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子どもが楽しみながら意欲的に取り組む「体つくり 運動」の事例

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(1)

子どもが楽しみながら意欲的に取り組む「体つくり 運動」の事例

著者 増山 尚美, 作田 文子

雑誌名 北翔大学北方圏生涯スポーツ研究センター年報

巻 10

ページ 77‑84

発行年 2019

URL http://doi.org/10.24794/00003029

(2)

子どもが楽しみながら意欲的に取り組む「体つくり運動」の事例 Examples of “Karada-tukuri-unndou” Programs

─Physical Exercise in which Children Can Enjoy and be Motivated to Participate in─

増 山 尚 美

1)

  作 田 文 子

2)

M

ASHIYAMA

Naomi

1)

  S

AKUTA

Fumiko

2)

キーワード:体つくり運動,子ども,運動プログラム

Ⅰ.はじめに

 「体つくり運動」は,平成10年度告示の学習指導要領 改定時に,心と体を一体としてとらえることを重視し,

従来の「体操」領域の内容である「体力を高める運動」

に新たに「体ほぐしの運動」が加えられ,名称も改めら れたものである

1)

 平成20年度の改定では,運動実施の二極化の傾向が続 くことと生活習慣の乱れが小学校低学年にも見られると の指摘を踏まえ,小学校においては高学年に加え全学年 で実施されることになった。中学校及び高等学校では,

体力を高める運動において,運動を組み合わせること,

運動の計画を立てて取り組みことなどの指導内容を改善 するとともに,授業時数が示された

2)

 平成30年度の改定では,小学校5年以降の「体力を高 める運動」が中学1・2年次までは動きの量から質を重 視する「体の動きを高める運動」という名称に変更され,

中学3年次から高等学校では「実生活に生かす運動の計 画」に改められた(図1)。

 「体つくり運動」は学校体育の領域の中では唯一,小 学校1年次から高等学校卒業年次まで継続して位置づけ られていることからも,基礎的かつ重要な領域であると いえる。

 一方で,領域として示されてから20年以上経ているに もかかわらず,指導者も児童生徒も十分に「体つくり運 動」を理解しているとは言えない状況である。「1時間 もたない」などの理由で独立した単元として実施されて

いない,スポーツテストや集団行動,他の領域の準備運 動に充てられている実態も報告されている。

 渡部ら(2015)

3)

はアンケートを実施し,教員は体つ くり運動が非常に重要であることは認識しているが,単 独単元として授業を展開するのは非常に難しいという実 態を報告している。また,現場の立場において目指すね らいを認識しているものの部分的にしか実施できていな いことが明らかになったとしている。

 三木本ら(2016)

4)

は体つくり運動の問題点として次 のような指摘をしている。

・「技能」ではなく「運動」を評価することが困難で ある

・まとまった単元として実施しにくい

・1つ1つの運動例は多く示されているが,それらを どうつないでいけばいいのかわからない

・現場の一部では準備運動を体つくり運動として扱う

・集団行動の訓練や自校体操の習得,スポーツテスト

1)北翔大学生涯スポーツ学部スポーツ教育学科 2)社団法人 子ども体づくり協会

図1 平成29年度(小学校・中学校)平成30年度(高

等学校)改訂の内容「知識及び技能」

(3)

子どもが楽しみながら意欲的に取り組む「体つくり運動」の事例

の計画に充ててきた学校も多い

「多様な動きを作る運動遊び」では,

・何をねらいとしているか曖昧な授業が見られる

「体ほぐしの運動」では,以下のように述べている。

・発展的,連続的な取り組みが不明瞭の活動が多い

・ストレッチ体操等の準備運動でとどまっている可能 性がある

・固有の運動形式が示されていないために,授業づく りのためには教材研究が最も必要である

「体力を高める運動」の現状として,以下を指摘し ている。

・現場では単純な運動反復や義務化しセットされた

「サーキットトレーニング方式」が横行していると いう現状

・子どもたちにとってやらされるだけのトレーニング の時間になってしまうことが危惧される

・体力主義体育は多くの体育嫌いを生み出すという,

負の遺産を残したことを忘れてはならない

 南ら(2017)

5)

は先行研究を検討し,次のように報告 している。体つくり運動領域には固有の運動が存在せず,

単独の単元としての実施の難しさが窺えた。体力に対す る指導者の認識の相違から,スポーツテストに見られる ような数値化された「体力」に傾斜した指導に陥る危険 性も見られた。

 山田ら(2016)

6)

