中国と日本の中学生におけるストレッサー、ストレス反応及びソーシャルサポートの在り方の比較研究 [ PDF
4
0
0
全文
(2) 考察:. 日本の生徒にとってストレッサーとしてよく経験してい. ストレッサー頻度と強度において、中国では、集団行動. るのは、親との関係と学業に関することから来るものが多. 因子と学校一般因子が拙出され、中国の生徒は日頃の皆で. く、中国の生徒にとって友人と教係関係からくるものが多. 行動すると思われることが頻繁にストレッサーとして経験. いことが考えられる。. している。教師と授業関係といった学校内要因を全般的に. ストレッサー強度の比較では中国の方が高かった(F(1,. ストレッサーとして捉えている。一方、日本で教師関係と. 1206)=56.78,P<.01) 。下位尺度の比較では親関係因子において. 成績・将来因子が拙出され、日本の生徒は教師関係と成績. 日本の方が高く(F(1,1206)=12.59,P<.01)、友人関係、教師関. 関連からくるものをちゃんと分けて捉えている。. 係、学業関係において中国の方が高かった(F(1,1206)=. ストレス反応因子では、中国においては疲労反応因子と、. 110.36,P<.01) 、 (F(1,1206)=67.41,P<.10) (F(1,1206)=153.76,P<.01) 。. 日本における心身反応が構造的に違っている。中国の学生. 日本において、日ごろ「親が自分の要求を聞きいれてく. 達が体の疲れを通して出していると捉えているのが特徴的. れなかった」といった親との関係から主なストレッサーに. といえる。日本では、心身症状から出していると捉えてい. なっていることが考えられる。中国の生徒にとって、 「友達. るのが特徴的と言える。. に自分のことを間違って理解された」といった友人関係、. ソーシャルサポートにおいて、中国と日本では共行動的. 「先生に叱られた」といった教師関係、 「試験や成績のこと. サポート、情緒的サポートと情報的サポートという同じ命. が気になった」といった学業関係からストレッサーになっ. 名な因子が拙出されている。大体の捉え方が似ているが、. ていると推測できる。. 細かいところで違っている。. ストレス反応の比較では日本の方が高く(F(1,1206)=. 研究2―中学生におけるストレッサー、ストレス反応及び. 67.75,P<.01) 、下位尺度の比較では心身反応以外の因子では日. ソーシャルサポートの関連についての検討. 本の方が高かった(F(1,1206)=93.48,P<.01)(F(1,1206)=. 目的:研究1で因子構造の違いから十分説明できない中. 70.11,P<.01) (F(1,1206)=19.38,P<.01) 。. 国と日本の中学生の現状をさらに明らかにする。. ソーシャルサポートの比較では、全対象及び全因子にお. 方法(1)対象と質問内容は研究1と同様。. いて中国の方が高かった(P<.01) 。. (2)分析時は研究1と異なり、日本と中国のデー. 中国の学生の方がストレッサーを強く感じているが、サ. タをあわせて分析する。. ポートの方も高いことにより、ストレス反応は低い結果を. 結果と考察 因子構造. 示したと考えられる。日本の中学生はストレッサーを比較 的に感じていないが、サポートの方も低いことで、ストレ. (プロマックス回転後) 表2をご参照. 表2 因子とa係数. 項目例と項目数. ストレス反応 a.921 抑うつ反応 a.891 疲労反応 a.785. 自分が他人よりも劣っている気持ちになる(9) 首や肩がこる(4). 不機嫌・怒り反応 a.839 心身反応 a.637 ストレッサー頻度 a.801. 攻撃的になる(4) とくに病気ではないのに熱が出る(2). 友人関係 a.730 学業関係 a.630 親関係 a.640. 友たちとけんかをした(5) 授業の内容に興味が持てなかった(3) 家の決まりを守なければならなかった(6). 教師関係 a.677 ストレッサー強度 a.875 親関係 a.788 友人関係 a.769. 先生が自分を理解してくれなかった(3). 学業関係 a.630 教師関係 a.777 サポート a.923. 試験や成績のことが気になった(6) 先生が自分を理解してくれなかった(2). 共行動的 a.908 情緒的 a.818 情報的 a.640. 