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実験 と計測に基づ く密度涜拡散装置の効果に関する考察 渡辺雅 二

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岡山大学 環境 理工学 部研 究報 告9巻,第1号,pp59‑64,20042

実験 と計測に基づ く密度涜拡散装置の効果に関する考察

渡辺雅 二

1

山磨敏 夫

2

St udyo nE庁e c t so ft heDe ns i t yCur r e n tGe ne r a t o r byExpe r i me n ta ndMe a s ur e me nt

MaSajiW atanabel,TbshioYamatogi2

(ReceivedDecember2.2003)

Thedensitycl∬rentgenerator(Manufacturer:NakashimaPropellerC

0

.,Ltd.,Patentown er: HitachiMetals,Ltd・)isdesignedtogenerateverticalcirculationoverawidewaterareaharnessing thedensityctlrrenteaeCt.Wepresentsomeexperimental resultsthatweobtainedusingafloat eq山ppedwithaGPSun ittostudywaterflowsgeneratedbyadensitycurrentgeneratorun it setinSIReservoirinOkayamaPrefecture・Wealsopresentsomemeasuredresultsconcerningthe watertemperaturearoun dtheunit・Wediscussitseffectsobservingtheexperimentalresultsand themeasuredresults.

KeywordS:dens軸 curTenl,slratiJlcation,waterenvironment

1緒論

生産消費拡大 あるいは開発や森林の伐採等 を原 因 と す る水質の低下が,河川,湖沼,沿岸水域では一般 に顕 著なものとなっている.特に,極度の水質悪化 を示す夏 季のアオコ発生事例の頻発は,貯水池の水質汚濁の深刻 化 を表 し,早急な改善に向けての積極的な施策 を要す る 問題 となっていることを示 している.湖,貯水鞄,沿岸 水域では,夏期の温度成層 は鉛直方向の運動 を阻害 し, 低層 における極度の貧酸素,富栄養状態の原 因 となる.

密度流拡散装置 (DensityCurrentGenerator(DCG), 設計 ・製作 ・設置 :ナカシマプ ロペ ラ,特許権者 :日立 金属)は,密度流の効果 を利 用 して広範 囲に及ぶ鉛直 循環 を誘発す ることに よ り,水質改善 を実現す る装置 として開発 された.密度流拡散装置 は,水面付近 に一 つ,下部に一つ,合計二つの取水 口を設 けている.水面 付近の取水 口か ら供給 され る表層 の高温低密度の水 と, 水底付近 に設置 された取水 口か ら供給 され る低層 の低 温高密度の水 を電動駆動イ ンペ ラで混合 させ,水面下4

1岡山大学 環境理工学部 環境数理学科 (〒7008530岡山市津島 中三丁 目1番 1号)

2ナカマプロペラ株式会社 技術本部開発グループ (〒7008691 岡山市上道北方6881)

図1:密度流拡散装置の概念図.

mに設 け られた吐出 口か ら吐出 させ る. この装置 は円 筒状の装置であ り,水深 にあわせ て低層取水 口を設定 できるよ う伸縮可能 となっている.本論文で紹介す る装 置 は水深約20mか ら40mまで伸縮可能なものである.

密度流拡散装置 の概念 図を図1に示す.密度流拡散装 置 は,特 にアオ コの発生等水質の悪化 が顕著な夏季 に 59

(2)

図2:S貯水池 の密度流拡散装置 と実験 中のGPS一aoat (2003年9月5日).

密度流の特質 を利用 して効果的に機能す る.す なわち, 中間層 に吐出 され た低層 の低 温高密 度水 と表層 の高温 低密度水 の混合水 は,密 度流効果 に よ り広範 囲 に供給 され,その結果広範 囲の鉛 直混合 が励 起 させ る.その 吐出量は,‑ 日当た り300,000立方 メー トル に及ぶ .

現在密度流拡散装置 は,岡 山県のS貯水池 に一台設 置 されている.湖水交換のメカニズムは流速 と水温か ら ある程度解 明で きる (岩佐 1990).本論文では, S貯 水池 に設 置 され た密度流拡散装置周辺 で行 なった流況 実験 と水温に関す る計測結果 に基づ き,その機能につい て考察す る・流況実験 は,全地球測位 システ ム(GPS) を装備 したフロー ト(GPS‑aoat)を用いて行 った.S貯 水池に設置 された密度流拡散装置 と実験 中のGPS‑aoat の写真 を図2に示す.このGPS‑floatを用いた実験 の結 果 を提示 し,密度流の運動 をある程度把握できた ことを 示す.特 に,水深4m前後 の中間層 で,密度流拡散装 置 を中心 とす る,少 な くとも0.005m/Sか ら0.015m/S の速度 をもつ放射状 の流れ が形成 され ていた ことを示 す.また,その流れ は,密度流拡散装置 を中心 として, 少 な くとも半径100mの水域 をカバー した ことを示す.

