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Academic year: 2021

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.私たちと環境教育

 SDGs (エス・ディー・ジーズ)という言葉をよく聞くようになりました。Sustainable Development

Goalsの略称で、「持続可能な開発目標」とも言われます。貧困、教育、エネルギー、気候変動、

平和など大きく17つの項目に分かれた国際目標で、2030年の達成を目指しています。

 誰が達成を目指しているのでしょうか。先ほどSDGsが国際目標であると書きました。という ことは、私たち一人ひとりが抱える目標だと言えます。つまり、世界中のどの国や地域に住んで いようと、どんな暮らしをしていようと、この目標達成に向けて行動し、なおかつ自分一人だけ が黙々と頑張るというのではなく、周りの人たちと、さらに国境を越えて力を合わせなければな らないのです。私たちが生きる地球は、言い換えると私たちの環境は、それほどまでに危機的な 状況にあるのです。

 環境には国境がありません。すべての人が共通して一生何かしら関わっているものです。しか し、環境という言葉を教育の現場で取り上げるとき、とても限定的なイメージを伴う環境に変わっ てしまっているような気がして、私は残念だなと思います。

 日本の環境教育の現状を考えてみましょう。世界中の様々な環境問題を知り、自分たちにでき ることに取り組もうと小学校から(もしかすると幼稚園から)環境教育がなされています。しか し、その環境教育で扱われるテーマは自然環境の保護/破壊、自然災害やエネルギー問題が多く、

個人の判断や行動に委ねるような問題解決型のアプローチが提示されることに留まっているよう な気がします。地球環境を守るために、森を大切にしよう、節電しよう、エコバッグやマイ箸を 持とうなど。日常生活で子どもたちでもできることを大人が示すというのは決して悪いことでは ありません。

 しかし、地球上では環境意識の向上だけでは解決が難しい環境問題がたくさんあると思います。

もっと大切で、本質的なことが環境教育で扱われなければならないのです。先ほど述べましたが、

環境には国境がなく、すべての人が共通して一生何かしら関わっています。よって、環境教育は 世界中の人々が同じスタートラインに立って、一生かけて生き方を考えたり、見つめ直す価値教

〜 環境教育のコーディネーターの立場から 〜

岸 本 紗也加

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育として行われるべきだと言えます。

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.コーディネーターになった理由

 私は環境教育を専門として学んできた人間ではありませんが、環境教育のコーディネーターに なりました。環境や教育に関心があったから、というよりかは、時の流れに身を任せ、自分の脳 や身体が欲するままに様々な経験をするなかで、環境教育のコーディネーターという仕事に辿り 着いたように思います。また、総合地球環境学研究所(以下、地球研)に着任当初、阿部部門長

(本冊子の「おわりに」を執筆しています)に「どんな仕事がしたいか」と聞かれ、とっさに「環 境教育です」と答えたのをはっきりと覚えています。口から自然とこぼれ出た言葉でした。自分 でも驚きました。身体が環境教育したくてウズウズしていたのかもしれません。

 環境教育がしたくなるまでの道のりは長かったように思います。もともとは英語がとても嫌い でほとんど勉強しなかったのに、なぜか外国に興味が湧いてきて、中学年生の夏休みにオース トラリアにホームステイ、高校年生の冬休みにフランス研修旅行に参加したりしました。英語 ができないのと勢いで参加したため、カルチャーショックや落ち込みがひどく、現地の方とのコ ミュニケーションがほとんど取れずに困り果ててしまいました。どちらも短期でしたが、挫折の ようなものを味わったお陰で改心できました。帰国後、英語の勉強を頑張ればがんばるほどます ます得意に(自分で言うのも変ですが)、外国のことを調べれば調べるほどもっと知りたい、もっ と交流したいと思うようになりました。

 異文化理解や多文化共生への関心が急激に高まっていった私、大学では外国語を専攻し、フラ ンスに年間留学しました。大阪大学大学院修士課程では国際協力学を専攻、大阪大学グローバ ルコラボレーションセンター(当時)の開講科目「海外フィールドスタディプログラム」にも積 極的に申し込み、中国、ベトナム、パラオ、モンゴルなど複数ヶ国をそれぞれ1週間~10日ほど 訪れました。海外フィールドスタディプログラムのテーマは「食・健康・環境を取り巻く現状と 課題」でした。外国を訪れ、地域住民や現地の研究者、学生仲間と交流する中で、現地では何が 課題なのか、解決するにはどうしたらよいのか、文系と理系の参加学生が集って毎日フィールド 調査し、ディスカッションを重ね、現地に調査成果を還元するというようなことを経験しました。