は体つくり運動は,様々な狙いに応 じて運動内容を構成するが,体力向上的側面と体ほぐし 的な側面を明確に区別することは難しく,両方の側面を 持っている場合もありうるのではないかという観点から 教材開発にあたった。

 先行研究から,体つくり運動は固有の運動形式がない ため,指導や評価に困難さを感じている教員が多いこと がうかがえる。プログラムの羅列に終始し,何をねらい として何を習得させるかが曖昧になっていることや,発 達段階に応じた系統的な単元構成になっていないことが 想定できる。

Ⅱ.北海道の子供の状況

 全国体力・運動能力,運動習慣等調査,北海道版(平 成30年度)

7)

によると,北海道の子どもの体力は改善の 方向にあるが依然として全国平均より低い。「体育の授 業は楽しいですか」の項目では,小学校,中学校ともに

「楽しい」が全国平均を上回っている(図2)。しかし,

小中学校で比較すると,男女ともに「楽しい」が約20%

低下している。

 ねらいの理解では,教員と児童生徒の認識に差がみら れた。「体育(保健体育)の授業の始めに授業の目的(目

当て・ねらい)が示されていますか」の設問に対し,「示 されている」と答えた児童は約50%であるのに対し,学 校(教員側)は,8割以上が,「すべての学年・学級目 標を示す活動を取り入れている」と回答している。

 「体つくり運動」は自分に合った運動を選び,運動の 楽しさや心地よさを,交流を通して体験するものである。

他の領域と異なるねらいを持つことを伝えることが重要 である。

 体力向上は依然として課題であるが,テストの評価を 上げるために自発的でないトレーニングの強要になり,

運動嫌いを助長しては本末転倒である。

Ⅲ.子どもが楽しみながら意欲的に取り組む「体つ   くり運動」の事例

  平成30年度の学習指導要領改訂では,「体力を高め る運動」が「体の動きを高める運動」に変更された。効 果があっても単調なトレーニングをこなすような活動 は,子どもの運動に対する内発的動機付けにはならない。

スポーツテストの数値をあげることだけでなく,フォー ムや身体部位に意識を向ける,自ら考え試行錯誤するな ど運動の質も重視される。

 本稿では,子どもが楽しみながら意欲的に取り組み,

「体つくり運動」の特に「体の動きを高める運動」とし て効果の見られた活動を紹介する。プログラムを応用・

発展させる方法,学年や校種が上がっても課題の提示の 仕方で意欲を持たせる指導のポイント,運動を苦手とす る子供への対応についても触れる。

①ビームで体幹強化運動 対象:幼児〜大人

人数:1人〜多数(広さによる)

広さ:1人当たり手足を伸ばして横になれる程度の広さ

(ビームの内容による)

準備するもの:なし 内容:

 指導者は対象者に指先からビームが出るから避けたり 従ったりするように伝え,対象者はビームの指示どおり ポジションをとる。「頭ビーム」はジャンプ, 「足ビーム」

はしゃがむ,「お腹ビーム」はうつ伏せ,「背中ビーム」

は仰向けになる。順に「ビーム」の種類を増やし(図3)

ブリッジや逆立ちなどに移行する。

※ビームの名称は年齢に合わせて変更しても良い。

メリット:

 「ビーム」の指示でポジションを変えるだけなので,

広さがなくても実施できる。また,ルールなどの説明が

不要であること,ペアやグループを作ることもなく一人

(4)

で実施するため順位がつかないこと,出来ないものが あってもすぐに次の指示(ビーム)で変わるので,他人 と比較することもなく,体力レベルが様々な集団でも活 用できる。また,対象者の発達などに合わせてビームの 種類や速さ,組み合わせ(図4)などで運動強度や難度 を瞬時に変えられるので対象者の多様な年齢や体力レベ ルに対応できる。

デメリット:

 幼児期では重心が低く体幹に対して四肢が短いので,

安易に行うことが出来るが,中学生くらいになると体格 の影響や,ビームの順番やテンポによっては体力の差が 顕著に出てしまうことがある。

 人数が多くなると,目が行き届かず対象者が正確に行 えていなくても確認できないこともある。

期待される効果:

 各ポジションによる体幹部の強化,肩甲帯・骨盤帯の 安定,効率の良い動作の習得。

 フェイント(頭の方に向かって「足ビーム」を出すなど)

図2 平成30年度 全国体力・運動能力,運動習慣等調査結果 北海道版(北海道教育委員会 平成31年2月)

(5)

