 年ごろまでには実用化が必要であろう。 その後も面密度の増大に従ってトラック幅の狭幅化と再生感度の向上が不可欠である。2008 年ごろには 100nm 以下のトラック幅および 10mV/um 以上の規格化出力が必要になると予想さ れる。その後も高感度化要求は続くため、これに対応すべく各種スピントロニクス効果を応用 したヘッドデバイス化の研究が進められている。スピントロニクス・ヘッドの実現にむけて、 バリスティック MR、スピンホール MR、スピントランジスタなどの基礎的研究が行われている。 上記は全て記録密度を増大させるための技術であるが、実用上は記録密度以外の課題解決も非 常に重要である。例えば、信頼性確保、低価格化、耐振動、耐衝撃、耐高低温、省電力化、薄 型化である。これらは特にモバイル HDD で重要である。コンテンツ保存用あるいは配布用 HDD などでは、コンテンツ保護機能(セキュリティ)も重要課題である。 光系ストレージ技術 次世代光ディスクにおいては、2010 年頃までに、民生用(高精細画像録画および PC 用途) 中心に記録容量 100∼200GB、転送レート 100∼200Mbps の追記書換型光ディスク装置の実用 化、また、次々世代光ディスク(先ずは、業務用、特に放送用)においても 2010 年頃に、非圧 縮で HDTV 信号記録(約2時間)が可能な記録容量∼1TB、転送速度 数百 Mbps∼1Gbps の 追記書換型光ディスク装置の実用化が必要である。 従来、光ディスクは CD からスタートし、MO(光磁気ディスク)あるいは DVD に技術開発 が進展してきた。このような光ディスクの高記録密度化(大容量化)は、基本的には使用する レーザの波長と集光レンズの NA(開口数)で決まる媒体上の集光ビーム径により制限される。 今後も、レーザ波長の短波長化と高 NA 化で光ディスクの大容量化を押し進める方法も考えら れる。しかしながら、大容量化に大きく寄与するほど波長を短くするとなると、紫外光レーザ を用いることになる。光ディスク再生装置に適用可能な小型、安価で安定かつ高出力の紫外光 半導体レーザの開発が必要であり、さらに、紫外域ではこれまで用いてきたピックアップやデ ィスクを構成する材料を全面的に見直す必要が生じるため、非常に難しい。このため、短波長 化による高記録密度化は、青紫色レーザが限界と見られている。また、レンズの高 NA 化に関 しては、近接場光記録の研究に移行しつつあるが、これは、レンズと媒体の距離がナノメータ オーダになるため、現行の光ディスクの可換性の確保は難しいと考えられる。 このため、光ディスクの大容量化の有力手段として、レーザの短波長化、レンズの高 NA 化以 外のブレークスルー技術が求められており、記録層を多層化する多層記録方式、Super-RENS 方式、多値記録方式、体積ホログラム記録方式等の研究開発が重要と考えられている。 この内、多層記録方式、Super-RENS 方式、多値記録方式は主として日本国内での研究開発が 盛んである。 一方、体積ホログラム記録方式については、昨今、国内外において盛んに研究開発が進められ ている。米国においては、PRIZM(Photorefractive Information Storage Materials Project)、 HDSS(Holographic Data Storage System Project)等のプロジェクトが行われ、フォトポリマー

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Ⅲ−10 を用いた追記系や ROM 等のデモシステムが幾つかの研究機関から発表された。日本において は、最近、NEDO プロジェクトの一環として産学官連携型産業技術実用化開発補助事業におい て、超大容量ホログラム記録高機能光材料および光ディスク開発に関して補助事業が行われた。 日本企業におけるホログラムメモリの研究開発では、フォトポリマー材料を用いたディスク型 体積ホログラム記録方式と装置小型化に適する反射型コリニア光学系(オプトウエア社提案) を採用したシステム開発が進められており、これにより体積ホログラム記録方式・光ディスク の実用化が一段と現実味を帯びてきた。また、非破壊読み出しが可能でかつ書換可能なフォト リフラクティブ結晶およびそれを用いたシステムの検討も進められている。さらに、欧州でも、 最近、反射型コリニア方式のホログラフィック・データストレージ・プロジェクト IST- FP6 (Information Society Technologies – Sixth Framework Programme)が開始されている(活 動期間:2004 年 7 月 1 日∼2007 年 6 月 30 日の 3 年間)。

