システム技術開発調査研究 19-R-14
可搬型電子保健医療手帳に関する調査研究 報告書
― 要旨 -
平成20年3月
財団法人 機 械 シ ス テ ム 振 興 協 会
委託先 財団法人 医療情報システム開発センター
この事業は競輪の補助金を受けて実施したものです。
http://ringring-keirin.jp/
序
わが国経済の安定成長への推進にあたり、機械情報産業をめぐる経済的、社会的諸条件は急 速な変化を見せており、社会生活における環境、防災、都市、住宅、福祉、教育等、直面する 問題の解決を図るためには、技術開発力の強化に加えて、ますます多様化、高度化する社会的 ニーズに適応する機械情報システムの研究開発が必要であります。
このような社会情勢に対応し、各方面の要請に応えるため、財団法人機械システム振興協会 では、財団法人日本自転車振興会から機械工業振興資金の交付を受けて、機械システムに関す る調査研究等補助事業、新機械システム普及促進補助事業を実施しております。
特に、システム開発に関する事業を効果的に推進するためには、国内外における先端技術、
あるいはシステム統合化技術に関する調査研究を先行して実施する必要がありますので、当協 会に総合システム調査開発委員会(委員長 東京大学名誉教授 藤正 巖氏)を設置し、同委員 会のご指導のもとにシステム技術開発に関する調査研究事業を実施しております。
この「可搬型電子保健医療手帳に関する調査研究」は、上記事業の一環として、当協会が財 団法人医療情報システム開発センターに委託して実施した調査研究の成果であります。
今後、機械情報産業に関する諸施策が展開されていくうえで、本調査研究の成果が 1 つの礎 石として役立てば幸いであります。
平成 20 年 3 月
財団法人機械システム振興協会
はじめに
本報告書は、財団法人機械システム振興協会より、財団法人医療情報システム開発センター が平成 19 年度事業として受託した「可搬型電子保健医療手帳に関する調査研究」の成果をまと めたものである。
国民の健康を維持、増進するとともに医療費の伸びを抑制する施策として、国民一人一人が、
個人の健康・医療情報を、生涯を通じて管理、活用できる基盤を形成する必要がある。本調査 研究では、個人が自己の健康・医療情報を管理・活用する方法として、個人が容易に管理でき る電子保健医療手帳を提案し、ここにどのようなデータを、どのような形式で記録し、医師な どにどのように提供すればよいか、など、電子保健医療手帳の課題の抽出と対応策を検討した ものである。
具体的には、医師や保健師に電子保健医療手帳に記録する情報についてヒアリグを行うとと もに現在ある健診文書や医療文書のデータ項目について調査を行った。健診システムや電子カ ルテのシステムベンダーからは、システムの機能やデータの構造・形式などについてヒアリン グを行った。電子保健医療手帳には、特定健診など健診情報や既往歴、予防接種歴、医薬品の 服薬歴などの診療情報を、更には、自宅で測った体重、血圧、腹囲、食事の内容、運動の内容 やフィットネスクラブでの測定値などを記録することが考えられる。診療所の医師からは診察 では最小限、患者の病歴と服薬歴がほしいとのことである。
本調査研究では、文字、数値、画像、グラフなど多様な形の健康情報を記録する形式として PDF 形式での保存を提案している。PDF 形式は、スキャンされた情報や画像を容易に記録するこ ともできる。電子保健医療手帳の用途としては、全ての個人向けとして診療受診また必要ない しは希望する個人向けとして疾病管理、疾病予防や健康増進などがある。診療受診については スタートさせることが肝要とのことから、記録する情報としては、予防接種歴と服薬歴に絞る ことを提案している。この調査研究が、個人が生涯を通じて自己の健康・医療情報を管理、活 用できる基盤を形成する際の一助となれば幸いである。
平成 20 年 3 月
財団法人医療情報システム開発センター 調査研究担当一同
可搬型電子保健医療手帳に関する 調査研究報告書
― 要旨 ―
目次 序
はじめに
1.調査研究の目的 ……… 1
2.調査研究の実施体制 ……… 3
3.調査研究成果の内容 ……… 6
第一章 健診文書や医療文書のデータ項目の調査と医師や保健師からのヒアリング調査 …6 第二章 健診システムや電子カルテのシステムベンダーに対する調査結果 ……… 15
第三章 個人が直接入力するデータの検討 ……… 18
第四章 データ項目の体系化および標準化の検討 ……… 19
第五章 組み込みソフトウエア ……… 27
第六章 電子保健医療手帳を利用した保健情報システム ……… 28
4.調査研究の今後の展開 ……… 36
1. 調査研究の目的
医療分野への IT 利用は、医療の質の向上と効率化を同時に実現する手段として期待され ている。平成 18 年 1 月に内閣 IT 改革戦略本部が策定した「新 IT 改革戦略」および平成 19 年 3 月に厚生労働省が発表した「医療・保健・介護・福祉分野の情報化グランドデザイン」
では、
1) 平成18年度末までに、標準的な健診項目、標準的なデータ形式を定めるとともに、レセ プトデータおよび診療情報との連携の進め方について、平成18年度中に検討を開始する。
2) 平成19年度から、全国的規模で収集・分析すべき健康情報および収集の仕組みについて 検討を開始する。更に、健診情報等とレセプトデータおよび診療情報等との連携の進め方に ついて、結論を得る。
3) 平成20年度から開始される保険者実施の健診・保健指導において、健診情報の電子的収 集を開始する。
4) 平成20年度末までに、個人が自分自身の健康情報を電子的に入手し、健康管理に活用で きるよう、健康情報入手に関するルール等の仕組みについて方針を示す。併せて、健康情報 を管理するデータベースの整備について検討を進める。
5) 平成 21 年度には、引き続き、健康情報を電子的に収集するとともに、全国的にデータを 収集して、疫学的に利活用できるような方策について検討を進める。
とされている。
本調査研究では、個人の健康・医療情報の管理・活用の方法として、個人が容易に管理で きる携帯電話やパソコンの可搬型のメモリ(SD メモリや USB メモリ)を記録媒体として用 いた、電子保健医療手帳を提案し、この電子保健医療手帳にどのようなデータを、どのよう な形式で記録し、医師や保健師に対してどのように表示して提供すればよいか、など、電子 保健医療手帳の課題の抽出と仕様をとりまとめ、それを活用した保健指導情報システムのビ ジョンを提案している。
電子保健医療手帳は、現在、妊娠すると保健所から渡される母子健康手帳や一部の市町村 が基本健康診査の結果などを本人自身で記録するために市民に配布している健康手帳の電 子版と考えればよい。ここに、例えば、健診機関で人間ドックを受診した時には現在は紙ベ ースで渡されている健診結果のデータや受けた保健指導の内容を電子データで記録しても らう。病院ではオーダリングシステムや電子カルテの導入により診療データの電子化が進み つつある。また、診療所においてもパソコンを利用する医師が増してきており、簡単な数字 であれば、電子的に記入してもらうことが可能になりつつある。そこで、病院や診療所で診