密度流拡散装置周辺 では,GPSと水質モニ ター を用い て行った計測 も実施 した.ここでは,温度 に関す る計測 結果 を提示 し,密度流拡散装置 の効果 が及ぶ範 囲内で は,鉛直方向の水温分布 が,水深1mか ら5m前後 ま でほぼ一様 になってい ることを示す.これ らの実験結果 と計測結果 か ら密度流拡散装置 に よる密度流 の形成 状 況 について考察す る.特 に,密度流拡散装置 の効果 と

して,低層水 と表層水 の混合水 が広範 囲 に拡散 してい ることを示す.

〜‑車 .、

Ⅵ REL.ElfMODEM

図3:GPS一且oatの概念 図.

2GPS‑floatによる流況実鼓

フ ロー トにGPSユ ニ ッ トを搭 載 したGPS一aoatは, 十字 に組み合わ された二枚の抵抗板 に受 ける流体抵抗 を 駆動力 として水面 を移動す る.流れの影響で水面 を移動 す る間,搭載 されたGPSユニ ッ トに よって得 られ る測 位デー タは無線モデムによって送信 され る.これまでに もGPS‑aoatを用いた実験 は,締切堤防のゲー トを開放 した ときに児 島湖 に生 じる非定常流 を対象 として行 なわ れ た(Watanabe1999,2000,2002(1),(2),Watanabe andKunisada2001,WatanabeandNum aguchi2003 (1),(2))・これ までの実験では抵抗板 は,フロー ト本体 にアームで固定 されていたが,S貯水池の実験では児 島 湖 よ りも深 い位 置 での流れ を対象 とす るた め, フ ロー ト本体か らワイヤーで係 留 した.特 に,抵抗板 の位置 を 密度流拡散装置 の吐出 口にあわせ て水面下約4mにな るよ うにワイヤーの長 さを設定 した.GPS‑aoatの概念 図 を図3に示す.GPS‑floatか ら送信 され たデー タは, 受信機 を とお して コン ピュー タに収録 され る.デー タ 受信 一収録 システ ムの概念 図を図4に示す.

2003年8月22日,8月29日,9月5日に密 度流拡 散装置周辺 で行 なった実験 で得 られ たGPS‑floatの軌 跡 を図5か ら図9に示す.図9は図8に示 したGPS一 aoatの軌跡部分 の拡大図である.また,密度流拡散装 置 の位 置 と,更 に,実験 開始 か らの経過 時間 を5分 間 隔で,時点でのGPS‑aoat位置の近 くに示 した.x軸の 正の方向は東,y軸 の正の方 向は北である. 図5か ら 図9は,GPS‑且oatが0.005m/Sか ら0・015m/Sの速 度 で密 度流拡散 装置 か ら遠 ざかって行 った ことを示 し てい る. これ は,水深4m前後 の高温低密度層 と低温 高密度層 の中間層 では,密 度流拡散装置 を中心 として, 少 な くとも0.005m/Sか ら0.015m/Sの速度 を もつ放

(3)

渡辺 雅二 ら /実験 と計測 に基づ く密度流拡散装置の効果に関す る考察

4:デー タ受信 一収録 システムの概念 図

GPS‑FLOAT EXPERIMENT(0552.01‑070201GMT,8/2y 2003)

128250「

‑128400L

87950

:Y=f;I;

DURAT10N1HR 10MlN DISTANCETRAVELED62912 MEAN VELOCITY 0014979

×(∩)

図5:GPS‑floatの軌跡 Ⅰ

GPS‑FLOATEXPERIMENT(040517‑050517GMT.8/29/2003)

128180r

DURATION 1HR OMIN

128190 ‑ DISTANC∈TRAVELED̲31176

MEAN VELOCITY 0OD8660rTV

128200 ‑

12

8

240 ‑

128250

̲12826.L ' r qCGI . .