光ディスクに関するコンテンツの著作権保護の観点からは、読出専用型と書換型媒体を包含す る規格 AACS(Advanced Access Content Sytem)が策定されている。これはキーを 128bit 化するなど暗号化を強化すると共に、個々のドライブを認証できるシステムを備え、さらに、 暗号が破られた場合に無効化できる Revocation 機能を備えている。AACS は HD DVD 等の次 世代光ディスクを中心に採用される見通しであり、現在のところ今後 10 年間は通用するシステ ムと考えられている。 新規ストレージ技術 新規ストレージ技術としては、カード型薄膜ホログラムメモリと、MEMS プローブメモリが 提案されている。 カード型薄膜ホログラムメモリは、積層導波路構造(屈折率の高いコア層と低いクラッド層が 交互に積層された構造で、これにレーザ光を入射すると光がコア層付近に閉じ込められて伝搬 し、各コア層に設けられた凹凸パターンにより光が散乱される)をもつ媒体にデータを記録す るメモリである。媒体が高い記録密度をもつ、ドライブが小型低消費電力、低コストでの媒体 大量生産が可能、媒体偽造が極めて困難、媒体のリサイクルが可能、という特徴をもつため、 次の様な用途が期待される。一つ目は、小型・安価・大容量の特性から、半導体 ROM の代替、 二つ目は、媒体領布性に優れリサイクル可能なことから、紙に代わる本格的配布媒体としての 利用、そして三つ目は、偽造が困難で大容量であることから、ゲームや音楽、映画、電子出版 などのリッチコンテンツの発行用途が期待される。 MEMS プローブメモリは、メディア(ポリマー層、相変化材料層、磁性層、強誘電体層、等) にカンチレバーを用いて記録するマルチプローブメモリである。将来の大容量・高速・低消費 電力のモバイルストレージとしての実用化が期待され、2010 年頃には小型 HDD やフラッシュ メモリ等と競合する可能性も考えられる。 1.3.キーテクノロジー (1)磁性系ストレージ技術 記録用技術 熱揺らぎ限界を打破するブレークスルー技術として近い将来実用化させるであろう技術が 垂直磁気記録方式である。磁化を媒体膜面に対して垂直方向に立てて記録する方式である。 従来は媒体を面内方向に磁化することにより情報を記録してきた。媒体は軟磁性下地層の上 に硬磁性記録層を有する二層構造を用い、ヘッドは従来のポールが二つあるリング型ヘッド

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Ⅲ−11 に代わってモノポール型のヘッドを用いる。 垂直方式により記録性能は格段に向上するが、記録密度向上トレンドを維持するためには常 に磁界強度を増大しつづけなければならない。記録磁界強度は材料に依存する。現在知られ ている最大の飽和磁束密度(Bs)は 2.4 テスラであるが、原子の格子間隔を多層化技術など により人工的にコントロールすることにより Bs の壁を打破できる可能性がある。これが 2.4 テスラ以上 Bs 材料開発である。 一方、記録方式そのものを見直すアプローチの代表技術が、パターン媒体記録再生方式であ る。従来の記録方式では垂直記録方式も含めて、記録媒体の磁性膜として多結晶の連続膜が 用いられる。この方式では、面内/垂直のいずれの記録方式においても、ビット境界がサイズ や形の不規則な結晶粒の境界を走って不規則なジグザグ状となり、これが再生信号の雑音の 原因となることから、記録密度の向上には記録膜の結晶粒を微細化し、直線的なビット境界 を得る必要があった。しかし、結晶粒が小さくなってそのサイズが数ナノ m 以下になると、 熱揺らぎによる磁化の不安定性から、時間経過と共に記録情報が失われるという大きな問題 があり、また、再生信号に必要な信号雑音比を確保するためには、1 ビットあたり少なくとも 10 個程度以上の結晶粒が必要で、これらの制約から連続膜を用いた HDD 記録密度には、い ずれ限界が来ることが予測されている。この限界を打破する新しい記録媒体として、形状や 大きさを人工的にそろえた単一磁区の微粒子をアレイ状にならべ、この 1 微粒子を 1 ビット して記録を行なう方式がパターン媒体記録再生方式である。パターン媒体では粒子が同サイ ズでしかも規則的に配列しているため、1 微粒子を 1 ビットとして記録を行っても再生信号に 必要な信号雑音比が確保でき、原理的には熱安定限界の体積を有するサイズまで微粒子を小 型化して、高密度記録を行なうことができる。 ただし、1 微粒子を 1 ビットとして記録を行なう方式であるため、パターン媒体ではヘッド や信号処理チャネル方式まで含めた大掛かりな変更が必要である。一方、ヘッドおよびチャ ネル LSI の変更を最小限ですませるため、トラック幅方向のみパターニングを行う方式が分 離トラック媒体記録方式である。この媒体ではトラック走行方向にパターニングしないため 信号処理方式やヘッドに大幅な変更を必要としない代わりに、見込まれる効果も小さい。パ ターン媒体の一つ手前の技術とみることができる。 熱ゆらぎ限界を打破するもう一つのブレークスルー技術として注目されるのが、熱アシスト 記録方式である。熱アシスト方式をパターン媒体と組み合わせた、熱アシストパターン媒体 記録方式とすれば、一つのビットに効率的に熱を閉じ込めることが可能となるため、連続膜 媒体に適用した場合よりもより大きな効果が期待できる。このため、パターン媒体記録方式 の後継技術と見ることもできる。レーザー光を記録したい領域に集光させて加熱することに より部分的に媒体の抗磁力 Hc を低下させて、記録磁界が十分に強くない場合でも記録を可能 にする。高密度記録のためにはレーザービームのスポット径をトラック幅と同等にまで小さ くする必要があるが、スポット径は波長に依存するため、短波長のブルーレーザーを使った としても数百 nm 程度までしか絞れず、高密度記録が実現できない。このためソリッド・イ マージョン・レンズや導波路と各種アパーチャを使った近接場光(ニア・フィールド)記録 方式の研究が行われている。ニア・フィールドを用いれば波長限界を超えた小スポットが実 現できるが、媒体を十分な温度に加熱するため光利用効率を向上することや、光デバイスと 従来の磁気デバイスの両方を搭載したヘッドスライダをどう実現するかなどが大きな課題で ある。NEDO 技術開発機構においても「大容量光ストレージ技術の開発」プロジェクトで、 近接場光を利用した記録用光デバイスやナノパターンドメディアによる1テラビット/inch2