療を受けた時に臨床検査の結果などのデータや医師の注意事項など、あるいは他の医療機関 にかかった時の診療の参考になる情報などを記録してもらう。また、国の計画では、レセプ ト(診療報酬明細書)が平成 23 年以降は一部の例外を除き全て電子データで処理されるこ とになっており、このレセプトの電子データも記録する。そのほか、既往歴、家族歴、アレ ルギー情報、服用医薬品の処方せん、更には、自宅で測った体重、血圧、腹囲、食事の内容、
運動の内容やフィットネスクラブでの測定値などを記録することも考えられる。
電子保健医療手帳に類した構想は、いろいろな所で検討されているが、事業所や健康保険 組合などがサーバを設置し、一元的に管理するものが多い。この方法では、本人より許可を 得たとしても、ネットワーク機器などの物理的な制約からデータにアクセスする者が限られ る。また、人間ドックや特定健診など法定で事業者などに義務付けているデータ以外のデー タに対応することは困難である。サーバやシステム技術者の維持などの費用も多額である。
何よりも本人が自由に管理することができないため、データの利用に柔軟性が欠ける、等々 の課題がある。
電子保健医療手帳には、本人が手帳を提供すれば、どの携帯電話やパソコンでも内容を閲 覧できるよう最低限のソフトウエアを予め手帳に組み込んでおく。手帳に何が記録されてい るかを一覧できる目次機能、必要なデータ項目を引き出せる検索機能、必要な項目のみを表 示する表示機能などのソフトウエアである。また、手帳には機微なデータが多く含まれるこ とからデータを保護するセキュリティ機能も組み込んでおく必要がある。
電子保健医療手帳の実現により、個人は、希望する時に、希望する機関で自らの健康デー タを提供し、保健指導を受けることが可能になる。また、過去の検査所見、手術・治療内容 等が日本全国何処の医療機関に行っても提示できるため、必要な診察を迅速に受けることが 可能になる。
電子保健医療手帳が普及すれば他の機器と組み合わせたサービス事業、特に、健診機関な どが健康指導プログラムの実施状況をリモートでチェックするなど、携帯電話と組み合わせ た多様なビジネスがおこることも期待される。電子保健医療手帳は完全に個人のもので、見 せたい人には見せればよいし、見せたくない人には見せなければよい。電子保健医療手帳に より、いつでも、どこでも、だれでも、という、いわゆるユビキタス的に保健医療情報の活 用が可能になる。
2. 調査研究の実施体制
本調査研究は、財団法人機械システム振興協会の委託を受けて、財団法人医療情報システ ム開発センターが医療関係者や医療情報関係者で構成される「電子保健医療手帳検討委員 会」を設置し、調査研究を実施したものである。
財団法人機械システム振興協会 総合システム調査開発委員会
(委託)
財団法人医療情報システム 開発センター
電子保健医療手帳 検討委員会
本調査研究は、財団法人機械システム振興協会内に「総合システム調査開発委員会」を、
財団法人機械システム振興協会から調査委託を受けた財団法人医療情報システム開発セン ター内に「電子保健医療手帳検討委員会」を設置し、電子保健医療手帳についての調査 研究を行うものである。
総合システム調査開発委員会 委員名簿
(順不同・敬称略)
委員長 東京大学名誉教授 藤 正 巖
委 員 埼玉大学 太 田 公 廣 地域共同センター
教授
委 員 独立行政法人産業技術総合研究所 金 丸 正 剛 エレクトロニクス研究部門
副研究部門長
委 員 独立行政法人産業技術総合研究所 志 村 洋 文 産学官連携部門
コーディネータ
委 員 東北大学 中 島 一 郎 未来科学技術共同センター
センター長
委 員 東京工業大学大学院 廣 田 薫 総合理工学研究科
教授
委 員 東京大学大学院 藤 岡 健 彦 工学研究科
准教授
委 員 東京大学大学院 大 和 裕 幸 新領域創成科学研究科
教授
電子保健医療手帳検討委員会 委員名簿
(順不同・敬称略)
委員長 東京大学 山 本 隆 一 准教授
委 員 東京工業大学 喜 多 紘 一 特任教授
委 員 東京都医師会 大 橋 克 洋 理事
大橋産科/婦人科 院長
委 員 独立行政法人労働者健康福祉機構 清 谷 哲 明 総務部
医療情報管理官
協 力 あいち健康の森 津 下 一 代 健康科学総合センター
副センター長 健康開発部長
協 力 東京都医師会 近 藤 太 郎 理事
近藤医院 院長
協 力 ニッセイ情報テクノロジー株式会社 奥 田 俊 博 医療・介護ソリューション事業部
チーフマネージャー
3. 調査研究の内容
第一章 健診文書や医療文書のデータ項目の調査と医師や保健師からのヒアリング調査
(1) 健診情報の中心は健康診査である。健康診査は、労働安全衛生法、住民健診、人間 ドックなどの健診の種類や受診者が所属する保険組合によって検診項目が異なっているが、
身体計測、循環器、呼吸器、脂質、糖代謝、肝・胆・膵臓機能、腎・尿路、貧血検査など 20 項目程度の項目と生活習慣などについての 20 項目程度の質問項目がある。参考に平成 20 年 4 月から保険者に対して被保険者・被扶養者 40 歳~74 歳の者に実施が義務づけられた、
特定健診(特定健康診査)の検診項目は、図表 1 のとおりである。健診情報には健康診査の ほか胃がん、肺がん、子宮がんなどのがん検診や骨粗しょう症などの検診があるが、これら の検診では受診者向けに記録されている項目は判定や精密検査の受診の必要性の有無など 数項目程度である。
図表 1 特定健診の健診項目
基本的な健診の項目 質問項目、身体計測(身長、体重、BMI、腹囲(内臓脂肪面積))、
理学的検査(身体診察)、血圧測定、血液化学検査(中性脂肪、HD Lコレステロール、LDLコレステロール)、肝機能検査(AST(G OT)、ALT(GPT)、γ-GT(γ-GTP))、血糖検査(空 腹時血糖又はHbA1c検査)、尿検査(尿糖、尿蛋白)
詳細な健診の項目 心電図検査、眼底検査、貧血検査(赤血球数、血色素量〔ヘモグロビ ン値〕、ヘマトクリット値)のうち、一定の基準の下、医師が必要と 判断したものを選択
その他の健診項目 40~74歳を対象とする健康診査においては、それぞれの法令の趣旨、
目的、制度に基づき、基本的な健診項目以外の項目を実施する。中で も、血清尿酸、血清、クレアチニン検査、HbA1c 等については、必要 に応じ実施することが望ましい。
出所:厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム」
健診情報は、検査画像を除き全て受診者に提供される。媒体は紙ベースである。最近では、
Web を利用して数年間の健診情報を閲覧できるサービスを行う健診機関がでてきている。受 診者は健診情報を自己で管理する必要性が少なくなるが、毎回、同じ健診機関で受診を続け る必要がある。また、閲覧のみで情報のダウンロードはできない場合が多い。
(2) 医療機関が作成する患者の診療についての情報は、診療録、検査記録、看護記録、
退院サマリ、診療情報提供書(紹介状)、レセプトなど多岐にわたっており、病院によって
