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渡邉  浩一郎

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Academic year: 2021

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(1)

カラシナおよびゼラニウムによる鉛ファイトレメディエーションに対する エチレンジアミン四酢酸の影響

渡邉  浩一郎

*

    小野  靖夫

**

(平成1716日受理)

Effect of ethylene diamine tetraacetic acid on Pb phytoremediation by using Brassica Juncea and Pelarfonium Zonale

Koichiro WATANABE* Yasuo ONO**

Heavy metal contamination of surface soils is prevalent at many industrial and mining sites throughout the world. Phytoremediation, using plants to extract heavy metal, such as Pb from contaminated soils, is an emerging technology.

Experiments were carried out to investigate the effect of ethylene diamine tetraacetic acid (EDTA) and Pb chelated by EDTA in vermiculite medium on growth and Pb absorption of shoots of Brassica Juncea and Pelarfonium Zonale. The shoot dry weight of P. Zonale under the conditions of medium to which EDTA was excessively given (1mmoll-1EDTA and 1mmoll-1 Pb chelated by 5mmoll-1 EDTA) was almost equal to control, but, that of B. Juncea under the same conditions was decreased to 42-71% of control. The Pb concentration of shoot of B. Juncea in the condition of 5 mmol l-1Pb chelated by 5 mmol l-1 EDTA was about 4 times higher than that in the condition of 1 mmol l-1Pb chelated by 1 mmol l-1 EDTA(E1Pb1) , and that of P. Zonale was 6 times higher than that in E1Pb1. The higher Pb concentration in the medium increased Pb absorption to shoot from the medium in the both species.

Although B. Juncea was more effective at excessive ratios of EDTA in the medium than P.

Zonale, it was suggested that B. Juncea was suitable for the Pb phytoremediation.

キーワード:カラシナ, ゼラニウム, , ファイトレメディエーション, エチレンジアミン四酢酸 Brassica Juncea, Pelarfonium Zonale, Pb, phytoremediation,

ethylene diamine tetraacetic acid

1.  はじめに

近年、植物がもつ土壌からの物質吸収能を利用した環境修復、浄化(ファイトレメディエーション)の研究 が盛んに行われている1)。ファイトレメディエーションは、客土法などの従来の汚染土壌修復法に比べて、環 境への負荷が少ない、長期的に広範囲を修復することが可能、低コストといった利点を有する。しかし、実用 化には、土壌中に蓄積した重金属などの除去対象物質を土壌から速やかに吸収し、茎葉部へ移行させて濃縮さ れることが必要である。

土壌中の重金属を植物により多く吸収させる方法としてキレート剤の添加が検討されている。例えば、エチ レンジアミン四酢酸(EDTA)の土壌への添加によりエンドウ2)、カラシナ3,4)の鉛(Pb)吸収量が増加すること、ト

* 理工学部環境マテリアル学科

** 理工学部環境マテリアル学科卒業生

(2)

ウモロコシの銅吸収量が増加すること5,6)が報告されている。一方、カラシナによる銅吸収5)、エンバク7)、オ オムギ7)の亜鉛吸収にはEDTAによる効果はみられないことも報告されている。これらのことから、EDTAに よりキレート化された重金属の吸収は、植物や元素の種類によっても異なるものと考えられる。また、キレー ト剤が植物の成長に及ぼす影響についても不明な点が多い。

そこで、本研究では、重金属集積量が高いといわれているカラシナとゼラニウムを供試して、Pbのキレー ト剤としてEDTAを用いたときの植物体の成育とPb吸収に関する基礎的知見を得るために、バーミキュラ イト培地にEDTA濃度を変えてキレートしたPbを与えた条件で調べて植物種間で比較検討を行った。

なお、Pbは、近代工業において、蓄電池、無機薬品、ハンダなどに多用されてきた。これにともなってPb による環境汚染も深刻化し、2003年2月に施行された土壌汚染対策法でも憂慮すべき元素として挙げられて おり、ファイトレメディエーションによる汚染除去技術の確立が必要と考えられている。

