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真宗研究13号 012小串 侍「口伝鈔所引の往生礼讃に就いて」

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Academic year: 2021

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(1)

口伝紗所引の往生礼讃文に就いて

同 朋 大

き侍

本願寺本口伝紗の中巻に、 ﹁十入ノ願ニツキタル御釈ノ事﹂の一章、があり、その中に於て往生礼讃の十八願加減文 の﹁若我成仏十方衆生:::彼仏今現在成仏当知本誓重願:::必得往生﹂の彼仏今現在成仏に就いて、流布本には在世 成 仏 と あ り 、 元祖井宗祖は何れも世の一字を略して、在成仏とせらると断じ、その世字を略せる狸由を陳て、報身の 弥陀の浄土は報士にして、此の世間の境界と具る。その報土を表わすに裟一婆世界をあらわす世を加えるは、反って報 士をけがすから、世字を略せるものと説いている。 六 要 紗 は 御 本 書 の 後 序 の 加 減 文 に つ い て 、 ﹁ 此 世 一 字 於 一 一 其 有 無 一 非 レ 構 一 一 一 義 一 非 レ 謂 一 一 善 悪 一 ﹂ と 、 世の一字の有無について一義を立てたり、又その是非を議するが如きは全く要なし と、暗にこの口伝紗の所説に当り、 叉世の字の有無は異本に拠るものであると、 い と も 簡 単 に 片 づ け て い る が 、 口 伝 紗が之を問題として、取りあげ、議論せるはいかなる事情によるものか。 口伝紗は十八願加減文の世の字について﹁シカルニ黒谷、本願寺両師トモニコノ世ノ字ヲ略シテヒカレタリ﹂と記す 口 伝 紗 所 引 の 往 生 礼 讃 文 に 就 い て

(2)

一 二 四 元祖の筆といわれる三河桑子妙源寺所蔵の元祖真影の銘文、尾張春木の裕福寺一昨隙の附属真影の銘文、 ① ② 法然上人絵大鑑に載せる真影の銘文等は何れも世の一字を欠き、宗祖に於ても、観経集註、御本書行巻、同化巻後序、 ③ 西方指南妙に引用せるそれは、すべて世の字を略している。されば両祖ともに世の一字なきことが実証せられ、六要 口 伝 紗 所 引 の 往 生 礼 讃 文 に 就 い て が 、 現 在 、 妙所説の如く、宗祖が元祖の本を相承せることを示ぜるもので、之によって口伝紗の説述が確実であることが知られ る 。 口伝紗は世の一字、があるのは流布本であるという。往生礼讃が我が国に将来せるは天平年間であるが、建暦コ一年、 明信が善導大師の本疏具疏入部十三巻を開版せるとき、初めて版行せられたのである。正安四年、知真がこの明信版 ④ 五部九巻を開版したというから、古版本はこの二本であった様である。明信版開版の建暦三年は元祖 に 校 合 を な し 、 遷化後一年、宗祖四十一才。叉知真版の正安四年は宗祖遷化後四十年、覚如三十三一才。之によって元祖は明信版、知 真版のいずれも知らず、往生礼讃の開版とは無縁であった。宗祖は明信版開版の時四十一才であったから、或は之に 目を留めたかとも想像せられるが、その形迩もなく、一元組と同様開版本とは無関係でるった。然るに覚如並に存覚の 両師は知真版の呪功せる時であるから、口伝妙にいう﹁世流布ノ本﹂とはこの知真版を指すものと考えられる。現在 ⑤ の開版本はこの知真版によるというから、知真版に世の一字が有ったことを知る。元亨元年︵覚如五十二才︶に開版 せられたる和語障録に﹁此文ハ四十八願ノ限コ也肝也神也四十八字−一結ヒタル事ハ 是故也﹂と、世の一字が あ る か ら 、 四十八字となって四十八願に相応すると、明かに世一字を有する知真版を依用せることを立証している、 この外、明義進行集巻二、長楽寺隆寛の事を記すところに 叉浄土ノ法門ノ至極詮要トテノタマヒシハ若我成仏十方衆生:::彼仏今現在世成仏当知本誓重願:::必得往生 信 ヲ ス 、 ム ル コ ト ハ コ ノ 文 ニ 有 リ コ ノ 釈 道 理 極 成 ノ ウ へ 文字又四十入 マサシクカスニアタレリ 定 メ テ フ

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カキコ、ロアルヘシ 依テカタノ\ 信ヲモヨオスモノナリ ﹁今現在世成仏﹂とあって、之を立証している。之によって当時一 とあり、同書第三巻、出雲路上人覚愉の条にも、 般、殊に浄土異流が何れも世の一字を有する、知真版を依用せることを知る。 宗祖遷化の後、有力な門弟を中心として、各地に教団が結成せられ、何れも己が教団の正しき法門伝承者によるこ と を 明 か に し 、 以て教団の強固とその維持に力を尽したものである。 即 ち 本 願 寺 教 団 に あ っ て は 、 口伝紗の目頭に ﹁ 本 願 寺 驚 聖 人 如 信 上 人 − 一 対 シ マ シ ノ \ テ オリノ\ノ御物語ノ条々﹂といい、改邪紗の奥に﹁祖師本願寺聖人面授 日決子先師大綱如信法師之正旨 報土得証之最要也 余壮年之往日 呑従受三代黒谷本願寺大綱伝持之血脈以降鎮 所蓄二尊輿説之目足也﹂と記し、元祖、宗祖、如信の三代相伝の法門を伝持せる趣を明かにし、高田門徒は元祖、宗 祖、真仏の次第、横曾根門徒は元祖、宗祖、性信の相伝たる由を表明したが、各地の小門徒に於ても、恐らくその指 導者、中心人物の相承系譜を明かにしたものと考へられる。 口伝紗は上中下三巻より成り、上巻は最初に宗祖の元祖の意を承けて、聖覚法印のもとに赴くことを記し、宗祖と 聖覚法印との関係が深高なることを明すと同時に、宗祖が元祖の真意を伝持せることを示し、之れより進んで光明名 号の両重因縁によって、他力の仏智信心を獲得する由を明かにし、之によって、善悪の二業も報土得生のためには、 全く障ともならず、助けともならずと決し、善悪の凡夫等しく浄土に往生すべき趣を陳べている。 叉下巻に於ては獲信以後の念仏行者の行状をあかし、信の上の称名の事、毎事勇猛の振舞は虚仮のものにして、凡 夫の本心からは不可能なりといい、小罪といえども犯すべからず等といえるは、これ又不可にして、小罪あらば改悔 口 伝 紗 所 引 の 往 生 礼 讃 文 に 就 い て 一 一 一 五

