• 検索結果がありません。

適応指導教室に通級する不登校生徒の行動変容過程 [ PDF

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "適応指導教室に通級する不登校生徒の行動変容過程 [ PDF"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)適応指導教室に通級する不登校生徒の行動変容過程 ∼生徒の状態理解を通した学校復帰への援助を目指して∼ キーワード:適応指導教室、不登校、変容過程、学校復帰、援助 人間共生システム専攻 山辺 麻紀 Ⅰ 問題と目的 適応指導教室とは、様々な課題を内包した不登校児童. の変容や学校との関わりをあわせてみることで、その変 容過程の全体像を捉え、どのような援助が有効であるか. 生徒を受け入れ、小集団の中で発達を促すという発達促. について検討することとする。. 進的な支援の取り組みが期待されている治療教育的施設. Ⅱ研究1:適応指導教室での生徒の行動変容過程( 領域別). である(森田、2001;井野・平野、2001) 。. と家庭での行動変容との関連. 米田(1998)は、適応指導教室での臨床的実感をもと. 【目的】. に「情緒が安定し、自分の気持ちが言えるようになった」. 適応指導教室における不登校生徒の行動を領域で分類し、. 「集団活動ができ、対人関係が円滑になった」などの変. それぞれの領域における行動変容過程を詳細に検討する。. 容が生徒に見られたことを報告している。また谷井・沢. また、適応指導教室と家庭での行動変容を比較する。. 崎(2002)も、コミュニケーション能力や学習について. 【方法】. 向上が見られたことを報告しており、適応指導教室に通. 調査対象及び手続き;. 級する生徒たちが、様々な変容を見せていることがわか. ①A市適応指導教室に通級する生徒 7 名;ボランティア. る。これらの変容がどのような過程をたどるのかについ. 指導員として1/Wの参与観察を行い、それぞれの生徒. て、山辺(未発表)は情短施設での二橋ら(1977)の研. について、行動記述を行った。 (6 月∼12 月). 究を参考に、適応指導教室での事例を対象として、不登. ②A市適応教室指導員 2 名;指導員 2 名と筆者、計 3 名. 校生徒の変容過程を指導員の視点から検討した。その結. で、各生徒の様子について 3 件法で評定した。 (7・12 月). 果、指導員との関わりが安定したあと他の生徒との関わ. ③対象生徒の保護者 7 名;各生徒の入級時と現在の様子. りへと移行すること、また指導員など周囲の人に対する. について 3 件法で評定を求めた。 (12 月). 能動性が見られたあと活動への能動性がみられることが. 調査材料;. 示唆された。. ①適応指導教室における行動チェックリスト. 下山・須々木(1999)は、適応指導教室では、どのよ. 山辺(未発表)で用いた行動チェックリストに、田嶌. うなタイミングでどのようなグループをつくるか、そし. (2005)の「 『遊び』の形態チェック」 、 「『遊び方』チ. てそのなかで生徒一人ひとりの動きをどれだけ支えられ. ェック」を参考に項目を改定した。指導員 2 名と筆者の. るかという、生徒の状態を把握しながらの援助が重要で. 計 3 名で内容の妥当性を検討し、場への適応、コミュニ. あることを指摘している。また柳生(2003)は、不登校. ケーション(対指導員、対生徒) 、自己表現、学習活動、. の子どもたちの多くは「学校に行きたい」という時期が. 遊び活動の 5 領域 48 項目を選定した。. 必ずやってくるとし、こうした子どもたちの兆候を見逃. ②家庭における行動チェックリスト. さずに捉えることが必要であり、そのために、子どもの. 田嶌(2005)の「不登校・ひきこもり状態評定表」 、. アセスメント、児童生徒理解を深め、信頼関係を醸成す. 小林・鈴木(1990) 「症状・行動要因」 、小澤(2005)の. ることの重要さを指摘している。つまり、その時々の生. 「状態像チェックリスト」を参考に作成し、指導員 2 名. 徒の状態を理解したうえで、今、生徒にどんなことが必. と筆者の計 3 名で内容の妥当性を検討し、生活リズム、. 要なのかを見立てつつ関わることが必要であり、そのた. 家族とのコミュニケーション、活動範囲、学習活動、遊. めには、生徒たちがどのような変容過程をたどるのかに. び活動の 5 領域 23 項目を選定した。. ついて理解することが生徒の現在おかれている状態を把 握する一助になると考えられる。. 【結果と考察】 分析1:適応指導教室における生徒の行動変容(領域別). 本論文の目的. 全生徒の 7 月・12 月の評価点を合計した得点を算出し、. 本論文では、適応指導教室における不登校生徒の変容. 領域ごとに得点の高いものから並びかえた。(逆転項目. 過程を詳細に把握することを目的とする。また、家庭で. (※)については、得点を逆転して合計した。 )これは得.

