株式会社中村自工 取締役会長
中
な か む ら村 弘
ひろむ 前号では、JR 九州「ななつ星 in 九州」と、 JR 東 日 本「TRAIN SUITE 四 季 島 」 を ご 紹介したが、それに続き今回は昨年 2018 年 3 月 に 乗 車 し た JR 西 日 本「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」を紹介すると共に、同じ く昨年6月に乗車した伊豆急「THE ROYAL EXPRESS」についてもご披露したい。JR グループの 3 種類のクルーズトレインとの比 較を楽しんで頂ければ幸いである。 最初はJR西日本「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」から始める。 「瑞風」への乗車のために、前日に小倉の ホテルへ入り、2018 年 3 月 26 日朝9時す ぎに、今回のツアーの乗車駅となっている下 関駅へ着いた。ホームには既に「瑞風」は入 場していた。グリーンの色があざやかである。 そして、ここには「瑞風」用の待合いラウン ジはないため、そのまま列車 5 号車「ラウン ジカー」から直接乗車した。 3号車303号室が私達の部屋だ。担当のT 氏が案内してくれて、荷物も着いていた。 まずは列車内見学をと思い、一番後ろの1 号車「展望車」へ行ってみた。きょろきょろ しているうちに発車時刻となり、9:24発車、 静かな出だしだ。ホームに集まっていた見送 りの方々へ展望デッキから手を振る。駅の職 員の方が多く、一般の人はあまりいない。カ タンカタンと、懐かしいレールの継ぎ目の音 が響く。 列車は、山陽線と別れて山陰線に入るが、 あまりスピードをあげない。そのまま市街地 を出ると日本海の美しい海岸線が見えて来 た。 展望室では、桜の季節に合せピンク色の着 物姿の2人の女性が応待してくれた。この 方々は裏千家の人で、後ほどラウンジカーで 「瑞風茶会」を催してくれる方々である。 この「瑞風茶会」は、すばらしい雰囲気の ものであった。お道具、お茶、掛軸などが準 備され、抹茶々碗は瑞風色グリーン模様の特 別誂えのもの。そして、列車長までがお作法 を習得していて、直接にお客様と相対された のにはびっくりした。 しばらくして 12:45、私達の最初の昼食クル ーズト レ イ ン 旅 行 記
その2:JR 西日本「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」、伊豆急「THE ROYAL EXPRESS」
時間となった。6号車の「食堂車」へ入り、 座席に案内される。食事は地元の食材を使っ たすばらしいフランス料理で、一つ一つク ルーの丁寧な説明があって、美味しくいただ いた。 そして列車は、国の重要文化財で、世界遺 産「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造 船、石炭産業」の構成資産のひとつである「反 射炉」の説明を聞きながら萩を過ぎ、石見な ど、日本海の風景を堪能しながら出雲市へ向 かった。 出雲市駅に 15:00 到着し、ここでは 2 時 間半の滞在となる。瑞風カラーのバスに乗り、 出雲大社へ。60 年に一度の遷宮が終った大 社の壮麗な屋根は本当に素晴らしい。 71 万 枚にも及ぶ檜皮の葺き替えが大変で、職人の 技術の伝承がこれからの問題になるとのこと だ。 長い時間の参拝滞在ではなかったが、すで に夕方となり、帰りに宍道湖の夕日を見なが ら列車へ戻った。 夕食は早番、遅番の入替え制で、私達の夕 食が始まる 20:15 までは待っていた。1号 車ではヴィオラ、バイオリンの演奏があり、 これも地元の方々の協力で、日暮れてしまっ た景色より音楽を聴き、なんとか楽しく皆で 過ごそうという心遣いか。 私達は部屋へもどり、セミフォーマルの背 広姿に着替えて、少々緊張気味で食堂車へ向 かった。昼とは異なるテーブルに案内され、 着席にもいろいろ配慮があるようだ。 夕食は日本料理。美味くボリュームも満点 であった。そしてこの時も、一つ一つの料理 を説明してくれるクルーの方々との対話は、 また楽しいものだった。 食後、まだまだ「ラウンジカー」で演奏や バーカウンターでの憩があったが、私は眠く なったので部屋へ戻り就寝した。 列車はこの間に米子へ入り、更に山陰線を 上り赤碕まで走り、再び米子へ戻って来ると いう行程で、走る楽しみも味わえる企画で あった。その後、米子で朝 5 時頃まで停車を して一夜を過した。 翌早朝、気づかぬ間に列車は動き出し、伯 備線へと入って行った。伯耆大山の日の出を 見せたいようだ。お天気も良く、沿線の景色 の木の間から、ちらちら見える大山と朝日。 伯耆富士といわれる姿は美しい。これが山陰 線へ戻ると荒々しい山の雄姿に変っていくの を見る事も、また楽しいものだ。 朝早くシャワーを浴び、洗面をすますと気 分が良い。7:15 朝食、洋食だ。大変手の 込んだもので「さすが瑞風だ」と思うと同時 に、朝こんなに沢山食べられるかなあと思っ た。しかし大変においしい。この朝食が食堂 瑞風茶会の様子 瑞風のクルーの方々と記念撮影