187940 187930 187920 187910 ‑87900 ‑87890 ‑87880 ・87870

× (∩)

図6:GPS‑noatの軌跡

Ⅱ.

GPS‑FLOAT EXPERIMENT(05̲2517‑070017,8/29/2003)

1128180r I I

DURATl0N1HF1 35MIN

128190 ‑ DISTANCETRAVELED67.866875∩

MEAN VELOCITY O011906rTVs

‑128200 ‑

1 14

128210 ‑

128220 ‑

128230 ‑

128240 ‑

128250 ‑

̲12826.L qCGI . , . .

87940 ‑87930 ‑87920 ‑87910 ‑87900 ‑87890 ‑87880 ‑87870

× (∩)

図7:GPS‑floatの軌跡

Ⅲ.

GPSIFLOATEXPERIMENT(06̲3832‑070832GMT,9/5/2003)

‑128250

DCG

128270 ‑

‑128280 ‑

128290 ‑

128300 ‑

128310 ‑

128320 ‑

128330 ‑

DURATl(⊃N OHR 30MIN

128340 ‑ DISTANCETRAVELED10091591m 188軸 MEAN VELOCITY 0005606rTVs 、汚 1 ニ

1128350 L I I l I I I L L

87950‑87940‑87930‑87920‑87910・87900‑87890‑87880‑87870‑87860

× (∩)

図8:GPS‑aoatの軌跡IV.

GPS‑FLOAT EXPERIMENT(063832‑070832GMT.9/5/2003)

128320

128350 し

87880

裏 LL ヱ ≡

5

l l

87870 87860 X(rTl)

図9:GPS‑floatの軌跡V.

61

(4)

図10:水質計測システムの概念図.

射状の流れが形成 されていたことを示 している.また, その流れ は,計測時間内において密度流拡散装置か ら 少な くとも100m付近までは達 していた ことを示 して いる.この結果は,密度流拡散装置か ら吐出 された中密 度水が,低密度層 と高密度層 の中間 を選択 した ことを 示 している.これまでは,GPS‑floatによる実験は0.01

m/

S以上の流れを対象 として行なってきたが,S一貯水池 の実験では0.005

m/

Sか ら0.015

m/

Sの密度流 とい う 微妙 な中間層 にお ける水の運動 をGPS‑floatを用いる ことによって捉 えることができ, この実験が水環境 に おける比較的繊細 な流れに対 して も有効であることを 示す ことができた,

3GPSと水質モニターによる温度計測

GPSと水質モニターを用いた水質計測 を,密度流拡 散装置周辺で行った.ここで用いた計測システムの概念 図を図10に示す.この水質計測 システムを用いて計測 した水温の鉛 直分布状況 を示す. この水質計測 システ ムによる計測で得 られた水温の鉛直分布 に関す る9箇 所での計測結果 を示す.密度流拡散装置か ら南方50m 程度離れた箇所 にスカー ト長 さ約5mの仕切 フェンス が設置 されてお り,表層約5m水深で密度流拡散装置の 設置 している内部 と外部が仕切 られてい る. ここでは, 仕切 フェンスよ り外部で装置か ら300m以上離れ た計 測点1,2,3で得 られた結果 と装置の設置 されている内部 100m以内の計測点4‑9で得 られた結果に分けて提示す る.密度流拡散装置 と3箇所の計測点1,2,3の (平均) 相対位置 を図 11,また6箇所 の計測点4‑9の相対位置

を図13に示す.図11と図13には密度流拡散装置 と各 計測点 との (平均)距離 も示 した.図11と図13に示す 計測点で計測 された鉛直方 向の水温分布 を,それぞれ

TEMPERATURE MEASURING POINTS (043448I0458 16GUT.9/5/200

128200 r

DIST BET DCG AND POINT 1 432̲676133 DCO‑ DIST BET DCG AND P(⊃lNT 2 360086325m 128300 ‑

128400 ‑

128500 ‑

128600 ‑

DIST BET DCG AND POINT S 372660437r

X

128700 ‑ 1

128800 L l

88100 88000 87900 87800 87700 87600 X(rT1)

11:密度流拡散装置の位置 と計測点1‑3.

19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 3

TENPERATURE (C)

図12:計測点1‑3での鉛 直方向温度分布 .

