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Academic year: 2021

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はじめに

著者 鈴木 紀

雑誌名 国立民族学博物館調査報告 

巻 118

ページ 1‑2

発行年 2014‑03‑31

URL http://hdl.handle.net/10502/00008597

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はじめに

鈴木 紀

国立民族学博物館准教授

 本書は,国際研究集会「世界における無国籍者の人権と支援日本の課題」の成果 の一端を,無国籍者に関する研究資料として編集したものである。同研究集会は,国立 民族学博物館の機関研究プロジェクト「支援の人類学:グローバルな互恵性の構築に向 けて」(研究代表:鈴木 紀, 研究期間:2009年10月〜2013年 3 月)の一環として2011年

2 月27日に実施された。

「支援の人類学」プロジェクトは, 国立民族学博物館の機関研究「包摂と自律の人間 学」領域に属する。このプロジェクトの特色は,現代世界を排除と包摂の動的な過程と して認識し,その過程を読み解くキーワードとして「支援」に着目する点にある。経済 のグローバル化に起因する産業構造の変動によって社会格差が世界各地に偏在するよう になり,基本的な社会サービスから排除された人々の存在が問題となっている。同時に,

こうした人々を包摂するためにさまざまな支援活動が展開している。「支援の人類学」プ ロジェクトは,こうした支援活動を民族誌的に比較検討しながら,地球規模の互恵性の 在り方を構想することを目標にしている。そのため,研究のデザインとして,「グローバ ルな互恵性の構想」と「支援のための実践人類学」という 2 つの総括研究と,フェアト レード,国際協力ボランティア,難民支援,および無国籍者支援などの支援活動に関す る各論研究を設定している。本書のもととなった国際研究集会は,各論研究の 1 つとし て実施されたものであり,プロジェクト・メンバーの陳 天璽が企画責任者となった。

 無国籍者の存在は,きわめて今日的な現象である。近代国家は,その構成員に対して 一連の権利と義務を規定するために,住民を国民として登録する国籍制度を有している。

もしある国の国籍を持つ者が,その国の外に転出せず,同じ国籍をもつ人間と結婚して,

その子供も同じ国籍を持つならば,無国籍者は発生しない。しかし,国際的な人の移動 が増加するにつれ,渡航・婚姻・出産などを契機に出身国と居住国の国籍制度の狭間に 落ちて,どちらの国にも所属しない無国籍者が発生するようになってきた。国籍は,国 家が提供する社会サービスを受給する基盤である以上,無国籍であることは最も明白な 社会的排除の一形態であるといえよう。

 無国籍者への支援は,拒絶されているサービスへのアクセスの回復を目的に,無国籍 者が居住する国のなかでおこなわれることが多い。しかし国籍の法的規定や,無国籍者 への対応は国家によって異なっているため,無国籍者への支援をおこなう者が国際的な ネットワークを築き,各国での情報や経験を共有することはきわめて有意義である。と くに日本では,無国籍者への社会的認知度が低いため,まずは問題自体を啓発し,諸外

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国における取り組みを学ぶことが急務とされている。

 その意味で本書は,時宜を得た出版といえる。日本における無国籍者問題の現状を当 事者の声に耳を傾けながら浮き彫りにしているだけでなく,無国籍者に対する支援活動 の課題をタイとフランスとの国際比較を通じて明らかにしているからである。

 同時に本書は,無国籍者を一事例として,より大きなテーマであるグローバルな支援 活動のあり方を考えるための資料としても有用である。 国立民族学博物館調査報告

SER

)として刊行される本書によって,「支援の人類学」およびグローバルな互恵性の 構築という問題への関心が広まっていくことを望みたい。

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