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Ⅲ−12 級ストレージ技術の研究を実施している。ニア・フィールドに対して従来の光磁気記録(MO 記録)はファー・フィールド記録と呼ばれる。 再生用技術 記録密度が増大すると1ビット当たりの磁性体の体積が小さくなるため媒体から発生する 磁束密度が弱くなる。このためヘッドの再生感度の向上が必要である。 今後も再生用ヘッドには、媒体からの漏れ磁界を素子の抵抗変化として検出する磁気抵抗 (MR)効果が使用されていく。記録密度の高密度化に対応するために MR ヘッドが満たす条件 は二つある。一つは、弱い漏れ磁場を検出するための MR 効果の増大であり、もう一つはデー タ転送速度の高速化のための抵抗値の低減である。この二つの条件を両立させる材料の開発 が求められる。 現在の主流は約 7%∼8%の MR 効果を示すスピンバルブ型 GMR(巨大磁気抵抗効果)ヘッド であるが、2004 年により高い感度が期待される TMR ヘッドが実用化された。TMR ヘッドは強 磁性トンネル接合が示す大きなトンネル磁気抵抗(TMR)効果を用いるヘッドで、数年以内に 20%∼100%とスピンバルブ型 GMR ヘッドの数倍の性能が実現されよう。ただし、素子 抵抗の低減が課題であり、200Gb/in2∼300Gb/in2以上の記録密度以上への適用には抵抗値を1 ∼0.5Ωμm2程度に下げることが必要である。 TMR の次の有力技術として注目されているのが垂直通電型の CPP(Current Perpendicular to Plane)-GMR である。これにより 500∼600Gb/in2の面記録密度が実現できると考えられている。 CPP-GMR は、GMR 薄膜面内に電流を流すこれまでの CIP(Current In Plane)-GMR と比べ、熱放 散性に優れ通電断面積が大きいので大きなセンス電流が使える可能性がある、狭ギャップ化 に適する、再生フリンジが小さく狭トラック化に適する、などの多くの利点を持つ。CoFe を 用いた CPP-GMR の高出力化においては、MR 比とΔRA(A:素子面積、ΔR:抵抗変化量)を飛躍 的に向上できる技術が報告されている。具体的には、(Fe50Co50/Cu)n 積層のような新たな考 えの磁性金属材料によるスピン依存散乱の増大や、CPP-NOL(Nano Oxide Layer) をスペーサ に用いたスピンバルブ構造により、MR 比及びΔRA が大幅に増大できることが報告されており、 これらの技術の組み合わせにより既に RA∼500mΩμm2で MR 比 8%が得られている。CPP-GMR の