子どもが楽しみながら意欲的に取り組む「体つくり運動」の事例

を入れると変換能力,上下の運動を早く行うと,コーディ ネーション運動としての連結能力などの向上が期待でき る。また,各部位の柔軟性も高まる。例えば体幹部の屈 筋群のストレッチと体幹部の伸展筋群の収縮をねらって

「アンパンマンビーム」や「カメビーム」を繰り返すこ とは,柔軟性が高まりブリッジが行いやすくなる。

 「ビーム」を仕掛ける順番や種類により動きの連鎖や 効率の良い動きの獲得につながる。図4の「ダンゴ虫ビー ム」と「アンパンマンビーム」の繰り返しは,トップア スリートにも体幹トレーニングなどで活用されている。

 年齢を問わず集団で行うことでの一体感や高揚感など も得られる。

指導のポイント:

 あらかじめビームの種類やねらいを把握し,安易なも のから難度・強度を上げる,タイミングや順序などを工 夫する,楽しめるような言葉がけをすることも指導の重 要な要素になる。幼児にはゆっくりと声の抑揚をつけ,

同じ動作(ビーム)を繰り返しながら記憶させ,出来る ものを投げかける。年齢が上がるほど速いテンポや難度 の上がるポジションで,柔軟にねらいを変え飽きさせな い展開が求められる。

その他:

 集団指導としてどのくらいの年齢,人数で可能か,小 学3,4年生(約200名),中学2年生(約75名)に実施 してみた。結果はどちらも楽しく,ねらいの動作を引き 出せた(指導者は一人)。

②だるまさんが転んだ体幹強化 対象:幼児〜大人

人数:5名〜40名程度

広さ:年齢と人数による(人数が少なければ教室でも可 能,多ければ体育館も可能)

準備するもの:なし 内容:

 鬼役が後ろ向きで「だるまさんが転んだ」と言ってい る間に子役が近づき,振り向いた時に静止していない子 どもの名前を言って鬼と手をつなぐ・・・という伝承遊 びの応用である。子役が鬼に近づくポジションを体幹に 負荷がかかる体勢にして行うことで体幹部を強化する

(写真1,2)。鬼に名前を呼ばれた後は,鬼の横でポジ ションの姿勢を保つ。子役が鬼に近づき,誰が先に鬼ま で到達するかを競う。

期待される効果:

 先に紹介した「ビームで体幹強化運動」の図3に示し たポジションで移動静止することで,体幹部などの強化 が期待される(獲得機能も図2に記載)。

メリット:

 低年齢の子どもは,一般的な体幹トレーニングを行っ ても楽しくない上,期待どおりの効果が獲得出来ない事 が多いが,遊びの中にプログラムを投入することで楽し く習得できる。

デメリット:

 静止できなかった子役が鬼にすぐ名前を呼ばれると,

モチベーションが下がり運動効果が減少する。また,な かなか前に進もうとしない子どもも出てくるので,鬼は 進んでいない子役の名前を言うことができるルールにす ると良い。

 多人数で行うとねらいのポジションが取れないまたは 取らない子どもが出てくる。

指導のポイント:

 対象者の年齢,体力,人数などに合わせて距離やポジ ションなどを決める。より体幹部に負荷がかかるようポ ジションをしっかり先に説明すると良い。例えば高這い のポジションの際は,お尻をしっかり上げて腕に体重を かけて静止する(獲得機能は図3参照)。お尻を下げて 静止すれば鬼に名前を呼ばれるなどルール説明の際にポ ジションを明確に伝える。

写真1 高這いによる移動

写真2 腹這いによる移動

(6)

図3 ビームで体幹強化運動

(7)

子どもが楽しみながら意欲的に取り組む「体つくり運動」の事例

図4 ビームの順番と繰り返しによる獲得機能とねらい

(8)

その他:

 低学年以下では人気のプログラムであるが,高学年以 上では楽しめない子どもも出てくるので,先にねらいを 伝えてから行った方が動きの質が良くなった。例えば,

高這いポジションでしっかり体重を腕にかけると逆立ち や跳び箱が上達するなどと声掛けをしてみた。

③タワー積み上げ走(リレー)

対象:幼児〜大人 人数:2人〜多数

広さ:走る長さ(推奨10M 〜20M)

準備するもの:カップ3個〜 10個(使い捨ての安価な プラカップまたは紙コップ)

内容:

 競争型プログラム。スタート後,数メートル先に重なっ て置いてあるカップでタワーを作り,出来上がったらそ の数メートル先のコーンをタッチして折り返し,タワー のカップを元通りに重ねてゴールする(写真3)。