ずいひつ
9 時すぎ、鳥取だ。今回のツアーに砂丘観 光は入っておらず、鳥取砂丘には行けないの が残念だ。砂丘が楽しみだったのだがやむを えない。 仁じんぷうかく風閣見学に向かう。仁風閣は、大正天皇 行幸の際のお宿で、命名は東郷元帥によると いう白亜の洋館である。飾られた揮き ご う が く毫額など があり、雰囲気は赤坂迎賓館を一回り小さく した趣きで、全体的には木造という感じだが、 裏庭が落ち着いた雰囲気を出していて素晴ら しい。 しかし、ここでもこれまた時間が少なく余 裕がない。どうも観光滞在場所は見学だけで あり、もう少し時間をとって地元芸能とかお 土産の宣伝をしたらよいのではないかと思っ た。 列車に戻る。これからは日本海から離れ、 丹波の山中へ入って行く。通常ダイヤの列車 の合間をぬって走るせいか、思わぬ駅で長時 間停車することがあった。 餘あまるべ部の鉄橋を過ぎ、昼食は部屋で西洋料理 なるも鍋料理まで出て来て、美味しかったが とても食べきれなかった。しかし、部屋での 中村自工の私と話が合う事が多い。 また今日の乗客の中でマニアの方がいたそ うだ。いろいろな質問なり要望をされ困った とのこと。その時の話について細かい事まで いろいろ聞いてしまったが、仕事の話になる のでここでは省略させていただく。 しかしまあ、趣味と仕事は完全に分けて考 えねばならぬことで、そんな事を思いながら も列車は進み、カタンカタンとレールの継ぎ 目の音は京都駅近くなるとなくなり、京都駅 に到着。京都で下車する方を見送りながら大 阪へと反対方向の走行となった。 17:30、大阪駅へ到着。瑞風専用通路を通 り、列車長に見送られて改札を出た。 JR 西日本「瑞風」は、以前走っていた大 阪発札幌行き「トワイライトエクスプレス」 寝台特別急行列車の経験を生かしているので はないかと思う。美味しい食事は全て列車内 で提供される企画となっており、その反面、 途中下車時の観光時間は少なく、むしろ列車 で走ることの喜びを強調しているのではない かと感じた。 そして、この旅行記で最後のご紹介となる が、東急電鉄が昨年から始めた「ロイヤルエク スプレス」である。大変満足を得られたため
に、JR3 社の豪華列車に加えてご紹介したい。 2018 年 6 月 1 日 か ら 1 泊 2 日 で 乗 車 し た。申込みをしてから 1 カ月経て「プラチナ コース」へ乗れるようになり、当日は集合時 間 11 時前に、横浜駅東横線ホームの上にあ る「ロイヤルエクスプレス」専用のラウンジ へ向かった。ラウンジ内ではしばらく待たさ れたが、ピアノ演奏の雰囲気がとても気分良 く、専属のクルーの女性が今日の日程を丁寧 に説明してくれた。 伊豆の海を表すブルーの車体、7号車7AB 席である事を確認し、JR 東海道線ホームへ 案内され先頭車両で記念撮影。そして大勢の 人に見送られ、乗車まもなく11:50に発車し、 瞬く間にスピードを上げ本線上を走った。 横浜の見慣れた景色を過ぎると、5 号車で は昼食の用意が出来ていた。海の幸中心の和 洋食で大変美味しい。 列車はあっという間に熱海を過ぎ、伊東線 へ入る。伊東からは東急グループの伊豆急行 線へ。 車両は水戸岡先生の設計で、改造車である が、8 両編成の一両一両デザインが異なる。 JR九州の「ななつ星」も水戸岡先生の設計で、 双方の雰囲気は似ている、ただ、三両目の天 井には埼玉の金箔細工を施していて、この編 成の特徴となっている。 お天気も良く伊豆大島もよく見えた。伊豆 高原駅ではしばしの休憩となり、駅構内を散 策し海岸の景色を楽しんだ。その後は、瞬く 間に下田駅へ15:02に到着した。 ここからはタクシーで、日本開国となるア メリカペリー提督上陸の際使われた了仙寺を 訪問した。住職から日本開国のエピソードを 聞く。明治維新150年で大変興味のある話で あり、もっと時間をかけて聞きたいと思った。 ここから先は、私達だけでタクシーに乗り、 海岸風景を見ながら吉田松陰先生の寓ぐ う き じ ょ寄処へ 案内され、先生が密航を企てた時の話を興味 深く見聞きした。 歴史の話も面白いが、すでに夕方となって しまい、この後今日の宿、下田東急ホテルへ 到着する。220号室、オーシャンビュージュ ニアスイートの部屋だ。ガラス窓から海を眺 める事ができるビューバスもあり、なかなか 豪華な設備である。しかしここでは露店風呂 もある温泉大浴場へ入り、19 時からレスト
ずいひつ