は地方自治体などに提出する文書などを含めると 700 種類、1600 項目以上ある。記録され ている項目は、診療録では診療内容や症状が、紹介状では傷病名、紹介目的、既往症、家族 歴、症状経過、検査結果、診察経過、現在の処方などが記載されている。診療情報の文書の 形式は文字、数値や画像などであり、記録の方法も手書き、写真、コンピュータから出力さ れたもの、サイズも A4、B4 など様々である。図表 2 は医療機関が取得する患者についての 情報の主なものを診療段階別に記述したものである。
図表 2 医療機関が取得する患者情報の例 1) 診療中
診療録 氏名、性別、年齢、生年月日、ID 番号 診療内容、症状等
検査記録 氏名、性別、年齢、生年月日、ID 番号 検査依頼票、検査結果票、検査所見等 検査内容、検査結果等
看護記録 氏名、性別、年齢、生年月日、ID 番号 看護内容、患者の状況等
リハビリテーション記録 氏名、性別、年齢、生年月日、ID 番号 患者の状況等
リハビリテーション計画、リハビリテーション内容 介護記録 氏名、性別、年齢、生年月日、ID 番号
要介護者の状況等
ケアプラン、サービス提供計画、介護内容、
処方せん(院内処方せん、
院外処方せん)
氏名、性別、年齢、生年月日、ID 番号 処方内容等
2) 入院時
入院患者名簿 氏名、生年月日、性別、入院年月日、住所、電話番号 紹介者氏名、保証人又は身元引受人住所・氏名等 入院診療計画書 氏名、年齢、入院年月日、入院期間(見込み)
傷病名、症状、検査内容
治療計画、看護計画、リハビリ計画等 3) 診療報酬の請求
診療報酬請求明細書(レセ プト)
氏名、性別、生年月日、被保険者番号 請求内容、請求内訳
請求金額等(傷病名、診療開始日、初診(回数、点数等)
再診回数、点数等)
医学管理、在宅回数、点数等)
投薬(薬剤単位、調剤回数、点数等)
注射(回数、点数)
処置(回数、点数等)、手術麻酔(回数、点数等)
検査(回数、点数等)、画像診断(回数、点数等)
入院(入院年月日、入院基本料、特定入院料など)
出所:研究員収集資料 診療情報の中で最も重要かつ内容が豊富な情報は診療録(カルテ)である。カルテは医師 が患者を診察、治療して記録するもので、医師法では、医師は診察したときは遅滞なく診療 に関する事項を診察録に記載せねばならないとしている。(保存期間は 5 年間)。カルテに記 録されている内容は、氏名、性別、生年月日などの患者基本情報のほか、診療の内容、症状 等である。カルテに記録される内容は、図表 3 のとおりである。
形式は診療所や病院によって形式が異なっている。電子カルテの普及率は医療機関全体で 7%程度であり、手書きの紙ベースのカルテが多い。患者へのカルテ情報の開示であるが、
一般的には医療機関、医師、患者の共有物とされているが、患者に開示されることは少ない。
図表 3 カルテに記録される情報 1) 基礎データ
主訴 患者が受診をする気になった、または最も気にしている自覚症状
現病歴 現在の主訴がどのように始まり、どのような経過を経て現在に至ったのか について
発症の経緯 症状いつがどのように始まったか(急性、亜急性、慢性など)や何かきっか けがあったかなど
症状の内容とその 出現パターン
症状の性質、部位、程度、および出現パターン
現在までの経過
症状が出現してから現在までの経過。患者が受けた治療や検査、その結果、
医療機関を受診している場合は病院名、検査内容などを、市販薬を使用し ている場合はその内容
既往歴
患者が出生してから今回の発症までにどのような健康状態であったのか、
またどのような病気にかかったのか。疾患名の他に事故、体質、習慣など が含まれる。わかっている限り疾患名、その時の症状、検査、経過なども 併せて。
合併症
基礎疾患とは別に現在患者が有している疾患。既往症がすでに完治した疾 患なのに対して、合併症は現在進行形のものが対象になる。診断名だけで なく発症年月日や現在の病状、治療内容、管理している医療機関名なども
現象
現象には症状を診断治療する上で必要な検査所見や観察内容。受診した患 者に対してスクリーニング的に行われる検査や観察内容、鑑別診断に必要 となる検査所見や観察内容が含まれる。
バイタルサイン(血圧、脈拍、体温) 、排尿、排便、食欲、睡眠 、身長、
体重、体格 、生化学的所見(血液・尿検査など)、e)画像所見(単純 X 線、
CT、MRl など)、理学的所見(可動域、姿勢、理学テストなど)、神経学的所 見、日常生活活動(ADL)
患者プロフィール 患者の現在の生活像を示したもの。家族構成、就労状況、経済状態など 2) 問題リスト
基礎データで集まった情報をもとに患者の問題点を整理したもの。治療の指針。身体的問題 については病歴や現象を参考に書き、診断名(傷病名)があればそれを優先
3) 初期計画
問題を解決するための方法を問題項目ごとに書き出したもの 4) 経過観察
主観的所見 主訴やその他の新たな事柄に対する患者の訴え、自覚症状。家族やケア スタッフからの訴え、希望も含まれる。
他覚的初見 訴えられた内容に対する検査や観察などの他覚的所見。バイタルサイン などの定期チェック項目があれば記録する。
評価
得られた情報をもとにして考察・評価した内容。順調や悪化などの症状 に対する評価やその理由、問題解決のために考えた指導や働きかけに対 する評価が含まれる。
計画 評価をもとに施した今回の治療内容や今後の検査などの情報を収集す る計画をたてる。
5) 退院時の要約
経過記録をもとに行った治療内容と回数、家庭プログラム指導の有無とそれを行う際の自立 度、患者や家族に対する指導の要約。患者の退院または転院する場合は、その理由と転院先、
さらに今後のフォローアップ治療やケアに関する報告なども記録。
出所:東京都「診療録の書き方」
図表 4 は手書きの診療録の例および図表 5 は電子カルテの表示画面の例である。
図表 4 診療録(手書き)の例
出所:結城栄一著「カルテとレセプトがわかる本」
図表 5 診療録(電子カルテ)の例
ヒアリング調査を行った医師の指摘にもあるが、服薬歴も重要な診療情報である。服薬歴 の源は、医師が作成(処方)する処方せんである。処方せんは、投与が必要な医薬品とその 服用量、投与方法を記載した薬剤師に対する文書である。図表 6 に処方せんの例を示す。ま た、調剤薬局で医薬品を購入すると、お薬の説明書(薬剤情報提供書)が、初めてその薬を 飲む場合または月に1回ぐらい薬と一緒に提供される。
出所:㈱シーエスアイホームページより(http://www.csiinc.co.jp/)
服薬歴を記録するものとして、調剤薬局で渡されるお薬手帳がある。お薬手帳は個人の薬 に関する情報を一冊にまとめたもので、飲み合わせのチェックなど医師や薬剤師などにとっ ても大変役立つものである。お薬手帳に処方せんの内容、医療機関名、処方日などについて 記録しておけば医師や薬剤師と医療に関する様々な情報が共有でき、医薬品名から過去に罹 患した病名が判断できたり、治療や副作用防止に大いに役立つ。
図表 6 処方せんの例
出所:研究員収集