一緒に遊びに出かけたりする(8) 怪我や病気の時に心配してくれる(3) 進路や勉強のことでアドバイスしてくれる(2). ス反応は高い結果を示したと考えられる。 表3 中国と日本の比較結果 ストレス ストレッサー頻度 強度 サポート 中国<日本** 中国=日本 中国>日本** 中国>日本** ストレス反応 抑うつ反応 疲労反応 不機嫌・怒り反応 心身反応 中国<日本** 中国<日本** 中国<日本** 中国=日本 ストレッサー頻度 友人関係 学業関係 親関係 教師関係 中国>日本** 中国<日本** 中国<日本** 中国>日本** ストレッサー強度 親関係 友人関係 学校一般 教師関係 中国<日本** 中国>日本** 中国>日本** 中国>日本** ソーシャルサポート 共行動的サポート 情緒的サポート 情報的サポート 中国>日本** 中国>日本** 中国>日本**. 親が自分の要求を聞いてくれなかった(7) 仲のいい友達であることでうまくいかなかった(6). Ⅰ、国を要因とした各尺度間比較(表3) Ⅱ、ストレッサー、ストレス反応及びソーシャルサポート. ストレッサー頻度の比較では中日の間は差がみられなか. の関連. った(F(1,1206)=2.09,n.s)。下位尺度の比較では親関係と学. ストレッサー頻度と強度をそれぞれ高群(上位 15%)と. 業因子は日本の方が高く(F(1,1206)=11.09,P<.01) (F(1,1206). 低群(下位 15%)に分けて、ストレス反応とソーシャルサ. =94.13,P<.01) 、友人関係と教師関係においては中国の方が高. ポートを比較検討する。. かった(F(1,1206)=79.70,P<.01)(F(1,1206)=94.18,P<.01)。. 2.
(3) 1、ストレッサー強度の高低群の比較を通して(表4). ②ソーシャルサポート: (中国)父親、母親、教師からの. 日、中それぞれ比較した結果、高群のストレッサー頻度. サポートからのサポートにおいて、3 因子共高群のほうが有. とストレス反応は有意に高く、ソーシャルサポートは有意. 意に低く、友人からのサポートで、情緒的サポート、共行. に低かった(P<.01) 。 両国において,ストレッサーを強. 動的サポートは高群の方が有意に低かった(P<.01) 。父親、. く感じている生徒がストレッサーをより多く経験していて、. 母親、教師からのサポートにおいて、ストレッサーを多く. サポートを低く受け、ストレス反応も高く表出しているこ. 経験している生徒が情緒的サポート、情報的サポートと共. とが考えられる。. 行動的サポートを比較的に少なく受けていることが推察で. 下位尺度間比較. きる。友人からのサポートにおいて、情緒的サポートと共. 両国において、ストレッサー頻度とストレス反応の下位. 行動的サポートを比較的に少なく受けていることが推察で. 尺度では、高群の方が有意に高かった(P<.01) 。. きる。. ソーシャルサポート: (中国)父親からのサポートにおい. (日本)父親からのサポートにおいて、3 因子共高群の方. て、道具的・共行動的サポートにおいて高群の方が有意に. が有意に低かった(P<.01) 。母親、教師と友人からのサポ. 低かった(P<.01) 。母親、教師と友人からのサポートにお. ートにおいて、情緒的、共行動的サポートにおいて高群の. いて、情緒的サポートと道具的・共行動的サポートにおい. 方が有意に低かった(P<.01) 。父親からのサポートにおい. て高群の方が有意に低かった(P<.01) 。. て、ストレッサーを多く経験している生徒が情緒的サポー. ストレッサーを強く感じている生徒が父親からのサポー. ト、情報的サポートと共行動的サポートを比較的に少なく. トとして、道具的・共行動的サポートを比較的に少なく受. 受けていることが推察できる。母親、教師と友人からのサ. けていると推察できる。母親、教師と友人からのサポート. ポートにおいて、情緒的サポートと共行動的サポートを比. において、情緒的サポートと道具的・共行動的サポートを. 較的に少なく受けていることが推察できる。. 比較的に少なく受けていることが想像できる。 