 当然ながら、大学院では授業を履修して単位を取得するほかに、論文を書かなければ卒業でき ません。私は自分でフィールドとテーマを決めて現地調査に赴き、論文を執筆しました。今ふり かえると私の論文は相当ひどいものでしたが、自分で決めたフィールド、北アフリカに位置する モロッコで経験したことが、自分の歩む道を決定する大きな要因になったと強く感じます。

 2011年のある日、一人でモロッコのある小さな村に入りました。女性たちの収入および識字能 力の獲得と生活向上について調査するためでした。(なお、モロッコの農村部では女性が働いて収 入を得たりすることはあまりありません。また若者を除いて読み書きができない女性がとても多 いです。)村で私はカウタールさん(当時、大学生)に出会いました。カウタールさんは宿もなく

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困っていた私を興味津々な顔で眺めながら(どうやら村でアジア人に会ったのは初めてだったそ うです)、家に泊まってくださいと微笑みました。のちに彼女が私の調査時の通訳と村の案内人を 努めてくれました。お別れの日が近づいたある日、カウタールさんは次のように話しました。

 「さやか姉さん、あなたは外国を旅してる。村にたった一人でやってきて、調査、研究した。世 界のなかでもごくわずかな一部の女性ができること、それをあなたは実現している。いろんな国 や地域を訪れて、あなたが見たこと、感じたことを私に教えてね。」

 生き方を常に見つめ直しなさい。彼女の言葉は私がなまけたり、だらしなく過ごしていると必 ずといってよいほど思い出されます。

 実は、カウタールさんはおそらく私の影響を受けてだと思うのですが、日本留学を夢見ていた そうです。しかし、経済的な理由や家族や周囲の反対意見もあって、諦めざるを得ませんでした。

本人は何度も泣いたそうです。現在は村近くの街、アガディールの学校でフランス語の先生をし ています。

 私は自分が世界で見聞きしたことや考えたこと、カウタールさんの言葉や生き方について、私 の思い出として内側に閉ざしてしまうのではなく、より多くの人に伝えたり、共有すべきだと考 えています。また、いろんな人から協力を得ながら、自分の生き方も含め、世界の今について考 えるきっかけをより多くの人に提供することも大切だと考えています。この想いが環境教育の実 践、地球研の研究者や研究成果と社会をつなぐ役割を担う今につながっていると思います。

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.地球研と環境教育

 私は2016年度~2018年度、地球研の近隣の高校の環境教育事業に携わりました。その近所の高 校のひとつが京都府立洛北高等学校(以下、洛北高校)です。

 地球研は地球環境問題に社会と協働で取り組む、中核的な研究機関のひとつとして2001年に設 立され、2004年より大学共同利用機関法人・人間文化研究機構に属す国立の研究所です。京都の 上賀茂にあり、近所には京都産業大学や京都精華大学があります。

 地球研には世界をフィールドに生態学、農学、歴史学、文化人類学、考古学、建築学など様々 な分野を専門とする研究者がいて、「地球環境問題はことばの最も広い意味における人間の『文 化』の問題にある」という認識のもと、人間と自然の多様なあり方の解明を通じて「地球環境学」

の構築を目指しています。

 「地球環境学」とは、地球環境と人の相互のあり方・あり様について循環、多様性、資源の3 の領域において、様々な国や地域を対象とする個々の研究成果を結合し、さらに理論化し、未来 可能性のある社会設計を実現するための学問を目指しています。(「地球環境学」に関しては、総 合地球環境学研究所(編著)の下記文献を参考にしました。『地球環境学事典』弘文堂、2010年.

『地球環境学マニュアル1共同研究のすすめ』および『地球環境学マニュアルはかる・

みせる・読みとく』朝倉書店、2014年.)この学問構築を目指すなかで、地球研は地域社会と

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の連携を推進し、次世代に向けた環境教育に取り組んでいます。

 洛北高校では約年前からスーパーサイエンスハイスクール(SSH)事業に協力し、年生約 15名が履修するサイエンスⅡ環境の授業を担当してきました。本授業では地球研から研究員を派 遣し、生徒の環境研究の問い立てから結論まで、つまり課題探求型の授業計28コマ、約1年かけ て教育的にサポートしています。洛北高校生は研究員の講義から自然・人文・社会科学の知見を 学び、自分自身の暮らしと身近な環境、あるいはグローバルな環境との関係をふりかえりつつ、