診療情報の患者への提供であるが、インフォームド・コンセントが進んだこともあり医療 機関が患者に提供する診療情報は増しつつある。医療機関によって異なるが、診療経過の要 約書、診療録の複写、検査記録や検査成績表の複写、エックス線写真や MRI 画像の印刷、診 療情報提供書(紹介文書)などを有料ではあるが患者に提供している。 参考に野口病院の 診療文書の費用は図表 7 のとおりである。
提供する媒体としては、CD での記録が増しつつあるエックス線の画像を除き全て紙ベー スで提供されている。病院情報システムの導入が進展しているものの、診療録などを Web で患者の閲覧に供したり、電子記録媒体で患者に提供したりしている医療機関は殆どない。
図表 7 患者が入手可能な情報と費用
診療経過の要約書 1,500 円 ~ 52,500 円 診療録(カルテ)の複写 1 枚 85 円
検査記録、検査成績表の複写 1 枚 85 円 エックス線写真の複写や MRI 画像の印刷 1 枚 1,050 円 診断書 2,100~2,625 円 診療情報提供書(紹介文書料) 5,250 円
通院証明書 1,050~5,250 円 入院証明書 1,050~6,300 円
出所:医療法人 野口病院の文書料
レセプト(診療報酬明細書)は、患者が受けた診療について、医療機関が健保組合など の医療保険の保険者に請求する医療費の明細書のことで、傷病名、検査や処方した薬の内容 が記載されている。レセプトも患者にとり貴重な診療情報である。これまでは医療機関と保 険者の間だけのやり取りで患者には知らされていなかったが、厚生労働省は医療機関に対し、
平成 17 年 4 月から患者に開示するよう義務付けた。患者は健康保険組合などを通じてレセ プトを入手し、自分の診療費用を把握したり、治療の内容をチェックすることができる。 平 成 23 年 4 月からは医療機関と保険者との間では全てオンラインで処理(データの交換形式 は CSV 形式)されることになっており、電子的なレセプト情報を個人が入手することが可能 になってくると思われる。レセコンからの出力の例は図表 8 のとおりである
図表 8 診療報酬明細書(レセプト)
(3) 医師に対するヒアリング調査で個人が記録する健康情報の項目について尋ねたとこ ろ、病歴、副作用歴、感染症歴、予防接種歴、健診情報、主要検査記録などがあげられた。
東京都医師会ではこれらの項目を含んだ生涯健康手帳を作成し、普及する計画である。また、
出所:日医標準レセプトソフト外来版 カルテ事例ホームページより http://www.orca.med.or.jp/receipt/outline/karte/index.rhtml
診療所の医師が患者を診察する時に最小限必要な患者情報としては、コンパクトな患者サマ リ、サマリが難しければ、過去に患った少し詳しい病名と服薬歴があればよいとのことであ る。図表 9 は医師が初診の患者についてあれば診療に役立つとあげた項目である。
図表 9 診療所の医師が最小限必要な情報
・患者識別基本情報(名前、性別、住所、生年月日、電話番号、被保険者番号)
・(他科)かかりつけ医(科名、名前、住所、電話番号)
・かかりつけ薬局
・医薬品の副作用歴、アレルギー歴、
・既往歴(入院歴、手術歴)(病名、発症日、治療、問題点、今後の計画)
・主要検査結果の時系列表示、主要画像
・健診情報(ドック施行日、データ問合せ先)
・喫煙歴、アルコール歴、
出所:医師からのヒアリング調査
ところで、個人の健康診査や治療・服薬の記録を記入するのに、市町村が 40 歳以上の者 を対象として交付している健康手帳がある。データが少し古くなるが、三重大学の中野教授 他が平成 16 年 1~2 月に全国の保健所・保健センターに対して行った「地域住民のための健 康づくり支援システムの開発-健康手帳の全国調査-」によれば、健康手帳を扱っている機 関は全回答数 1,625 件の内 1,192 件で、保健所では 12%、保健センターでは 96%、であっ た。また、手帳の活用状況については、「活用していると思う」が 40%程度、健診時の手帳 の持参率も「ほぼ全員が持参」が 20%程度と回答されている。配布当事者に対する調査で あることを考えると、健康手帳は全国の殆どの市町村が取扱っているものの、その存在自体 を知らない市民も多く、市民の認識は必ずしも高くはないといえる。
健康手帳に継続して記録する個人が限られている理由としては、個人は健康には関心を持 っているが、それが正しい、継続的な具体的行動につながらないという指摘が多い。日本で は、どの医療機関での気軽に診療をうけられるフリーアクセスと安価な医療費という医療環 境にあり、軽い風邪程度でも医師の診察を受けることができ、継続的に自らの身体の状態を 記録し、健康管理に活用することへのインセンティブが乏しいといえる。診療情報は医療機 関に書類の形で保管されるものだという認識が強く、個人が医師と自己の健康情報を共有す ることの価値を理解していない 。一方医師も、患者サマリなどを患者や他の医師と共有し、
地域として個人の健康をケアしていこうとする意識が乏しいとの指摘があった。米国では個 人の健康管理の状況により医療保険料が増減する。欧州では、家庭医は診療報酬が担当する 住民の数で決まっており、家庭医は診療所の支出を抑えるために受け持ちの住民の健康状態 を常に徹底している、などのインセンティブがあるとの指摘もある。
第二章 健診システムや電子カルテのシステムベンダーに対する調査結果
(1) システムベンダーに対して健診システムの機能などの調査を行った。人間ドックな どによる健康診査は、殆どの健診機関がコンピュータによる情報処理システムを導入してい る。受診者の情報および身長、体重計から血液や X 線などからの検査結果、自動判定機能、
健診結果の出力など、様々な検診に係わる情報が一元的に管理され、医師や受診者に対して も見やすい形で表示される。ベンダーからは健診情報の出力形式が健康保険組合によって異 なっており、1 つの健診機関で何十種類もの出力形式が必要で、対応するのが大変との指摘 が多い。受診者にとっても、異なる健診機関の間は勿論のこと同じ健診機関であっても検査 項目や検査方法が異なったりすることがあり、継続して記録する場合に苦労する。
受診者からの要望もあり、殆どのベンダーが健診情報を CD や FD に記録して提供する機能 をオプション機能として備えているが、採用している健診機関は少ない。また、Web を利用 し受診者が自宅などのパソコンから過去の健診情報を閲覧する機能を提供しているベンダ ーもある。
電子カルテなどの病院情報システムについては、その導入は着実に増しているものの導入 率は電子カルテでは全医療機関の7%程度である。しかし、医事会計(レセプト作成など)、
検体検査・画像検査や処方せんなどは電子的に処理されており、電子的な情報として情報を 入手する場合は、これらの部門からの出力を活用するのも一案である。
(2) Webを用いた健康情報記録システムについても調査を行った。事例として、練馬区 保健所の「メタボリックシンドローム撃退セミナ」、日本赤十字社熊本健康管理センターな どの「くまもと私の健康管理」やクオリティオブライフ社の「電子保健医療手帳マイカルテ」
などがある。練馬保健所の「メタボリックシンドローム撃退セミナ」のサイトは、基本情報、