2.  実験方法

  供試植物として、カラシナ(Brassica Juncea 葉からし菜;㈱サカタのタネ)およびゼラニウム(Pelarfonium

Zonaleマルチブルームブライトローズ;㈱サカタのタネ)を用いた。それぞれの種子を0.5%次亜塩素酸ナト

リウム溶液で滅菌した後、栽培実験に供した。

  栽培実験には、500ml容ポリエチレン製ビーカーに市販バーミキュライトを詰め、最大容水量の60%にな るように1/2Hoagland-Arnon培養液(pH6.5)を添加したポットを用いて、1ポットあたり10個ずつ播種した。

播種後第一葉が出揃うまで、毎日最大容水量の60%になるように1/2Hoagland-Arnon培養液を供給しながら 栽培を行った。

  第一葉が出揃った後、カラシナでは各ポット7個体に、またゼラニウムでは各ポット6個体に間引きを行 い、以下に述べる処理溶液を用いて、EDTAおよびEDTAでキレートしたPb処理(以下、EDTA-Pb)を行った。

1/2Hoagland-Arnon培養液(pH6.5)に、終濃度としてEDTA,Pb0mmoll-1(対照区)、EDTA1 mmoll-1,Pb0 mmoll-1(E1区)、EDTA5 mmoll-1,Pb0 mmoll-1(E5区)、EDTA1 mmoll-1,Pb1 mmoll-1(E1Pb1区)、EDTA5 mmoll-1,Pb1 mmoll-1(E5Pb1区)、EDTA5 mmoll-1,Pb5 mmoll-1(E5Pb5区) となるように添加した処理溶液を 調製した。なお、E1Pb1区、E5Pb1区、E5Pb5区では、それぞれの濃度になるようにEDTA-2Naで調製し たEDTA溶液に所定の濃度になるようにPbを硝酸鉛で添加することによりEDTA-Pb溶液を調製した。

  処理溶液の添加は、最大容水量の 60%になるまでに添加する量が最も少ないポットの量に合わせて、すべ てのポットにそれぞれの処理溶液を供給した。また、不足が生じるポットには最大容水量の 60%になるまで 蒸留水を与えた。処理溶液、蒸留水の供給は1日おきに行った。このようにして供給されたPb量は、カラシ ナのE1Pb1区、E5Pb1区で65mg、E5Pb5区で329mg、ゼラニウムのE1Pb1区、E5Pb1区で30mg、E5Pb5 区で151mgであった。また、EDTA量はカラシナのE1区、E1Pb1区で117mgE5区、E5Pb区で590mg、 ゼラニウムのE1区、E1Pb1区で54mg、E5区、E5Pb区で215mgであった。

栽培は、播種からサンプリングまで、すべて自然光型ファイトトロン内(温度;昼27℃、夜20℃、相対湿度;

70%)で行った。

  EDTAおよびEDTA-Pb処理を各区4連で15日間行いサンプリングした。茎葉部について80℃で48時間通 風乾燥し乾物重を測定した。さらに、硝酸-過塩素酸法により湿式分解8)し、Pb濃度を原子吸光光度法で測定 した。

3.  結果

1、図2

(3)

は、処理開始時に比べて、E1Pb1区、E5Pb5区では約10〜11倍と対照区とほぼ同程度の増重がみられた。

これに対して、E1区では対照区の約71%、E5区では約42%、E5Pb1区では約49%までしか増重がみられ なかった。

一方、ゼラニウムの増重は、対照区で処理開始時に比べて約3.4倍とカラシナよりもその割合は小さかった。

しかし、E1区、E1Pb1区では対照区の約1.3倍の増重がみられ、また、E5Pb1区、E5Pb5区でも対照区と ほぼ同程度の増重がみられた。

図1 カラシナ茎葉部の成育 0

50 100 150 200 250 300

処理開始時 対照 E1 E5 E1Pb1 E5Pb1 E5Pb5

乾物重(mg個体-1

(グラフ棒中の垂線は標準偏差, n=28)

