講師 更家 悠介 氏
●中堅・中小だからこそ素早く対応できるはず 私は主催者の両方に関係し、大阪商工会議所では 中堅・中小委員会の委員長、生産技術振興協会では 常務理事をしております。商工会議所の役割の中で 中堅・中小企業の政策要望を取りまとめ国に伝える 機能があり、7 月 11 日には中小企業庁長官に要望 書を手渡すことになっています。要望をまとめる際 に、大震災後の中堅・中小企業が厳しいとか、リー マンショック後の状況が厳しいままだとか、後ろ向 きの話題がどうしてもベースになってしまいがちで すが、私は中堅・中小企業が頑張って前向きに取り 組むことが大事だと思っております。
振り返れば 1989 年のベルリンの壁崩壊、91 年の 国内バブルの崩壊というように、日本全体を見渡す と経済は落ちる一方の感じがあります。その中でも 大阪の地位はどんどん落ちて、中部圏にも追い越さ れてしまった状況です。ここらでこの傾向を盛り返 さなければなりません。我々中堅・中小企業にとっ て得意なことは何でしょうか。大企業と比べ従業員 数をはじめ経営規模が小さく全体を見通しやすいた め、本来なら変化に対し素早い対応ができるはずで す。そして変化に対して、「前向き」に対応してい かなければならないと思います。
高校野球部の女子マネージャーがドラッカーのマ ネジメント論を勉強し、弱小野球チームを変革して 全国大会出場を目指すという物語が話題になってい ますが、ドラッカーは「イノベーションと企業家精 神」という本を書いています。その中で、企業家と は 「変化を知る」、そして「変化に対応し、変化を チャンスとして捉えることができる」と定義づけし ています。それは前向きな気持ちがあってこそのこ とです。牛乳瓶の牛乳の量が半分になったとして、
「半分も飲んでしまった」と思うのか、「半分も残っ ている」と思うのか。また、アフリカに行って「皆 が靴を履いていないからマーケットはない」と思う のか、「これから皆が靴を履いてくれるから 100%
のマーケットがある」と考えるのでは、見方が 180
度違ってきます。事業化とは、ビジネスとして持続 可能な形につくり上げていくことであり、単に技術 があればよいというものではなく、ものづくりの技 術だけでなく、サービス産業であれ何であれ、イノ ベーションが必要です。我々にとっては、イノベー ションつまり革新を念頭にした事業化が大切なこと だと思います。
●変化に対し組織的対応も必要
「変化を知る」ことでは、中小企業の社長が自ら の感性によって変化を知るというのが特長のようで すが、企業規模が大きくなっていくと組織論も必要 になってきます。私は先週、3M(スリーエム、
Minesota Mining Manufacturing)の日本法人を訪 問する機会がありました。同社は米国ミネソタで発 祥した会社です。イノベーションに取り組んでいる ことで有名で、ふつうに見られるテクノロジーを磨 き上げています。例えば、紙のうしろに粘着テープ をつけたポストイットはグローバルマーケットで大 きなシェアを確保しています。タワシや磨きパッド でも非常に高いシェアを占めている様です。同社で は新商品で 1 年以内に売上の 10%を、4 年以内に 40%を構成することを経営目標にしています。日 本法人の社長はインド人のシンさんという人で、年
特 集 1大阪の役割と中堅・中小企業の可能性
更 家 悠 介
大阪商工会議所 中堅中小企業委員長