翌朝は、朝日をいっぱい浴び目が覚める。 そして、朝食までは時間があるため、庭園を 散歩する。海岸まで下る坂道は帰りの上りが 大変なので、途中で引き返す。 朝食後はのんびりする。 10 時 20 分、クルーの S 嬢が迎えに来てく れた。送迎車にてあじさい公園のふちを廻り、 再び海岸線へ出て下田駅へ向かう。列車は私 達プラチナコースの人だけを待っている。 10:50 に発車。この日もお天気良く、伊 豆大島もはっきり見える、11:30、3 号車 でバイオリンの演奏会が始まった。奏者の大 迫さんは JR 九州「ななつ星」に乗車した時 にも演奏されていた方 ( ピアノ伴奏の女性も 同じ)で、クラシックの曲の後、昔の童謡「み かんの花咲く丘」を演奏され、大変懐かしく 聞き入った。 この童謡は伊豆半島にゆかりがあり、伊東 市宇佐美の亀石峠には、「みかんの花咲く丘」 の歌碑が建っているそうである。 その後は昼食。伊東のお寿司屋さんのお寿 司を食べる。その際にもいろいろの曲の演奏 があり、その何曲かの中で、大迫さんはピア ノ伴奏で「昴」を演奏してくれた。これは私 が「ななつ星」でリクエストした曲で、その 13:53、伊東駅着。ここで「ロイヤルエク スプレス」とはお別れで、皆下車。健脚な人 は歩いて「東海館」という伊東文化施設を見 学へ向かう。昭和 3 年に建てられた木造3階 建ての温泉宿で、木の使い方が大変興味深い。 ここでは津軽三味線の余興があり、ここでも 「みかんの花咲く丘」を皆で歌う。 伊東駅へ戻り、15:10 発の JR スーパービ ュー踊り子 8 号に乗車し、一同横浜へ向けて 出発。横浜駅には16:26に到着した。 横浜駅の専用ラウンジで一休みし、クルー の挨拶を受け、全員で記念撮影した後、ロイ ヤルエクスプレスのテーマ曲に送られながら 解散となった。 乗車するまでは、「お申込みのご案内」に 書かれた内容のどれが参加コースに対応する のかということがなかなか理解できなかった
が、参加してみて全て納得できた。特に、ク ルーの方々がとても熱心で、プラチナコース の1組の客に1人ずつ担当が 2 日間付き添っ てくれたことは、他のクルーズトレインでは 見られなかったことである。このロイヤルエ クスプレスの運行では 70 人の日帰りの方と 私達みたいな1泊の客の為に、20 人以上の クルーの人がおもてなしをしてくれているこ とに驚くとともに感謝をしている。 ・・・・・・・・・・ 今回、4つの素晴らしい車両に乗車したが、 4社ともそれぞれ特徴がある。 JR3 社の 3 列車の個室は ( どれもバスタブ が設備されている部屋には入れなかったが )、 シャワー設備があり、寝室としては素晴らし いものであった。そして、東急のロイヤルエ クスプレスは個室はないものの、居住性は負 けず劣らず素晴らしいと感じている。 各編成を見ると、「ななつ星」は客車列車 方式、「四季島」は強力エンジンの発電装置 を併せ持った電車が牽引する固定編成方式、 「瑞風」は中間の寝室車両以外でエンジンを 搭載している固定編成方式で、外観や内装、 性能設計など専門のデザイナーの指導で作ら れた列車であり、それぞれ長短はあるものの、 その違いを楽しめるものであった。さらに各 社とも、振動、音、水の取扱いなど大変な気 配りがあり、世界一になるためには大きな大 きな努力が必要だと感じた。さらに、地方の よき文化をということで、地方路線へも積極 的に乗入れているが、閑散線区へ入ることが 出来なかったり、熊本や東北では地震の影響 で、想定外の運行をしなくてはいけないとい う、運用面での苦労が沢山あるのではないか と思う。 また、クルーの方々のサービスが如何に大 切かという事も実感した。ホテルと同じベッ ドメイキングやレストランサービスなど、皆 立派に仕事をしていた。クルーメンバーには 感謝している。 最後にもう一点付け加えると、4 社で多少 やり方が違うが、リピーターとして再会でき ることを願う乗客のために、JR 九州ではお 客様の同窓会、JR 東日本では「運行一周年 アニバーサリー」という会合を設営されてい る。JR 西日本でも何か計画しているように 聞く。 先日参加した会合では、PR 映画、演奏会 などが行われ、クルーの方々もホストとして 参加されていて楽しかったが、参加費用が高 価で一考を要す。また旅の記録画像では、乗 客が写っている写真を見せてくれた方が思い 出として効果があると思う。 JR九州 唐池会長が「世界一の豪華列車を」 と唱えて運行を始めた「ななつ星」、それに 負けず劣らず JR 東日本「四季島」、JR 西日 本「瑞風」が、現実に日本の線路を走りだし ている。さらに民鉄各社も、様々な観光電車 の運行を行っている。そしてお互いに、それ ぞれ観光、食事、サービスの競争をしている。 これほど満足できる楽しい旅が出来るものか と、驚くと共に嬉しくなっている。鉄道が、 人と人とのコミュニケーションを担う時代に 入って来たことを感じずにはいられない。 (完)