表5 ストレッサー頻度の高低群の比較結果 ストレス反応 ストレッサー強度 サポート 高群>低群 高群>低群 高群<低群 [サポート中国] 共行動的サポート 情緒的サポート 情報的サポート 高群<低群(対象全員) 高群<低群(対象全員) 高群<低群(父;母親、教師) [サポート日本] 共行動的サポート 情緒的サポート 情報的サポート 高群<低群(対象全員) 高群<低群(対象全員) 高群<低群(父親). (日本)父親と母親からのサポートにおいて、共行動的 サポートと情緒的サポートにおいて高群の方が有意に低か った(P<.01) 。教師と友人からのサポートにおいて、三因 子では高低群の差がみられなかった。 ストレッサーを強く感じている生徒が父親と母親からの サポートとして、共行動的サポートと情緒的サポートを比 較的に少なく受けていることが推察できる。. 研究3―中国の中学生に対する動作法におけるストレス反 応への影響. 表4 ストレッサー強度の高低群の比較結果 ストレス反応 ストレッサー頻度 サポート 高群>低群 高群>低群 高群<低群 [サポート中国] 共行動的サポート 情緒的サポート 情報的サポート 高群<低群(対象全員) 高群<低群(母親、教師と友人) 高群=低群(対象全員) [サポート日本] 共行動的サポート 情緒的サポート 情報的サポート 高群<低群(父親、母親) 高群<低群(父親、母親) 高群=低群(対象全員). 目的:動作法を実施することで児童生徒のストレス反応 を軽減することを試みる。 方法 質問紙:研究1で用いたストレス反応尺度 対 象:中国内モンゴルの中学生 2 クラス 動作課題:肩のリラックセイション課題、肩のペアリラ クセイション。 (1 回/週、30 分/回、全三週間). 2、ストレッサー頻度の高低群の比較を通して(表5). 時間的変化をみるため、質問紙調査を三ヶ月(1回/月). 日、中それぞれ比較した結果、高群のストレッサー強度. に渡って実施する。. とストレス反応は有意に高く、ソーシャルサポートは有意. 結果. Ⅰ、実施前の質問紙調査では、実施群と対照群の. に低かった(P<.01)。両国において,ストレッサーを多く経. 間差はなかった。二回目の調査では対照群の方が有意に高. 験している生徒がストレッサーをより強く感じ、サポート. いことが示された。三回目の質問紙調査では差がみられな. を低く受け、ストレス反応も高く表出していることが考え. 調査1 実施群=対照群. られる。. 調査2 実施群<対照群. 調査3 実施群=対照群. かった。. 下位尺度間比較. Ⅱ、実施群において、実施後は実施前より有意に低くな. ①ストレッサー強度とストレス反応の全ての下位尺度に. っている(F(1,114)=3.35,P<.10)。特に下位尺度の抑うつ反応. おいて、高群の方が有意に高かった(P<.01) 。. 3.
(4) が有意に低かった(F(1,114)=3.43,P<.10)。. い。日ごろは親との関係から主なストレッサーになってい. Ⅲ、対照群において、実施後の時期は実施前の時期と比. ることが考えられる。中国の生徒が比較的に親との関係に. べ高いことが示された F(1、124)=188.50,P<.01)。. 実施群 対照群. おいて低くなっているのは、一人っ子政策、そして激しい. 実施前>実施後 実施前<実施後. 受験競争を勝ち抜くため、親が子どもに多くの経費や精力 を注いている。その上、生徒にとって親から言われてくる. Ⅳ、実施前後の男女別の比較では、実施群において、女. 家の手伝いなどを当たり前のことと認識しているからだと. 子生徒では実施後は有意に低いことが示された(P<.01) 。. 考えられる。また、家族で過ごす時間が多い分理解し合っ. 下位尺度の比較では心身反応、疲労反応と抑うつ反応因子. ていると考えられる。. では実施後は有意に低くなっている(F(1,66)=. 4.04,P<.05). 中国の生徒が友人と教師関係からくるものが多い。友人、. (F(1,66)= 4.55,P<.05) (F(1,66)= 7.18,P<.01) 。. 教師関係と学業関係からストレッサーになっている。それ. 対照群において、男女別比較で実施後の時期に、全ての. に対しいペアリラクセイション課題を行うことで友人関係. 下位尺度が有意に高いことが示された(P<.01) 。 考察. の提高や学校内ストレッサー要因を軽減することに作用し. 二回目で対照群の方が高いことが示されたのは、. たと思われる。. 実施群における動作法の効果が伺われる。三回目の調査時. 