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中等度障害の筋萎縮性側索硬化症の症例 に対す る福祉用具支援

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症例報告 :秋 田大学医学部保健学科紀要12(1):90‑93,2004

中等度障害 の筋萎縮性側索硬化症 の症例 に対す る福祉用具支援

金 城 正 治

要 ヒ日二

重症度

4

の筋萎縮性側索硬化症の症例に対 して福祉用貝による支援を実施 した.症例は歩行が可能であったが,立 ちあがりや座る動作は不安定であった.また,上肢動作はかなり低下 していた.症例は日中一人になり,適度な休養 をとる,外部 との連絡をとれないことによる不安があった.そこで,電動 リクライニング椅子を導入 し, リクライニ ングのスイッチを呼吸スイッチに改良 し,椅子の肘おきを延長 した.また,‑ ンズフリー電話を導入 したことにより, ホームヘルパーの支援 も受けなが ら日中一人で生活することができた.

は じめに

筋萎縮性側索硬化症

amyotrophiclateralsclerosis

( 以後

ALS

と略す) は, 原 因不 明 で, 進行 性 の神経 変性疾患 で あ る.薬物療法 とともに リ‑ ビ リテ‑ シ ョ

ンの重要性 も指摘 されて いる1 ) . 山勝

2)

らや渡

連 3)

らは, 重症度 に応 じた補装具 や福祉用具 の重要性 を述 べて い

る.

今 回,厚生省

ALS

研究班 による重症度分類 が中等 度

4

レベルの

ALS

の症例 を担 当 した. 日中 は一人で,

ADL

は半介助 か ら全介助 レベルで あ った. ホー ム‑

ルパ ー等 の支援 を受 けていたが,外部 との連絡 が 自分 で とれな い ことによる不安, 日中休養が とれない等 の 問題 があ った.

この問題 に対 して,安全 で 快適 にす ごせ るよ うに, 呼気 セ ンサー付電動 リクライニ ング椅子 と‑ ンズフ リー 電話器等 を導入 した.

ALS

で の中等度 の障害 レベ ル にお け る福 祉用 具 は 車 いす,体幹保持具等 の報告 があ り,椅子 や電話等 に 関す る報告 はない.

そ こで, これ ら福祉用具 や機器 による支援 を主体 に した作業療法 の実践 を報告す る.

症例紹介

症例 は,

67

歳 の男性であ った.診 断名 は

ALS

で, 障害像 は体幹 四肢 の筋萎縮 ・筋力低下 が あ った.家族 は長男夫婦 と三人暮 らしで,長男夫婦 は共働 きで あ っ た.家屋 は

2

階建 て,本人 の生活 は

1

階であ った. 玄 関 はあが り梶 に段差 があ り,廊下 と居 間 ・寝室 ・浴室 の敷居 に

20mm

段差があ った.福祉保健 サ ー ビスの利 用 は,土 日を除 きホ‑ムヘルパ ーの支援 と保健 師の訪 問があ った.症例 の要望 は一人 で安心 して留守番 で き ることであ った.

作業療法評価

症例 の

ALS

重症度 は

4

度で,介助 して も日常生 活 には大 きな支障が あ るとい うレベルであ った.身体機 能 で は,徒手筋力検査 において上肢 と手指が

3

レベル, 体幹下肢 が

3‑ 4

レベルであ った.下肢 よ りも上肢 に 筋力低下 が著 明で あ った. 自動 関節可動域検査で は, 上肢 に重度 の制限,下肢 に中等度 の制 限が あ った.上 肢機能 は リーチ制限,把持等 の動作 は困難 で あ った.

よ って手指 による操作 も低下 していた.心肺機能 や生 活体力 の耐久性 も低下 していた.