実用化には高 MR 化に加えて、熱的、電気的信頼性、Spin Transfer Induced Noise、NOL 内部 のメタルパス形状・個数の制御などの課題を克服する必要がある。 その後の面密度の増大に対応するためには、電子の磁気的特性(スピン)を活用するスピント ロ二クスといわれる一連の新技術により再生感度を大きく改善したスピントロニクス・ヘッ ドを実現しなければならない。スピントロニクスには、スピン注入素子、スピンフィルター 素子、バリスティック MR、スピンホール MR、スピントランジスタなど、いくつかの候補が ある。これらは、昨今は世界各国で精力的に開発が進められている技術である。例えばスピ ンフィルター素子は、素子を流れる電流の磁化を帯びたスピン電流だけを選択的に透過する 技術で、TMR にこの効果をもつ障壁を適用することで、200%を超える抵抗変化を実現して いる。また、半導体膜と磁性膜からなるトランジスタに似た構造をもつスピントランジスタ では、半導体からなるコレクター部を流れる電流が、磁場によって 200%以上変化する。さ らに、バリスティック MR(BMR)とよばれる 1000%を超える極めて高い MR が基礎検討 レベルであるが確認されている。これは、2つの磁性体を数 nm 以下の極めて細い伝導パス で接触させたときに生じる効果で、細い接触部でスピン電子が損失無く伝導することに起因 するといわれている。現時点では、ヘッド構造の大きな変化を必要とするこれらの技術には

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Ⅲ−13 一長一短があるため、これらの効果もこれまでのところ実用化が見込まれるような有力な候 補は現れていないが、高性能なスピントロニクスデバイスの開発は必須であり、今後、これ を加速する必要がある。 (2)光系ストレージ技術 次世代光ディスク技術 次世代光ディスクの大容量化(100∼200GB)と高速化(100∼200Mbps)に向けては、多 層化と Super-RENS 方式(Super-REsolution Near-field Structure:独立行政法人産業技術 総合研究所(以下、産総研と略す)が提案し研究開発を主導してきた光超解像記録方式の一 種)、多値記録方式が有力視されている。

この内、多層化は、記録層を 3 次元的に積み重ねていく方式であり、Blu-ray Disk におい ては、既に片面 2 層化により容量 50GB の書換型ディスクが実用化されており、容量 50GB の 2 層 ROM ディスクも発表されている。また、Blu-ray Disk では、理論上は 12cm 径ディ スクで片面 8 層化(片面 200GB)までは可能と予測されており、2007 年頃に片面 4 層 100GB のディスクを実用化する計画が公表されている。同様に HD DVD においても書換型片面 2 層 ディスク(容量 32GB)と 2 層 ROM ディスク(容量 30GB)が発表されている。これらの方 式においては、現状の記録層構成を積み重ねていくのみと捉えると最小ピット長は変わらな いため、転送速度向上のためには、材料探索を中心とした記録高感度化、特に相変化記録材 料の場合には相変化(結晶 ⇒ 非晶質)速度の向上(寿命を損なわず)、さらにはレーザ高出 力化等で対応する必要がある。また、層間クロストークの抑制(層間に所定厚みの中間層を 設ける等の施策)も課題である。 Super-RENS方式は、金属膜や酸化物膜を利用した光超解像記録方式(光超解像膜の光学的 非線形性を利用して光学マスクを形成し、読み出す領域を狭めることで分解能を高める方式) であり、原理的にはレーザ短波長化や高NA化と同じく記録スポット径を小さくしていく記録 方式であるので、線速度が同じであれば単位時間当たりに読み書きできる記録ピット数が増 加するため高転送速度化に寄与できる。また、超解像方式は、基本的には従来の光ディスク の膜構成中に非線形な光学特性を有する薄膜を同じプロセスを使って形成するだけなので、 従来のプロセスを踏襲できる。なお、Super-RENS方式の記録性能としては、この方式を用 いない場合と比べて4倍の線記録密度が望めることが報告されている(ISOM 2004)。また、 マーク長37.5nmで記録再生した場合のC/N(搬送波対雑音比)が40dB程度まで得られてお り、光源波長405nmの青紫色LD光と開口数(NA)0.85の対物レンズを組み合わせた光学系 により容量100GBの光ディスクを実現できる可能性も示されている(ISOM 2004)。本方式 の今後の課題としては、駆動パワーの低減、RAM、ROMへの適用などを挙げることができる。 また、多値記録方式には、多くの方式が報告されている。GeSbTe 系記録材料では、結晶化 差による多値方式(現状、4 値)、記録径差による多値方式(現状、5 値)、マークの半径方向 幅変調方式(現状、4 値以上)が検討されている。一方、共晶系記録材料(AgInSnTe 系、 Ge(SbTe)+Sb 系)では接線方向マーク幅変調方式が検討されている。この材料は再結晶過程 の制御により 0.1μm の記録幅が生成・制御できる特長をもつため、一部のメーカからはこの 多値方式で CD−RW の大容量ディスクが市販されるようになった。また、この系では 8∼12 レベルの多値が確認されており、今後、記録容量 100∼200GB の実現が期待される。なお、 相変化ディスクの多値記録方式では記録材料に加えて読取信号処理も重要であり、その研究 開発と実用化が急務である。