中国では、古くから教師は尊敬されるべき、礼儀を尽く. に両群において差はなかったのが、動作法の効果として短. すべき存在であるという認識は文化の一部として広く受け. 期間で有効的で、今後より長時間の実施や検討が必要と思. 入れられてきた。教師との関係がストレッサー頻度及び強. われる。学校生活が続いていくうちに学業でのプレッシャ. 度において有意に高いことが教師の影響力が高いと考えら. ーや対人関係によるストレスが増加してくることで、二回. れる。その分、ソーシャルサポートに関しても有意に高い. 目の調査では対照群においてストレス反応が高くなってい. ことから、否定的な影響だけではなく肯定的影響力も高い. ると思われる。従って、心理教育を実施したクラスにおい. と言える。. ては、ちょうどこの時期に行ったためストレス反応が低く. 雷・堂野(2002)が中学生を対象にしたストレス研究の結. なっているといえる。特に、心理教育の効果として抑うつ. 果、日本の生徒がストレス対処行動として内・外的発散行. 感の高くなることを納めることに有効とも言える。日本で. 動因子において中国より高いと検討している。本研究でも. も、小澤(2007)は小学生・中学生・高校生に対して動作. ストレス反応では日本の方が高い結果が得られ、ほぼ一致. 法によるリラクセイション課題を実施した結果、全ての学. しているといえよう。. 校種別においてストレス反応が有意に低下したと検討して. 日本では、ストレッサー強度の高低群においてサポート. いる。. の内教師と友人のサポートは有意さがみられなかったに対. 中国では、各中学校においてスクールカウンセラーなど. し、頻度の高低群においては教師と友人のサポートは有意. がほぼ配置されておらず、学生達が普段感じているプレッ. 差がみられた。このことから日本の生徒は強度の高いスト. シャーやストレスをうまく発散できていないことが予想さ. レッサーに対しては親以外の教師や友人のサポートが期待. れる。そして、学生の健康的な心理を維持するのが学校側. できず、親からのサポートが期待できるといえる。頻度で. の介入は必要だと考えられる。. は、それほど強くない日常的ストレッサーにおいては教師. 実施前後の男女別の比較した結果から、男子生徒より女. と友人のサポートが有効に働いていると考えられるだろう。. 子生徒のほうが心理教育を受け入れやすいと推測できる;. 本研究ではそれぞれの国内の地域差について触れなかっ. また、男子生徒より女子生徒のほうが授業中より集中して. た。そして、学年差や性別による違いについても検討して. 聞いていることが考えられる。. なかったので、今後、それについて比較検討し、ストレス. 総合考察. 関連をさらに明らかにし、その違いからくる国別特徴を見. 因子構造において、ストレッサー頻度と強度では、中国. 出し、環境や習慣などについてさらに検討する必要がある. の生徒は集団行動のことをストレッサーとして捉えてい. だろう。. る;また、教師と授業関係といった学校内要因を1つのス. 主要引用文献: 岡安孝弘・嶋田洋徳・坂野雄二 1993 中学. トレッサーとして捉えている。一方、日本で、教師と成績. 生におけるソーシャルサポートの学校ストレス軽減効果 教育心. 関連からくるものを分けて捉われていることが特徴的であ. 理学研究 41,302-312. る。. 翟 宇華 2006. 日中の比較において、日本の生徒にとってストレッサー. 中国都市部中学生の学校忌避感を抑制する要因. に関する研究 教育心理学研究 54,233-242. としてよく経験しているのは、親と学業に関するものが多. 4.
(5)
関連したドキュメント
友人同士による会話での CN と JP との「ダロウ」の使用状況を比較した結果、20 名の JP 全員が全部で 202 例の「ダロウ」文を使用しており、20 名の CN
金沢大学における共通中国語 A(1 年次学生を主な対象とする)の授業は 2022 年現在、凡 そ
本章では,現在の中国における障害のある人び
従って、こ こでは「嬉 しい」と「 楽しい」の 間にも差が あると考え られる。こ のような差 は語を区別 するために 決しておざ
中国の食糧生産における環境保全型農業の役割 (特 集 中国農業の持続可能性).
マ共にとって抗日戦争の意義は,日本が中国か ら駆逐されると同時に消滅したのである。彼らの
新中国建国から1 9 9 0年代中期までの中国全体での僑
本研究の目的と課題