健診記録、健診結果、保健指導の4つのページがある。基本情報には既往歴、家族歴、予防 接種歴、輸血歴、主な服薬歴、副作用歴などを入力する。健診記録は、受診の都度、新規登 録に健診情報を入力する。入力情報は過去の情報を記録してある記録一覧に記録され、比較 することができる。健診結果は健診記録に基づいてメタボリック症候群の判定を行いその結 果が表示される。保険指導は保険師などより指導を受けた項目、内容を記録する。図表10 と図表11に「メタボリックシンドローム撃退セミナ」の画面の表示例を示す。
「くまもと私の健康管理」では、情報の手入力の負担を軽減するため、指定された健診機 関で受診した場合は健診情報をオンラインでWeb記録サイトに転送することができる。
米国でもWebMDが健康管理に必要な様々なサービスを提供し米国で高い信頼を得ているほ か、マイクロソフトやグーグルも試行的ではあるが同様のサービスを始めている。
図表10 練馬区保健所の「メタボリックシンドローム撃退セミナ」の基本情報の表示例
図表11 練馬区保健所の「メタボリックシンドローム撃退セミナ」の記録一覧の表示例
出所:練馬区保健所ホームページより(http://www.city.nerima.tokyo.jp/hokenjo/)
台湾では、政府が 2004 年 1 月に保険証など健康保険に係わるカードを IC カード(スマー トカード)に統一し、その機会に、IC カードに被保険者の検診情報、診療情報を蓄積し、
医師に診察の参考情報として提供されている。
医師は、患者を診療する度に診療記録をカードに記録する。検診情報についても同様で健 診機関が健診記録をカードに記録する。患者は受診する際にカードを持参し医師に提示する と、医師は患者のカードと自身の認証用のカードをパソコンに読むことにより患者の検診情 報、診療情報にアクセスすることができる。患者の検診情報、診療情報を参考に問診、必要 な検査等を行い治療することになるが、過去の診療歴から適切な診療を迅速に行うことが可 能になり、また、検体検査や画像検査の重複を避けたり、患者のアレルギーをチェックする ことができる。台湾のスマートカードに記録される情報は図表 12 のとおりである。
図表 12 台湾のスマートカードに蓄積される情報
1) 患者基本情報 氏名、識別子、生年月日、カード番号 2) 患者保険情報 保険料率、電子証明書など
3) 診療情報 受診記録(過去 6 回の受診)
受診日、医療機関 ID、医師 ID、病名 診療記録
治療記録(過去 60 セット分):処置、処方など
慢性病(糖尿病、高血圧など、過去 30 セット分):処方など 検査記録(過去 10 セット分)
医薬品のアレルギー(3 セット分)
検診情報 予防接種の記録 4) 公的機関向記録 中央保険局用記録
出所:保健医療福祉情報システム工業会 台湾医療情報システム視察団報告書より
Web記録システムのメリットの1つとして、個人同意を得られれば保険師や医師が患者の健 康情報にアクセスできることがあげられる。保険師が情報を閲覧して健康指導の進捗をチェ ックすることもできる。現在のサイトは健康指導を対象としているが、例えば、疾病管理の パスを組み込むことにより医師が慢性疾患の患者の状態をフォローし、変化があれば迅速に 対応することもできるようになる。
Web記録システムの課題としては、①データの入力は紙に記録するよりは楽にはなるが手 間は変わらないし、逆に、検査結果表を貼り付けるということなどができなくなる。②情報 はシステム提供者のサーバに記録されており、サーバの管理が安全に行われているか、自己 の情報が他の目的に利用されないか危惧を抱く個人もいる。③サイトの維持管理の費用をど こで回収するのか、などがあげられた。
第三章 個人が直接入力するデータの検討
健康の維持・増進のためには、個人が自己の体重、体温、脈拍や血圧などのバイタルサイ ンを日々記録し、必要ならば、モニタリングすべき具体的な数値などを定め、その達成度を チェックすることが必要である。健康指導の積極的支援の対象者は、バイタルサインに加え て指導を受けた運動内容や食事内容を記録し、保険師などに定期的に記録を示して、自己の 健康活動を評価してもらうことが必要である。
健康手帳や Web 記録システムに個人が計測して入力するデータは体重、血圧が多い。㈱イ ンテリジェンステクノロジー社の「カラダカラ」によると同社の記録グラフを利用している 人では、体重、体脂肪率、食事の記録、睡眠時間、腹筋の回数、ウオーキング、摂取カロリ ー、万歩数などの記録が多い。図表 13 は、あいち健康プラザで健康指導対象者に Web で提 供されている生活改善プログラムの実施記録の記入欄の例である。
図表13 生活習慣の改善プログラム実施記録の記入欄 1)運動 目標:
60 kcal/日 消費量アップ 目安:
普通歩行(10分間)約25kcal 速歩(10分間)約40kcal 約 1,000 歩
腹筋 ( )回 今日の歩数( )歩
2)食事
目標:140 kcal/日 摂取量ダウン 目安:ジャムパン(各1個)約300kcal ざるそば(普通盛1人前)約300kcal 菓子は2日に1回、1個まで
3食以外の夜食は食べない ご飯(1 杯)約 300kcal
食事の内容
出所:あいち健康プラザ 津下氏提供
計測の都度パソコンや Web にアクセスして記録することが面倒という個人には、身体計測 機器から自動的に計測データが送信されるシステムが市販されている。㈱タニタは、身体測 定機器と Web サイトを連携したサービスを提供しており、計測データは利用者の要望に応じ て、パソコン、携帯電話、あるいは無線レシーバーに送信される。
健康指導の対象者以外にも慢性疾患の患者が自宅での疾病の管理のために必要な情報を 記録し、かかりつけ医や疾患の専門医がWebで定期的に閲覧してチェックし、時系列的に患 者の状態を把握することになれば疾患の早期の治療や状態に変化に対応することも考えら れるが、実現はもう少し先とのことである。
第四章 データ項目の体系化および標準化の検討
(1) 健診情報や診療情報を電子保健医療手帳に記録するためには、情報をどこまで体系 化や標準化する必要があるかを検討した。電子保健医療手帳は個人や医師、保険師が閲覧を 目的として記録するもので、記録されたデータを分析などに利用する場合は極めて少ないと 思われる。インターネットの利用や利用サイトの提供あるいは診療情報の電子的な記録が進 んでいる米国において、電子的な健康情報の記録システムが普及していないのも、個人の知 識不足や医療機関からのサポートが少ないことに加えて、インターネットで普及している検 索サービスは、対象とするデータ源が広く分散しているものの、利用できる形で大量にウェ ブ上に存在していることにもよる。それらを利用者の要望にあわせて如何に効率よく集約す るかであるが、個人の健診情報や診療情報は医療機関などが機微な情報として内部で取り扱 うことが基本で個人が入手することは容易ではなく、個人や利用サイトの運営者だけでは解 決できない課題が多いことがあげられている。