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ロ 伝 紗 所 引 の 往 生 礼 讃 文 に 就 い て 一 一 一 六 すべしとなし、最後に﹁サレハ平生ノトキ 一念往生治定ノウへノ 仏恩報謝ノ多念ノ称名ト ナ ラ フ ト コ ロ

道理顕然ナリ﹂と、信心獲得の行者は報謝の行として称名念仏し、その他力の信心は平生の時獲得すべきものと、覚 如の教学たる平生業成の義を宣明したのである。きれば上下二巻は官頭の﹁本願寺の聖人如信に伝える条々﹂といえ る語に応じて、宗祖より如信に伝える教法の他力信心と信後の姿を明せるものである。宗祖の教法を明かにすること は伝承者の教法を宣明することで、宗祖と伝承者の教法の同一たることを証明するものである。この教法の伝承を鮮 明することと、宗祖と元祖との関係即ち教法相伝を明瞭にする努力がなされた。之の努力は浄土異流に対するもので あ る 。 口伝紗は法門を口決伝授する書であるから、当然この元祖、宗祖、如信の相承を物語るべき筈である。 冒頭の語からいえば、宗祖、如信の相承関係のみにて、元祖と宗祖との関係は−記載せざる様に考えられる。然らば この元祖と宗祖の相伝の趣を口伝紗の何処に記すかといえば、それは中巻に具体的に物語っている。 中巻は最初に鎮西派祖の聖光一房弁阿の事柄を記載し、宗祖が聖光一房を引導して元祖の門に入らしめたが、聖光房は 元祖より勝他、利養、名聞の三者を捨つべき様、元祖より訓誠せられたる趣を陳べ、中巻の終には西山派祖の善慧房 証空と宗祖との体失往生 不体失往生の論争をかかげ、元祖の批判を受けて体失往生は諸行往生の機、不休失往生は 念仏往生の機にいうべきものと決せる由を述べ、中巻の始終に浄土の両派祖の何れも、か、元祖の正意を得ず、共に元 祖の批判、訓誠を受くることは、そのまま宗祖が元祖の真意を得たることを示し、元祖、宗祖の相承系譜を実証せる も の で あ る 。 この両物語の中間に於て、恵信尼消息に基づいて元祖は勢至、宗祖は観音の化身という夢想、及び聖徳太子が本師 弥陀の垂迩たる宗祖を敬礼せる由の、蓮位房の夢想を記して、元祖並に宗祖が共に本師弥陀、或は観音、或は勢至の 浄土の菩薩の化身たる関係にあることを明かにして、元祖と宗祖との関係は、元祖と西鎮両派祖との関係と天地雲泥

(5)

の差異があることを物語っている。 市して往生礼讃の加減文の一章は中巻・聖光房の物語の後、宗祖の観音の化身を表はす前に記され、史実としては 問題をもっ両派祖の物語と共に、元祖並宗祖の用いたる加減文は四十七字の世の一字無きものにして、世の一字を加 へて四十八字とし、之が四十八の本願に相応するものと、異常にすら感、ぜられるほど、珍重する異流の加減文と相異 ることを示し、之を以て宗祖こそ元祖の正しき教法伝持者たることを、明かにせんとしたのである。 要するに、浄土異流の人々の如く、元祖より批判又は訓誠を受くることなく、元祖宗祖両師が浄土の菩薩の化身、 宗祖が正しく元祖の的伝者たることをあらわすのが中巻である。きればかかる中巻の趣旨から、念仏の根本を表わす 加減文に於てすら、元祖並宗祖と異流とが相違することを表わさんとして、種々解釈を施したものと考えられる。 註 ① 真 宗 学 報 二 十 一 号 、 る 。 ③ 観 無 量 寿 経 集 註 ︵ 一 一 書 ︶ 十 三 紙 。 ①親驚聖人全集本西方指南抄上末 P 八 八 、 山上正尊 コ ニ 河 三 筒 寺 巡 り ﹂ に よ 二 、 同 下 末 P 三 五 七 。 ④上杉文秀著﹁往生礼讃講要 L に よ る 。 ⑦ 上 杉 文 秀 著 ﹁ 往 生 礼 讃 講 要 ﹂ に よ る 。 ⑥ 本 願 寺 の 三 代 伝 持 の 相 伝 系 譜 に 、 如 信 を 加 え た 事 情 は 東 海 仏 教 六 輯 所 収 ﹁ 覚 如 上 人 の 三 代 伝 持 ﹂ に 詳 述 せ り 。 同 下 末 P 一 一 一 一 口 伝 妙 所 引 の 往 生 礼 讃 文 に 就 い て 七

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