(2) 点が低いほど生徒たちが現時点ではできていないことを. とが推察される。また否定的感情の表出後に、自己主張. 示す。つまり得点が低いほどできるようになるまで時間. の表出がみられると考えられる。この移行は、どのよう. を要すると推測される。. な自分でも安心してだせるようになる過程と考えられた。. Table2. (学習活動)指導員からの促しで学習に向かったり質問. 適応指導教室における生徒の行動項目の合計得点. 場 指導員が側にいると、他の生徒と同じ時間・場所で活動する。 適 へ 指導員が側にいなくても、他の生徒と同じ時間・場所で活動する。 応 の ※孤立的な空間で過ごすことが多い。(一人で過ごすことが多い。) ※指導員から話しかけられても反応をしめさない。 ※他の生徒から話しかけられても反応をしめさない。 指導員の冗談や軽口に笑顔をみせる。 指導員から話しかけられると、頷く・首をふるなどで意思表示をする。 指導員から話しかけられると、言葉で意思表示をする。 他の生徒から話しかけられると、頷く・首をふるなどで意思表示をする。 用事があるときに、指導員に対して自分から話しかける。 コ 指導員から話しかけられると、気軽に応える。 ミ 他の生徒から話しかけられると、言葉で意思表示をする。 ュ 他の生徒の冗談や軽口に笑顔をみせる。 ニ ケ 指導員と雑談をする。 ー 自分から、指導員に挨拶をする。 シ 指導員に軽口をたたく(冗談をいう)。 ョ 他の生徒から話しかけられると、気軽に応える。 ン 用事があるときに、他の生徒に対して自分から話しかける。 他の生徒と雑談をする。 他の生徒に軽口をたたく(冗談をいう)。 指導員に対して、身体的な接触をともなった関わりをする。 一人でいる他の生徒に話しかける。 自分から、他の生徒に挨拶をする。 集団でいる他の生徒に話しかける。 他の生徒に対して、身体的な接触をともなった関わりをする。 肯定的感情(嬉しい・楽しいなど)を表出する。 促されると、感想や意見などを言う。 自 自分から、感想や意見などを言う。 己 否定的感情(悲しい・怒ったなど)を表出する。 表 自分の意見を主張する。 現 不安や心配事などを話す。 自分の意見を主張しながら、相手の意見も認められる。 否定的感情を表出したあと、相手の反応も受けとめる。 ※指導員に促されても、学習にとりくむことができない。 指導員が促すと、学習にとりくむ。 指導員が尋ねると、わからないところなどを質問する。 学 自分がする学習課題を決めている。 習 活 好きな科目だけ、集中的にとりくむ。 動 時間いっぱい学習することができる。 自分から、指導員にわからないとこなどを質問する。 他の生徒と、教え合いをする。 他の生徒に、わからないところなどを質問する。 ※遊びに対して、無関心である。 遊 誘われると、トランプ・折り紙などの創造的な遊びをする。 び 誘われると、卓球・バドミントンなどの身体活動性のある遊びをする。 活 自分から誘って、卓球・バドミントンなどの身体活動性のある遊びをする。 動 遊びのリーダーシップをとる。 自分から誘って、トランプ・折り紙などの創造的な遊びをする。. 125 117 95 123 120 117 117 116 115 114 110 110 104 101 97 93 91 81 81 73 62 61 59 55 53 109 108 99 97 91 74 70 62 120 118 110 98 94 91 89 44 42 124 119 105 64 63 61. をしたりという受動的な取り組みから、学習課題を自分 で決めてきたり、自発的に質問したりといった能動的な 取り組みに移行することが推察された。 ( 遊び活動) 周囲からの働きかけに遊びに応じるといった 受動的な参加から、自分から働きかけて遊んだり、リー ダーシップをとったりという能動的な参加へと移行する ことが推察された。 分析2: 適応指導教室と家庭での行動変容の比較 適応指導教室での変容と家庭での変容を領域別に検 討した。なお生徒C、Eについては、昨年度からの入級 であり、家庭との評価と対応してみることができないた め、除外した。適応指導教室で各領域にわたって向上が 見られた、つまり全般的に能動的な行動が多く見られる ようになった生徒D、F、Gについて、家庭ではもとも と高い評価であった生活リズムに向上が見られた。 一方、 適応指導教室でほとんど変容がみられなかった生徒A、 Bについて、家庭では、もともと低い評価であった生活 リズムが低下していた。これより、家庭での規則正しい 生活と、適応指導教室での行動の向上が関連している可 能性が示唆された。従って、本人の体調に気を配り、家 庭と連絡を密にとることで、本人の身体面・生活面での ケアを心がけることも本人への援助として重要だと考え. (場への適応)指導員がいると活動に参加できる状態か. られる。. ら、指導員がいなくても安心して参加できるようになる. Ⅲ研究 2;適応指導教室での生徒の行動変容過程( 段階的). ことが推測された。この移行は、適応指導教室の場の中. と学校との関わり 【目的】. で安心して過ごせるようになる過程と考えられた。 (コミュニケーション) 相手からの働きかけをうけいれ、や. 適応指導教室での不登校生徒の一事例を縦断的に捉える. がて気軽に応じるようになるといった受動的なやりとり. ことで、生徒の行動変容過程を段階的に把握し、各段階. から、自分から相手に働きかける、やがては気軽に働き. で学校との関わりをどのようにもっているか、またそれ. かけるといった能動的なやりとりへと移行することが推. にあたって指導員のどういった援助が有効であるのかに. 測される。この際、指導員とのコミュニケーションの方. ついて検討する。. が他の生徒とのコミュニケーションよりも先行している。. 【方法】. 詳細にみると、指導員に自分から働きかけるようになる. ①D子(中学 3 年女子)に対して、ボランティア指導員. と、他の生徒からの働きかけをうけいれるようになり、. として1/Wの参与観察を行った。 (7 月∼12 月). 指導員に気軽に働きかけるようになると、他の生徒から. ②A市適応指導教室の指導員(1名)に対して半構造化. の働きかけに対して気軽に応じ、働きかけるようになる. 面接(入級の経緯・学校との関わり・変容したと感じた. ことが推測される。この移行は、対人関係スキルが向上. 点)を行った。 (7 月・12 月). し、関係が広がる過程と考えられた。 (自己表現)肯定的感情など周囲から受け入れてもらい やすい形のみでの表現から、否定的感情など周囲から受 けいれてもらいにくい形での表現もできるようになるこ. 【結果と考察】 (行動変容の経過と学校との関わり) プライバシー保護のため、詳細については省略する。.