このため、情報の入手や記録の容易性を最も重視し、データ構造や記述方法などについて厳 格な標準化を行うと情報を提供する医療機関や情報を記録する個人やシステムに過度な負 担を課することになる。図表 14 は、情報の種類ごとに発生源と情報の利用者に分類したも のであるが、これらの情報に対してはデータ構造や記述方法などについての特段の標準化を 要求することはせずに、データを入手したとおりに記録し、関連する項目の情報を閲覧する ページごとにまとめて記録する程度にとどめることとした。
図表14 個人の健康に関する情報‐情報の種類と発生源・情報利用者など‐
個人 家族 事業者 保険者 健診機関 保健指導
機関 医療機関 薬局 健康増進 機関
基本情報 A B B B C C C D D
家族 A A B B (C) (C)
検診 B B A C (D) (D)
自己管理情報 A C D C
既往歴受診歴 A (D) B C C A C (D)
処方服薬歴 (A) B C A A (D)
レセプト情報 A A A
保健指導履歴 B A (C)
生活習慣問診 (A) A (C) (D) (D)
運動処方 (A) (A)
食事指導 (D) A (D)
(2) 健診情報や診療情報を個人が電子データで入手できることは現在ではできないが、
特定健診やレセプトの情報は電子データで授受されることになっていることから、個人も保 険組合などを通じて電子データで入手することが可能になると思われる。そこで、健診情報 や診療情報を電子的に交換する際の交換規約などの標準化の現状について調査を行い、電子 保健医療手帳に電子情報として直接取り込む際の課題の検討を行った。
診療情報の標準化については、HL7 規約、DICOM 規格などの国際的な交換規約や保健医療 福祉情報システム工業会 JAHIS の交換規約などの標準化の整備が進んでおり、診療情報の交 換には、国際的な標準として XML(Extensible Markup Language 文書の意味や構造を記述す るための言語の 1 つ)と呼ばれる形式が使用されている。XML はタグでデータの意味付けが 行われるので、データを見るだけで個々の項目がどのような意味を持っているのかが分かる。
他のシステムとの連携も容易に実現でき、データベースの構造の変更なども柔軟に行うこと ができる。病院情報システムは、システムベンダーごとにシステム内での情報の取り扱いの 構造や形式が異なっているが、殆どのシステムでは、診療情報を XML の形式で出力すること ができるようになっている。図表 15 は、定健診のデータを電子的に交換するための XML 形 式の記述例である。
図表15 特定健診データのXML形式での記述(抜粋)
<id extension="12345678061234567890001"
root="1.2.392.200119.6.201" assigningAuthorITyName="受診票番号" />
<id extension="1232123" root="1.2.392.200119.6.202"
assigningAuthorITyName="保険者記号" />
<id extension="112233" root="1.2.392.200119.6.203"
assigningAuthorITyName="保険者番号" />
<id extension="12345678" root="1.2.392.200119.6.101"
assigningAuthorITyName="被保険者番号" />
- <addr>
<postalCode>113-8655</postalCode>
</addr>
- <patient>
- <name>
<family>ジュシンシャセイ</family>
<given>ナマエ</given>
</name>
出所:厚生労働省平成 19 年 4 月「標準的な健診・保健指導プログラム」より
また、レセプトは医療機関と審査支払機関、保険者との間では CSV 形式でデータが交換さ
(3) ヘルスケアの分野では診療情報を収集したり、交換したり、保存したりするためフ ァイル形式として PDF が注目を浴びてきている。米国の情報画像協会(AIIM)が事務局にな り、インテルやアドビ、病院などが参加して、医師や患者が患者サマリや救急データなどの 診療情報を容易に共有できるよう PDF の利便性、安全性などの利点を活かした実装ガイドを 作成する作業が進んでいる。PDF は米国アドビが規格化した形式で、安全で信頼性の高い情 報交換のフォーマットとして世界的に評価されており、膨大な量の電子データを高い安全性 と信頼性を持たせながら、共有、管理、保存するためのフォーマットとして使用されている。
健診情報や診療情報には構造化された文書、数値データ、グラフおよび画像などが含まれ ており、現在、AIIM より提案されている PDF/H は、健診情報や診療情報を収集したり、保 存したりするための適切な形式といえる。電子保健医療手帳は生涯にわたって記録されるが、
医療分野の情報化は進展が著しく、情報の種類、構造や形式が変化していくことが予想され、
現存する特定の形式に依存するものは避けるべきで、PDF はこの点からも優れているといえ る。
PDF 形式は、情報を画像で保存することから、かつて情報の蓄積・検索に活用されたマイ クロフィルムやマイクロフィッシュと同じイメージで、情報を保存する技術としては一般的 な技術と思われるが、マイクロフィルムと比較すると次のような大きな差異がある。
①文書等の PDF 化や PDF 化された情報の閲覧が容易であること。マイクロフィルムの場合 は専用の装置が必要であり、個人が自宅などで簡単にフィルム化や閲覧ができない。PDF 情報は情報の検索が容易であるが、マイクロフィルムの場合はランダムな検索に時間を要 する。
②PDF 情報はサーバ等に保存することができ、必要ならば自己のパソコンに複写したり、
医師や保健師に送信することが容易である。マイクロフィルムの場合には複製を作成した り、医師等に情報を送付することが簡単にはできない。
③PDF はサーバやパソコンに保存するが、その保存容量は大きく、また柔軟に拡張できる。
マイクロフィルムは 1 つのフィルムに保存できる容量に限界があり、保存量が増すと大き な保存スペースが必要になる。
PDF は、保存や閲覧、情報の共有などに格段に優れており、現在では、電子情報をよりセ キュアに安心してやり取りするためのデファクトスタンダードとして、世界中の企業や行政 機関に認められており、国際規格である ISO 規格として承認されている。PDF を閲覧するソ フトはアドビから無料で公開されており、PDF という形式に変換された文書は全て印刷イメ ージのまま閲覧することができる。文書の PDF を作成するソフトはアドビが有料で提供して
いるがそれ以外にもフリーのソフトで多数提供されており、印刷できるものであればあらゆ る文書を PDF にすることができる。紙の文書はスキャナで読み取る。一般的なファイル形式 の文書は「Adobe PDF」という仮想プリンタに出力する。画像ファイルは「Acrobat で開く」
ことで PDF 化することができる。記録媒体ごとの PDF 化は次のとおりである。
1) 紙の文書を PDF 化