日常生活活動 で は, 睡眠 はベ ッ ドを使用 し, 自力 に よる起 き上 が りは出来 ず,介助 であ った.床 か らの立

秋 田大学医学部保健学科作業療法学専攻

90

KeyWords:

筋萎縮性側索硬化症 福祉用具

起居

コミニューケ‑ション

秋 田大学医学部保健学科紀要 第12巻 第1

Akita University

(2)

金城正治/中等度障害の筋萎縮性側索硬化症の症例 に対す る福祉用具支援

ち上 が りはで きなか った. 高 さ

40cm

程度 の椅 子 か ら の立 ち上 が りは可能であ ったが,少 し不安定であった.

移動 は歩行 が可能 であ ったが,下垂足 が観察 された.

食事 ・整容 ・トイ レ動作 は半介助か ら全介助であった.

日常会話 は可能 であ った.

生活パ ター ンは,同居 している息子夫婦 が共働 きな ので, 日中 は一人 にな り, ホームヘルパ ーが昼食や入 浴介助で訪 問 していた.普段 は居間の ソファーに座 っ て過 ごしていた. ソフ ァーは座面が低 く, 目によって は立 ち上 が りも困難で,横 になることもで きなか った.

よ って うま く休養 を とることがで きなか った.

作業療法計画

評価 を踏 まえて,作業療法 と しては,在宅で 快適安 全 に暮 らせ るよ うに,以下 の方針を立 てた.

1

.適度 に臥位 にな って休養が とれ る.

2.

椅子座位 の快適性 の向上,立 ち上 が り負担 の軽 減.

3.

外部 と連絡が とれ るよ うにす る.

4.

トイ レと入浴の介助者負担 の軽減

これ らの方針 を達成 す るために,今回 は身体機能 の 支援 でな く,環境調整 による支援 と して, リクライニ ング椅子,‑ ンズフ リー電話, シャワーチェア,便器 リモ コンスイ ッチの導入 を計画 した.身体機能への支 援 につ いて は, ホームヘルパ ーへ簡易な運動療法を指

図1

呼吸スイッチ付電動 リクライニグ椅子

秋 田大学医学部保健学科紀要 第12巻 第1

(91)

導 した.

結 果

方針

1

2

に対 して,電動 リクライニ ング椅子 を導 入 した.椅子 はフランスベ ッ ド社製 の商品名 「ケア ・ チ ェア リクライニ ングタイプ ( 電動

)

」( 価格

12

万円) を 自費で購入 した. この椅子 はプ ッシュスイ ッチで リ クライニ ングの操作がで きた. しか し,症例 は, この 椅子 のプ ッシュスイ ッチは操作がで きなか った. そ こ で,図

1

に示す よ うに, スイ ッチには呼吸セ ンサ一式 スイ ッチ とフッ トスイ ッチをっ けた.呼吸 スイ ッチの チ ューブはフ レキ シブルパ イプに通 して, 口元 の近 く に設定 した. また,立 ち上 が りやす いよ うに,体幹前 屈 を上肢で支持す るために,椅子の肘おきを延長 した.

リクライニ ング して仰 向けにな った時の写真 を図

2

に 示 した. この時下肢 はオ ッ トマ ンに載 せた.

呼吸 スイ ッチは,吸気 と呼気 によるセ ンサーを

2

個 利用 してお り,吸気で椅子 の背中を倒 して,呼気でお こした.配線 はプ ッシュスイ ッチの基盤 に, テスター で確認 してハ ンダによ って線 を接続 した.

この電動 リクライニ ング椅子 を導入 したことにより, リクライ ングによ り仰 向けで適度 に休養 を とることが で きた. また, この椅子 か らの立 ち上 が りも楽 にで き た.症例 も休養が とれ ることによ り生活が楽 にな った との表現があ った. そ して,家庭内を歩 いた りす るこ

2 休養 (背を倒 した状態)

91

Akita University

(3)

(92) 金城正治/中等度障害の筋萎縮性側索硬化症の症例に対す る福祉用具支援

3

ハンズフリー電話機の操作

とも増 えた.