図12と図14に示す. 図12に示 した密度流拡散装置 か ら300m以上離れた計測点での鉛直方 向の温度分布 と図14に示 した密度流拡散装置か ら100m以内の計測 点にお ける鉛直方 向の温度分布 は,水深8mか ら水深 30mの範 囲では本質的な相違 はない. しか し,水深8 m以下の範隣では,両者 の間に相違点が認 め られ,特 に水深1mか ら水深6mの範囲で顕著な違いが現れて い る.図12に示 した3つの温度分布 は, どれ も水深1 mか ら水深6mの範囲では,温度が水深 にほぼ比例 し て減少す る,一方,図14に示す6つの温度分布 は,水 深1mか ら水深5mまでの温度 の減少 は,図12の三 つの場合 に比較 して小 さく,ほぼ 1℃以内である.

水深5mまでの変化は,仕切 フェンスによる影響で装 置か ら吐出された混合水 (密度流)はフェンス内に溜ま り,フェンス内 ・外で表面温度 に差が表れたもの と考 え る.図12と図14に示 された結果か ら,密度流拡散装 置が設置 されている仕切 フェンス内部の水域では,吐出

(5)

渡辺 雅二 ら /実験 と計測 に基づ く密度流拡散装置の効果に関する考察

TEMPERATUREMEASURIN(;POINTS(05:06:08‑05:34102GUT

88000 ‑8798087960 ‑87940 ‑87920 ‑8790 0 87880 ‑87860 X(rTl)

図13:密度流拡散装置の位置 と計測点4‑9.

oT.2.3T.5‑6.7‑8一9101213141516171819202ー2324252627283

1≡lLJ

21 22 23 24 25 26 27 28 29

TENP∈RATURE(C)

図14:計測点4‑9での鉛直方向温度分布.

口か ら吐出 され た低層 の低温水 と表層 の高温水の混合 水が,水深1mか ら水深6mの範囲で,少な くとも密 度流拡散装置か ら半径100m以内の水域 をカバー して いたことがわかる.さらに仕切 フェンス内部の装置か ら 100m以上離れた水域 の水温データは今回計測 してい ないが,同様の変化が見 られ るもの と推定す る.特に, 図7に示 したGPS一且oatの軌跡 は,中密度水の流れが 密度流拡散装置か ら100m以上離れた水域にも十分継 続 していたことを示 している.

4結論

本論文では,GPS‑且oatによる流れの実験方法 とGPS

と水質モニターを用いた水質計測方法を示 し,S一貯水池 に設置 された密度流拡散装置周辺での実験,計測結果 を示 した.GPS‑且oatによる実験 と温度に関す る計測結 果により,密度流拡散装置が,中密度水は低密度水 と高 密度水の中間層 を選択す るとい う性質 を利用 して効果 的に機能することを示す ことができた.特に,低層の低 温高密度水 と表層の高温低密度水が混合 された中密度 水の流れが,密度流拡散装置か ら少な くとも半径100m 以内の水域で,水面下4m前後に形成 されていた こと が確認できた.また,今回の実験,計測結果か らは,次 の2つの点が明 らかになった.

1)密度流拡散装置を稼動す ることで,水温分布 に変 化が見 られた.特に,装置が設置 されている仕切フェン ス内部が顕著であ り,フェンスのスカー ト長 さに相当す る水深について鉛直水温分布がほぼ一様 になっていた.

2)フェンスの内 ・外の表層温度は,フェンス内の方 が最大で4℃下がっていた.これ はアオ コ等の植物プ ランク トンの発生を抑制す る効果が期待 され る.

流況 に関 しては流速計 を用いる計測 も有効な方法で ある.一方,フロー トによる実験は,直接流速を計測す ることはできないが,S一貯水池の実験で示 したよ うに, 水塊の移動状況 によ り全体の流況 を把握す るには適 し ている.特に,GPS一点oatは,その移動状況を数値デー タとして記録できるとい う利点を持っている.また,今 回0・005m/S〜0.015m/Sとい う繊細な流れ に対 して も

GPS‑aoatが有効であることを示す ことができ,今後吹 送流等他の微妙な流れ‑の応用が期待できる.

謝辞

本研究の遂行にあた り,実験,計測にご協力いただい た岡山大学大学院 自然科学研究科博士前期課程環境 シ ステム学専攻 と岡山大学環境理工学部の学生諸君 に深 く感謝の意 を表す る.

63

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参考文献

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g y

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8pages.

参照

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