紙に作成された文書はスキャナでそれを読み取り PDF にすることができる。ページごと に文書のイメージが 1 つの画像として PDF が作成される。
2) 一般的なファイル形式の文書の PDF ファイル化
一般的なファイルを PDF ファイル形式に変換するには、擬似的な印刷の方法を用いる。こ れは文書ファイルをプリンタで印刷する代わりに「仮想的なプリンタ」に出力することで PDF を作成する。
3) Microsoft Office 文書の PDF 化
Word、Excel、PowerPoint といった Microsoft の Office 文書から PDF のファイルを作成 には、Microsoft Office からプリンタとしてインストールされる「Adobe PDF」や「Acrobat Distiller」を利用して PDF を作成することもできる。
4) 画像やテキストファイルの PDF 化
単純なテキストファイルや JPEG、GIF 形式などの画像ファイルは、Microsoft の Office 文書と同様に「PDF 作成ボタンや「Acrobat で開く」ことで PDF 化することができる。
また、電子的な診療情報の交換には XML 形式が使用されているが、PDF Maker を利用してタ グ付け PDF ファイルを作成しておけば、誰がどのようにして作成したか、どこがタイトルか、
どこが本文かといった内容が PDF ファイルの埋め込まれており、その構造を継承した XML ファイルを PDF に保存する時にファイルで XML を選択するだけで簡単に XML を作成すること ができる。
電子保健医療手帳に記録する形式として PDF 形式を選択するが、PDF を用いることにより、
医師や個人は健診情報や診療録、検体検査結果、画像検査結果などの診療情報を、いろんな 情報を 1 つのコンテナに詰め込んだようにして蓄積することや転送することができる。
(4) 電子保健医療手帳に具体的にどのような健診情報や診療情報を記録するかであるが、
記録する情報は、多ければ多いほどよいともいえるが、個人が大量の健診情報や診療情報を 入手し、記録することを継続できるのか、健康手帳でも記録を始めても継続して記録を続け る人は 30%程度といわれている。また、記録する情報の量に反比例して、閲覧する医師等
が必要な情報を見つけ出す手間がかかることになる。多忙な医師が閲覧するためにかなりの 手間や時間を要する場合には、手帳の持参は逆効果になる恐れがある。
個人が生涯にわたって管理する情報としては可能ならば誕生からデータの蓄積に努める ことが望まれ、例えば、東京都医師会では地域医療推進委員会を設置し、生涯健康手帳作成 およびモデル事業を実施している。生涯健康手帳作成の目的としては、次のことをあげてい る。
1) 生涯にわたり体や発育や健康に関する貴重な記録を保持していく。
2) 心身の状態の変化を長期に観察することにより、疾病の予防、病気の早期発見、治 療に役立てる。
3) 情報IT化する際の貴重なデータベースの構築につなげることを可能とする。
4) 個人情報を本人が管理することができ、必要な時には、医療機関などにと情報を共 有することを可能とする。
5) 自分自身で保健・医療情報を管理することによって「自分の健康は自分で守る」と いう認識を各人が持つ。
サイズはA4、ファイル形式で必要とするページを随時追加することができるようになってい る。また、パソコンを利用したい者向けにPC対応のソフトウエアも作成している。東京都医 師会の生涯健康手帳に記録する項目は図表16のとおりである。
図表16 東京都医師会の生涯健康手帳の情報項目
私のからだ(緊急連絡先) 家族歴 結婚歴 出産歴 手術・輸血歴 渡航歴
アレルギーの記録 学校伝染病の主な種類と出席停止期間 予防接種一覧表 予防接種の記録
感染症の記録
(18歳までの記録)
・1歳まで
・1歳から小学校入学まで
・小学生
・中学生から18歳まで
誕生から小学校入学までの病気・薬の記録 小学校から18歳までの病気・薬の記録
発育曲線(男子)、発育曲線(女子)
18歳までの成長・健診記録
19歳から64歳までの記録 19歳から64歳までの病気・薬の記録、健診記録 65歳からの記録 65からの病気・薬の記録、健診記録
がん検診記録 生活習慣の記録
使用上問題となる薬のま とめ
出所:東京都医師会作成 生涯健康手帳
(5) 実際の診察の場での利用を考えると、医師は必要ならば後日詳細な情報を病院や診
るため再度検査する場合が多いといわれている。医師のヒアリングから、電子保健医療手帳 に記録され、診察に参考になる情報としては、少なくとも図表17にある情報があればよいと のことであった。
図表 17 電子保健医療手帳への記録が望ましい最小限の情報 1) 患者識別基本情報
名前、住所、生年月日、電話番号、医療保険被保険者番号 2) 他科のかかりつけ医(科名、名前、住所、電話番号)
3) 服薬歴、かかりつけ薬局 4) 健診情報
人間ドックなどの健診結果のデータ(入学時、入社時のデータ) がん検診のデータ
(胃ガン、肺ガン、大腸ガン、乳ガン、子宮ガン、前立腺ガン)
5) 喫煙歴、アルコール歴、アレルギー歴、医薬品の副作用歴 6) 既往歴(入院歴、手術歴)
病名、発症日、治療、問題点、今後の計画 主要検査結果の時系列表示
主要画像
出所:医師ヒアリング調査
(6) 電子保健医療手帳の記録媒体および管理場所であるが、記録の媒体としては USB、
SD、CD、パソコン、プロバイダのサーバが、また、管理する場所としては、自宅、かかりつ け医、病院、情報処理業者(プロバイダ)が考えられる。それぞれにメリット、デメリット がある。可搬型電子媒体は、Web を利用した情報の入手が殆どできない現在では情報入手や 医師や保健師への提供の手段としては便利である。しかし、紛失や破損の恐れがあり、バッ ククアップが必要となることから、恒久的にはセキュリティが保証されたプロバイダを利用 し、可搬型電子媒体は情報の収集、運搬の手段として利用するのがよい。図表 18 は電子保 健医療手帳の記録媒体と管理場所についてメリットとデメリットとをとりまとめたもので ある。
図表 18 電子保健医療手帳の保存場所と記録媒体のメリット/デメリット 記録媒体 管理場所 メリット/デメリット USB、SD、CD-ROM
パソコン
自宅 必要な時に即時に利用できる。
無料
紛失、破損の恐れバックアップが必要 USB、SD、CD-ROM
パソコン
かかりつけ医 診察に即時に利用 無料の可能性
暫時チェックしてもらえる バックアップが必要
USB、SD、CD-ROM 病院のサーバ
病院 安心
無料
預託病院以外の利用にやや難 プロバイダのサーバ プロバイダ 安心
有料 利用に難
情報の他目的への利用が心配
(7) 医療機関において、診療録(カルテ)など法令に保存義務が規定されている文書等 に記録された情報を電子媒体に保存する場合には、法的に電子保存の3原則が定められてい る。
1) 情報の真正性が確保されていること 2) 情報の見読性が確保されていること 3) 情報の保存性が確保されていること、
の3つの原則を満たしていなければならない。