 タワーは年齢に合わせてカップの個数を考慮する。幼 児は3個〜6個,小学生は6個〜 10個くらいが適当と 思われる(写真4,5)。あまりたくさんの個数を使うと 時間がかかり,差が大きくなる。応用としてスタートの ポジションを変更したり,カップまでの移動を四つ這い や腹這い(写真2),ジャンプなどにしたりすると運動 効果がさらに高まる。

期待される効果:

 運動時の大きな出力を調整しながら作業能力の向上。

 あえて安価なすぐに破損する薄いプラスチックのカッ プを使用することで,力加減の調整も身につく。紙コッ プは不向きであった。

メリット:

 走るのが苦手な子どももタワーを早く完成すると1位 を取る経験が出来る。焦ってしまうとタワーが思うよう に完成出来ず順位が下がる(1位にこだわるタイプは,

焦りが手先のコントロール力を失いタワーに時間がか かってしまうことが多く見て取れた)。

デメリット:

 手先の作業が苦手なタイプは,何度も失敗するうちに 焦って余計出来なくなることがあるため,指導者がフォ ローすると良い。

指導のポイント:

 低年齢児は初めてカップでタワーを作る子どももいる ので,完成形(積み上げた状態)を良く見せて説明する。

幼児は3個から始め,6個のタワーも挑戦できる。発達 段階により大きな差が生じるため,楽しく挑戦できる個 数で実施すると良い。小学生(高学年)以上は,生徒間 でタワーの個数の設定やルールなどを話し合わせるのも

良い。

 幼児では,積み上げ作業よりも重ねる方が難しいと言 う子どももいた。

その他:

 距離の設定は,長過ぎると足の速い子どもが有利にな るためあえて少し短めに設定し,かけっこが苦手な子ど もにも上位を取る確率が上がるよう考慮する。

 どの学年もスリルを味わい大変高揚感が高まり,何度 もやりたいとアピールしてきた。これらをチーム対抗の リレーで行うと更にチームの連帯感が高まり,コミュニ ケーションを取り合う機会が広がる。

Ⅳ.まとめ

 幼児期,学童期に十分な運動を行うか否かは,成人後 の体力にも影響する。からだつくり運動は,いじめや不 登校といった学校現場の課題を背景に,心と体の発達を 期待されて導入された面もある。運動することは体力や

写真3 コップのタワー

写真4 タワー積み上げ走 小学生

写真5 タワー積み上げ走 幼児

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子どもが楽しみながら意欲的に取り組む「体つくり運動」の事例

運動能力の向上はもとより,認知機能といった脳の発達,

心理的,社会的成長にも影響する。遊びを通して十分な 身体活動の機会を確保できない現代において,学校体育 の担う役割は大きい。にもかかわらず,体育に対して楽 しいと回答する割合は,学年が上がるにつれ低下する傾 向が見られた。生涯スポーツの観点からも,義務教育期 間に生涯を通じて必要とされる体力や基本的な運動能力 を身に付けさせると同時に運動の楽しさを実感し,効果 や意義を理解することが大切である。そのために「体つ くり運動」の担う役割は重要である。教員,児童生徒の 両者がねらいを共有して,本来の趣旨を生かした授業が 実施されるためには,単発のプログラムの紹介だけでな く発育発達に応じた系統的なプログラム開発と,教員が 授業準備の時間や研修を受講する機会を増やすことが求 められる。

参考文献

1) 文部省:学校体育実技指導資料第7集 体つくり運 動.2000.

2) 文部科学省:学校体育実技指導資料第7集 体つく り運動─授業の考え方と進め方─(改訂版).2012.

3) 渡部琢也,小野覚久,吉岡健二他:体育科教育にお ける体つくり運動への理解と実施状況.愛知大学体 育学論叢(22):27-38,2015.

4) 三本木温,渡邉陵由,工藤裕太郎他:学校体育にお ける「体つくり運動」の現状について.産業文化研 究25:45-52,2016.

5) 南貴大,池田拓人:学校体育における体つくり運動 の実践的位置づけに関する研究─学習指導要領改訂 を通して─.和歌山大学教育学部紀要教育科学68

(2):157-163,2018.

6) 山田明子,茅野理子:気軽に取り組める「体つく り運動」の教材開発─低学年の事業実践を通して

─.宇都宮大学教育学部教育実践紀要2:113-120,

2016.

7) 北海道教育委員会:全国体力・運動能力,運動習慣

等調査 北海道版(平成30年度),2019.

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