(3) D子の行動を、第一研究で得られた変容過程の仮説をも とに月別にまとめ、Table3 にあらわした。. またこの時期には学習に対するとりくみが悪くなっ た。これは指導員に対する反抗とも言えるが、学習とい. Table3 D子の行動変容過程 7. 場所で活動する。 場 指導員が側にいると、他の生徒と同じ時間・ 適 へ 指導員が側にいなくても、他の生徒と同じ時間・ 場所で活動する。 応 の ※孤立的な空間で過ごすことが多い。( 一人で過ごすことが多い。). コ ミ. ュ. ニ ケ. ー. シ. ョ. ン. 自 己 表 現. 学 習 活 動. 遊 び 活 動. ※指導員から話しかけられても反応をしめさない。 ※他の生徒から話しかけられても反応をしめさない。 指導員の冗談や軽口に笑顔をみせる。 指導員から話しかけられると、頷く・ 首をふるなどで意思表示をする。 指導員から話しかけられると、言葉で意思表示をする。 他の生徒から話しかけられると、頷く・ 首をふるなどで意思表示をする。 用事があるときに、指導員に対して自分から話しかける。 指導員から話しかけられると、気軽に応える。 他の生徒から話しかけられると、言葉で意思表示をする。 他の生徒の冗談や軽口に笑顔をみせる。 指導員と雑談をする。 自分から、指導員に挨拶をする。 指導員に軽口をたたく( 冗談をいう) 。 他の生徒から話しかけられると、気軽に応える。 用事があるときに、他の生徒に対して自分から話しかける。 他の生徒と雑談をする。 他の生徒に軽口をたたく( 冗談をいう) 。 指導員に対して、身体的な接触をともなった関わりをする。 一人でいる他の生徒に話しかける。 自分から、他の生徒に挨拶をする。 集団でいる他の生徒に話しかける。 他の生徒に対して、身体的な接触をともなった関わりをする。 肯定的感情( 嬉しい・ 楽しいなど) を表出する。 促されると、感想や意見などを言う。 自分から、感想や意見などを言う。 否定的感情( 悲しい・ 怒ったなど) を表出する。 自分の意見を主張する。 不安や心配事などを話す。 自分の意見を主張しながら、相手の意見も認められる。 否定的感情を表出したあと、相手の反応も受けとめる。 ※指導員に促されても、学習にとりくむことができない。 指導員が促すと、学習にとりくむ。 指導員が尋ねると、わからないところなどを質問する。 自分がする学習課題を決めている。 好きな科目に、集中的にとりくむ。 時間いっぱい学習することができる。 自分から、指導員にわからないとこなどを質問する。 他の生徒と、教え合いをする。 他の生徒に、わからないところなどを質問する。 ※遊びに対して、無関心である。 誘われると、トランプ・ 折り紙などの創造的な遊びをする。 誘われると、卓球・ バドミントンなどの身体活動性のある遊びをする。 自分から誘って、卓球・ バドミントンなどの身体活動性のある遊びをする。 遊びのリーダーシップをとる。 自分から誘って、トランプ・ 折り紙などの創造的な遊びをする。. をみせ、指導員への信頼感がさらに増すと考えられる。. 9. 10. 11. 12. ○. う活動の特性、つまり“進路を想起させ、さらに自分の. ○. できなさに直面させられるもの”であるためとも考えら. ○. れる。しかし、指導員がそのとりくみの悪さを責めず、. ○ ○ ○. できるところを肯定的に評価したことで、取り組みが悪. ○ ○ ○. いながらも投げださずに続けることができたと思われる。. ○ ○. 第四期( 11・ 12 月) : 指導員に攻撃性を向けながらも内面的. ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○. な気持ちを表現する時期 他の生徒に気軽に働きかけることができるようにな った一方で、否定的感情の表出がしばしば見られた。