真正性とは、正当な人が記録し確認された情報に関し第三者から見て作成の責任の所在が 明確であり、かつ、故意または過失による、虚偽入力、書き換え、消去、および混同(患者 を取り違えた記録がなされたり、記録された情報間での関連性を誤ったりすること)が防止 されていること、見読性とは、電子媒体に保存された内容を、権限保有者からの要求に基づ き必要に応じて肉眼で見読可能な状態にできること、また、保存性とは、記録された情報が 法令等で定められた期間にわたって真正性を保ち、見読可能にできる状態で保存されること をいう。
電子保健医療手帳は個人が管理、運用するもので法的な制約を受けることはないが、一方 では、医師が手帳の情報を診察の参考とすることなどから可能な限りこの3原則を参考して 管理、運用されることが望ましいが、3原則のうちでは真正性が最も重要である。
第五章 組み込みソフトウエア
電子保健医療手帳に記録するファイル形式としてPDFを採用すると、PDFには、パスワード によるデジタル署名などのセキュリティ機能、検索機能、閲覧機能などの基本的な機能が備 わっている。電子保健医療手帳は閲覧を目的としておりPDFが提供する機能だけでも個人が 通常に閲覧するには支障はない。このため、PDFに追加して必要な機能としては、個人が特 別に希望するオプション的な機能は別として、最小限、
1) 記録する情報の発生源の情報(健診機関、病院や診療所などの名称など)、年月日(タ イムスタンプ)を記録する
2) PDF化する前の記録されていた形式(テキストデータ、EXCELデータなど)を記録する 機能があればよい。
記録に際しての機能以上に重要なものは、情報の表示に係るグラフィックなユーザ・イン ターフェースである。電子保健医療手帳は個人が単独または多忙な医師や保険師と共同で閲 覧するものであり、可能な限り、見やすく、また情報がすぐに理解できる形で表示される必 要がある。
また、電子保健医療手帳の利用のケースとして、1) 医療機関での診察に際に医師に提供 する。2) 糖尿病などの慢性疾患の疾病の管理に利用する。3) 保健指導で「積極的支援」に 分類された会社が自己の疾病予防に利用する。4) 自己の健康増進に利用する、などのユー スケースが考えられるが、ユースケースによって記録する情報の内容や量が異なってくる。
このため、例えば、電子保健医療手帳の入り口では、4つの種類のサイトが1つのページビ ューで閲覧でき、その後に1)~4)の個々のサイトを選択できるような工夫も必要になってく る。
また、複数のサイトに記録する場合には、サイトの間で同じ情報を何度も入力しなくてもよ いようにするなどの工夫も必要である。
第六章 電子保健医療手帳を利用した保健情報システム
(1) 健康には関心を持っている個人は多いが、軽い風邪程度でも気軽に医師の診察を受 けることができるため、フリーアクセスと安価な医療費という医療環境にあり、継続的に自 らの心身の状態を記録し、健康管理に利用することへのインセンティブが乏しい。電子健康 医療手帳への健診情報や診療情報の入力を継続して行われることが電子健康医療手帳の最 大の課題ともいえる。
継続して記録する個人が限られている理由をもう少し詳しく見ると、以下の4つに分類さ れる。
1) 病院や診療所の診療に際して健康手帳があれば診断が迅速かつ正確になるといわれて いるが、あれば良いという程度で診察に不可欠ではない。
2) あればよいとしても、診療機関に行く頻度はそれほど高くはなく、従って健康手帳の利 用の頻度も高くない。
3) 同じ医療機関で診察を受ける限り過去の診察情報は同じ医療機関では共有されており、
健康手帳の効果が少ない。
4) 健康手帳への記録する頻度も高くないため、健康手帳を机の奥にしまい込んだり、サイ トを利用した場合でもアクセスする頻度が少なくなり、アクセスの方法などを忘れてし まったりする。
健診情報や診療情報を個人が入手し、電子健康医療手帳に記録し続けるには個人、医師等 によほどのインセンティブと努力が必要となってくる。特に、医師の要求が重要といわれて いる。患者が来院するたびに医師が健康手帳の持参や健康手帳からの出力した情報を尋ねる ことにより患者は手帳に記録することの認識が高まる。なお、最近では特殊な利用のケース ではあるが、災害時の被災者の診察や治療に際しての健診情報や診療情報の欠如、せめて、
過去の服薬歴だけでもわかれば良かったとの指摘もある。
(2) 電子保健医療手帳は、蓄積される情報が増すにつれ利用が高まることが予想される。
手帳の利用の頻度が少なくても情報を記録し続けることが重要である。このため、ある種の 健康情報は、国民全員について、例えば、疾病に罹るリスクが増す 40 歳頃迄はほぼ半自動 的に記録されることを検討することも一案である。
継続的な記録を健診情報と診療情報に分けて考えると、健診情報の場合は、健診情報の処 理が健診機関ではシステム化されている場合が多く、課題があるものの電子的な情報の転送 は可能である。診療情報については、診療情報を電子的に処理している医療機関の目安とし て、電子カルテの導入率を見ると、7%程度であり、多くの医療機関では診療情報は紙ベー スで処理されており、診療情報の方がより難題である。
電子健康医療手帳の普及の第一ステップとして、ここでは、図表17の医師が最初の診察に おいて最小限、閲覧できれば良いという情報に絞り、それらの情報の入手源、記録の方法な どについて検討した。
1) 健診情報
健診機関では殆どの機関で健診情報の電子的な処理システムが導入されているが、受診者 には、健診情報は紙に出力して渡される場合が多い。(医師が健診結果を受診者に説明する 際の紙が手渡される。)。この場合は、以下の方法を採ることが考えられる。
① 紙の情報をサーバなどに手入力し、保存する。
② スキャナでスキャンしてPDF化し、一度記録媒体に記録した後、パソコンを利用して電 子健康医療手帳に情報を転送する。
最近では、受診者の希望に応じて、健診情報を電子的記録媒体(CD、SD、USBなど)に記 録し、受診者に渡す健診機関の出てきており、これが増えてくると、電子的記録媒体から電 子健康医療手帳に転送することができる。PDF化ファイルで記録した媒体を入手できればな お良い。
2) 処方せん
診療情報の中で最も入手が容易な情報としては処方せんがある。医師が、診察に際して最 小限あれば良いという診療情報の中で、絞り込むとどの情報ですかと尋ねると、服薬歴と既 往歴の病名と応じる医師が多い。医師が服薬を指示する場合には必ず処方せんに記載するの で、処方せんの情報を記録すればよい。ただし、調剤薬局で処方された医薬品をジェネリッ ク医薬品に変更することがあるので、この場合は、調剤薬局から渡される薬剤情報(医薬品 の説明書)を記録した方がよい。
処方せんは紙ベースであるので調剤薬局に提出する前に複写をとりスキャナによりスキ ャンして記録媒体に記録するか、スキャナの代わりに紙を携帯電話のカメラで撮影し、Iア プリによりPDF化し、携帯電話のSD媒体に記録し、その後、携帯電話のメールで電子健康医 療手帳に転送する方法もある。
なお、調剤薬局は殆どの薬局が電子的な情報処理を行っており、薬剤情報がパソコンから 出力されれば、調剤薬局で直接電子的な媒体に記録した後、PDF化することも可能になる。