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Ⅲ−14 次々世代光ディスク技術 次世代光ディスクの次に登場が予想される次々世代の光ディスクには、12cm 径ディスクに 500GB∼1TB の大容量と 500Mbps∼1Gbps の高転送速度が求められる。この次々世代光デ ィスクの実現技術候補としては、多層記録方式、体積ホログラム記録方式を挙げることがで きる。 次世代光ディスクの場合よりも記録層の積層数を大幅に増やすことのできる多層記録方式 が提案されている。電場印加による記録層選択方式により原理的には無限の多層化が可能な 方式または非線形な光学特性を示す記録層を多層化して所望の記録層に2光子吸収により記 録/再生を行う方式である。転送速度はせいぜい 200Mbps 程度が限界と予想される。 (なお、近接場光記録方式については、近接場光を使用して光の回折限界を超えた光ビーム (光波長よりも小さな微小光開口をもつ光プローブから照射)を用いることでディスク極表 面にのみ微細な情報記録を行うことで高密度化を図るものであるが、近接場光プローブとデ ィスク表面のスペーシングを従来 HDD のヘッド・媒体間隔(ナノメータオーダ)並みに狭め る必要があるため、可換性が求められる光ディスクへの適用は困難と考えられる。近接場光 記録技術はむしろテラビット級 HDD 実現のために有望視される熱アシスト磁気記録方式に 必要な媒体加熱技術として適用される可能性が高いと考えられる。) それらに対して体積ホログラム記録方式(記録原理:空間的な屈折率変調として干渉縞を記 録)は、記録媒体の平面だけではなく、深さ方向まで用いた体積記録が特徴である。記録媒 体を平面のみの利用から立体的に利用することで、飛躍的に記録密度の向上が可能になる。 また、記録光の位置・波長・角度等を順次変化させることによって同じ体積中に 100 から 1000 の情報を多重記録することと、従来の光ディスクのように、位置や長さを変調して 0/1 の信 号を直線状に配置するのではなく、情報を 2 次元に展開して一度に記録・再生することによ って記録密度と転送速度の向上を図っている。記録容量では TB 級、データ転送レートでは Gbps 級のポテンシャルがあると考えられており、高速・大容量アーカイブ・ストレージへの 幅広い適用が期待されると共に、次々世代の民生用光ディスクへの適用も期待できる。当面 は追記型のフォトポリマー媒体の開発、続いて書換型媒体の開発も必要になるであろう。ま た、将来的に民生用のホログラム記録方式光ディスクを実用化する上では、コンテンツ配布 用 ROM ディスクの開発の必要性も考えられる。 体積ホログラム光ディスクは、従来の光ディスク装置と同様、システム構成技術、媒体材料 技術(追記型、書換型)、入出力デバイス(空間光変調器、2 次元受光素子等)、光ピックアッ プ技術、ドライブ技術(ROM,WORM,RAM)、信号処理技術等々の総合的な研究開発を必要 とするものであり、一企業の努力だけでは容易に開発が進まないと予想される。 (3)新規ストレージ技術 カード型・薄膜光ホログラムメモリ 薄膜光ホログラムメモリの具体例として、NTT が開発したインフォ・マイカ(Info-MICA: Information-Multilayered Imprinted CArd)と呼ばれるカード型メモリが知られている。こ れは、積層導波路構造をもつプラスチック樹脂媒体にデータを記録するものであり、平成1 0年度から 5 年間実施された NEDO プロジェクト「ナノメータ制御光ディスクシステムの研 究開発」の研究成果の一部を用いて開発された。既に、100 層で 1GB の記憶が可能な切手サ