こ れは、自分が受け入れてもらえると集団への安心感をも. ○ ○. てたことで、抑制していた感情があらわれたのではない. ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○. た態度で返すことで、落ち着きをみせ、周囲の状況に気 ○ ○ ○ ○. ○ ○. かと思われる。指導員がその感情をうけとめつつ安定し づくことができたのだと考えられる。また指導員に対し て不安などの気持ちをうちあけるようになった。 これは、 指導員に対しての安心感が十分にもてたことで、指導員. ○ ○. に対する信頼感が形成されたためであると考えられる。 ○. また、学習に対するとりくみが向上した。これは、進路. これより第一期(7 月) 、第二期(9 月) 、第三期(10 月) 、. 選択がせまり、学習に対する意欲が高まったと同時に、. 第四期(11・12 月)に分け、各期の特徴をまとめた。. 指導員が根気強く教える中で、できる部分が増えたこと. 第一期( 7月) : 指導員の働きかけに気軽に応じる時期. で、自己の評価があがったとも考えられる。. 指導員からの働きかけに気軽に応じ、受け入れられや. 学校との関わり. すい形での表現が多く、学習に対するとりくみもよかっ. 本人と学校とのつながりを促進するためには、本人の. た。指導員の働きかけに対して除々に安心感をもてるよ. 進路に対する動機が高いということ、指導員からの励ま. うになっている一方で、完全には警戒心をとけず、少し. しを通して自己肯定感が高まること、学校側との連携が. ずつ自分をだしていっている時期と考えられる。. とれることが重要であると思われる。さらに、相談室登. 第二期( 9月) : 指導員に対して自発的にかかわる時期. 校という学校復帰にいたった場合には、学校側からの本. 指導員に対して自発的な関わりがみられるようにな った。これは、指導員に対して自分をより理解してほし. 人のケアが重要になってくると思われる。 Ⅳ 総合考察. いという気持ちのあらわれであり、その気持ちを指導員. 適応指導教室における不登校生徒の行動変容過程を. がうけとめることで、よりその表現が活発化していくと. 概観すると、適応指導教室の中で安心して過ごせるよう. 考えられる。また指導員を介して他の生徒からの働きか. になる過程、対人関係のスキルを向上させていく過程、. けに応じる姿が見られた。これは指導員との関係が安定. 自分を安心してだせるようになる過程といった領域があ. したことで、他の生徒と関わったり、遊んだりすること. り、加えて、それぞれ受動から能動に発展したと考えら. に対しての不安が軽減されたからだと考えられる。. れる。また、それらの過程に付随して活動(学習・遊び). 第三期( 10月) : 指導員に対して軽い攻撃性を向ける時期. に対する自発的な取り組みが見られた。 これらを踏まえ、. 他の生徒からの働きかけに気軽に応じる一方で、指導 員に対してやや攻撃性をみせるようになった。これは、. 指導員のどういった援助が各過程を促進するうえで有効 であったか、各過程にそって検討することにしたい。. 指導員への信頼感が増してきたことのあらわれであると. 教室の中で安心して過ごせるようになる過程では、指. 同時に、指導員が自分をどこまでうけいれてくれるのか. 導員が受容的に接すること、また指導員が間にたちなが. を確認しているためと思われる。指導員がその行動にふ. ら他の生徒とのやりとりを促していくことが、援助とし. りまわされず安定した態度をとり続けることで落ち着き. て有効であったと考えられる。次に、対人関係のスキル.