主にグループで研究課題を設定し、文献読解やフィールド調査をふまえて、最後に課題解決や改 善に向けた提案などを行っています。研究テーマは毎年、生徒たち自身が決めています。2017年 度を例に挙げますと、京都市内における都市林の植生比較、景観保護と開発、観光と生活の調和 など、地域の環境について研究がなされました。

 洛北高校生の研究成果は地球研の公開イベント「地球研オープンハウス」や「地球研市民セミ ナー」で発信しています。「地球研オープンハウス」とは、年に1度、₇月~月頃に地球研の施 設を一般公開し、地球研の研究内容や活動を小学生も含めた市民にわかりやすく紹介するイベン トです。「地球研市民セミナー」は専門用語や難解な概念を用いずに地球研の研究成果のほか地球 環境問題に関する最新の動向を一般の人びとに伝えることを目的に定期的に実施しています。こ こで紹介したオープンハウスとセミナーにおいて、地球研は洛北高校生が発表者となって研究成 果を報告し、一般市民や自治体職員、教育機関関係者や所内の研究者などから意見や助言を受け、

研究を見直す機会を設けています。

 このように地球研は高校生に向けて環境の学習と考察のサポートをし、その成果を広く社会に 発信していますが、一方で地域における環境教育の実践は「地球環境学」に対する新たな視点の 獲得や問い直しにもつながっています。

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.サイエンスⅠ環境―初めての試み

 2018年度には新たに洛北高校の中高一貫生第1学年を対象としたサイエンスⅠ環境の授業も地 球研でサポートさせていただくことになりました。洛北高校ではすでに年生を対象に通年の授 業を一緒に行ってきましたから、洛北高校の井上先生からご相談を受けたとき、つの学年も地 球研で持てるんだろうかと正直不安になりました。しかし、何事もやってみないとわからない。

洛北高校の先生方、所内の研究者と協力しながら、一緒に授業を作り上げていこう、改善したほ うがよいと思うことがあれば、次回に反映させればいい。まずはやってみよう!ということにな りました。

 なぜ1年生から地球研も一緒に授業をするのかと言えば、自主課題研究の準備を整えるためで す。これまで環境分野を選択した年生は地球研の研究者の講義に参加して、自分たちでテーマ と班を決めて、約半年の間研究をし、研究成果をポスターや論文にまとめました。しかし、多く 年生は研究を進める中で、挫折しそうになったり、もったいない状態や結果(途中で研究を

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諦めて違うテーマにする、考察が中途半端なままで終わってしまうなど)に陥っていました。原 因は様々だと思います。研究計画の立て方がわからなかった、テーマを選ぶときに先行研究をほ とんどしていなかった、研究目的の達成に相応しい手法ではなかったなど色々挙げられると思い ます。

 「失敗」を経験することも大切ですが、生徒たちには限られた時間のなかで充実した研究活動を 行ってもらいたい。年生になって研究とは何かを学びながら手探りに近い状態で研究を進める よりも、1年生の段階から研究を体験できれば望ましいと。サイエンスⅡ環境の実践から得られ た経験や反省をふまえ、「研究目的と仮説を立てること」、「様々な研究手法を知って、試して、結 果を共有すること」を主な目標としてサイエンスⅠ環境の授業を実施することになりました。

 さて、授業を行うには担当してくれる研究者が必要です。地球研で担当してくれそうな、関心 のありそうな研究者に声を掛けてみたところ、実践プログラム3「豊かさの向上を実現する生活 圏の構築」から太田和彦さん(FEASTプロジェクト)と林耕次さん(サニテーションプロジェク ト)にご協力いただくことになりました。

 サイエンスⅠ環境の授業は前半と後半に分け、各担当者のプロジェクトのテーマを生徒の研究 テーマに設定しました(自由にテーマを決めて研究するのは年生になってから)。前半は太田さ んが、後半は林さんが担当し、前半のテーマは「よい食」、後半のテーマは「サニテーション価値 連鎖から考える食・健康・環境」と「学校のトイレ」で講義をおこないました(写真1および を参照)。

 前半は文献調査、自然科学実験調査、アンケート調査、インタビュー調査の4つの研究手法に

写真 1 太田研究員による講義の様子(撮影:岸本 紗也加)

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写真 2 林研究員による講義の様子(撮影:岸本 紗也加)

写真 3 社会調査について指導する太田研究員(撮影:岸本 紗也加)