図2 ゼラニウム茎葉部の成育

0 50 100 150 200

処理開始時 対照 E1 E5 E1Pb1 E5Pb1 E5Pb5

乾物重(mg個体-1

(グラフ棒中の垂線は標準偏差, n=24)

 

3、図4に、カラシナおよびゼラニウムの茎葉部のPb濃度をそれぞれ示した。なお、対照区、E1区、

E5区の植物体のPb濃度は検出限界以下だったので省略した。

カラシナでは、E5Pb1区のPb濃度はE1Pb1区の約65%に低下したが、E5Pb5区ではE1Pb1区の約4 倍の濃度のPbを蓄積していた。一方、ゼラニウムでは、E5Pb1区のPb濃度はE1Pb1区とほぼ同レベルで あり、E5Pb5区ではE1Pb1区の約6倍の濃度のPbを蓄積した。

図3 カラシナ茎葉部のPb濃度

0 500 1000 1500 2000

E1Pb1 E5Pb1 E5Pb5 Pb濃度(μg g乾物-1

(グラフ棒中の垂線は標準偏差, n=4,  試料をポット毎に合わせて分解した。)

図4 ゼラニウム茎葉部のPb濃度

0 500 1000 1500 2000

E1Pb1 E5Pb1 E5Pb5 Pb濃度(μg g乾物-1

(グラフ棒中の垂線は標準偏差, n=4,  試料をポット毎に合わせて分解した。)

 

5、図6に、それぞれの植物の茎葉部におけるポットあたりのPb吸収量を示した。カラシナではE1Pb1

(4)

区で698μgであり、E5Pb1区では206μgと減少したが、E5Pb5区では2742μgPb吸収量はバーミキ ュライト中のPb量の増加にほぼ対応して高くなった。また、ゼラニウムではE1Pb1区、E5Pb1区では203

〜206μgとほぼ同程度であり、E5Pb5区では875μgとなり、Pb吸収量はバーミキュライト中のPb量の増 加にほぼ対応して高くなった。カラシナのE5Pb1区で Pb吸収量が低下したのは成育の低下によるものと思 われる。

物体茎葉部の成育やPb濃度に著しい低下が生じていない場合のPb吸収量のバーミキュライト中Pb量 に

.  考察

必須元素の大部分を土壌溶液から吸収するが、重金属も土壌溶液に溶解してはじめて植物に吸 収

ら れ

ニウムよりも茎葉部の乾物重が著しく低 下

ポ ッ

図5 カラシナ茎葉部のポット    あたりのPb吸収量

0 1000 2000 3000

E1Pb1 E5Pb1 E5Pb5 Pb量(μg ポ-1

(グラフ棒中の垂線は標準偏差, n=4)

図6 ゼラニウム茎葉部のポット    あたりのPb吸収量

0 500 1000 1500

E1Pb1 E5Pb1 E5Pb5 Pb量(μg ポ-1

(グラフ棒中の垂線は標準偏差, n=4)

対する割合は、カラシナでは0.8〜1.1%、ゼラニウムでは0.6〜0,7%であった。

4

陸上の植物は

される。また、土壌溶液中のPbがキレート剤により増加することも報告されている2)。そこで、土壌溶液中 のキレート剤の存在とキレートされたPbの植物による吸収について、土壌よりも系を単純化する目的で、バ ーミキュライト培地にEDTAとEDTAでキレートさせたPbを培養液とともに供給する方法により調べた。

EDTAPbはともに2価であるので、等しいモル数同士でキレート化合物EDTA-Pbを形成すると考え る。したがって、E1Pb1区、E5Pb5区ではEDTAPbEDTA-Pbとして存在するのに対し、E5Pb1 区では4mol分のEDTAが処理溶液中に余剰に存在するものと考えられる。なお、土壌溶液中のEDTA-Pb あるいは余剰に存在するEDTAを定量した報告は見あたらない。