(4) を向上させていく過程では、自発的な関わりを尊重する こと、また攻撃性が向けられた際にも、本人の気持ちを うけとめつつ安定した態度で接することが、援助として 有効であったと考えられる。最後に、自分をだせるよう になる過程では、指導員が、肯定的な感情はもちろん、 否定的な感情に関しても本人の気持ちに添いながら返し、 不安などの内面的な感情に関して理解を示しながら接す ることが、援助として有効であったと考えられる。そし て、これらの援助の過程で見られたのは、指導員との安 定した二者関係が安定を経たあとで、指導員を介して他 の生徒や集団とつながるという、二者関係から三者関係 への広がりであった。つまり、指導員との関係を安全基 地としてもつことで、安心感をもって他の生徒との関係 に応じることができるようになるのだと思われる。 しかし、教室でいくら適応的であったとしても、根本 的な身体面に乱れがある場合には注意せねばならない。 田嶌(2003)は「生理、安全、所属、承認、自己実現」 というマズローの欲求階層説(Maslow、1954)を見立 ての基本として提案し、生理的・安全欲求をまず満たす ことの重要性を示唆している。家庭での生活リズムなど が悪いとの評価であった生徒が、適応指導教室でほとん ど変容をみせなかったことからも、基本的な身体面のケ アについて、気にかけておくことは重要だと思われる。 そのうえで、上記のような過程が適応指導教室でみら れると、その過程を通して自己肯定感をたかめ、将来(学 校復帰・進学)に対する見通しをもてるようになるのだ と思われた。しかし、この際に、生徒が動くのを待って いるだけでは学校復帰にいたらない場合が多いと推察さ れるため、学校側との連携をとりながら、学校側からの 本人への働きかけを求めることも重要であると思われる。.

(5)

参照

関連したドキュメント

( 同様に、行為者には、一つの生命侵害の認識しか認められないため、一つの故意犯しか認められないことになると思われる。

自閉症の人達は、「~かもしれ ない 」という予測を立てて行動 することが難しく、これから起 こる事も予測出来ず 不安で混乱

話者の発表態度 がプレゼンテー ションの内容を 説得的にしてお り、聴衆の反応 を見ながら自信 をもって伝えて

個別の事情等もあり提出を断念したケースがある。また、提案書を提出はしたものの、ニ

児童生徒の長期的な体力低下が指摘されてから 久しい。 文部科学省の調査結果からも 1985 年前 後の体力ピーク時から

しかしながら、世の中には相当情報がはんらんしておりまして、中には怪しいような情 報もあります。先ほど芳住先生からお話があったのは

適応指導教室を併設し、様々な要因で学校に登校でき

基準の電力は,原則として次のいずれかを基準として決定するも