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Ⅲ−15 イズの ROM 型媒体と手のひらに載る小型データ読出ドライブ(サイズ:25mm(W)× 25mm(D)×2mm(T))が試作されており、2005 年中には製品化も予定されている。量産時の コストは、ドライブが数千円、媒体が 100 円∼200 円と想定されている。また、計算機ホロ グラム(所望の再生像が生成されるようにコンピュータの計算で合成されたホログラム)を 入力情報とした薄膜ホログラム(ホログラムの厚みが光の波長以下かそれより薄い場合のホ ログラムのことであり、回折を起こす条件が緩いため異なる波長や入射方向をもつ参照光に 対しても回折光が得られる)の積層型 ROM メモリの開発も当初上記プロジェクトの一環と して進められ、現在では企業内にてシステム化の検討が進められている。 今後の課題としては、ROM 型メモリの大容量化(数年後に 10GB 以上:映画記録が可能) に向けた記録密度向上(メディア、光学系の改善)や書き込み可能な媒体材料及びドライブ の開発が挙げられる。 MEMS プローブメモリ

MEMS プローブメモリの代表例として、IBM Zurich 研が開発した Millipede が良く知られ ている。これはポリマー(PMMA)メディアに熱的にトポ記録するメモリであり(信号再生: 記録の有無によって生じるカンチレバー抵抗器の抵抗変化を検出)、1チップに 1000 本のカ ンチレバーを設置して、これらを同時にパラレル処理することが想定されている。チップは 1バッチ作製(VLSI-MEMS)される。シングル・プローブでのデモではあるが、記録密度にお いては既に HDD のレベルを遥かに凌ぐ 1.14 Tb/in2が実証されている。IBM の 2010 年の開 発目標は、SD カードの大きさで、記録密度 2 Tb/in2、記録容量 13GB、転送速度 30Mbps、 アクセス時間 5ms、消費電力 300mW である。将来のモバイルストレージとしての実用化が 期待されるが、転送速度が HDD と比較すると非常に遅いことが最大の欠点である。今後の重 要課題としては、転送速度の高速化、プローブ・トラッキングの高精度化、MEMS アクチュ エータの小型化、消費電力低減などが挙げられる。転送速度の向上に向けては、ポリマーへ の熱トポ記録から、元々高速記録可能な記録方式(例えば、磁性媒体へのスピン注入記録方 式、記録信号読出しは GMR/TMR 再生等)へ変更すると、大容量で且つ 1 プローブ当たり でも非常に高速な記録が可能となる。これが実現すれば超小型 HDD またはフラッシュメモリ の一部または全てを置き換えてしまう可能性もある。 1.4 キーテクノロジーの実現に向けて 大量のコンテンツやビジネス・社会情報を安全確実に保管して利用するニーズを支えるストレ ージ技術の重要性は今後もさらに高まるものと思われる。ストレージ技術は最終ユーザーと直接 に接する技術であり、その開発に当たっては常にニーズの動向を踏まえながら研究開発を進めて いく必要がある。 磁性系ストレージの記録系キーテクノロジに関しては、記録方式を大きく変更する必要がある パターン媒体記録方式と、近接場光を用いた熱アシスト記録方式の開発が重要である。 一方、再生系キーテクノロジでは、TMR の実用化は近いと見られるものの、その後に続く有 力な技術がいまだに見えていない。したがって、スピントロニクス・デバイスの研究開発を強力 に推進していくことがぜひとも必要であろう。 2010 年迄には実用化が完了すると予測される次世代光ストレージ技術については、国内勢が欧

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Ⅲ−16 米勢に対してすでに圧倒的な優位性を確保しており、大筋としては企業主体での実用化が可能と 思われる。しかしながら、次世代光ディスクの今後の大容量化と高速化に有望と考えられる Super-RENS 方式については、その記録・再生メカニズムが十分に解明されていないため、上記 メカニズムの早期解明とディスク設計指針の確立が急務である。 一方、体積ホログラム記録を中心とする次々世代光ストレージ技術について、2010 年頃に欧米 に先駆けて容量 1TB 級、転送速度 1Gbps 級のアーカイブ用大容量・高速ホログラム記録装置を実 用化するには、材料・デバイス・システムを統合した開発が必要である。 また、新規ストレージ技術としては、2010 年頃以降に小型 HDD やフラッシュメモリの一部ま たは全てを置き換えてしまう可能性を持つ「MEMSプローブメモリ」が注目される。技術とし ての不確定性が高い段階にあるが、取り組むべき課題である。

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