本研究では、E1区およびE5Pb1区において、カラシナの方がゼラ

した。またPb濃度でもE5Pb1区で著しく低下した。これらのことから、カラシナの方がゼラニウムよりも 余剰のEDTAによる成育の低下を受けやすいのではないかと考えられる。Inoueら9)は、100mmoll-1EDTAを 播種後7日のトウモロコシ地上部に接触させた場合に、枯死したことを報告している。植物体のバイオマスが 減少するとファイトレディエーションの効率が低下する。また、必要以上の可溶化剤の添加は、可溶化剤によ る二次汚染を招く危険性もある。したがって、供試する植物に対応した濃度のEDTAの添加が望ましい。

一方、カラシナのE5Pb5区で与えられたポットあたりのPb量は329mgであり、松尾らの報告4)における トあたりの土壌水溶性Pb量(36mg)よりも高かったが、茎葉部のPb濃度は松尾らの結果4) (2.81mgg-1)の約 60%であった。これは、栽植密度やPbEDTAの供給方法の違いによるのではないかと考えられる。

(5)

ゼラニウムのPb吸収量に関する報告は見あたらないが、E5Pb5区では供給されたPb量はカラシナの45%

は、カラシナの方がゼラニウムよりも、過剰のEDTAによる影響を受けやすいものの、Pb

用文献

壌肥料学会:植物と微生物による環境修復,博友社,東京,2000.

ediation of lead-contaminated 3. 

4.  松 ァイトレメディエーション,土肥誌,73(6) : 769-771, 5.  佐伯和利,筑紫次郎:銅汚染土壌のファイトレメディエーションにおけるEDTAの添加効果,

6.  加によるトウモロコシ(Zea mays L.)の銅吸収と土壌及び土壌溶液中の銅

7.  y oat(avena sativa), barley(Hordeum Vulgare),

8.  76-188.

ed soils, あったが、茎葉部Pb濃度はカラシナと同程度であった。このことから、ゼラニウムの方がカラシナよりも Pbを茎葉部へ濃縮する形質を有するのではないかと思われる。しかし、Pb吸収量はカラシナの方が多かった のは、バイオマスがカラシナの方がゼラニウムよりも大きかったことによると思われる。ファイトレメディエ ーションに適する植物は、除去対象物質を茎葉部に蓄積しても十分なバイオマスが得られることが重要な形質 とされている。

  以上、本研究で

ファイトレメディエーションに適することが示唆された。今後は、土壌中に蓄積したPbの吸収に対するEDTA 等、可溶化剤の種類、添加量の影響を植物種ごとに詳しく調べるなど、Pbファイトレメディエーションに関 する基礎的知見をさらに収集する必要がある。

1.  日本土

2. J. W. Huang, J. J. Chen, W. R. Berti and S. D. Cunningham : Phytorem

soils:Role of synthetic chelates in lead phytoextraction. Environ. Sci. Technol. 31(3) : 800-805, 1997.

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Environ. Sci. Technol. 31(3) : 860-865, 1997.

尾浩一,江頭和彦:ハカラシナによる鉛除去へのフ 2002.

井上博道,

土肥誌,74(2) : 169-174, 2003 井上博道,佐伯和利:EDTA添

存在形態への効果,環境科学会誌,17(1) : 61-67, 2004.

S. D. Ebbs and L. V. Kochian : Phytoextraction of zinc b

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作物分析法委員会:栄養診断のための栽培植物分析測定法,養賢堂,東京,1976,pp1

9. H. Inoue, K. Seaki and J. Chikushi : Effect of EDTA on phytoremediation  of copper-pollut J. Fac. Agr. Kyushu Univ., 47(2), 243-250, 2003.

参照

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