66 植物防疫 第
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巻第11
号(2019年)タイトル
宮城県古川農業試験場は,平成11年に大崎平野が広 がる現在地(大崎市古川大崎)に移転し,周囲は水稲と 大豆が作付けされる田園地帯にあります。平成13年の 試験研究機関の組織改編により水田農業部門が統合さ れ,全国でも珍しい普通作物(水稲,大豆,麦類)に特 化した公設農試となりました。平成31年には19年振り の組織改編が行われ,水田営農部,作物育種部,作物栽 培部,作物環境部の4部体制となり,病害チームと虫害 チームは土壌肥料チーム,環境化学チームと一緒の作物 環境部に属することになりました。今回の組織改編は,
震災以降,沿岸部を中心に増加している土地利用型経営 体の経営安定や米のブランド化の推進等の課題に対し て,効率的に試験研究を実施するために行われました。
病害虫分野のこれまでの取組として,病害虫の発生生態 に関する研究や総合的有害生物管理(IPM)等の研究に 取り組んできました。ここでは,現在取り組んでいる主 な研究課題について紹介します。
初めに,「土地利用型農業経営における病害虫リスク 管理と防除技術の確立」への取組についてです。この研 究課題は,三つの研究項目からなります。一つは,「沿 岸地域における病害虫の発生リスク管理」として,斑点 米カメムシ類の一種クモヘリカメムシの生態に関する研 究です。太平洋側におけるクモヘリカメムシの分布域の 北限は宮城県南部とされていますが,メッシュ農業気象 データの解析からは,温暖化により今後分布域の拡大が 懸念されています.そこで,本種の分布域の実態把握と モニタリング体制の整備に取り組み始めたところです。
二つ目は,「新品種に対する病害虫管理技術」です。当 試験場で育成された水稲の新品種ʻだて正夢ʼやʻ金のい ぶきʼ,小麦の新品種ʻ夏黄金ʼ(育成地:東北農業研究セ ンター)等に対する病害 虫管理技術の確立を目指 しています。ʻだて正夢ʼ などは,いもち病真性抵 抗性遺伝子Pibを持って いることから,作付地域 におけるいもち病レース の確認を行っています。
三つ目は,「露地野菜の 拡大に伴う大豆害虫のリ スク管理」です。近年,
土地利用型経営体の複合部門として,露地野菜への取組 が増えています。エダマメやキャベツ等に寄生する害虫 種には,大豆にも寄生する重要害虫が存在することか ら,これらの害虫種のリスクを評価し,適切な栽培管理 技術の確立を目指しています。
次に,最近の研究成果について紹介します。近年,水 稲栽培では苗箱数削減を目的とした高密度播種技術が普 及し始めています。苗箱数が減ることによって箱施用に よる初期病害虫防除剤の投入量も少なくなることから,
その効果について不安視されています。このため初期病 害虫防除剤の施用方法である箱施用や側条施用,種子塗 抹について高密度播種技術における効果を確認し,より 適した施用方法の提案を行う予定です。
最後に,大豆の病害虫防除技術での取組についてで す。宮城県の大豆生産は転作田での栽培が中心であり,
排水対策が十分でない圃場では湿害に伴う土壌伝染性病 害が発生しやすくなっています。このため,土壌伝染性 病害である茎疫病や黒根腐病の発生要因解明や防除方法 の確立について取り組み,種子塗抹剤による種子消毒と 畝立播種を組合せて実施することで,これら病害の被害 を大きく減らせることを明らかにしました。大豆害虫に 関しては,従来のマメシンクイガなどの子実害虫だけで なく,近年突発的に多発し葉や莢を加害するオオタバコ ガなどが問題となっています。そこで,大豆におけるオ オタバコガの発生消長の調査や防除対策等に取り組んで います。また,本県の主要害虫であるフタスジヒメハム シについては,発生密度と被害の関係から被害予測が可 能であることを明らかにしました。
このほかにも,水稲,大豆,麦類の病害虫に関する試 験研究に取り組んでいますが,今後,さらに宮城の水田 農業の実態を的確に捉え,生産現場の課題解決に向けた 取組が必要であると考えております。
(作物環境部長 佐々木次郎)
宮城県古川農業試験場 作物環境部 研 究 室 紹 介
〒989―6227 宮城県大崎市古川大崎字富国88 TEL 0229―26―5107
斑点米カメムシ類の1種 クモヘリカメムシ
大豆の「茎疫病」や「黒根腐病」に有効な畝立播種技術
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植物防疫