方針

3

に対 して は,図

3

に示す よ うなパ イオニア製 の‑ ンズフ リー電話器 を導入 した. この電話 は,電話 がな った時 に声 で返事 す るとっなが り,受話器 を もた ず に通話 がで きる‑ ンズフ リー機能 があ った.電話 看 か ける場合 は,下肢足指で ダイヤルをプ ッシュ した.

この電話 を足元 の位置で移動 も可能 なよ うに, キ ャス タ‑のつ いた電話台を製作 した. よ く電話 をか けると ころは短縮 ダイヤルで登録 した.

結果 と して,今 までの 日中一人での生活 の不安 が解 消 され,安心 している様子であ った. そ して,市 内に 住 んでい る娘 さんや知人 に電話 をか けた り, ホーム‑

ルパ ーが所属 している施設へ連絡や生活相談 をす るこ とがで きた.特 に娘 さん に自分か ら電話がかけ られ る ことは非常 に喜んでいた.

方針

4

につ いて は, トイ レで洋式便器 を利用 してい たので,操作部分 のパ ネルを大 きものに変 え,足元 に おいて使 うよ うに指導 した. これ は家族 が実施す るこ とにな った.入浴 につ いて はシャワーチ ェアの導入 を 計画 し,保健師が申請手続 きを して,実際の方法 を家 族 とホームヘルパ ーに指導 した.

考 察

中等度 の ALS の症例 に対 して,電 動 リク ライニ ン グ椅子 を導入 して,立 ち上 が りも楽 にで きた.疲 れた 場合 は椅子 で横 にな り,休養 もで きた.

3)

らは,進行性疾患 の在宅生活支援で, 移動 方 法 の確立 や移乗 ・移動 の介助負担 の軽減 を はか ること が重要 で ると述べている.症例 も起居動作 が困難であ り, また,適度 の休息 が とれなか ったので,起居動作

92

の確立 が求 め られていた. 山勝

2)

は,重症度

4

で は, 進行 を見越 して リクライニ ング車 いすを処方 して,使 用 目的 に応 じた微妙 な姿勢変化 の調整で役立 っ と述べ ている. しか し, この リクライニ ング車 いすで は自分 で調整がで きないので,今回 は電動 リクライニ ング椅 子 を導入 した. そ して,立 ちあが りやすわ り動作 を安 全で容易 にす るために, アーム レス トを延長 した. こ れによ り体幹 が前傾で きた ことによ り容易 にな った と 考 え られ る.

電動 リクライニ ングの操作 スイ ッチは,下肢 を利用 した フッ トスイ ッチ と呼吸 を利用 した呼吸 スイ ッチに した.症例 は上肢 か ら進行す るタイプであ ったので, 呼吸機能 や下肢機能 を利用 した. しか し,進行 によ っ て田中

4)

が報告 しているよ うな タ ッチスイ ッチ等 に変 更 してい くことも考 え られ る.今回 スイ ッチを改造 し たが,本来 のスイ ッチ も介助で利用で きるよ うに残 し た. そ して,残存機能の活用 と安全性を考慮 したスイ ッ チに した.

症例宅 にはソファー もあ ったが,作業椅子 や休養椅 子 としては,機能が不十分であ った. よって今回導入 した電動 リクライニ ング椅子 は,座位 を とる,椅子か ら立 ち上が りが楽 になる,椅子で適度 に休養す るな ど の 目的を達成す ることがで き,選択 として適切 であ っ

た.

外 との連絡 は,ハ ンズフ リー電話器 の導入 によ り可 能 とな った. これによ り日中の一人暮 らしの安全性 や 快適性が高 まった.家族 や介護支援 セ ンタ‑ と話 がで きることによ り,症例 や家族 の不安 がかな り軽減 され た.既存 の電話 は,受話器 を持 って話 をす る必要 があ るが,ハ ンズフ リーにす ることによ り持 たず に話 しが で きた. また,電話がかか って きた場 合 は, 「はい」

と返事す るだけで会話 が可能 とな った. ただ この返事 による反応 は誤動作 もあ り,完全で はなか ったが利用 す ることがで きた.家族 は子機 を利用 した.