ついて解説し、生徒はやってみたい研究手法を用いて研究を実施(写真3を参照)、収集データを 分析して考察、クラス全体で発表を行いました。後半は前半で学習した内容を踏まえて、生徒が 研究計画を立て(写真4を参照)、グループで調査研究し(写真を参照)、研究レポート作成ま で指導をおこないました。

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写真 4 研究計画発表会の様子(撮影:井上 藍)

写真 5 生徒がグループで調査結果を分析している様子(撮影:井上 藍)

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.大切にしたこと

 授業の具体的な内容に関しては、太田さんと林さんのご報告が参考になりますが、ここでは授 業実施に当たり大切にしてきたことや工夫したことについてご紹介したいと思います。

 まず、授業の構成についてです。年生の自主課題研究に向けて、生徒が少しずつ研究するこ とに慣れてゆけるようにしました。そのため、前半は「学ぶこと」「学びをシェアすること」に主 眼を置いています。今回、生徒に主に学んでもらったのは研究手法です。文献調査、自然科学実 験調査、アンケート調査、インタビュー調査の4つの研究手法についてまずは基礎知識を習得し、

好きな研究手法を用いて「よい食」について調査を行い、同じテーマですが手法が異なればどん な結果になるか、異なる班の研究体験について発表し合いっこしました(時間にして50分×4 マ)。後半は「体験すること」をより重視しました。様々な手法とその結果について学んだ生徒た ちは、まずは個人で、次にグループで研究計画を立てて実験・調査、最後にレポートを書きまし た(時間にして50分×コマ)。

 次に指導体制です。4つの研究手法を生徒人が1グループになって体験しましたが、そ れぞれの調査手法を専門とする、あるいは得意とする教員、研究者、コーディネーターが付き添っ て、生徒の調査の様子を見守りました。文献調査は私が(洛北高校図書室の司書さんも手伝って くれました)、自然科学実験調査は井上先生、アンケート調査とインタビュー調査は私と太田さん で分担しました。

 またコーディネーターの私は生徒に付き添うだけでなく、寄り添うことも心がけました。毎年 出会う生徒のみなさんをよく観察したり、お話をするとわかるのですが、本当に色んな考え方、

価値観を持っています。この生徒の多様性を大切にし、生徒の関心や疑問になるべく寄り添える ように心がけてきました。いつでも私に話しかけることができたり、質問したり、相談できるよ うな環境や雰囲気づくりを意識しましたし、重要な会議や出張が授業日時と重ならない限り、毎 回授業に参加し、生徒の研究の様子を見回って(ただし監視しすぎない)、常に笑顔でいるように しました。授業中にやる気が出ないという生徒もたまにいますが、無理にやる気を出させること も、大声で叱ることもありません。どんな見方をしたり、思考に陥る傾向にあるのかメモしたり 頭の中に留めておいて、その生徒が発表するときや論文を書くときに、アドバイスしました。

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.改善すべきこと

 この1年間をふりかえると、途中で挫折してしまう生徒はほとんどおらず、おおむねチームで 力を合わせて研究体験ができていたと思います。授業の感想については学校で生徒にアンケート 調査を実施されるようで、結果が気になりますが、少なくとも、研究について新しい視点や可能 性を発見したり、研究目的や仮説を考えるときにあらゆる結果を予測したり、柔軟に想像したり することなどを経験したのではないでしょうか。生徒の皆さんには1年間かけて研究体験したこ

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とを、今度は年生になったとき思い出して、自主研究活動に役立ててもらいたいと思います。

 一方で、再検討すべき課題もいくつかありました。

 第1に、研究目的と仮説を立てるための練習があまりできませんでした。生徒にとって「研究 目的と仮説を立てること」が少し難しかったようです。悩んでいる生徒をよく見かけました。大 胆に考えてみたらいいんだよ、と言ってもよくわからないといった顔をしていました。日頃から 身の回りの出来事や環境に対して疑問や関心を持つだけでなく、似たようなテーマで他の人が研 究や調査をしているか、もし研究調査がなされているのであればどんな結果が出たのか調べて整 理して、ようやく目的と仮説が浮かんでくると思います。共同研究者になったつもりで生徒と一 緒に調べてみて、一緒に苦労できれば良かったと反省しています。私は洛北高校の図書室を何度 も訪れたことがありますが、古いものから新しいものまで多分野の図書や雑誌が揃っていて充実 していますから、有効利用できるといいと思いました。また、インターネットで研究キーワード を検索して、見つけた本や論文、記事をどんどん読んでいくこと、見つけた資料が参考・引用し ている本や資料があればそれもさらに読み進める作業時間も授業プログラムの中に盛り込めたら と思います。

 第に、研究計画を立てる、あるいは練り直す段階で、指導教員や研究者が個別にアドバイス できるような時間、面談タイムもあればよかったと思いました。個人で立てた研究計画を発表す る時間があり、発想や着眼点など非常に興味深い計画案もたくさんあったのですが、個別に回答 する時間はありませんでした。個別に返答するのであれば、最低授業1コマ(50分)は追加で必 要になるだろうと思います。発表全体に対するコメントや助言ぐらいしかできず、個々の生徒の 興味関心に沿って研究を進めてもらえるように本当に寄り添えたかどうかふりかえれば反省しな ければなりません。

 第3に、結果の示し方や考察の方法についてもっと指導すべきでした。生徒の分析・考察の作 業を観察していると、結果を円グラフや棒グラフ、あるいは表で「キレイ」に見せようとする傾 向にありました。この作業に多くの時間を割き、結果を「キレイ」に示せたら研究終了!になっ ているような印象を受けました。グラフや表は結果をわかりやすく伝えるための手段にすぎませ ん。文章で述べるだけでも間に合う場合があります。結果よりもむしろ、考察が研究のオリジナ リティが輝く大切な作業であることを、私や授業協力者の経験も交えて、次回は伝えることがで きればと思います。採用した方法を用いて得られた結果からどんなことが言えるか、考えられる か、思考を巡らせることは正直しんどいですが。

 第4に、生徒がもっと体験できればよかったことがあります。まずはテーマ探しです。サイエ ンスⅠ環境の授業では「研究目的と仮説を立てること」、「様々な研究手法を知って、試して、結 果を共有すること」を主な目標としたため、生徒でテーマ探しをすることはせずに教員と研究者 の側で予めテーマを設定し、定められたテーマ内で研究課題を見つけてもらうようにしました。

もう少し時間にゆとりがあれば、あるいは指導内容の中にうまく組み込めば、研究目的と仮説を 立てる作業と平行して生徒自身が先行研究を調べて、読み漁って、研究テーマを決定する練習が

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できれば良いと思いました。それに、生徒は文献調査、自然科学実験調査、アンケート調査、イ ンタビュー調査の4つの研究手法のうちひとつしか体験しませんでしたので、可能であればあと もうひとつぐらい、体験できればよいかもしれません。あるいは、4つの研究手法についてまと めた説明資料を配布したり、希望する生徒にセミナーを実施してもよいかもしれません。後半の 授業でかつて体験したことのない手法を用いて研究したいという生徒がいたからです。

 以上のことを次年度以降に実行するには、授業時間を増やしたり、指導内容の時間配分を調整 する必要があります。また、座談会で太田さんや林さんからもご意見がありましたが、指導者の 人数やサポート体制および期間も見直す必要があります。生徒は研究に関する様々な疑問や悩み を持ち、質問しますから、生徒のハテナにすぐにとは言いませんがなるべく時間をかけずに回答 できたり、解説できる人の存在は重要です。ここで環境教育コーディネーターの知識、情報収集 能力、ネットワークのほかにも、協力者も楽しみながら環境教育に関わってもらうための能力が 試されます。

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.これから

 通年の授業が何とか無事に終わりました。環境教育の方法や評価は様々で、まだ確立されてい ませんから、洛北高校と地球研が取り組んできた環境教育の実践は果たしてどうだったのか、他 の地域においても有効でモデル化できるのかなど、まさに検証が必要とされています。

 環境教育は人間の生き方や暮らし方に深く関わってゆく教育でなければならないと思います。

私たちは地球環境の「すべて」を学ぶことはできませんが、環境教育のコーディネーターは地球 環境と学習者をつなぐことができます。私は幸いにして大学院生のときに地域は限られています が、世界の様々な地域の環境問題について現場で知ることができただけでなく、その解決に取り 組む人びとに出会い、複数の実践活動について学ぶことができました。また、地球研には世界を フィールドに様々な見方、手法を取り入れ、地域の人たちと対話を重ねながら地球環境問題の解 決に向けて、理想の未来の実現に向けて、活動している研究者たちがいます。これら研究実践例 の数々を授業のなかで活かしながら、生徒の研究サポートだけでなく、生き方や暮らし方を問う ことができるような授業が実現できればと思いながら環境教育のコーディネーターに携わってき ました。ゴールまでの道のりはまだまだ長いかもしれませんが、これからも何らかのかたちで環 境教育事業を継承、展開できればと思います。

参照

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