コ ミュニケー シ ョンは,対人関係 を築 く上 で重要 な ことである.特 に症例 のよ うに日中一人 にな る人や独 り暮 らしで は,電話 は重要 な手段 とな る. そ して,上 肢能力が低下 した場合 には,‑ ンズフ リー電話機 の選 択 は適切であ った.

症例 は, これ らの用具や機器 の導入 ・支援 によ り, ホームヘルパ ーの支援 を受 けなが ら日中一人 で,安心 していることがで きた. ALS は進行性の疾病である.

そ こで,重症度や生活障害 に応 じて適切 に環境設定 や 福祉用具 を選択 してい くことも重要 であ ることが示唆

された.

秋田大学医学部保健学科紀要 第12巻 第 1号

Akita University

(4)

金城正治/中等度障害の筋萎縮性側索硬化症の症例 に対す る福祉用具支援 (93)

結 E g 示 g M l

重症度

4

ALS

の症例 に対 して機 器 の改良 と福 祉 用具 の導入 を実施 した.

症例 は 日中ヘルパ ーの支援 を受 けなが ら一人 で暮 ら して いた. そ こで, 日中 に座 る椅子 と休む椅子 として, 呼吸 スイ ッチ付電動 リクライニ ング椅子 を導入 した.

また,外部 との コ ミュニケー シ ョンが とれ るよ うに,

‑ ンズフ リーの電話 を導入 した. その結果,安心 して 日中一人 で過 ごせ た.

ALS

は進行性疾患 なので, 身体 能 力 の低下 に よ り

ADL

も低下 して い く.特 に座位等の起居動作や コ ミュ ニケー シ ョンは重要 な活動 であ り,生活 の質 に大 き く 影響 す る.症例 はいずれ座位保持,呼気 ス ッチの利用

は困難 とな るが,現在 の状態 と して は,今回導入 した 福祉用具等 の導入 は妥 当であ った.

文 献

1)篠塚直子,安藤一也 :筋萎縮性側索硬化症 (ALS)

の リ‑ ビリテ‑ション,総合 リ

‑ vol14(No8)

,5

77 582,1996

2)山勝裕久,山口明 :筋萎縮性側索硬化症 の作業療法.

OTジャーナル 24:638643,1990

3)渡遣慎一,山崎哲司 :進行性筋疾患児 ・者の在宅支援.

OTジャーナル 32:667‑670,1998

4)田中勇次郎 :筋萎縮性側索硬化症患者へのコミュニケー

ション支援.OTジャーナル

32:6711676,1998

Te c hni c alAi dSuppor tf ora nALSPat i e ntwi t hMe di um‑ c l as sHandi cap.

MasajiKINJO

CourseofOccupationalTherapy,SchoolofHealthSciences,AkitaUniversity

Toimprovequalityoflifeforapatientwithgrade4amyotrophiclateralsclerosiswhowaslivingathome,

anumberofnewhomecaredeviceswereintroduced.Whilethepatientwasabletowalk,thepatientrequired helplnStandingandsitting.Also,movementoftheupperarm wasslgnificantlyrestricted.Thepatientwas aloneduringthedayandwasfeelingunsureaboutbeingunabletorestormakecontactwithanyone.Anelec tricrecliningchairwasthereforebroughtin,andmodifiedbyextendingthearmrestandconvertingthechair recliningswitchtoabreathing‑aidswitch.Also,byinstallingahandsfreetelephone,thepatientwasableto livealoneduringthedaywiththesupportofahomehelper.

秋田大学医学部保健学科紀要 第12巻 第193

Akita University

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